説明

基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット

【課題】皮膜の強度に優れる、基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットを提供する。
【解決手段】ポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、ポリカーボネートポリオールとポリカプロラクトンポリオールの反応により得られるポリオールと、ポリテトラメチレングリコールとポリイソシアネートの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーからなり、ポリカプロラクトンポリオールに対するポリカーボネートポリオールの比率が質量比で65/35以上である。また、ポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、ポリオールが、常温で微粉末状の硬化反応用有機金属触媒と硬化反応抑制剤をさらに含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば被塗装基材の上に形成される無溶剤化ポリウレタン樹脂皮膜材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン樹脂の利用分野は、電子・電気材料、自動車・鉄道車両材料および土木・建築材料等多岐にわたっている。
【0003】
このようなポリウレタン樹脂の利用分野のなかに、例えば塗料がある。ポリウレタン樹脂塗料は、建築、土木構築物および車両の分野で多く用いられ、塗装外観に優れ、塗膜性能がよく、かつ耐久性に優れる。
【0004】
ポリウレタン樹脂塗料は、有機溶剤とともに用いることが多いが、この場合、環境問題および作業安全問題等の改善が大きな課題となっている。
【0005】
この課題を解決するために、使用する樹脂の水系化と無溶剤化がそれぞれ種々検討されている(例えば特許文献1参照)。
しかしながら、前者の水系化については、作業面では塗布面の均一性に欠け、また、乾燥に大きなエネルギや時間を必要とし、物性面では耐水性や耐加水分解性等が不足すること等が問題とされている。
これに対して、後者の無溶剤化については、水系化に伴い生じる上記の問題は比較的少ないものの、無溶剤化に伴い樹脂溶液が高粘度化すると塗布が不能となり、逆に塗布を可能とするために樹脂溶液の粘度を低下させると物性面で強度や耐久性が不足する問題があるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−303250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、無溶剤条件下で皮膜の強度に優れる、基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、ポリカーボネートポリオールとポリカプロラクトンポリオールの反応により得られるポリオールと、ポリテトラメチレングリコールとポリイソシアネートの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーからなり、ポリカプロラクトンポリオールに対するポリカーボネートポリオールの比率が質量比で65/35以上であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、好ましくは、前記ポリオールと前記イソシアネート基末端プレポリマーがいずれも常温で液体状であることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、好ましくは、前記ポリオールが、常温で微粉末状の硬化反応用有機金属触媒と硬化反応抑制剤をさらに含有してなることを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、好ましくは、前記ポリオールが、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよび脂肪族グリコールの反応により得られるものであることを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、好ましくは、前記ポリカーボネートポリオールが、1,6−ヘキサンジオールとジアルキルカーボネートの反応により得られるものであることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、好ましくは、前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートであることを特徴とする。
【0014】
また、本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、好ましくは、前記脂肪族ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、ポリカーボネートポリオールとポリカプロラクトンポリオールの反応により得られるポリオールと、ポリテトラメチレングリコールとポリイソシアネートの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーからなり、ポリカプロラクトンポリオールに対するポリカーボネートポリオールの比率が質量比で65/35以上であるため、基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜の強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施の形態について、以下に説明する。
