説明

基地局

【課題】受信確認信号を正常に受信できなかった移動局からの、データの再送信を防止することを目的とする。
【解決手段】基地局は、受信確認信号を受信するまで該データを再送する複数の移動局から、該データを受信する受信部と、該複数の移動局へ無線送信する送信部と、該複数の移動局のいずれから受信したデータ送信要求に応じて、該データ送信要求を送信した該移動局にデータ送信用の無線リソースを割り当てるとともに、該受信部に、該割り当てた無線リソースにて、該データ送信要求を行なった該移動局からのデータを受信させ、該受信部が該データを受信できた場合、該送信部に該データ送信要求を行なった該移動局へ該受信確認信号を送信させ、該受信確認信号の無線送信に伴って該無線リソースの再割当ての処理を行い、該送信部に、該データを送信してきた該移動局へ該受信確認信号を再送信させる制御部を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の移動局と無線通信を行う基地局に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の移動局と無線通信を行う基地局は、移動局から無線送信される無線信号間で干渉が発生しないように、移動局からの無線送信要求に応じて、データ送信を許可する無線リソースを一定時間単位で割り当てる。
【0003】
例えば3GPP(3rd Generation Partnership Project)のLTE(Long Team Evolution)では、無線区間で送信するサブキャリア12本をRB(Resource Block)と呼ばれる1つの単位で取り扱う。基地局は通信する周波数帯域を移動局ごとにRB単位で割り当てる。割り当てられたRB単位での周波数帯域が、各移動局の無線リソースとなる。
【0004】
各移動局は割り当てられた無線リソースを用いて、基地局へデータを送信する。基地局は受信データを復調し、復調データの誤り訂正復号処理を行う。基地局は復号処理が正しく実行できた場合は、データを送信した移動局に対し、データの受信を確認する受信確認信号であるACK(ACKnowledgement)信号を送信する。一方、復調処理が正しく実行出来なかった場合は、データを送信した移動局に対し、NACK(Negative ACKnowledgement)信号を送信する。
【0005】
ACK信号を受信した移動局は、送信データが正常に基地局に受信されたものとして、送信処理を一時停止する。一方、NACK信号を受信した移動局は、送信データが正常に基地局に受信されなかったものとして、再度同一データを基地局と移動局が既知であるルールに沿って決定された無線リソースを用いて基地局へ送信する。移動局は、ACK信号を受信するまで同一データの再送を繰り返す。
【0006】
基地局がACK信号を送信したにもかかわらず、無線通信環境の影響等により、移動局がACK信号を正しく受信できなかった場合、移動局はNACK信号を受信したものとしてデータの再送処理を行う。同一データを何度も再送することにより、システムスループットは低下する。特許文献1には、基地局から移動局へ通知されたACK信号の誤判定の発生を低減することにより、再送が発生する頻度を低減させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−188660号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ACK信号の誤判定の発生を低減しても誤判定が発生した場合、移動局は同一データを基地局と移動局が既知であるルールに沿って決定された無線リソースを用いて再送する。一方他の移動局は、ACK信号を正しく受信すると、新たに基地局により割り当てられた無線リソースを用いて別のデータを基地局へ送信する。
【0009】
新たに割り当てられた無線リソースが、ACK信号を正しく受け取れなかった移動局から送信される無線リソースを含んでいる場合、2つの移動局が同一の無線リソースを使って基地局へデータを送信することとなる。2つの移動局が同一の無線リソースで同時にデータを送信すると、データ間の干渉が発生する。データ間の干渉により、一方のデータ信号は他方のデータ信号のノイズとなる。ノイズの影響により、基地局はデータを正確に受信できないため、移動局へ再送信要求のためのNACK信号を送信する。NACK信号を受信した移動局は、再度同一データを同一無線リソースで再送する。このため、移動局の再送処理が終わらない限り同一動作を繰り返すこととなり、システムスループットが低下する。
【0010】
本技術では、ACK信号を正常に受信できなかった移動局からの、データの再送信を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、基地局は、無線送信したデータが基地局で受信されたことを示す受信確認信号を受信するまで該データを再送する複数の移動局から、該データを受信する受信部と、該複数の移動局へ無線送信する送信部と、該複数の移動局のいずれから受信したデータ送信要求に応じて、該データ送信要求を送信した該移動局にデータ送信用の無線リソースを割り当てるとともに、該受信部に、該割り当てた無線リソースにて、該データ送信要求を行なった該移動局からのデータを受信させ、該受信部が該データを受信できた場合、該送信部に該データ送信要求を行なった該移動局へ該受信確認信号を送信させ、該受信確認信号の無線送信に伴って該無線リソースの再割当ての処理を行い、該送信部に、該データを送信してきた該移動局へ該受信確認信号を再送信させる制御部とを有する。
【発明の効果】
【0012】
実施形態によれば、ACK信号を正常に受信できなかった移動局からの、データの再送信を防止することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】通信システム30のブロック図である。
【図2】基地局32の詳細ブロック図である。
【図3】移動局33の詳細ブロック図である。
【図4】移動局33から基地局32へUpLinkデータを送信するまでの疎通手順を示す図である。
【図5】AはサブフレームSUB#n+6における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。BはサブフレームSUB#n+14における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。Cは各移動局33と基地局32のサブフレーム単位での通信の様子を図示したものである。
