説明

埋込アンテナ

【課題】小型の埋込アンテナを実現する。
【解決手段】アンテナ210は、第1の平面に配置された第1の部分と、非平行な平面に配置された第2の部分と、第1の部分から間隔を隔て、且つ第1の部分に対して実質的に平行に配置された第3の部分とを有する共振構造体211を備えている。少なくとも1つの第2の部分は、第1の部分と第3の部分との間に配置され、第1の部分と第3の部分を互いに電気的に接続している。共振構造体211は、非導電性または誘電性の材料よりなる埋め込み部材215の中に埋め込まれている。第1および第3の部分は、導電性材料よりなる層または薄膜によって構成されている。第2の部分は、導電性のビア260によって形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナに関する。本発明は、特に、携帯電話機、PDA(パーソナルデジタルアシスタント)、音響映像(AV)娯楽用装置等の携帯無線装置において用いられる電気的に小規模の平面アンテナに関するが、これに限定されるものではない。
【背景技術】
【0002】
一般に、携帯無線装置等の携帯電子装置は小型化の傾向にある。その結果、アンテナは、スペースに関して、装置の他の構成要素(例えば、バッテリ、ディスプレイ、キーパッド、プリント回路基板)と競合することになる。
【0003】
また、より高いデータレートに対応するため、今日の無線システムは益々、より広い帯域幅を要求するようになっている。これは、特に、IEEE(米国電子電気学会)により規格化されたUWB(超広帯域無線)プロトコルを用いた映像・音声のアプリケーションについて当てはまる。しかしながら、物理的なサイズの縮小と帯域幅の拡張という2つの目標は、通常両立できないものである。更に、アンテナの物理的なサイズを縮小すると、通常、アンテナの放射効率が低下する傾向がある。電気的に小規模のアンテナにおいては、要求される帯域幅、放射効率、および(所定の中心周波数における)アンテナ周囲の近距離場の物理的大きさの間で、基本的な理論上の性能の折り合いがつくように設計がなされる。近年、小型アンテナ設計における進歩により、所定の体積サイズと動作周波数に対して最大限の帯域幅と放射効率を達成する試みがなされている。
【0004】
小型アンテナ設計における主要な課題は、製品の所定用途および要求される物理的サイズに対して、適切な電圧定在波比(VSWR)の帯域幅および放射性能を実現することである。
【0005】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0248488号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、物理的には比較的小型で、かつ比較的広い帯域幅および比較的大きな放射効率の要件を満たすアンテナを提供することが望ましい。
【0007】
この目的のため、特許文献1には、構造体の近距離場共振モードを保持あるいは向上させるために折り曲げられた平面アンテナが開示されている。しかし、このアンテナには改良を加えることが望ましい。
【0008】
本発明の目的は、小型の埋込アンテナを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の様態は、第1の平面に配置された第1の部分と、この第1の平面と非平行な面に配置された少なくとも1つの第2の部分とを有する共振構造体を備えたアンテナを提供する。このアンテナにおいて、前記共振構造体は非導電性材料の中に埋め込まれ、前記少なくとも1つの第2の部分は、少なくとも1つの導電性のビアを備えている。
【0010】
通常、この共振構造体は、第3の部分を有し、この第3の部分は、第1の部分から間隔を隔て、且つ第1の部分に対して実質的に平行に配置されている。前記少なくとも1つの第2の部分は、第1の部分と第3の部分との間に配置される。
【0011】
前記少なくとも1つの第2の部分は、第1の部分と第3の部分を互いに電気的に接続してもよい。また、典型的な実施の形態において、前記少なくとも1つの第2の部分は、第1の部分と第3の部分の各端縁の間に延在する。
【0012】
第2の部分は、第1の部分に対して実質的に垂直であることが好適である。第1の部分は、通常、導電性材料よりなる層または薄膜によって構成され、その形状は、例えば実質的に矩形であってもよい。通常、第2の部分は、それぞれ、第1の部分における互いに反対側の2つの端縁に設けられる。第3の部分は、導電性材料よりなる層または薄膜によって構成されていてもよい。
