説明

基材製造装置

【課題】アルミシートをフィルムにラミネートする場合に、アルミシートと第1ロールとが貼り付かないようにすることができる基材製造装置を提供する。
【解決手段】アルミシートF1を所定の速度で搬送する第1ロール12と、フィルムF2を搬送する第2ロール14とを有し、第1ロール12の表面には、DLC膜が成膜されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺状のアルミシートに長尺状のフィルムをラミネートして基材を製造する基材製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、アルミシートに耐熱性のフィルムをラミネートした基材を製造する装置が提案されている。この基材製造装置は、長尺状のアルミシートを搬送する第1ロールに、長尺状のフィルムを搬送する第2ロールを押圧して、アルミシートとフィルムをラミネートしている。この場合に、アルミシートが第1ロールの表面に貼り付ないようにするために、アルミシートと第1ロールの間に長尺状のカバーシートを挟んでいる。
【0003】
上記のように製造された基材は、例えば、電池などの外装材に用いられている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−173050号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記基材製造装置であると、カバーシートが必要であり、そのカバーシートを搬送、回収するために基材製造装置が複雑になり、また、このカバーシートのためにコストが上昇し、さらに、製造後はこのカバーシートは不要になるため破棄しなければならないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は上記問題点に鑑み、アルミシートをフィルムにラミネートする場合に、アルミシートと第1ロールとが貼り付かないようにする基材製造装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、長尺状のアルミシートに長尺状のフィルムをラミネートして2層の基材を製造する基材製造装置において、前記アルミシートを搬送する第1ロールと、前記フィルムを搬送すると共に、前記第1ロールによって搬送される前記アルミシートに前記フィルムを押圧する第2ロールとを有し、前記第1ロールは、加熱された金属ロールであって、その表面にDLC膜が成膜されている、ことを特徴とする基材製造装置である。
【0008】
また、本発明は、長尺状の第1のアルミシートと長尺状の第2のアルミシートの間に長尺状のフィルムを配してラミネートした3層の基材を製造する基材製造装置において、前記第1のアルミシートを搬送する第1ロールと、前記第2のアルミシートを搬送すると共に、前記第1ロールによって搬送される前記第1のアルミシートに前記フィルムを挟んで、前記第2のアルミシートを押圧する第3ロールとを有し、前記第1ロールと前記第3ロールは、加熱された金属ロールであって、その表面にDLC膜が成膜されている、ことを特徴とする基材製造装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロールの表面にDLC膜が成膜されているため、アルミシートがロールの表面に貼り付かない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施例1の基材製造装置の説明図である。
【図2】実施例2の基材製造装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施例に係る基材製造装置10について図面に基づいて説明する。
【実施例1】
【0012】
本発明の実施例1に係る基材製造装置10について図1に基づいて説明する。
【0013】
本実施例の基材製造装置10は、長尺状のアルミシート、又は、長尺状のアルミ箔(以下、まとめて「アルミシートF1」という)に耐熱性のフィルムF2をラミネートした基材F3を製造する装置である。なお、本明細書において「アルミ」という語は、純アルミニウムとアルミニウム合金の両方を含むものとする。このラミネートされた基材F3は、例えば、携帯電話、ノートパソコン、デジタルカメラ、スマートフォン等のモバイル電気機器の電源に使用される電池の本体を包むラミネート外装材に使用される。さらに、フィルムF2としては、例えば、ポリプロピレン(CTP)フィルムF2、ポリエチレン(PE)フィルムF2、ポリカーボネイト(PC)フィルムF2、アクリロニトリル−ブタジエン−ピレン共重合体(ABS)フィルムF2、12ナイロンの如き接着性ポリアミド(ON)フィルムF2等の熱可塑性フィルムF2、オレフィン系樹脂フィルムF2などである。
【0014】
(1)基材製造装置10の構成
まず、基材製造装置10の構成について説明する。
【0015】
基材製造装置10は、第1ロール12と第2ロール14とを有し、第1ロール12は、長尺状のアルミシートF1を図1においては上から下に搬送するものであり、第2ロール14は、フィルムF2を上から下に搬送する。
【0016】
第1ロール12は、例えば直径が400mmであり、軸方向の長さが16000mmであって、ハードクロムからなる金属ロールである。また、この第1ロール12の表面には、DLC膜が成膜されている。このDLC膜とは、「Diamond Like Carbon」の略であり、プラズマを利用した気相合成法により合成されるカーボン系箔膜を意味し、DLC膜の構造は、通常水素を若干含有した平滑な非晶質(アモルファス)構造でダイヤモンド結合やグラファイト結合などを有している。この第1ロール12の表面にDLC膜を成膜する方法としては、特許文献2(特開2010−189694号公報)に開示されている。このDLC膜の膜厚としては、例えば0.5〜10.0μmが好適である。
【0017】