【図6】AはサブフレームSUB#n+6における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。BはサブフレームSUB#n+6でのPUSCHに対する、基地局32での干渉電力の測定結果である。CはサブフレームSUB#n+14における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。DはサブフレームSUB#n+14でのPUSCHに対する、基地局32での干渉電力の測定結果である。EはサブフレームSUB#n+22における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。FはサブフレームSUB#n+22でのPUSCHに対する、基地局32での干渉電力の測定結果である。Gは各移動局33と基地局32のサブフレーム単位での通信の様子を図示したものである。
【図7】RBごとの干渉電力を管理するための干渉電力管理テーブル70である。
【図8】ACKのPHICHを送信した移動局33が、意図しないPUSCH再送を想定した再送予測管理テーブル80である。
【図9】基地局32における制御部3のACK再送処理フローである。
【図10】無線リソースの再割り当てを行った移動局33から受信した信号のSIRを管理するSIR管理テーブル90である。
【図11】基地局32における制御部3のACK再送処理フローである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施の形態について説明する。なお、各実施形態における構成の組み合わせも本発明の実施形態に含まれる。
【0015】
図1は通信システム30のブロック図である。通信システム30はコアネットワーク31、基地局32、移動局33を有する。コアネットワーク31は通信事業者間を結ぶ大容量の基幹通信回線である。基地局32は移動局33との間で無線通信を行うための装置である。移動局33は他の移動局33とデータ通信を行う移動型の無線端末である。
【0016】
LTEでは、コアネットワーク31と基地局32はS1インターフェースと呼ばれる伝送路で接続されている。基地局32間はX2インターフェースと呼ばれる伝送路で接続されている。セル34はそれぞれの基地局32が移動局33と無線通信可能な領域である。
【0017】
1つの移動局33は、基地局32およびコアネットワーク31を介して、他の移動局33と通信を行うことができる。
【0018】
図2は基地局32の詳細ブロック図である。基地局32は、送信部1、受信部2、制御部3、D/A変換部12、A/D変換部17、RF処理部15、アンテナ14を有する。
【0019】
送信部1は下りリンク信号に対する送信処理を行う。受信部2は上りリンク信号に対する受信処理を行う。制御部3は通信を行う移動局33の選択、および無線リソースの割り当てを管理する。記憶部28は制御部3から書き込まれたデータを記憶する。D/A変換部12は送信部1から出力されたデジタル信号をアナログ信号に変換し、RF処理部15へ出力する。A/D変換部17はRF処理部15から出力されたアナログ信号をデジタル信号に変換し、受信部2へ出力する。RF処理部15はデータ信号を無線伝送に適した信号に変換する。アンテナ14は無線信号の送受信を行う。
【0020】
送信部1は、PDCP(Packet Data Convergence Protocol)処理部4,RLC(Radio Link Control)処理部5、MAC(Medium Access Control)処理部6、誤り訂正符号部7、データ変調部8、データ・パイロット信号多重部9、IFFT(Inverse Fast Fourier Transform)部10、CP(Cyclic Prefix)挿入部11を有する。
【0021】
PDCP処理部4は、有線伝送路から受信したPDCP SDU(Service Data Unit)をPDCP PDU(Protocol Data Unit)に変換する。RLC処理部5は、入力されたPDCP PDUをRLC SDUとして扱い、RLC PDUに変換する。MAC処理部6は入力されたRLC PDUをMAC SDUとして扱い、MAC PDUに変換する。誤り訂正符号部7は入力されたMAC PDUに誤り訂正符号化処理を行う。また誤り訂正符号部7は、制御部3から通知されたHI(HARQ Indicator)を符号化処理する。
【0022】
ここでPDUは、各レイヤで扱うデータのフレーム・フォーマットである。またSDUは、PDUを作成するためのサービスであり、あるレイヤのPDUを作成するためのサービスは、同じレイヤのPDUの上位のSDUから提供される。
【0023】
またHARQ(Hybrid Automatic Repeat Request:ハイブリッド自動再送要求)は、レイヤ2以下でARQとFECを組み合わせて、誤り訂正能力を向上させ、再送回数を減少させる方式である。ARQ(Automatic Repeat Request:自動再送要求)とは、誤ったフレームを受信した移動局33が送信側にそのフレームの再送を要求する方式である。FEC(Forward Error Correction:前方誤り訂正)とは、送信データに事前に誤り訂正用の符号化を行い、送信中に誤りが発生した場合でも、受信側で復号過程においてデータ復調の誤りを訂正する誤り訂正方式である。
【0024】
例えば3GPPのLTE(Long Team Evolution)では、移動局33から受信したUpLink・HARQ対応処理のデータに対し、基地局は受信結果をDownLink物理レイヤ信号であるPHICH(Physical Hybrid−ARQ Indicator CHannel)信号を用いて各移動局33へ通知する。
【0025】
データ変調部8は符号化されたデータ信号にQPSK(Quadrature Phase Shift Keying)変調などのデータ変調処理を行う。データ変調部8は符号化処理したHIをPHICH信号へマッピングする。データ・パイロット信号多重部9は、データ信号とパイロット信号とを時間多重する。ここでパイロット信号は、受信局である移動局33において既知の信号である。
【0026】
IFFT部10は一定数Nのサンプル単位でIFFT処理を行う。すなわち、N個のデータサンプルをサブキャリア信号成分とみなし、このサブキャリア成分にIFFT処理を行い、離散的な時間信号に変換する。CP挿入部11は、CPをNサンプルの先頭に挿入する。ここでCPは、IFFT後のNサンプルのうち、後部のMサンプル(M<N)をコピーしたものである。CPは巡回的にコピーされているため、CP挿入後の(M+N)サンプルの区間で信号が連続することとなる。この特徴によりCPは、隣接パスからの遅延シンボルによる干渉を除去することができる。