【0017】
本実施の形態に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット(以下、単に、ポリウレタン樹脂皮膜材料セットということがある。)は、例えば塗料として、被塗装基材上に塗装皮膜を形成するために用いる。但し、これに限らず、本発明の効果を奏する限り、他の基材上にポリウレタン樹脂皮膜を形成するために用いることができることは言うまでもない。
以下に説明する本実施の形態の第一の例に係るポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、ポリオールとイソシアネート基末端プレポリマーを分別管理し、皮膜形成時に硬化用触媒とともに配合して用いる。これにより、ポリオールおよびイソシアネート基末端プレポリマーを使用するまでに長期間保管するときの貯蔵安定性に優れる。また、本実施の形態の第二の例に係るポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、ポリオールに常温で微粉末状の硬化反応用有機金属触媒と硬化反応抑制剤をさらに配合、含有して用いる。これにより、ポリウレタン樹脂皮膜材料セットの使用時の取扱性に優れる。
本実施の形態の第一の例および第二の例に係るポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、いずれも環境問題等を生じるおそれのある有機溶剤を含まない無溶剤化皮膜材料である。
【0018】
まず、本実施の形態の第一の例に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットについて説明する。
第一の例に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、ポリカーボネートポリオールとポリカプロラクトンポリオールの反応により得られるポリオールと、ポリテトラメチレングリコールとポリイソシアネートの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーからなり、ポリカプロラクトンポリオールに対するポリカーボネートポリオールの比率(ポリカーボネートポリオール/ポリカプロラクトンポリオール)が質量比で65/35以上である。
【0019】
ポリオールおよびイソシアネート基末端プレポリマーは、いずれか一方または双方が常温で固体状であってもよい。但し、貯蔵や運搬等の際の取扱性や、皮膜形成時において両者を配合して硬化反応させる際に加熱溶融処理を不要とする観点からは、ポリオールおよびイソシアネート基末端プレポリマーはいずれも常温で液体状であることが好ましい。
【0020】
ポリオールの原料の1つであるポリカーボネートポリオールは、種類を特に限定するものではなく、例えば、短鎖ポリオールとホスゲンの脱塩酸反応、あるいは短鎖ポリオールとジアルキルカーボネート、アルキレンカーボネートまたはジアリールカーボネート等の低分子カーボネートとのエステル交換縮合反応などによって好適に得られる。
この短鎖ポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノールAのエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物等、分子量500未満のものが挙げられる。
ジアルキルカーボネートとしては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等が挙げられ、アルキレンカーボネートとしては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等が挙げられ、ジアリールカーボネートとしては、ジフェニルカーボネート等が挙げられる。
これらはいずれも単独であるいは2種以上を混合して使用することができる。
但し、得られるポリウレタン樹脂皮膜の機械的強度をより高める観点からは、結晶性発現により機械的強度に寄与する直鎖脂肪族グリコールを用いたポリカーボネートポリオールが好ましく、特に1,6−ヘキサンジオールとジアルキルカーボネートの反応により得られるものであることが好ましい。
【0021】
ポリオールの原料の他の1つであるポリカプロラクトンポリオールは、例えば、前述のポリカーボネートに用いられる短鎖ポリオールを開始剤として、ε−カプロラクトンやアルキル置換ε−カプロラクトンのいずれか一方または両方を開環付加させて得られるものを用いることができる。
【0022】
ポリオールの分子量調整を容易とし、また、高い貯蔵安定性を得る観点からは、ポリオールは、ポリカーボネートポリオールおよびポリカプロラクトンポリオールとともに、さらに、脂肪族グリコールを配合してエステル交換反応させて得られるものであることが好ましい。
脂肪族グリコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ジメチロールヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール等を挙げることができる。脂肪族グリコールは、得られるポリウレタン樹脂皮膜の機械的強度をより高める観点からは、分子量200以下のものが好ましく、特に1,6−ヘキサンジオールが最も好ましい。
【0023】
