説明

埋込型医療装置と通信するためのシステム及び方法

RF回路をデューティ・サイクル動作させることによって埋込型装置の所要電力を低減する形で、埋込型医療装置と外部装置の間の高周波の(RF)通信を可能にするための、遠隔計測システムが提示される。外部装置が、埋込型装置との通信セッションを確立するために、ウェイクアップ特殊文字及び装置IDの繰り返しシーケンスを含んだデータ・セグメントを送信する、埋込型装置のためのウェイクアップ・スキームが提供される。ウェイクアップ・スキームは、多重通信チャンネルを使用して動作するように設計することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本明細書は、2005年4月27日出願の米国特許出願第11/116,108号に対する優先権の利益を主張し、これらの仮出願の全体を参照によりここに援用する。
【0002】
本発明は、心臓ペースメーカや埋込型電気除細動器/細動除去器などの埋込型医療装置に関する。詳細には、本発明は、かかる装置に遠隔計測を実装するためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ペースメーカや埋込型電気除細動器/細動除去器などの心臓律動管理装置を含んだ埋込型医療装置(IMD)は一般に、高周波の遠隔計測リンクを介して通信データを外部装置(ED)と通信するための機能を有する。かかる外部装置には、埋め込まれた医療装置の動作パラメータをプログラムするために使用する外部プログラマがある。例えば、ペーシング・モードやペースメーカのその他の動作特性は、このようにして埋め込み後に修正することができる。また、現代の埋込型装置は、埋め込まれた装置からプログラマへ情報を送信できるように、双方向通信の機能も含む。埋込型装置から一般に遠隔計測できるデータの中に、様々な動作パラメータや生理的データが入っており、生理的データは、リアルタイムで収集されるか、あるいは前の監視運転から記憶される。
【0004】
外部プログラマは通例、電気誘導リンクを介してIMDと通信するように構成される。外部プログラマとIMDにあるコイル・アンテナが電気誘導式に結合されて、この2本の結合されたコイルの共振周波数に対応する搬送波形を変調することによってデータを送信することができる。電気誘導リンクは、外部装置のコイル・アンテナがIMDに接近(一般に2〜3インチ(5〜8センチ)の範囲内)していることが必要な、短距離の通信チャンネルである。その他のタイプの遠隔計測システムは、IMDとEDの間の無線媒体を介した通信を可能にするために、遠距離の高周波(RF)放射電磁波を利用することもできる。かかる長距離RF遠隔計測を使用することによって、IMDは、外部プログラマや遠隔モニタなどのEDと、接近することなく通信することが可能になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
アンテナに送られるエネルギーのかなりの部分を遠距離放射線として放射するには、駆動信号の波長はアンテナの長さよりもあまり大きくならないようにするべきである。したがって、埋込型装置での使用に適したサイズのアンテナによる遠距離高周波通信には、数百MHz〜数GHzの周波数範囲の搬送波が必要である。この周波数範囲に対して活動状態の送信器と受信器には、かなりの電力(一般に数十ミリワット)を消費する特殊なRFコンポーネント(一般にSiGe又はGaAs半導体デバイスを含む)が必要である。しかし、埋込型医療装置は、装置のハウジング内部に含まれている電池から電力が供給される。この電池は、限られた量の連続出力しか供給することができず、その後は供給が止まってしまう。埋込型装置内の電池がなくなると交換しなければならず、それには再埋め込み処置が必要になる。したがって、埋込型医療装置のための無線遠隔計測システムでは、電力の節約が重要な設計目的である。
【0006】
