基板の貼り合せ装置
【課題】 2枚の基板の貼り合せ後に、該基板を基板保持部から確実に剥離させ、基板の貼り合せ精度を向上させること。
【解決手段】 チャンバ12内にて対向して配置された第1と第2の基板保持部15、18の基板保持面15a、18aにそれぞれ保持した2枚の基板1、2を貼り合せる基板の貼り合せ装置10において、第1と第2の基板保持部15、18の少なくとも一方に前記基板保持面15a、18aとは交差する方向に貫通して設けられた貫通孔21に当該基板保持面15a、18aに対して突没可能に挿通され、前記基板1、2を吸着保持する吸着部23を備えた基板受渡しピン22と、前記貫通孔21と前記基板受渡しピン22との間に配置され、前記基板保持面15a、18aに保持された基板1、2との間で閉空間51を形成するシール手段50と、前記閉空間51にガスを供給するガス供給手段60と、を有してなるもの。
【解決手段】 チャンバ12内にて対向して配置された第1と第2の基板保持部15、18の基板保持面15a、18aにそれぞれ保持した2枚の基板1、2を貼り合せる基板の貼り合せ装置10において、第1と第2の基板保持部15、18の少なくとも一方に前記基板保持面15a、18aとは交差する方向に貫通して設けられた貫通孔21に当該基板保持面15a、18aに対して突没可能に挿通され、前記基板1、2を吸着保持する吸着部23を備えた基板受渡しピン22と、前記貫通孔21と前記基板受渡しピン22との間に配置され、前記基板保持面15a、18aに保持された基板1、2との間で閉空間51を形成するシール手段50と、前記閉空間51にガスを供給するガス供給手段60と、を有してなるもの。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の貼り合せ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の貼り合せ装置として、特許文献1に記載の如く、チャンバ内にて対向して配置された上下の基板保持部の基板保持面にそれぞれ保持した上下2枚の基板を貼り合せるものがある。この貼り合せ装置では、上基板保持部に設けた貫通孔に、該上基板保持部に対して上下動可能に付帯する基板受渡しピンを挿通してなり、搬送装置によりチャンバ内に搬入される上基板を基板受渡しピンが備える吸着部により吸着し、この吸着部に吸着した上基板を基板受渡しピンの上昇により上基板保持部の基板保持面に受渡し可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-178476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の基板の貼り合せ装置では、上下の基板の貼り合せ後に、上基板の保持を解除した上基板保持部を上昇させ、下基板保持部の上にある貼り合せ後の上下の基板を搬送装置によりチャンバから搬出する。
【0005】
しかしながら、上基板の保持を解除しただけでは上基板が上基板保持部から剥離されないことがあり、上基板保持部を上昇させると、貼り合せ後の上基板が上基板保持部に貼り付いたまま持ち上げられることがある。このような場合、上下の基板間にずれ等が生じ貼り合せ精度が低下することがある。
【0006】
尚、上下の基板の貼り合せ後に、上基板の保持を解除した上基板保持部を上昇させるに先立ち、基板受渡しピンの吸着部からガスを吹出すことにより、上基板保持部の基板保持面と基板の間にガスを侵入させて該基板を上基板保持部から剥離させることが考えられる。ところが、基板受渡しピンの吸着部から吹出したガスは、上基板保持部に設けてある基板受渡しピンまわりの貫通孔から逃げ、上基板保持部の基板保持面と基板の間に侵入し難く、確実性を欠く。
【0007】
本発明の課題は、2枚の基板の貼り合せ後に、該基板を基板保持部から確実に剥離させ、基板の貼り合せ精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、チャンバ内にて対向して配置された第1と第2の基板保持部の基板保持面にそれぞれ保持した2枚の基板を貼り合せる基板の貼り合せ装置において、第1と第2の基板保持部の少なくとも一方に前記基板保持面とは交差する方向に貫通して設けられた貫通孔に当該基板保持面に対して突没可能に挿通され、前記基板を吸着保持する吸着部を備えた基板受渡しピンと、前記貫通孔と前記基板受渡しピンとの間に配置され、前記基板保持面に保持された基板との間で閉空間を形成するシール手段と、前記閉空間にガスを供給するガス供給手段と、を有してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2枚の基板の貼り合せ後に、該基板を基板保持部から確実に剥離させ、基板の貼り合せ精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は基板の貼り合せ装置を示す模式断面図である。
