説明

基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルム

【課題】 基材レス両面粘着シートを光学用途、例えば、タッチパネル、液晶偏向板、位相差板等において使用する際、剥離速度依存性を最小限に抑えることを可能にし、生産性、コストなどの問題を解決した、安価な基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】 アルケニル基およびアルキル基を官能基として有し、移行成分を5〜20重量%含むシリコーン樹脂と、白金系触媒とを含有するシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルムであり、当該離型層の300mm/分速度域での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲であり、かつ、10000mm/分速度域での高速剥離力が前記低速剥離力の2.5倍以下であることを特徴とする基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学用途向けとして好適な基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、物体間を面接着する粘着シートは種々知られており、粘着シートの1つとして基材レス両面粘着シートが知られている。基材レス両面粘着シートは、粘着剤層の両面に剥離力の相対的に低い軽剥離シートと、剥離力の相対的に高い重剥離シートが積層されて構成され、両面の剥離シートを除去した後には、支持基材を有さない粘着剤層のみとなる両面粘着シートである。基材レス両面粘着シートは、まず軽剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の一方の面が物体面に接着され、その接着後、さらに重剥離シートが剥がされ、露出された粘着剤層の他方の面が、異なる物体面に接着され、これにより物体間が面接着される。
【0003】
近年、基材レス両面粘着シートは、その用途が広がりつつあり、各種光学用途の部材等にも用いられている。例えば、LCDの部材として、基材レス両面粘着剤シートの剥離力の軽い方の離型フィルムを剥がして、その面に偏光板を貼り合わせて、その反対面側に剥離力の重い離型フィルムを用いることがある。
【0004】
生産上の作業性から、ある程度高速域での加工が考えられるが、軽剥離の離型フィルムにおいて、軽い剥離力を達成するのはもちろんだが、それを達成しつつ、加工速度を上げても、できるだけ重剥離の離型フィルムとの剥離力差が縮まらないことを同時に達成することは非常に難しい。もし、重剥離の離型フィルムとの剥離力差が縮まったならば、剥離工程において、両面のフィルムが同時に剥がれる、また、剥離力差が小さくなるために粘着剤も一緒に剥がれる等の問題が起こり、加工性、生産性に不具合をきたすことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−220496号公報
【特許文献2】特開2003−231214号公報
【特許文献3】特開2002−361737号公報
【特許文献4】特願2001−301024号公報
【特許文献5】特願2010−121101号公報
【特許文献6】特開2009−220496号公報
【特許文献7】特開2010−132561号公報
【特許文献8】特開平10−158519号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みなされたものであって、その解決課題は、基材レス両面粘着シートを光学用途、例えば、タッチパネル、液晶偏向板、位相差板等において使用する際、剥離速度依存性を最小限に抑えることを可能にし、生産性、コストなどの問題を解決した、安価な基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記実情に鑑み鋭意検討した結果、特定の構成を有するポリエステルフィルムによれば、上記課題を容易に解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の要旨は、アルケニル基およびアルキル基を官能基として有し、移行成分を5〜20重量%含むシリコーン樹脂と、白金系触媒とを含有するシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルムであり、当該離型層の300mm/分速度域での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲であり、かつ、10000mm/分速度域での高速剥離力が前記低速剥離力の2.5倍以下であることを特徴とする基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルムに存する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、軽剥離で剥離速度依存性が小さい離型ポリエステルフィルムを提供することができるため、その工業的価値は高い。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明でいうポリエステルフィルムとは、いわゆる押出法に従い押出口金から溶融押出されたシートを延伸したフィルムである。
