説明

埋込型デバイスのための生体分解性トリブロックコポリマー

本発明は、生体分解性、生体吸収性トリブロックコポリマーから作製されるポリマー材料、及びこのようなポリマー材料を含む埋込型デバイス(例えば、薬物送達性ステント)を対象とする。ポリマー材料は、また、少なくとも1種の治療用物質を含むことができる。ポリマー材料は、このような材料の、したがってこのような材料から形成される埋込型デバイスの力学的特性及び接着特性、分解、生体適合性及び薬物透過性を改善するように処方される。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[背景]
[発明の分野]
[0001]本発明は、生体分解性、生体吸収性トリブロックコポリマーから作製されるポリマー材料、及びこのようなポリマー材料を含む埋込型デバイス(例えば、薬物送達性ステント)を対象とする。
【0002】
[従来技術の説明]
[0002]血管形成術は、心臓疾患を治療するための周知の処置である。血管形成術に付随する問題には、内膜皮弁の形成、又はバルーンを収縮させた後に崩壊し、導管を閉塞することのある裂断動脈内層が含まれる。さらに、動脈の血栓症及び再狭窄が、血管形成術後の数カ月の間に発症する可能性があり、さらなる血管形成術の処置又は外科的バイパス手術が必要となることがある。「狭窄」は、身体内の通路又は開口部の直径の狭小化又は収縮を指し、「再狭窄」は、狭窄を明らかな成功を持って治療(バルーン血管形成術、ステント留置、又は弁形成術によるような)した後の、血管又は心臓弁における狭窄の再発を指す。
【0003】
[0003]ステントは、血管のアテローム硬化性狭窄の治療で使用されることが多い。動脈内層の崩壊による動脈の部分又は完全閉塞を低減するため、並びに血管系における血管形成術に続く血栓症及び再梗塞の可能性を低減するため、ステントを管腔内に埋め込んで、身体血管を補強し、且つ血管の開通性を維持することができる。「管腔」は、血管などの管状器官の空洞を指す。機械的介入として、ステントは、足場としての役割を務め、通路の、例えば、血管、尿管又は胆管の壁を物理的に開けて維持するために、且つ所望であれば、それらの壁を拡張するように機能する。
【0004】
[0004]ステントは、また、生物学的療法を提供するためのビヒクルとして使用される。生物学的療法は、ステントに薬剤を添加することによって達成できる。薬剤を添加されたステントは、治療用物質の疾患部位での局所投与を提供し、それによって、このような薬剤の全身性投与に付随する副作用を回避できる可能性がある。ステントに薬剤を添加する1つの方法は、ステントの表面に被覆されるポリマー性担体を利用して、そのポリマー中に治療用物質を含浸させることを含む。
【0005】
[0005]遅発性ステント血栓症は、薬物送達性ステントに対する懸念として現われている。遅発性ステント血栓症の発生率は、対応するベアメタルステントに比べ薬物送達性ステントでより高いと思われる。薬物送達性ステントでの遅発性血栓症の1つの潜在的原因は、ステント上のポリマー性被覆に対する慢性炎症性又は過敏性応答である。
【0006】
[0006]本発明は、遅発性ステント血栓症と取り組み、且つ他の有利な特色を提供する。
【0007】
[発明の概要]
[0007]本発明は、デバイスがそれらの機能をより効果的に遂行し、且つ有害効果を回避することを可能にする埋込型デバイス(例えば、ステント)に使用される生体分解性ポリマー材料を対象とする。ポリマー材料は、デバイスがそれらの意図した機能(例えば、血管開通性の維持及び薬物の局所的送達)を遂行した後に、完全に又は実質上完全に侵食されるように構成され、それによって、遅発性ステント血栓症などの有害効果を回避する。生体分解性ポリマー材料のその他の利点には、数ある中でも、良好な力学的特性(例えば、強度、剛性、靭性及び柔軟性)、薬物放出速度の調節、及び金属表面への高められた接着性が含まれる。
【0008】
[0008]本発明の一実施形態は、構造A−B−A’の生体分解性トリブロックコポリマーを含有する組成物を対象とし、ここで、
A及びA’ブロックは、各々独立に、体温より高いT又はTを有する硬質のブロックであり、
Bブロックは、A及びA’ブロックのT又はTより低いTを有する軟質のブロックであり、
A,B及びA’ブロックは、各々独立に、約1kDa〜約500kDaのポリマー数平均分子量(M)を有し、且つ
A及びA’ブロックは、同じ又は異なってもよい。
【0009】
[0009]別の実施形態において、硬質のA及びA’ブロックの引張弾性率は、独立に、約1,000MPaを超え、軟質のBブロックの引張弾性率は、約1,000MPa未満である。さらに別の実施形態において、A及びA’ブロックの重量分率は、トリブロックコポリマーの約1%〜約99%である。さらに別の実施形態において、A、B及びA’ブロックは、各々独立に、1〜4種の異なる種類のモノマーから構成されるポリマーを含み、ここで、それぞれの種類のモノマーは、約5〜約5,000個のモノマー単位を有する。
【0010】
[0010]ABA’型トリブロックコポリマーのさらなる実施形態において、
A及びA’ブロックは、各々独立に、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(GA−co−D,L−ラクチド)、ポリ(GA−co−L−ラクチド)、及びこれらの任意のモノマー配列変異体からなる群から選択されるポリマーを含み;且つ
Bブロックは、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(CL−co−GA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(TMC−co−GA)、ポリ(TMC−co−D,L−ラクチド)、ポリ(TMC−co−L−ラクチド)、ポリ(TMC−co−CL)、ポリ(TMC−co−D,L−ラクチド−co−GA)、ポリ(TMC−co−CL−co−GA)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(TMC−co−ジオキサノン)、ポリ(ジオキサノン−co−CL)、ポリ(ジオキサノン−co−D,L−ラクチド)、ポリ(ジオキサノン−co−L−ラクチド)、ポリ(ジオキサノン−co−GA)、ポリ(ジオキサノン−co−D,L−ラクチド−co−GA)、ポリケタール、及びこれらの任意のモノマー配列変異体からなる群から選択されるポリマーを含む。
【0011】
[0011]ある実施形態によれば、Bブロックのポリケタールポリマーは、構造
【化1】


を有し、式中、Rは、ポリ(カプロラクトン)ジオール、或いは置換されていてもよい脂肪族、へテロ脂肪族、環式脂肪族、ヘテロ環式脂肪族、芳香族若しくはヘテロ芳香族基、又はこれらの組合せを含む構造HO−R−OHのC〜C24ジオールであり、nは、約5〜約5,000の整数である。
【0012】
[0012]さらに別の実施形態では、少なくとも1つのジヒドロキシアリール基が、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合される。
【0013】
[0013]さらに別の実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも1種の生体適合性部分をさらに含む。
【0014】
[0014]さらなる実施形態において、組成物は、少なくとも1種のさらなる生物学的に吸収可能なポリマーをさらに含む。
【0015】
[0015]いくつかの実施形態において、組成物は、少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤をさらに含む。ある実施形態において、少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤は、抗増殖、抗悪性腫瘍、抗炎症、抗血小板、抗凝固、抗フィブリン、抗トロンビン、抗有糸分裂、抗生物質、抗アレルギー、及び抗酸化性物質からなる群から選択される。
【0016】
[0016]別の実施形態によれば、少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(ビオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス)、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬、これらのプロドラッグ、これらの共用薬(co−drug)、及びこれらの組合せからなる群から選択される。
【0017】
[0017]本発明の他の実施形態は、本発明組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む、被覆を対象とする。
【0018】
[0018]本発明のさらに他の実施形態は、本発明組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料から形成される埋込型デバイスを対象とする。ある実施形態において、該材料は、本発明の被覆に関する実施形態の任意の組合せを含み、埋込型デバイスを覆って堆積される。別の実施形態において、埋込型デバイスは、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード、電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、又は弁である。
【0019】
[0019]本発明のさらに他の実施形態は、本発明組成物に関する実施形態の任意の組合せを、A、B及びA’ブロックに対応するモノマーの開環重合により調製する方法を対象とする。
【0020】
[0020]本発明のさらなる実施形態は、埋込型デバイスの製作方法を対象とする。一実施形態において、該方法は、本発明組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料から埋込型デバイスを形成することを含む。別の実施形態において、該方法は、本発明の被覆に関する実施形態の任意の組合せを埋込型デバイスの少なくとも一部を覆って堆積させることを含む。いくつかの実施形態において、埋込型デバイスは、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード、電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、又は弁である。
【0021】
[0021]本発明のよりさらなる実施形態は、本発明の埋込型デバイスに関する実施形態の任意の組合せを患者に埋め込むことを含む、患者の状態又は障害の治療又は予防方法を対象とする。ある実施形態において、該状態又は障害は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈と人工移植片との吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、及び腫瘍性閉塞からなる群から選択される。
【0022】
[0022]本発明の各種実施形態を、以下でさらに詳細に説明する。
【0023】
[発明の詳細な説明]
用語及び定義
次の定義が適用される:
[0023]用語「生物学的に分解可能」(又は「生体分解性」)、「生物学的に侵食可能な」(又は「生体侵食性」)、「生物学的に吸収可能な」(又は「生体吸収性」)、及び「生物学的に再吸収可能な」(又は「生体再吸収性」)は、ポリマー及び被覆に関して、互換的に使用され、血液などの体液に曝露された場合に時間と共に完全に若しくは実質上完全に分解、溶解、及び/又は侵食され、且つ身体によって徐々に再吸収、吸収及び/又は排除され得る能力を有するか、或いはヒトの腎臓膜を通過できる断片(例えば、約40,000ダルトン(40kDa)以下の分子量を有する断片)に分解され得るポリマー及び被覆を指す。ポリマー又は被覆の破壊及び最終的な吸収及び排除の過程は、例えば、加水分解、代謝過程、酸化、酵素過程、全体又は表面侵食などによって引き起こされ得る。逆に、「生体安定性」ポリマー又は被覆は、生体分解性ではないポリマー又は被覆を指す。
【0024】
[0024]「生物学的に分解可能な」、「生物学的に侵食可能な」、「生物学的に吸収可能な」、及び「生物学的に再吸収可能な」ステント被覆又はこのようなステント被覆を形成するポリマーについて言及する場合には、分解、侵食、吸収、及び/又は再吸収の過程が、完了又は実質上完了した後に、被覆は、ステント上に残っていないか、実質上ほとんど残っていないと解される。用語「分解性」、「生体分解性」、又は「生物学的に分解可能な」が、本出願中で使用される場合、それらの用語は、広範に、生物学的に分解可能な、生物学的に侵食可能な、生物学的に吸収可能な、及び生物学的に再吸収可能なポリマー又は被覆を包含すると解釈される。
【0025】
[0025]「生体分解性」、「生体侵食性」、「生体吸収性」及び「生体再吸収性」は、生物学的に分解可能である、生物学的に侵食可能である、生物学的に吸収可能である、又は生物学的に再吸収可能である被覆又は該被覆を形成するポリマーの固有の特性として定義される。
【0026】
[0026]本明細書中で使用する場合、「生体適合性」部分は、組成物、材料、又はそれらを含む構造体の生物学的適合性を増強する能力を有する部分を指す。
【0027】
[0027]「生理学的状態」は、インプラントが曝露される動物(例えば、ヒト)の体内状態を指す。生理学的状態には、限定はされないが、ヒトの体温(ほぼ37℃)、並びに生理学的なイオン強度、pH及び酵素からなる水性環境が含まれる。
【0028】
[0028]血液に接触する埋込型デバイスの文脈で、「治癒促進性」の薬物又は薬剤は、動脈管腔の再内皮化を促進又は増強して、血管組織の治癒を促進する特性を有する薬物又は薬剤を指す。
【0029】
[0029]本明細書中で使用する場合、「共用薬」は、特定の薬理学的効果を達成するために、別の薬剤と同時に又は逐次的に投与される薬物である。該効果は、一般的又は特異的であってもよい。共用薬は、他方の薬物のそれと異なる効果を発揮するか、又は他方の薬物の効果を促進、増強するか、或いは相乗的に増強することができる。
【0030】
[0030]本明細書中で使用する場合、用語「プロドラッグ」は、化学的又は生物学的部分によって活性をより小さくされた薬剤を指し、それは、代謝されて又はインビボでの加水分解を受けて、薬物又はその活性成分を形成する。用語「プロドラッグ」は、「前駆薬剤(proagent)」、「潜在薬(latentiated drug)」、「生体可逆性(bioreversible)誘導体」、及び「同類物(congener)」などの用語と互換的に使用できる。N.J.Harper、「薬物の潜在化(Drug latentiation)」、Prog Drug Res.,4:221〜294(1962);E.B.Roche、「プロドラッグ及び類似体を介する生物薬理学的特性の設計(Design of Biopharmaceutical Properties through Prodrugs and Analogs)」、ワシントン,DC:米国薬剤師会(1977);A.A.Sinkula及びS.H.Yalkowsky、「生物学的可逆性薬物誘導体の設計に関する原理:プロドラッグ(Rationale for design of biologically reversible drug derivatives:prodrugs)」、J.Pharm.Sci.、64:181〜210(1975)。用語「プロドラッグ」の使用は、若干の著者は、活性薬物分子のいくつかの塩形態を特徴付けるためにもそれを使用するが、通常、薬物と化学部分との間の共有結合を暗示する。プロドラッグ自体の厳密な普遍的定義は存在せず、定義は、著者によって変わり得るが、プロドラッグは、一般に、インビボで酵素的又は非酵素的に、活性のある又はより活性のある、治療、予防又は診断上の効果を発揮する薬物分子に転化され得る、薬理学的により活性の小さい化学誘導体として定義できる。Sinkula及びYalkowsky、同上;V.J.Stellaら、「プロドラッグ:それらは臨床実践で利点を有するか(Prodrug:Do they have advantages in clinical practice?)」、Drugs,29:455〜473(1985)。
【0031】
[0031]用語「ブロックコポリマー」及び「グラフトコポリマー」は、国際純正応用化学連合(IUPAC)によって使用される用語法により定義される。「ブロックコポリマー」は、線状配列のブロックを含むコポリマーを指す。ブロックは、モノマー単位が、隣接部分には存在しない少なくとも1つの構成又は配置上の特徴を有する、ポリマー分子の一部分として定義される。「グラフトコポリマー」は、側鎖として主鎖に連結された1種又は複数種のブロックを有する高分子からなり、これらの側鎖が、主鎖中のそれとは異なる構成又は配置上の特徴を有するポリマーを指す。
【0032】
[0032]用語「ABA’型トリブロックコポリマー」は、一般式−{[A−]−[B]−[A’]}−に従って配列された部分A、B及びA’を有するブロックコポリマーと定義され、ここで、「m」、[n]、「p」及び「x」のそれぞれは、独立に、1以上の正の整数である。例えば、m、n、及びpのそれぞれは、独立に、1以上で且つ10,000以下であることができる。
【0033】
[0033]A、B及びA’ブロックの数を決定する整数の値は、個々のブロックが、通常、独自にポリマーと考えられるほど十分に長いことを保証するような値なので、ABA’型トリブロックコポリマーのブロックは、末端で連結される必要はない。したがって、ABA’型トリブロックコポリマーを、ポリA−ブロック−ポリB−ブロック−ポリA’ブロックコポリマーと命名できる。ブロックA、B及びA’は、交互に又はランダムに存在できる。
【0034】
[0034]本明細書中で使用する場合、指示された基体、例えば埋込型デバイスを「覆って堆積される」被覆として説明される材料は、該基体の表面の少なくとも一部を覆って直接又は間接的に堆積された材料からなる被覆を指す。直接堆積は、該被覆が、基体の曝露表面に直接的に塗布されることを意味する。間接堆積は、該被覆が、基体を覆って直接又は間接的に堆積させた介在層に塗布されることを意味する。
【0035】
