説明

基地局、移動局、同期制御方法及びICチップ

【課題】移動局が間欠受信をしているときに、基地局と移動局との間の上り同期外れを改善することを目的とする。
【解決手段】間欠受信を行う移動局と基地局とを有する通信システムにおける同期制御方法は、基地局が、移動局宛のデータが到来したときに(S101)、同期要求を作成するステップ(S103)と、移動局が、基地局から同期要求を受信するステップ(S103)と、移動局が、同期要求への応答として帰還情報を送信するステップ(S105)と、基地局が、帰還情報を受信するステップ(S105)と、基地局が、帰還情報の受信タイミングから信号伝搬遅延時間を測定するステップ(S107)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基地局、移動局、同期制御方法及びICチップに関し、移動局が間欠受信を行う場合の基地局、移動局、同期制御方法及びICチップに関する。
【背景技術】
【0002】
高速大容量の無線通信に対する要求が高まるなかで、移動局で省電力化を図ることが求められている。このような技術の1つに間欠受信がある。
【0003】
間欠受信とは、移動局の待ち受け時に、必要なときだけ移動局を起動させて、基地局から送信される信号を受信し、省電力化を図る技術である。間欠受信は、DRX(Discontinuous Reception)とも呼ばれ、間欠受信中に帰還情報等の間欠送信を伴う場合は、DRX/DTX(Discontinuous Reception/Discontinuous Transmission)とも呼ばれている。
【0004】
HSDPA(High Speed Downlink Packet Access)や3GPPで標準化が進められているEvolved UTRA and UTRAN(Super3G)無線アクセス方式の下り回線では、共通データチャネルを時分割的に用いて、基地局のスケジューラが、送信割り当てを制御することによって、多元接続が実現される。送信割り当て制御の最小時間単位は、サブフレームと呼ばれる。
【0005】
データは、共通データチャネル(DL−SCH)で伝送され、DL−SCH上にどのユーザ宛のデータがあるか、また、どのようなトランスポートフォーマット(例えば変調方式、符号化率など)を用いているか、といった情報をシグナリングするための共通制御チャネル(DL−SCCH)を伴う。
【0006】
各移動局は、DL−SCCHをサブフレームごとに受信し、自局宛のデータの有無を検出し、データが存在する場合には、DL−SCHを復調し、データを受信する。
【0007】
ここで、例えば、Web Browsing等の通信サービスでは、送信データが、間欠的にシステムに到来する。したがって、移動局が、常時、DL−SCCHを受信した場合、移動局のバッテリを消耗してしまう。
【0008】
そこで、一定時間データが存在しなかった場合、DRXすることで、バッテリをセーブすることができる。
【0009】
DL−SCHとDL−SCCHとを用いたときの移動局における間欠受信の動作例を、図1に示す。
【0010】
移動局は、DL−SCCHを確認して、自局宛のデータの有無を検出し、データが存在する場合には、DL−SCHを復調する。
【0011】
また、自局宛のデータが存在する場合には、次のサブフレーム以降のDL−SCCHを引き続き受信する(モード1)。
【0012】
しかし、所定期間(t1)連続して自局宛のデータが存在しなかった場合、移動局は、DL−SCCHを間欠的に(例えば8サブフレームに1回だけ)受信する状態(モード2)に移行する。
【0013】
モード2に移行した後も所定期間連続して自局宛のデータが依然存在しなかった場合、移動局は、DL−SCCHを処理する間隔を更に空けてもよい(例えば16サブフレームに1回)(モード3)。
【0014】
このような段階的なDRXを行うか否かは、予め基地局と移動局との間で取り決めたルールに従えばよい。
【0015】
移動局が間欠受信中に、新規データが基地局に到来した場合、基地局は、移動局の間欠受信のタイミングに合わせて、DL−SCHでデータを送信し、併せて、DL−SCCHで、その旨をシグナリングする。
【0016】
移動局は、間欠受信中に、DL−SCCHを処理して、自局宛のデータが存在することを確認すると、次のサブフレーム以降のDL−SCCHを引き続き処理するモードに戻る(モード1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】W−CDMA移動通信方式、立川敬二監修、平成14年3月15日第4刷発行、222〜223ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
