説明

埋込金物固定方法

【課題】(1)コンクリート打設後の施工効率低下を防ぐ。(2)埋込金物の強度低下を防ぐと共に気密性を確保する。(3)埋込金物の位置調整を容易とする。
【解決手段】1つ以上のナットを本設鉄筋に直接的或いは間接的に固定し、1つ以上のボルトの軸先端部によって埋込金物が型枠に押し付けられるよう前記1つ以上のナットに前記1つ以上のボルトを締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、埋込金物固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、型枠工事に輻輳なく埋込金物を目的位置に固定する方法として、下地金物を取付けた先組鉄筋を建込位置に設置した後、下地金物に埋込金物の取付け位置をマーキングし、そのマーキング位置に出入り調整用ナットを備えたボルトを設置して該ボルトと埋込金物の孔部とを連通させ、埋込金物を出入り調整用ナットとフランジプレート付ナット間で締結固定する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−150098号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術では、型枠と埋込金物との密着度が低いため、コンクリート打設時に型枠と埋込金物との隙間にコンクリートが入り込み、コンクリート硬化後に型枠を取り外すと、埋込金物の表面にノロ(コンクリートカス)が残りやすい。つまり、コンクリート打設後に埋込金物の表面とコンクリートの表面とが面一とならず、その後にノロ取り作業が必要となるなど、施工効率に大きな悪影響を及ぼす。
【0005】
また、上記従来技術では、埋込金物に孔部を設ける必要があるため、埋込金物の強度低下を招くと共に、埋込金物に気密性が要求される場合に気密性の確保が困難となる。さらに、上記従来技術では、埋込金物をナット、ボルト、下地金物等を介して先組鉄筋に固定するため、一度、埋込金物を固定してしまうと、型枠の設置後に埋込金物の位置調整を行うことが困難となる。
【0006】
本発明は上述した事情に鑑みてなされたものであり、以下の3点を目的とする。
(1)コンクリート打設後の施工効率低下を防ぐ。
(2)埋込金物の強度低下を防ぐと共に気密性を確保する。
(3)埋込金物の位置調整を容易とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、埋込金物固定方法に係る第1の解決手段として、1つ以上のナットを本設鉄筋に直接的或いは間接的に固定し、1つ以上のボルトの軸先端部によって埋込金物が型枠に押し付けられるよう前記1つ以上のナットに前記1つ以上のボルトを締結することを特徴とする。
【0008】
また、本発明では、埋込金物固定方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記本設鉄筋に番線で固定された仮設鉄筋に前記ナットを溶接することにより、前記ナットを前記本設鉄筋に間接的に固定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、埋込金物を型枠に密着させて固定することができるため、コンクリート打設時に型枠と埋込金物との隙間にコンクリートが入り込むことを防ぐことができる。つまり、本発明によれば、コンクリート打設後に埋込金物の表面とコンクリートの表面とが面一となるため、その後のノロ取り作業が不要となり、コンクリート打設後の施工効率低下を防ぐことができる。
【0010】
また、本発明によれば、埋込金物に孔部を設ける必要がないため、埋込金物の強度低下を防ぐことができると共に、気密性が要求される場合には気密性を確保することができる。さらに、本発明によれば、埋込金物を型枠に押し付けて固定しているため、一度、埋込金物を固定してしまっても、型枠の設置後に埋込金物の位置調整を行うことが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態に係る埋込金物固定方法の各工程手順を示す図である。
【図2】本実施形態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る埋込金物固定方法の各工程手順を示すものである。なお、以下では、図中に示すXYZの3軸座標系を参照しながら各部材の位置関係を説明する。ここでは、XY平面が水平面と平行な面として設定され、Z軸がXY平面に直交して鉛直方向に延びる軸として設定されている。
【0013】
図1において、符号1は本設鉄筋であり、符号2は型枠である。図1(a)の平面図及び側面図に示すように、本設鉄筋1は、コンクリート構造物の建設予定地において、Y軸方向(コンクリート構造物の長さ方向)に延びるように設置され、且つZ軸方向(コンクリート構造物の高さ方向)に距離L1の間隔で複数設置されているものとする。また、X軸方向(コンクリート構造物の幅方向)において、本設鉄筋1から距離L2を隔てた位置に板状の型枠2がXY平面(水平面)に対して垂直に設置されているものとする。
【0014】