[0035]本明細書中で使用する場合、「埋込型デバイス」は、動物に埋め込むことのできる任意のデバイスであることができる。埋込型デバイスの例には、限定はされないが、自己拡張型ステント、バルーン拡張型ステント、冠動脈ステント、末梢ステント、ステント−グラフト、カテーテル、各種の身体管腔及び開口部のためのその他の拡張型管状デバイス、グラフト、血管グラフト、動静脈グラフト、バイパスグラフト、ペースメーカー及び除細動器、前述のためのリード及び電極、人工心臓弁、吻合部クリップ、動脈閉鎖デバイス、卵円孔開存閉鎖デバイス、並びに脳脊髄液シャントが含まれる。ステントは、神経、頚動脈、静脈グラフト、冠動脈、大動脈、腎、腸骨、大腿、膝窩脈管構造を含む身体中の任意の血管、及び尿道通路に対して考えることができる。埋込型デバイスは、治療薬の局所送達のために設計することができる。薬剤を添加された埋込型デバイスは、デバイス又は基体を、治療薬を含む被覆材料で被覆して構築できる。デバイスの基体も、治療薬を含むことができる。埋込型デバイスは、部分的に又は完全に生体分解性/生体吸収性/生体侵食性ポリマー、生体安定性ポリマー、又はこれらの組合せを含む被覆を用いて製作できる。埋込型デバイス自体も、生体分解性/生体吸収性/生体侵食性ポリマー、生体安定性ポリマー、又はこれらの組合せから部分的に又は全体的に製作できる。
【0036】
[0036]「ガラス転移温度」Tは、ポリマーの非晶質領域が、大気圧で、脆いガラス状のガラス質状態から固体で変形可能な延性のあるゴム状状態に変化する温度である。換言すれば、Tは、ポリマー鎖中での部分的運動が始まる温度に相当する。非晶質又は半結晶性ポリマーを上昇していく温度に曝露すると、ポリマーの膨張率及び熱容量は、双方とも、温度が上昇するにつれて増加し、分子運動の増加を示す。温度を上昇させても、サンプル中の真の分子容積は一定のままであり、それゆえ、より大きな膨張係数は、系に付随する自由容積の増加及びそれによる分子が移動する自由度の増加を示している。増大する熱容量は、運動を介する熱散逸の増加に対応する。所定ポリマーのTは、加熱速度に依存することがあり、且つ該ポリマーの熱履歴の影響を受けることがある。さらに、ポリマーの化学構造が、鎖の可動性に影響を及ぼすことによって、ガラス転移に大きく影響する。
【0037】
[0037]「溶融温度」Tは、ポリマーの結晶性領域が、短期及び長期的秩序を失い、規則的で秩序立った鎖充填構造から非晶質ポリマーに似た無秩序構造に変化する温度である。ポリマー結晶相の消失は、ポリマーの物理的特性の変化を伴う。材料は、密度、屈折率、熱容量、透明度、及びその他の特性の非連続的変化を伴って、粘性のある固体になる。所定ポリマーのTは、限定された温度範囲にわたって現われる。転移の幅は、ポリマー結晶化の大きさ及び完成度、並びにそれらの均一性及び純度に左右される。熱分析技術によれば、半結晶性ポリマーのTは、加熱速度が正であるなら、吸熱転移である。ポリマー鎖が秩序立った反復構造中に充填される能力は、ポリマーの化学構造によって大きく影響される。
【0038】
[0038]「応力」は、ある平面内の小面積を通して作用する力の場合のような、単位面積当たりの力を指す。応力は、それぞれ法線応力及び剪断応力と呼ばれる、平面に対して垂直及び平行な成分に分割できる。真の応力は、力及び面積を同時に測定する場合の応力を意味する。引張り及び圧縮試験に適用されるような通常の応力は、最初のゲージ長さで除算された力である。
【0039】
[0039]「強度」は、材料が破断前に耐える、軸に沿った最大応力を指す。最大強度は、試験中に印加された最大負荷から最初の断面積で除算して計算される。
【0040】
[0040]「弾性率」は、材料に印加された応力又は単位面積当たりの力の成分を、印加された力に由来する印加された力の軸に沿った歪みで除算した比率として定義できる。例えば、材料は、引張り及び圧縮弾性率の双方を有する。比較的大きな弾性率の材料は、堅いか、或いは柔軟でない傾向がある。逆に、比較的小さな弾性率の材料は、柔軟である傾向がある。材料の弾性率は、分子の組成及び構造、材料の温度、変形量、及び歪み速度又は変形速度に依存する。例えば、そのT未満で、ポリマーは、大きな弾性率で砕けやすい傾向がある。ポリマーの温度をT未満からTを超えるまで上昇させるにつれて、その弾性率は低下する。
【0041】
[0041]「歪み」は、所定の応力又は負荷で材料中に発生する伸び又は圧縮の量を指す。
【0042】
[0042]「伸び」は、応力をかけた場合に発生する材料の長さの増加として定義できる。それは、典型的には、最初の長さのパーセンテージとして表現される。
【0043】
[0043]「靭性」は、破断前に吸収されるエネルギー量、又は等価的に、材料を破断するのに必要な仕事量である。靭性の1つの尺度は、無歪みから破断時歪みまでの応力−歪み曲線下面積である。したがって、脆い材料は、比較的低い靭性を有する。
【0044】
[0044]用語「アルキル」及び「脂肪族基」は、置換されていてもよい直鎖又は分枝の飽和又は不飽和の、O、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭化水素部分を指す。不飽和なら、該アルキル又は脂肪族基は、1つ又は複数の二重結合及び/又は1つ又は複数の三重結合を含むことができる。アルキル又は脂肪族基は、該化合物の残部へのその結合によって、一価(すなわち、−R)又は二価(すなわち、−R−)であり得る。アルキル及び脂肪族基の例には、限定はされないが、メチル、エチル、エチレニル、エチニル、n−プロピル、イソプロピル、プロペニル、プロピニル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ブテニル、ブチニル、n−ペンチル、イソペンチル、ペンテニル、及びペンチニルが含まれる。
【0045】
[0045]用語「ヘテロアルキル」及び「ヘテロ脂肪族基」は、炭化水素部分の主要部及び/又は分枝(複数可)中に、O、S及びNから選択される少なくとも1つのへテロ原子を含む、アルキル又は脂肪族基を指す。ヘテロアルキル及びヘテロ脂肪族基の例には、限定はされないが、アルコール、エーテル、オキソ化合物、ケトン、アルデヒド、エステル、カーボネート、チオエステル、チオール、スルフィド、スルホキシド、スルホン、スルホアミド、アミノ化合物、アミン、ニトリル、N−オキシド、イミン、オキシム、アミド、カルバメート、尿素、及びチオウレア類が含まれる。
【0046】
[0046]用語「シクロアルキル」及び「環式脂肪族基」は、置換されていてもよい飽和又は不飽和の単環又は多環式の、O、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよい、炭化水素部分を指す。不飽和なら、該シクロアルキル又は環式脂肪族基は、環状部分の1つ又は複数の環中に及び/又は環外に1つ又は複数の二重結合及び/又は1つ又は複数の三重結合を含むことができる。シクロアルキル又は環式脂肪族基は、該化合物の残部へのその結合によって、一価(すなわち、−Cyc)又は二価(すなわち、−Cyc−)でよい。シクロアルキル及び環式脂肪族基の例には、限定はされないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロペンテニル、シクロヘキシル、シクロヘキセニル、デカヒドロナフチル、及びオクタヒドロインジルが含まれる。
【0047】
[0047]用語「ヘテロシクロアルキル」及び「ヘテロ環式脂肪族基」は、環状部分中の少なくとも1つの環がO、S及びNから選択される1つ又は複数のへテロ原子を含む、シクロアルキル又は環式脂肪族基を指す。ヘテロシクロアルキル及びヘテロ環式脂肪族基の例には、限定はされないが、アジリジニル、オキシラニル、オキソラニル、チオラニル、ピロリジニル、3−ピロリニル、ジオキサラニル、1,3−ジチオラニル、オキサゾリジニル、イミダゾリジニル、オキサニル、ピペリジニル、ピペラジニル、1,3−ジオキサニル、1,4−ジオキサニル、モルホリニル、オクタヒドロインドリル、オクタヒドロイソインドリル、オクタヒドロベンゾフリル、オクタヒドロベンゾチオフェン、オクタヒドロクロメニル、及びデカヒドロキノリニルが含まれる。
【0048】
[0048]用語「アリール」及び「芳香族基」は、置換されていてもよい単環又は多環式の、該部分中の少なくとも1つの環が芳香族である、芳香族部分を指す。該部分中の環(複数可)は、炭素環式でもよく、或いはO、S及びNから選択される1つ又は複数のへテロ原子を含むことができる。該部分中の環(複数可)は、芳香族又は非芳香族(飽和又は不飽和の)でよいが、該部分中の少なくとも1つの環は芳香族である。アリール又は芳香族基は、該化合物の残部へのその結合によって、一価(すなわち、−Ar)又は二価(すなわち、−Ar−)でよい。アリール及び芳香族基の例には、限定はされないが、フェニル、インドリニル、イソインドリニル、2,3−ジヒドロベンゾフリル、2,3−ジヒドロベンゾチオフェン、クロマニル、1,2,3,4−テトラヒドロキノリニル、1,2,3,4−テトラヒドロイソキノリニル、ナフチル、インデニル、及びインダニルが含まれる。
【0049】
[0049]用語「ヘテロアリール」及び「ヘテロ芳香族基」は、芳香族部分中の少なくとも1つの環(芳香族又は非芳香族)がO、S及びNから選択される1つ又は複数のへテロ原子を含むアリール又は芳香族基を指す。ヘテロアリール及びヘテロ芳香族基には、限定はされないが、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、フリル、イソキサゾリル、オキサゾリル、チオフェニル、チアゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、テトラゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、1,3,5−トリアジニル、インドリル、イソインドリル、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、[1,7]ナフチリジニル、クロメニル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリニル、キナゾリニル、キノキサニリル、フタラジニル、プリニル、ピリダジニル、キノリニル、イミダゾ[4,5−c]ピリジニル、ピリド[2,3−d]ピリミジニル、ピリミド[3,2−c]ピリミジニル、及びピロロ[2,3−d]ピリミジニルが含まれる。
【0050】
[0050]アルキル、脂肪族、ヘテロアルキル、ヘテロ脂肪族、シクロアルキル、環式脂肪族、ヘテロシクロアルキル、ヘテロ環式脂肪族、アリール、芳香族、ヘテロアリール、及びヘテロ芳香族基は、置換又は非置換でよい。置換されているなら、それらの基は、1〜5個の置換基を含むことができる。置換基には、限定はされないが、置換されていてもよい炭素含有基、例えば、アルキル、シクロアルキル及びアリール(例えば、ベンジル);ハロゲン原子(すなわち、F、Cl、Br及びI)及び置換されていてもよいハロゲン含有基、例えば、ハロアルキル(例えば、トリフルオロメチル);置換されていてもよい酸素含有基、例えば、オキソ、アルコール(例えば、ヒドロキシル、ヒドロキシアルキル、アリール(ヒドロキシル)アルキル)、及びエーテル(例えば、アルコキシ、アリールオキシ、アルコキシアルキル、アリールオキシアルキル);置換されていてもよいカルボニル含有基、例えば、アルデヒド(例えば、カルボキサルデヒド)、ケトン(例えば、アルキルカルボニル、アルキルカルボニルアルキル、アリールカルボニル、アリールアルキルカルボニル、アリールカルボニルアルキル)、カルボキシ酸(例えば、カルボキシ、カルボキシアルキル)、エステル(例えば、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルキルカルボニルオキシ、アルキルカルボニルオキシアルキル)、カーボネート、チオエステル、アミド(例えば、アミノカルボニル、モノ−又はジアルキルアミノカルボニル、アミノカルボニルアルキル、モノ−又はジアルキルアミノカルボニルアルキル、アリールアミノカルボニル、アルキルアリールアミノカルボニル)、カーバメート(例えば、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ(arloxycarbonylamino)、アミノカルボニルオキシ、モノ−又はジアルキルアミノカルボニルオキシ、アリールアミノカルボニルオキシ、アルキルアリールアミノカルボニルオキシ)、及び尿素(例えば、モノ−又はジアルキルアミノカルボニルアミノ、アリールアミノカルボニルアミノ、アルキルアリールアミノカルボニルアミノ);置換されていてもよい基を含有するカルボニル誘導体、例えば、イミン、オキシム、及びチオ尿素;置換されていてもよい窒素を含有する基、例えば、アミン(例えば、アミノ、モノ−又はジアルキルアミノ、モノ−又はジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アミノアルキル、モノ−又はジアルキルアミノアルキル)、アジド、ニトリル(例えば、シアノ、シアノアルキル)及びニトロ;置換されていてもよい硫黄を含有する基、例えば、チオール、スルフィド、チオエーテル、スルホキシド、スルホン及びスルホンアミド(例えば、スルフヒドリル、アルキルチオ、アルキルスルフィニル、アルキルスルホニル、アルキルチオアルキル、アルキルスルフィニルアルキル、アルキルスルホニルアルキル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオアルキル、アリールスルフィニルアルキル、アリールスルホニルアルキル);並びにO、S及びNから選択される1つ又は複数のヘテロ原子を含む置換されていてもよい芳香族又は非芳香族複素環基(例えば、チエニル、フラニル、ピロリル、イミダゾリル、ピラゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、オキサゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、アジリジニル、アゼチジニル、ピロリジニル、ピロリニル、イミダゾリジニル、イミダゾリニル、ピラゾリジニル、テトラヒドロフラニル、ピラニル、ピロニル、ピリジル、ピラジニル、ピリダジニル、ピペリジル、ヘキサヒドロアゼピニル、ピペラジニル、モルホリニル、チアナフチル、ベンゾフラニル、イソベンゾフラニル、インドリル、オキシインドリル、イソインドリル、インダゾリル、インドリニル、7−アザインドリル、ベンゾピラニル、クマリニル、イソクマリニル、キノリニル、イソキノリニル、ナフチリジニル、シンノリニル、キナゾリニル、ピリドピリジル、ベンゾキサジニル、キノキサリニル、クロメニル、クロマニル、イソクロマニル、フタラジニル、カルボリニル)が含まれる。
【0051】
[発明の実施形態]
組成物及びポリマー
[0051]本発明の実施形態は、埋込型デバイスを作製するのに使用される通常の生体分解性ポリマーに優る一定の利点を所持するように設計される。ポリマーの分解速度は、該ポリマーの「硬質」及び「軟質」ブロックのためのモノマー類及びそれらの比率を適切に選択することによって、増大させることができる。体温を超える「硬質」ブロックの比較的高いT又はTは、ポリマーの強度及び剛性を高める。さらに、ポリマーの破断靭性、柔軟性及び薬物透過性は、硬質ブロックのポリマーと一緒に、硬質ブロックのポリマーのT又はTより低いTを有する「軟質」ブロックのポリマーを組み込むことによって増大させることができる。硬質及び/又は軟質ブロックは、それぞれ軟質及び/又は硬質ブロックのポリマーと混和性又は非混和性でよい別のポリマーを含むことができる。最終的に、金属表面へのポリマー性被覆の接着は、ポリマーの適切な(例えば、化学的)改変によって促進できる。このような改変は、薬物リザーバーとして使用できる、下塗りを使用しない単一ポリマーにつながる可能性がある。
【0052】
[0052]したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の一実施形態は、構造A−B−A’の生体分解性トリブロックコポリマーを含有する組成物を対象とし、ここで、
A及びA’ブロックは、各々独立に、体温より高いT又はTを有する硬質のブロックであり、
Bブロックは、A及びA’ブロックのT又はTより低いTを有する軟質のブロックであり、
A、B及びA’ブロックは、各々独立に、約1kDa〜約500kDのポリマー数平均分子量(M)を有し、且つ
A及びA’ブロックは、同じ又は異なってもよい。
【0053】
[0053]一実施形態において、A及びA’ブロックは、各々独立に、A及びA’ブロックが水和されると、体温より高いT又はTを有し、Bブロックは、Bブロックが水和されると、A及びA’ブロックのT又はTより低いTを有する。別の実施形態において、A及びA’ブロックは、各々独立に、A及びA’ブロックが水和されないと、体温より高いT又はTを有し、Bブロックは、Bブロックが水和されないと、A及びA’ブロックのT又はTより低いTを有する。
【0054】
[0054]トリブロックコポリー中のA及びA’ブロックは、互いに同じ又は異なってよい。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい実施形態において、AとA’ブロックとは、同じである。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい別の実施形態において、AとA’ブロックとは、異なる。
【0055】
[0055]BブロックはA及びA’ブロックと混和性であっても、そうでなくてもよい。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい一実施形態において、Bブロックは、A及びA’ブロックと部分的に又は完全に混和性である。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい別の実施形態において、Bブロックは、A及びA’ブロックと部分的に又は完全に非混和性である。
【0056】
[0056]強度及び剛性を備えるために、硬質のA及びA’ブロックは、それらのT又はTが体温より高いように処方される。A及びA’ブロックのT又はTは、成分モノマー類の適切な選択及びそれらの比率及び数の調節によって所望の値に調整することができる。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、A及びA’ブロックのT又はTは、独立に、約35℃〜約300℃、約40℃〜約250℃、約50℃〜約200℃、約60℃〜約150℃、又は約70℃〜約100℃の範囲である。
【0057】
[0057]高い剛性及び強度は、ポリマー材料で製作された埋込型デバイスにとって、例えば、ステントにとって、該ステントが血管壁を支持できるために、重要であることがある。さらに、後でさらに説明するように、トリブロックコポリマーの分解速度を、A及びA’ブロックを適切なモノマー(複数可)からなるポリマー、例えば、ポリ(グリコリド)(PGA)又はグリコリド含有コポリマーとして処方することによって増大させることができる。