【図2】図2はシール手段を示す模式断面図である。
【図3】図3はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【図4】図4はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【図5】図5はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【図6】図6はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、図2は本発明の一実施形態を示す。
貼り合せ装置10は、下基板1と上基板2を貼り合せる。下基板1はシール剤が枠状に塗布され、このシール剤によって囲まれる領域に液晶が滴下される。貼り合せ装置10は、下基板1と上基板2を位置決めして貼り合せることにより、それらの下基板1と上基板2の間に液晶を密封する。
【0012】
貼り合せ装置10は、図1に示す如く、チャンバ12を有する。このチャンバ12内は、減圧ポンプ11によって所定の圧力、例えば1Pa程度に減圧されるようになっている。チャンバ12の一側には、シャッタ13によって開閉される出し入れ口14が形成され、この出し入れ口14から下基板1と上基板2とが図示しないロボット装置によって出し入れされるようになっている。
【0013】
チャンバ12内には、下基板保持部(第1の基板保持部)15が設けられている。この下基板保持部15は、XYθ駆動源16によってX、Y及びθ方向に駆動されるようになっている。この下基板保持部15の基板保持面15a(上面)には、貼り合せ装置10の前工程で、塗布装置によってシール剤が塗布された後、滴下装置によって液晶が滴下された下基板1が、ロボット装置によって、液晶が滴下された面(貼り合せ面)を上に向けて供給される。基板保持面15aに供給された下基板1は、外面(貼り合せ面とは反対の面)が例えば静電気力によってこの保持面15aに所定の保持力で保持される。
【0014】
尚、下基板保持部15には、この基板保持面15aに図示しないロボット装置のアームによって供給される下基板1を、そのアームから受け取るための図示しない受渡しピンが基板保持面15aから突没可能に設けられている。
【0015】
下基板保持部15の上方には、第1の駆動軸17aを介して第1のZ駆動源17によって上下方向(Z方向)に駆動される上基板保持部(第2の基板保持部)18が配設されている。上基板保持部18は第1の駆動軸17aにフレーム19を介して吊り下げ支持され、下基板保持部15に対して接離する方向(この実施形態では、上下方向)に駆動される。この上基板保持部18の下面は基板保持面18aとされ、この保持面18aには、上基板2が外面を静電気力によって保持される。
【0016】
各基板保持部15、18には、それぞれ静電チャックを構成する電極が埋設されている。これらの電極に給電することにより、各基板保持部15、18に基板1、2を保持する静電気力を発生させることができる。
【0017】
尚、下基板保持部15には静電チャックを設けず、その基板保持面15aに所定の摩擦抵抗を有する弾性シートを設け、この弾性シート上に下基板1を供給載置するようにしても良い。
【0018】
上基板保持部18には、厚さ方向に貫通する複数、例えば4つの貫通孔21(2つのみ図示)が形成されている。各貫通孔21には、ロッド状の基板受渡しピン22が上下方向に移動可能に挿通されている。各基板受渡しピン22は、その上端が矩形板状の連結部材24によって支持され、下端には吸引ポンプ30に連通する真空パッドからなる吸着部23が図示しないばねを介して上下方向に弾性変位可能に設けられている。吸引ポンプ30は、基板受渡しピン22に設けた真空供給路を介して吸着部23に連通する。
【0019】
連結部材24の上面には、第2の駆動軸25の下端が連結されている。これら第2の駆動軸25を介して、吸着部23は第2のZ駆動源26によってZ方向に駆動されるようになっている。第2のZ駆動源26は、第1のZ駆動源17の第1の駆動軸17Aに支持されているフレーム19に取付けられ、第1のZ駆動源17によって上基板保持部18と一体的に上下動される。
【0020】
フレーム19、基板受渡しピン22は、チャンバ12の上部壁を貫通しており、その貫通部分は図示しないベローズ等によって上部壁に対して気密な状態で上下動可能になっている。
【0021】
