説明

基材紙又は離型フィルムと積層させた変性ポリオレフィン樹脂組成物、及びその製造方法

【課題】本発明は、これまで取扱いが困難であった自着性を有する変性ポリオレフィン樹脂組成物のフィルム、シートを作成した際、それらを効率よく取得することを目的とする。
【解決手段】本発明は、(A)下記(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分を、溶融混練して得られる接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる層の少なくとも一面に接して、
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
(B)離型処理のされた、基材紙層又は離型フィルム層が配置されるを特徴とする積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィン樹脂とラジカル重合開始剤の存在下、エポキシ基含有ビニル単量体、エチレン性二重結合及び酸性官能基を同一分子内に含む単量体、及びエチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体を加え溶融混練して得られる変性ポリオレフィン樹脂からなる接着性樹脂組成物及び該樹脂組成物を含有する樹脂組成物と、基材紙又は離型フィルムを積層させた積層体、及びその積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリオレフィン樹脂、例えばポリプロピレン樹脂は、その成形性、剛性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性などに優れ、また安価であることから、フィルム、繊維、そのほか様々な形状の成形品として汎用的に使用されている。一方で、ポリプロピレンは分子内に極性基を持たず、非極性で化学的に極めて不活性な高分子である。そのため、接着性、塗装密着性、耐油性等が低いという課題がある。この課題を改善するために、ポリオレフィン樹脂へ極性官能基を有する重合可能なモノマーをグラフト重合させて、変性樹脂を製造する様々な方法が報告されている。
【0003】
このような変性ポリオレフィン樹脂は、ペレットをホットメルトアプリケーターで可塑化して接着剤として使用される場合もあるが、フィルムやシートに加工されて、全面接着が必要な部材に使用される場合もある(例えば、特許文献1)。変性ポリオレフィン樹脂をフィルムやシートに加工する際、フィルムやシートの融点が100℃程度のものは、室温で自着性を有し、加工時にロールに巻き付いたり、ロール状に巻き取ると自着性のために引き剥がせなくなったりする事がある。また耐熱性が要求される用途では使用できないため、産業用途で使用されることがなかった。しかしながら、瞬間的に溶融し、短時間での接着加工を望む分野や、自動車用途ほどの耐熱性を要求されない部材においては、低融点のホットメルト接着フィルムが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−12840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、これまで取扱いが困難であった自着性を有する変性ポリオレフィン樹脂組成物のフィルム、シートを作成した際、それらを効率よく取得することを目的とする。また、作成したフィルムやシートを使用する際に、離型性が良く、作業性の良い変性ポリオレフィン樹脂組成物の積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の現状に鑑み鋭意検討した結果、自着性を有する変性ポリオレフィン樹脂組成物に対して、基材紙又は離型フィルムを積層させることで、上記課題の解決が可能となることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、以下の積層体に関する。
【0007】
1) (A)下記(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分を、溶融混練して得られる接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる層の少なくとも一面に接して、
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部、
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部、
(B)離型処理のされた、基材紙層又は離型ポリエステルフィルム層が配置されることを特徴とする積層体。
【0008】
2) 前記(A)接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる層が、前記(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分と、さらに下記(f)成分とを、溶融混練して得られる接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなることを特徴とする1)に記載の積層体。
(f)芳香族ビニル単量体 0.01〜10重量部。
【0009】
3) 前記(A)接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる層が、前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)成分を、溶融混練して得られる接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなることを特徴とする2)に記載の積層体。
【0010】
4) (A)接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物のJIS K 7121に準拠して測定された融解温度が125℃以下であることを特徴とする1)〜3)のいずれかに記載の積層体。
【0011】
5) 前記基材紙層が、フッ素コーティングまたはシリコーンコーティングされた基材紙である1)〜4)のいずれかに記載の積層体。
【0012】
6) 前記離型ポリエステルフィルム層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである1)〜4)のいずれかに記載の積層体。
【0013】
7) 前記離型ポリエステルフィルム層が、エンボス付きポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである1)〜4)のいずれかに記載の積層体。
【0014】
8) 前記ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが、フッ素コーティングまたはシリコーンコーティングされていることを特徴とする6)または7)に記載の積層体。