【0058】
[0058]いくつかの従来型ポリマーは、例えばステントへの応用で使用するのに所望されるよりも、より低い靭性及び柔軟性を有することがある。例えば、いくつかのガラス状の半結晶性ポリマーは、体温より高いTを有し、低い伸びを示し、生理学的状態下で脆い傾向がある。「ガラス状」は、脆い破断機構を示し、破損前の可塑性変形がわずかであるか全くないポリマーを指す。結果として、このようなポリマーから製作されたステント被覆は、重複ステント、ステント経由ステント送達(stent through stent delivery)、及び分岐などの被覆ステントの果敢な応用領域に対して、靭性及び柔軟性が不足していることがある。
【0059】
[0059]いくつかの従来型ポリマーは、また、薬物放出を制御できないことがある。低い薬物透過性を有するポリマーの場合、薬物を放出するために高い薬物/ポリマー比を採用しなければならない。しかし、高い薬物/ポリマー比は、ほとんどの薬物が一気に放出される薬物放出プロフィールにつながり、残りの部分の薬物は、極めてゆっくりと放出される。一方、低い薬物/ポリマー比は、全く薬物放出をもたらさない。
【0060】
[0060]破断靭性及び柔軟性を増すために、且つ薬物放出制御を改善するために、本発明のトリブロックコポリマーのBブロックは、硬質のA及びA’ブロックのT又はTより低いTを有するように処方される。BブロックのTは、成分モノマー類の適切な選択及びそれらの比率及び数の調節によって所望の値に調整することができる。いくつかの実施形態において、Bブロックは、体温より低いTを有する。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、さらなる実施形態において、BブロックのTは、約−70℃〜約150℃、約−50℃〜約100℃、約−25℃〜約75℃、又は約0℃〜約50℃の範囲である。いくつかの事例において、Bブロックは、TではなくTを有することがあり、本発明の範囲は、BブロックがTではなくTを有する事例を包含すると解されたい。
【0061】
[0061]軟質のブロックは、生理学的状態で、硬質のブロックに比べてより大きな柔軟性、より低い弾性率、及びより高い破断靭性を有することができる。デバイスを応力下においた場合、軟質のブロックは、破断がデバイスを通して伝播する際にエネルギーを吸収する傾向ある。次いで、硬質のブロックを通る亀裂の伝播を、低減又は抑制することができる。結果として、ポリマー材料の破断靭性、及びかくしてそれを用いて製作されるデバイスの破断靭性を高める傾向がある。
【0062】
[0062]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい一実施形態において、硬質のA及びA’ブロックの引張弾性率は、独立に、約1,000MPaを超え、軟質のBブロックの引張弾性率は、約1,000MPa未満である。より狭い実施形態において、硬質のA及びA’ブロックの引張弾性率は、独立に、約1,500MPaを超え、軟質のBブロックの引張弾性率は、約750MPa未満である。さらに狭い実施形態において、硬質のA及びA’ブロックの引張弾性率は、独立に、約2,000MPaを超え、軟質のBブロックの引張弾性率は、約500MPa未満である。
【0063】
[0063]トリブロックコポリマーの軟質Bブロックは、ゴム状又はエラストマー性ポリマーから構成できる。「エラストマー性」又は「ゴム状」ポリマーは、変形範囲のすべて又はほとんどを通して弾性変形を示すポリマーを指す。軟質のBブロックは、また、実質的に又は完全に非晶質でよい。例えば、Bブロックは、約10%以下の結晶化度を有する。
【0064】
[0064]体温で比較的大きな破断靭性を有する生体分解性ポリマーの例には、限定はされないが、ポリカプロラクトン(PCL)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリジオキサノン、ポリ(プロピオラクトン)、ポリ(バレロラクトン)、及びポリアセタールが含まれる。したがって、トリブロックコポリマーの軟質Bブロックに関するいくつかの実施形態は、カプロラクトン(CL)、炭酸トリメチレン(TMC)、ジオキサノン、プロピオラクトン、バレロラクトン、又はアセタールのモノマー単位、或いはこれらの組合せを含むことができる。
【0065】
[0065]ポリマー鎖内で、硬質ブロックは、共有結合を介して軟質ブロックにつなぎ留められる。A、A’及びBブロックが、ある程度の非混和性を有する系では、軟質ブロック又は硬質ブロックに富む異質の領域が、全体のポリマー内で形成される。これらの領域は、それらの領域が共有するポリマー鎖を介して互いに結合される。それゆえ、硬質及び軟質ブロックの間には良好な接着が存在する。共有結合によって提供される高度の接着は、硬質及び軟質ブロックの間のエネルギー伝達を容易にし、かくして、トリブロックコポリマーの破断靭性を高める、共有結合によって提供される。共有結合によって提供されるつなぎ留め又は接着がないと、伝播する亀裂は、軟質ブロックの周りを取り巻き、デバイスに与えられるエネルギーを吸収する上での軟質ブロックの有効性を低下させる可能性があると考えられる。
【0066】
[0066]硬質及び軟質ブロックが相分離すると、種々の組織形態が形成される可能性がある。形成される具体的組織形態は、硬質及び軟質ブロックの相対量、並びにそれらの化学的性質に依存する。一般に、軟質ブロックが、該ポリマーの小さな容積分率を構成するなら、該軟質ブロックは、硬質ブロックからなる連続相(複数可)中の分散相として存在する傾向がある。硬質ブロックが、小さな容積分率を構成するなら、該硬質ブロックは、軟質ブロックからなる連続相中の分散相として存在する傾向がある。軟質ブロックの硬質ブロックに対する比率の変化は、ポリマー材料の特性、例えば、該材料の薬物透過性及び薬物放出速度を調節/修正することを可能にする。
【0067】
[0067]トリブロックコポリマーの分解速度は、硬質及び軟質ブロックの物理的状態によって変えることができる。非晶質構造を通過する流体の拡散速度は、一般に、結晶性構造を通過するよりも速いので、硬質及び/又は軟質のブロックは、分解速度を速めるために、より大きな非晶質度を提示することができる。より速やかに分解する硬質/及び軟質ブロックは、水の浸透及びそれらのブロック中での容積を増加させる。増加した水の浸透及び容積は、ポリマー材料、したがってデバイスの分解速度の増加を引き起こす。
【0068】
[0068]トリブロックコポリマーの分解速度は、また、硬質及び軟質ブロックを構成するモノマー単位の個性によって変えることができる。例えば、硬質ブロック及び/又は軟質ブロックは、親水性の及び/又は加水分解活性のある単位を含むことができる。これらの2つの特徴は、ポリマー材料の水分含有量を高め、このことが、該ポリマーの分解速度を増加させる。さらに、硬質ブロック及び/軟質ブロックは、酸性又は親水性の分解生成物を有する単位を含むこともできる。加水分解反応の速度は、pHが低下するにつれて増加する傾向があるので、酸性の分解生成物は、ポリマー材料の、それゆえデバイスの分解速度を増加させることができる。
【0069】
[0069]実例として、より速やかに分解するポリマーは、グリコリド(GA)モノマーを含むことができる。ポリマー中に組み込まれると、グリコール酸から形成されるエステル結合は、乳酸から形成される結合と比べて立体障害が少ないので、グリコール酸は、L−乳酸又はD−乳酸に比べてより急速に加水分解する。さらに、グリコリド単位は、グリコリドを含有するポリマー材料の分解速度を増加させることのできる酸性分解生成物を有する。さらに、グリコール酸は、低分子量のモノマーであり、その結果、検知できる程のグリコール酸は、グリコリド含有ポリマー中にグリコール酸から形成されるかなりの数のエステル結合が存在し、そのいずれか又はすべてが加水分解できることを意味する。例えば、ポリ(グリコリド−co−トリメチレンカーボネート)(P(GA−co−TMC))は、急速に分解するポリマーである。
【0070】
[0070]いくつかの実施形態において、軟質のBブロックは、靭性増強単位及び急速分解単位を含むことができる。より具体的な実施形態において、軟質のブロックは、GA、CL、TMC、バレロラクトン、プロピオラクトン、又はアセタール単位、或いはこれらの組合せを含むことができる。Bブロックは、交互に又はランダムに、GA、CL、TMC、バレロラクトン、プロピオラクトン、及びアセタール単位を有することができる。例えば、Bブロックは、ポリ(GA−co−CL)、ポリ(GA−co−TMC)、又はポリ(GA−co−TMC−co−CL)でもよい。
【0071】
[0071]軟質Bブロックの柔軟性、靭性及び分解速度は、急速分解及び靭性増強単位の比率によって調整することもできる。例えば、ポリ(GA−co−CL)中でのCLの比率が増大するにつれて、該ブロックコポリマーは、より柔軟で強靭になる。
【0072】
[0072]さらに、Bブロック中でのGA分率を増加させることによって、Bブロックの分解速度、それゆえポリマー材料の分解速度を増加させることができる。例示的実施形態において、ポリ(GA−co−CL)又はポリ(GA−co−TMC)部分は、1質量%、5質量%、20質量%、50質量%、70質量%又は80質量%を超えるGA単位を有することができる。
【0073】
[0073]本発明のトリブロックコポリマーの力学的特性(例えば、剛性、強度、靭性及び柔軟性)、分解速度、及び薬物透過性は、硬質及び軟質ブロックのモノマー単位、ブロック内でのモノマー比率、ブロックの長さ又は分子量、ブロックの重量比、並びにトリブロックコポリマーを用いて化学的又は非化学的に組み込まれる任意のその他の物質を適切に選択することによって調整することができる。
【0074】
[0074]フィルムを形成するには、全体のポリマーが、十分な分子量を有する必要がある。したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、トリブロックコポリマーは、少なくとも約20kDaのポリマー数平均分子量(M)を有する。他の実施形態において、トリブロックコポリマーは、少なくとも約40kDaのMを有する。
【0075】
[0075]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい実施形態において、トリブロックコポリマーは、Mが約20kDa〜約1,000kDaの範囲に及ぶ。別の実施形態において、トリブロックコポリマーは、Mが約20kDa〜約500kDaの範囲に及ぶ。約20kDa〜約500kDaのMを有するポリマーは、より被覆に加工し易い可能性がある。さらに別の実施形態において、トリブロックコポリマーは、Mが約40kDa〜約500kDaの範囲に及ぶ。
【0076】
[0076]非混和系の徴候を示す不連続相を形成するためのブロックの場合、それらのブロックは一定の最低限の大きさを有する必要がある。2相系形態の場合、それぞれの相は、他方の相で飽和されるが、これらの飽和濃度は極めて小さい可能性がある。したがって、いくつかの実施形態において、A、A’及びBブロックは、各々独立に、少なくとも約1kDaのMを有する。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、A、A’及びBブロックは、各々独立に、Mが約1kDa〜約500kDa、約10kDa〜約400kDa、約20kDa〜約300kDa、約30kDa〜約200kDa、又は約40kDa〜約100kDaの範囲に及ぶ。
【0077】
[0077]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、さらなる実施形態において、Bブロックに対するA及びA’ブロックのそれぞれの分子量比は、約20:1〜1:20、より狭くは約10:1〜約1:10、さらにより狭くは約5:1〜約1:5である。
【0078】
[0078]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、他の実施形態において、トリブロックコポリマー全体に対するA及びA’ブロックの重量分率は、約1%〜約99%、より狭くは約10%〜約90%、さらにより狭くは約20%〜約80%、なおさらにより狭くは約30%〜約70%、なおさらより狭くは約40%〜約60%である。さらに他の実施形態において、トリブロックコポリマーは、約1〜30質量%、又はより狭くは約2〜20質量%のBブロック、及び約77〜99質量%、又は80〜98質量%のA及びA’ブロックを含むことができる。
【0079】
[0079]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、さらなる他の実施形態において、A、B及びA’ブロックは、各々独立に、1〜4種の異なる種類のモノマーから構成されるポリマーを含み、それぞれの種類のモノマーは、約5〜約5,000個のモノマー単位を有する。より狭い実施形態において、A、B又はA’ブロックのポリマー中の、それぞれの種類のモノマーは、独立に、約10〜約4,500個のモノマー単位、約20〜約4,000個のモノマー単位、約30〜3,500個のモノマー単位、約40〜約3,000個のモノマー単位、又は約50〜約2,500個のモノマー単位を有する。
【0080】
[0080]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明のさらなる実施形態によれば、
A及びA’ブロックは、各々独立に、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(GA−co−D,L−ラクチド)、ポリ(GA−co−L−ラクチド)、及びこれらの任意のモノマー配列変異体からなる群から選択されるポリマーを含み、且つ
Bブロックは、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(CL−co−GA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(TMC−co−GA)、ポリ(TMC−co−D,L−ラクチド)、ポリ(TMC−co−L−ラクチド)、ポリ(TMC−co−CL)、ポリ(TMC−co−D,L−ラクチド−co−GA)、ポリ(TMC−co−CL−co−GA)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(TMC−co−ジオキサノン)、ポリ(ジオキサノン−co−CL)、ポリ(ジオキサノン−co−D,L−ラクチド)、ポリ(ジオキサノン−co−L−ラクチド)、ポリ(ジオキサノン−co−GA)、ポリ(ジオキサノン−co−D,L−ラクチド−co−GA)、ポリケタール、及びこれらの任意のモノマー配列変異体からなる群から選択されるポリマーを含む。
【0081】
[0081]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、A、A’及びBブロックは、明確に、前述のポリマーのいずれか1種又は複数を含むことができない。
【0082】
[0082]A及びA’ブロックは、急速な分解を達成するために、PGA又はグリコリドを含有するコポリマーを含むことができる。強度及び靭性を提供するために、硬質のA及びA’ブロックは、それらのT又はTが体温より高いように処方される。いくつかの実施形態において、A及び/又はA’ブロックが、ポリ(L−ラクチド)又はポリ(D,L−ラクチド)を含むなら、Bブロックは、グリコリドを含有するポリマーを含む。
【0083】
[0083]破断靭性、柔軟性及び薬物透過性を高めるために、Bブロックは、A及びA’ブロックのT又はTより低いTを有するように処方される。いくつかの実施形態において、Bブロックは、体温より低いTを有する。例えば、ポリ(TMC)は、−15℃のTを有し、ポリ(ジオキサノン)は、−10℃〜0℃のTを有する。Bブロックは、A及びA’ブロックと混和性又は非混和性であるように処方できる。いくつかの実施形態において、Bブロックは、A及びA’ブロックと非混和性である。
【0084】
[0084]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい実施形態において、Bブロックのポリケタールポリマーは、
【化2】


の構造を有する。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、一実施形態によれば、Rは、ポリ(カプロラクトン)ジオール、或いは置換されていてもよい、脂肪族、ヘテロ脂肪族、環式脂肪族、ヘテロ環式脂肪族、芳香族、又はヘテロ芳香族基、或いはこれらの組合せを含む構造HO−R−OHのC〜C24ジオールであり、nは、約5〜約5,000の整数である。
【0085】
[0085]より狭い実施形態において、ポリケタールポリマーについてのnは、約10〜約4,500、約20〜約4,000、約30〜約3,500、約40〜約3,000、又は約50〜約2,500の整数である。
【0086】
[0086]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい実施形態において、ポリケタールポリマーは、約0.5kDa〜約500kDaのポリマー数平均分子量(M)を有する。より狭い実施形態において、ポリケタールポリマーは、約1kDa〜約500kDa、約10kDa〜約400kDa、約20kDa〜約300kDa、約30kDa〜約200kDa、又は約40kDa〜約100kDaの範囲のMを有する。
【0087】
[0087]さらなる実施形態において、Rは、ポリ(カプロラクトン)ジオールである。他の実施形態において、Rは、C〜C24ジオール、より狭くはC〜C16ジオール、さらにより狭くはC〜Cジオールである。
【0088】
[0088]当業者は、前に示した「脂肪族」、「ヘテロ脂肪族」、「環式脂肪族」、「ヘテロ環式脂肪族」、「芳香族」及び「ヘテロ芳香族」の定義に照らして、Rの構造的本質を理解するであろう。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、Rジオールは、明確に、本明細書中で定義されるようなRジオールの部類内に含まれる各種ジオールの任意の特定ジオールであり得ない。特定の実施形態において、Rジオールは、明確に、ポリ(カプロラクトン)ジオールであり得ない。
【0089】