【0013】
典型的には、第2の部分は、少なくとも2つのビアを備えている。これらビアは、互いに間隔を隔てて配置されていてもよいし、互いに接触して並んでいてもよい。好適な実施の形態において、これらビアは一列に配列され、実質的に同一平面上に並んでいる。
【0014】
典型的な実施の形態において、共振構造体は、複数の層からなる埋め込み部材の中に埋め込まれ、第1の平面はこれら複数の層に対して実質的に平行であり、少なくとも1つのビアは、埋め込み部材の少なくとも1つの層を貫通している。この埋め込み部材は、誘電材料等の非導電性材料よりなる多層基板によって構成されていてもよい。
【0015】
いくつかの実施の形態において、第1の部分は、導電性材料よりなる層または薄膜によって構成され、少なくとも1つのスロットを規定するような形状を有している。前記少なくとも1つのスロットは、前記第1の部分と前記少なくとも1つの第2の部分の少なくとも1つとの境界に配置された開放端を有し、前記少なくとも1つの第2の部分は、それぞれ、前記少なくとも1つのスロットの各端縁に合わせて配置されたビアを含んでいる。各ビアは、互いの間に、前記少なくとも1つのスロットの開放端に実質的に合わせて配置された間隙を規定する。この間隙は、前記少なくとも1つのスロットと実質的に同じ幅を有することが好ましい。
【0016】
本発明の第2の様態は、第1の平面に配置された第1の部分と、この第1の平面と非平行な面に配置された少なくとも1つの第2の部分とを有する共振構造体を備えたアンテナの製造方法を提供する。本発明の製造方法は、共振構造体を非導電性材料よりなる複数の層に埋め込む工程と、少なくとも1つの導電性のビアを少なくとも1つの層に貫通させて形成することにより、前記少なくとも1つの第2の部分を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、既存の実績のある製造技術を利用して、アンテナのサイズを縮小することができる。
【0018】
当業者が以下の本発明の具体的な実施の形態の説明を一読し図面を参照すれば、本発明のその他の有利な様態が明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
まず、図1は、折り曲げられた矩形のスロットループアンテナ10を示す。アンテナ10は、特許文献1の図2に示されるアンテナと同じかまたはこれに類似するものであってもよい。アンテナ10は、一般的には例えば銅等の金属といった導電性材料よりなる層または薄膜12を備え、この層または薄膜12は、一般に非導電性材料または誘電材料によって構成された実質的に直方体の基板15上に設けられている。基板15は、幅Wb、長さWs、および厚さaを有する。アンテナ10は、実質的に矩形の4つの側面44,46,48,50によって結合された、実質的に矩形の表面40と、実質的に矩形の裏面42とを有する。表面40と裏面42は、実質的に平行で、互いに反対向きに配置され、側面44,46,48,50は、表面40と裏面42に対して実質的に垂直である。導電層12は、給電点20を含む導電層12の中央領域32が表面40上に配置され、導電層12の端部領域34,36の一部が対向する側面46,50上に配置され、端部領域34,36の他の一部が裏面42上に配置されるように、基板15の上に設けられている。
【0021】
層12から導電性材料を一部除去することにより、全体が矩形のループ型スロット14(スロットループとも称する)が形成され、このスロット14を通して基板15が露出する。スロット14は、導電層12を薄膜16とグランド面部材18とに分割する。スロット14は、実質的に薄膜16を囲んでいるが、開放端を有しており、これによって、導電性材料からなる給電点(部)20が形成される。この給電部20により、薄膜16に電気信号(一般に、高周波(RF)信号やマイクロ波信号等の電磁信号)を供給したり、薄膜16から電気信号を受信したりできるようになっている。給電部20を介して、薄膜16に信号を供給したり薄膜16から信号を受信したりするために、例えばコプレーナ導波路のような、導電給電線21の形態の結合装置が設けられている。給電線21は、給電線スロット部22によって、グランド面18から電気的にアイソレートされている。薄膜16、グランド面18およびスロット14を合わせて、アンテナ10の共振構造体とも言う。