【0015】
9) 前記離型ポリエステルフィムル層が、サンドマット状表面であるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである1)〜4)のいずれかに記載の積層体。
【0016】
10) 前記離型ポリエステルフィルム層が、フィラーを配合されたポリエチレンテレフタレートである1)〜4)のいずれか一項に記載の積層体。
【0017】
11) (c)エポキシ基含有ビニル単量体が、グリシジル(メタ)アクリレートである1)〜10)のいずれかに記載の積層体。
【0018】
12) (d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体が、下記一般式(1)で示される化学構造を有する化合物である1)〜11)のいずれかに記載の積層体。
―SiX3 (1)
(式中、Xはそれぞれ独立に加水分解性基または水酸基である。)
【0019】
13) 前記一般式(1)のXが、アルコキシ基であることを特徴とする12)記載の積層体。
【0020】
14) 前記アルコキシ基が、メトキシ基であることを特徴とする13)記載の積層体。
【0021】
15) (f)芳香族ビニル単量体がスチレンである2)〜14)のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0022】
本発明の基材紙又は離型フィルムと積層させた変性ポリオレフィン樹脂組成物を含む積層体は、自着性を有する変性ポリオレフィン樹脂組成物のフィルム、シートを産業用途で取り扱い可能とし、さらに離型性、作業性において優れた特性を有する。
本発明の積層体は、変性ポリオレフィン樹脂層のみを剥がして単独使用してもよいし、積層させた状態で使用しても、難接着基材に対し優れた接着力を確保することができ、文具、雑貨、食品などの包装材、自動車用部品、家電、太陽電池用封止シートなどの電気電子部品、各種産業用資材などの幅広い分野に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下に本発明の詳細について述べる。
(ポリオレフィン樹脂)
前記(a)ポリオレフィン樹脂は、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンから選ばれる少なくとも1種とのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレン及び又はプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。
【0024】
中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリイソブチレンが好ましく、ポリプロピレンが特に好ましい。
【0025】
また、極性基が導入されたポリオレフィン樹脂も使用できる。極性基が導入されたポリオレフィン樹脂の具体例としては、無水マレイン酸変性ポリプロピレン、エチレン‐酢酸ビニル共重合体、エチレン‐アクリル酸共重合体、エチレン‐アクリル酸エチル共重合体、エチレン‐メタクリル酸メチル共重合体、エチレン‐アクリル酸エチル‐メタクリル酸グリシジル共重合体などが挙げられる。
【0026】
前記の原料ポリオレフィン樹脂は、単独で用いてもよく、また複数を併用してもよい。
前記原料ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、他の樹脂、又はゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0027】
前記の他の樹脂またはゴムとしては、たとえばポリペンテン‐1、などのポリα‐オレフィン;プロピレン‐ブテン‐1共重合体などのエチレン又はα‐オレフィン‐α‐オレフィン共重合体;エチレン‐プロピレン‐5‐エチリデン‐2‐ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα‐オレフィン‐α−オレフィン‐ジエン単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン共重合体;スチレン‐ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン‐ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体‐ジエン単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン‐ブタジエン‐スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル‐ブタジエン‐スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル‐ブタジエン‐スチレングラフト共重合体などのビニル単量体‐ジエン単量体‐ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル‐アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル‐酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル‐スチレン共重合体、メタクリル酸メチル‐スチレン共重合体などのビニル共重合体などがあげられる。
【0028】
ポリオレフィン樹脂に対するこれら他の樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
【0029】
また、これらポリオレフィン樹脂(各種の添加材料を含む場合もある)は粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0030】
また、前記の添加材料(ほかの樹脂、およびゴム)を用いる場合は、この添加材料は予めポリオレフィン樹脂に添加されているものであっても、ポリオレフィン樹脂を溶融するときに添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。
【0031】
ポリオレフィン樹脂におけるプロピレン成分に関しては、ポリオレフィン樹脂に対しラジカルが発生し易くなる点で、プロピレン単位が過半量であることが好ましい。ここでいう過半量とはポリオレフィン樹脂に対するプロピレン成分が50重量%以上のことを意味する。
【0032】
(ラジカル開始剤)
(a)ポリオレフィン樹脂に対して、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体をグラフト共重合する際、反応を開始するため、(b)ラジカル重合開始剤を添加する。