[0089]Bブロックのポリケタールポリマーは、それを本発明の生体分解性トリブロックコポリマーの適切な成分にする特性を所持する。ポリケタールポリマー骨格中のケタール結合は、酸で触媒される急速な加水分解を受ける。分解生成物であるC〜C24のHO−R−OH及びアセトンは、多くの場合、水溶性であり且つ酸性ではない、低分子量の排泄可能な化合物である。したがって、ポリケタールポリマーは、酸性環境中で、組み込まれた薬物を加速された速度で放出すると予想される、酸に敏感な生体分解性ポリマーである。ポリケタールポリマーは、いくつかのポリマー(例えば、PLGA)に比べてより急速に分解できるが、他のポリマー(例えば、ポリ(オルトエステル)及びポリ(β−アミノエステル))に比べてより徐々に分解することができ、それによって、薬物放出速度を個々の応用に向けて調整することを可能にする。
【0090】
[0090]異なるR基を選択すると、異なるTを有するポリケタールポリマーが得られ、かくして、該ポリマーの柔軟性及び靭性を調整することが可能になる。さらに、それらの親油性及び立体的大きさを異にする別のR基を選択すると、疎水性/親水性、及びケタール結合周辺の立体障害を異にするポリケタールポリマーが生じる。このことは、ポリケタールポリマーを含むトリブロックコポリマーの分解速度及び薬物放出速度に影響を及ぼす。
【0091】
[0091]ポリ(カプロラクトン)は、約−60℃のTを有する柔軟性のあるポリマーでよい(PCLのT/Tは、例えばその分子量によって調整できる)。PCLは、また、より緩慢に、例えば約1〜2年で分解するように調整できる。したがって、Rジオールとしてポリ(カプロラクトン)ジオールを使用すると、芳香族Rジオール(例えば、1,4−ベンゼンジメタノール)をベースにしたポリケタールに比べてより軟質でより柔軟ではあるが、より緩慢に分解するポリケタールが生じる。
【0092】
[0092]ポリケタールポリマーは、当技術分野で周知の各種方法のいずれかで合成できる。例えば、ポリケタールポリマーは、ジオールHO−R−OHと、アセトン又は2,2−ジメトキシプロパンなどのアセトン供給源との酸で触媒される重縮合によって合成できる。合成は、過剰のジオールの存在下で実施することができ、過剰のジオールは、開環重合によるBブロックの他部分の成長を、又はA及びA’ブロックの成長を開始するのに使用できるヒドロキシルで終結されたポリマーをもたらす。
【0093】
[0093]本発明のA−B−A’型トリブロックコポリマー(例えば、ポリ(GA−ran−LLA)−ブロック−ポリ(TMC)−ブロック−ポリ(GA−ran−LLA))の従来型生体分解性ポリマーに優る利点には、限定はされないが、
・本発明のトリブロックコポリマー(例えば、グリコリドを含有するポリマー)の分解速度を、該ポリマーが、所望の期間(例えば、1年以下)の間に完全に又は実質上完全に分解するように調整できること;
・トリブロック構造は、A、B及びA’ブロックの適切なモノマー成分を選択すること、並びにブロックの分子量及びブロック内でのモノマー類の相対比を変化させることによって、トリブロックポリマーの力学的特性(例えば、強度、剛性、靭性、柔軟性及び伸び)の程度調整を可能にすることができること;
・軟質のBブロックは、A及びA’ブロックのT又はTより低いTgを有し、該Bブロックは、A及びA’ブロックに比べてより高い薬物透過性を提供できる。したがって、本発明のトリブロックコポリマーは、A及びA’ブロックのみから形成されるポリマー、例えば、純粋なポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)に比べてより高い薬物透過性を有することができる。より高い薬物透過性は、例えば、ポリマー量が50重量%を超える無理のない薬物対ポリマー比で、薬物放出の良好な制御を可能にすることができること;が含まれる。
【0094】
[0094]本発明のトリブロックコポリマーのさらなる利点は、最終的な滅菌技術とそれらのポリマーとの適合性である。最終的な各種滅菌方法は、薬物送達ステントなどの埋込型デバイスを滅菌するのに利用できる。電子ビーム及びガンマ照射などの多くのこれらの方法は、薬物の分解を引き起こすことがある。エチレンオキシドガス(EOG)は、薬物分解を引き起こすことが少ない傾向にある。しかし、EOG滅菌中に、薬物送達性被覆は、熱、湿度及びEOGの組合せに曝露される。多くの従来型生体分解性ポリマーを用いると、このような諸条件の組合せは、被覆を軟化し、被覆の流動及び変形につながる。いくつかの生体分解性ポリマー性被覆と異なり、本発明のトリブロックコポリマーは、EOG滅菌と適合性がある。
【0095】
[0095]いくつかのポリマーは、また、金属表面に接着できない。金属表面に対してなんらかの固有の接着性を有さないポリマーの場合、その純粋なポリマーの下塗りを使用して、金属ステントに対する最適な接着を達成しなければならない。
【0096】
[0096]本発明のトリブロックコポリマーは、金属表面に対するそれらの接着性を改善する特性を有する。例えば、より低いTを有するBブロックは、体温で金属表面と有利に相互作用すると予想される。さらに、硬質のA及びA’と軟質のBブロックとの異なる極性は、金属表面との有利な非共有性接着相互作用の機会を高める。
【0097】
[0097]金属表面に対するトリブロックコポリマーの接着性を改善するために、少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合させることができる。ジヒドロキシアリール基(複数可)は、ジヒドロキシフェニル部分を含むことができる。3,4−ジヒドロキシフェニルアラニン中のo−ジヒドロキシフェニル基は、ムラサキイガイ接着タンパク質が様々な金属基体に結合する原因であることが示されている。B.P.Leeら、Biomacromolecules,3:1038〜1047(2002)。トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合させ、金属表面に対するそれらコポリマーの接着性を高めることのできる、その他の3,4−ジヒドロキシフェニル含有化合物には、例えば、ドーパミン及び3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸が含まれる。
【0098】
[0098]したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、少なくとも1つのジヒドロキシアリール基は、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合される。ある実施形態において、少なくとも1つのジヒドロキシアリール基は、o−ジヒドロキシフェニル部分を含む。一実施形態において、少なくとも1つのジヒドロキシアリール基は、1,2−ジヒドロキシフェニル部分を含む。別の実施形態において、少なくとも1つのジヒドロキシアリール基は、3,4−ジヒドロキシフェニル部分を含む。トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合できる3,4−ジヒドロキシフェニル含有化合物には、例えばドーパミン及び3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸が含まれる。
【0099】
生体適合性部分
[0099]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の別の実施形態は、本発明のA−B−A’型トリブロックコポリマー及び少なくとも1種の生物学的に適合性のある(又は生体適合性)部分を含む組成物に関する。少なくとも1種の生体適合性部分は、トリブロックコポリマーとブレンド又は結合することができる。トリブロックコポリマーと結合するなら、生体適合性部分は、A、B及び/又はA’ブロック中に含めることができ、生物学的、例えば血液適合性を有するABA’型トリブロックコポリマーを提供する。生体適合性部分は、すべてのABA’型トリブロックコポリマーを生物学的に分解可能にするように選択することができる。
【0100】
[0100]適切な生体適合性部分の例には、限定はされないが、ポリ(アルキレングリコール)、例えば、ポリ(エチレングリコール)(PEG)、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレングリコール)(PPG),ポリ(テトラメチレングリコール)及びポリ(エチレンオキシド−co−プロピレンオキシド);ラクトン及びラクチド、例えば、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン及びグリコリド;ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリ(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)及びその塩(AMPS及びその塩);ポリ(スチレンスルホネート);スルホン化デキストラン;ポリホスファゼン;ポリ(オルトエステル);ポリ(チロシンカーボネート);シアル酸;ヒアルロン酸;ステアロイル又はパルミトイル置換基を有するヒアルロン酸;PEGとヒアルロン酸、ヒアルロン酸ステアロイル又はヒアルロン酸パルミトイルとのコポリマー;ヘパリン;PEGとヘパリンのコポリマー;ポリ(L−リシン)とPEGとのグラフトコポリマー;或いはこれらのコポリマーが含まれる。生体適合性ポリマー部分の分子量は、化合物の腎クリアランスを保証するために40kDa未満、例えば、約300〜約40,000ダルトン、又は約8,000〜約30,000ダルトン、例えば約15,000ダルトンでよい。
【0101】
[0101]したがって、一実施形態において、少なくとも1種の生体適合性部分は、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリエチレンオキシド−co−プロピレンオキシド)、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)及びその塩、ポリ(スチレンスルホネート)、スルホン化デキストラン、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(チロシンカーボネート)、シアル酸、ヒアルロン酸又はその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とヒアルロン酸又はその誘導体とのコポリマー、ヘパリン、ポリエチレングリコールとヘパリンのコポリマー、ポリ(L−リシン)とポリ(エチレングリコール)とのグラフトコポリマー、或いはこれらのコポリマーから選択される。
【0102】
[0102]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、少なくとも1つの生体適合性部分は、明確に、本明細書に記載の生体適合性部分のいずれか1つ又は複数であり得ない。
【0103】
生物学的に吸収可能なポリマー
[0103]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、さらに別の実施形態は、本発明のA−B−A’型トリブロックコポリマー及び少なくとも1種のさらなる生物学的に吸収可能なポリマーを含有する組成物を対象とする。少なくとも1種のさらなる生体吸収性ポリマーは、該組成物に所望の特性を付与することができる。このようなポリマーは、トリブロックコポリマーとブレンド又は結合することができる。
【0104】
[0104]生物学的に吸収可能なポリマーの例には、限定はされないが、
(1)ポリ(ヒドロキシブチレート)(PHB)
(2)ポリ(ヒドロキシバレレート)(PHV)
(3)ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)(PHB−HV)
(4)ポリ(カプロラクトン)(PCL)
(5)ポリ(ラクチド−co−グリコリド)(PLGA)
(6)PEGとポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT)とのABA型トリブロックコポリマー、例えば、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)(PEG−PBT)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)(PEG−PBT−PEG)、及びポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)(PBT−PEG−PBT)、並びに
(7)PEGとPCLとのABA型トリブロックコポリマー、例えば、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)(PEG−PCL)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)(PEG−PCL−PEG)、及びポリ(カプロラクトン)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)(PCL−PEG−PCL)が含まれる。
【0105】
[0105]上記の群(1)〜(7)の生体吸収性ポリマーの任意の組合せを使用することもできる。PEG−PBT及びPEG−PBT−PEG型ブロックコポリマーはポリアクティブ(POLYACTIVE)(商標)の商品名で知られており、オランダのIsoTis Corp.社から入手できる。これらのポリマーは、ジブチレンテレフタレートとPEGとのエステル交換によって得ることができる。ポリアクティブ(商標)において、エチレングリコールに由来する単位とブチレンテレフタレートに由来する単位との比率は、約0.67:1〜約9:1でよい。エチレングリコールに由来する単位の分子量は、約300〜約4,000ダルトンでよく、ブチレンテレフタレートに由来する単位の分子量は、約50,000〜約250,000、例えば100,000ダルトンでよい。
【0106】
[0106]DLPLA−PEG−DLPLA、PEG−DLPLA−PEG、PEG−PBT、PEG−PBT−PEG、PBT−PEG−PBT、PEG−PCL、PEG−PCL−PEG、及びPCL−PEG−PCL型ブロックコポリマーは、すべて、エステル結合を有するフラグメントを含む。エステル結合は、水に不安定な結合であることが知られている。わずかにアルカリ性である血液と接触すると、エステル結合は、塩基で触媒される加水分解にさらされ、かくして、ブロックコポリマーの生物学的分解性を確実にする。DLPLA−PEG−DLPLA、PEG−DLPLA−PEG、PEG−PBT、PEG−PBT−PEG、PBT−PEG−PBT、PEG−PCL、PEG−PCL−PEG、及びPCL−PEG−PCL型の群に属する各ブロックコポリマーの1つの分解生成物は、高度に生物学的に適合性であるPEGであると予想される。
【0107】
[0107]したがって、ある実施形態において、少なくとも1種のさらなる生物学的に吸収可能なポリマーは、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリエチレン−グリコール)、ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)、ポリ(カプロラクトン)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)、及びこれらのブレンドからなる群から選択される。
【0108】
[0108]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマーは、明確に、本明細書に記載の生体吸収性ポリマーのいずれか1種又は複数ではあり得ない。
【0109】
生物学的に活性な薬剤
[0109]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明のさらなる実施形態は、本発明のA−B−A’型トリブロックコポリマー及び少なくとも1種の生物学的に活性な(「生物活性」)薬剤を含有する組成物を対象とする。少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤としては、患者に対して治療、予防又は診断上での効果を発揮する能力を有する任意の物質が挙げられる。
【0110】
[0110]適切な生物活性薬剤の例には、限定はされないが、治療、予防又は診断上の活性を有する、合成の無機及び有機化合物、タンパク質及びペプチド、多糖及びその他の糖類、脂質、並びにDNA及びRNA核酸配列が含まれる。核酸配列には、遺伝子、相補的DNAに結合して転写を阻害するアンチセンス分子、及びリボザイムが含まれる。別の生物活性薬剤のいくつかのその他の例には、抗体、受容体リガンド、酵素、接着ペプチド、血液凝固因子、阻害薬又は血栓溶解薬(ストレプトキナーゼ及び組織プラスミノーゲンアクチベーターなど)、免疫感作用抗原、ホルモン及び成長因子、アンチセンスオリゴヌクレオチド及びリボザイムなどのオリゴヌクレオチド、並びに遺伝子療法で使用するためのレトロウイルスベクターが含まれる。生物活性薬剤は、例えば、血管平滑筋細胞の活性を阻害するように設計できる可能性がある。それらの薬剤は、平滑筋細胞の異常な又は不適切な遊走及び/又は増殖を阻害して再狭窄を抑制することに向けられる。
【0111】
[0111]ある実施形態において、本発明の組成物は、抗増殖、抗悪性腫瘍、抗有糸分裂、抗炎症、抗血小板、抗凝固、抗フィブリン、抗トロンビン、抗生物質、抗アレルギー、及び抗酸化性物質からなる群から選択される少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を含有する。
【0112】
[0112]抗増殖薬は、細胞毒などの天然のタンパク質系薬剤又は合成分子でよい。抗増殖性物質の例には、限定はされないが、アクチノマイシンD又はその誘導体及び類似体(Sigma−Aldrich製造、又はMerckから入手できるCOSMEGEN)(アクチノマイシンDの同義語には、ダクチノマイシン、アクチノマイシンIV、アクチノマイシンI,アクチノマイシンX、及びアクチノマイシンCが含まれる);タキソール類、ドセタキセル、並びにパクリタキセル及びその誘導体などのすべてのタキソイド;マクロリド系抗生物質、ラパマイシン、エベロリムス、ラパマイシンの構造性誘導体及び機能性類似体、エベロリムスの構造性誘導体及び機能性類似体、FKBP−12介在mTOR阻害薬、ビオリムス、パーフェニドン、これらのプロドラッグ、これらの共用薬、並びにこれらの組合せが含まれる。ラパマイシン誘導体の例には、限定はされないが、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(Novartisからの商標エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(ビオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス、Abbott Labs.製造)、これらのプロドラッグ、これらの共用薬、並びにこれらの組合せが含まれる。