【0022】
スロット14は全体的にループ形状であり、第1ないし第4のスロット部24,26,28,30を備えている。第1のスロット部24は、給電部20の反対側に配置されている。第2のスロット部26は、第1のスロット部24の反対側に配置され、且つ給電線20によって中断されている。第3および第4のスロット部28,30は、互いに反対側に配置され、且つ、第1および第2のスロット部24,26を各端部において連結している。好ましい実施の形態において、スロット14は全体的に矩形であり、第1および第2のスロット部24,26は概ね互いに平行であり、第3および第4のスロット部28,30も概ね互いに平行である。従って、薄膜16も全体的に矩形である。
【0023】
基本共振モード時において、スロット14のうち、大きな電界または磁界(特に、近距離場電磁界、すなわち、アンテナに隣接して存在する電磁界)と関係する部分が表面40上に位置し、一方、無視できる程度か実質的にゼロの電界または磁界と関係する部分が主に裏面42上に位置するよう、スロット14は基板15を囲むように折り曲げられている。
【0024】
アンテナ10の裏面42上の端部領域34,36および対応するスロット部28,30は近接しているが、アンテナの使用中にスロット部が関係するのは、ゼロまたはほとんどゼロの磁流や電界であるので、相互干渉を生じない。
【0025】
導電層12のうち、基板15の側面46,50上に位置する部分は、導電ストリップ線を備えている。基板15の表面・裏面40,42のみならず側面46,50にも導電性材料を堆積させる場合、製造工程が複雑化する。更に、使用中にアンテナ10の周囲(特に表面・裏面40,42と、側面46,50との境界におけるスロット14の周囲)に発生する電磁界、すなわち近距離場は、対称ではなく、不規則であり、アンテナ10の性能に悪影響を及ぼすおそれがあることがわかっている。アンテナ10の共振構造体における隣接する部分(例えば、端部領域34,36および対応するスロット部28,30)に関係する近距離場電磁界が、アンテナを折り曲げた際に大きく破壊的に干渉しないようにすることが重要である。アンテナ構造体における近距離場分布がある程度対称形であれば(これは多くの場合、アンテナの形状が対称であることと関係する)、上記のように折り曲げることはより容易になると考えられる。
【0026】
以上のことから、折り返しアンテナを非導電性あるいは絶縁性の材料(例えば誘電材料)内に埋め込むことを提案するものである。非導電性材料は、比較的高い透磁率、例えば、少なくとも2.5、好ましくは少なくとも3という透磁率を有するのが好都合である。埋め込み用の材料は、高コントラスト材料あるいは高電磁コントラスト材料によって構成されていてもよい。通常、このような材料は、(真空中において)誘電率あるいは透磁率が1より大きい。アンテナを埋め込む材料(以下、埋め込み部材と呼ぶ)は、アンテナのうち、少なくとも、使用中に近距離場電磁界を発生させるかまたは近距離場電磁界に関係する部分を囲んでいる。図1に示したアンテナ10と同じかまたはこれに類似する折り返しスロットループアンテナの例において、埋め込み部材は少なくともスロット14を囲んでいる。実際には、アンテナ全体、あるいは少なくとも導電層の全体とそこに形成された全てのスロットを埋め込み部材に埋め込むのが好都合である。好適な実施の形態では、埋め込み部材は、アンテナの共振構造体を覆っているか、もしくは実質的に覆っている。典型的には、この場合に覆われている共振構造体は、導電層または薄膜およびこれに形成された全てのスロット、あるいは、アンテナが電磁信号を送受信する際、使用中に共振する他の構成部分を含む。明らかに1つ以上の接続点すなわち給電点は露出しているので、アンテナにおいて信号の送受信が可能となる。
【0027】
図1において、導電層12は誘電ブロック(基板15)の外面上に配置されており、導電層12の外側には誘電材料は存在しない。これに対し、図2は、アンテナ10の共振構造体と同じかまたはこれに類似する共振構造体を備えた埋め込みアンテナ110を示す。図中、同様の部分には同様の番号を付している。導電層112とスロット114は、非導電性または誘電性の材料よりなる埋め込み部材115に埋め込まれている。埋め込み部材115の材料は、高い透磁率を有するのが好都合である。なお、図2において、符号118はグランド面部材を示し、符号121は給電線を示し、符号124はスロット部を示し、符号132は導電層112の中央領域を示し、符号146はアンテナ110の側面を示している。