【0011】
上記のフィルムを構成するポリエステルとは、ジカルボン酸と、ジオールとからあるいはヒドロキシカルボン酸から重縮合によって得られるエステル基を含むポリマーを指す。
ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等を、ジオールとしては、エチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ポリエチレングリコール等を、ヒドロキシカルボン酸としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等をそれぞれ例示することができる。かかるポリマーの代表的なものとして、ポリエチレンテレフタレートやポリエチレン−2、6−ナフタレート等が例示される。
【0012】
本発明のフィルム中には、易滑性の付与および各工程での傷発生防止を主たる目的として、粒子を配合することが好ましい。配合する粒子の種類は、易滑性付与可能な粒子であれば特に限定されるものではなく、具体例としては、例えば、シリカ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸カルシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、カオリン、酸化アルミニウム、酸化チタン等の粒子が挙げられる。また、特公昭59−5216号公報、特開昭59−217755号公報等に記載されているような耐熱性有機粒子を用いてもよい。この他の耐熱性有機粒子の例として、熱硬化性尿素樹脂、熱硬化性フェノール樹脂、熱硬化性エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等が挙げられる。さらに、ポリエステル製造工程中、触媒等の金属化合物の一部を沈殿、微分散させた析出粒子を用いることもできる。
【0013】
一方、使用する粒子の形状に関しても特に限定されるわけではなく、球状、塊状、棒状、扁平状等のいずれを用いてもよい。また、その硬度、比重、色等についても特に制限はない。これら一連の粒子は、必要に応じて2種類以上を併用してもよい。
【0014】
また、用いる粒子の平均粒径は、通常0.01〜3μm、好ましくは0.1〜2μmの範囲である。平均粒径が0.01μm未満の場合には、易滑性を十分に付与できない場合がある。一方、3μmを超える場合には、フィルムの製膜時に、その粒子の凝集物のために透明性が低下することがある他に、破断などを起こし易くなり、生産性の面で問題になることがある。
【0015】
さらにポリエステル中の粒子含有量は、通常0.001〜5重量%、好ましくは0.005〜3重量%の範囲である。粒子含有量が0.001重量%未満の場合には、フィルムの易滑性が不十分な場合があり、一方、5重量%を超えて添加する場合には、フィルムの透明性が不十分な場合がある。
【0016】
ポリエステル層中に粒子を添加する方法としては、特に限定されるものではなく、従来公知の方法を採用しうる。例えば、各層を構成するポリエステルを製造する任意の段階において添加することができるが、好ましくはエステル化もしくはエステル交換反応終了後、添加するのが良い。
【0017】
また、ベント付き混練押出機を用い、エチレングリコールまたは水などに分散させた粒子のスラリーとポリエステル原料とをブレンドする方法、または、混練押出機を用い、乾燥させた粒子とポリエステル原料とをブレンドする方法などによって行われる。
【0018】
なお、本発明におけるポリエステルフィルム中には、上述の粒子以外に必要に応じて従来公知の酸化防止剤、帯電防止剤、熱安定剤、潤滑剤、染料、顔料等を添加することができる。
【0019】
本発明におけるポリエステルフィルムの厚みは、フィルムとして製膜可能な範囲であれば特に限定されるものではないが、通常10〜350μm、好ましくは15〜100μmの範囲である。
【0020】
次に本発明におけるポリエステルフィルムの製造例について具体的に説明するが、以下の製造例に何ら限定されるものではない。すなわち、先に述べたポリエステル原料を使用し、ダイから押し出された溶融シートを冷却ロールで冷却固化して未延伸シートを得る方法が好ましい。この場合、シートの平面性を向上させるためシートと回転冷却ドラムとの密着性を高めることが好ましく、静電印加密着法および/または液体塗布密着法が好ましく採用される。次に得られた未延伸シートは二軸方向に延伸される。その場合、まず、前記の未延伸シートを一方向にロールまたはテンター方式の延伸機により延伸する。延伸温度は、通常90〜140℃、好ましくは95〜120℃であり、延伸倍率は通常2.5〜7倍、好ましくは3.0〜6倍である。次いで、一段目の延伸方向と直交する方向に延伸するが、その場合、延伸温度は通常90〜170℃であり、延伸倍率は通常3.0〜7倍、好ましくは3.5〜6倍である。そして、引き続き180〜270℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。上記の延伸においては、一方向の延伸を2段階以上で行う方法を採用することもできる。その場合、最終的に二方向の延伸倍率がそれぞれ上記範囲となるように行うのが好ましい。