【0027】
受信部2は、CP除去部18、FFT部19、データ・パイロット信号分離部20、データ復調部21、IDFT(Inverse Discrete Fourier Transform)部22、誤り訂正復号部23、パイロット信号復調部24、MAC処理部25、RLC処理部26、PDCP処理部27を有する。
【0028】
CP除去部18は、A/D変換部17によりデジタル信号に変換された受信信号からCPを除去する。FFT部19は受信信号をFFT処理する。データ・パイロット信号分離部20はFFT処理後の受信信号をデータ信号とパイロット信号に分離する。パイロット信号復調部24は分離したパイロット信号を復調する。データ復調部21は復調したパイロット信号に基づいて、データ信号を復調する。またパイロット信号復調部24は、分離したパイロット信号に基づいて、受信信号電力および干渉電力を算出する検出部として機能する。パイロット信号復調部24は算出結果を制御部3へ送信する。ここで受信信号電力とは、受信対象である移動局から受信した信号の電力である。また干渉電力とは、受信電力から受信信号電力を差し引いたものであり、受信したデータ信号に干渉するノイズとなる。
【0029】
IDFT部22は復調後のデータ信号をIDFT処理する。誤り訂正復号部23はデータ信号の誤り訂正処理を含む復号処理を行う。また誤り訂正復号部23はデータ信号の復号結果であるACK信号またはNACK信号を制御部3へ出力する。
【0030】
MAC処理部25は復調・復号されたデータ信号をMAC PDUとして扱い、MAC SDUに変換する。RLC処理部26はMAC SDUをRLC PDUとして扱い、RLC SDUに変換する。PDCP処理部27はRLC SDUをPDCP PDUとして扱い、PDCP SDUに変換する。PDCP処理部27はPDCP SDUに変換したデータ信号を有線伝送路へ出力する。
【0031】
制御部3はパイロット信号復調部24で算出された受信信号電力および干渉電力に基づいて、受信SIR(Signal to Interference Ratio)を算出する。SIRは受信データの品質を示す信号対雑音比の一種である。制御部3は算出した受信SIRを後述する記憶部28のSIR管理テーブル90へ書き込む。制御部3は誤り訂正復号部23から出力されたACK/NACK信号に基づき、HARQプロセスにおけるHARQ制御として、誤り訂正符号部7へHIを通知する。HARQ制御の詳細については後述する。また制御部3は、入力された干渉電力を後述する記憶部28の干渉電力管理テーブル70へ書き込む。
【0032】
RF処理部15は送信RF部13および受信RF部16を有する。送信RF部13はベースバンド信号を無線周波数の信号に変換しアンテナ14へ出力する。受信RF部16はアンテナ14で受信した信号を無線周波数帯からベースバンド信号に変換する。
【0033】
以上の通り基地局32は、有線伝送路から出力されたデータ信号を移動局33へ送信すると共に、移動局33から受信したデータ信号を有線伝送路へ出力する。
【0034】
図3は移動局33の詳細ブロック図である。各移動局33は同一の構成を有する。移動局33は基地局32と無線通信を行う。移動局33はアンテナ40、受信RF部41、A/D変換部42、受信部43、制御部44、送信部45、D/A変換部46、送信RF部47を有する。
【0035】
アンテナ40は基地局32から送信された信号を受信する。受信RF部41は無線周波数帯の受信信号をベースバンドの受信信号へ変換する。A/D変換部42は受信信号をアナログからデジタルへ変換する。受信部43はデジタル変換された受信信号の復調・復号処理を実行する。
【0036】
制御部44は受信部43において復調・復号された受信信号に基づいて、送信部45のデータ送信タイミングを制御する。
【0037】
送信部45は制御部44から入力された制御信号に基づいて変調・符号化されたデータ信号を出力する。D/A変換部46は送信するデータ信号をデジタルからアナログへ変換する。送信RF部47はベースバンドのデータ信号を無線周波数帯に変換する。アンテナ40は無線周波数帯に変換されたデータ信号を無線送信する。
【0038】
以上の通り移動局33は、基地局32から受信した送信タイミング情報に基づいて、データ信号を無線送信することが出来る。
【0039】
図4は移動局33から基地局32へUpLinkデータを送信するまでの疎通手順を示す図である。図4において横方向に2列に並んだ複数の四角はそれぞれサブフレーム50を表す。また疎通処理は図の左から右方向に向かって時間が流れるものとする。1つのサブフレーム50の時間の長さはTである。ここでサブフレームとは、データの送信単位である。
【0040】
LTEではUplinkデータ疎通のため、SC−FDMA(Single Carrier−Frequency Division Multiple Access)伝送方式を採用している。SC−FDMA伝送方式はOFDM(Orthgonal Frequency Division Multiplexing)伝送方式に比べてPAPR(Peak to Average Power Ratio)が小さい。このためSC−FDMA伝送方式は、移動局33の送信アンプの効率を向上させ、消費電力を小さく抑えることが出来る。ここでPAPRは、データ信号の電力変動のばらつき具合を表す値である。
【0041】
各移動局33は基地局32に対し、PUCCH(Physical Uplink Control Channel)信号にてSR(Scheduling Request)を送信することにより、無線リソースの割り当て要求を通知する。基地局32は受信したSRに基づいて、送信要求した移動局33を特定する(ステップS10)。
【0042】
基地局32は受信したSRを復調した後、SRを送信した移動局33に対し、無線リソースの割り当て情報であるDCI(DownLink Control Information)を符号化し、PDCCH(Physical Downlink Control Channel)へマッピングする。基地局32はDCIがマッピングされたPDCCHを無線送信する(ステップS11)。
【0043】
PDCCHを受信した移動局33は、PDCCHから自分宛のDCI情報を抽出する。移動局33は抽出したDCI情報に基づいて、基地局32が割り当てた無線リソース情報を判別する。移動局33は判別した無線リソースを用いてPUSCH(Physical Uplink Shared Channel)を基地局32へ送信する(ステップS12)。PUSCHは複数の移動局33で共有される。PUSCHはデータや上位レイヤの制御情報の伝送に用いられる。
