説明

基材上にコーティングを形成する方法、及び、こうして形成されたコーティング

本発明は、IC等の電子基材上で保護用コーティングを形成する方法に関し、その保護用コーティングは、良好な機械的、化学的、物理的な耐性を有し、好適な非透明性を提供する。本発明によれば、(好ましくはTiOを備える)多孔質マトリクスが形成され、その多孔質マトリクスは、TiN粒子等、光を吸収または散乱することが可能なフィラ成分で充填される。硬化工程の後で、補強用前駆体成分が加えられる。保護用コーティングを調製する際には、得られる多孔質マトリクスに基づいて、最終的に得られる保護用コーティング内で少なくとも40体積%のフィラ成分を得るために、所定の量のフィラ成分が使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材上にコーティングを形成する方法に関し、前記方法は、多孔質構造体を形成し、その多孔質構造体を第2の溶液で少なくとも部分的に充填する工程を備える。また、本発明は、その多孔質構造体を形成するための組成物に関する。さらに本発明は、本発明による方法によって得られるコーティングを備える基材に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような方法、及びそのような装置は、EP−A 560485号から知られている。その既知のコーティングは、たとえばシリカ化合物−たとえばSiO−ネットワークのセラミック・コーティングであり、そのコーティングがシリコン・ポリマーで充填される。水素シルセスキオキサン(hydrogen silsesquioxane)樹脂を酸素プラズマ反応炉内で配置し、3時間、酸素プラズマで処理しながら、250℃に加熱することによって、シリカ化合物が形成された。この工程により、関連の特許出願EP−A 775680(コラム4、48〜51行目)に示されているように、200nmの厚さと、25%から30%の空隙率とを有するコーティングが得られた。その後で、ポリジメチルシロキサン(PDMS)の溶液が、その多孔質構造体内に浸潤される。装置は、3サイクルの間、84.66kPaの真空と、その後に続く大気圧下に置かれ、余分な流体がぬぐい去られた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
多孔質構造体の浸潤は、低圧と大気圧のサイクルを伴って、かなり扱いにくい、時間のかかる工程であることが、既知の方法の欠点である。そのような工程は、収率の損失に通じる可能性がある。EP−A 560485における表1もまた、250時間試験により、機能装置の100%収率が1比濃度の第2の溶液だけで得られたという点で、収率損失について懸念させる。収率損失は、電子装置、特に集積回路内の保護用コーティングとしてコーティングを使用する意図に鑑みて、特に問題である。この保護用コーティングは、製造工程の最後の工程として適用され、この工程における収率損失は、大きな価値の損失を意味する。
【0004】
従って、本発明の目的は、実施するのが簡単であり、従って、より良好な結果を生み出す、改善された方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、マトリクス前駆体成分と粒状フィラ成分とを備えるコーティング組成物を用意し、前記コーティング組成物を基材上に付着させ、前記組成物を硬化させ、それによって多孔質構造体を得るということによりで達成される。
【0006】
本発明の方法は粒状フィラ成分に基づく多孔質構造体を提供する。マトリクス前駆体はカプセル化材料及び接着剤として使用され、従来技術の方法における場合のように多孔質構造体それ自体としては使用されない。従って、マトリクス前駆体は、より自由に、より広く選択されてよい。その主な特性は、粒状フィラに対する十分な接着性であり、ネットワークを形成することが十分に可能である。
【0007】
さらに本発明の方法は、空隙率を選択することを可能にし、従って、比較的大きな空隙をも可能にする。所望の空隙率は、粒状フィラ成分の平均サイズ及びサイズ分布によって所望の空隙率が設定されえる。平均サイズが大きく、サイズ分布が比較的狭いときに、高い空隙率が得られる。40体積%から90体積%の空隙率が得られる。少なくとも数十ミクロン、おそらくは数ミクロン程度の厚さを有する保護用コーティングについては、1ミクロンから3ミクロンの範囲内で平均粒子サイズが選択されてよいことが好適であり、コーティングが機能層である場合、平均粒子サイズは、より小さくなるように選択されてよい。
【0008】