【0028】
アンテナを埋め込むことにより、アンテナの近距離場の対称性が向上し、それによってアンテナの性能が向上する。更に、埋め込み部材115によって、共振構造体の実効長を縮小することができ、その結果、所定の動作周波数帯域において、アンテナが埋め込まれていない場合に比べて、アンテナを小さくすることができる。アンテナ110が折り返しスロットループ型アンテナである図2の具体例では、外周スロット114を誘電材料に埋め込むことにより、導電層112が誘電ブロック(基板15)の外側のみに配置される場合(図1参照)と比べて、近距離場は、スロット114の長手に関して、より対称になる。後者(図1)の場合、スロット14の長手方向のどの位置においても、誘電材料はスロット14の片側にしか存在しないが、アンテナを埋め込んだ場合(図2)、両側にスロット線が配備されるので、その結果、(スロット14に垂直な断面において見た場合)電磁界分布がより対称形になる。誘電材料よりなる埋め込み部材115において、スロット114に隣接する部分がより多くなるので(すなわち、全ての側に隣接するので)、図1に示した非対称なスロットの場合に比べて、スロット114を囲む空間の体積の実効誘電率はより大きくなり、また、要求される共振構造体の長さは短くなる。更に、スロット14,114における互いに垂直な部分の接合部(例えば、図1,2におけるスロット14,114の水平および垂直部分間の境界)において生じ得る近距離場の不連続性は、スロット114が誘電材料に埋め込まれているため低減される。
【0029】
好適な実施の形態において、アンテナ110が埋め込まれる深さは、アンテナ110の外表面において実質的に一定である。一例として、特に共振構造体がスロット線またはスロットループ共振体を備えている場合において、この深さ(例えば、埋め込み部材の表面から導電層112の表面までを計測した深さ)は、同一方向に計測した場合に導電層112自体の厚さの少なくとも約50%であってもよい。より一般的には、埋め込み部材の深さ、すなわち厚さは、使用中、共振構造体によって発生する近距離場電磁界の全てを実質的に包含するような厚さであることが好ましい。
【0030】
便宜的に、埋め込み部材は、必要な用途に合わせた形状にすることができる。図示した実施の形態において、埋め込み部材115、従ってアンテナ110全体の形状は、実質的に直方体である。
【0031】
一般的な用途において、埋め込みアンテナは、プリント回路基板等の基板の上に搭載してもよい。埋め込みアンテナの下面とプリント回路基板との間に配置された誘電材料(埋め込み部材)によって、近距離場の相互干渉によるアンテナの離調が低減される。アンテナ110の具体例において、埋め込み用の誘電材料は、近距離場をスロット114の近傍に集中させ、それを取り囲む誘電ブロック(基板)の表面から離している。その結果、アンテナの通過帯域と放射性能は、プリント回路基板に近いことに起因する変動が生じにくくなっている。
【0032】
いくつかの製造工程においては、図1や図2に示すような、導電層12,112の一部が非平行または垂直である共振構造を形成するのは困難であったり、非効率であったりすることがある。この問題は特に、共振構造体が埋め込まれている場合に当てはまる。従って、好適な実施の形態では、特にアンテナが埋め込まれている場合、アンテナの共振構造体の少なくとも一部は、1つ以上の導電性のコネクタまたはビアによって形成されている。典型的には、共振構造体の一部を形成するのに、互いに離間配置された複数の個別のコネクタが用いられる。特に、好適な実施の形態では、コネクタはそれぞれビアの形態となっている。ビアとは、多層構造体すなわち基板における、一般に2つ、あるいは3つ以上の層の間に電気的接続を生じるコネクタまたは接点のことである。通常、ビアは、基板における1つ以上の層にドリル等により形成された開口部または溝を備えており、この開口部は導電性材料(通常、銅等の金属)によって埋められているか、あるいはめっきもしくは被覆されていて、これにより、各層の間に、層同士を相互接続するための導電性経路が形成される。
【0033】