貼り合せ装置10は、制御装置40を有する。制御装置40は、XYθ駆動源16、第1のZ駆動源17、第2のZ駆動源26、吸引ポンプ30を制御するとともに、減圧ポンプ11とその開閉バルブ11aを制御し、下基板1と上基板2を以下の手順で貼り合せ動作する。
【0022】
(1)図示しないロボット装置により、出し入れ口14を通ってチャンバ12内に上基板2が搬入される。搬入された上基板2は基板受渡しピン22が備える吸着部23により吸着される。上基板2が吸着部23によって吸着されると、図示しないロボット装置はチャンバ12内から退避する。次いで、基板受渡しピン22が上昇し、吸着部23に吸着された上基板2が上基板保持部18の基板保持面18aに受渡される。
【0023】
上基板2が上基板保持部18の基板保持面18aに吸着保持されると、吸着部23の吸着力が解除される。
【0024】
(2)図示しないロボット装置により、出し入れ口14を通って下基板1がチャンバ12内に搬入される。搬入された下基板1は、図示しない受渡しピンを介して下基板1を下基板保持部15の基板保持面15aに受渡される。
【0025】
(3)上述(1)、(2)により、基板1、2が各基板保持部15、18の基板保持面15a、18aに吸着保持されたならば、出し入れ口14をシャッタ13によって閉じた後、減圧ポンプ11を作動させてチャンバ12内を大気圧から所定の圧力に減圧する。
【0026】
次いで、下基板保持部15をXYθ駆動源16によって水平方向に駆動し、下基板1と上基板2を位置合せしたならば、第1のZ駆動源17によって上基板保持部18を下降方向に移動させる。それによって、位置合せされた下基板1と上基板2がシール剤によって貼り合されることになる。
【0027】
(4)上述(3)の基板1、2の貼り合せ後に、上基板保持部18の基板保持面18aによる上基板2の保持を解除し、つまり、静電チャックによる保持を解除し、上基板保持部18を上昇させることにより、上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから剥離する。
【0028】
このとき、上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから確実に剥離するため、貼り合せ装置10にあっては、後述するシール手段50とガス供給手段60を有し、後述する剥離動作を行なう。
【0029】
(5)上述(4)により上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから剥離した後、チャンバ12内に気体を供給し、この内部の圧力を徐々に大気圧に戻す。それによって、基板1、2は、チャンバ12内の圧力と、貼り合された基板1、2間との圧力差によって加圧され、シール剤によって確実に貼り合される。
【0030】
その後、チャンバ12の出し入れ口14をシャッタ13によって開き、図示しないロボット装置により、貼り合された基板1、2がチャンバ12から搬出される。
【0031】
以下、上述(4)において、上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから剥離させるために、貼り合せ装置10に付加したシール手段50とガス供給手段60について説明する。
【0032】
貼り合せ装置10は、上基板保持部18に設けた各貫通孔21に、貫通孔21と基板受渡しピン22との間を気密にするためのシール手段50を備え、上基板保持部18に保持された上基板2、基板受渡しピン22、貫通孔21、及びシール手段50によって環状の閉空間(以下「環状空間」)51を形成する。そして、環状空間51にガスを供給するガス供給手段60を有する。
【0033】
本実施例において、シール手段50は、図2に示す如く、上基板保持部18に設けた貫通孔21の内部に配置され、更には、貫通孔21の内周面に気密に取付けた中空のドーナツ状部材52からなる。このドーナツ状部材52は、図1に示すように、貫通孔21内において、貫通孔21内に後退して入り込んだ状態の吸着部23の近傍位置に取付けられる。
【0034】
また、ドーナツ状部材25は、ブチルゴムやウレタンゴム等の弾性材料等の伸縮性を有する材料で構成される。そして、ドーナツ状部材52は、大気圧下ではしぼんだ状態にあり、減圧雰囲気下に置かれることで中空空間内の圧力(この実施の形態においては、大気圧)とチャンバ12内の減圧された圧力との差圧によって膨らんだ状態となる。このようなドーナツ状部材52の内周面は、しぼんだ状態では基板受渡しピン22との間に隙間を介し、膨らんだ状態で基板受渡しピン22の外周面に気密に接する。
【0035】