本発明の方法において得られる改良された多孔質構造体は、この構造体のための、より簡単な充填工程を可能にする。従来技術で使用されているプラズマ工程ではなく、本発明の方法では、コーティング工程が使用される。そのようなコーティング工程は、より簡単且つより直接的であり、圧力の制御にあまり依存しない。
【0009】
得られるコーティングは、少なくとも2つの有利な構造上の特性を有する。即ち、第1には、完全に充填されることを必要とせず、部分的に多孔性としておいてよい。第2には、その上部側が閉じられ、その結果、他の層が多孔質構造体の上部上で付着されえる。さらに、第2の溶液を適切に選択することにより、基材に対する、また、多孔質構造体の上部上の任意の層に対する接着性を最適化することが可能になる。
【0010】
好適な実施形態では、マトリクス前駆体成分が金属に結合された加水分解可能な化合物を備える。化合物における典型的な、加水分解可能な基は、それだけには限らないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ヘキソキシ等のアルコキシ、アセトキシ等のアセロキシ、アセチルアセトネート基またはアミノ基等、酸素を介して金属に結合される他の有機基を含む。そのような化合物は、ゾル−ゲル処理及びMOCVDプロセスからそれ自体知られている。エトキシド化合物、イソプロポキシド化合物、n−ブトキシド化合物を使用して良好な結果が得られている。好適な金属は、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、シリコン、ニオブ、タンタル等を含む。加水分解可能な基の数は、概して4であるが、得られるネットワークが十分強い限り、4未満の加水分解可能な基を有する成分が使用されてよい。得られるネットワークは、たとえば、酸化物ネットワークまたは炭化物ネットワークである。
【0011】
マトリクス前駆体成分が、テトラエチルオルトチタネート(TEOTi)、テトライソプロピルチタネート、ニオブ(V)エトキシド、タンタル(V)エトキシド、タンタルn−ブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、またはそれらの混合物からなるグループから選択された化合物を備える場合、有利な結果を得ることができることが示されている。 TiO、Nb、Ta、ZrO、またはそれらの混合物からなるグループから選択された化合物と、さらに粒状フィラ成分とを、次いで得られる多孔質構造体は備えることになる。前記化合物はTiOであること、また、フィラ成分が主にTiNを備えることがさらに好ましい。
【0012】
粒状フィラ成分は、好ましくは結晶状粒子を備え、任意の形状のものとしてよい。追加的に、または代替として、非晶質粒子が使用されてもよい。諸例は、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、窒化チタン、炭化チタン、酸化亜鉛、炭化ケイ素を含む。粒子は、1つの材料だけから構成されることを必要としない。良好な結果は、TiN及びTiO粒子を用いて、またそれらの混合物を用いて得られている。これらの結果は、厚い、透明でないコーティングのために最適化されたものであり、他の材料もまた適用されてよい。マトリクス前駆体成分に化学的、または物理的に結合されうる材料が好ましい。本例では、結合は、少なくとも一部には、水素結合によって達成される。
【0013】
最も好適には、少なくとも40体積%のフィラ成分を有する多孔質構造体を得るために、所定の量のフィラ成分が使用される。この量のフィラ成分は、1マイクロメートルから3マイクロメートルの範囲内の直径を有する粒子を使用して、好適な多孔質構造体をもたらす。しかし、フィラ成分の相対体積は、フィラ成分の平均サイズ、使用される特定の材料、マトリクス前駆体成分の粘度に依存すると思われる。フィラ成分の体積%は、好ましくは40体積%よりさらに高く、より好ましくは、少なくとも60体積%であり、最も好ましくは、ある種の応用例について80体積%にさえなる。この大量のフィラ成分は、好適な厚さのコーティングをもたらす。2ミクロンを超える厚さを有するコーティングは、セキュリティコーティングとして使用するのに好適であり、好ましくは、そのようなコーティングは、2ミクロンと10ミクロンの間の範囲内の厚さを有する。
【0014】