ラジカル重合開始剤としては、一般に過酸化物またはアゾ化合物などがあげられる。前記ラジカル重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3‐テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3‐メチル‐3‐メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ‐2‐メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0033】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)‐3,3,5‐トリメチルシクロヘキサン、1,1‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n‐ブチル‐4,4‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)バレレート、2,2‐ビス(t‐ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´‐ビス(t‐ブチルパーオキシ‐m‐イソプロピル)ベンゼン、t‐ブチルクミルパーオキサイド、ジ‐t‐ブチルパーオキサイド、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(t‐ブチルパーオキシ)ヘキシン‐3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t‐ブチルパーオキシオクテート、t‐ブチルパーオキシイソブチレート、t‐ブチルパーオキシラウレート、t‐ブチルパーオキシ‐3,5,5‐トリメチルヘキサノエート、t‐ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5‐ジメチル‐2,5‐ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t‐ブチルパーオキシアセテート、t‐ブチルパーオキシベンゾエート、ジ‐t‐ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0034】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜5重量部の範囲内にあることが好ましく、0.05〜3重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、5重量部を超えるとポリオレフィンの流動性、機械的特性の著しい低下を招く。
【0035】
(エポキシ基含有ビニル単量体)
エポキシ基含有ビニル単量体としては、例えば、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p‐スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン‐p‐グリシジルエーテル、p‐グリシジルスチレン、3,4‐エポキシ‐1‐ブテン、3,4‐エポキシ‐3‐メチル‐1‐ブテンなどのエポキシオレフィン、ビニルシクロヘキセンモノオキシドなどの1種または2種以上が挙げられる。
【0036】
これらのうち、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。前記エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、(a)ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.5〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0037】
(エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体)
エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体は、下記一般式(1)で示される化学構造を有する化合物であることが好ましい。
―SiX3 (1)
式中、Xはそれぞれ独立に加水分解性基または水酸基であり、それぞれ同一であっても異なっても良い。
【0038】
一般式(1)中のXで記載される加水分解性基としては特に限定されず、公知の加水分解性基があげられ、例えば、水素原子、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基およびアルケニルオキシ基が好ましく、アルコキシ基が、加水分解性が穏やかで取扱いやすいことからより好ましい。
【0039】
アルコキシ基の具体例としては、特に限定されず、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1‐プロポキシ基、2‐プロポキシ基、1‐ブトキシ基、2‐ブトキシ基、tert‐ブチルオキシ基、オクトキシ基、ラウリルオキシ基、フェノキシ基、ベンジルオキシ基などがあげられる。これらのなかでは、メトキシ基、エトキシ基が、入手が容易なことから好ましい。
【0040】
本発明において、ポリオレフィン樹脂にグラフトされるアルコキシシランとしては、ビニルアルコキシシラン、イソプロペニルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アクリロキシアルコキシシラン、メタクリロキシアルコキシシラン等のラジカル重合性の官能基(アルケニル基)を有するアルケニルアルコキシシランが好ましく使用される。例えば、ビニルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルプロポキシシラン、ビニルブトキシシラン、メタクリロキシプロピルシラン等のビニルアルコキシシランなどが好ましく用いられ、このビニル基などの官能基を利用して対象とするポリオレフィン樹脂にグラフト反応により付加される。
【0041】
また、水酸基を有する化合物の具体例としては、ビニルトリヒドロキシシラン、ビニルビスメトキシヒドロキシシラン、メタクリロキシヒドロキシシランなどが挙げられる。
前記エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0042】
(エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体)
エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体に含まれる酸性極性基としては、例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸ハライド基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、カルボン酸塩基、スルホン酸基、スルホン酸エステル基、スルホン酸塩化物基、スルホン酸アミド基、スルホン酸塩基等が挙げられる。このうち、好ましくは、カルボン酸基及びカルボン酸無水物基である。
【0043】