【0021】
また、本発明のポリエステルフィルム製造に関しては、同時二軸延伸法を採用することもできる。同時二軸延伸法は、前記の未延伸シートを通常90〜140℃、好ましくは80〜110℃で温度コントロールされた状態で機械方向および幅方向に同時に延伸し配向させる方法であり、延伸倍率としては、面積倍率で4〜50倍、好ましくは7〜35倍、さらに好ましくは10〜25倍である。そして、引き続き、170〜250℃の温度で緊張下または30%以内の弛緩下で熱処理を行い、延伸配向フィルムを得る。上述の延伸方式を採用する同時二軸延伸装置に関しては、スクリュー方式、パンタグラフ方式、リニアー駆動方式等、従来公知の延伸方式を採用することができる。
【0022】
ポリエステルフィルムの表面に塗布層を形成する方法は、特に制限されないが、ポリエステルフィルムを製造する工程中で塗布液を塗布する方法が好適に採用される。具体的には、未延伸シート表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法、二軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。これらの中では、未延伸フィルムまたは一軸延伸フィルム表面に塗布液を塗布後、フィルムに熱処理を行う過程で同時に塗布層を乾燥硬化する方法が経済的である。また、塗布層を形成する方法として、必要に応じ、前述の塗布方法の幾つかを併用した方法も採用し得る。具体的には、未延伸シート表面に第一層を塗布して乾燥し、その後、一軸方向に延伸後、第二層を塗布して乾燥する方法等が挙げられる。ポリエステルフィルムの表面に塗布液を塗布する方法としては、原崎勇次著、槙書店、1979年発行、「コーティング方式」に示されるリバースロールコーター、グラビアコーター、ロッドコーター、エアドクターコーター等を使用することができる。
【0023】
本発明において得られたポリエステルフィルムの片方の最外層に形成する離型層硬化型シリコーン樹脂の種類としては、付加型・縮合型・紫外線硬化型・電子線硬化型・無溶剤型等何れの硬化反応タイプでも用いることができる。
【0024】
本発明において使用する、アルケニル基およびアルキル基を官能基として有するシリコーン樹脂の例としては以下のようなものが挙げられる。まず、アルケニル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、ジオルガノポリシロキサンとして、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位96モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位4モル%、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位97モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位3モル%)、分子鎖両末端ジメチルヘキセニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルヘキセニルシロキサン共重合体(ジメチルシロキサン単位95モル%、メチルヘキセニルシロキサン単位5モル%)が挙げられる。次に、アルキル基を含む硬化型シリコーン樹脂は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、分子鎖両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体が挙げられる。
【0025】
本発明において移行性を達成するためにシリコーンオイルを添加してもよい。シリコーンオイルはストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイルと称されるシリコーンオイルで、以下のようなものが挙げられる。ストレートシリコーンとしては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等が挙げられる。また、変性シリコーンオイルとしては、側鎖型タイプのポリエーテル変性、アラルキル変性、フロロアルキル変性、長鎖アルキル変性、高級脂肪酸エステル変性、高級脂肪酸アミド変性、ポリエーテル・長鎖アルキル変性・アラルキル変性、フェニル変性、両末端型のポリエーテル変性、ポリエーテル・メトキシ変性などが挙げられる。