図1において、モード1にある移動局は、基地局におけるスケジューリングやリンクアダプテーションを実施するために、CQI(Channel Quality Indicator)を基地局に報告する。
【0019】
CQIは、例えば下りパイロットチャネルの受信SIR(Signal to Interference Power Ratio)等、無線チャネルの品質を表す指標である。
【0020】
基地局は、ユーザ間のCQIを比較して、無線品質が良好なユーザに送信割り当てすることで(スケジューリング)、マルチユーザダイバーシティの効果を得ることができる。
【0021】
また、基地局は、CQIに応じて、トランスポートフォーマットを決定したり、送信電力を決定したりすることができる(リンクアダプテーション)。
【0022】
一方、モード2にある移動局は、DRXのタイミングに合わせて、例えば、その直前に、CQIを報告することができる。即ち、CQIを、DRX周期に合わせて間欠的に報告することができる(DTX)。
【0023】
このDRX/DTX周期が十分短ければ、CQIを周期的に報告することで、基地局は、移動局との間で、上り信号の同期を維持することができる。
【0024】
しかし、DRX/DTX周期が長くなると、CQIを周期的に報告しても、上り同期を維持できなくなる。例えば、モード3のように、DRX/DTX周期が長くなると、CQIを報告しても上り同期が外れてしまう。
【0025】
Super3Gのように、上り時分割多元接続を行うシステムでは、基地局における受信タイミングが、所定時間内(例えばOFDMシンボルのサイクリック・プレフィクス内)に揃っている必要がある。
【0026】
図2に示すように、移動局が移動すると(T1→T2)、移動局(UE)と基地局(eNodeB)との距離が変化するため、伝搬遅延が変化する。
【0027】
したがって、移動局が、一定周期で、CQIを送信していると、受信タイミングがずれてしまい、前後のサブフレームに干渉してしまう。
【0028】
このような同期外れを防ぐために、基地局において、受信タイミングを測定し、移動局に通知することで、移動局の送信タイミングを制御する必要がある。
【0029】
ここでは、説明を簡単とするために、モード2は、DRX/DTX周期で、CQIを報告すれば、基地局における受信タイミングが、必ず所定時間内に納まり、基地局で、タイミングずれを測定して移動局の送信タイミングを制御すれば、上り同期を維持できる状態を指すこととする。
【0030】
一方、モード3は、DRX/DTX周期で、CQIを報告すると、基地局における受信タイミングが、所定時間内に納まらず、前後のサブフレームへの干渉を生じてしまう状態を指すこととする。
【0031】
上記モード3において、DRX/DTX周期で、CQIを報告すると、同期外れを生じて前後のサブフレームに干渉してしまう問題がある。
【0032】
また、データがなかなか到来しないにも関わらず、CQIを周期的に報告するため、移動局のバッテリ及び上り無線リソースを費やしてしまう問題がある。
【0033】
一方、これらの問題点を解決するために、DRX/DTX期間中には、CQI報告を行わないこととすると、DRX中に下りデータが発生した際の初回データ送信に対して、リンクアダプテーションを適用できず、無線伝送効率が低下する問題がある。
【0034】
更に、上り同期が確立できないまま、初回データをDRXタイミングで送信してしまうと、初回データの移動局からの受信応答(例えばHARQのACK/NACK応答)が、基地局において正しいタイミングで受信できず、受信応答を取りこぼしてしまう問題がある。
【0035】
受信応答を取りこぼした場合、初回の送信が無駄になり、貴重な無線リソースを無駄にしてしまう問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0036】
本発明は、上記のような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、移動局が間欠受信をしているときに、基地局と移動局との間の上り同期外れを改善することを目的とする。
【0037】
本発明の第1の特徴は、間欠受信を行う移動局と通信する基地局であって、前記移動局宛のデータが到来したときに、同期要求を作成する制御チャネル作成部と、前記同期要求への応答として帰還情報を受信する帰還情報受信部と、前記帰還情報の受信タイミングから信号伝搬遅延時間を測定する信号伝搬遅延時間測定部とを有することを要旨とする。
【0038】