【0113】
[0113]抗炎症薬は、ステロイド性抗炎症薬、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)、又はこれらの組合せでよい。抗炎症薬の例には、限定はされないが、アルクロフェナック、アルクロメタゾン、ジプロピオネート、アルゲストンアセトニド、アルファ アミラーゼ、アムシナファル、アムシナフィド、アムフェナックナトリウム、塩酸アミプリローズ、アナキンラ、アニロラック、アニトラザフェン、アパゾン、バルサラジド二ナトリウム、ベンダザック、ベノキサプロフェン、塩酸ベンジダミン、ブロメライン類、ブロペラモール、ブデソニド、カルプロフェン、シクロプロフェン、シンタゾン、クリプロフェン、クロベタゾール、プロピオン酸クロベタゾール、酪酸クロベタゾン、クロピラック、プロピオン酸クロチカゾン、酢酸クロメタゾン、コルトドキソン、デフラザコルト、デソニド、デソキシメタゾン、デキサメタゾン、酢酸デキサメタゾン、二プロピオン酸デキサメタゾン、ジクロフェナックカリウム、ジクロフェナックナトリウム、二酢酸ジフロラゾン、ジフルミドンナトリウム、ジフルニサール、ジフルプレドナート、ジフタロン、ジメチルスルホキシド、ドロシノニド、エンドリソン、エンリモマブ、エノリカムナトリウム、エピリゾール、エトドラック、エトフェナメート、フェルビナク、フェナモール、フェンブフェン、フェンクロフェナック、フェンクロラック、フェンドサール、フェンピパロン、フェンチアザック、フラザロン、フルアザコルト、フルフェナム酸、フルミゾール、酢酸フルニソリド、フルニキシン、フルニキシンメグルミン、フルオコルチンブチル、酢酸フルオロメトロン、フルクアゾン、フルルビプロフェン、フルレトフェン、プロピオン酸フルチカゾン、フラプロフェン、フロブフェン、ハルシノニド、プロピオン酸ハロベタゾール、酢酸ハロプレドン、イブフェナック、イブプロフェン、イブプロフェンアルミニウム、イブプロフェンピコナール、イロニダップ、インドメタシン、インドメタシンナトリウム、インドプロフェン、インドキソール、イントラゾール、酢酸イソフルプレドン、イソキセパック、イソキシカム、ケトプロフェン、塩酸ロフェミゾール、ロモキシカム、エタボン酸ロテプレドノール、メクロフェナム酸ナトリウム、メクロフェナム酸、二酪酸メクロリゾン、メフェナム酸、メサラミン、メセクラゾン、メチルプレドニゾロンスレプタネート、モミフルメート、ナブメトン、ナプロキセン、ナプロキセンナトリウム、ナプロキソール、ニマゾン、オルサラジンナトリウム、オルゴテイン、オルパノキシン、オキサプロジン、オキシフェンブタゾン、塩酸パラニリン、ポリ硫酸ペントサンナトリウム、グリセリン酸フェンブタゾンナトリウム、ピルフェニドン、ピロキシカム、桂皮酸ピロキシカム、ピロキシカムオラミン、ピルプロフェン、プレドナゼート、プリフェロン、プロドリン酸、プロクアゾン、プロキサゾール、クエン酸プロキサゾール、リメキソロン、ロマザリット、サルコレックス、サルナセジン、サルサレート、サンギナリウムクロリド、セクラゾン、セルメタシン、スドキシカム、スリンダク、スプロフェン、タルメタシン、タルニフルメート、タロサレート、テブフェロン、テニダップ、テニダップナトリウム、テノキシカム、テシカム、テシミド、テトリダミン、チオピナク、ピバル酸チキソコルトール、トルメチン、トルメチンナトリウム、トリクロニド、トリフルミデート、ジドメタシン、ゾメピラクナトリウム、アスピリン(アセチルサリチル酸)、サリチル酸、コルチコステロイド、グルココルチコイド、タクロリムス、ピメコルリムス、これらのプロドラッグ、これらの共用薬、並びにこれらの組合せが含まれる。
【0114】
[0114]別法として、抗炎症薬は、炎症促進シグナル伝達分子の生物学的阻害薬でもよい。抗炎症性生物薬には、このような生物学的抗炎症性シグナル伝達分子に対する抗体が含まれる。
【0115】
[0115]さらに、生物活性薬は、抗増殖又は抗炎症薬以外のものでもよい。生物活性薬は、治療、予防又は診断用薬剤である任意の薬剤でよい。いくつかの実施形態において、このような薬剤は、抗増殖又は抗炎症薬と組み合わせて使用できる。これらの生物活性薬は、また、抗増殖及び/又は抗炎症特性を有することができるか、或いは抗悪性腫瘍、抗有糸分裂、細胞分裂阻害、抗血小板、抗凝固、抗フィブリン、抗トロンビン、抗生物質、抗アレルギー、及び/又は抗酸化特性などの他の特性を有することができる。
【0116】
[0116]抗悪性腫瘍薬及び/又は抗有糸分裂薬の例には、限定はされないが、パクリタキセル(例えば、Bristol−Myers Squibbから入手できるタキソール(TAXOL)(登録商標))、ドセタキセル(例えば、Aventisからのタキソテレ(Taxotere)(登録商標))、メトトレキセート、アザチオプリン、ビンクリスチン、ビンブラスチン、フルオロウラシル、塩酸ドキソルビシン(例えば、Pfizerからのアドリアマイシン(Adriamycin)(登録商標))、及びミトマイシン(例えば、Bristol−Myers Squibbからのムタマイシン(Mutamycin)(登録商標))が含まれる。
【0117】
[0117]細胞分裂阻害又は抗増殖特性を有してもよい、抗血小板、抗凝固、抗フィブリン、及び抗トロンビン薬の例には、限定はされないが、ヘパリンナトリウム、低分子量ヘパリン、ヘパリノイド、ヒルジン、アルガトロバン、フォルスコリン、バピプロスト、プロスタサイクリン、及びプロスタサイクリン類似体、デキストラン、D−phe−pro−arg−クロロメチルケトン(合成抗トロンビン)、ジピリダモール、糖タンパク質IIb/IIIa血小板膜受容体拮抗抗体、組換ヒルジン、アンジオマックス(ANGIOMAX)(Biogenから)などのトロンビン阻害薬、カルシウムチャネル遮断薬(例えば、ニフェジピン)、コルヒチン、線維芽細胞増殖因子(FGF)拮抗薬、魚油(例えば、オメガ3−脂肪酸)、ヒスタミン拮抗薬、ロバスタチン(HMG−CoAレダクターゼを阻害するコレステロール低下薬、Merckからの商標メバコール(Mevacor)(登録商標)、モノクロナール抗体(例えば、血小板由来増殖因子(PDGF)受容体に特異的なもの)、ニトロプルシッド、ホスホジエステラーゼ阻害薬、プロスタグランジン阻害薬、スラミン、セロトニン遮断薬、ステロイド、チオプロテアーゼ阻害薬、トリアゾロピリミジン(PDGF拮抗薬)、一酸化窒素又は一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、エストラジオール、抗癌薬、各種ビタミンなどの栄養補助食品、並びにこれらの組合せが含まれる。
【0118】
[0118]細胞分裂阻害物質の例には、限定はされないが、アンジオペプチン、カプトプリルなどのアンジオテンシン変換酵素阻害薬(Bristol−Myers Squibbからのカポテン(Capoten)(登録商標)及びカポザイド(Capozide)(登録商標))、シラザプリル及びリシノプリル(例えば、Merckからのプリニビル(Prinivil)(登録商標)及びプリンザイド(Prinzide)(登録商標))が含まれる。
【0119】
[0119]抗アレルギー薬の例には、限定はされないが、ペルミロラストカリウムが含まれる。抗酸化性物質の例には、限定はされないが、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)が含まれる。
【0120】
[0120]その他の生物活性薬としては、抗ウイルス薬などの抗感染薬;鎮痛薬及び鎮痛併用薬;食欲抑制薬;抗寄生虫薬;抗関節炎薬;抗喘息薬;抗痙攣薬;抗鬱薬;抗利尿薬;止痢薬;抗ヒスタミン薬;抗片頭痛薬製剤;抗嘔吐薬;抗パーキンソン薬;鎮痒薬;抗精神病薬;解熱薬;鎮痙薬;抗コリン薬;交感神経刺激薬;キサンチン誘導体;カルシウムチャネル遮断薬並びにピンドロールなどのβ−遮断薬及び抗不整脈薬を含む心血管製剤;血圧降下薬;利尿薬;一般的な環状動脈拡張薬を含む血管拡張薬;末梢及び脳血管拡張薬;中枢神経系刺激薬;鬱血除去薬を含む咳及び感冒製剤;催眠薬;免疫抑制薬;筋弛緩薬;副交換神経遮断薬;覚醒薬;鎮静薬;精神安定薬;天然由来又は遺伝子改変リポタンパク質;及び再狭窄低減薬を挙げることができる。
【0121】
[0121]使用できるその他の生物学的に活性な薬剤には、アルファ−インターフェロン、遺伝子改変上皮細胞、タクロリムス、及びデキサメタゾンが含まれる。
【0122】
[0122]「治癒促進性」の薬物又は薬剤は、血液に接触する埋込型デバイスの文脈で、動脈管腔の再内皮化を促進又は増強して血管組織の治癒を促進する特性を有する薬物又は薬剤を指す。埋込型デバイス(例えば、ステント)の治癒促進性薬物又は薬剤を含む部分(複数可)は、内皮細胞(例えば、内皮前駆細胞)を誘引し、結合し、ついには内皮細胞で封じ込められる。細胞の誘引、結合、及び封じ込めは、ステントが不十分に封じ込められた場合に発生する可能性のある力学的特性の喪失のため、塞栓又は血栓の形成を低減又は抑制する。高められた再内皮化は、ステントの力学的特性の喪失に比べてより急速な速度で内皮化を促進することができる。
【0123】
[0123]治癒促進性の薬物又は薬剤は、生体吸収性ポリマーの基体又は足場の本体中に分散させることができる。治癒促進性の薬物又は薬剤は、また、埋込型デバイス(例えば、ステント)の表面を覆う生体吸収性ポリマー内に分散させることができる。
【0124】
[0124]「内皮前駆細胞」は、骨髄中で作製され、血流中に入り、血管傷害領域に達し、損傷の修復を助けることができる原始細胞を指す。内皮前駆細胞は、成人ヒト末梢血中を循環し、サイトカイン、増殖因子、及び虚血状態によって骨髄から動員される。血管傷害は、血管形成及び血管発生の機構により修復される。循環している内皮前駆細胞は、主として血管発生機構を介して傷害された血管を修復するのに寄与する。
【0125】
[0125]いくつかの実施形態において、治癒促進性の薬物又は薬剤は、内皮細胞(EDC)に結合する薬剤でよい。いくつかの実施形態において、EDCに結合する薬剤は、I型コラーゲンの1つ、単鎖Fvフラグメント(scFv A5)として知られる23ペプチドフラグメント、接合膜タンパク質血管内皮(VE)−カドヘリン、及びこれらの組合せでよい、タンパク質、ペプチド、又は抗体であってよい。I型コラーゲンは、オステオポンチンに結合されると、内皮細胞の接着を促進し、アポトーシス経路の下方制御によってそれらの生存力を調節することが示されている。S.M.Martinら、J.Biomed.Mater.Res.,70A:10〜19(2004)。scFv A5を使用して、内皮細胞を、選択的に標的化(免疫リポソームの標的化送達のために)することができる。T.Volkelら、Biochimica et Biophysica Acta,1663:158〜166(2004)。接合膜タンパク質血管内皮(VE)−カドヘリンは、内皮細胞に結合し、内皮細胞のアポトーシスを下方制御することが示されている。R.Spagnuoloら、Blood,103:3005〜3012(2004)。
【0126】
[0126]いくつかの実施形態において、EDCに結合する薬剤は、オステオポンチンの活性フラグメント、(Asp−Val−Asp−Val−Pro−Asp−Gly−Asp−Ser−Leu−Ala−Try−Gly)でよい。他のEDCに結合する薬剤には、限定はされないが、EPC(上皮細胞)抗体、RGDペプチド配列、RGD模倣体、及びこれらの組合せでよい。
【0127】
[0127]さらなる実施形態において、治癒促進性の薬物又は薬剤は、内皮前駆細胞を誘引し、結合する物質又は薬剤でよい。内皮前駆細胞を誘引し結合する代表的な物質又は薬剤には、CD−34、CD−133、及び2型vegf受容体などの抗体が含まれる。内皮前駆細胞を誘引し結合する薬剤としては、一酸化窒素供与基を有するポリマーが含まれる。
【0128】
[0128]例として、前述の生物学的に活性な薬剤を挙げたが、それらに限定されることを意味しない。現在利用できる、又は将来的に開発されるであろうその他の生物学的に活性な薬剤も、等しく応用できる。
【0129】
[0129]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、より具体的な実施形態において、本発明の組成物は、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4−アミノ2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(ビオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス)、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬、これらのプロドラッグ、これらの共用薬、並びにこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を含む。具体的な実施形態において、生物活性薬剤はエベロリムスである。他の具体的な実施形態において、生物活性薬剤はクロベタゾールである。
【0130】
[0130]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤は、明確に、本明細書に記載のいずれか1種又は複数の生物活性薬又は薬剤ではあり得ない。
【0131】
材料及び被覆
[0131]生体分解性ABA’型トリブロックコポリマーを含む本発明組成物は、埋込型デバイスを形成する材料を作製するのに使用できる。このような材料は、本明細書に記載の本発明組成物の実施形態の任意の組合せを含むことができる。
【0132】
[0132]したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の実施形態は、生体分解性ABA’型トリブロックコポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料に関する。例えば、該材料を形成する組成物は、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を任意選択で有することができ、且つ少なくとも1種の生体適合性部分、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマー、及び/又は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を任意選択で含むことができる。
【0133】
[0133]本発明の材料は、埋込型デバイスの部分又は全デバイス自体を作製するのに使用できる。さらに、該材料は、埋込型デバイスの少なくとも一部を覆って堆積される被覆を作製するのに使用できる。
【0134】
[0134]したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の実施形態は、生体分解性ABA’型トリブロックコポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む被覆を対象とする。例えば、被覆を形成する組成物は、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を任意選択で有することができ、且つ少なくとも1種の生体適合性部分、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマー、及び/又は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を任意選択で含むことができる。
【0135】
[0135]被覆は、多様な厚さ及び生体内分解速度を有することができる。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、被覆は、約30ミクロン以下、約20ミクロン以下、又は約10μ以下の厚さを有する。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、さらなる実施形態において、被覆の生体内分解速度は、約2年以内での約100%の減損、約12カ月以内での約100%の減損、又は約6カ月以内での少なくとも約70%の減損によって特徴付けられる。
【0136】
埋込型デバイス
[0136]生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む本発明の材料は、埋込型デバイスを形成するのに使用できる。したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の一実施形態は、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料から形成される埋込型デバイスに関する。例えば、該埋込型デバイスは、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を任意選択で有し、且つ少なくとも1種の生体適合性部分、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマー、及び/又は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を任意選択で含む組成物を含む材料から形成できる。
【0137】
[0137]埋込型デバイスの一部又は全デバイス自体は、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料から形成できる。さらに、埋込型デバイスの少なくとも一部を、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む被覆によってコーティングすることができる。
【0138】
