説明

基材に開口を切り抜くための機械装置及び方法

本機械装置は、少なくとも一つの切断ツール(12)と、前記基材(1)を保持して所定の方向に沿って移動させる移送システム(7、8)とを有する。切断ツール(12)は、直交二方向で移動可能なレーザービーム(13)と、前記基材(1)の切断部分を排出するための排出手段(11、15)とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば窓のような開口を平面基材内に切り抜くための機械装置に関するものである。
【0002】
本発明は、例えば窓のような開口を平面基材内に切り抜く方法にも関係する。
【背景技術】
【0003】
銀行券及び有価証券の分野では、偽造を防ぐセキュリティー対策に対する必要性が増大している。実際、過去一年以内でコンピュータ、スキャナー、及び複写機は広範囲に発展し、また現在では、非常に高性能な装置を手頃な価格で購入することができる。これら装置はより高性能になるので、同時に、銀行券、小切手、カード(つまりクレジットカード)、IDカード、パスポート等のような証券のための新規の改良されたセキュリティー対策を開発することが必要であり、前記セキュリティー対策は、標準的なコンピュータ、又はスキャナー、又はさらには最新のカラー複写機による前記証券の複写を不可能にするものである。
【0004】
そのようなセキュリティー対策は、紙幣の基材に特別なパターンを印刷するために用いられる所謂光学的可変インクである、虹色に輝く特性をもつ特別なインク、又は金属化パッチの形態の(ホログラム、キネグラム(kinegrams)のような)光学的可変デバイス、又はモアレ模様及び他の同様の模様のような特別な模様も含んでおり、これらの全ては、現在の機械によって複写することが不可能ではないとしても非常に困難であるが、他方では視覚的に照合することが容易である。
【0005】
他のセキュリティー対策は、例えば紫外線ライト又は透過光によるような特定の条件下でのみ可視的な、有色の重ね合わされた線及び/又はパターンの組み合わせを含んでいる。やはり、そのようなセキュリティー手段の関心事は、それらが、保護されるべき文書上に容易に印刷又は配置され、また単純なデバイスによって可視的にさえ照合されるが、それらを現在のプリンター、スキャナー、又は複写機を使って復元することが不可能なことである。
【0006】
他の特別な技法は、透かしたときにだけ可視的な線又はパターンで紙基材が標識付けされる透かし模様を含んでいる。この技法のさらなる発展は、特に紙ベースの基材に窓を形成することに存する擬似透かしに関係しており、前記基材は、通常は透きとおって見えず、前記窓が透きとおって見える。
【0007】
しかしながら、透明窓を紙ベースの基材に作り出すか又は擬似的に作り出すことは非常に難しい。現実の透明窓は、セキュリティー要素を提供するために、銀行券及び証券用のポリマーベースの基材に広く使用されている。これらポリマーベースの基材は、通常は完全に透明であり、従って透明窓を形成するためには、印刷のない選ばれた領域を残すことだけが必要である。しかしながら紙の場合基材は透明ではなく、第一の方法が開発されてきたが、前記第一の方法によると、基材に透明窓を形成するために紙の厚さを局部的に薄くすることが可能である。例えば、PCT国際公開第99/14433号パンフレットが、この方法を開示しており、この出願の内容は引用することにより本出願に組み入れられる。この公知の方法によると、濡らし溶液が、一つの又は数箇所の所定の領域で紙の少なくとも一方の表面に塗布され、次いで前記領域内の塗布された紙の水分を蒸発させて紙の残りの部分に対して紙の密度を高めるように、圧力と熱が濡らされた領域に加えられる。このようにして、前記領域は、紙の残りの部分に対して厚さを薄くされて透明になる。
【0008】
しかしながら、この第一の技法は、前記窓を備える紙の領域を局部的に弱めるという欠点を有する。特に、窓の厚さが薄くなるにつれて前記領域が弱くなる。従ってそのような技法を使用している銀行券は、短い寿命を有し、また交換されなければならず、即ち新しい銀行券が印刷されて古い損傷した銀行券と交換されなければならない。
【0009】
他の技法は、透明窓を作り出すために基材に直接に穴を切り抜くことを含んでいる。例えば、PCT国際公開第95/10420号パンフレットが、切り抜き窓をもつ紙の銀行券を開示しており、前記パンフレットは引用することにより本出願に組み入れられる。もちろん基材の切り抜かれた開口を覆うことが必要であり、これはこの場合には、例えばホイル又は積層材のような透明材料の細片で覆われることによって実現される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、公知の機械装置及び方法を改良することである。
【0011】
本発明の目的は、平面基材に開口を切り抜くための改良された機械装置を提供することである。
【0012】
本発明のさらに別の目的は、平面基材に開口を切り抜くための改良された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