本発明の第1の特徴において、前記帰還情報は、チャネル品質情報を送信する情報であってもよい。
【0039】
本発明の第1の特徴において、前記制御チャネル作成部は、前記チャネル品質情報を受信する無線リソース情報を含む同期要求を作成してもよい。
【0040】
本発明の第1の特徴において、前記制御チャネル作成部は、移動局識別子を指定した同期要求を作成し、前記帰還情報は、前記指定された移動局識別子に対応するデータ系列を含む情報であってもよい。
【0041】
本発明の第2の特徴は、基地局に対して間欠受信を行う移動局であって、前記基地局から同期要求を受信する同期要求受信部と、前記同期要求への応答として帰還情報を作成する帰還情報作成部とを有することを要旨とする。
【0042】
本発明の第2の特徴において、チャネル品質情報を測定するチャネル品質情報測定部を具備し、前記帰還情報は、前記チャネル品質情報を送信する情報であってもよい。
【0043】
本発明の第2の特徴において、間欠受信の周期に応じて、前記基地局へのチャネル品質情報の送信を停止するように制御するDRX制御部を更に有していてもよい。
【0044】
本発明の第2の特徴において、前記帰還情報は、前記同期要求により指定された移動局識別子に対応するデータ系列を含む情報であってもよい。
【0045】
本発明の第3の特徴は、間欠受信を行う移動局と基地局とを有する通信システムにおける同期制御方法であって、前記基地局が、前記移動局宛のデータが到来したときに、同期要求を作成するステップと、前記移動局が、前記基地局から前記同期要求を受信するステップと、前記移動局が、前記同期要求への応答として帰還情報を送信するステップと、前記基地局が、前記帰還情報を受信するステップと、前記基地局が、前記帰還情報の受信タイミングから信号伝搬遅延時間を測定するステップとを有することを要旨とする。
【0046】
本発明の第3の特徴において、前記移動局が、チャネル品質情報を測定するステップを更に有し、前記帰還情報は、前記チャネル品質情報を送信する情報であってもよい。
【0047】
本発明の第3の特徴において、前記帰還情報は、前記同期要求により指定された移動局識別子に対応するデータ系列を含む情報であってもよい。
【0048】
本発明の第4の特徴は、基地局に対して間欠受信を行う機能を搭載したICチップであって、前記基地局から同期要求を受信する同期要求受信部と、前記同期要求への応答として帰還情報を作成する帰還情報作成部とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0049】
本発明の実施例によれば、移動局が間欠受信をしているときに、基地局と移動局との間の上り同期外れを改善することができる。
【0050】
また、間欠受信からデータ送受信を行う状態へ復帰する際の初回のデータ送信からリンクアダプテーションを適用することができ、無線伝送効率、スループット、ならびに伝送遅延を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】DRX/DTXを示す図である。
【図2】同期外れの原因となる伝搬環境の変化を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に従って基地局と移動局との間で通信される信号のフローを示す図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る移動局のブロック図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る基地局のブロック図である。
【図6】本発明の第1及び第2の実施形態で用いられる帰還情報の例を示す図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に従って基地局と移動局との間で通信される信号のフローを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態について図面を参照して説明する。
【0053】
本発明の第1の実施形態では、移動局(UE)から基地局(eNodeB)に通知されるチャネル品質情報として、CQIが用いられることを仮定する。
【0054】
(信号のフロー)
図2に示すように、移動局の間欠受信中に、移動局と基地局との間の距離が変化することによって、基地局と移動局との間で同期外れが生じることがある。
【0055】
同期外れの状態になると、基地局における受信タイミングが所定時間内に納まらず、前後のサブフレームへの干渉が生じる。
【0056】