[0138]したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の実施形態は、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む被覆から形成される埋込型デバイスを対象とする。例えば、該埋込型デバイスは、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を任意選択で有し、且つ少なくとも1種の生体適合性部分、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマー、及び/又は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を任意選択で含む組成物を含有する被覆から形成できる。
【0139】
[0139]埋込型デバイスは、多様な厚さ及び生体内分解速度を有してもよい被覆から形成できる。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、埋込型デバイスは、約30ミクロン以下、約20ミクロン以下、又は約10ミクロン以下の厚さを有する被覆から形成される。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、さらなる実施形態において、埋込型デバイスは、その生体内分解速度が、約2年以内での約100%の減損、約12カ月以内での約100%の減損、又は約6カ月以内での少なくとも約70%の減損によって特徴付けられる被覆から形成される。
【0140】
[0140]本発明は、また、生体吸収性及び/又は生体安定性ポリマーから形成される埋込型デバイスを包含する。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、いくつかの実施形態において、デバイスの一部又は全デバイス自体を、このようなポリマー及び本明細書に記載の任意の他の物質から形成できる。
【0141】
[0141]任意の埋込型デバイスは、本発明の材料又は被覆から形成することができる。埋込型デバイスの例には、限定はされないが、ステント(例えば、冠動脈ステント及び末梢ステント)、グラフト(例えば、大動脈グラフト、動−静脈グラフト及びバイパスグラフト)、ステント−グラフト、カテーテル、ペースメーカー及び除細動器のためのリード及び電極、心内リード(例えば、FINELINE及びENDOTAK、カリフォルニア州サンタクララ市、Abott Vascularから入手可能)、クリップ(例えば、吻合クリップ)、シャント(例えば、脳脊髄液及びaxius冠動脈シャント)、閉鎖デバイス(例えば、動脈及び卵円孔開存の閉鎖デバイス)、及び弁(例えば、人工心臓弁)が含まれる。
【0142】
[0142]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、実施形態において、埋込型デバイスは、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、並びに弁からなる群から選択される。本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、より具体的な実施形態において、埋込型デバイスは、ステントである。ステントは、バルーン拡張性又は自己拡張性でよい。さらに、ステントは、体内の任意の導管、例えば、神経、頚動脈、静脈のグラフト、冠動脈、腎大動脈、腸骨、大腿部、膝窩部の脈管構造、及び尿路用に向けることができる。
【0143】
[0143]埋込型デバイスの基礎となる構造は、実質上任意の意匠を有することができる。デバイスは、金属性材料から、或いは限定はされないが、コバルト−クロム合金(例えば、ELGILOY)、「L−605」、ステンレススチール(316L)、「MP35N」、「MP20N」、ELASTINITE(Nitinol)などの合金、タンタル、タンタルをベースにした合金、ニッケル−チタン合金、白金、白金をベースにした合金(例えば、白金−イリジウム合金)、イリジウム、金、マグネシウム、チタン、チタンをベースにした合金、ジルコニウムをベースにした合金、或いはこれらの組合せから作製できる。「L−605」は、Haynes International(Kokoma、インド)からHaynes25として入手できる、コバルト、クロム、タングステン、ニッケル及び鉄からなる合金に対する商品名である。「L−605」は、51%のコバルト、20%のクロム、15%のタングステン、10%のニッケル、及び3%の鉄からなる。「MP35N」及び「MP20N」は、Standard Press Steel Co.(Jenkintown、ペンシルヴェニア州)から入手できる、コバルト、ニッケル、クロム、及びモリブデンからなる合金に対する商品名である。「MP35N」は、35%のコバルト、35%のニッケル、20%のクロム、及び10%のモリブデンからなる。「MP20N」は、50%のコバルト、20%のニッケル、20%のクロム、及び10%のモリブデンからなる。
【0144】
被覆の構造
[0144]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の実施形態によれば、埋込型デバイス(例えば、ステント)用の被覆は、次の4種の層:
(1)下塗り層、
(2)薬物−ポリマー層(「リザーバー」又は「リザーバー層」とも呼ばれる)、或いは別法としてポリマー不含薬物層、
(3)上塗り層、及び/又は
(4)仕上げ被覆層、
のいずれか、又はそれらの組合せを含んでいてもよい多層構造でよい。
【0145】
[0145]ステントの各被覆層を、ポリマー又はポリマーブレンドを溶媒又は溶媒混合物に溶解すること、得られるポリマー溶液を、ステントを覆って該溶液を噴霧すること又はステントを該溶液中に浸漬することによって、ステントを覆って堆積させることができる。ステントを覆って溶液を堆積させた後、溶媒を蒸発させて、被覆を乾燥する。高められた温度で乾燥を行なうと、乾燥工程を加速できる。所望なら、被覆の熱力学的安定性を向上させるために、任意選択で、完成したステント被覆を約40℃〜約150℃の温度で約5分〜約60分間焼きなます(anneal)ことができる。
【0146】
[0146]リザーバー層中に薬物を組み込むには、薬物を、前記のようにステントを覆って堆積されるポリマー溶液と組み合わせることができる。別法として、薬物放出速度の速いステント被覆を有することが望ましいなら、ポリマー不含リザーバーを作製できる。ポリマー不含リザーバーを製作するには、薬物を、適切な溶媒又は溶媒混合物中に溶解し、生じた薬物溶液を、該薬物含有溶液を噴霧すること又はステントを該薬物含有溶液に含浸することによって、ステントを覆って堆積させることができる。
【0147】
[0147]溶液を介して薬物を導入することに代わって、薬物を、適切な溶媒相中の懸濁液などのコロイド系として導入することができる。懸濁液を調製するには、薬物を、コロイド化学で使用される通常の技術を利用して溶媒相中に分散させることができる。各種の要因、例えば、薬物の性質に応じて、当業者は、懸濁液の溶媒相を形成するための溶媒、及び該溶媒相中に分散させる予定の薬物の量を選択できる。任意選択で、懸濁液を安定化するために界面活性剤を添加することができる。懸濁液をポリマー溶液と混合し、その混合物を前記のようにステントを覆って堆積させることができる。別法として、薬物懸濁液を、ポリマー溶液と混合しないで、ステントを覆って堆積させることができる。
【0148】
[0148]薬物−ポリマー層は、ステント表面上の少なくとも一部に直接的に塗布され、リザーバー層中に組み込まれる生物活性のある少なくとも1種の薬物又は薬剤のためのリザーバーとして役立つことができる。任意選択の下塗り層を、ステントとリザーバーの間に塗布し、ステントに対する薬物−ポリマー層の接着性を向上させることができる。任意選択の上塗り層を、リザーバー層の少なくとも一部を覆って塗布することができ、該上塗り層は、薬物の放出速度を調節するのを助ける速度制限膜として役立つ。一実施形態において、上塗り層は、生物活性のあるいかなる薬剤又は薬物を本質的に含まなくてもよい。上塗り層を使用するなら、薬物放出速度をさらに調節するため、及び被覆の生体適合性を改善するために、上塗り層の少なくとも一部を覆って任意選択の仕上げ被覆層を塗布することができる。上塗り層なしで、リザーバー層上に仕上げ被覆層を直接に塗布できる。
【0149】
[0149]上塗り及び仕上げ被覆層の双方を有する被覆からの薬物放出過程は、少なくとも3つのステップを含む。第1に、薬物は、薬物−ポリマー層/上塗り層の界面で上塗り層のポリマーによって吸収される。次に、その薬物は、上塗り層ポリマーの高分子間空隙容量を移動通路として使用して、上塗り層を通って拡散する。次に、その薬物は、上塗り層/仕上げ層の界面に到達する。最後に、その薬物は、類似の方式で仕上げ被覆層を通って拡散し、仕上げ被覆層の外側表面に到達し、該外側表面から脱離する。この時点で、薬物は、取り囲んでいる組織中に放出される。結果として、上塗り及び仕上げ被覆層の組合せは、使用されるなら、速度制限用障壁として役立つことができる。薬物は、層の分解、溶出、及び/又は侵食を介して放出され得る。
【0150】
[0150]一実施形態において、ステント被覆層のいずれか又はすべては、生物学的に分解可能な、侵食可能な、吸収可能な、及び/又は再吸収可能なポリマーから作製できる。別の実施形態では、被覆の最外層をこのようなポリマーに限定することができる。
【0151】
[0151]より詳細に説明すれば、前記の4種(すなわち、下塗り、リザーバー層、上塗り層、及び仕上げ被覆層)のすべての層を有するステント被覆において、最外層は、生物学的に分解可能、侵食可能、吸収可能、及び/又は再吸収可能であるポリマーから作製される、仕上げ被覆層である。この場合、残りの層(すなわち、下塗り、リザーバー層、及び上塗り層)も、任意選択で、生物学的に分解可能なポリマーから製作することができ、該ポリマーは、各層中で同じ又は異なってもよい。
【0152】
[0152]仕上げ被覆層を使用しないなら、上塗り層は、最外層でよく、生物学的に分解可能なポリマーから作製される。この場合、残りの層(すなわち、下塗り及びリザーバー層)も、任意選択で、生物学的に分解可能なポリマーから製作することができ、該ポリマーは、3つの各層中で同じ又は異なってもよい。
【0153】
[0153]仕上げ被覆層と上塗り層のどちらも使用しないなら、ステントの被覆は、下塗り及びリザーバーの2つの層のみを有することができる。このような場合、リザーバーは、ステント被覆の最外層であり、生物学的に分解可能なポリマーで作製される。下塗りも、任意選択で、生物学的に分解可能なポリマーで製作できる。2つの層は、同じ又は異なる材料から作製できる。
【0154】
[0154]生物学的に分解可能な、侵食可能な、吸収可能な及び/又は再吸収可能なポリマーの分解、侵食、吸収、及び/又は再吸収速度の増大は、リザーバー若しくは上塗り層又はその双方を形成するポリマーのゆるやかな消失による薬物放出速度の増大につながると予想される。適切な生体分解性ポリマーの選択により、ステントの被覆を工学的に操作して、所望されるような、薬物の急速又は緩速放出のいずれかを提供できる。当業者は、緩速な又は急速な薬物放出速度を有するステント被覆が、個々の薬物にとって当を得ているかどうかを決定できる。例えば、1〜2週間以内に放出されることを必要とすることが多い抗移動性薬物を載せるステント被覆に対しては、急速放出を推奨できる。抗増殖薬の場合には、緩速放出(例えば、30日間までの放出時間)が望ましい可能性がある。
【0155】
[0155]ステント被覆のいずれかの層は、任意量の少なくとも1種の前記の生物学的に吸収可能なポリマー、又は1種を超えるこのようなポリマーのブレンドを含むことができる。層の100%未満を、生体吸収性ポリマー(複数可)で作製するなら、他の代わりのポリマーが、残量を構成することができる。採用できる代わりのポリマーの例には、限定はされないが、ポリアクリレート、例えば、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート−co−ブチルメタクリレート)、ポリ(アクリルニトリル)、ポリ(エチレン−co−メチルメタクリレート)、ポリ(アクリロニトリル−co−スチレン)及びポリ(シアノアクリレート);フッ素化ポリマー及び/又はコポリマー、例えば、ポリ(フッ化ビニリデン)及びポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン);ポリ(N−ビニルピロリドン);ポリジオキサノン;ポリオルトエステル;ポリ無水物;ポリ(グリコール酸);ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート);ポリホスホエステル;ポリホスホエステルウレタン;ポリ(アミノ酸);ポリ(トリメチレンカーボネート);ポリ(イミノカーボネート);co−ポリ(エーテル−エステル);ポリアルキレンオキサレート;ポリホスファゼン;生体分子、例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸;ポリウレタン;シリコーン;ポリエステル;ポリオレフィン;ポリイソブチレン及びエチレン−アルファオレフィンコポリマー;ハロゲン化ビニルポリマー及びコポリマー、例えば、ポリ塩化ビニル;ポリビニルエーテル、例えば、ポリビニルメチルエーテル;ポリ塩化ビニリデン;ポリビニルケトン;ポリビニル芳香族、例えば、ポリスチレン;ポリビニルエステル、例えば、ポリ酢酸ビニル;ビニルモノマーと互いとの及びオレフィンとのコポリマー、例えば、ポリ(エチレン−co−ビニルアルコール)(EVAL);ABS樹脂;ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル);ポリアミド、例えば、ナイロン66及びポリカプロラクタム;アルキド樹脂;ポリカーボネート;ポリオキシメチレン;ポリイミド;ポリエーテル、エポキシ樹脂;ポリウレタン;レーヨン;レーヨン−トリアセテート;セルロース;酢酸セルロース;酪酸セルロース;酢酸酪酸セルロース;セロファン;硝酸セルロース;プロピオン酸セルロース;セルロースエーテル;及びカルボキシメチルセルロースが含まれる。
【0156】
埋込型デバイスの製作方法
[0156]本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の他の実施形態は、埋込型デバイスの製作方法に関する。一実施形態において、該方法は、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料から埋込型デバイスを形成すること含む。例えば、該方法は、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を任意選択で有し、且つ少なくとも1種の生体適合性部分、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマー、及び/又は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を任意選択で含む組成物を含有する材料から埋込型デバイスを形成することを含む。
【0157】
[0157]該方法のもとで、埋込型デバイスの一部又は全デバイス自体は、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料から構成できる。さらに、該方法は、埋込型デバイスの少なくとも一部を覆って、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む被覆を堆積させることを含むことができる。
【0158】
[0158]したがって、ある実施形態において、該方法は、埋込型デバイスの少なくとも一部を覆って、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む被覆を堆積させることを含む。例えば、該方法は、埋込型デバイスの少なくとも一部を覆って、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を任意選択で有し、且つ少なくとも1種の生体適合性部分、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマー、及び/又は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を任意選択で含む組成物を含有する被覆を堆積させることを含む。
【0159】
[0159]該方法は、多様な厚さを有する被覆を、埋込型デバイスを覆って堆積させることができる。いくつかの実施形態において、該方法は、埋込型デバイスの少なくとも一部を覆って、約30ミクロン以下、約20ミクロン以下、又は約10ミクロン以下の厚さを有する被覆を堆積させる。
【0160】
[0160]ある実施形態によれば、該方法は、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、及び弁からなる群から選択される埋込型デバイスを製作するのに使用される。具体的な実施形態において、該方法は、ステントを製作するのに使用される。
【0161】
[0161]本発明のトリブロックコポリマー、並びに任意のその他の所望される物質及び材料を、チューブ、或いは巻かれて又は結合されてチューブなどの構造物を形成できるシートなどの、ポリマー構造物に形成することができる。次いで、該構造物から埋込型デバイスを製作できる。例えば、チューブから、チューブに模様をレーザー加工することによってステントを製作できる。別の実施形態において、ポリマー構造物は、本発明のポリマー材料から、射出成形装置を使用して形成できる。
【0162】