図3は、アンテナ210(図4)の、全体として符号211で示す共振構造体を示している。この共振構造体において、その一部は電気的コネクタ、特にビアによって形成されている。図3の共振構造体211は、折り返しスロットループアンテナの共振構造体であり、アンテナ10,110の共振構造体と同じかまたは類似のものであってもよい。従って、当業者には明白であろうが、同様の部分には同様の符号が用いられており、同様の説明が当てはまる。図4は、埋め込みアンテナ110に関して説明したように、埋め込み部材215に埋め込まれた図3の共振構造体を示す。図4において、符号212は、金属または他の導電性材料よりなる層または薄膜を示している。
【0034】
共振構造体211は、金属または他の導電性材料よりなる層または薄膜として形成された中央部分232と、同じく金属または他の導電性材料よりなる層または薄膜として形成された2つの端部234,236とを含んでいる。同様に、グランド面部分218は、金属または他の導電性材料よりなるストリップ線またはパッチとして形成されている。図1および図2に示した構造体とは異なり、中央部分232と端部234,236は、共通の折り返された導電層によっては形成されておらず、それぞれ、導電性材料よりなる別々の薄膜または小片によって形成されている。中央部分232とグランド面218との間に形成されたスロット部224,226は開放端を有しており、スロット部224は共振構造体211の端から端に渡って延在していることがわかるであろう。スロット部226の場合、同様に共振構造体211の端から端に渡って延在していると言うこともできるが、給電点220によって中断されている。同様に、図示のように、端部234,236とグランド面218との間に形成されたスロット部228,230は、それぞれ開放端を有している。なお、図3において、符号221は給電線を示し、符号222は給電線スロット部を示している。
【0035】
中央部分232は、図1および図2の構造体で用いられている導電性ストリップ線の代わりに、好ましくは導電性ビア260の形態をなす複数の個別の導体によって、端部234,236に接続されている。複数の平行なグランド面部分218も同様に接続されている。ビア260はそれぞれ、一本の導電性材料(一般的には金属)からなり、通常前述のように形成される。一般に、ビア260は実質的に円筒形状であるが、必ずしも円筒形状である必要はない。
【0036】
ビア260を用いて共振構造体の一部を形成する際、少なくとも2つのビア260を使用し、1つを、ビア260を用いて形成する部分のどちらかの端に配置するか、またはその端に隣接するように配置することが好ましい。スペースが許すのであれば、これら少なくとも2つのビア260の間に、1つまたは複数のビア260を追加することがより好ましい。ビア260は典型般には間隔を開けて配置されるが、互いに接触して並んでいてもよい。選択肢の一つとして、製造技術によって可能な限り、できるだけ多くのビア260を設ける。ビア260を用いて形成される各部分に関し、ビア260は一列に配列され、列中の各ビア260は実質的に同一方向を向いていることが好ましい。よって、列中のビア260は、互いに実質的に平行であることが好ましい。例えば、共振構造体211において、中央部分232と端部234との間の部分を形成する場合、ビア260A,260Bを、それぞれこの部分における2つの端に配置するかまたはそれら端に隣接するように配置する(従って、中央部分232と端部234の端に配置することにもなる)。ここで、ビア260Aと260Bの間に、複数の追加のビア260を、列をなすように配置するのが好ましい。ビア260の列は、ビア260を用いて形成される部分の平面上に、例えば中央部分232と端部234の各平面に対して実質的に垂直な平面上に配置される。あるいは、構造体211における(図示のような)上下方向部分を形成する際、ビア260A,260B間にはビア260を追加せず、ビア260A,260B,260C,260Dのみを用いて形成してもよい。
【0037】
共振構造体のスロットは、隣接するビア260間に適切な寸法の間隔または間隙を設けることにより形成することができる。例えば、折り返しスロット214が設けられている共振構造体211において、ビア260によって形成される共振構造体211の部分の上に存在するスロットの部分は、適切に間隔を開けて配置された2つのビア260によって構成される(例えば、スロット226,228の間にスロット部分を形成している図3のビア260C,260Bを参照)。一般に、折り返しスロットの場合、ビア260はそれぞれ、隣接する導電層または薄膜に形成されたスロット部分の端縁に実質的に合わせて配置される。