ポリオール原料の配合割合は、ポリカプロラクトンポリオールに対するポリカーボネートポリオールの比率(ポリカーボネートポリオール/ポリカプロラクトンポリオール)が質量比で65/35以上である。比率の上限は特になく、ポリカーボネートポリオールがほぼ100%に近いものであってもよいが、常温で液体として取り扱う観点からは、75%(比率として75/25)以下であることが好ましい。なお、ポリオール原料として脂肪族グリコールをさらに用いる場合は、配合割合は、脂肪族グリコールをポリカーボネートポリオールの内数としてカウントする[(ポリカーボネートポリオール+脂肪族グリコール)/ポリカプロラクトンポリオール]。
【0024】
イソシアネート基末端プレポリマーの原料の1つであるポリテトラメチレングリコールは、分子量は特に限定するものではないが、得られるポリウレタン樹脂皮膜の外観の観点からは、数平均分子量が500以上であることが好ましい。
イソシアネート基末端プレポリマーの原料の他の1つであるポリイソシアネートは、種類を特に限定するものではなく、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(以後、2,4−TDIと略称する)、2,6−TDI、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(以後、4,4′−MDIと略称する)、2,4′−MDI、2,2′−MDI、1,5−ナフチレンジイソシアネート、1,4−ナフチレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、o−キシリレンジイソシアネート、m−キシリレンジイソシアネート、p−キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート、2−ニトロジフェニル−4,4′−ジイソシアネート、2,2′−ジフェニルプロパン−4,4′−ジイソシアネート、3,3′−ジメチルジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、4,4′−ジフェニルプロパンジイソシアネート、3,3′−ジメトキシジフェニル−4,4′−ジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(以後、HDIと略称する)、2−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、3−メチル−1,5−ペンタンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(以後、IPDIと略称する)、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(以後、H12MDIと略称する)、水素添加キシリレンジイソシアネート(以後、H6XDIと略称する)、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート等の脂環族ジイソシアネートや、これらの2種類以上の混合物、これらの有機ジイソシアネートのアダクト変性体、ビュレット変性体、ウレトジオン変性体、ウレトイミン変性体、イソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体等が挙げられる。本実施の形態例では、ポリウレタン皮膜製造時におけるポリオールとの配合のしやすさ、得られるポリウレタン樹脂皮膜の外観、機械的強度の観点から、脂肪族脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)が最も好ましい。
【0025】
イソシアネート基末端プレポリマーは、イソシアネート含量が4〜12質量%であり、未反応のポリイソシアネートの含量が1質量%以下であることが好ましい。
【0026】
皮膜を形成する際のポリオールとイソシアネート基末端プレポリマーの配合割合は、特に厳密に限定するものではないが、ポリオール中の水酸基1モルに対してイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基が0.90〜1.10となるように配合することは好ましい例である。
【0027】
つぎに、本実施の形態の第二の例に係るに係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットについて説明する。
第二の例に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットは、上記本実施の形態に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットのポリオールが、常温で微粉末状の硬化反応用有機金属触媒と硬化反応抑制剤をさらに含有するものである。
これにより、ポリオール中に硬化反応用有機金属触媒を分散した状態が維持されることで、基材上にポリウレタン樹脂皮膜を形成する際に通常の硬化反応用有機金属触媒を添加する場合に比べて、いわゆる可使時間の延長を図ることができるとともに、さらに硬化時間の遅延を防止できる。以下、具体的に説明する。
【0028】
有機金属触媒は、所定の硬化温度条件において硬化反応の触媒作用を奏する有機金属化合物である限り特に限定するものではなく、例えば、Sn、Pb、Cd、Zn、Al、Zr、Bi、Mg、Fe、Ti、Cu、Co、Ni、In、Ca、Y、Ce、Sr,Mo、Laなどの金属を含有するマレート化合物、オキサイド化合物、エステル化合物、メルカプチド化合物およびキレート化合物のうち、常温固体のものまたはそれらの混合物を採用することができる。これらのなかで、常温で微粉末状の有機スズ化合物を用いることがより好ましい。