[0162]一般に、埋込型デバイスを製作するのに使用できるポリマーの代表例には、限定はされないが、ポリ(N−アセチルグルコサミン)(キチン)、キトサン、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリオルトエステル、ポリ無水物、ポリ(グリコール酸)、ポリ(グリコリド)、ポリ(L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド)、ポリ(D,L−乳酸)、ポリ(L−ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(トリメチレンカーボネート)、ポリエチレンアミド、ポリエチレンアクリレート、ポリ(グリコール酸−co−トリメチレンカーボネート)、co−ポリ(エーテル−エステル)(例えば、PEO/PLA)、ポリホスファゼン、生体分子(例えば、フィブリン、フィブリノーゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン、及びヒアルロン酸)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、及びエチレン−アルファオレフィンコポリマー、アクリルポリマー及びポリアクリレート以外のコポリマー、ハロゲン化ビニルのポリマー及びコポリマー(例えば、ポリ塩化ビニル)、ポリビニルエーテル(例えば、ポリビニルメチルエーテル)、ポリハロゲン化ビニリデン(例えば、ポリ塩化ビニリデン)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリビニル芳香族(例えば、ポリスチレン)、ポリビニルエステル(例えば、ポリ酢酸ビニル)、アクリロニトリル−スチレンコポリマー、ABS樹脂、ポリアミド(例えば、ナイロン66及びポリカプロラクタム)、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリイミド、ポリエーテル、ポリウレタン、レーヨン、レーヨン−トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、セロファン、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロース、セルロースエーテル、及びカルボキシメチルセルロースが含まれる。
【0163】
[0163]埋込型デバイスを製作するのに十分に適している可能性のあるポリマーのさらなる代表例には、エチレン−ビニルアルコールコポリマー(通常、一般名EVOHで、又は商標名EVALで知られる)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(フッ化ビニリデン−co−ヘキサフルオロプロピレン)(例えば、SOLEF21508、ニュージャージー州ThorofareのSolvay Solexis PVDFから入手可)、ポリフッ化ビニリデン(別にKYNARとして知られる、ペンシルヴェニア州フィラデルフィアのATOFINA Chemicalsから入手可)、ポリ(テトラフルオロエチレン−co−ヘキサフルオロプロピレン−co−フッ化ビニリデン)、エチレン−酢酸ビニルコポリマー、及びポリエチレングリコールが含まれる。
【0164】
障害の治療又は予防方法
[0164]生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料又は被覆から形成される埋込型デバイスは、状態又は障害を治療、予防又は診断するのに使用できる。このような状態又は障害の例には、限定はされないが、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈と人工移植片との吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、及び腫瘍性閉塞が含まれる。
【0165】
[0165]したがって、本明細書に記載の1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせてもよい、本発明の実施形態は、生体分解性ABA’型コポリマーを含有する組成物に関する実施形態の任意の組合せを含む材料又は被覆から形成される埋込型デバイスを患者に埋め込むことを含む、患者の状態又は障害の治療、予防又は診断方法に関する。例えば、埋込型デバイスは、トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基を任意選択で有し、且つ少なくとも1種の生体適合性部分、少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマー、及び/又は少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を任意選択で含む組成物を含有する材料又は被覆から形成できる。
【0166】
[0166]一実施形態において、埋込型デバイスは、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(ビオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス)、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬、これらのプロドラッグ、これらの共用薬、及びこれらの組合せからなる群から選択される少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を含む材料又は被覆から形成される。
【0167】
[0167]ある実施形態において、該方法で使用される埋込型デバイスは、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、及び弁からなる群から選択される。具体的な実施形態において、埋込型デバイスはステントである。
【0168】
[0168]一実施形態によれば、埋込型デバイスによって治療、予防又は診断される状態又は障害は、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈と人工移植片との吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、及び腫瘍性閉塞からなる群から選択される。
【0169】
トリブロックコポリマーの合成
[0169]本発明のトリブロックコポリマーは、当技術分野で周知の任意の重合法で調製できる。重合の方法には、限定はされないが、溶液をベースにした重合及び溶融相重合が含まれる。溶液をベースにした重合では、重合反応に関連するすべての反応性成分を溶媒に溶解する。
【0170】
[0170]溶液をベースにした重合のいくつかの実施形態では、ブロックのモノマー単位、開始剤、触媒、及び少なくとも1種の溶媒が使用される。最初のステップは、一般に、前駆ブロック、例えば、Bブロックを形成することを含む。前駆ブロックのモノマー単位、適切な開始剤、及び適切な触媒を、適切な溶媒に添加して、重合溶液を形成する。前駆ブロックを形成した後、次いで、第2ブロック(例えば、Aブロック、又はAとA’ブロックとが同じならそれら2つのブロック)のモノマー単位、及び触媒(最初の反応で使用される触媒と同じ又は異なってもよい)を溶液に添加して、AB型ジブロックコポリマー、又はABA’型トリブロックコポリマー(A及びA’が同じなら)を形成する。AとA’ブロックとが同じでないなら、A’ブロックを形成するための第3反応は、Aブロックを形成するための第2反応と類似の方式で進行する。A及びA’ブロックを形成するための反応(複数可)の溶媒(複数可)は、前駆ブロックが第2反応のための溶媒(複数可)に可溶であり、且つABジブロックが第3反応のための溶媒(複数可)に可溶性であるように選択することができ、前駆ブロック及びABジブロックのそれぞれ添加されるAブロック単位及びA’ブロック単位との共重合を促進する。ある実施形態において、Bブロックは、トリブロックコポリマーの合成で最初に形成される。
【0171】
[0171]トリブロックコポリマーは、当業者に周知の標準的方法によって、例えば、そのブロックに対応するモノマーとの開環重合(ROP)によって合成できる。ROPは、必要なら、有機又は無機の酸(ルイス酸を含む)、有機又は無機の塩基(ルイス塩基を含む)、有機金属試薬、及び/又は熱によって触媒され得る。
【0172】
[0172]本発明のA−B−A’型トリブロックコポリマーを合成する1つの方法は、A、B及びA’ブロックに対応するモノマー(複数可)との開環重合(ROP)を行なうことである。例えば、A及びA’ブロックが同じであるトリブロックコポリマーは、Bブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施すること、次いでA及びA’ブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施することによって製造できる。2つの活性末端基を含む開始化合物を採用して、Bブロックの第1モノマーとのROPを開始する。ある実施形態において、開始化合物上の2つの活性末端基は、独立に、ヒドロキシル、アミノ又はチオール基である。
【0173】
[0173]同様に、A及びA’ブロックが同じでないA−B−A’型トリブロックコポリマーは、
Bブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施すること(ここで、1つの活性末端基及び1つの保護された末端基を含む開始化合物を使用してBブロックの第1モノマーとのROPを開始する);
Aブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施すること;
Aブロックのポリマー末端に形成される任意の活性基を保護すること;
開始化合物に由来するBブロックのポリマー末端の保護された末端基を脱保護すること;
A’ブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施すること;及び
Aブロックのポリマー末端の保護された活性基を任意選択で脱保護すること;によって合成できる。ある実施形態において、開始化合物上の活性末端基は、ヒドロキシル、アミノ又はチオール基であり、開始化合物上の保護された末端基は、保護されたヒドロキシル、アミノ又はチオール基である。
【0174】
[0174]いくつかの実施形態において、トリブロックコポリマーの合成で採用される開始化合物は、ヒドロキシル、アミノ又はチオール基である少なくとも1つの活性末端基を有する。ある実施形態において、開始化合物は、ヒドロキシル末端基の1つが保護されていてもよいジオールである。別の実施形態において、開始化合物は、アミノ末端基の1つが保護されていてもよいジアミンである。さらに別の実施形態において、開始化合物は、チオール末端基の1つが保護されていてもよいジチオールである。さらなる実施形態において、ジアミノ、ジチオール又はジヒドロキシ開始化合物は、C〜C24であり、置換されていてもよい脂肪族、へテロ脂肪族、環式脂肪族、ヘテロ環式脂肪族、芳香族又はヘテロ芳香族基、或いはこれらの組合せを含む。他の実施形態において、開始化合物は、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリ(エチレングリコール)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、及びポリ(カプロラクトン)ジオールである。
【0175】
[0175]A及びA’ブロックが同じであり、ROPによる、A−B−A’型トリブロックコポリマーの合成の一例は、下記スキーム1のROPによるポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド−bl−トリメチレンカーボネート−bl−グリコリド−co−D,L−ラクチド)の合成によって例示される。
【0176】
【化3】

【0177】
[0176]スキーム1では、1,6−ヘキサンジオールを採用して、TMCとのROPを開始する。次いで、得られるビス(ヒドロキシル)で終わるBブロック(PTMC)を使用して、グリコリドとのROPを開始し、ビス(ヒドロキシル)で終わるPGA−bl−PTMC−bl−PGAの形成をもたらす。この中間体と、別種のモノマー(D,L−ラクチド)とのROPにより、さらにA及びA’ブロックを作り上げ、トリブロックコポリマーであるポリ(D,L−ラクチド−co−グリコリド)−ブロック−ポリ(トリメチレンカーボネート)−ブロック−ポリ(グリコリド−co−D,L−ラクチド)を得る。この例で、A及びA’ブロックは同じ(すなわち、ポリ(グリコリド−co−D,L−ラクチド))であり、m、n及びpは、独立に、約5〜約5,000の整数である。当業者は、上記例中の合成方法を修正し、同じポット中にグリコリド及びD,L−ラクチドを存在させてROPを実施することによって、ポリ(D,L−ラクチド−ran−グリコリド)ブロック−ポリ(トリメチレンカーボネート)−ブロック−ポリ(グリコリド−ran−D,L−ラクチド)を生成させることができるであろう。
【0178】
[0177]トリブロックコポリマーの合成は、溶媒不在下できれいに行なわることが多い。しかし、ブロックは、必ずしも互いに混和性であるとは限らない。例えば、溶融状態で、グリコリドは、PTMCポリマーに溶解しない可能性がある。このような場合、重合は、溶媒中で行なわれる。適切に行なうなら、中間体のビス(ヒドロキシル)で終わるPTMCポリマーを単離する必要はなく、該PTMCポリマーを使用して、後に続くグリコリドとのROPを開始することができるであろう。
【0179】
[0178]グリコリド含有量の高いポリマーの合成では、初めにモノマー(複数可)を溶解するために、強力な又は新奇な溶媒を必要とすることがある。通常的には、溶媒を採用してモノマー混合物をモノマー混合物中に溶解し、次いで、該溶媒を、重合開始のために開始触媒を添加する前に、留去することができる。軟質のBブロックも、A及びA’ブロックのモノマーの溶解を助けることができる。さらに、種々の有機及び有機金属触媒は、様々な放出動力学を提供することによってポリマーの構造に影響を及ぼし、A、B又はA’ブロック中に組み込まれる各種モノマーの重合速度を最小化又は最大化することができる。
【0180】
[0179]A−B−A’型トリブロックコポリマーを含む各種実施形態の本発明の組成物は、A及びA’ブロックが同じであろうとなかろうと、任意選択で:
少なくとも1つのジヒドロキシアリール基をトリブロックコポリマーのポリマー末端に結合させること;
少なくとも1種の生体適合性部分をトリブロックコポリマーとブレンド又は結合すること;
少なくとも1種の生物学的に吸収可能なさらなるポリマーをトリブロックコポリマーとブレンド又は結合すること;及び
少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤を組み込むこと;によって調製できる。
【0181】
[0180]少なくとも1つのジヒドロキシアリール基は、例えば、1,2−ジヒドロキシフェニル及び3,4−ジヒドロキシフェニルなどのオルト−ジヒドロキシフェニル部分を含むことができる。3,4−ジヒドロキシフェニルを含む化合物には、例えば、ドーパミン及び3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸が含まれる。ドーパミンは、1,1’−カルボニルジイミダゾールとのカップリングを介してトリブロックコポリマーのヒドロキシル末端に結合できる可能性がある。3,4−ジヒドロキシヒドロ桂皮酸は、桂皮酸をN−スクシジミルエステルへ転化することによって、又はジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジニウム(DPTS)を使用することによって、ヒドロキシル末端基に結合できる可能性がある。別法として、桂皮酸の結合は、トリフェニルホスフィン及びアゾジカルボン酸ジエチル(DEAD)又はアゾジカルボン酸ジイソプロピル(DIAD)を使用するMitsunobu(光延)反応により実施できる可能性がある。
【実施例】
【0182】
[0181]以下に示す実施例は、本発明の実施形態をさらに例示することを唯一の目的とするものであって、本発明を限定することを意味するものではない。以下の予言的実施例は、本発明の理解を助けるために提供されるが、本発明は、該実施例中の特定の材料又は手順に限定されないことを理解されたい。
【0183】
実施例1.グリコリドが51.8モル%、炭酸トリメチレンが43.6モル%、D,L−ラクチドが4.6モル%のポリ(グリコリド−ran−D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(TMC)−ブロック−ポリ(グリコリド−ran−D,L−ラクチド)の合成
[0182]火炎で乾燥した三口250ml丸底フラスコに、46.41g(0.455モル)の炭酸トリメチレン、0.123g(1.16ミリモル)の蒸留ジエチレングリコール、及び0.053mlのオクチル酸錫(II)(stannous octoate)(0.33Mトルエン溶液)(モノマー:触媒のモル比、60,000:1)を仕込む。フラスコに、火炎で乾燥した機械式撹拌機及びアルゴンパージ及び減圧用のアダプターを取り付ける。フラスコを排気し、続いてアルゴンを吹き込むことによって反応容器をパージすることを3回繰り返す。反応フラスコを、1気圧のアルゴン圧の下で、ゆっくり撹拌しながら190℃まで加熱し、この温度で約16時間維持する。
【0184】
[0183]重合の第2段階で、反応フラスコ中の180℃のプレポリマーに、アルゴンパージ下で6.96g(48.3ミリモル)のD,L−ラクチド及び62.64g(0.54モル)の溶融グリコリドを添加する。反応混合物の温度を230℃まで上昇させ、静かに撹拌しながらプレポリマーを溶融グリコリド中に溶解させる。10分後、温度を200℃まで降下させ、撹拌しながらその温度で約2時間保持する。反応器からポリマーを溶融物として取り出し、放冷する。磨り潰した後、ポリマーを、0.1mmHgの減圧下に110℃で16時間加熱することによってポリマーを乾燥して、任意の未反応モノマー類を除去する。
【0185】
実施例2.カプロラクトンが39.5モル%、D,L−ラクチドが34.7モル%、グリコリドが25.8モル%のポリ(D,L−ラクチド)−ブロック−ポリ(カプロラクトン−ran−グリコリド)−ブロック−ポリ(D,L−ラクチド)の合成
[0184]火炎で乾燥した三口250ml丸底フラスコに、36.0g(0.316モル)のカプロラクトン、及び24.0g(0.207モル)のグリコリドを仕込む。フラスコに、火炎で乾燥した機械式撹拌機及びアルゴンパージ及び減圧用のアダプターを取り付ける。内容物を120℃まで加熱し、真空下で4時間撹拌する。アルゴンでパージし、室温まで冷却した後、0.11g(1.4ミリモル)の蒸留ジエチレングリコール、及び0.097mlのオクチル酸錫(II)(0.33Mトルエン溶液)(モノマー:触媒のモル比、25,000:1)を添加する。フラスコを排気し、続いてアルゴンを吹き込むことによって反応容器をパージすることを3回繰り返す。反応フラスコを、1気圧のアルゴン圧の下で、ゆっくり撹拌しながら180℃まで加熱し、この温度で約24時間維持する。
【0186】
[0185]重合の第2段階で、反応フラスコ中の180℃のプレポリマーに、アルゴンパージ下で40.0g(0.278モル)のD,L−ラクチドを添加する。撹拌しながら温度を200℃まで上昇させ、その温度で約2時間保持する。反応器からポリマーを溶融物として取り出し、放冷する。磨り潰した後、ポリマーを、クロロホルムに溶解し、次いでメタノール中で沈殿させる。沈殿物を0.1mmHgの減圧下に110℃で16時間加熱することによって、溶媒、未反応モノマー、及び水を除去する。