なお、Y軸方向に延びるコンクリート構造物を建設する場合、本設鉄筋1を挟んで対向する一対の型枠2が設置されることが通常であるが、説明の便宜上、片方の型枠2のみを図示するものとする。また、一対の型枠2の間において、本設鉄筋1が格子状且つ層状に組み立てられることが通常であるが、説明の便宜上、2本の本設鉄筋1のみを図示するものとする。
【0015】
さて、本実施形態に係る埋込金物固定方法では、まず、図1(a)の平面図及び側面図に示すように、一対の仮設鉄筋3を、Y軸方向において距離L3の間隔で並ぶように、且つZ軸方向に平行な姿勢となるように本設鉄筋1に固定する。ここで、一対の仮設鉄筋3のそれぞれは、番線(針金)4によって本設鉄筋1に間接的に拘束されている。なお、一対の仮設鉄筋3のそれぞれを、溶接によって本設鉄筋1に直接的に固定しても良い。
【0016】
続いて、一対の仮設鉄筋3の間に、ネジ穴の中心線5aがX軸方向に平行となるようにナット5(例えば六角ナット)を配置し、当該ナット5を一対の仮設鉄筋3に溶接する。つまり、一対の仮設鉄筋3の間隔L3は、ナット5が一対の仮設鉄筋3の間に収まるような値に設定されている。このように、本実施形態では、本設鉄筋1に番線4で固定された仮設鉄筋3にナット5を溶接することにより、当該ナット5を本設鉄筋1に間接的に固定する。なお、ナット5を本設鉄筋1に直接溶接可能であれば、仮設鉄筋3を使用せずに直接ナット5を本設鉄筋1に溶接固定しても良いことは勿論である。
【0017】
続いて、図1(b)の平面図及び側面図に示すように、板状の埋込金物6をナット5に対向するように配置した状態で、ボルト7(例えば六角ボルト)の軸先端部によって埋込金物6が型枠2に押し付けられるよう、ナット5にボルト7を締結する。これにより、埋込金物6は型枠2に密着した状態で固定されることになる。
【0018】
以上のような本実施形態によれば、埋込金物6を型枠2に密着させて固定することができるため、コンクリート打設時に型枠2と埋込金物6との隙間にコンクリートが入り込むことを防ぐことができる。つまり、本実施形態によれば、コンクリート打設後に埋込金物6の表面とコンクリートの表面とが面一となるため、その後のノロ取り作業が不要となり、コンクリート打設後の施工効率低下を防ぐことができる。
【0019】
また、本実施形態によれば、埋込金物6に孔部を設ける必要がないため、埋込金物6の強度低下を防ぐことができると共に、気密性が要求される場合には気密性を確保することができる。さらに、本実施形態によれば、埋込金物6を型枠2に押し付けて固定しているため、一度、埋込金物6を固定してしまっても、型枠2の設置後に埋込金物6の位置調整を行うことが容易である。
【0020】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において実施形態を変更しても良いことは勿論である。
例えば、図2(a)の平面図に示すように、本設鉄筋1のY軸方向において、仮設鉄筋3と並べてもう一対の仮設鉄筋3’を固定して、この一対の仮設鉄筋3’の間にナット5’を溶接固定し、ボルト7の軸先端部とボルト7’の軸先端部によって埋込金物6が型枠2に押し付けられるよう、ナット5にボルト7を締結すると共に、ナット5’にボルト7’を締結しても良い。
【0021】
または、図2(b)の側面図に示すように、一対の仮設鉄筋3の間において、Z軸方向に沿ってナット5とナット5’を並べて溶接固定し、ボルト7の軸先端部とボルト7’の軸先端部によって埋込金物6が型枠2に押し付けられるよう、ナット5にボルト7を締結すると共に、ナット5’にボルト7’を締結しても良い。
【0022】
このように、本設鉄筋1に複数のナット5、5’を固定し、複数のボルト7、7’の軸先端部によって埋込金物6が型枠2に押し付けられるよう、複数のナット5、5’に複数のボルト7、7’を締結することにより、埋込金物6と型枠2との密着度をより高めることができる。なお、図2(a)に示す埋込金物固定方法と図2(b)に示す埋込金物固定方法とを組み合わせて使用しても良い。
【符号の説明】
【0023】
1…本設鉄筋、2…型枠、3、3’…仮設鉄筋、4…番線、5、5’…ナット、6…埋込金物、7、7’…ボルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つ以上のナットを本設鉄筋に直接的或いは間接的に固定し、1つ以上のボルトの軸先端部によって埋込金物が型枠に押し付けられるよう前記1つ以上のナットに前記1つ以上のボルトを締結することを特徴とする埋込金物固定方法。
【請求項2】
前記本設鉄筋に番線で固定された仮設鉄筋に前記ナットを溶接することにより、前記ナットを前記本設鉄筋に間接的に固定することを特徴とする請求項1に記載の埋込金物固定方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−193517(P2012−193517A)
【公開日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−56904(P2011−56904)
【出願日】平成23年3月15日(2011.3.15)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】