【0044】
PUSCHを受信した基地局32は復号処理を実行する。基地局32の制御部3は、復号結果に基づいてHARQ制御を実行する。HARQ制御はその制御結果に応じて3つのパターンに分かれる。基地局32はHARQ制御結果に応じて、PDCCHもしくはPHICHを送信する(ステップS13)。
【0045】
HARQ制御の3つのパターンについては以下の通りである。1つめは、HARQ制御の結果、HARQプロセスに対し新規送信要求をする場合、基地局32はDCI情報の1つであるNDI(New Data Indicator)をトグルさせたPDCCHを送信するというものである。2つめは、HARQ制御の結果、HARQプロセスに対し再送要求をする場合、基地局32はPHICHでNACKを通知するnon−adaptiveHARQ再送と、NDIをトグルさせないPDCCHを通知するadaptiveHARQ再送の2種類を状況に応じて使い分けるというものである。3つめは、HARQ制御の結果、HARQプロセスに対し送信停止要求をする場合、基地局32はPHICHでACKを送信するというものである。
【0046】
移動局33は、基地局32から受信したPDCCHもしくはPHICHに応じてHARQ制御を実行する。移動部33はHARQ制御において、PUSCHの送信有無を決定する(S14)。移動局33におけるHARQ制御の詳細は以下の4通りである。1つめは、基地局32から新規送信要求を受信した場合、移動局33は新規データを符号化後、新たに受信したDCI情報に基づいてPUSCHを送信するというものである。2つめは、基地局32からnon−adaptiveHARQ再送要求を受信した場合、移動局33は再送データを符号化後、最新のDCI情報に基づいたRBのHopping処理をすることによりPUSCHを送信するというものである。3つめは、基地局32からadaptiveHARQ再送要求を受信した場合、移動局33は再送データを符号化後、新たに受信したDCI情報に基づいてPUSCHを送信するというものである。4つめは、基地局32から送信停止要求を受信した場合、移動局33はPUSCHの送信をすること無く、HARQバッファにデータを格納するというものである。
【0047】
以上の通り移動局33は基地局32に対し、HARQ制御に基づいてデータを送信することができる。
【0048】
図5は基地局32が複数の移動局33と通信する場合の正常なスケジューリング例を示す。図5において、基地局32は複数の移動局330、331、332、333と通信する。図5のAはサブフレームSUB#n+6における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。図5のBはサブフレームSUB#n+14における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。図5のCは各移動局33と基地局32のサブフレーム単位での通信の様子を図示したものである。
【0049】
図5のCの通り基地局32は各移動局33に対し、サブフレームSUB#n+2のタイミングで、新規送信要求であるPDCCHを送信する。基地局32から送信されたPDCCHに対応して、サブフレームSUB#n+6に各移動局33に割り当てられるRBは図5のAの通りとなる。
【0050】
図5のAの通りサブフレームSUB#n+6では、リソースブロックRB4〜RB6が移動局330に、リソースブロックRB7〜RB11が移動局331に、リソースブロックRB12〜RB13が移動局332に、リソースブロックRB14〜RB21が移動局333に割り当てられる。
【0051】
図5のCの通り基地局32は、サブフレームSUB#n+6において、各移動局33から送信されたPUSCHを受信する。各移動局33から受信したすべての信号の復号結果が正常であった場合、サブフレームSUB#n+10において基地局32は、復号結果を踏まえ、移動局330〜332に対し、新たなデータの送信要求であるPDCCHを送信すると共に、移動局333に対し、データの受信完了を通知するACK信号をPHICHとして送信する。
【0052】
基地局32から送信されたPDCCHに対応して、サブフレームSUB#n+6での送信データが属するHARQプロセスにおいて、HARQ RTT Timer後であるサブフレームSUB#n+14で、各移動局33に割り当てられるRBは図5のBの通りとなる。
【0053】
図5のBの通りサブフレームSUB#n+14では、リソースブロックRB4〜RB9が移動局330に、リソースブロックRB10〜RB12が移動局331に、リソースブロックRB13〜RB21が移動局332に割り当てられる。移動局333のデータ送信は完了しているため、RBは割り当てられない。新規送信要求を示すPDCCHを基地局32から受信した各移動局330〜332は、サブフレームSUB#n+14においてそれぞれPUSCHを送信する。一方送信停止要求であるACKのPHICHを受信した移動局333はPUSCHを送信しない。
【0054】
以上の通り基地局32と複数の移動局33は、必要に応じてRBを割り当てるRBを変えながらデータ通信を行うことができる。
【0055】
図6は基地局32が複数の移動局33と通信する場合の正常でないスケジューリング例を示す。図6において、基地局32は複数の移動局330、331、332、333と通信する。図6のAはサブフレームSUB#n+6における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。図6のBはサブフレームSUB#n+6でのPUSCHに対する、基地局32での干渉電力の測定結果である。図6のBにおいて、横軸は図6のAにおける各RBに対応している。図6のCはサブフレームSUB#n+14における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。図6のDはサブフレームSUB#n+14でのPUSCHに対する、基地局32での干渉電力の測定結果である。図6のDにおいて、横軸は図6のCにおける各RBに対応している。図6のEはサブフレームSUB#n+22における、各移動局33から基地局32へのPUSCHの送信結果をRB単位で図示したものである。図6のFはサブフレームSUB#n+22でのPUSCHに対する、基地局32での干渉電力の測定結果である。図6のFにおいて、横軸は図6のEにおける各RBに対応している。また、図6のGは各移動局33と基地局32のサブフレーム単位での通信の様子を図示したものである。図6のGにおいて、サブフレームSUB#n+10までは、基地局32と各移動局33は図5のCと同様の通信を行う。