臨床環境ではまた、無線媒体を介した通信が複数の装置間で可能であるように、複数の埋込型及び/又は外部装置を、1つの部位に配置することもよくある。この状況で、各装置の任意の対の間の通信セッションを確立するように、複数の装置の間の媒体へのアクセスを制御しなければならない。それぞれ異なった装置間で複数の通信セッションを、同時に行うことを可能とすることも望ましいはずである。しかし、この環境において、電力の節約を考慮することによって課せられる制約の範囲内で、IMDと通信を迅速に確立することができる手段を提供するのは困難である。また、家庭や診療所には、EDとIMDの間の通信と干渉する可能性のある外部RFエネルギー源が存在し、この問題にも対処しなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、埋込型装置の所要電力を低減することができるようにして、装置が複数ある環境で埋込型医療装置と外部装置の間の高周波(RF)通信を可能にするための遠隔計測システムに関する。各埋込型装置は、ウェイクアップ・タイマで決められた周期的な間隔で指定された時間ウインドウの間、その送信器と受信器の電源を入れ、外部装置から送信されたウェイクアップ特殊文字の受信を待つようにプログラムされる。有効範囲内にある複数のかかる装置の中から選択した埋込型装置1つだけをウェイクアップし、それと通信を確立するために、特定の埋込型装置一意の識別コードも外部装置から送信される。埋込型装置は、識別コードが送信されたと判定すると、確認応答信号を送信し、指定された期間、外部装置からの応答を待つ。次いで、確認応答信号に対する応答が埋込型装置によって受信されると、外部装置と埋込型装置は通信セッションの確立を試みる。狭帯域ノイズを回避し、装置間の同時通信セッションを可能にするために、周波数で区分けされた多重通信チャンネルを使用することもできる。ウェイクアップ・シーケンスを送信し、通信セッションを確立する際に、多重通信チャンネルのうちの1つ又は複数を制御チャンネルとして専用で使用してもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
埋込型装置による電力消費は、RF送受信コンポーネントのデューティ・サイクルを管理することによって低減させられる。長距離RF遠隔計測回路(すなわち、送信器と受信器)は一般に、動作するために数十ミリワット程度の電力を必要とする。一方で現在使用されている埋込型心臓装置は通常、マイクロワットの範囲の平均電力で動作するように設計されている。つまり、RF遠隔計測回路を、かかる装置の電力使用量を満たすようにデューティ・サイクルを引き下げて動作させなければならない。埋込型装置のRF遠隔計測回路は、電源を入れることも切ることもでき、これはそれぞれアウェイク(awake)状態、スリープ(sleep)状態と呼ばれる。埋込型装置のRF遠隔計測回路のデューティ・サイクル動作は、周期的なウェイクアップ間隔を決めるウェイクアップ・タイマによって実装することができ、このウェイクアップ間隔で埋込型装置はそのRF回路の電源を入れ、指定された期間の間、外部装置からの送信をリスンする。この時間ウインドウはウェイクアップ・ウインドウと呼ばれる。外部装置からの送信に対して確認応答が行われると、プロトコルをハンドシェークすることによって通信セッションを確立することができ、次いで装置間でデータを転送することができる。電力消費を最小限にするには、外部装置からのセッション要求を確実に認識できると同時に、ウェイクアップ間隔ごとに、できるだけ短い時間で埋込型装置のRF回路の電源が入ることが望ましい。埋込型装置は、そのウェイクアップ・ウインドウ中に外部装置からのセッション要求を認識すると、外部装置との通信セッションを確立するのに十分な間だけアウェイクのままでいる。そうでない場合は、次のウェイクアップ間隔が生じるまで、埋込型装置はスリープ状態に戻る。
【0009】
本明細書では、埋込型装置の所要電力を低減させる形で、装置が複数ある環境で埋込型医療装置と外部装置の間の高周波の(RF)通信を可能にするための遠隔計測システムについて説明する。システムの例では、外部装置は、埋込型装置との通信セッションを確立するために、ウェイクアップ特殊文字の反復シーケンスを含んだデータ・セグメントを送信するようにプログラムされる。埋込型装置は、ウェイクアップ・タイマで決められた周期的なウェイクアップ間隔で、ウェイクアップ・ウインドウと呼ばれる指定された時間ウインドウの間、その送信器と受信器の電源を入れ、外部装置から送信されたウェイクアップ特殊文字のうちの1つを受信するのを待つようにプログラムされる。埋込型装置は、特殊文字を1つ受信すると、連続するウェイクアップ特殊文字を受信し続ける限り、その送信器と受信器を電源が入った状態に維持する。有効範囲内にある複数のかかる装置の中から選択した埋込型装置1つだけをウェイクアップさせ、それと通信を確立するために、特定の埋込型装置一意の識別コードも外部装置から送信される。一実施形態では、識別コードは、各埋込型装置をウェイクアップさせるために一意のウェイクアップ・シーケンスが使用されるようにウェイクアップ・シーケンス内に含まれる。