本発明で用いるエチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体は、特に制限されないが、好ましくは、上記の極性基を含む不飽和カルボン酸及び又はその誘導体である。不飽和カルボン酸又はその誘導体としては、例えば、不飽和モノもしくはジカルボン酸、又はこれらの誘導体が挙げられる。これらの誘導体としては、具体的には、カルボン酸の無水物、ハライド、及び塩等が挙げられる。このうち、好ましくは、不飽和ジカルボン酸又はその無水物である。
【0044】
不飽和モノ又はジカルボン酸の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、エンド‐ビシクロ[2.2.1]‐5‐ヘプテン‐2,3‐ジカルボン酸(エンディック酸)、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸等が挙げられる。
【0045】
不飽和カルボン酸の誘導体の具体例としては、塩化マレニル、無水マレイン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸、無水イタコン酸、無水ナジック酸、マレイン酸モノメチル、フマル酸モノメチル等が挙げられる。
【0046】
これら不飽和カルボン酸又はその誘導体のうち、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びマレイン酸の無水物であり、より好ましくは、無水マレイン酸である。これらは、一種単独で用いてもよく、また、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
これらのうち、無水マレイン酸が異種材と接着させる場合、特に金属材料と接着させる場合に、低い温度で接着するという点で好ましい。前記エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に改善されない傾向があり、添加量が多すぎると好適な形状や外観を有する樹脂組成物として取得できない傾向がある。
【0048】
(芳香族ビニル単量体)
本発明の接着性変性樹脂組成物からなる層は、(a)ポリオレフィン樹脂に対して、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体、さらに(f)芳香族ビニル単量体を、溶融混練して得られる接着性変性樹脂組成物からなる層であることが好ましい。
芳香族ビニル単量体を例示するならば、スチレン;o‐メチルスチレン、m‐メチルスチレン、p‐メチルスチレン、α‐メチルスチレン、β‐メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o‐クロロスチレン、m‐クロロスチレン、p‐クロロスチレン、α‐クロロスチレン、β‐クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o‐ブロモスチレン、m‐ブロモスチレン、p‐ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o‐フルオロスチレン、m‐フルオロスチレン、p‐フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o‐ニトロスチレン、m‐ニトロスチレン、p‐ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o‐ヒドロキシスチレン、m‐ヒドロキシスチレン、p‐ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o‐ジビニルベンゼン、m‐ジビニルベンゼン、p‐ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o‐ジイソプロペニルベンゼン、m‐ジイソプロペニルベンゼン、p‐ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α‐メチルスチレン、p‐メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0049】
前記(f)芳香族ビニル単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。前記範囲の添加量において、ポリオレフィン樹脂に対する(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト効率を高く維持することでき好適である。一方、添加量が10重量部を超えると(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト効率が飽和域に達する。
【0050】
(変性ポリオレフィン樹脂組成物)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、(a)ポリオレフィン樹脂に対し、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体からなるグラフト鎖をグラフトさせた樹脂組成物である。
【0051】
また、本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、(a)ポリオレフィン樹脂に対し、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、及び(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体から選ばれる少なくとも1種の単量体、さらに(f)芳香族ビニル単量体からなるグラフト鎖をグラフトさせた樹脂組成物であることが、グラフト効率を高める点で好ましい。
【0052】
単量体として、(c)エポキシ基含有ビニル単量体、(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体、(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体、及び(f)芳香族ビニル単量体を使用した場合、種々の素材に対する接着性を得ることができ、さらに好ましい。
【0053】
本発明に用いるグラフト重合反応としては、特に制限されないが、溶液重合、含浸重合、溶融重合などを用いることができる。特に、溶融重合が簡便で好ましい。
溶融混練時の添加順序及び方法については、特に制限はない。なお、その他必要に応じ添加される材料の混合や溶融混練の順序及び方法はとくに制限されるものではない。
溶融混練時の加熱温度は、100〜250℃であることが、ポリオレフィン樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0054】