基材上にコーティング組成物を付着させることは、基材上に好適なコーティング層が形成される限り、様々なやり方で行うことができる。通常、コーティング組成物は、ディップ・コーティング、スピン・コーティング、またはスプレー・コーティングによって付着され、これらの技法は当技術分野で周知である。第2の溶液を加えることもまた、上述のディップ・コーティング、スピン・コーティング、またはスプレー・コーティングを含めて、既知の技法を使用して行うことができる。コーティング組成物の硬化、及び任意選択で第2の溶液の硬化は、通常、UV光を使用して、または温度を上げて(好ましくは、100〜450℃)行われるが、他の好適な方法を使用することもできる。
【0015】
他の実施形態では、第2の溶液は、ネットワークに変換され、金属に結合される加水分解可能な基を有する成分を備える。その結果は、特定の微細構造を有する無機コーティングである。好適な第2の溶液は、たとえば、テトラエチルオルトチタネート(TEOTi)、テトライソプロピルチタネート、ニオブ(V)エトキシド、タンタル(V)エトキシド、タンタルn−ブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、またはそれらの混合物からなるグループから選択された化合物を備える。
【0016】
そのようなタイプのコーティングは、集積回路用の保護用「セキュリティ」コーティングとして非常に適しており、権限のない人による集積回路へのアクセスを禁止するために使用することができる。そのため、コーティングは、化学的、光学的、物理的保護を提供しなければならない。光学的保護は、可視光を吸収、散乱、または反射することが可能なフィラ成分を用いて達成される。さらに、TiNとTiOの粒子混合物は、UV放射、IR放射、電子放射に対する保護を十分な程度で可能にする。化学的保護は、マトリクス材料と、この場合には第2の溶液の選択を介して最適化される。モノリン酸アルミニウム(monoaluminum phosphate)マトリクス材料、またはテトラエトキシオルトシリケート(TEOS)に基づくマトリクス材料を使用することができる。モノリン酸アルミニウム・マトリクス材料及びフィラ成分を有する保護用非多孔質コーティングは、米国特許第6198155号からそれ自体知られている。Tiをベースとするマトリクス成分で優れた結果が得られている。コーティングの硬度が物理的保護を可能にする。さらに、コーティングの上部の下方で、且つ/またはその上にセンサが設けられてよく、センサは、インピーダンスを測定することを可能にする。これは、予測可能でない、物理的に実施される識別コードの生成を可能にし、WO−A 2003/046986からそれ自体知られている。
【0017】
しかし、本発明のコーティングは、そのようなセキュリティコーティングに限定されない。代替の実施形態では、コーティングは、半導体化合物のパッケージ内で保護用コーティングとして使用される。一般に、成形コンパウンドが保護用コーティングとして使用される。周知の諸例は、ガラス、またはガラスのような粒子で充填されるエポキシである。しかし、無鉛はんだ付けに必要とされる比較的高い温度に耐えることができ、それでもなお、パッケージされる構成要素に比べて、適切な熱膨張係数を有する保護用コーティングが求められている。
【0018】
本方法は、そのような保護用コーティングを提供するのに非常に適している。次いで、有機ポリマー、特に成形コンパウンドが、多孔質構造体を少なくとも部分的に充填する第2の溶液として選択されることが好ましい。諸例は、エポキシ、ポリイミド、ポリスチレン、ポリテレフタレート、並びに、トランスファ成形及び射出成形プロセスのために当技術分野で知られている他の材料を含む。この成形コンパウンドは、そうする必要はないが、粒子で充填されてよい。粒子で充填される場合、これらの粒子は、多孔質構造体の一部であるフィラ成分より小さい平均直径を有することが好適である。フィラ成分が1ミクロンと2ミクロンの間の平均粒子直径を有する場合、平均粒子サイズは、好適には0.5ミクロン未満であり、最も好ましくは0.3ミクロン未満である。成形コンパウンドが好適な選択肢であり、というのは、(構造的に異なるとはいっても)現在使用されている保護用コーティングと、次いで得られるコーティングとが、化学的に同様のものになるからである。
【0019】
このコーティングを保護用コーティングとして使用することは、マトリクス材料及び第2の溶液の適正な耐化学性に鑑みて有利である。他の利点は、多孔質構造体が完全に充填されないという選択肢によってもたらされる。この不完全な充填は、熱膨張差に対する固有の補償として十分に使用される可能性がある。また、この材料は、ワイアボンディングと組み合わせて使用することができ、というのは、十分に低い温度で、その前駆体成分が多孔質構造体に変換されえるからである。
【0020】