また、ガス供給手段60は、基板受渡しピン22に設けたガス供給路を介して吸着部23に連通するガス供給源61により構成される。尚、この実施の形態においては、吸着部23に吸引ポンプ30による吸引力(負圧)を供給する真空供給路(図示せず)が、前記ガス供給路を兼用する。そのため、真空供給路(ガス供給路)には、供給路を吸引ポンプ30とガス供給源61とに切り換える切換バルブ62が設けられる。制御装置40は、吸引ポンプ30、ガス供給源61を制御するとともに、切換バルブ62を制御し、基板受渡しピン22の吸着部23に真空圧とガス圧を選択的に供給する。ガス供給源61が供給するガスは、例えば、窒素等の不活性ガスや乾燥空気を用いることができる。
【0036】
よって、上述(4)において、上基板保持部18による上基板2の保持を解除するとき、ガス供給源61から吸着部23にガスを供給する。このとき、チャンバ12内は減圧状態にあり、ドーナツ状部材52は膨らんだ状態にあるから、ドーナツ状部材52によって貫通孔21と基板受渡しピン22との隙間は気密にされる。これによって、供給部23から環状空間51に供給されたガスが貫通孔21を通って上方へ逃げることが阻止される。この結果、環状空間51に供給されたガスは、上基板2と基板保持面18aとの間に侵入して広がり、上基板2を基板保持面18aから剥離させる。尚、環状空間51にガスを供給するタイミングは、上基板保持部18が上基板2の保持を解除するのと同時でも良いし、保持を解除した後であっても良い。いずれにしても、上基板2の保持を解除した上基板保持部18が上昇を開始するよりも前のタイミングであれば良い。
【0037】
尚、基板受渡しピン22は、制御装置40による第1のZ駆動源17と第2のZ駆動源26の駆動制御によって、上基板保持部18に対し相対的に下降する動作を加えられることにより、上基板保持部18の基板保持面18aに保持されている上基板2を該基板保持面18aから剥離させる動作を行なうこともできる。
【0038】
従って、貼り合せ装置10によれば以下の作用効果を奏する。
(a)上基板保持部18に設けた貫通孔21にシール手段50としてのドーナツ状部材52を設け、このドーナツ状部材52と上基板保持部18に保持された上基板2との間に画成される環状空間51にガスを供給するガス供給手段60を有するものにした。
【0039】
下基板1と上基板2の貼り合せ後に、上基板2の保持を解除した上基板保持部18を上昇させる前に、ガス供給手段60から供給したガスが、シール手段50により閉鎖されている環状空間51から逃げることなく、上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間に侵入し、上基板2を上基板保持部18から確実に剥離できる。
【0040】
(b)前記シール手段50としてのドーナツ状部材52が、基板保持部18に設けた貫通孔21の内部に配置される。そして、このドーナツ状部材52は、貫通孔21内において、貫通孔21内に後退して入り込んだ状態の吸着部23の近傍位置に取付けられる。
【0041】
上基板保持部18に設けた貫通孔21にドーナツ状部材52によって形成される環状空間51の容積を小さ目にするものになる。これにより、環状空間51内の圧力がガス供給手段60から供給されたガスの圧力に到達するまでに要する時間が極力短縮される。よって、このガスを上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2との間に効率良く侵入させ、上基板2を上基板保持部18から迅速に剥離できる。
【0042】
(c)前記シール手段50が、上基板保持部18に設けた貫通孔21の内周面に設けた中空のドーナツ状部材52からなる。
【0043】
貼り合せ装置10では、大気圧下において、基板受渡しピン22が、上基板2を上基板保持部18に受渡すために上下に移動する。そして、上基板2を上基板保持部18から剥離する。
【0044】
本実施の形態のドーナツ状部材52によれば、基板受渡しピン22が上基板2を上基板保持部18に受渡しするときには、チャンバ12の内部が大気圧であるから、しぼんだ状態にある。そのため、ドーナツ状部材52の中央の孔と基板受渡しピン22との間には隙間が形成される。これにより、基板受渡しピン22はドーナツ状部材52の中央孔に隙間を介して擦らずに移動できる。基板受渡しピン22がドーナツ状部材52を擦って異物を生ずることが抑制され、上下の基板1、2の表示装置としての品質を損なうことが防止できる。
【0045】
また、上述(a)の、上基板2を上基板保持部18から剥離するときには、チャンバ12の内部が大気圧から減圧されている。減圧雰囲気下においては、ドーナツ状部材52は中空空間内の圧力とチャンバ12内の減圧された圧力との差圧により自然に膨らみ、ドーナツ状部材52の中央孔と基板受渡しピン22との間を気密にし、環状空間51を確実に閉鎖し、ガス供給手段60から供給されるガスを逃すことなく、上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間に確実に侵入させ、上基板2を上基板保持部18から確実に剥離させる。