他の実施形態では、識別コードは、1つ又は複数のウェイクアップ文字が送信された後に送信される。埋込型装置は、ウェイクアップ文字でウェイクアップすると、識別コードが送信されたかどうか判定するまで受信データを受信し続ける。埋込型装置は、識別コードが送信されたと判定すると、確認応答信号を送信し、指定された期間、外部装置からの応答を待つ。外部装置と埋込型装置は、確認応答信号に対する応答が埋込型装置によって受信されると、プロトコルをハンドシェークすることによって、通信セッションを確立するようにプログラムされている。次いで通信セッション中、埋込型装置のRF送信器と受信器を、通信セッションの時間ウインドウ中電源が入った状態に維持しても、あるいは決められたプロトコルに従って規定された間隔で電源を切る。
【0010】
外部装置と埋込型装置のコントローラは、多重通信チャンネルを利用する形でそれぞれの遠隔計測ハードウェアを動作させるようにプログラムされている。この多重チャンネルは、1つのチャンネルを介した通信がその他のチャンネルを介した通信を妨げないようにそれぞれ異なった搬送周波数が決められている。データ転送に多重チャンネルを使用することによって、異なる埋込型装置との複数の通信セッションを同時に行うことができる。また、外部源からのノイズの大部分は、ノイズのエネルギーが特定の周波数範囲に限定される、狭帯域タイプのものである。狭帯域ノイズ源の例には、無線電話などの通信装置や、家庭と診療所に通例見られるその他多くの種類の電子機器が含まれる。かかる狭帯域ノイズが遠隔計測に使用されるのと同じ周波数範囲であると、帯域内にあるといわれ、装置間の通信と干渉する可能性がある。常に帯域内ノイズと同じ周波数のチャンネルだけが干渉を受けるので、多重通信チャンネルを使用すると、この問題の軽減に役立つ。この装置は、チャンネルを通信に使用する前に、そのチャンネルのノイズも、他の交信の存在の有無も試験するようにプログラムすることができる。
【0011】
ただし、上記のウェイクアップ・スキームには、埋込型装置が待ち受けるウェイクアップ・シーケンスを送信するために、1つのチャンネルを使用する外部装置が必要となる。したがって、埋込型装置をウェイクアップされ、それと通信を確立することに1つのチャンネルを専用で使用し、それをウェイクアップ・チャンネル又は制御チャンネルと呼び、その他のチャンネルをデータ通信に使用し、それらをデータ・チャンネルと呼ぶ。通信セッションが確立されると、外部装置は、使用可能なノイズのないデータ・チャンネルを検出し、双方の装置がデータ転送のためにそのチャンネルに切り替えできるように埋込型装置にその情報を送信する。次いで制御チャンネルは、他の装置による通信セッションの確立に使用するために解放される。別の実施形態では、狭帯域ノイズによって単独の制御チャンネルが使用できなくなる可能性を考慮に入れるために、多重制御チャンネルが使用される。その場合の埋込型装置は、その受信器の電源を入れ、それぞれ異なった制御チャンネル上でウェイクアップ文字をリスンするようにプログラムすることができる。それぞれ異なった制御チャンネルのウェイクアップ間隔は、同じでも異なっていてもよい。
【0012】
(1.ハードウェア・コンポーネントの例)
図1には、外部装置200の1次遠隔計測コンポーネントと、埋込型医療装置100が示されている。この機能ブロック図では、これらのコンポーネントは、装置ごとに同じものであるとして示されている。この例示的実施形態では、外部装置と埋込型装置は、遠隔計測だけでなく装置の運転全体を管理するマイクロプロセッサやデータ/プログラム記憶用メモリを含んだコントローラ102a又は102bをそれぞれ有する、マイクロプロセッサ・ベースの装置である。このコントローラで実行されるコードはまた、以下に説明するデューティ・サイクル管理スキームも実装している。埋込型装置100はおそらく、ペースメーカ又は埋込型電気除細動器/細動除去器などの心律動管理装置であり、外部装置200はおそらく、外部プログラマ又は遠隔モニタなどのデータ収集装置である。ユーザー・インターフェース300(キーボードやモニタなど)によって、臨床医などの使用者は外部装置の操作を指示することができる。
【0013】