【0056】
本実施例における干渉電力の算出方法の詳細は以下の通りである。移動局33は、PUSCH送信の際に、3GPPのルールに沿ったRS(demoduration Reference Signal:リファレンス信号)を時間多重する。RSは特定のビットパターンを有する信号であり、基地局32と移動局33との間で共通認識されている。基地局32は受信電力に対し、RSとの相関を確認する。相関がある場合、基地局32は、受信した電力を受信信号電力として認識する。受信電力と、認識した受信信号電力との差分を求めることにより、基地局32は干渉電力を算出することができる。すなわち干渉電力は、受信対象の移動局33以外の移動局から受信した信号の電力の他、例えば別のセル34で送受信している信号や、別のシステムで送受信している信号の電力なども含む。
【0057】
図6のAの通り、サブフレームSUB#n+6において、各移動局33は図5のAと同様にPUSCHを基地局32へ送信する。図6のBの通り、サブフレームSUB#n+6で各移動局33からPUSCHを受信した基地局32での干渉電力の測定結果は各RBにおいてほぼ同じ値となる。
【0058】
図6のGの通り、サブフレームSUB#n+10において基地局32は、図5のCと同様に移動局333に対し、ACKのPHICHを送信する。これに対し移動局333は、基地局32から送信されたACKのPHICHを正常に受信できなかったとする。この場合移動局333は、サブフレームSUB#n+6において基地局32へ送信したPUSCHが基地局32で正常に受信されなかったと判断し、non−adaptiveHARQ再送制御を実施する。その結果、サブフレームSUB#n+6において割り当てられたRBと同一のRB14〜RB21を用いて、PUSCHをサブフレームSUB#n+14において再送する。
【0059】
図6のGの通り、サブフレームSUB#n+10において基地局32は移動局330〜332に対し、新たなRBを割り当てるためのPDCCHを送信する。サブフレームSUB#n+10において送信されたPDCCHに対し、移動局332にはRB13〜RB21が割り当てられる。一方移動局333は前述の通り、RB14〜RB21を用いてPUSCHを再送する。この結果図6のCの通り、移動局332と移動局333がRB14〜RB21を同一タイミングで使用することとなる。移動局333から送信されたPUSCHは基地局32において意図しない干渉源となるため、基地局32での干渉電力は図6のDの通りRB14〜RB21で高くなる。この結果基地局32は、サブフレームSUB#n+14において移動局332から送信されたPUSCHを正常に受信できなくなる可能性がある。
【0060】
図6のGの通り、サブフレームSUB#n+18において移動局332から受信したPUSCHの復号結果がNGとなった場合、基地局32は、移動局332に対しNACKのPHICHを送信することによるnon−adaptiveHARQ再送処理または、PDCCH送信によるadaptiveHARQ再送処理を実行する。
【0061】
基地局32はいずれかの移動局33へ再送要求処理を実行した場合、本実施例における移動局333のように意図しないPUSCHを送信している移動局33が存在しないか、過去の通信履歴や受信干渉電力等に基づいて判断する。判断の結果、意図しないPUSCHを送信している移動局333が存在すると判断した場合、基地局32はサブフレームSUB#n+18において、移動局333に対しPUSCH送信を停止させるためのACKのPHICHを再送する。
【0062】
図6のBおよびDに示す通り、サブフレームSUB#n+14でのPUSCHに対する基地局32でのRB14〜RB21の干渉電力は、サブフレームSUB#n+6でのPUSCHに対する基地局32でのRB14〜RB21の干渉電力に比べて高い。その後基地局32がサブフレームSUB#n+18で移動局333へACKのPHICHを再送することにより、移動局333は意図しないPUSCHの送信を停止する。この結果図6のFに示す通り、サブフレームSUB#n+22でのPUSCHに対する基地局32でのRB14〜RB21の干渉電力は再び低くなる。以上の通り、干渉電力に基づいて、意図しないPUSCHを送信している移動局33へ、ACKのPHICHを再送することにより、正常な通信状態へ早期に復旧することができる。
【0063】
なお基地局32は、ACKのPHICHが移動局33で正常に受信されたか否かに関わらず、ACKのPHICHを再送しても良い。これにより基地局32は、1度目のACKのPHICHを受信できなかった移動局33からのデータの再送処理を強制的に止めることができる。
【0064】
図7はRBごとの干渉電力を管理するための干渉電力管理テーブル70である。干渉電力管理テーブル70は、各サブフレームで受信したRBごとの干渉電力を記録する。各干渉電力は、基地局32のパイロット信号復調部24において算出される。干渉電力管理テーブル70は、基地局32の記憶部28に記憶されている。
【0065】
図7の干渉電力管理テーブル70において、行71はRBの番号を示す。行73はサブフレームSUB#n+6で基地局32が受信した、各RBでの干渉電力である。行74はサブフレームSUB#n+14で基地局32が受信した、各RBでの干渉電力である。行75はサブフレームSUB#n+22で基地局32が受信した、各RBでの干渉電力である。
【0066】
サブフレームSUB#n+6、およびSUB#n+22で基地局32が受信した干渉電力は、各RBにおいて−110[dBm]である。一方サブフレームSUB#n+14で受信した干渉電力は、RB14〜RB21において−105[dBm]であり、その他のRBで−110[dBm]である。
【0067】
以上の通り干渉電力管理テーブル70は各サブフレームで受信したRBごとの干渉電力を記憶する。よって基地局32の制御部3は、記憶部28に記憶された干渉電力管理テーブル70を参照することにより、干渉電力の高くなったサブフレームおよびRBを特定することができる。
【0068】
図8はACKのPHICHを送信した移動局33が、意図しないPUSCH再送を予測した再送予測管理テーブル80である。再送予測管理テーブル80は、各サブフレームで受信する可能性のある、意図しないPUSCH再送に関する情報を記録する。再送予測管理テーブル80は、基地局32の記憶部28に記憶されている。
【0069】