また、前記の溶融混練の装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールなどを使用することができる。生産性の面から単軸あるいは2軸の押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0055】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。これらの安定剤および添加剤を用いる場合は、予め(a)ポリオレフィン樹脂に添加されているものであってもよく、(a)ポリオレフィン樹脂に(c)〜(f)成分をグラフトさせる際に添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。
【0056】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、添加剤として、ポリオレフィン樹脂に添加しても、接着性を向上することができる。
【0057】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と混合して用いることができる。例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ‐1‐ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1‐ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ポリプロピレンとエチレン/プロピレン共重合体又はエチレン‐プロピレン‐ジエン三元共重合体の単純混合物、その一部架橋物、又はその完全架橋物)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0058】
剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。また、柔軟性が必要な場合にはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0059】
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物とポリオレフィン樹脂を混合する際にその混合量は特に限定はないが、変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対し、0.1〜100重量部を含有とすることが接着性の点で好ましく、更には0.1〜70重量部を含有させることが好ましい。より好ましくは0.3〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部である。
【0060】
(シートまたはフィルム状成形体について)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物は、熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体にすることができる。また、ポリオレフィン樹脂と本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物を混合してなるポリオレフィン樹脂組成物も、熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体にすることができる。本発明でいう熱溶着性とは、熱で溶けて被着体と接合する性質のことである。本発明のシートまたはフィルム状成形体とは、成形体の厚みとしては3μmから3mmが例示でき、好ましくは10μm〜1mmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができるものである。
【0061】
本発明の熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば本発明の変性ポリオレフィン樹脂組成物とポリオレフィン樹脂をドライブレンド、あるいは溶融混練した後に、各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状成形体に成形加工することが可能である。
【0062】
本発明で用いられる被着体の材料としては、例えば、本発明の接着性フィルムの接着樹脂層と接着し得る材料である。具体的には、例えば、金、銀、銅、鉄、錫、鉛、アルミニウム、シリコンなどの金属;ガラス、セラミックスなどの無機材料;紙、布などのセルロース系高分子材料;メラミン樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、ポリカーボネート樹脂、フェノール樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂などの合成高分子材料等が挙げられる。
【0063】
被着体の材料として、異なる2種類以上の材料を混合、複合してもよい。また、積層体が本発明の接着性フィルムを介して、異なる2つの被着体が接着してなるものである場合、2つの被着体を構成する材料は、同じ種類の材料でも異なる種類の材料のいずれでもよい。被着体の性状としては特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状などが挙げられる。また、被着体には、必要に応じて、離型剤、メッキなどの被膜、塗料による塗膜、プラズマやレーザーなどによる表面改質、表面酸化、エッチングなどの表面処理等を実施してもよい。被着体の具体例としては、トリム類(ドアトリム、内装トリムなど)、成形天井、シート材(内装シート、インパネ表皮、装飾シートなど)等の自動車部材や、室内ドア、パーティション、内装壁板、家具、システムキッチン等の住宅資材で使用される化粧フィルムが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0064】
(基材紙、ポリエステル樹脂フィルム)
本発明の変性ポリオレフィン樹脂のフィルム又はシートと積層させる基材紙又はポリエステル樹脂フィルムは、フッ素コーティング、シリコーンコーティング、エンボス加工、タルクの配合等の離型処理がなされている。ここで、フッ素コーティングとは、一般にフッ素を含有するポリマー類をコーティングしたものであっても、重合させていないフルオロ基含有化合物をコーティングしたものであってもよいが、離型性の持続の観点からポリマー系のフッ素コーティングが好ましい。また、シリコーンコーティングは、重合されたシロキサン結合を持つポリマーであっても、シランカップリング剤の様に重合されていない低分子化合物であってもよい。
【0065】
フッ素コーティングやエンボス加工等は、併せて行われていてもよく、単独処理であってもよい。
ポリエステル樹脂フィルムは、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂フィルムであることが、耐熱性の点から好ましい。
【0066】
(積層体)