これらシリコーンオイルは、移行成分としてシリコーン樹脂中に0.1〜5.0重量%含有されることが好ましい。ストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイル共に、非反応性の無官能オイルである。
【0026】
本発明において使用するシリコーン樹脂に含まれる移行成分は、5〜20重量%の範囲であり、好ましくは10〜13重量%である。移行成分の含有量が5%より低いと速度依存性が高くなり、20重量%を超えると、硬化性が著しく低下し、密着性も悪化する不具合がある。
【0027】
本発明において日東電工株式会社製No.31Bテープによる残留接着率が65%〜90%が好ましく、より好ましくは、70%〜85%である。残留接着率が65%より低いと、移行性が高く、粘着剤加工時にロール汚れや粘着剤面に移行して、粘着剥離力低下などが生じてしまう。また、残留接着率が90%以上となると、速度依存性を小さく抑えることができない。
【0028】
シリコーン系樹脂塗剤の具体例を挙げると、信越化学工業(株)製KS−774、KS−775、KS−778、KS−779H、KS−847H、KS−856、X−62−2422、X−62−2461、ダウ・コーニング・アジア(株)製DKQ3−202、DKQ3−203、DKQ3−204、DKQ3−205、DKQ3−210、東芝シリコーン(株)製YSR−3022、TPR−6700、TPR−6720、TPR−6721、東レ・ダウ・コーニング(株)製LTC300B、LTC303E、LTC310、LTC314、SRX357、BY24−749、SD7333、BY24−179、SP7015、SP7259、SD7220、SD7226、SD7229等が挙げられる。さらに離型層の剥離性等を調整するために剥離コントロール剤を併用してもよい。また、上述のとおり、離型層中にアミノ基を有するシラン化合物を添加することもある。
【0029】
本発明において、ポリエステルフィルムに離型層を設ける方法としては、リバースロールコート、グラビアコート、バーコート、ドクターブレードコート等、従来公知の塗工方式を用いることができる。本発明における離型層の塗布量は、通常0.01〜1g/mの範囲である。
【0030】
本発明において、離型層が設けられていない面には、接着層、帯電防止層、オリゴマー析出防止層等の塗布層を設けてもよく、また、ポリエステルフィルムにはコロナ処理、プラズマ処理等の表面処理を施してもよい。
【0031】
本発明におけるポリエステルフィルムでは、離型層をきれいかつ頑丈にするため、付加型の反応を促進する白金系触媒を用いる。本成分としては、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸とオレフィンとの錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンとの錯体等の白金系化合物、白金黒、白金担持シリカ、白金担持活性炭が例示される。離型層中の白金系触媒含有量は、通常0.3〜3.0重量%、好ましくは0.5〜2.0重量%の範囲が良い。離型層中の白金系触媒含有量が0.3重量%よりも低い場合、剥離力の不具合や、塗布層での硬化反応が不十分になるため、面状悪化などの不具合を生じる場合があり、一方、離型層中の白金系触媒含有量が3.0重量%を超える場合には、コストがかかる、また、反応性が高まり、ゲル異物が発生する等の工程不具合を生じてしまうことがある。
【0032】
また、付加型の反応は非常に反応性が高いため、場合によっては、反応抑制剤として、アセチレンアルコールを添加することがある。その成分は炭素−炭素3重結合と水酸基を有する有機化合物であるが、好ましくは、3−メチル−1−ブチン−3−オール、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オールおよびフェニルブチノールからなる群から選択される化合物である。
【0033】
本発明における、剥離力とは、両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)を離型層面に貼り付け、室温にて1時間放置した後に、基材フィルムと剥離角度180°、任意の引張速度でテープを剥離したときに引張試験機で測定した値を言う。本発明において特定の剥離力を調整する方法は、離型層中の組成を選択することにより達成することができるが、その他の手段も採用でき、主にシリコーン離型層の離型剤の種類を、所望の剥離力に応じて変更することが好ましく、さらには、剥離力は用いる離型剤の塗布量に大きく依存するため、その離型剤の塗布量を調整する方法がさらに好ましい。
【0034】
本発明におけるポリエステルフィルムの剥離力の値については、300mm/分速度域での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲である。当該剥離力が10mN/cm未満の場合、剥離力が軽くなりすぎて本来剥離する必要がない場面においても容易に剥離する不具合を生じる。剥離力が20mN/cmを超える場合、剥離力の重い方の離型フィルムとの剥離力差が小さくなり、剥離工程で不具合を生じたり、剥離力の重い方の離型フィルムの選定幅が狭くなったりする等の問題がある。