例えば、図1のモード3において、DRX/DTX周期で、CQIを報告すると、基地局における受信タイミングが所定時間内に納まらず、前後サブフレームへの干渉を生じてしまう。
【0057】
このような場合に、基地局と移動局との間で同期合わせを行うための信号のフローを、
図3に示す。
【0058】
なお、基地局が移動局から受信した信号の受信タイミングから測定した信号伝搬遅延時
間のことをタイミング・アドバンス(TA:Timing Advance)という。
【0059】
下りリンクデータが、基地局(eNodeB)に到来すると(S101)、基地局は、移動局(UE)に、同期要求(UL sync request)を送信する(S103)。
【0060】
図1に示すように、共通データチャネル(DL−SCH)と共通制御チャネル(DLSCCH)とを用いて、移動局に、同期要求を送信する場合には、DL−SCCHで、移動局宛の同期要求が存在することを通知し、DL−SCHで、同期要求を送信してもよい。
【0061】
また、DL−SCCHで、同期要求が存在することを通知すると共に、DL−SCCHに、同期要求を入れて送信してもよい。
【0062】
同期要求を送信するときに、基地局は、同期要求に対する応答を受信するための上りリンク無線リソースを指定してもよい。
【0063】
このような上りリンク無線リソースとして、周波数、サブフレーム及び移動局識別子(Signature)が考えられる。
【0064】
移動局が同期要求に対して応答を送信するときに、非同期チャネル(ランダムアクセスチャネル)が用いられる。
【0065】
この非同期チャネルにおける衝突を回避するために、周波数及びサブフレームを指定した同期要求が用いられてもよい。
【0066】
また、非同期チャネルで受信した応答とその応答を送信した移動局とを対応付けるため、移動局識別子(Signature)を指定した同期要求が用いられてもよい。
【0067】
同期要求を受信した移動局は、CQIを基地局に送信する(S105)。
【0068】
移動局は、既に測定済のCQIを送信してもよく、基地局から同期要求を受信したときに、CQIを測定して送信してもよい。
【0069】
移動局が間欠受信をしている間は、同期外れが生じている可能性があるため、移動局は、CQIを非同期チャネルで送信する。
【0070】
前記のように、同期要求で上りリンク無線リソースが指定されている場合には、移動局は、指定された無線リソースを使用してCQIを送信する。
【0071】
CQIを受信した基地局は、CQIの受信タイミングから信号伝搬遅延時間を測定し、タイミング・アドバンス情報を作成する(S107)。
【0072】
基地局は、このタイミング・アドバンス情報を、移動局に送信する(S109)。
【0073】
タイミング・アドバンス情報を受信した移動局は、上りリンクの送信タイミングを調整する(S111)。
【0074】
次に、移動局は、基地局から下りリンクデータを受信し(S113)、データ受信結果(Ack/Nack)を基地局に送信する(S115)。
【0075】
なお、図3では、基地局は、タイミング・アドバンス情報と下りリンクデータとを別のフレームで送信しているが、下りリンクデータとタイミング・アドバンス情報とを同じフレームで送信してもよい。
【0076】
同じフレームで送信される場合、移動局は、タイミング・アドバンス情報から、上りリンクデータの送信タイミングを調整し、下りリンクデータを復調する。
【0077】
このように、移動局で、送信タイミングを調整することにより、移動局から基地局に送信される信号の受信タイミングが、サイクリック・プレフィクス(CP:cyclic prefix)内に収まり、前後のサブフレームへの干渉を低減することができる。
【0078】
また、基地局は、同期要求に対して、移動局からCQIを受信するため、リンクアダプテーションを適用することが可能になる、すなわち、最適な無線リソースの割り当てが可能になる。例えば、適切な変調及び符号化方式(MCS:Modulation and Coding Scheme)又は送信電力を適用することが可能になる。
【0079】
(移動局の構成)
図4は、本発明の実施例に係る移動局10のブロック図である。
【0080】
移動局10は、受信RF部101と、SCCH受信部103と、SCH受信部105と、CQI測定部107と、DRX制御部109と、帰還情報作成部111と、送信タイミング制御部112と、受信バッファ113と、送信バッファ115と、送信信号作成部117と、多重合成部119と、送信RF部121とを有する。
【0081】