これらの目的を達成するために、本発明は特許請求の範囲で提示された定義に従う。
【0014】
本発明は、実施例の、及び添付図面の記載によって最もよく理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
平面基材に開口を切り抜くための機械装置の実施例が、図1を参照して最初に説明される。
【0016】
この機械装置では、紙又は他の材料のシートのような連続する基材1が、例えば揺動移送グリッパ2のような給送システムによって該機械装置にもって来られて、第一移送シリンダ3上に移送される。連続する基材1は、印刷機の技術分野で知られたグリッパシステム5を備える移送シリンダ4によって移送される。
【0017】
次に基材1は、チェーンを具備するチェーングリッパシステム7のような運搬装置に移送され、前記チェーンは、連続する基材1を運ぶために、その上にグリッパ棒8が取り付けられている。グリッパ棒は、連続する基材1を引き取って、それを該機械装置の切断加工部署へ運ぶために第一移送シリンダ3と協働する。
【0018】
説明されるように、基材1は、それらが該機械装置の切断加工部署の下に到達するまでチェーングリッパシステム7によって運ばれる。この切断加工部署は、吸引箱9を具備しており、前記吸引箱9は、吸引源11に連結された吸引穴10を底壁に有しており、前記吸引源11は、切断加工の間に箱9の底壁の外表面に基材1を押付けるために、負圧の空気を供給する。
【0019】
切断加工はレーザーによって実行され、レーザービーム13が、箱9の底壁の切断開口14内に導かれる。レーザービーム13は、切断される基材に直接的に、又は鏡もしくは他の同等の装置を使って間接的に狙いを定められる。従って切断加工の間、底壁の切断開口14を通ったレーザービームが、基材に所望の開口を切り抜くことができるように、基材は、停止させられて、前記底壁の外表面に押付けられた状態を維持される。この切断開口14は、基材内に切り込まれる窓と同じ形状、またはより大きいサイズを有している。切断加工を実行するために、レーザービーム13は、適切な機械的手段を使ってレーザー12それ自身を直交二軸X−Yに沿って移動させることによって直接的に狙いを定められるか、又はビーム13は、鏡によって間接的に狙いを定められ(図4参照)、前記鏡は、直交二軸X−Yに沿ってビーム13を移動させるようにそれ自身が可動である。したがって該システムは、機械装置を変更することなく、単にX−Y軸に沿ってビーム13を正しく狙い付けすることによって、いくつかの異なるサイズの窓を切り抜くことが可能である。
【0020】
切断加工が実施されると、切断部分は、負圧の空気によって箱9の中に吸引されて取り除かれるか、又は切断部分は、やはり負圧の空気によって排出口15に吸引されることが可能である。
【0021】
従って、切断部分が排出口15を経由して箱に排出される場合、箱9及び排出口15において生成される真空の均衡の問題を回避するために、切断開口14がガラスのような透明な材料で閉鎖されることが好ましい。切断部分が基材の大きさに対して十分小さい場合、切断開口が透明材料によって閉鎖されるとしても、基材は、切断加工の間、底壁の外表面に適切に接して保持されるであろう。
【0022】
変形形態では、排出口15を取り除いて、切断部分を吸引箱9をとおして排出することも可能である。
【0023】
箱9及び排出口15(存在する場合)は、切断加工によって生成されるヒュームを排出することにも有用である。
【0024】
切断加工が終了して切断部分が排出されたとき、基材はさらに別の処理のためにチェーングリッパシステム7によって運び去られることが可能であり、つまりチェーングリッパシステム7は前進しそれと共に切断基材1を第二移送シリンダ16に運び、切断基材1は、さらに別の機械装置(非図示)において、フォイルを窓にかぶせるようなさらに別の処理を受けることが可能である。そのような積層フォイル張り付け機械装置は、“Machine for applying and cutting strips of laminate”の名称で、出願人KBA−GIORI株式会社によって2003年4月30日に出願された欧州特許出願に示されており、前記特許出願の内容は引用することによって本明細書に組み入れられる。そのような積層フォイルの細片の張り付けの他の例は、出願人KBA−GIORI株式会社によって2002年9月10日に出願された欧州特許出願公開第02405782.0号明細書に開示されており、前記明細書の内容は引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0025】
本技術分野で知られ且つ上で開示されたフォイル細片の張り付けは、次に紙表面/裏面セキュリティー及び照合要素を切断基材に張り付けるために、出願人KBA−GIORI株式会社によって2002年9月19日に出願された欧州特許出願公開第1291195号及び第02405782.0号明細書によって開示された技術の使用を可能にし、前記両方の特許は引用することによって本明細書に組み入れられる。