【0035】
さらに、加工性を考慮に入れた10000mm/分速度域での高速剥離力が、上記低速剥離力の2.5倍以下である。当該剥離力の比が2.5倍よりも大きい場合、剥離力が重い方の離型フィルムとの剥離力差が小さくなり、剥離工程で剥離が上手くできなかったり、粘着剤ごと剥がれてしまったりする。
【実施例】
【0036】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。また、本発明で用いた測定法および評価方法は次のとおりである。
【0037】
(1)平均粒径(d50:μm)の測定
遠心沈降式粒度分布測定装置(株式会社島津製作所社製SA−CP3型)を使用して測定した等価球形分布における積算(重量基準)50%の値を平均粒径とした。
【0038】
(2)移行成分量測定
トルエンで固形分濃度4重量%に希釈したシリコーン樹脂15gに対して白金触媒0.02重量%0.004gを添加し、攪拌後、テフロン(登録商標)製のシートで作成した箱に入れ、150℃1時間熱硬化する(サンプル1)。移行成分を添加する場合(後述の比較例2に該当する)は、シリコーン樹脂の固形分に対して30重量%添加する。サンプル1を1日トルエンに浸漬し、取り出したサンプルを、120℃30分乾燥し、室温になるまで、放冷する(サンプル2)。下記式より以降成分量を算出した。
移行成分量(重量%)=(サンプル1の重量−サンプル2の重量)÷サンプル1の重量×100
【0039】
(3)離型フィルムの移行性評価接着率
試料フィルムをA4大に切り取り、離型面に75μm厚の2軸延伸PETフィルム(三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製:ダイアホイルT100−75)を重ねて温度60℃、圧力1MPaの条件で2時間プレスする。この離型面に押し当てた75μm厚フィルムを移行性評価フィルムとする。未処理のPETフィルムにも同様にして75μm厚2軸延伸PETフィルム(同)を押し当て、基準フィルムとする。それぞれのフィルムの押し当てた面に粘着テープ(日東電工(株)製「No.31B」)を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットし、室温にて1時間放置後の剥離力を測定した。剥離力は(株)島津製作所製「Ezgraph」を使用し、引張速度0.3(m/min)の条件下、180°剥離を行った。
移行性評価接着率(%)=(移行性評価フィルムの剥離力÷基準フィルムの剥離力)×100
移行性の大きなフィルムでは押し当てたフィルムに多くのシリコーンが付着するため、粘着テープの剥離力が小さくなり、移行性評価接着率(%)も低下する。
【0040】
(4)離型フィルムの剥離力(F)の評価
試料フィルムの離型層表面に両面粘着テープ(日東電工製「No.31B」)の片面を貼り付けた後、50mm×300mmのサイズにカットした後、室温にて1時間放置後の剥離力を測定する。剥離力は、引張試験機((株)インテスコ製「インテスコモデル2001型」)を使用し、引張速度300mm/分、さらに、10000mm/分の条件下、180°剥離を行った。次のような基準で判断する。
【0041】
<300mm/分での剥離力>
○:10〜20mN/cmの範囲
×:10mN/cmより小さい、もしくは、20mN/cmより大きい
【0042】
<10000mm/分での剥離力と300mm/分での剥離力の比較>
下式にて求めた値で判断した。
(10000mm/分剥離力(mN/cm))÷(300mm/分剥離力(mN/cm))
○:2.5以下
×:2.5より大きい
【0043】
(5)離型特性
粘着層を有する積層フィルムより離型フィルムを剥がした時の状況より、離型特性を評価した。
○:離型フィルムがきれいに剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られない
△:離型フィルムは剥がれるが、速い速度で剥離した場合に粘着剤が離型層に付着する ×:離型フィルムに粘着剤が付着する、上手く剥がれない。
【0044】
(6)総合評価
製膜性、生産性、検査特性全てを考慮に入れた評価を行う。次のような基準で判断する。
○:生産しても十分に製品として供給できる
△:生産性が良い、かつ、不具合の頻度が少ない
×:生産性が悪い。不具合が多発する。
【0045】
実施例1
<ポリエステルフィルムの製造>
先に述べたポリエステルを原料として、ベント付き押出機に供給し、290℃で溶融押出した後、静電印加密着法を用いて表面温度を40℃に設定した冷却ロール上で冷却固化して厚さ約550μmの無定形フィルムを得た。
このフィルムを85℃で縦方向に3.7倍延伸し、100℃で横方向に3.9倍延伸し、210℃で熱処理して、厚さ38μmの二軸延伸ポリエステルフィルムを得た
【0046】