受信RF(Radio Frequency)部101は、基地局から送信された信号を受信し、共通制御チャネル(DL−SCCH)、共通データチャネル(DL−SCH)のような信号成分を分離する。
【0082】
SCCH受信部103は、DL−SCCHを確認して自局宛のデータの有無を検出し、データの有無をDRX制御部109に通知する。
【0083】
DRX制御部109は、DL−SCCHを処理する頻度を制御する。すなわち、DRX制御部109は、所定の時間内に自局宛のデータが存在しない場合に、DL−SCCHを間欠的に処理するようにSCCH受信部103を制御する。
【0084】
DRX/DTX周期が長い場合には、移動局が、基地局にCQIを周期的に報告しても、同期外れになる可能性がある。このような場合に、DRX制御部109は、DRX周期に応じて、基地局へのCQIの送信を停止するように、帰還情報作成部111に指示してもよい。
【0085】
例えば、図1のモード3のときは、DRX周期が長いため、CQIを報告しても、基地局の受信タイミングが、所定時間内に納まらない可能性がある。従って、DRX制御部109は、基地局へのCQIの送信を停止するように制御する。
【0086】
典型的には、基地局は、DL−SCCHとDL−SCHとを用いて、同期要求を送信する。
【0087】
移動局は、SCCH受信部103で、同期要求が存在するか否かを確認し、同期要求が存在する場合には、SCH受信部105で、同期要求に含まれる情報を抽出する。
【0088】
なお、同期要求が、DL−SCCHのみを用いて送信される場合には、SCCH受信部103が、同期要求に含まれる情報を抽出する(図4の点線で示す)。
【0089】
DL−SCHには、ユーザデータが含まれており、自局宛のユーザデータは、受信バッファ113に格納される。
【0090】
帰還情報作成部111は、CQI測定部107で測定されたCQIを基地局に返信するための帰還情報を作成する。
【0091】
基地局から同期要求を受信すると、帰還情報作成部111は、同期要求への応答として、CQIを基地局に返信するための帰還情報を作成する。
【0092】
また、DRX周期に合わせて、CQIを基地局に送信する場合に、DRX制御部109からの指示を受けたときには、帰還情報作成部111は、CQIを基地局に返信するための帰還情報を作成しなくてもよい。
【0093】
送信バッファ115は、移動局10から基地局に送信するユーザデータを格納するバッファである。
【0094】
このバッファにユーザデータが格納されている場合に、送信信号作成部117は、基地局に送信する送信信号を作成する。
【0095】
多重合成部119は、帰還情報作成部111で作成されたCQIを含む帰還情報と、送信信号作成部117で作成された送信信号とを多重し、送信RF部121を通じて基地局に送信する。
【0096】
一方、基地局から受信したタイミング・アドバンス情報は、SCH受信部105で受信される。
【0097】
送信タイミング制御部112は、タイミング・アドバンス情報に基づいて、上りリンクデータの送信タイミングを調整する。
【0098】
(基地局の構成)
図5は、本発明の実施例に係る基地局20のブロック図である。
【0099】
基地局20は、受信RF部201と、CQI受信部203と、TA測定部205と、個別制御CH作成部207と、スケジューラ209と、送信バッファ211と、送信信号作成部213と、送信RF部217とを有する。
【0100】
受信RF部201は、移動局から送信された信号を受信して信号成分を分離する。
【0101】
移動局が、基地局20にCQIを送信すると、このCQIは、受信RF部201を通じて、CQI受信部203で受信される。
【0102】
TA測定部205は、CQIの受信タイミングから信号伝搬遅延時間を測定し、タイミング・アドバンス情報を生成する。
【0103】
個別制御CH作成部207は、タイミング・アドバンス情報を移動局に送信するための制御情報を生成する。タイミング・アドバンス情報は、送信バッファ211に格納される。
【0104】
スケジューラ209は、送信バッファ211に格納されたユーザデータのQoS(Quality of Service)及び/又は滞留データ量を参照すると共に、CQIを考慮して、ユーザデータを適切なリソースブロックに割り当てるスケジューリングを行う。
【0105】
スケジューラ209は、このスケジューリング結果として、リソースブロックに割り当てるデータサイズ(トランスポートブロックサイズ)を送信バッファ211に指示する。
【0106】
送信バッファ211は、基地局20から移動局に送信するユーザデータを格納するバッファである。この送信バッファ211にユーザデータが到来すると、同期要求を作成するように、個別制御CH作成部207に指示する。