行86はサブフレームSUB#n+6で基地局32が受信する可能性のある、意図しないPUSCH再送に関する情報を示す。行87はサブフレームSUB#n+14で基地局32が受信する可能性のある、意図しないPUSCH再送に関する情報を示す。行88はサブフレームSUB#n+22で基地局32が受信する可能性のある、意図しないPUSCH再送に関する情報を示す。
【0070】
列82、83、84はそれぞれ異なる意図しないPUSCH再送に関する情報を示す。本実施例において、意図しないPUSCH再送は移動局333でのみ発生している。列82は移動局333において処理される可能性のあるPUSCH再送に関する情報をサブフレームごとに示すものである。列82、83、84の管理番号#0、#1、#2は、移動局33ごとに割り当てる。
【0071】
再送予測管理テーブル80に記録される情報は、意図しないPUSCHを再送する可能性のある移動局番号、PUSCHを再送するRB領域、nDMRS、基地局32から移動局33へACKのPHICHを送信する元となったPUSCHを移動局33が送信したタイミング(CRC_OKタイミング)である。ここでnDMRSは、直近のDCI format0で通知された情報である。CRC_OKは、基地局32の受信部2が受信データの復号処理に成功したことを示す。
【0072】
PHICHグループ(group)はリソース成分にマッピングされた複数のPHICHからなるグループである。同じPHICHグループには、異なるシーケンス(seq)が多重化されている。あるPHICHのリソースは[n(group、PHICH)、n(seq、PHICH)]で特定される。ここでn(group、PHICH)はPHICHのグループ番号であり、n(seq、PHICH)はそのグループ中のシーケンス番号である。PHICHのリソースを特定する[n(group、PHICH)、n(seq、PHICH)]を算出するため、RB領域の先頭RB番号およびnDMRSが用いられる。
【0073】
CRC_OKタイミングは、移動局33からのPUSCH送信有無の判定として使用する干渉電力について、どのタイミングの干渉電力を比較対象とするかを示すものである。CRC_OKとなったタイミングであれば、移動局33からのPUSCHが他の移動局33から送信されたPUSCHと干渉している可能性が低いためである。
【0074】
例えば行87の列82に記録された情報は、移動局333からRB14〜RB21の領域において、nDMRS=0を用いたPUSCHがサブフレームSUB#n+14で再送される可能性があり、意図しないPUSCH再送により干渉が発生しているとの推測は、サブフレームSUB#n+6における干渉電力を基準に判断されることを示す。
【0075】
行88の列82に記録された情報は、行87の列82に記録された情報と同一である。この情報は、サブフレームSUB#n+14と同一のPUSCH再送処理が、サブフレームSUB#n+22において繰り返される可能性があることを示す。PUSCH送信の最大再送回数はあらかじめ設定されている。
【0076】
以上の通り基地局32の制御部3は、記憶部28に記憶された再送予測管理テーブル80を参照することにより、意図しないPUSCH再送による干渉が発生した場合にACKのPHICHを送信すべき移動局33を推定することができる。
【0077】
図9は基地局32における制御部3のACK再送処理フローである。制御部3は、複数の移動局33のいずれから受信したデータ送信要求に応じて、データ送信要求を送信した移動局33にデータ送信用のRBを割り当てるとともに、受信部2に、割り当てたRBにて、データ送信要求を行なった移動局33からのデータを受信させ、受信部2がデータを受信できた場合、送信部1にデータ送信要求を行なった移動局33へACK信号を送信させ、受信確認信号の無線送信に伴ってRBの再割当ての処理を行い、送信部1に、データを送信してきた移動局33へACK信号を再送信させる。制御部3が実行する再送信処理の詳細を以下に示す。
【0078】
制御部3は受信部2から入力されたRBごとの干渉電力を記憶部28に記憶する干渉電力管理テーブル70へ書き込む(ステップS100)。
【0079】
制御部3はスケジューリングの結果、HARQプロセスにおけるデータ送信停止要求として、ACKのPHICHのみを送信した移動局33に対し、意図しないPUSCH再送をしてきた場合に対するACKのPHICH再送のために必要な各種情報である再送予測情報を再送予測管理テーブル80へ書き込む(ステップS101)。
【0080】
受信部2は復号処理結果を制御部3へ出力する。受信部2は受信データの復号処理に失敗した場合、復号結果NGを示す信号を制御部3へ出力する。制御部3は受信部2から出力された復号結果に基づいてNGとなった移動局33を検出した場合(ステップS102:YES)、再送予測管理テーブル80を参照する(ステップS103)。制御部3は復号結果NGとなる移動局33を検出しなかった場合(ステップS102:NO)、ACK再送処理を終了する。
【0081】
再送予測管理テーブル80に基づき、復号結果NGのRB領域は、意図しないPUSCH送信候補RBとの衝突であると判断した場合(ステップS103:YES)、制御部3は衝突RB領域について、衝突が発生したサブフレームにおける干渉電力の平均値をXとして算出する(ステップS104)。制御部3は再送予測管理テーブル80に基づき、復号結果NGのRB領域は、意図しないPUSCH送信候補RBとの衝突ではないと判断した場合(ステップS103:NO)、復号結果NGとなった他の移動局33についての検証を開始する(ステップS108)。
【0082】
続いて制御部3は再送予測管理テーブル80に基づき、衝突RB領域について、意図しないPUSCH再送候補移動局33の、CRC_OKタイミングにおける干渉電力平均値をYとして算出する(ステップS105)。
【0083】
制御部3は信号間干渉を検出するための検出閾値をあらかじめ記憶部28に記憶させておく。検出閾値として、例えば、意図しないPUSCH再送を実行すると想定される移動局33の送信電力に基づいて設定しても良いし、UpLink Power Control制御を考慮した係数αを乗じた閾値として設定しても良い。
【0084】
制御部3はステップS104、S105で算出した平均値X、Yの差分(X−Y)が検出閾値よりも大きい場合(ステップS106:YES)、意図しないPUSCH再送を実行している移動局33へACKのPHICHを再送するよう、送信部1へ制御信号を出力する(ステップS107)。制御部3は差分(X−Y)が検出閾値以下の場合(ステップS106:NO)、復号結果NGとなった他の移動局33についての検証を開始する(ステップS108)。