【0026】
図2では、吸引箱9の平面断面図が描かれている。底壁17は、非限定の例として長方形であり、また切断加工中に箱9内の負圧の空気が、基材に作用して基材を底壁17の外表面に張り付けることを可能にするためにいくつかの穴10を具備している。底壁9は開口14をさらに具備しており、前記開口14を通して切断加工がレーザービーム13によって実施される。開口14の形状は、例示を目的として、長方形で与えられるが、他の形状(正方形、円形、三角形等)が可能である。
【0027】
前述したように、開口14は、箱9と出口15との間の真空の均衡の問題を回避するために、透明材料によって閉鎖されることが可能である。
【0028】
図3には、レーザービーム13を二つの切断方向に沿って移動させるための第一のシステムが示されている。システムの原理が本技術分野で知られているこのシステムでは、レーザー12それ自身が、例えば適当な(回転式又は直線)アクチュエータ18、19によって回転で又は直線的に二軸X−Yに沿って移動させられて、底壁17及び開口14を通るレーザービーム13を移動させることによって基材1の切断加工を実行する。
【0029】
図4に示される変形形態では、レーザー12それ自身は固定され、レーザービーム13だけが、基材の切断されるべき形状に沿って、底壁17の開口14を通って例えば鏡20によって案内され、前記鏡20は、例えばモーター駆動アクチュエータのような適当なアクチュエータ手段21、22によって直交二軸を中心に回転することができるものであり、またこの原理は本技術分野でよく知られている。
【0030】
本明細書に記載された本発明の実施例は、説明のための例として提示されたものであり、限定する様態で解釈されるべきではない。他の変形形態及び同等の解決法は特許請求の範囲内で可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による機械装置の原理を示す図である。
【図2】本発明による吸引箱の平面断面図である。
【図3】レーザー案内システムの第一の実施例を示す図である。
【図4】レーザー案内システムの変形形態を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの切断ツール(12)を有する、平面基材(1)に窓のような開口を切り抜くための機械装置であって、該機械装置が、前記基材(1)を保持して所定の方向に沿って移動させる移送システム(7、8)を具備すること、及び切断ツール(12)が、直交二方向に移動可能なレーザービーム(13)と、前記基材(1)の切断部分を排出するための排出手段(11、15)とを具備することを特徴とする機械装置。
【請求項2】
前記機械装置が、基材(1)を切断加工の間に保持するために、吸引箱(9)をさらに具備する、請求項1に記載の機械装置。
【請求項3】
前記吸引箱(9)が、吸引穴(10)と切断開口(14)とを備える底壁(17)を具備する、請求項2に記載の機械装置。
【請求項4】
前記移送システムが、チェーングリッパシステム(17)である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項5】
前記レーザー(12)が、直線的に又は回転して移動される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項6】
前記レーザービーム(13)が、直線的に又は回転して移動される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項7】
基材の切り抜かれた開口を覆うように積層材の細片を張り付けるための積層材張り付けユニットをさらに具備する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項8】
平面基材に窓のような開口を切り抜くための方法であって、該方法が次に示す段階、つまり:
前記基材をグリッパで保持する段階と;
前記基材を所定の方向に沿って移動させる段階と;
前記基材を表面に張り付ける段階と;
前記基材に開口を切り抜くために、前記基材にレーザービームを照射する段階と;
前記基材の切断部分を排出する段階と;によって特徴付けられる、開口を切り抜くための方法。
【請求項9】
前記基材を表面に張り付ける段階が、負圧の空気を使用することによって行われる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記排出する段階が、負圧の空気による吸引手段によって行われる、請求項8又は9に記載の方法。
【請求項11】
前記レーザービームが、直交二軸に沿って移動される、請求項8〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザービームが、直交二軸を中心に回転される、請求項8〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