さらに、このコーティングは、パッシベーション層等、下にある層に対して良好な接着性を有する。アルコキシド等、前駆体材料に基づく多孔質構造体は、酸化物表面及び窒化物表面に対して良好な接着性を有する。第2の溶液、即ち有機ポリマーは、有機表面及び無極表面に対して良好な接着性を有する。接着性は、前駆体材料及び第2の溶液を選択することにより、また、特定の接着特性を有する第2の溶液を選択することにより、また、前駆体材料と、多孔質構造体を充填するために使用されるコンパウンドとの体積比を変えることにより、さらに最適化することができる。
【0021】
パッケージング用のそのような成形コンパウンドの特定の実施形態では、その構成物質は、透明なものとなるように選択される。実際上の透明エポキシの安定性は、標準的な成形コンパウンドの安定性より、さらに大きな問題である。さらに、現代の集積回路は大量の熱を発生する傾向があり、コーティングは、どのような接着問題もなしに、これに耐えることが可能であるべきである。本発明のコーティングの無機構造の結果として、これは問題でない。
【0022】
他の特定の実施形態では、コーティングは、十分な可撓性を有するように選択される。可撓性の装置は、たとえばEP−A 1256983から知られている。可撓性の装置は、セキュリティ応用例で使用されることが好適であり、その中の集積回路内で記憶されているデータは適正に保護されるべきである。米国特許第6198155号から知られている従来技術のセキュリティコーティングは、可撓性の条件を満たさないが、本発明の多孔質コーティングは、十分な可撓性を有するように最適化されてもよく、半導体基材の限られた数の領域上だけにコーティングを付着させることが可能であり、そのように限定的に設けることが、必要とされる可撓性を達成する助けとなり得る。ある部類の好適な材料の一例は、ポリイミドである。これらの材料は、ポリアミドとして可溶の形態で付着されてよく、ポリアミドは、多孔質構造体を少なくとも部分的に充填するために第2の溶液として使用され、その後ポリイミドに変換されてよい。代替のポリマー、または重合可能な材料もまた、付着されうる。
【0023】
他の実施形態では、コーティングは、特定の機能特性を備えることができる。多孔質構造体と、多孔質構造体を充填する第2の溶液とは、相補的な機能を有することができる。一方の成分が光放射を生成または透過する場合、他方の成分は、ある方向で放射の透過を抑制するように、またはその強度を減少させるように使用されえる。一方の成分が磁気特性を有する場合、他方の成分は、特にある方向で、磁界に対する遮蔽物として使用されてもよい。具体的には、その上部側で閉じられる多孔質構造体は、そのような遮蔽及び抑制機能に好適であると思われる。さらに、後で述べるパターン形成法により、多孔質構造体は、限られた数の領域内だけで設けられえる。これにより、たとえば限られた数の領域内だけの光の透過が可能になってもよく、一方、光は、完全な表面領域上で生成されてよい。
【0024】
他の実施形態では、コーティングは、多孔質コーティングとして使用され、その上部上で、後続の諸層が堆積される。コーティングの性質と、その閉じられた上部側により、コーティングが、層のスタックに一体化するのに非常に適したものになる。多孔質層は、当業者に知られているように、様々な目的に適用され得る。金属間誘電体として使用することは、半導体装置の分野内で好適な応用例となりえる。
【0025】
本方法の有利な実施形態では、コーティングがパターン形成される。コーティング組成物を付着させる前に、パターン形成された構造体が基材上に設けられる。次いで、基材表面、及びパターン形成された構造体の表面は、基材表面が相対的に親水性であり、パターン形成された構造体の表面が相対的に疎水性であるように変更される。従って、コーティング組成物を付着させる際、パターン形成された構造体は、コーティング組成物がない状態で保たれる。コーティング組成物を付着させた後で、パターン形成された構造体が除去される。この除去は、コーティング組成物を硬化する前、たとえば約100℃でのプリベーク工程の後で行われることが好ましい。表面の変更は、ある種の変性剤を付着させることによって実施されえる。別法として、プラズマ処理が使用される。
【0026】