【0107】
個別制御CH作成部207は、同期要求を作成し、送信バッファ211に格納する。
【0108】
送信信号作成部213は、スケジューラ209から指示されたデータサイズのユーザデータを移動局に送信する送信信号を作成し、送信RF部217を通じて、移動局に送信する。
【0109】
送信バッファ211に格納されたユーザデータ(タイミング・アドバンス情報及び同期要求を含む)は、共通制御チャネル(DL−SCCH)及び共通データチャネル(DLSCH)を用いて移動局に送信される。
【0110】
上記のように、本実施形態によれば、移動局が間欠受信をしているときに、基地局と移動局との間の上り同期外れを改善することができる。
【0111】
<第2の実施形態>
上述の第1の実施形態では、帰還情報が、CQI(チャネル品質情報)を送信する情報である場合の例について説明したが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、帰還情報が、他の情報を含む場合にも適用可能である。
【0112】
以下、本発明の第2の実施形態について、上述の第1の実施形態との相違点に着目して説明する。
【0113】
上述の第1の実施形態に係る移動局の帰還情報作成部111は、CQI測定部107によって測定されたCQIを送信する帰還情報、例えば、図6(a)に示すように、CQI測定部107によって測定されたCQIを含む帰還情報を作成するように構成されていた。
【0114】
また、上述の第1の実施形態に係る移動局の帰還情報作成部111は、基地局から送信された同期要求で指定されている無線リソース(移動局識別子(Signature))を使用してCQIを送信するための帰還情報、例えば、図6(b)に示すように、CQI測定部107によって測定されたCQI及びプリアンブルを含む帰還情報を作成するように構成されていた。
【0115】
ここで、プリアンブルとは、同期要求で指定されている移動局識別子(Signature)の一部又は全部によって構成されているデータ系列である。また、プリアンブルは、複数の所定データ系列の中から、同期要求で指定されている移動局識別子(Signature)によって特定されるデータ系列であってもよい。
【0116】
例えば、帰還情報は、6ビットで構成されている場合、1ビットのCQIと、5ビットのプリアンブルとを含むように構成されている。
【0117】
これに対して、本実施形態に係る移動局の帰還情報作成部111は、図6(c)に示すように、CQIを含むことなくプリアンブルを含む帰還情報を作成するように構成されている。
【0118】
ここで、プリアンブルは、上述の第1の実施形態と同様に、同期要求で指定されている移動局識別子(Signature)の一部又は全部によって構成されているデータ系列であってもよいし、複数の所定データ系列の中から、同期要求で指定されている移動局識別子(Signature)によって特定されるデータ系列であってもよい。
【0119】
また、本実施形態では、プリアンブルは、各移動局に対して予め割り当てられているデータ系列であってもよい。
【0120】
送信部RF部121は、非同期チャネル(ランダムアクセスチャネル)を用いて、上述の同期要求に対する応答として、帰還情報作成部111によって作成された帰還情報を送信するように構成されている。
【0121】
また、上述の第1の実施形態に係る基地局のTA測定部205は、受信RF部201を介してCQI受信部で受信した帰還情報(CQI)又は帰還情報(CQI+プリアンブル)の受信タイミングから信号伝播遅延時間を測定して、タイミング・アドバンス情報を生成するように構成されていた。
【0122】
これに対して、本実施形態に係る基地局のTA測定部205は、受信RF部201を介して受信した帰還情報(プリアンブル)の受信タイミングから信号伝播遅延時間を測定して、タイミング・アドバンス情報を生成するように構成されている。
【0123】
また、本実施形態では、上述の第1の実施形態の場合と同様に、同期要求(UL sync request)及びタイミング・アドバンス情報は、送信RF部217を介して、共通制御チャネル(DL−SCCH)で送信されてもよいし、共通データチャネル(DL−SCH)で送信されてもよい。
【0124】
また、本実施形態では、上述の第1の実施形態の場合と同様に、個別制御CH作成部207が、同期要求を作成するように構成されている。
【0125】
その際、個別制御CH作成部207は、蓄えられているプリアンブルの集合の中から、移動局UE用の個別プリアンブルを選択し、選択した移動局UE用の個別プリアンブルに対応する移動局識別子(Signature)を指定する同期要求を作成するように構成されていてもよい。