【0046】
よって、このようなドーナツ状部材52によれば、中空状のという簡易な構成により、駆動源を必要とすることなく、基板受渡しピン22の良好な上下移動を確保しつつ、上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間にガスを確実に供給することができる。
【0047】
(d)前記ガス供給手段60が、基板受渡しピン22に設けられる。
環状空間51へのガス供給経路を、基板受渡しピン22の吸着部23への負圧の供給経路と兼用したので、安易に形成できる。
【0048】
(e)前記基板受渡しピン22が上基板2を吸着する吸着部23を備え、該吸着部23に吸着した上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aに受渡し可能にするとともに、上基板保持部18の基板保持面18aに保持されていた上基板2を基板保持面18aから剥離可能にする。
【0049】
即ち、上下の基板1、2の貼り合せ後に、上述(a)によりガス供給手段60によって環状空間51に供給されるガスを上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間に侵入させることに加え、基板受渡しピン22を上基板保持部18に対し相対的に下降させる動作を行なうことにより、上基板保持部18の基板保持面18aに保持されている上基板2を該基板保持面18aから一層確実に剥離できる。
【0050】
尚、本願発明に係るシール手段50は、上述したドーナツ状部材52に限られるものではなく、他の構成としても良い。図3〜図6は、シール手段50の変形例を示す。このような変形例においても、第1の実施形態の特に(a)の作用効果を共通して有する。
【0051】
図3に示したシール手段50は、上基板保持部18に設けた貫通孔21の内周面に取付けたシールリング53からなる。シールリング53は、その外周が上基板保持部18に設けた貫通孔21の内周面に気密に取付けられる。シールリング53の内周面は、基板受渡しピン22の外周面に常に気密に接する。シールリング53は、上基板保持部18に対して上下動する基板受渡しピン22の外周面に摺接するものになる。
【0052】
図4に示したシール手段50は、貫通孔21と基板受渡しピン22との間に配置されたベローズ54を備える。ベローズ54は、一端を上基板保持部18の貫通孔21まわりの上面にフランジ54aを介して取付けられる。フランジ54aと上基板保持部18との間は、Oリング54bによって気密にされる。また、他端を基板受渡しピン22の外周にフランジ54cを介して取付けられる。フランジ54cと基板受渡しピン22との間は、Oリング54dによって気密にされる。ベローズ54は、上基板保持部18に対する基板受渡しピン22の上下動により伸縮する。
【0053】
図5に示したシール手段50は、基板受渡しピン22の外周に設けたフランジ22aとその上面に貼着されたOリング55を備える。また、上基板保持部18の貫通孔21には、フランジ22aの上面に対向する下面を有する縮径部が形成される。この縮径部はシール手段の一部を構成する。
【0054】
Oリング55は、基板受渡しピン22が後退して上基板保持部18に入り込む上昇端で、貫通孔21の下面に当接し、上基板保持部18の貫通孔21まわりに環状空間51を形成する。
【0055】
図6に示したシール手段50は、Oリング56を備える。また、上基板保持部18の貫通孔21には、上方に向かって縮径する側面視で台形形状の外形を備える吸着部23の外径に合せて内径が徐々に減少する傾斜面を備えた縮径部が形成される。Oリング56は、この縮径部に設けられる。そして、吸着部23が縮径部に収容されたとき、Oリング56が吸着部23の外周面に当接し、吸着部23の外周面と前記縮径部の傾斜面との間に環状空間51を形成するものになる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、2枚の基板の貼り合せ後に、基板の保持を解除した基板保持部を上昇させる前に、該基板を基板保持部から確実に離すことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 下基板
2 上基板
10 貼り合せ装置
12 チャンバ
15 下基板保持部(第1の基板保持部)
15a 基板保持面
18 上基板保持部(第2の基板保持部)
18a 基板保持面
21 貫通孔
22 基板受渡しピン
23 吸着部
50 シール手段
51 環状空間(閉空間)