長距離RF受信器120a、120bと、長距離RF送信器110a、110bとは、それぞれ、埋込型装置と外部装置内のマイクロプロセッサ102a、102bにインターフェースで接続される。また各装置では、送信器と受信器は、送信/受信スイッチ130a、130bを介してアンテナ101a、101bに結合される。送信/受信スイッチ130a、130bは、マイクロプロセッサによって制御され、送信器からアンテナへ、又はアンテナから受信器へ高周波の信号を通過させる。装置間の通信を実現するために、デジタルデータで変調した高周波の搬送信号が、一方のアンテナからもう一方のアンテナへ無線で送信される。この搬送信号からデジタルデータを抽出するための復調器が各受信器に組み込まれ、デジタルデータで搬送信号を変調するための変調器が各送信器に組み込まれている。各装置のRF送信器と受信器用のコントローラへのインターフェースによって、データ転送が可能になる。埋込型装置にはまた、下記の形でデューティ・サイクルを管理するために、RF受信器及び/又は送信器の電源をコントローラで入切できる手段が組み込まれている。埋込型装置には、RFデューティ・サイクルを規定するためのウェイクアップ・タイマ180もまた示されている。このタイマは、コントローラで実行されるコードに実装しても、別個のコンポーネントであってもよい。図1にはまた、埋込型装置及び外部装置用の、電気誘導式に結合された送信器/受信器140a、140bとアンテナ150a、150bも示されている。この2つの装置によって、これらが物理的に互いに接近していると、電力消費を配慮せずに通信を行うことができる。
【0014】
(2.通信有効化スキームの説明)
埋込型医療装置の無線遠隔計測システムは一般に、複数のネットワーク参加者が使用可能な無線媒体の帯域を共用している、多重アクセス・ネットワークである。所期の受信者へデータを送信する前に、各ネットワーク参加者が媒体への排他的なアクセスを獲得できるように、媒体アクセス制御(MAC)プロトコルを決めることができる。2つ以上の参加者が同時に送信を試みると、衝突が生じる。あるネットワークでは、送信が開始されたときに、他のネットワーク活動が存在しているか見極めるために媒体をリスンしている送信者によって衝突が検出される。衝突が検出されると、送信者は送信を中止し、再度試す前に、無作為又は決められた期間の間待機する。しかし、大部分の無線送受信器は、半二重モードで動作し、進行中のネットワーク活動に対して送信とリスンを同時に行うことができない。したがって、無線ネットワークのMACプロトコルは一般に、衝突発生の確率を最小限にするために、帯域外信号又はハンドシェーク・プロトコルを使用する。後者のタイプのプロトコル例では、衝突を避けるために、図2に示されている4重のRTS−CTS−DS−ACK交換が使用される。特定の受信者にメッセージを送信したいネットワーク参加者はまず、送信要求(RTS)フレームを送信し、決められた期間の間、所期の受信者からの送信可(CTS)フレームを待つ。RTS又はCTSフレームのどちらかを聞いている他のすべてのネットワーク参加者は、その送信を延期する。CTS応答を受信すると、送信者は、媒体が排他的に獲得されたと推定して、次いで、受信者へのデータ・セグメント(DS)の送信を開始する。データがエラーなく受信されると、受信者は確認応答(ACK)フレームで応答する。このフレームによって、別の参加者によるアクセスに対して媒体が解放される。本発明は、様々な実施形態において、上記の媒体アクセス制御プロトコルの任意の文脈でうまく機能することができる。
【0015】
次に、特定の通信有効化スキームについて、外部プログラマ又は又は遠隔モニタ(PRM/RM)と埋込型装置(パルス発生器すなわちPGと呼ばれる)を参照して説明する。この実施形態では、ウェイクアップ・プロセスは上記のハンドシェーク衝突回避プロトコルの枠組みの中で機能する。かかるプロトコルでは、PRM/RMは、RTSとCTSフレームを送信して、他の参加者にその送信を延期させる。次いで、ウェイクアップ文字と装置IDを含んだデータ・セグメントDSを、通信したい特定のPGへ送信する。次いでアウェイクしたPGが、ACKフレームを送信して媒体を解放する。ウェイクアップ・プロセスは図3に示されている。DSメッセージの長さは、大きい数に設定され(256バイトなど)、単にウェイクアップ・インジケータとして使用するために受信される特殊なnビット(10ビットなど)文字の繰り返しシーケンスを含む。一実施形態では、埋込型装置と外部装置は、8b/10bなどのDCバランス・データ・ストリームを形成する伝送コードで通信する。かかるビット・バランス・データ・ストリームは、RF通信では有利である。ウェイクアップ特殊文字を変動させないために、伝送コードで変更されないビット・バランス・シーケンスとしてウェイクアップ特殊文字を選択してもよい。
【0016】