【0085】
制御部3は受信部2における復号結果がNGとなった移動局33すべてについて信号間干渉の評価を実行した場合(ステップS108:YES)、ACKのPHICH再送処理を終了する。制御部3は復号結果がNGとなった移動局33すべてについて信号間干渉の評価を実行していない場合(ステップS108:NO)、ステップS103からS107までの処理を繰り返す。
【0086】
本実施例における再送予測管理テーブル80では、意図しないPUSCH再送を実行している移動局は移動局333のみとしているが、複数の移動局33がACKのPHICHを受信できずにnon−adaptiveHARQ再送を実行していても良い。例えば移動局332において意図しないPUSCH再送が想定される場合、再送予測管理テーブル80の列83に、想定されるPUSCH再送に関する情報が記録される。制御部3は再送予測管理テーブル80に基づき、移動局332および333それぞれにステップS103からS107の処理を実行することにより、複数の移動局33で意図しないPUSCH再送が実行されている場合にも対応することができる。
【0087】
本実施例において、例えば移動局332がRB13〜RB21でPUSCH送信をした場合の復号結果がNGであった場合、制御部3は再送予測管理テーブル80に基づき、移動局333がRB14〜RB21で意図しないPUSCH再送をしているためにRB14〜RB21が衝突していると判定する。
【0088】
制御部3はサブフレームSUB#n+14において、干渉電力管理テーブル70に基づいてRB14〜RB21の干渉電力平均値Xを算出する。本実施例において、干渉電力管理テーブル70に基づくサブフレームSUB#n+14でのRB14〜RB21の干渉電力平均値Xは−105dBm/RBとなる。
【0089】
また制御部3は再送予測管理テーブル80に基づき、移動局333から受信したPUSCHがCRC_OKとなったタイミングはサブフレームSUB#n+6であると判断する。制御部3はサブフレームSUB#n+6のRB14〜RB21の平均値を干渉電力平均値Yとして算出する。本実施例において、干渉電力平均値Yは−110dBm/RBとなる。
【0090】
例えば検出閾値を4dBと設定していた場合、平均値の差分(X−Y)は5dBとなり、検出閾値よりも大きくなる。よって制御部3は再送予測管理テーブル80に基づいて、移動局333に対しACKのPHICH再送処理を実行する。
【0091】
以上の通り基地局32の制御部3は、受信部2において復号結果がNGとなった場合に、干渉電力管理テーブル70および再送予測管理テーブル80に基づいて、信号間干渉の原因となる意図しないPUSCH再送を実行している移動局33に対し、ACKのPHICHを再送処理することができる。
【0092】
図10は基地局32における復号処理結果がOKとなり、無線リソースの再割り当てを行った場合に移動局33から受信した信号のSIRを管理するSIR管理テーブル90である。SIR管理テーブル90は、基地局32の記憶部28に記憶されている。
【0093】
行96はサブフレームSUB#n+6の受信結果により、サブフレームSUB#n+14で無線リソースの再割り当てが行われる移動局を対象とする。行96はサブフレームSUB#n+6にて各移動局33から受信した信号のSIR値に関する情報を示す。行97はサブフレームSUB#n+14の受信結果により、サブフレームSUB#n+22で無線リソースの再割り当てが行われる移動局を対象とする。行97はサブフレームSUB#n+14にて各移動局33から受信した信号のSIR値に関する情報を示す。行98はサブフレームSUB#n+22の受信結果により、サブフレームSUB#n+30で無線リソースの再割り当てが行われる移動局を対象とする。行98はサブフレームSUB#n+22にて各移動局33から受信した信号のSIR値に関する情報を示す。
【0094】
列92、93、94は無線リソースの再割り当てが確定した各移動局33から受信した信号のSIRである。列92、93、94の管理番号#0、#1、#2は、移動局33ごとに割り当てる。本実施例において、無線リソースの再割り当ては、行96のサブフレームSUB#n+6の受信結果により決定している。行96において、列92には移動局330から受信した信号のSIR値xxが記録されている。列93には移動局331から受信した信号のSIR値yyが記録されている。列94には移動局332から受信した信号のSIR値xxが記録されている。本実施例において基地局32は、移動局333に対しサブフレームSUB#n+10でACKのPHICHを送信している。よってサブフレームSUB#n+14において、移動局333へのリソースの再割り当ては発生していない。
【0095】
基地局32の制御部3は、復号結果NGが発生した場合の受信信号のSIRを記録する。そして制御部3は、SIR管理テーブルに記録した、復号結果OKとなったタイミングでのSIRの値と比較することにより、復号結果NGとなった原因が、意図しない移動局33からのPUSCH再送によるものである事を推定することができる。
【0096】
図11は復号結果NGとなった移動局33に対して割り当てられたRB領域に着目した、基地局32における制御部3のACK再送処理フローである。制御部3はスケジューリングの結果、HARQプロセスにおけるデータ送信停止要求として、ACKのPHICHのみを送信した移動局33に対し、意図しないPUSCH再送をしてきた場合に対するACKのPHICH再送のために必要な各種情報を再送予測管理テーブル80へ書き込む(ステップS201)。
【0097】
制御部3はスケジューリングの結果、HARQプロセスにおける無線リソースの再割り当てをした移動局33から受信した信号のSIR値をAとしてSIR管理テーブル90に書き込む(ステップS202)。
【0098】
受信部2は復号処理結果を制御部3へ出力する。制御部3は受信部2から出力された復号結果に基づいてNGとなった移動局33を検出した場合(ステップS203:YES)、再送予測管理テーブル80を参照する(ステップS204)。制御部3は復号結果NGとなる移動局33を検出しなかった場合(ステップS203:NO)、ACK再送処理を終了する。
【0099】
制御部3は再送予測管理テーブル80に基づき、復号結果NGのRB領域は、意図しないPUSCH送信候補RBとの衝突であると判断した場合(ステップS204:YES)、復号結果NGとなったタイミングにおいて移動局33から受信した信号のSIR値をBとして算出する(ステップS205)。復号結果NGのRB領域は、意図しないPUSCH送信候補RBとの衝突でないと判断した場合(ステップS204:NO)、制御部3はステップS208の判定処理へ移行する。