52 ドーナツ状部材
60 ガス供給手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の貼り合せ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
基板の貼り合せ装置として、特許文献1に記載の如く、チャンバ内にて対向して配置された上下の基板保持部の基板保持面にそれぞれ保持した上下2枚の基板を貼り合せるものがある。この貼り合せ装置では、上基板保持部に設けた貫通孔に、該上基板保持部に対して上下動可能に付帯する基板受渡しピンを挿通してなり、搬送装置によりチャンバ内に搬入される上基板を基板受渡しピンが備える吸着部により吸着し、この吸着部に吸着した上基板を基板受渡しピンの上昇により上基板保持部の基板保持面に受渡し可能にしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-178476
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の基板の貼り合せ装置では、上下の基板の貼り合せ後に、上基板の保持を解除した上基板保持部を上昇させ、下基板保持部の上にある貼り合せ後の上下の基板を搬送装置によりチャンバから搬出する。
【0005】
しかしながら、上基板の保持を解除しただけでは上基板が上基板保持部から剥離されないことがあり、上基板保持部を上昇させると、貼り合せ後の上基板が上基板保持部に貼り付いたまま持ち上げられることがある。このような場合、上下の基板間にずれ等が生じ貼り合せ精度が低下することがある。
【0006】
尚、上下の基板の貼り合せ後に、上基板の保持を解除した上基板保持部を上昇させるに先立ち、基板受渡しピンの吸着部からガスを吹出すことにより、上基板保持部の基板保持面と基板の間にガスを侵入させて該基板を上基板保持部から剥離させることが考えられる。ところが、基板受渡しピンの吸着部から吹出したガスは、上基板保持部に設けてある基板受渡しピンまわりの貫通孔から逃げ、上基板保持部の基板保持面と基板の間に侵入し難く、確実性を欠く。
【0007】
本発明の課題は、2枚の基板の貼り合せ後に、該基板を基板保持部から確実に剥離させ、基板の貼り合せ精度を向上させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、チャンバ内にて対向して配置された第1と第2の基板保持部の基板保持面にそれぞれ保持した2枚の基板を貼り合せる基板の貼り合せ装置において、第1と第2の基板保持部の少なくとも一方に前記基板保持面とは交差する方向に貫通して設けられた貫通孔に当該基板保持面に対して突没可能に挿通され、前記基板を吸着保持する吸着部を備えた基板受渡しピンと、前記貫通孔と前記基板受渡しピンとの間に配置され、前記基板保持面に保持された基板との間で閉空間を形成するシール手段と、前記閉空間にガスを供給するガス供給手段と、を有してなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、2枚の基板の貼り合せ後に、該基板を基板保持部から確実に剥離させ、基板の貼り合せ精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は基板の貼り合せ装置を示す模式断面図である。
【図2】図2はシール手段を示す模式断面図である。
【図3】図3はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【図4】図4はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【図5】図5はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【図6】図6はシール手段の変形例を示す模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1、図2は本発明の一実施形態を示す。
貼り合せ装置10は、下基板1と上基板2を貼り合せる。下基板1はシール剤が枠状に塗布され、このシール剤によって囲まれる領域に液晶が滴下される。貼り合せ装置10は、下基板1と上基板2を位置決めして貼り合せることにより、それらの下基板1と上基板2の間に液晶を密封する。
【0012】
貼り合せ装置10は、図1に示す如く、チャンバ12を有する。このチャンバ12内は、減圧ポンプ11によって所定の圧力、例えば1Pa程度に減圧されるようになっている。チャンバ12の一側には、シャッタ13によって開閉される出し入れ口14が形成され、この出し入れ口14から下基板1と上基板2とが図示しないロボット装置によって出し入れされるようになっている。