得られたポリエステルフィルムに、下記に示す離型剤組成−Aからなる離型剤を塗布量(乾燥後)が0.12g/mになるようにリバースグラビアコート方式により塗布し、ドライヤー温度120℃、ライン速度30m/分の条件でロール状の離型ポリエステルフィルムを得た。得られた離型ポリエステルフィルムは、300mm/分速度域での剥離力が14mN/cm離型フィルムで、かつ、10000mm/分速度域での剥離力が32mN/cmであった。
【0047】
<離型剤組成−A>
硬化型シリコーン樹脂(LTC303E:東レ・ダウコーニング製) 20部 付加型白金触媒(SRX212:東レ・ダウコーニング製) 0.2部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−Aの移行性分量:15重量%
【0048】
得られたポリエステルフィルムは、下記方法で偏向板を作成し、剥離特性の評価を行った。得られた離型フィルムは偏光板きれいに剥がれ、粘着剤が離型層に付着する現象が見られなかった。
【0049】
<離型フィルム付き偏光板の製造>
偏光板に下記に示すアクリル粘着剤を、乾燥後の厚みが25μmとなるように塗布し、130℃の乾燥炉内を30秒で通過させた後、離型フィルムを貼り合わせ、粘着剤を介して離型フィルムと偏光フィルムが密着された離型フィルム付き偏光板を作成した。フィルムの貼り合せ方向は、離型フィルムの幅方向が、偏光フィルムの配向軸と平行となるように行った。
・アクリル粘着剤塗布液
アクリル粘着剤(オリバインBPS429−4:東洋インキ製) 100部
硬化剤(BPS8515:東洋インキ製) 3部
MEK/トルエン混合溶媒(混合比率は1:1) 50部
【0050】
実施例2〜4:
実施例1において、ポリエステルフィルム製造時の塗離型剤塗布量(乾燥後)を変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表1に示す。
【0051】
実施例5:
実施例2において、離型剤組成−Aにシリコーンオイル(AL−1)3部を添加したものを塗布する以外は実施例2と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表1に示す。
【0052】
【表1】

【0053】
比較例1:
離型剤組成を下記のとおり変更する以外は、実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。
<離型剤組成−B>
硬化型シリコーン樹脂(KS−847H:信越化学製) 20部
付加型白金触媒(PL−50T:信越化学製) 0.2部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−Bの移行性分量:5重量%
【0054】
比較例2:
離型剤組成を下記のとおり変更する以外は、実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表2に示す。
<離型剤組成−C>
硬化型シリコーン樹脂(LTC303E:東レ・ダウコーニング製) 20部
シリコーンオイル(KS−64−100cs) 0.18部
付加型白金触媒(SRX212:東レ・ダウコーニング製) 0.2部
MEK/トルエン/n−ヘプタン混合溶媒(混合比率は1:1:1)
離型剤組成−Cの移行性分量:23重量%
【0055】
比較例3:
実施例1において、<離型組成−A>で、塗布量を0.25g/mに変更する以外は実施例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表2に示す。
【0056】
比較例4:
比較例1において、<離型組成−C>で、塗布量を0.08g/mに変更する以外は比較例1と同様にして製造し、ポリエステルフィルムを得た。得られた結果をまとめて下記表2に示す。
【0057】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明のポリエステルフィルムは、需要が大きい光学用途における基材レス両面粘着シート用分野で、生産性がよく、剥離速度依存性が小さい離型ポリエステルフィルムとして好適に利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルケニル基およびアルキル基を官能基として有し、移行成分を5〜20重量%含むシリコーン樹脂と、白金系触媒とを含有するシリコーン系離型層を有するポリエステルフィルムであり、当該離型層の300mm/分速度域での低速剥離力が10〜20mN/cmの範囲であり、かつ、10000mm/分速度域での高速剥離力が前記低速剥離力の2.5倍以下であることを特徴とする基材レス両面粘着シート用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2012−179888(P2012−179888A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69055(P2011−69055)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000006172)三菱樹脂株式会社 (1,977)
【Fターム(参考)】