説明

基地局装置

【課題】基地局設置による電波干渉を未然に防ぎ、基地局の設置を円滑に行うようにすることが可能となる基地局装置を提供すること。
【解決手段】無線信号を送受信する無線通信部12と、無線通信部12で受信する無線信号の強度を測定する測定部17と、自己の基地局装置の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部18と、他の基地局装置の位置が登録されているサーバと通信する有線通信部13と、測定部17で測定された無線信号の強度が所定値以上の場合において有線通信部13を介して自己の基地局装置の位置と近接する他の基地局装置の位置の情報を取得する制御部14と、制御部14によって取得された他の基地局装置の位置および自己の基地局装置10の位置を表示する表示部16とを備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小規模の通信エリアを形成する基地局装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、通信機器の小型化技術の進化等により、フェムトセル基地局と呼ばれる超小型基地局の開発が行われるようになってきた。利用者の利用場所(例えば居住宅など)が公衆用の通信エリア(以下、マクロセルという)のエリア外になっていた場合、フェムトセル基地局をこのエリア外の利用場所に設置することでエリア外となっていたエリアをカバーでき、無線通信サービスが利用可能となる。
【0003】
また、フェムトセル基地局を設置した利用者は、自己が設置したフェムトセル基地局だけを占有して使うことができる。すなわち、自己が設置したフェムトセル基地局だけが、利用者の無線端末を位置登録することができる。
【0004】
フェムトセル基地局は、一般的に、ADSLや光ケーブルなどのブロードバンド回線に接続して使用されるため、安価で快適な無線通信サービスを提供するなど、新しい形態のサービスを利用者に提供することが可能となっている。
【0005】
一方、通信事業者は、マクロセルを形成するマクロセル基地局を設置する際に、マクロセル基地局の設置位置の地形的な特徴、その設置位置での送信電力、および利用周波数などの必要な情報に基づいて、事前にシミュレーションを用いて、電波干渉の発生を避けつつ、効率的なマクロセル基地局の配置を行なうように設計を行なっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−329758号公報(第2段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、マクロセル基地局は、通信事業者により品質の高い無線通信サービスを提供できるよう、上記にあるようなシミュレーションを行い、最適なマクロセル基地局の配置設計を行なっているのに対し、フェムトセル基地局は、利用者が任意に設置できるため、複数のフェムトセル基地局が非常に接近した状態で設置される場合も考えられる。
【0008】
この場合、他のフェムトセル基地局から放射される電波が、自フェムトセル基地局に登録されている無線端末に干渉を与えてしまい、通信不能となる可能性がある。フェムトセル基地局を利用した無線通信サービスでは、利用者が任意に設置できるため、電波干渉がマクロセル基地局の設置と比較してより顕著に発生する恐れがある。
【0009】
フェムトセル基地局を設置して電波干渉が発生する可能性がある場合において、利用者は、どの辺りにフェムトセル基地局を設置すればよいかを知りたいと要望することが推測される。
【0010】
本発明は、このような問題を解決するために、基地局設置による電波干渉を未然に防ぎ、基地局の設置を円滑に行うようにする基地局装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の基地局装置は、無線信号を送信する送信部および無線信号を受信する受信部を有する無線通信部と、
前記無線通信部で受信する無線信号の強度を測定する測定部と、
自己の基地局装置の起動が要求されたときに、前記受信部を起動して前記送信部を起動させず、前記測定部で測定された無線信号の強度が所定値未満の場合、前記送信部を起動する制御部と
を備えた構成を有している。
【0012】
また、本発明の基地局装置は、自己の基地局装置の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部と、他の基地局装置の位置が登録されているサーバと通信する通信部と、前記制御部が、前記通信部を介して前記自己の基地局装置の位置と近接する他の基地局装置の位置の情報を前記サーバから取得した際、前記制御部によって取得された他の基地局装置の位置および前記自己の基地局装置の位置を表示する表示部とを備えた構成を有している。
【0013】
また、本発明の基地局装置の前記無線通信部は、前記制御部が、前記測定部で測定された無線信号の強度が所定値以上の場合において前記通信部を介して前記自己の基地局装置の位置と近接する他の基地局装置の位置の情報を取得する構成を有している。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、基地局設置による電波干渉を未然に防ぎ、基地局の設置を円滑に行うようにする基地局装置を提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成図である。