有機スズ化合物としては、ジブチル錫ジステレアート、ジブチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジブチル錫ビス(マレイン酸アルキルエステル)塩、ビス(ジブチル錫マレイン酸アルキルエステル)マレイン酸塩、ジブチル錫s,o−メルカプトカルボン酸塩ポリマー、ジオクチル錫ジステアレート、ジオクチル錫マレイン酸塩ポリマー、ジオクチル錫ビス(マレイン酸アルキルエステル)塩、ビス(ジオクチル錫マレイン酸アルキルエステル)マレイン酸塩、ジオクチル錫s,o−メルカプトカルボン酸塩ポリマー、ジオクチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫オキサイドなどを挙げることができ、これらのうち常温固体のものを採用することができる。
有機金属触媒の粒径は、70μm以下とすることが好ましく、50μm以下とすることがより好ましい。
有機金属触媒のポリオールへの添加量は、ポリウレタン樹脂皮膜材料セットとして使用するポリオールおよびイソシアネート基末端プレポリマーの全量に対して、50〜2000ppmの範囲となるようにすることが好ましく、より好ましくは、80〜1500ppmの範囲とする。なお、所望の反応性を調製するために、上記有機金属系触媒に加えて、第3級アミン系触媒を添加することは妨げられない。
【0029】
硬化反応抑制剤は、リン酸、亜リン酸、酸性リン酸エステル、酸性亜リン酸エステルの少なくとも1種またはそれらの混合物を含むことができ、長い可使時間および短い硬化時間を両立させるという観点からは、好適には、炭素数1〜18の酸性リン酸エステル、およびこれらの混合物を採用することができる。上記酸性リン酸エステルとしては、リン酸エチル、リン酸ジエチル、イソプロピルアシッドホスフェイト、ブチルアシッドホスフェイト、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)アシッドホスフェイト、イソデシルアシッドホスフェイト、ラウリルアシッドホスフェイト、トリデシルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイト、イソステアリルアシッドホスフェイト、オレイルアシッドホスフェイト、ステアリルアシッドホスフェイトなどを挙げることができる。
硬化反応抑制剤のポリオールへの添加量は、ポリウレタン樹脂皮膜材料セットとして使用するポリオールおよびイソシアネート基末端プレポリマーの全量に対して、25〜1000質量ppmの範囲となるようにすることが好ましく、より好ましくは、40〜750ppmの範囲とし、さらに好ましくは、50〜600ppmの範囲とする。
【0030】
つぎに、上記本実施の形態の第一の例または第二の例に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セットを用いる、基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜の形成方法について、ポリウレタン樹脂を塗料として用い基材上に塗膜を形成する方法を例にとって概略説明する。
まず、離型紙等に本実施の形態に係るポリウレタン樹脂皮膜材料セット等を常温下で混合し、皮膜材料(原料)溶液を調製する。このとき、例えば、ポリオール中の水酸基1モルに対してイソシアネート基末端プレポリマー中のイソシアネート基が0.90〜1.10となるようにポリオールとイソシアネート基末端プレポリマーのそれぞれの量を調整するとともに、本実施の形態の第一の例の場合は、硬化用触媒をポリオールとイソシアネート基末端プレポリマーの混合液100質量部に対して0.001〜0.5質量部の比率で添加する。また、皮膜材料(原料)が常温で固体の場合は、液状化するまで適宜の温度に加熱する。
ついで、液体状の皮膜材料を金属板等の基材上に塗布し、その後、乾燥、硬化させる。
ここで、添加する硬化用触媒は、本実施の形態の第二の例に係るポリウレタン樹脂皮膜材料セットの場合においては、上述した有機金属触媒を用いるとともに硬化反応抑制剤を併用することになるが、本実施の形態の第一の例に係るポリウレタン樹脂皮膜材料セットの場合においては、硬化用触媒は、特に限定するものではなく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N−メチルイミダゾール、N−エチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−5,4,0−ウンデセン−7(DBU)などのアミン類、Sn、Pb、Cd、Zn、Al、Zr、Bi、Mg、Fe、Ti、Cu、Co、Ni、In、Ca、Y、Ce、Sr,Mo、Laなどの金属を含有するマレート化合物、オキサイド化合物、エステル化合物、メルカプチド化合物およびキレート化合物、具体的には酢酸カリウム、スタナスオクトエート、ジブチルチンジラウレート、ジオクチルチンジラウレート(DOTDL)などの有機金属類等を好適に用いることができる。
【0031】
以上説明した本実施の形態に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット等は、基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜の強度に優れる。なお、ポリウレタン樹脂皮膜の強度は、例えば、後述するように、TB(引張強度)、EB(伸び)およびTR(引裂強度)として評価することができる。
本実施の形態に係る基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット等は、塗料その他の基材上に形成する樹脂皮膜として好適に用いることができる。また、この他に、接着剤、合成皮革およびプラスチックフィルム等にも適用できる。
【実施例】
【0032】