【0038】
他の実施の形態(図示せず)では、互いに間隔を開けて配置された、または互いに接触して並ぶ複数のビアが、グランド面の対応する部分218の間に設けられる。
【0039】
ビアまたは他のコネクタを用いて共振構造体の一部を構成することは、例えば、低温同時焼成セラミック(LTCC)技術のような多層基板技術を用いて、埋め込み部材215をLTCCで形成したアンテナを製造する場合に特に適している。このような技術を用いることにより、埋め込み用の誘電材料は多層構造となる。共振構造体において、導電性の層または薄膜として形成されるかあるいは導電性の層または薄膜によって形成される部分(能動導電性部分とも呼ぶ)は、導電性材料よりなる層を、蒸着その他従来の方法によって埋め込み部材の隣接する層の間に設けることにより形成することができる。従って、これらの部分は基板の層に対して実質的に平行に配置される。共振構造体におけるその他の部分は、基板の層を貫通する導電性のビア(通常、基板の層に対して実質的に垂直である)を用いて形成することができる。通常、図3および図4に示すように、ビアは、ある導電層と他の導電層とを接続する。しかしながら、他の実施の形態において、ビアは、基板の層と非平行の共振構造体のあらゆる部分を形成するのに用いることができ、その部分が、2つ以上の他の部分どうしを接続する部分であるか否かは問わない。
【0040】
共振構造体がスロットを備えている各実施の形態において、誘電率および/または透磁率が高いほど、所定の動作周波数帯域におけるスロットの物理的もしくは実際の長さの合計は短くなる。
【0041】
ビアは、中空よりむしろ中実であるほうが好ましい。中実ビアは、ビアが接続する共振構造体の構成部分間において、より低いインピーダンスでの接続を可能にするからである。更に、インダクタンスを最低限に抑えるため、作製技術が許す限り、ビアはできるだけ太くすることが好ましい。
【0042】
本発明は、本明細書において例示した折り返しスロットループ型の共振構造体における使用に限定されるものではない。本発明は、互いに非平行である複数の面にそれぞれ配置された複数の部分を有する共振構造体を備えたアンテナに用いるのに特に好適であり、中でも、これら複数の部分のうちの1つまたは2つ以上が少なくとも1つのスロットを有する場合に特に好適であるが、これに限定はされるものではない。例えば、他に選択可能な実施の形態において、共振構造体は、典型的にはグランド面に対して離間配置されたパッチあるいはマイクロストリップ線状の共振体を備えていてもよい。更に、本明細書で説明した原理と技術は、磁界のモードが知られている他のほとんど対称な平面アンテナ構造体に適用することが可能である。
【0043】
本発明は、上記の実施の形態に限定されず、本発明の範囲から逸脱することなく、変形もしくは改変することができる。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】基板の外面を中心に折り曲げられた従来の平面アンテナを示す斜視図である。
【図2】非導電性または誘電性材料に埋め込まれた本発明のアンテナを示す斜視図である。
【図3】本発明の好適な実施の形態のアンテナの導電性部品を示す斜視図である。
【図4】非導電性または誘電性材料に埋め込まれた図3のアンテナを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
210…アンテナ、211…共振構造体、214…スロット、215…埋め込み部材、218…グランド面部分、232…中央部分、234,236…端部、260…ビア。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の平面に配置された第1の部分と、この第1の平面と非平行な平面に配置された少なくとも1つの第2の部分とを有する共振構造体を備えたアンテナであって、
前記共振構造体は、非導電性材料の中に埋め込まれ、
前記少なくとも1つの第2の部分は、少なくとも1つの導電性のビアを備えていることを特徴とするアンテナ。
【請求項2】
前記共振構造体は、第3の部分を有し、この第3の部分は、前記第1の部分から間隔を隔て、且つ前記第1の部分に対して実質的に平行に配置され、
前記少なくとも1つの第2の部分は、前記第1の部分と前記第3の部分との間に配置されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項3】