【図2】2つのフェムトセル基地局装置が電波を放射することにより電波干渉が発生する様子を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るフェムトセル基地局のブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るフェムトセル基地局を設置してフェムトセル基地局の電源が投入されたときの動作例を示すフローチャートである。
【図5】自基地局の位置情報と他基地局の位置情報とが表示されたイメージを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0017】
図1は、本発明の実施の形態に係る無線通信システムの構成図である。図1に示した無線通信システムは、2つのフェムトセル基地局装置(フェムトセル基地局9、フェムトセル基地局10)および無線端末8を有する。無線端末8は、フェムトセル基地局9に位置登録できるものとし、フェムトセル基地局10に位置登録できないものとする。フェムトセル基地局9およびフェムトセル基地局10は、接近して設置されている。
【0018】
図2は、2つのフェムトセル基地局装置が電波を放射することにより電波干渉が発生する様子を示す。それぞれのフェムトセルの通信範囲は太線で示す部分である。また、フェムトセル基地局B(フェムトセル基地局10)が電波干渉を及ぼす範囲をハッチング(斜線部)で示し、特にフェムトセルA(フェムトセル基地局9)に接続する無線端末8に電波干渉を与える範囲を濃いハッチング(網掛部)で示している。
【0019】
2つのフェムトセル基地局が非常に隣接して設置された場合、お互いの通信範囲の大部分が重なってしまう。また、それぞれの通信範囲の部分に電波干渉が発生する可能性が高い。フェムトセル基地局Aに登録されている無線端末8が通信しようとした場合、フェムトセル基地局Bの干渉を受けてしまい、スループットの低下、通信の切断などの障害を受ける可能性がある。これは、フェムトセル基地局Bに接続する端末へのフェムトセル基地局Aがおよぼす干渉についても同様のことが言える。
【0020】
図3は、本発明の実施の形態に係るフェムトセル基地局のブロック図である。フェムトセル基地局10は、アンテナ11、無線通信部12、有線通信部13、制御部14、記憶部15、表示部16、測定部17、および位置情報取得部18を有している。
【0021】
無線通信部12は、アンテナ11を介して無線端末8との無線信号を送受信するものである。無線通信部12は、送信部12Aおよび受信部12Bを有している。
【0022】
有線通信部13は、ブロードバンド回線を通じて各種のサーバまたはマクロセル基地局などと通信を行うものである。例えば、サーバには、フェムトセル基地局を管理するサーバ、またはインターネット上にあるサーバがある。
【0023】
制御部14は、CPUなどによって構成され、フェムトセル基地局10の各部を制御するものである。また、制御部14は、無線通信部12の送信部12Aおよび受信部12Bの電力の供給の開始または停止を行うことができる。
【0024】
記憶部15は、フェムトセル基地局に必要な情報及び自フェムトセル基地局に登録されている無線端末の識別子を記憶するものである。
【0025】
表示部16は、現在の接続状況、エラーメッセージ、またはフェムトセル基地局の配置状況等を表示するものである。
【0026】
測定部17は、他のフェムトセル基地局からの電波を受けることができ、受けた他のフェムトセル基地局の電波の受信強度(RSSI)を計測するものである。
【0027】
位置情報取得部18は、基地局間の同期あわせに用いるGPSを利用して、フェムトセル基地局10が設置されたときの位置情報を取得するものである。位置情報は、緯度経度・高さに関する情報である。
【0028】
以上のように構成された本発明の実施例に係るフェムトセル基地局の動作について図面を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態に係るフェムトセル基地局を設置してフェムトセル基地局の電源が投入されたとき(フェムトセル基地局の起動時)の動作例を示すフローチャートである。
【0029】
まず、制御部14は、送信部12Aの電力を停止状態とする(S1)。このとき、受信部12Bには電力が供給されている。次に、位置情報取得部18がGPSを用いて自フェムトセル基地局10の位置情報を取得したとき、制御部14は、この位置情報を記憶部15に記憶させる(S2)。また、制御部14は、予め決められているフェムトセル基地局の幾つかのパイロットチャネルが受信できるか否かを試行する(S3)。なお、ステップS2とS3は同時に行われてもよい。
【0030】