実施例および比較例を挙げて、本発明をさらに説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0033】
(ポリオールの調製例)
ポリウレタン樹脂皮膜材料セットの1つの材料であるポリオールは、表1の各条件で原料を配合して、2リットルセパラブルフラスコ中で、窒素ガスバブリングしながら、190℃で24時間攪拌(60rpm)し、エステル交換反応させて得た。
【0034】
【表1】

【0035】
表1および以下の各表において、配合する各成分の量の単位はすべて質量部である。また、水酸基価の単位はmgKOH/gである。
表1中、記号で示す各ポリオール原料は、以下のものである。
○ 1,6−HD:1,6−ヘキサンジオール
○ PCD−HG−1000:1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートの脱エタノール反応から得られる数平均分子量1000のポリカーボネートジオール
○ PCD−HG−2000:1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートの脱エタノール反応から得られる数平均分子量2000のポリカーボネートジオール
○ PCD−HG−5000:1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートの脱エタノール反応から得られる数平均分子量5000のポリカーボネートジオール
○ PCL−210:1,4−ブタンジオールにε−カプロラクトンを開環付加させて得られる数平均分子量1000の2官能ポリカプロラクトンジオール 開始剤はエチレングリコール
○ PCL−220:1,4−ブタンジオールにε−カプロラクトンを開環付加させて得られる数平均分子量2000の2官能ポリカプロラクトンジオール 開始剤はエチレングリコール
○ PCL−320:1,4−ブタンジオールにε−カプロラクトンを開環付加させて得られる数平均分子量2000の3官能ポリカプロラクトンジオール 開始剤はトリメチロールプロパン
【0036】
(ポリイソシアネートの調製例)
ポリウレタン樹脂皮膜材料セットの1つの材料であるポリイソシアネートは、表2の各条件で原料を配合して、セパラブルフラスコ中で、窒素ガスバブリングしながら、80℃で4時間ウレタン化反応させた。その後、140℃、0.3Torrにて薄膜蒸留を行って未反応のHDIを除くことにより得た。
【0037】
【表2】

【0038】
表2中、記号で示す各ポリイソシアネート原料は、以下のものである。
○ HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
○ PTG−250:数平均分子量250のポリテトラメチレングリコール(ポリプロピレングリコール)
○ PTG−650:数平均分子量650のポリテトラメチレングリコール
○ PTG−1000:数平均分子量1000のポリテトラメチレングリコール
○ PTG−2000:数平均分子量2000のポリテトラメチレングリコール
○ PPG−600:数平均分子量600のポリプロピレングリコール
○ PPG−1000:数平均分子量1000のポリプロピレングリコール
また、表2中、イソシアネート種C−HXは、以下のものである。
○ C−HX:コロネートHX(コロネートは日本ポリウレタン工業株式会社の登録商標) ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート イソシアネート含量=21.0% 粘度(25℃)2,500mPa・s
【0039】
(実施例1〜12および比較例1〜6)
ポリオールおよびポリイソシアネートを表3〜表5の各条件で配合し、また、硬化用触媒としてジオクチルチンジラウレート(DOTDL)をポリオールとイソシアネート基末端プレポリマーの混合液100質量部に対して0.01質量部添加して、ポリウレタン皮膜(フィルム)を調製し、評価した。なお、ポリオールが常温固体のものおよび配合によって固化するものについては、加熱溶融処理した後に硬化用触媒を添加してポリウレタン皮膜(フィルム)を調製し、評価を行った。
【0040】
【表3】

【0041】
【表4】

【0042】
【表5】

【0043】
(特性評価)
実施例1〜12および比較例1〜6の各条件のポリオールおよびイソシアネート混合した直後の液を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さ100μm、平面寸法300mm×300mmのフィルムになるようキャストして、120℃にて10分間硬化させて、ポリウレタン皮膜(フィルム)を得た。このポリウレタン皮膜をサンプルとして、以下の各評価項目の評価を行った。
○ TB(破断時強度)
TBは、JIS K6251に準拠して評価した。TB値の単位はMPaである。
なお、用途によってはTB値が20以上であることが望ましいとの考えのもとに、この値を境として実施例および比較例に区別した。
○ EB(破断時伸び)
EBは、JIS K6251に準拠して評価した。EB値の単位は%である。
なお、用途によってはEB値が300以上であることが望ましいとの考えのもとに、この値を境として実施例および比較例に区別した。
○ TR(引き裂き強度)
TRは、JIS K6252に準拠して評価した。TR値の単位はkN/mである。
なお、用途によってはTR値が30以上であることが望ましいとの考えのもとに、この値を境として実施例および比較例に区別した。
【0044】
(実施例13)