【0013】
チャンバ12内には、下基板保持部(第1の基板保持部)15が設けられている。この下基板保持部15は、XYθ駆動源16によってX、Y及びθ方向に駆動されるようになっている。この下基板保持部15の基板保持面15a(上面)には、貼り合せ装置10の前工程で、塗布装置によってシール剤が塗布された後、滴下装置によって液晶が滴下された下基板1が、ロボット装置によって、液晶が滴下された面(貼り合せ面)を上に向けて供給される。基板保持面15aに供給された下基板1は、外面(貼り合せ面とは反対の面)が例えば静電気力によってこの保持面15aに所定の保持力で保持される。
【0014】
尚、下基板保持部15には、この基板保持面15aに図示しないロボット装置のアームによって供給される下基板1を、そのアームから受け取るための図示しない受渡しピンが基板保持面15aから突没可能に設けられている。
【0015】
下基板保持部15の上方には、第1の駆動軸17aを介して第1のZ駆動源17によって上下方向(Z方向)に駆動される上基板保持部(第2の基板保持部)18が配設されている。上基板保持部18は第1の駆動軸17aにフレーム19を介して吊り下げ支持され、下基板保持部15に対して接離する方向(この実施形態では、上下方向)に駆動される。この上基板保持部18の下面は基板保持面18aとされ、この保持面18aには、上基板2が外面を静電気力によって保持される。
【0016】
各基板保持部15、18には、それぞれ静電チャックを構成する電極が埋設されている。これらの電極に給電することにより、各基板保持部15、18に基板1、2を保持する静電気力を発生させることができる。
【0017】
尚、下基板保持部15には静電チャックを設けず、その基板保持面15aに所定の摩擦抵抗を有する弾性シートを設け、この弾性シート上に下基板1を供給載置するようにしても良い。
【0018】
上基板保持部18には、厚さ方向に貫通する複数、例えば4つの貫通孔21(2つのみ図示)が形成されている。各貫通孔21には、ロッド状の基板受渡しピン22が上下方向に移動可能に挿通されている。各基板受渡しピン22は、その上端が矩形板状の連結部材24によって支持され、下端には吸引ポンプ30に連通する真空パッドからなる吸着部23が図示しないばねを介して上下方向に弾性変位可能に設けられている。吸引ポンプ30は、基板受渡しピン22に設けた真空供給路を介して吸着部23に連通する。
【0019】
連結部材24の上面には、第2の駆動軸25の下端が連結されている。これら第2の駆動軸25を介して、吸着部23は第2のZ駆動源26によってZ方向に駆動されるようになっている。第2のZ駆動源26は、第1のZ駆動源17の第1の駆動軸17Aに支持されているフレーム19に取付けられ、第1のZ駆動源17によって上基板保持部18と一体的に上下動される。
【0020】
フレーム19、基板受渡しピン22は、チャンバ12の上部壁を貫通しており、その貫通部分は図示しないベローズ等によって上部壁に対して気密な状態で上下動可能になっている。
【0021】
貼り合せ装置10は、制御装置40を有する。制御装置40は、XYθ駆動源16、第1のZ駆動源17、第2のZ駆動源26、吸引ポンプ30を制御するとともに、減圧ポンプ11とその開閉バルブ11aを制御し、下基板1と上基板2を以下の手順で貼り合せ動作する。
【0022】
(1)図示しないロボット装置により、出し入れ口14を通ってチャンバ12内に上基板2が搬入される。搬入された上基板2は基板受渡しピン22が備える吸着部23により吸着される。上基板2が吸着部23によって吸着されると、図示しないロボット装置はチャンバ12内から退避する。次いで、基板受渡しピン22が上昇し、吸着部23に吸着された上基板2が上基板保持部18の基板保持面18aに受渡される。
【0023】
上基板2が上基板保持部18の基板保持面18aに吸着保持されると、吸着部23の吸着力が解除される。
【0024】
(2)図示しないロボット装置により、出し入れ口14を通って下基板1がチャンバ12内に搬入される。搬入された下基板1は、図示しない受渡しピンを介して下基板1を下基板保持部15の基板保持面15aに受渡される。
【0025】
(3)上述(1)、(2)により、基板1、2が各基板保持部15、18の基板保持面15a、18aに吸着保持されたならば、出し入れ口14をシャッタ13によって閉じた後、減圧ポンプ11を作動させてチャンバ12内を大気圧から所定の圧力に減圧する。
【0026】
次いで、下基板保持部15をXYθ駆動源16によって水平方向に駆動し、下基板1と上基板2を位置合せしたならば、第1のZ駆動源17によって上基板保持部18を下降方向に移動させる。それによって、位置合せされた下基板1と上基板2がシール剤によって貼り合されることになる。
