説明

基地局装置における周波数調整システム及びその方法並びに基地局装置、プログラム

【課題】 移動通信システムの基地局装置に直接高安定度の基準信号発生器を接続することなく周波数調整をなす。
【解決手段】 保守監視制御端末5により予め特定の移動端末2を指定して基地局装置3にその識別情報を登録しておく。この登録移動端末2は、高安定度の基準信号発生器1が接続されてこの基準信号により動作するものとする。この移動端末2により発呼を行った場合、基地局装置3はこの移動端末が登録移動端末であることを確認して、その上り信号からクロック信号を抽出しこの抽出クロック信号に基いて内部の基準信号発生器の周波数調整を行う。これにより、基地局装置3に直接高安定度の基準信号発生器を接続しなくても周波数調整が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は基地局装置における周波数調整システム及びその方法並びに基地局装置、プログラムに関し、特に基地局装置内部に設けられた基準信号発生器の周波数調整方式の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の移動通信システムにおける基地局装置は、その伝送路としてATM(Asynchronous Transfer Mode)回線を利用しており、このATM回線は、一般的に、非常に安定した周波数精度を有している。このようなATM回線を伝送路として用いる基地局装置では、このATM回線から抽出されたクロック信号に、自装置の基準信号発生器の周波数を同期させるようになっている。従って、保守監視員が基地局装置の設置局舎へ入局することなく、基地局装置の周波数調整が自動的に行われることになる。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1を参照すると、ディジタル方式の移動通信システムの基地局装置において、上位制御局からのディジタル信号からクロックを抽出して、この抽出クロックに同期した基準クロックを生成して動作クロックを得ることが、段落「0002」に示されている。
【0004】
【特許文献1】特開2000−349631号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近時においては、基地局装置が、ATM回線ではなく、IP(Internet Protocol )伝送路として利用するシステムがあり、このIP網からは安定したクロック信号を抽出することは不可能であり、よって基地局装置内部に温度変化や経年変化の少ない安定度の高い発振器を設ける必要がある。また、この安定度の高い発振器を使用した場合でも、数年に一度の周波数調整を行うことが必要になる。
【0006】
更に、IP網を利用する基地局装置の一部は、構内電話などにも利用されることを想定したものとなっており、非常に小型化されている。このような場合、基地局装置は屋根裏など、人間が立ち入ることが困難な場所に設置されることがあり、測定器などを持ち込んで周波数調整を行うことは極めて困難となる。
【0007】
上述した特許文献1に記載の技術においても、IP網を利用している場合には、やはり上位局からのディジタル信号からの抽出クロックの周波数精度は高いものではなく、よって上述した問題がある。
【0008】
本発明の目的は、基地局装置に直接高安定度の基準信号発生器を接続することなく周波数調整を可能とした基地局装置の周波数調整システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による周波数調整システムは、基地局装置の基準信号発生器の周波数調整システムであって、前記基地局装置において、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出する手段と、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなす手段とを含むことを特徴とする。
【0010】
本発明による周波数調整方法は、基地局装置の基準信号発生器の周波数調整方法であって、前記基地局装置において、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出するステップと、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなすステップとを含むことを特徴とする。
【0011】
本発明による基地局装置は、基準信号発生器の出力により動作する基地局装置であって、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出する手段と、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなす手段とを含むことを特徴とする。
【0012】
本発明によるプログラムは、基準信号発生器の出力により動作する基地局装置の動作をコンピュータにより実行させたるためのプログラムであって、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出する処理と、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなす処理とを含むことを特徴とする。
【0013】