鏡が前記レーザービームを移動させる、請求項8〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基材の切り抜かれた開口を覆うように積層材を張り付ける段階をさらに含む、請求項8〜13のいずれか一項に記載の方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
平面基材(1)に窓のような開口を切り抜くための機械装置であって、少なくとも一つの切断ツール(12,13)と、前記基材(1)を保持して所定の方向に沿って移動させる移送システム(7,8)と、切断加工の間に基材(1)を保持するための吸引箱(9)とを有し、前記切断ツールが、直交二方向に移動可能なレーザービーム(13)を生成するレーザー(12)と、前記基材(1)の切断部分を排出するための排出手段(9,11;15)とを具備する、機械装置において、前記吸引箱(9)が、前記切断ツール(12,13)と同じ側の基材の側に配置され、また前記吸引箱(9)が、前記基材(1)を吸い付ける吸引穴(10)と、前記レーザービーム(13)が中を通って基材上に導かれるところの切断開口(14)とを具備する、機械装置。
【請求項2】
前記吸引手段(9,11)が、前記切断開口(14)を通る吸引によって切断部分を排出する、請求項1に記載の機械装置。
【請求項3】
吸引によって切断部分を排出するための排出口(15)であって、切断加工中に基材(1)が張り付けられる表面(17)に対して反対側の基材の側に配設される排出口(15)を前記排出手段が具備する、請求項1に記載の機械装置。
【請求項4】
前記切断開口(14)が、ガラスのような透明材料によって閉鎖される、請求項3に記載の機械装置。
【請求項5】
前記移送システムは、グリッパ棒(8)が上に取り付けられたチェーンを具備するチェーングリッパシステム(7)である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項6】
前記レーザー(12)が、直線的に又は回転して移動される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項7】
前記レーザービーム(13)が、直線的に又は回転して移動される、請求項1〜5のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項8】
基材の切り抜かれた開口を覆うように積層材の細片を張り付けるための積層材張り付けユニットをさらに具備する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の機械装置。
【請求項9】
平面基材(1)に窓のような開口を切り抜くための方法であって、該方法が次に示す段階、つまり:
前記基材(1)をグリッパで保持する段階と;
前記基材(1)を所定の方向に沿って移動させる段階と;
負圧の空気を用いることによって前記基材(1)を表面(17)に張り付ける段階と;
前記基材に開口を切り抜くために、前記表面(17)に設けられた切断開口(14)を通してレーザービーム(13)を前記基材(1)上に導く段階と;
前記基材(1)の切断部分を排出する段階と;によって特徴付けられる、平面基材(1)に窓のような開口を切り抜くための方法。
【請求項10】
前記切断部分が、前記切断開口(14)を通した吸引によって排出される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
切断加工中に基材(1)が張り付けられる表面(17)に対して反対側の基材の側に配設された排出口(15)を通した吸引によって前記切断部分が排出される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記レーザー(12)が、直線的に又は回転して移動される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記レーザービーム(13)が、直線的に又は回転して移動される、請求項9〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
鏡が前記レーザービームを移動させる、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
基材の切り抜かれた開口を覆うように積層材を張り付ける段階をさらに含む、請求項9〜14のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−525121(P2006−525121A)
【公表日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500345(P2006−500345)
【出願日】平成16年4月21日(2004.4.21)
【国際出願番号】PCT/IB2004/001273
【国際公開番号】WO2004/096482
【国際公開日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(502065583)カーベーアー−ジオリ ソシエテ アノニム (33)
【Fターム(参考)】