また、このデータ・セグメントは装置IDも含む。この装置IDは、PGごとに一意のウェイクアップ文字を使用することによってウェイクアップ・インジケータ自体に組み込んでも、あるいはウェイクアップ文字の後に送信される別個のサブ・セグメントであってもよい。PGは周期的にウェイクアップし(20〜30秒毎など)、非常に短い間隔の間リスンを行ってウェイクアップ特殊文字を受信する。ウェイクアップ特殊文字を1つ受信すると、PGは、さらにいくつかのウェイクアップ特殊文字を受信するのに十分な間だけアウェイクのままでいる。一実施形態では、ウェイクアップ文字はPGに対して一意であり、アウェイクしたPGでは、PRM/RMがそのPGとの通信セッションの確立を求めていることが分かっている。次いでPGは、データ・セグメントが終了した後アウェイク状態のまま、ACKフレームをPRM/RMに送信する。別の実施形態では、アウェイクしたPGは、データ・セグメントに後で現れる装置IDを待ち、装置IDが自身のものと合致しない場合はスリープ状態に戻る。そうでない場合は、PGは、このデータ・セグメントの後アウェイク状態のまま、ACKフレームで応答する。ACKフレーム送信後、PGは、PRM/RMからの応答を受信するために、延長した期間の間アウェイク状態のままになる。このACKメッセージを正常に受信したPRMは続けて、PGとの通信セッションを確立するために、プロトコルの枠組みの中でメッセージ・トラフィックを争奪する接続プロセスを行う。
【0017】
すぐ前に述べた通信スキームによって、PRM/RMが、単一の通信チャンネルを共用する複数のPGの中から選択した1つと、通信セッションを確立することが可能になる。他の変更形態では、通信システムが、周波数で区分けされた多重通信チャンネルを利用する。チャンネルの1つが、制御又はウェイクアップ・チャンネルとして専用で使用され、その他のチャンネルは、ウェイクアップ・チャンネルによって確立された通信セッションを継続するためのデータ・チャンネルとして使用される。図4に、多重チャンネル環境で通信セッションを確立する際にPRM/RMによって行われるステップが示される。PGは、周期的にウェイクアップし、上記の形でウェイクアップ・チャンネル上のウェイクアップ文字をリスンするように構成される。ステップS1では、PRM/RMは、ウェイクアップ・チャンネルが使用可能であると判定されるまで待つ(チャンネル上の他の装置からのACKフレームを受信する、あるいはチャンネル上で交信がないことを判定するなどよって)。ステップS2では、PRM/RMが、ウェイクアップ・チャンネルを介したRTS−CTS−DSシーケンスを送信し、DSフレームは、上記のように通信したいPGの装置IDを含んでいる。ステップS3では、PRM/RMは、PGからのACKを待つ。ACKが指定時間ウインドウ後に受信されない場合、タイムアイトが宣言され、PRM/RMは、ウェイクアップ・シーケンスをもう1回送信するためにステップS1に戻る。そうでない場合は、ステップS4のPRM/RMは、ACKフレーム受信後、そのPGに応答し通信セッションを確立するために、ウェイクアップ・チャンネルへのアクセス権を争奪する。次いでステップS5では、PRM/RMは、使用可能なデータ・チャンネルを検出し、ウェイクアップ・チャンネルを介してデータ・チャンネルIDをPGに送信する。ステップS6では、PRM/RM及びPGは両方とも、さらに通信を行うために、選択したデータ・チャンネルに切り替える。
【0018】
多重データ・チャンネルを有することによって、このシステムを使用すれば、狭帯域ノイズによりチャンネルの1つが使用に適さなくなった場合でも、データ通信を行うことが可能になる。狭帯域ノイズによりウェイクアップ・チャンネルの1つが損なわれた場合に、通信セッションをPGで開始できるように、多重ウェイクアップ・チャンネルを使用することが望ましい場合もある。この実施形態では、PGをウェイクアップし、各ウェイクアップ・チャンネル上のウェイクアップ文字をリスンするようにプログラムされている。ウェイクアップ・チャンネルごとにPGがウェイクアップし、リスンするウェイクアップ間隔は、同じでも異なっていてもよい。例えば、PGは、1分毎にウェイクアップして第1ウェイクアップ・チャンネル上のウェイクアップ文字をリスンし、3分毎にウェイクアップして第2ウェイクアップ・チャンネル上のウェイクアップ文字をリスンしてもよい。この場合、PRM/RMは、第1及び第2ウェイクアップ・チャンネル上のウェイクアップ・シーケンスを、交互又は同時に送信するようにプログラムされる。
【0019】