【0100】
制御部3は信号間干渉を検出するための検出閾値をあらかじめ記憶部28に記憶させておく。検出閾値として、例えば、意図しないPUSCH再送を実行すると想定される移動局33の送信電力に基づいて設定しても良いし、UpLink Power Control制御を考慮した係数αを乗じた閾値として設定しても良い。
【0101】
制御部3は受信SIRの差分(A−B)が検出閾値よりも大きい場合(ステップS206:YES)、意図しないPUSCH再送を実行している移動局33へACKのPHICHを再送するよう、送信部1へ制御信号を出力する(ステップS207)。制御部3は差分(A−B)が検出閾値以下の場合(ステップS206:NO)、復号結果NGとなった他の移動局33についての検証を開始する(ステップS208)。
【0102】
制御部3は受信部2における復号結果がNGとなった移動局33すべてについて信号間干渉の評価を実行した場合(ステップS208:YES)、ACKのPHICH再送処理を終了する。制御部3は復号結果がNGとなった移動局33すべてについて信号間干渉の評価を実行していない場合(ステップS208:NO)、ステップS204からS207までの処理を繰り返す。
【0103】
以上の通り基地局32の制御部3は、復号結果NGが発生した場合の受信信号のSIR値と、SIR管理テーブルに記録した、復号結果OKとなったタイミングでのSIR値と比較することにより、復号結果NGとなった原因が、意図しない移動局33からのPUSCH再送によるものである事を推定することができる。制御部3は推定した移動局33へACKのPHICHを再送することにより、復号結果NGの原因となっている移動局33からの意図しないPUSCH再送を止めることができる。また図9の干渉電力管理テーブル70を用いた判定では、複数のRBにおける平均値を算出する必要があるのに対し、図11のSIR管理テーブルを用いた判定では、平均値の算出が必要ないため、処理ステップを少なくすることができる。
【符号の説明】
【0104】
1 送信部
2 受信部
3 制御部
4 PDCP処理部
5 RLC処理部
6 MAC処理部
7 誤り訂正符号部
8 データ変調部
9 データ・パイロット信号多重部
10 IFFT部
11 CP挿入部
12 D/A変換部
13 送信RF部
14 アンテナ。
15 RF処理部
16 受信RF部
17 A/D変換部
18 CP除去部
19 FFT部
20 データ・パイロット信号分離部
21 データ復調部
22 IDFT部
23 誤り訂正復号部
24 パイロット信号復調部
25 MAC処理部
26 RLC処理部
27 PDCP処理部
28 記憶部
30 通信システム
31 コアネットワーク
32 基地局
33 移動局
34 セル
40 アンテナ
41 受信RF部
42 A/D変換部
43 受信部
44 制御部
45 送信部
46 D/A変換部
47 送信RF部
50 サブフレーム
70 干渉電力管理テーブル
80 再送予測管理テーブル
90 SIR管理テーブル
330、331、332、333 移動局


【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線送信したデータが基地局で受信されたことを示す受信確認信号を受信するまで該データを再送する複数の移動局から、該データを受信する受信部と、
該複数の移動局へ無線送信する送信部と、
該複数の移動局のいずれから受信したデータ送信要求に応じて、該データ送信要求を送信した該移動局にデータ送信用の無線リソースを割り当てるとともに、該受信部に、該割り当てた無線リソースにて、該データ送信要求を行なった該移動局からのデータを受信させ、該受信部が該データを受信できた場合において、該送信部に該データ送信要求を行なった該移動局へ該受信確認信号を送信させるとともに、該受信確認信号の無線送信に伴って該無線リソースの再割当ての処理を行った場合、該送信部に、該データを送信してきた該移動局へ該受信確認信号を再送信させる制御部と
を有する基地局。
【請求項2】
該受信部は、受信したデータに干渉するノイズの電力値である干渉電力値を検出する検出部を有し、
該制御部は、該受信部がデータの受信に失敗した場合に、該検出部が検出した干渉電力値に基づいて、該受信確認信号を再送信するか否かを判定する、
請求項1に記載の基地局。
【請求項3】
該複数の移動局から受信したデータの干渉電力値および該受信確認信号が該移動局に受信されなかった場合に該送信部が再送信すると予測される再送予測情報を記憶する記憶部を更に有し、
該検出部は、検出したデータの干渉電力値を該制御部へ出力し、
該制御部は、該受信部が出力した該干渉電力値および該再送予測情報を該記憶部へ書き込み、該受信部がデータの受信に失敗した場合に、該再送予測情報に基づいて該記憶部に記憶した該干渉電力値を参照し、データの受信に失敗した無線リソースにおける干渉電力値の平均値である第1干渉電力値を算出し、データの受信に成功した無線リソースにおける干渉電力値の平均値である第2干渉電力値と該第1干渉電力値との差分が、あらかじめ設定した閾値よりも大きい場合に、該受信確認信号を再送信する、請求項2に記載の基地局。
【請求項4】
該複数の移動局から受信したデータの信号対雑音比および、該受信確認信号が該移動局に受信されなかった場合に、該送信部が該受信確認信号を再送信すると予測される再送予測情報を記憶する記憶部を更に有し、
該検出部は、検出したデータの信号電力値および干渉電力値を該制御部へ出力し、
該制御部は、該検出部が出力した信号電力値および干渉電力値に基づいて算出した信号対雑音比および該再送予測情報を該記憶部へ書き込み、該受信部がデータの受信に失敗した場合に、該再送予測情報に基づいて該記憶部に記憶した該信号対雑音比を参照し、データの受信に失敗した無線リソースにおける信号対雑音比である第1信号対雑音比を該検出部に算出させ、データの受信に成功した無線リソースにおける信号対雑音比である第2信号対雑音比と該第1信号対雑音比との差分が、あらかじめ設定した閾値よりも大きい場合に、該受信確認信号を再送信する、請求項2に記載の基地局。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2013−42294(P2013−42294A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177056(P2011−177056)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】