2リットルのセパラブルフラスコに、OH−5を1000g、有機金属触媒(NW−96)を2g、硬化反応抑制剤(JP−508)を1gそれぞれ仕込み、25℃で30分撹拌させた。これにより、JP−508がポリオールと均一に混合し、NW−96がポリオール中に分散された状態のポリオールプレミックス(以下、これをOH−10と表記する。)を得た。なお、NW−96は、有機スズ化合物系触媒であるKS−1010A−1(ジ−n−オクチル錫マレート・ポリマー:共同薬品株式会社製)と、アジピン酸エステル系可塑剤であるPN−250(株式会社ADEKA製)を等質量比で配合し、3本ロールによりKS−1010−Aの粒径が最大30μmとなるまで混練して得られる分散処理品であり、JP−508は、城北化学工業株式会社製の酸性燐酸エステル:モノ(2−エチルヘキシルアシッドホスフェート)およびビス(2−エチルヘキシルアシッドホスフェート)の混合物である。
それぞれ25℃に温度調節したNCO−1とOH−10を25℃の雰囲気下で30秒間混合した。混合直後の状態は有機金属成分が分散された状態であった。この混合液400gを容量:500ccのガラス製サンプル瓶に入れ、25℃の雰囲気下で静置したところ、混合から5時間経過後も流動性を保っていた。混合から5時間後の液を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さが100μm、平面寸法が300mm×300mmのフィルムになるようキャストして、150℃にて3分間硬化させて、ポリウレタン皮膜を得た。得られたポリウレタン皮膜は、TBが50MPa、EBが600%、TRが80kN/mであった。
一方、混合直後の液を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さが100μm、平面寸法が300mm×300mmのフィルムになるようキャストして、150℃にて3分間硬化させて、ポリウレタン皮膜を得た。得られたポリウレタン皮膜は、TBが50MPa、EBが600%、TRが80kN/mであった。
【0045】
(実施例14)
2リットルのセパラブルフラスコに、OH−5を1000g、DOTDL(ジオクチル錫ジラウレート 常温固体)を0.2g、JP−508を0.1gそれぞれ仕込み、25℃で30分撹拌させて、DOTDLおよびJP−508がポリオールと均一になったポリオールプレミックス以下、これをOH−11と表記する。)を得た。
それぞれ25℃に温度調節したNCO−1とOH−11を25℃の雰囲気下で30秒間混合した。混合直後の状態は均一であった。この混合液400gを容量500ccのガラス製サンプル瓶に入れ、25℃の雰囲気下で静置したところ、混合から30分経過したものは流動性がなくなっており、ガラス瓶を逆さまにしても液は出てこなかった。
一方、混合直後の液を離型紙上に流し、バーコーターにて厚さが100μm、平面寸法が300mm×300mmのフィルムになるようキャストして、150℃にて3分間硬化させて、ポリウレタン皮膜を得た。得られたポリウレタン皮膜は、TBが50MPa、EBが600%、TRが80kN/mであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリカーボネートポリオールとポリカプロラクトンポリオールの反応により得られるポリオールと、ポリテトラメチレングリコールとポリイソシアネートの反応により得られるイソシアネート基末端プレポリマーからなり、
ポリカプロラクトンポリオールに対するポリカーボネートポリオールの比率が質量比で65/35以上であることを特徴とする基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット。
【請求項2】
前記ポリオールと前記イソシアネート基末端プレポリマーがいずれも常温で液体状であることを特徴とする請求項1記載の基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット。
【請求項3】
前記ポリオールが、常温で微粉末状の硬化反応用有機金属触媒と硬化反応抑制剤をさらに含有してなることを特徴とする請求項2記載の基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット。
【請求項4】
前記ポリオールが、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールおよび脂肪族グリコールの反応により得られるものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット。
【請求項5】
前記ポリカーボネートポリオールが、1,6−ヘキサンジオールとジアルキルカーボネートの反応により得られるものであることを特徴とする請求項4記載の基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット。
【請求項6】
前記ポリイソシアネートが、脂肪族ジイソシアネートであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット。
【請求項7】
前記脂肪族ジイソシアネートが、ヘキサメチレンジイソシアネートであることを特徴とする請求項6記載の基材上に形成されるポリウレタン樹脂皮膜材料セット。


【公開番号】特開2010−215679(P2010−215679A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−60405(P2009−60405)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000230135)日本ポリウレタン工業株式会社 (222)
【Fターム(参考)】