本発明の積層体は、変性ポリオレフィン樹脂組成物のフィルム又はシートの少なくとも一面と、離型処理された基材紙又はポリエステル樹脂フィルムが接して配置されること特徴とする。本積層体は、枚葉品又はロール状などで使用に供される。積層体が枚葉品で使用に供される場合は、変性ポリオレフィン樹脂組成物からなるフィルム又はシートの両面に、離型処理された基材紙又はポリエステル樹脂フィルムが配置されることが、積層体の取り扱いにおいて好ましい。また、積層体がロール状で使用に供される場合は、変性ポリオレフィン樹脂フィルムの一面又は両面に、離型処理された基材紙又はポリエステル樹脂フィルムを配置した積層体をロール状に巻き上げることが、積層体の製法上好ましい。離型処理された基材紙又はポリエステル樹脂フィルムは、変性ポリオレフィン樹脂フィルムの一面に配置されることが容易であり、さらに好ましい。
【0067】
本発明の積層体は、JIS K 7121に準拠して測定された融解温度が125℃以下の変性ポリオレフィン樹脂組成物からなるシート又はフィルムと、離型処理された基材紙又はポリエステル樹脂フィルムから構成されることが好ましい。また、本発明の積層体は、融解温度が110℃以下である変性ポリオレフィン樹脂組成物から構成する場合がより好ましく、変性ポリオレフィン樹脂組成物の融解温度が105℃以下であることがさらに好ましい。
【実施例】
【0068】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0069】
[官能剥離評価]
官能剥離評価は、積層させた離型フィルムを、23℃に調整し、離型フィルムを手で剥がした感触を評価した。
◎(非常に剥がしやすい)、○(剥がしやすい)、×(剥がしにくい又は剥がせない)の3段階とした。
【0070】
[変性ポリオレフィンの融解温度]
変性ポリオレフィンの融解温度は、JIS K 7121に準拠して、株式会社島津製作所社製の示差走査熱量測定機(DSC−50)を使用し、昇温速度10℃で、室温から400℃の間で測定した。
【0071】
(実施例1)フッ素コーティング紙
(a)エチレンプロピレン共重合体((株)ダウケミカル社製V3401、MFR=8、融解温度100℃)100部、(b)1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂(株)製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をシリンダー温度200℃、スクリュー回転数250rpmに設定したベント付き二軸押出機(30mmφ、L/D=28、(株)日本製鋼所製、製品名LABOTEX30)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より、(f)スチレン5重量部、(c)グリシジルメタクリレート5重量部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た(変性後MFR=5)。得られた変性ポリオレフィン樹脂の融解温度は、96℃であった。得られた変性樹脂ペレットを、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュー回転数100rpmに設定した単軸押出機(20mmφ、L/D=20、(株)東洋精機製、製品名ラボプラストミル)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み100μmのフィルムを得た。ドローダウン等の問題なく加工性は、良好であった。このフィルム化の際に、一般に使用されるコピー用紙(大塚商会社製、αエコペーパーTypeDII)にフッ素系離型スプレー(ダイフリー、GA‐6010、ダイキン工業社製)を均一に吹き付けた紙と積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムから紙を剥離したところ、非常に剥がしやすかった(評価◎)。
【0072】
(実施例2)シリコーンコーティング紙
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、一般に使用されるコピー用紙にシリコーン系離型スプレー(KF412SP、信越化学社製)を均一に吹き付けた紙と積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムから紙を剥離したところ、非常に剥がしやすかった(評価◎)。
【0073】
(実施例3)ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、PETフィルム(ルミラー、東レ社製、厚さ25μm)と積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからPETフィルムを剥離したところ、剥がす事ができた(評価○)。
【0074】
(実施例4)エンボスPET
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、エンボス処理されたPETフィルム(梨地柄、ダイニック社製、厚さ25μm)と積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからエンボス処理されたPETフィルムを剥離したところ、非常に剥がしやすかった(評価◎)。
【0075】
(実施例5)PETフッ素コート
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、PETフィルム(ルミラー、東レ社製、厚さ25μm)にフッ素系離型スプレー(ダイフリー)を均一に吹き付けたものと積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからPETフィルムを剥離したところ、非常に剥がしやすかった(評価◎)。
【0076】
(実施例6)PETシリコーンコート
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、PETフィルム(セラピールBX8、東レフィルム加工社製、厚さ25μm)と積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからPETフィルムを剥離したところ、非常に剥がしやすかった(評価◎)。
【0077】
(実施例7)PETエンボス、フッ素コート
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、エンボス処理されたPETフィルム(梨地柄、ダイニック社製、厚さ25μm)にフッ素系離型スプレー(ダイフリー)を均一に吹き付けたものと積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからエンボス処理されたPETフィルムを剥離したところ、非常に剥がしやすかった(評価◎)
【0078】
(実施例8)PETエンボス、シリコーンコート