有利には、以下のプロセスが使用される。最初に、パターン形成されるレジスト層が基材に付着され、フォトリソグラフィによってパターン形成され、上述のパターン形成された構造体が得られる。フォトレジストは、コーティング組成物がない状態で保とうとする領域内で存在することになる。次いで、フッ素プラズマ・エッチ工程が適用される。基材の露出表面、特に酸化物層または窒化物層と、レジストは共に、この処理によって影響を受ける。窒化シリコンの場合、表面部で存在するSi−OH基はSi−F基によって大部分が置換されることになり、窒化物の親水性が低下する。レジストは、異なる影響を受けることになり、より複雑な反応が起こることになる。これは、基本的に、レジストの上部に対して、フッ素化、重合、及び何らかの損傷を引き起こす。これらの作用により、非常に撥水性のレジストがもたらされる。プラズマ処理の後で、たとえば、アンモニア、過酸化水素、及び水の混合物内でのディップによって、軽い酸化が適用される。この工程では、基材の表面部のSi−F基がSi−OH基によって再び置換され、親水性の窒化物表面が得られる。それによって濡れ挙動の大きな違いが得られる。その後で水溶液を加えることにより、容易に濡らすことが可能な領域上のみで液体が堆積される。レジストは、エタノール等の有機溶媒内で除去される。この方法は、2ミクロン等、限られた厚さのフォトレジスト層だけを使用して、最大30ミクロン、またはさらにそれ以上の非常に厚い膜のパターン形成を可能にする。
【0027】
コーティングをパターン形成することにより、ボンド・パッド、またはコーティング下で隠された他の金属領域やパッドにアクセスすることが可能になる。別法として、パターン形成は、多孔質構造体の存在を、基材表面上の予め決められた領域に制限するために使用される。本方法は、さらに有利であり、というのは、従来のリフトオフ技法による多孔質構造体の除去は、その不均質な性質と、その安定性の劣化に鑑みて、本質的に問題があるからである。さらに、充填済みコーティングの上部上でフォトレジストを付着することによるパターン形成は、ネットワークの強度、及び特定のエッチングプロセスを必要とする異なる材料に鑑みて問題がある。また、フィラ成分の粒子性により、十分に画定された穴を設けることができない。
【0028】
本発明の第2の目的は、改良された多孔質コーティングが形成され得るコーティング組成物を提供することである。この目的は、コーティング組成物が、マトリクス前駆体成分とフィラ成分とを備え、そのマトリクス前駆体成分は熱処理においてマトリクス材料に変換可能であり、そのフィラ成分は、平均粒子サイズが少なくとも1μmである状態で、少なくとも30体積%の量で存在する。本発明のコーティング組成物は、in situで調製した後で、または別の会社によって供給された後で、提供されてよい。多孔質コーティングを形成するために本発明の方法において使用することができる代替の組成物があり得る。しかし、このコーティング組成物は、良好な流動学的特性、従って良好な加工性という利点を有する。
【0029】
前駆体材料のモノ酸アルミニウムと、サブマイクロメートル範囲のフィラ粒子とを備えるコーティング組成物は、米国特許第6759736号から知られている。しかし、このコーティング組成物の使用は、多孔質コーティングをもたらさない。好ましくは、平均粒子サイズは、1ミクロンから3ミクロンの範囲内であり、より好ましくは1.2ミクロンと2.8ミクロンの間であり、最も好ましくは、1.5ミクロンと2.5ミクロンの間である。
【0030】
マトリクス前駆体材料は、500℃未満、より好ましくは450℃未満、またはさらに400℃未満での熱処理でマトリクスに変換され得るように選択されることが好ましい。これは、半導体装置の相互接続構造体内でマトリクスの使用を可能にする。そのような材料の諸例は、たとえば、テトラエチレンオルトシリケート(TEOS)、モノリン酸アルミニウム(MAP)、テトラエチルオルトチタネート(TEOTi)、テトライソプロピルチタネート、ニオブ(V)エトキシド、タンタル(V)エトキシド、タンタルn−ブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、または前記前駆体材料の1つまたは複数の、互いの、若しくは他の前駆体材料との混合物を含む。半導体パッケージング内の応用例の場合、熱処理は、最も好ましくは、300℃未満の温度で実施される。多数の前駆体材料が、そのような温度で変換させることが可能である。好適な例は、たとえばTEOSであり、TEOSは、100℃未満での熱処理によってさえ変換される可能性がある。
【0031】
最も好ましくは、フィラ成分及び前駆体マトリクス材料は、フィラと変換済みのマトリクスとが互いに結合されるように選択される。非常に強い結合は化学結合である。そのような結合は、少なくともその表面の一部分でアルコキシド等の前駆体の基をフィラ成分が備えるため、達成される可能性がある。別法として、たとえばアクリレート基との縮合重合によって形成される結合を使用することができる。別法として、フィラと変換済みのマトリクスとは、毛管力、ファン・デル・ワールス力、水素結合を含めて、物理結合によって互いに結合される。後者のメカニズムは依然としてヒドロキシル基を含有するマトリクス内のTiN粒子と共に起こると想定される。