制御部14は、パイロットチャネルが受信できた場合(S4のY)、他のフェムトセル基地局から放射されている電波の強度(RSSI)を測定部17から取得する(S5)。次に制御部14は、RSSIが所定値以上か否か判定する(S6)。例えば、所定値は、電波干渉を生じさせる程度の電波強度をもつ値(例えば−50dBm)である。
【0031】
RSSIが所定値以上であった場合(S6のY)、制御部14は、ステップS2で取得した自位置情報を、有線通信部13を介してフェムトセル基地局を管理するサーバに送信する。このサーバが、位置情報の位置から所定範囲内にあるフェムトセル基地局の位置情報をフェムトセル基地局10に送信することで、制御部14は、自フェムトセル基地局10の位置と近接する他基地局の位置情報を取得することができる(S7)。所定範囲は、フェムトセル基地局の通信圏などである。例えば、指定されたフェムトセル基地局の位置から半径数10m内などである。
【0032】
次に、制御部14は、ステップS2で取得した自基地局の位置情報と、ステップS7で取得した他基地局の位置情報とを編集するなどして表示部16に表示させる。例えば、自基地局の位置情報と他基地局の位置情報とが表示されたイメージを図5に示す。
【0033】
図5では、表示部16の画面中央部に自基地局の位置が示されている。また、表示部16の画面には、他基地局の位置が示されている。フェムトセル基地局の設置者は、この画面を参照して、電波干渉しないようなフェムトセル基地局の再設置場所を決めることになる。さらに、制御部14は、図5の画面に、フェムトセル基地局が起動できない旨のメッセージを表示させるようにしてもよい。また、この表示は、エラーコードでもよいし、もっと具体的に“干渉を与える可能性があります”といった内容を加えてもよい。
【0034】
一方、パイロットチャネルが受信できない場合(S4のN)、計測したRSSIが所定値未満であった場合(S6のN)には、電波干渉の発生がないものとし、制御部14は、送信部12Aの電力供給を開始(送信部12Aを起動)する(S9)。このとき、制御部14は、ステップS2で取得した自位置情報を、有線通信部13を介してフェムトセル基地局を管理するサーバに送信することで、自位置情報を登録する。
【0035】
なお、ステップS7とS8は、ステップS2の直後に実施されてもよい。また、フェムトセル基地局の電源投入直後でなくても、ステップS7とS8がステップS2の直後に実施されてもよい。
【0036】
以上説明したように、フェムトセル基地局装置10は、基地局の設置時などに他の基地局装置の位置および自己の基地局装置の位置を表示するため、基地局設置による電波干渉を未然に防ぎ、基地局の設置を円滑に行うようにすることが可能となる。また、フェムトセル基地局装置10は、RSSIが所定値以上であった場合、送信部12Aの電力供給を停止したままであるため、省電力化を実現でき、フェムトセル基地局が起動できない旨を知らせることができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明の基地局装置は、基地局設置による電波干渉を未然に防ぎ、基地局の設置を円滑に行うようにすることが可能となる効果を有し、小型の基地局装置やアクセスポイントなどに有用である。
【符号の説明】
【0038】
8 無線端末
9、10 フェムトセル基地局
11 アンテナ
12 無線通信部
13 有線通信部
14 制御部
15 記憶部
16 表示部
17 測定部
18 位置情報取得部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線信号を送信する送信部および無線信号を受信する受信部を有する無線通信部と、
隣接基地局からの無線信号の強度を測定する測定部と、
自己の基地局装置の起動が要求されたときに、前記受信部を起動して前記送信部を起動させず、前記測定部で測定された無線信号の強度が所定値未満の場合、前記送信部を起動する制御部と
を備えたことを特徴とする基地局装置。
【請求項2】
自己の基地局装置の位置を表す位置情報を取得する位置情報取得部と、
他の基地局装置の位置が登録されているサーバと通信する通信部と、
前記制御部が、前記通信部を介して前記自己の基地局装置の位置と近接する他の基地局装置の位置の情報を前記サーバから取得した際、前記制御部によって取得された他の基地局装置の位置および前記自己の基地局装置の位置を表示する表示部とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の基地局装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記測定部で測定された無線信号の強度が所定値以上の場合において前記通信部を介して前記自己の基地局装置の位置と近接する他の基地局装置の位置の情報を取得することを特徴とする請求項2に記載の基地局装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−71845(P2011−71845A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−222371(P2009−222371)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】