【0187】
実施例3.実施例1又は2のコポリマーを使用する薬物送達性ステント被覆の製造方法
[0186]第1ステップで、ステントに任意選択の下塗り被覆を塗布する。約0.1質量%〜約15質量%(例えば、約2.0質量%)の実施例1又は2のコポリマーを含み、残りがクロロホルムと1,1,1−トリクロロエタンとの溶媒混合物(約50質量%のクロロホルム及び約50質量%の1,1,1−トリクロロエタンを含む)である下塗り溶液を調製する。該溶液をステント上に塗布し、下塗り層を形成する。
【0188】
[0187]下塗り層を塗布するには、噴霧装置(例えば、ニューヨーク州MiltonのSono−Tek Corpが製造するSono−Tek MicroMist噴霧ノズル)を使用する。該噴霧装置は、飛沫同伴気体流を用いる超音波アトマイザーである。シリンジ型ポンプを使用して被覆溶液をノズルに供給する。組成物を、超音波エネルギーで霧状にし、ステントの表面に塗布する。実用的なノズル−ステント距離は、約1ワット〜2ワットの超音波出力で約20mm〜約40mmである。組成物を塗布する過程中に、ステントを、任意選択で、その長軸周りに約100〜600rpm、例えば、約400rpmの速さで回転する。また、塗布中にステントを同じ軸に沿って直線的に動かす。
【0189】
[0188]下塗り溶液を、3.0×12mmのビジョン(VISION)(商標)ステント(Abbott Vascular Corp.から入手できる)に一連の20秒のパスで塗布して、噴霧パス当たり約20μgの被覆を堆積させる。噴霧パスの合間に、ステントを、外界温度で約10秒〜約30秒間乾燥させる。4回の噴霧パスを塗布し、続いて該下塗り層を約80℃で約1時間ベーキングする。結果として、約80μgのソリッド含有量を有する下塗り層を形成できる。この実施例の目的に関して、「ソリッド」は、すべての揮発性有機化合物(例えば、溶媒)を除去した後に、ステント上に堆積されている乾燥残留物の量を意味する。
【0190】
[0189]下塗り層の塗布に類似の手法で、次の処方を使用してポリマー−治療薬溶液を調製し、塗布する:
(a)約0.1質量%〜約15質量%(例えば、約2.0質量%)の実施例1又は2のコポリマー;
(b)約0.1質量%〜約2質量%(例えば、約1.0質量%)の治療薬。一実施形態において、該治療薬は、エベロリムス(カリフォルニア州サンタクララ市のAbbott Vascular Corp.から入手できる)である;及び
(c)残りの、約50質量%のクロロホルム及び約50質量%の1,1,1−トリクロロエタンを含む溶媒混合物。
【0191】
[0190]薬物含有処方物を、コポリマー下塗り層の塗布に類似した手法でステントに塗布する。該処理は、約30μg〜約750μg(例えば、約175μg)のソリッド含有量、及び約10μg〜約250μg(例えば、約55μg)の薬物含有量を有する薬物−ポリマーリザーバー層の形成をもたらす。塗布した後、該被覆を、50℃で2時間ベーキングして、任意の残留溶媒を除去する。
【0192】
[0191]本発明の特定の実施形態を提示、説明してきたが、当業者にとって、本発明から逸脱しないで、そのより広い態様においてそれに対して変更及び修正をなし得ることは明らかであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、それらの範囲内に、すべてのこのような変更及び修正を本発明の真の精神及び範囲内に含むとして包含するものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造A−B−A’の生体分解性トリブロックコポリマーを含有する組成物であって、
該A及びA’ブロックが、各々独立に、体温よりも高いT又はTを有する硬質のブロックであり;
該Bブロックが、A及びA’ブロックのT又はTよりも低いTを有する軟質のブロックであり;
該A、B及びA’ブロックが、各々独立に、約1kDa〜約500kDaのポリマー数平均分子量(M)を有し;且つ
該A及びA’ブロックが、同じ又は異なっていてもよい、組成物。
【請求項2】
硬質のA及びA’ブロックの引張弾性率が、独立に、約1,000MPaを超え、且つ軟質のBブロックの引張弾性率が、約1,000MPa未満である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
A及びA’ブロックの重量分率が、トリブロックコポリマーの約1%〜約99%である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
A、B及びA’ブロックが、各々独立に、1〜4種の異なる種類のモノマーから構成されるポリマーを含み、それぞれの種類のモノマーが、約5〜約5,000個のモノマー単位を有する、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
AとA’ブロックが同じである、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
AとA’ブロックが異なる、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
A及びA’ブロックが、各々独立に、ポリ(L−ラクチド)(PLLA)、ポリ(D,L−ラクチド)、ポリ(グリコリド)(PGA)、ポリ(GA−co−D,L−ラクチド)、ポリ(GA−co−L−ラクチド)、
及びこれらのモノマーの配列の任意の変異体からなる群から選択されるポリマーを含み;且つ
Bブロックが、ポリ(カプロラクトン)(PCL)、ポリ(CL−co−GA)、ポリ(トリメチレンカーボネート)(PTMC)、ポリ(TMC−co−GA)、ポリ(TMC−co−D,L−ラクチド)、ポリ(TMC−co−L−ラクチド)、ポリ(TMC−co−CL)、ポリ(TMC−co−D,L−ラクチド−co−GA)、ポリ(TMC−co−CL−co−GA)、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(TMC−co−ジオキサノン)、ポリ(ジオキサノン−co−CL)、ポリ(ジオキサノン−co−D,L−ラクチド)、ポリ(ジオキサノン−co−L−ラクチド)、ポリ(ジオキサノン−co−GA)、ポリ(ジオキサノン−co−D,L−ラクチド−co−GA)、ポリケタール、及びこれらのモノマーの配列の任意の変異体からなる群から選択されるポリマーを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
Bブロックのポリケタールポリマーが、構造
【化1】


を有し、式中、Rは、ポリ(カプロラクトン)ジオール、或いは置換されていてもよい脂肪族、へテロ脂肪族、環式脂肪族、ヘテロ環式脂肪族、芳香族若しくはヘテロ芳香族基、又はこれらの組合せを含む構造HO−R−OHのC〜C24ジオールであり、且つnは、約5〜約5,000の整数である、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
Bブロックが、A及びA’ブロックと非混和性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
トリブロックコポリマーのポリマー末端に結合された少なくとも1つのジヒドロキシアリール基をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
少なくとも1つのジヒドロキシアリール基が、3,4−ジヒドロキシフェニル部分を含む、請求項10に記載の組成物。
【請求項12】
少なくとも1種の生体適合性部分をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種の生体適合性部分が、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレングリコール)、ポリ(テトラメチレングリコール)、ポリエチレンオキシド−co−ポリプロピレンオキシド)、ε−カプロラクトン、β−ブチロラクトン、δ−バレロラクトン、グリコリド、ポリ(N−ビニルピロリドン)、ポリ(アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸)及びその塩、ポリ(スチレンスルホネート)、スルホン化デキストラン、ポリホスファゼン、ポリ(オルトエステル)、ポリ(チロシンカーボネート)、シアル酸、ヒアルロン酸又はその誘導体、ポリ(エチレングリコール)とヒアルロン酸又はその誘導体とのコポリマー、ヘパリン、ポリエチレングリコールとヘパリンとのコポリマー、ポリ(L−リシン)とポリ(エチレングリコール)とのグラフトポリマー、並びにこれらのコポリマーからなる群から選択される、請求項12に記載の組成物。
【請求項14】
少なくとも1種のさらなる生物学的に吸収可能なポリマーをさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項15】
少なくとも1種のさらなる生物学的に吸収可能なポリマーが、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリ(ヒドロキシブチレート−co−バレレート)、ポリ(カプロラクトン)、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリエチレン−グリコール)、ポリ(ブチレンテレフタレート)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(ブチレンテレフタレート)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)、ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)、ポリ(カプロラクトン)−ブロック−ポリ(エチレン−グリコール)−ブロック−ポリ(カプロラクトン)、及びこれらのブレンドからなる群から選択される、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
抗増殖、抗悪性腫瘍、抗有糸分裂、抗炎症、抗血小板、抗凝固、抗フィブリン、抗トロンビン、抗生物質、抗アレルギー、及び抗酸化性物質からなる群から選択される少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項17】
少なくとも1種の生物学的に活性な薬剤が、パクリタキセル、ドセタキセル、エストラジオール、一酸化窒素供与体、スーパーオキシドジスムターゼ、スーパーオキシドジスムターゼ模倣薬、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル(4−アミノ−TEMPO)、タクロリムス、デキサメタゾン、ラパマイシン、ラパマイシン誘導体、40−O−(2−ヒドロキシ)エチル−ラパマイシン(エベロリムス)、40−O−(2−エトキシ)エチル−ラパマイシン(ビオリムス)、40−O−(3−ヒドロキシ)プロピル−ラパマイシン、40−O−[2−(2−ヒドロキシ)エトキシ]エチル−ラパマイシン、40−O−テトラゾール−ラパマイシン、40−エピ−(N1−テトラゾリル)−ラパマイシン(ゾタロリムス)、ピメクロリムス、メシル酸イマチニブ、ミドスタウリン、クロベタゾール、前駆細胞捕捉抗体、治癒促進薬、これらのプロドラッグ、これらの共用薬、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を含む被覆。
【請求項19】
約10ミクロン以下の厚さを有し、且つ約12カ月以内にその質量の約100%を減損する、請求項18に記載の被覆。
【請求項20】
請求項10に記載の組成物を含む被覆。
【請求項21】
請求項12に記載の組成物を含む被覆。
【請求項22】
請求項14に記載の組成物を含む被覆。
【請求項23】
請求項16に記載の組成物を含む被覆。
【請求項24】
約10ミクロン以下の厚さを有し、且つ約12カ月以内にその質量の約100%を減損する、請求項23に記載の被覆。
【請求項25】
請求項17に記載の組成物を含む被覆。
【請求項26】
請求項1記載の組成物を含む材料から形成される埋込型デバイス。
【請求項27】
前記材料が、デバイスを覆って堆積される被覆である、請求項26に記載のデバイス。
【請求項28】
前記被覆が、約10ミクロン以下の厚さを有し、且つ約12カ月以内にその質量の約100%を減損する、請求項27に記載のデバイス。
【請求項29】
ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、並びに弁からなる群から選択される、請求項26に記載のデバイス。
【請求項30】
請求項10に記載の組成物を含む材料から形成される埋込型デバイス。
【請求項31】
請求項12に記載の組成物を含む材料から形成される埋込型デバイス。
【請求項32】
請求項14に記載の組成物を含む材料から形成される埋込型デバイス。
【請求項33】
請求項16に記載の組成物を含む材料から形成される埋込型デバイス。
【請求項34】
前記材料が、デバイスを覆って堆積される被覆である、請求項33に記載のデバイス。
【請求項35】
前記被覆が、約10ミクロン以下の厚さを有し、且つ約12カ月以内にその質量の約100%を減損する、請求項34に記載のデバイス。
【請求項36】
ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、並びに弁からなる群から選択される、請求項33に記載のデバイス。
【請求項37】
ステントである、請求項36に記載のデバイス。
【請求項38】
請求項17に記載の組成物を含む材料から形成される埋込型デバイス。
【請求項39】
Bブロックに対応するモノマー(複数可)との開環重合(ROP)を実施すること(ここで、2つの活性末端基を含む開始化合物を使用して該Bブロックの第1モノマーとのROPを開始し、該開始化合物上の2つの活性末端基は、独立に、ヒドロキシル、アミノ又はチオール基である);及び
A及びA’ブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施すること
を含む、請求項5に記載の組成物の調製方法。
【請求項40】
Bブロックに対応するモノマー(複数可)との開環重合(ROP)を実施すること(ここで、1つの活性末端基及び1つの保護された末端基を含む開始化合物を使用して該Bブロックの第1モノマーとのROPを開始し、該開始化合物上の活性末端基は、ヒドロキシル、アミノ又はチオール基であり、該開始化合物上の保護された末端基は、保護されたヒドロキシル、アミノ又はチオール基である);
Aブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施すること;
Aブロックのポリマー末端に形成される任意の活性基を保護すること;
Bブロックのポリマー末端の、開始化合物に由来する保護された末端基を脱保護すること;
A’ブロックに対応するモノマー(複数可)とのROPを実施すること;及び
Aブロックのポリマー末端の保護された活性基を任意選択で脱保護すること
を含む、請求項6に記載の組成物の調製方法。
【請求項41】
請求項1に記載の組成物を含む材料からデバイスを形成することを含む、埋込型デバイスの製作方法。
【請求項42】
埋込型デバイスの少なくとも一部を覆う被覆として、前記材料を堆積させることを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
埋込型デバイスが、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、並びに弁からなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
請求項16に記載の組成物を含む材料からデバイスを形成することを含む、埋込型デバイスの製作方法。
【請求項45】
埋込型デバイスの少なくとも一部を覆う被覆として、前記材料を堆積させることを含む、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
埋込型デバイスが、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、並びに弁からなる群から選択される、請求項44に記載の方法。
【請求項47】
請求項26に記載の埋込型デバイスを患者に埋め込むことを含む、患者の状態又は障害の治療又は予防方法であって、該状態又は障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈と人工移植片との吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、及び腫瘍性閉塞からなる群から選択される、治療又は予防方法。
【請求項48】
埋込型デバイスが、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、並びに弁からなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
請求項33に記載の埋込型デバイスを患者に埋め込むことを含む、患者の状態又は障害の治療又は予防方法であって、該状態又は障害が、アテローム性動脈硬化症、血栓症、再狭窄、出血、血管解離、血管穿孔、血管動脈瘤、不安定プラーク、慢性完全閉塞、卵円孔開存、跛行、静脈と人工移植片との吻合部増殖、胆管閉塞、尿管閉塞、及び腫瘍性閉塞からなる群から選択される、治療又は予防方法。
【請求項50】
埋込型デバイスが、ステント、グラフト、ステント−グラフト、カテーテル、リード及び電極、クリップ、シャント、閉鎖デバイス、並びに弁からなる群から選択される、請求項49に記載の方法。

【公表番号】特表2010−532216(P2010−532216A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514912(P2010−514912)
【出願日】平成20年5月22日(2008.5.22)
【国際出願番号】PCT/US2008/064585
【国際公開番号】WO2009/005909
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(507135788)アボット カーディオヴァスキュラー システムズ インコーポレイテッド (92)
【Fターム(参考)】