【0126】
図7に、本実施形態において、基地局と移動局との間で同期合わせを行うための信号のフローを示す。図7に示すフローは、ステップS205を除いて、基本的に、図3に示すフローと同様である。
【0127】
図7に示すように、下りリンクデータが、基地局(eNodeB)に到来すると(S201)、基地局は、共通データチャネル又は共通制御チャネルを用いて、移動局(UE)に対して、移動局識別子(Signature)を指定する同期要求(UL sync request)を送信する(S203)。
【0128】
かかる同期要求を受信した移動局は、かかる同期要求により指定されている移動局識別子に対応するプリアンブルを含む帰還情報を、非同期チャネル(ランダムアクセスチャネル)を用いて、基地局に送信する(S205)。
【0129】
帰還情報(プリアンブル)を受信した基地局は、かかる帰還情報の受信タイミングから信号伝搬遅延時間を測定し、タイミング・アドバンス情報を作成する(S207)。
【0130】
基地局は、このタイミング・アドバンス情報を、共通データチャネル又は共通制御チャネルを用いて、移動局に送信する(S209)。
【0131】
タイミング・アドバンス情報を受信した移動局は、上りリンクの送信タイミングを調整する(S211)。
【0132】
次に、移動局は、基地局から下りリンクデータを受信し(S213)、データ受信結果(Ack/Nack)を基地局に送信する(S215)。
【0133】
本実施形態によれば、上り同期が確立できないまま、初回データをDRXタイミングで送信してしまうと、初回データの移動局からの受信応答(例えばHARQのACK/NACK応答)が、基地局において正しいタイミングで受信できず、受信応答を取りこぼしてしまうという問題を解決することができる。
【0134】
なお、上述の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る移動局の機能(モジュール)の一部又は全部は、ICチップ上で、ハードウェア又はソフトウェアによって実現されていてもよい。
【0135】
例えば、ICチップ上で、一般的に単純で高速処理が要求されているMACサブレイヤ及び物理レイヤを構成する機能(モジュール)をハードウェアで実現し、一般的に複雑な処理が要求されているRLCサブレイヤを構成する機能(モジュール)をソフトウェアで実現するように構成されていてもよい。
【0136】
また、物理レイヤを構成する機能(モジュール)とMACサブレイヤを構成する機能(モジュール)とRLCサブレイヤを構成する機能(モジュール)とは、同一のICチップ上で実現されていてもよいし、別々のICチップ上で実現されていてもよい。
【符号の説明】
【0137】
10 移動局
101、201 受信RF部
103 SCCH受信部
105 SCH受信部
107 CQI測定部
109 DRX制御部
111 帰還情報作成部
112 送信タイミング制御部
113 受信バッファ
115、211 送信バッファ
117、213 送信信号作成部
119 多重合成部
121、217 送信RF部
20 基地局
203 CQI受信部
205 TA測定部
207 個別制御CH作成部
209 スケジューラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
間欠受信を行う移動局と通信する基地局であって、
前記移動局宛のデータが到来したときに、同期要求を作成する制御チャネル作成部と、
前記同期要求への応答として帰還情報を受信する帰還情報受信部と、
前記帰還情報の受信タイミングから信号伝搬遅延時間を測定する信号伝搬遅延時間測定部とを有することを特徴とする基地局。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−151863(P2011−151863A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−97413(P2011−97413)
【出願日】平成23年4月25日(2011.4.25)
【分割の表示】特願2009−195943(P2009−195943)の分割
【原出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(392026693)株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ (5,876)
【Fターム(参考)】