本発明の作用を述べる。移動通信システムにおける基地局装置内の基準信号発生器の周波数調整をなすに際して、保守監視制御端末により、予め特定の移動端末を指定して基地局装置にその識別情報を登録しておく。この登録移動端末は、高安定度の基準信号発生器が接続されてこの基準信号により動作するようにしておく。この移動端末により発呼を行った場合に、基地局装置はこの移動端末が登録された移動端末であることを確認して、その上り信号からクロック信号を抽出し、この抽出クロック信号に基いて内部の基準信号発生器の周波数調整を行う。これにより、基地局装置に直接高安定度の基準信号発生器を接続しなくても、周波数調整が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、基地局装置に、直接高安定度基準信号発生器を接続することなく、極めて簡単に周波数の調整ができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に図面を用いて本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態の概略システムブロック図である。図1を参照すると、本実施の形態は、高安定度の基準信号発生器1に接続された移動端末2と、この移動端末2と無線通信可能な基地局装置3と、この基地局装置を制御する基地局制御装置4と、この基地局制御装置4を介して基地局装置3の保守監視をなす保守監視制御端末5とを有して構成されている。
【0016】
本実施の形態においては、保守監視制御端末5から、基地局制御装置4を経由して予め指定された特定の移動端末2の上り信号から、基地局装置3においてクロック信号を抽出し、この抽出クロック信号に基地局装置3内の基準信号発生器を同期させるようにするものである。この場合の予め指定された特定の移動端末2には、高安定度の基準信号発生器1を接続してこの基準信号発生器1から供給されるクロック信号を原振として、移動端末2は動作するものとする。
【0017】
図2を参照すると、移動端末2の概略ブロック図が示されており、送信データ(上り信号)はベースバンド信号生成部21においてベースバンド処理され、無線送信部22を介してアンテナ23より無線送信される。ベースバンド信号生成部21のベースバンド生成用クロック及び無線送信部22の高周波発振部の原振には、外部に接続された高安定度基準信号発生器1からの高安定性のクロック信号が用いられる。これにより、移動端末2の上り送信信号は、無線周波数及びチップレート、シンボルレート、フレームタイミングなど、全て高安定度基準信号発生器1のクロック信号に同期した安定な送信信号となる。
【0018】
図3を参照すると、基地局装置3の概略ブロック図が示されており、無線部32は、ベースバンド信号を無線周波数に変換、増幅してアンテナ31へ送信すると共に、アンテナ31からの受信信号をベースバンド信号に変換するものである。ベースバンド処理部33は、無線部32からのベースバンド信号に対する復調を行って伝送路終端部34へ出力すると共に、特定の移動端末(図1では、移動端末2)からの受信データのレートに同期したクロック信号を抽出するクロック抽出回路39を有する。また、ベースバンド処理部33は、伝送路終端部34からのデータをベースバンド信号に変換し、無線部32へ送出するものである。
【0019】
伝送路終端部34は、ベースバンド処理部33からのデータを伝送路へ送出し、また伝送路からの受信データをベースバンド処理部33へ送出するものである。制御部38は、伝送路終端部34を経由して基地局制御装置4や、その先に接続されている保守監視制御端末5と通信を行い、呼の設定やクロック信号の同期を行うべき移動端末の指定を、ベースバンド処理部33に対して行うものである。
【0020】
位相比較制御部37は、ベースバンド処理部33内のクロック抽出回路39からのクロック信号と、基準信号発生器35のクロック信号との位相比較を行い、クロック抽出回路39のクロック信号に同期するように、D/Aコンバータ36を介して基準信号発生器35の発振周波数の制御を行うものである。基準信号発生器35は、位相比較制御部37からD/Aコンバータ36を通じて発振周波数が調整自在なものである。無線部32、ベースバンド処理部33は、この基準信号発生器35の出力クロック信号に同期して動作するものである。
【0021】
なお、移動端末2に接続されている高安定度基準信号発生器1は、この発振クロック信号を用いて基地局装置3の基準信号発生器35の周波数調整を行うものであるから、基準信号発生器35よりも、より高安定度のものである。
【0022】
図4は本発明の実施の形態の動作シーケンス図である。基地局装置3の基準信号発生器35の周波数調整を行うに際して、先ず保守監視制御端末5から、基地局制御装置4を経由して、基地局装置3に対して、位相同期するための移動端末1を指定する登録処理がオペレータにより行われる(ステップS1)。この場合の移動端末の指定は、移動端末2を特定することができる識別情報を用いることができ、例えば電話番号などが考えられる。
【0023】
保守監視制御端末5より指定された移動端末2の識別情報は、基地局制御装置4を介して基地局装置3へ送出され、伝送路終端部34を経由して制御部38へ供給され、図示せぬメモリに登録されることになる(ステップS2)。
【0024】
この状態において、高安定度基準信号発生器1が接続された移動端末2を用いて、基地局装置3を介して任意の相手に電話をかける。すなわち、移動端末2から発呼が行われる(ステップS3)。この発呼に応答して、基地局装置3では、発呼した移動端末が予め登録されている移動端末かどうかが、制御部38において判断される(ステップS4)。この判断は、制御部38内に登録されている識別情報と発呼した移動端末2の識別情報とが比較されることにより行われるものである。
【0025】