第2ロール14は、第1ロール12の側方に配され、ハードクロムなどの金属ロール、又は、ゴムロールであって、移動装置16によって第1ロール12に対し進退自在である。この移動装置16は、例えばモータ、エアーシリンダなどから構成され、アルミシートF1とフィルムF2をラミネートする場合にのみ、第1ロール12に第2ロール14を押圧する。
【0018】
(2)製造方法
次に、上記構成の基材製造装置10を用いてラミネートした基材F3を製造する方法について説明する。
【0019】
第1ロール12は、200℃〜500℃に加熱し、アルミシートF1を搬送速度Vで搬送する。
【0020】
第2ロール14も、200℃〜500℃に加熱し、フィルムF2を同じ搬送速度Vで搬送すると共に、第2ロール14を第1ロール12に押し付け、アルミシートF1とフィルムF2が加圧及び加熱することによりラミネート加工され、アルミシートF1とフィルムF2からなる2層の基材F3が製造される。
【0021】
第1ロール12の表面はDLC膜が成膜されているため、アルミシートF1が第1ロール12の表面に貼り付くことがない。この貼り付かない理由は、DLC膜においては、前記した平滑な非晶質構造でダイヤモンド結合やグラファイト結合などを有するため、表面で焼き付きが起こらないためである。
【0022】
(3)効果
本実施例によれば、アルミシートF1が第1ロール12の表面に貼り付かないため、従来のようなカバーシートを介在させる必要がなく、装置の構成が簡単になると共に、コストの削減を行うことができ、カバーシートを廃棄したりする必要もない。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の実施例2に係る基材製造装置10について図2に基づいて説明する。
【0024】
実施例1の基材製造装置10では、フィルムF2とアルミシートF1からなる2層の基材F3を製造したが、本実施例の基材製造装置10は、フィルムF2の両面にアルミシートF1をそれぞれラミネートして3層の基材F3を製造する。
【0025】
(1)基材製造装置10の構成
まず、基材製造装置10の構成について説明する。
【0026】
図2に示すように、本実施例の基材製造装置10は、第1のアルミシートF1を搬送する第1ロール12と、この第1ロール12の側方に配され、第2のアルミシートF1を搬送する第3ロール18を有し、この左右一対の第1ロール12,第3ロール18の間に、上からフィルムF2が搬送される。
【0027】
左右一対の第1ロール12,第3ロール18は、加熱した金属ロールであって、その表面にDLC膜が成膜されている。
【0028】
また、本実施例の基材製造装置10においても、第3ロール18が移動装置16によって左右方向に移動自在であり、ラミネート加工するときのみ、第1ロール12に接触させる。
【0029】
(2)製造方法
次に、基材製造装置10を用いてラミネートされた基材F3を製造する方法について説明する。
【0030】
上記構成の基材製造装置10であると、2枚のアルミシートF1の間にフィルムF2を挟んだ状態で、左右一対の第1ロール12,第3ロール18によって加熱及び加圧することによりラミネート加工され、3層の基材F3が製造できる。
【0031】
本実施例であっても、左右一対の第1ロール12,第3ロール18の表面にはDLC膜が成膜されているため、アルミシートF1、F1が第1ロール12、第3ロール18の表面に貼り付くことがない。
【変更例】
【0032】
上記では本発明の一実施例を説明したが、この実施例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の主旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施例やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
10 基材製造装置
12 第1ロール
14 第2ロール
16 移動装置
18 第3ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状のアルミシートに長尺状のフィルムをラミネートして2層の基材を製造する基材製造装置において、
前記アルミシートを搬送する第1ロールと、
前記フィルムを搬送すると共に、前記第1ロールによって搬送される前記アルミシートに前記フィルムを押圧する第2ロールとを有し、
前記第1ロールは、加熱された金属ロールであって、その表面にDLC膜が成膜されている、
ことを特徴とする基材製造装置。
【請求項2】
長尺状の第1のアルミシートと長尺状の第2のアルミシートの間に長尺状のフィルムを配してラミネートした3層の基材を製造する基材製造装置において、
前記第1のアルミシートを搬送する第1ロールと、
前記第2のアルミシートを搬送すると共に、前記第1ロールによって搬送される前記第1のアルミシートに前記フィルムを挟んで、前記第2のアルミシートを押圧する第3ロールとを有し、
前記第1ロールと前記第3ロールは、加熱された金属ロールであって、その表面にDLC膜が成膜されている、
ことを特徴とする基材製造装置。
【請求項3】
前記DLC膜の膜厚が0.5〜10.0μmである、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の基材製造装置。
【請求項4】
前記加熱温度が200〜500℃である、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の基材製造装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2012−81704(P2012−81704A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−231766(P2010−231766)
【出願日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【出願人】(390002015)ヒラノ技研工業株式会社 (18)
【Fターム(参考)】