【0032】
本発明の第3の目的は、高い収率と十分な空隙率を有するコーティングを備える基材を提供することである。この目的は、マトリクス成分の層によってカプセル化されるフィラ粒子を備える多孔質構造体と、多孔質構造体を少なくとも部分的に充填する碇止成分とによって達成される。
【0033】
本方法に関連して観察されることに加えて、碇止成分が、強度を有するコーティングを提供することが観察される。「碇止(anchoring)成分」という用語は、多孔質構造体を充填する本体が多孔質構造体の様々な側で延在し、その結果、機械的な碇止効果が得られることを意味する。コーティングは、特許請求されている本方法を参照して述べられている特定の応用例のどれを有してもよい。コーティングは、電子装置に一体化するのに特に適している。その好適な例は、集積回路等の半導体装置である。しかし、(生物医学的)センサ及び光学装置等の近隣の技術分野における応用例も、当然ながら除外されない。
【0034】
本発明のこれらの、また他の態様は、以下で述べられている非限定的な実施例から明らかになり、またそれを参照して説明されることになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
本発明による多孔質保護用コーティングは、(TiOの多孔質マトリクスが得られる)マトリクス前駆体成分としてテトラエチルオルトチタネート(TEOTi)と、フィラ成分としてTiN粒子と、前駆体補強用成分として(TiOが得られる)やはりTEOTiとを使用して調製された。
【0036】
そのために、TEOTi1gが、エタノール14.5gに溶かしたHCl(6M)0.3gの溶液に加えられた。TiN4.58gの量がこの溶液に加えられ、4.4体積%溶液が得られた(それによって、TiOの多孔質マトリクスに基づく91体積%のフィラ成分TiNが最終的に得られた)。
【0037】
ほぼ均質なコーティング液を得るために、ZrOミリング・ビーズ(直径2mm)を用いて、60mlのPEボトル内で21時間、1分間当たり約120回転(rpm)で粉砕された。加えられたZrOビーズの量はビーズがコーティング液表面のすぐ下になるようなものであった。
【0038】
その後で、得られた懸濁液は、スピン・コーティングによってガラス基材上に堆積された。18秒間、基材が450rpmで回転している間に、過剰な液体が加えられた。その後で、試料は、620rpmで60秒間回転された。回転の後で、試料は、100℃で1分間と、それに続く200℃で2分間、ホット・プレート上で保持された。最後に、多孔質コーティングは、400℃で1時間、硬化された。
【0039】
多孔質コーティングは、TiOの多孔質マトリクスに基づく91体積%のフィラ成分TiNを含有していた。
【0040】
多孔質コーティングは、硬化した後で、TEOTi溶液を前駆体として使用して、補強用前駆体成分、この実施例ではTiOで充填された。そのために、TEOTi30gが、エタノール30g及び酢酸3.53gの溶液に加えられた。多孔質のTiN−TiOコーティング層を含むガラス基材が、後者のTEOTi溶液内で、真空(300ミリバール)下で10分間、浸漬された。過剰なTEOTi溶液を除去するために、試料は、5400rpmで2分間回転された。回転の後で、試料は、100℃で1分間と、それに続く200℃で2分間、ホット・プレート上で保持された。最後に、コーティングは、400℃で1時間、硬化された。得られた保護用コーティングは、3μmの厚さを有していた。
【0041】
コーティングは、上記で示されたガラス基材ではなくIC上でも容易に付着させることができることが示されている。保護用コーティングは、優れた機械的、物理的、化学的な耐性、並びに好適な非透明性を示した。
【0042】
添付の特許請求の範囲から逸脱することなしに多数の修正を加えることができることを、当業者なら理解するであろう。一例として、保護用コーティングの耐化学性は、望むなら保護用コーティング上で他のコーティングを付着することによって、さらに改善される可能性がある。たとえば、TiO、ZrO、Nb Ta等で更にコーティングしても、または含浸させてもよい。さらに、上述のコーティングは、必要な場合、パターン化されてよい。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上にコーティングを形成する方法であって、少なくとも
マトリクス前駆体成分と粒状フィラ成分とを備えるコーティング組成物を用意し、