前述の特定の実施形態に関して本発明を説明したが、多くの代替形態、変形形態、及び変更形態が当業者には明らかであろう。かかる代替形態、変形形態、及び変更形態は、以下の添付の特許請求の範囲に含まれるためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】埋込型装置及び外部装置のための遠隔計測システムのブロック図である。
【図2】衝突回避のためのハンドシェーク・プロトコルの図である。
【図3】本発明によるウェイクアップ・スキームの図である。
【図4】多重チャンネル環境において通信セッションを確立する際に、PRM/RMによって行われるステップの図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋込型医療装置と外部装置の間の高周波(RF)通信を可能にするための遠隔計測システムであって、
前記埋込型装置と前記外部装置にそれぞれ組み込まれた、アンテナ、RF送信器、RF受信器、コントローラと、
前記埋込型装置に組み込まれたウェイクアップ・タイマとを備え、
前記RF送信器と前記RF受信器が、その電源の入切を可能にするために、前記埋込型装置内の前記コントローラにインターフェースで接続され、
前記外部装置が、前記埋込型装置との通信セッションを確立するために、ウェイクアップ特殊文字と装置IDの繰り返しシーケンスを含んだデータ・セグメントを送信するようにプログラムされ、
前記埋込型装置が、前記ウェイクアップ・タイマで決められた周期的な間隔で、指定された時間ウインドウの間、その送信器と受信器の電源を入れ、前記外部装置から送信された前記ウェイクアップ特殊文字のうちの1つを受信するのを待つようにプログラムされ、
前記埋込型装置が、特殊文字を1つ受信すると連続するウェイクアップ特殊文字を受信し続ける限り、その送信器と受信器を電源が入った状態に維持し、前記装置IDが自身のIDに合致した場合前記外部装置に確認応答信号を送信し、次いで、前記外部装置からの応答を指定された時間ウインドウ待つようにプログラムされ、
前記外部装置と前記埋込型装置が、前記確認応答信号に対する応答が前記埋込型装置によって受信されると、通信セッションを確立するようにプログラムされるシステム。
【請求項2】
前記装置IDが、特定の埋込型装置に対する一意のウェイクアップ文字を使用することによって前記ウェイクアップ文字に組み込まれる請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記装置IDが、前記ウェイクアップ文字後のデータ・セグメントに含まれる請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記外部装置と前記埋込型装置の前記RF送信器及び前記RF受信器が、周波数で区分けされた多重通信チャンネルの間で切り替えることができる請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記多重チャンネルの1つが、通信セッションを確立するためのウェイクアップ・チャンネル専用で使用され、残りのチャンネルが、確立された通信セッションを継続するためのデータ・チャンネルである請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記外部装置が、RTSフレーム、CTSフレーム、前記データ・セグメントを前記ウェイクアップ・チャンネルを介して送信するようにプログラムされ、前記埋込型装置が、ACKフレームを前記ウェイクアップ・チャンネルを介して送信することによって応答するようにプログラムされる請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記ACKフレームを前記外部装置から前記ウェイクアップ・チャンネルを介して受信した後、前記外部装置が、前記PGに応答し通信セッションを確立するために、前記ウェイクアップ・チャンネルへのアクセスアクセス権を争奪するようにプログラムされる請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記外部装置が、前記埋込型装置と通信セッションを確立した後、使用可能なデータ・チャンネルを検出し、送信前記データ・チャンネルIDを前記PGにウェイクアップ・チャンネルを介して送信し、さらに通信を行うために前記選択したデータ・チャンネルに切り替えるようにプログラムされる請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記埋込型装置と前記外部装置が、DCバランス・データ・ストリームを形成する伝送コードによって通信する請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記伝送コードが8b/10bである請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