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、エンボス処理されたPETフィルム(梨地柄、ダイニック社製、厚さ25μm)にシリコーン系離型スプレー(KF412SP、信越化学社製)を均一に吹き付けたものと積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからエンボス処理されたPETフィルムを剥離したところ、非常に剥がしやすかった(評価◎)。
【0079】
(実施例9)PETサンドマット
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、PETのサンドマットフィルム(TS、帝人デュポンフィルム社製、厚さ25μm)にと積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからPETのサンドマットフィルムを剥離したところ、剥がしやすかった(評価○)。
【0080】
(比較例1)コピー用紙
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、一般に使用されるコピー用紙をそのまま積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムから紙を剥離したところ、紙と接着してしまい、紙が破れた(評価×)。
【0081】
(比較例2)PP離型フィルム
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、離型用PPフィルム(フタムラ化学社製)と積層させた。積層時に完全に融着してしまい、剥がす事が出来なかった(評価×)。
【0082】
(比較例3)セロハンフィルム
実施例1と同様にして得られた変性樹脂ペレットをT型ダイスでフィルム化する際に、離型用セロハンフィルム(フタムラ化学社製)と積層させた。積層させた後、変性樹脂フィルムからセロハンフィルムを剥がしたところ、非常に強く粘着しており、変性樹脂フィルムが伸びきり、剥がす事が困難であった(評価×)。
実施例は本発明の変性樹脂組成物を積層させたフィルムであり、離型層は剥がしやすく且つ、外力が加わらない限りは変性樹脂組成物のフィルム層から剥がれたりしない。これに対して、比較例では、積層後に剥がす事ができなかったり、積層の際に溶融したりして、目的に見合ったものが得られなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分を、溶融混練して得られる接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる層の少なくとも一面に接して、
(a)ポリオレフィン樹脂 100重量部、
(b)ラジカル重合開始剤 0.01重量部〜5重量部、
(c)エポキシ基含有ビニル単量体 0.01〜10重量部、
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部
(e)エチレン性二重結合及び酸性極性基を同一分子内に含む単量体 0.01〜10重量部、
(B)離型処理のされた、基材紙層又は離型ポリエステルフィルム層が配置されることを特徴とする積層体。
【請求項2】
前記(A)接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる層が、前記(a)及び(b)と、(c)、(d)及び(e)から選ばれる少なくとも一つの成分と、さらに下記(f)成分とを、溶融混練して得られる接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなることを特徴とする請求項1に記載の積層体。
(f)芳香族ビニル単量体 0.01〜10重量部。
【請求項3】
前記(A)接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなる層が、前記(a)、(b)、(c)、(d)、(e)及び(f)成分を、溶融混練して得られる接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物からなることを特徴とする請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
(A)接着性変性ポリオレフィン樹脂組成物のJIS K 7121に準拠して測定された融解温度が125℃以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記基材紙層が、フッ素コーティングまたはシリコーンコーティングされた基材紙である請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記離型ポリエステルフィルム層が、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記離型ポリエステルフィルム層が、エンボス付きポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
前記ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムが、フッ素コーティングまたはシリコーンコーティングされていることを特徴とする請求項6または7に記載の積層体。
【請求項9】
前記離型ポリエステルフィムル層が、サンドマット状表面であるポリエチレンテレフタレート樹脂フィルムである請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項10】
前記離型ポリエステルフィルム層が、フィラーを配合されたポリエチレンテレフタレートである請求項1〜4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項11】
(c)エポキシ基含有ビニル単量体が、グリシジル(メタ)アクリレートである請求項1〜10のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項12】
(d)エチレン性二重結合及びケイ素原子を同一分子内に含む単量体が、下記一般式(1)で示される化学構造を有する化合物である請求項1〜11のいずれか一項に記載の積層体。
―SiX3 (1)
(式中、Xはそれぞれ独立に加水分解性基または水酸基である。)
【請求項13】
前記一般式(1)のXが、アルコキシ基であることを特徴とする請求項12記載の積層体。
【請求項14】
前記アルコキシ基が、メトキシ基であることを特徴とする請求項13記載の積層体。
【請求項15】
(f)芳香族ビニル単量体がスチレンである請求項2〜14のいずれか一項に記載の積層体。

【公開番号】特開2011−110742(P2011−110742A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267298(P2009−267298)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】