前記コーティング組成物を基材上に付着させ、前記組成物を硬化させ、それによって多孔質構造体を得、
前記基材上に第2の溶液を付着させ、それによって少なくとも部分的に前記多孔質構造体を充填し、前記コーティングを得ることを備える方法。
【請求項2】
予め決められたサイズ範囲内の粒子を前記フィラ成分が備える、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記マトリクス前駆体成分が金属に結合される加水分解可能な基を備え、前記硬化工程において前記成分がネットワークに変換され、前記ネットワークが前記粒状フィラ成分を実質的にカプセル化する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記硬化工程において酸化物ネットワークに変換されるアルコキシドを前記第2の溶液が備える、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第2の溶液がポリマー又は重合可能な化合物を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも40体積%のフィラ成分を得るために所定の量の前記フィラ成分が使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
テトラエチルオルトチタネート(TEOTi)、テトライソプロピルチタネート、ニオブ(V)エトキシド、タンタル(V)エトキシド、タンタルn−ブトキシド、ジルコニウムn−ブトキシド、またはそれらの混合物からなるグループから選択された化合物を前記マトリクス前駆体成分が備える、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
TiO、TiN、またはそれらの混合物からなるグループから選択された化合物を前記フィラ成分が備える、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
前記多孔質構造体が、40〜90%、好ましくは50%を超える空隙率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記コーティング組成物を付着させる前に、(a)パターン形成された構造体が前記基材上に設けられ、(b)前記基材の前記表面が相対的に親水性であり、前記パターン形成された構造体の前記表面が相対的に疎水性であるように、前記基材の表面、及び前記パターン形成された構造体の表面が変更され、その結果、前記コーティング組成物を付着させる際、コーティング組成物がない状態で前記パターン形成された構造体が保たれ、
前記コーティング組成物を付着させた後で前記パターン形成された構造体が除去される
というようにして前記コーティングがパターン形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
基材上に多孔質コーティングを形成するためのコーティング組成物であって、マトリクス前駆体成分とフィラ成分とを備え、前記マトリクス前駆体成分が、熱処理において、マトリクス材料に変換可能であり、前記フィラ成分が少なくとも40体積%の量で存在する、コーティング組成物。
【請求項12】
前記フィラ成分が1μmと3μmの間の平均粒子直径を有する、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
熱処理において金属酸化物マトリクスに変換される金属アルコキシドを前記マトリクス前駆体成分が備える、請求項11に記載のコーティング組成物。
【請求項14】
前記フィラ成分と前記マトリクス材料とが互いに結合される、請求項11または13に記載のコーティング組成物。
【請求項15】
マトリクス成分の層によってカプセル化されるフィラ粒子を備える多孔質構造体と、
前記多孔質構造体を少なくとも部分的に充填する碇止成分とを備える、基材上のコーティング。
【請求項16】
請求項15に記載のコーティングを備える電子装置。

【公表番号】特表2008−514415(P2008−514415A)
【公表日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−534130(P2007−534130)
【出願日】平成17年9月20日(2005.9.20)
【国際出願番号】PCT/IB2005/053090
【国際公開番号】WO2006/035360
【国際公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)
【Fターム(参考)】