外部装置が埋込型医療装置と通信する方法であって、
前記埋込型装置と通信セッションを確立するために、前記外部装置からウェイクアップ特殊文字と装置IDの繰り返しシーケンスを含んだデータ・セグメントを送信するステップを含み、前記埋込型装置が、周期的な間隔で指定された時間ウインドウの間、その送信器と受信器の電源を入れ、前記外部装置から送信された前記ウェイクアップ特殊文字の中の1つの受信を待ち、
前記埋込型装置が、特殊文字を1つ受信すると連続するウェイクアップ特殊文字を受信し続ける限りその送信器と受信器を電源が入った状態に維持し、前記装置IDが自身のIDに合致した場合、前記外部装置に確認応答信号を送信し、次いで、前記外部装置からの応答を指定された期間待ち、さらに
前記確認応答信号に対する応答が前記埋込型装置によって受信されると、通信セッションを確立するステップを含む方法。
【請求項12】
前記装置IDが、特定の埋込型装置に対する一意のウェイクアップ文字を使用することによって前記ウェイクアップ文字に組み込まれる請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記装置IDが、前記ウェイクアップ文字後のデータ・セグメントに含まれる請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記外部装置と前記埋込型装置の前記RF送信器と前記RF受信器が、周波数で区分けされた多重通信チャンネルの間で切り替えることができる請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記多重チャンネルの1つが、通信セッションを確立するためのウェイクアップ・チャンネル専用で使用され、残りのチャンネルが、確立された通信セッションを継続するためのデータ・チャンネルである請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記外部装置が、RTSフレーム、CTSフレーム、前記データ・セグメントを前記ウェイクアップ・チャンネルを介して送信し、前記埋込型装置が、ACKフレームを前記ウェイクアップ・チャンネルを介して送信することによって応答する請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ACKフレームを前記外部装置から前記ウェイクアップ・チャンネルを介して受信した後、前記外部装置が、前記PGに応答し通信セッションを確立するために、前記ウェイクアップ・チャンネルへのアクセス権を争奪する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記外部装置が、前記埋込型装置と通信セッションを確立した後、使用可能なデータ・チャンネルを検出し、前記データ・チャンネルIDを前記PGにウェイクアップ・チャンネルを介して送信し、さらに通信を行うために前記選択したデータ・チャンネルに切り替える請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記埋込型装置と前記外部装置が、DCバランス・データ・ストリームを形成する伝送コードによって通信する請求項11に記載の方法。
【請求項20】
前記伝送コードが8b/10bである請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−539004(P2008−539004A)
【公表日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−508947(P2008−508947)
【出願日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2006/014957
【国際公開番号】WO2006/116004
【国際公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【出願人】(505003528)カーディアック・ペースメーカーズ・インコーポレーテッド (466)
【Fターム(参考)】