前記少なくとも1つの第2の部分は、前記第1の部分と前記第3の部分を互いに電気的に接続することを特徴とする請求項2記載のアンテナ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの第2の部分は、前記第1の部分と前記第3の部分の各端縁の間に延在することを特徴とする請求項2記載のアンテナ。
【請求項5】
前記第2の部分は、前記第1の部分に対して実質的に垂直であることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項6】
前記第1の部分は、導電性材料よりなる層または薄膜によって構成されることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項7】
前記第1の部分は、形状が実質的に矩形であることを特徴とする請求項6記載のアンテナ。
【請求項8】
前記第2の部分はそれぞれ、前記第1の部分における互いに反対側の2つの端縁に設けられることを特徴とする請求項7記載のアンテナ。
【請求項9】
前記第3の部分は、導電性材料よりなる層または薄膜によって構成されることを特徴とする請求項2記載のアンテナ。
【請求項10】
前記第2の部分は少なくとも2つのビアを備えていることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項11】
前記ビアのうちの少なくともいくつかは、互いに間隔を隔てて配置されていることを特徴とする請求項10記載のアンテナ。
【請求項12】
前記ビアのうちの少なくともいくつかは、互いに接触して並んでいることを特徴とする請求項10記載のアンテナ。
【請求項13】
前記ビアは一列に配列され、実質的に同一平面上に並んでいることを特徴とする請求項10記載のアンテナ。
【請求項14】
前記共振構造体は、複数の層からなる埋め込み部材の中に埋め込まれ、前記第1の平面は、前記複数の層に対して実質的に平行であり、前記少なくとも1つのビアは、前記埋め込み部材の少なくとも1つの層を貫通していることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項15】
前記埋め込み部材は、非導電性材料よりなる多層基板によって構成されていることを特徴とする請求項14記載のアンテナ。
【請求項16】
前記非導電性材料は、誘電材料よりなることを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項17】
前記非導電性材料は、高い透磁率を有することを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項18】
前記第1の部分は、導電性材料よりなる層または薄膜によって構成され、少なくとも1つのスロットを規定するような形状を有し、この少なくとも1つのスロットは、前記第1の部分と前記少なくとも1つの第2の部分の少なくとも1つとの境界に配置された開放端を有し、
前記少なくとも1つの第2の部分は、それぞれ、前記少なくとも1つのスロットの各端縁に合わせて配置されたビアを含み、各ビアは、互いの間に、前記少なくとも1つのスロットの前記開放端に実質的に合わせて配置された間隙を規定することを特徴とする請求項1記載のアンテナ。
【請求項19】
前記間隙は、前記少なくとも1つのスロットと実質的に同じ幅を有することを特徴とする請求項18記載のアンテナ。
【請求項20】
第1の平面に配置された第1の部分と、この第1の平面と非平行な平面に配置された少なくとも1つの第2の部分とを有する共振構造体を備えたアンテナの製造方法であって、 前記共振構造体を、非導電性材料よりなる複数の層に埋め込む工程と、
少なくとも1つの導電性のビアを、少なくとも1つの層に貫通させて形成することにより、前記少なくとも1つの第2の部分を形成する工程とを備えたことを特徴とするアンテナの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−259438(P2007−259438A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−64714(P2007−64714)
【出願日】平成19年3月14日(2007.3.14)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】