当該移動端末が登録されている移動端末であれば、ベースバンド処理部33に対してベースバンド処理に必要な各種設定が行われると共に(ステップS5)、該当する呼からクロック信号を抽出するよう制御がなされる。移動端末2の接続が完了すると、基地局装置3のベースバンド処理部33内のクロック抽出部39は、その受信信号からクロック信号の抽出を開始する(ステップS6)。
【0026】
このクロック信号を受けた位相比較部37は、基準信号発生器35の発振クロック信号を同期させるような制御を行う(ステップS7)。更に、位相同期が完全に終了した時点で、その制御値を保存し、調整が終了する(ステップS8)。
【0027】
以降、基地局装置3はこのときに設定された周波数により運用が行われる。なお、ステップS4において、発呼した移動端末が登録されていないものであれば、通常の呼処理が行われる。そして、一定の周期で、上述の動作を繰り返すことにより、温度変化や経年変化に対して、安定した周波数精度が維持可能となる。
【0028】
上述した図4に示す動作は、予めその動作手順をプログラムとしてROMなどの記録媒体に記録しておき、これをコンピュータ(CPU)により読み取らせて実行するように構成できることは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態を示すシステム図である。
【図2】図1の移動端末2の機能ブロック図である。
【図3】図1の基地局装置3の機能ブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態の動作を示すシーケンス図である。
【符号の説明】
【0030】
1 高安定度基準信号発生器
2 移動端末
3 基地局装置
4 基地局制御装置
5 保守監視制御端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置の基準信号発生器の周波数調整システムであって、前記基地局装置において、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出する手段と、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなす手段とを含むことを特徴とする周波数調整システム。
【請求項2】
前記移動端末は、前記基地局装置の基準信号発生器よりも高安定度の基準信号発生器の基準信号により動作することを特徴とする請求項1記載の周波数調整システム。
【請求項3】
前記移動端末を指定して前記基地局装置にこの移動端末の識別情報を登録する保守監視端末を、更に含むことを特徴とする請求項1または2記載の周波数調整システム。
【請求項4】
前記基地局装置において、発呼要求に応答して、登録された識別情報を参照して、前記発呼の要求元が前記指定された移動端末かどうかを判定する手段を、更に含むことを特徴とする請求項3記載の周波数調整システム。
【請求項5】
基地局装置の基準信号発生器の周波数調整方法であって、前記基地局装置において、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出するステップと、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなすステップとを含むことを特徴とする周波数調整方法。
【請求項6】
前記移動端末を、前記基地局装置の基準信号発生器よりも高安定度の基準信号発生器の基準信号により動作させるステップを、更に含むことを特徴とする請求項5記載の周波数調整方法。
【請求項7】
保守監視端末において、前記移動端末を指定して前記基地局装置にこの移動端末の識別情報を登録するステップを、更に含むことを特徴とする請求項5または6記載の周波数調整方法。
【請求項8】
前記基地局装置において、発呼要求に応答して、登録された識別情報を参照して、前記発呼の要求元が前記指定された移動端末かどうかを判定するステップを、更に含むことを特徴とする請求項7記載の周波数調整方法。
【請求項9】
基準信号発生器の出力により動作する基地局装置であって、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出する手段と、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなす手段とを含むことを特徴とする基地局装置。
【請求項10】
前記上り信号は、前記基地局装置の基準信号発生器よりも高安定度の基準信号発生器の基準信号により動作する前記移動局からのものであることを特徴とする請求項9記載の基地局装置。
【請求項11】
外部の保守監視端末から指定された前記移動端末の識別情報を登録する手段を、更に含むことを特徴とする請求項9または10記載の基地局装置。
【請求項12】
発呼要求に応答して、登録された識別情報を参照して、前記発呼の要求元が前記指定された移動端末かどうかを判定する手段を、更に含むことを特徴とする請求項11記載の基地局装置。
【請求項13】
基準信号発生器の出力により動作する基地局装置の動作をコンピュータにより実行させたるためのプログラムであって、予め指定された移動端末からの上り信号からクロック信号を抽出する処理と、この抽出クロック信号に基いて前記基準信号発生器の周波数調整をなす処理とを含むことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−295263(P2006−295263A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109306(P2005−109306)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(390010179)埼玉日本電気株式会社 (1,228)
【Fターム(参考)】