【0027】
(4)上述(3)の基板1、2の貼り合せ後に、上基板保持部18の基板保持面18aによる上基板2の保持を解除し、つまり、静電チャックによる保持を解除し、上基板保持部18を上昇させることにより、上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから剥離する。
【0028】
このとき、上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから確実に剥離するため、貼り合せ装置10にあっては、後述するシール手段50とガス供給手段60を有し、後述する剥離動作を行なう。
【0029】
(5)上述(4)により上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから剥離した後、チャンバ12内に気体を供給し、この内部の圧力を徐々に大気圧に戻す。それによって、基板1、2は、チャンバ12内の圧力と、貼り合された基板1、2間との圧力差によって加圧され、シール剤によって確実に貼り合される。
【0030】
その後、チャンバ12の出し入れ口14をシャッタ13によって開き、図示しないロボット装置により、貼り合された基板1、2がチャンバ12から搬出される。
【0031】
以下、上述(4)において、上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aから剥離させるために、貼り合せ装置10に付加したシール手段50とガス供給手段60について説明する。
【0032】
貼り合せ装置10は、上基板保持部18に設けた各貫通孔21に、貫通孔21と基板受渡しピン22との間を気密にするためのシール手段50を備え、上基板保持部18に保持された上基板2、基板受渡しピン22、貫通孔21、及びシール手段50によって環状の閉空間(以下「環状空間」)51を形成する。そして、環状空間51にガスを供給するガス供給手段60を有する。
【0033】
本実施例において、シール手段50は、図2に示す如く、上基板保持部18に設けた貫通孔21の内部に配置され、更には、貫通孔21の内周面に気密に取付けた中空のドーナツ状部材52からなる。このドーナツ状部材52は、図1に示すように、貫通孔21内において、貫通孔21内に後退して入り込んだ状態の吸着部23の近傍位置に取付けられる。
【0034】
また、ドーナツ状部材25は、ブチルゴムやウレタンゴム等の弾性材料等の伸縮性を有する材料で構成される。そして、ドーナツ状部材52は、大気圧下ではしぼんだ状態にあり、減圧雰囲気下に置かれることで中空空間内の圧力(この実施の形態においては、大気圧)とチャンバ12内の減圧された圧力との差圧によって膨らんだ状態となる。このようなドーナツ状部材52の内周面は、しぼんだ状態では基板受渡しピン22との間に隙間を介し、膨らんだ状態で基板受渡しピン22の外周面に気密に接する。
【0035】
また、ガス供給手段60は、基板受渡しピン22に設けたガス供給路を介して吸着部23に連通するガス供給源61により構成される。尚、この実施の形態においては、吸着部23に吸引ポンプ30による吸引力(負圧)を供給する真空供給路(図示せず)が、前記ガス供給路を兼用する。そのため、真空供給路(ガス供給路)には、供給路を吸引ポンプ30とガス供給源61とに切り換える切換バルブ62が設けられる。制御装置40は、吸引ポンプ30、ガス供給源61を制御するとともに、切換バルブ62を制御し、基板受渡しピン22の吸着部23に真空圧とガス圧を選択的に供給する。ガス供給源61が供給するガスは、例えば、窒素等の不活性ガスや乾燥空気を用いることができる。
【0036】
よって、上述(4)において、上基板保持部18による上基板2の保持を解除するとき、ガス供給源61から吸着部23にガスを供給する。このとき、チャンバ12内は減圧状態にあり、ドーナツ状部材52は膨らんだ状態にあるから、ドーナツ状部材52によって貫通孔21と基板受渡しピン22との隙間は気密にされる。これによって、供給部23から環状空間51に供給されたガスが貫通孔21を通って上方へ逃げることが阻止される。この結果、環状空間51に供給されたガスは、上基板2と基板保持面18aとの間に侵入して広がり、上基板2を基板保持面18aから剥離させる。尚、環状空間51にガスを供給するタイミングは、上基板保持部18が上基板2の保持を解除するのと同時でも良いし、保持を解除した後であっても良い。いずれにしても、上基板2の保持を解除した上基板保持部18が上昇を開始するよりも前のタイミングであれば良い。
【0037】
尚、基板受渡しピン22は、制御装置40による第1のZ駆動源17と第2のZ駆動源26の駆動制御によって、上基板保持部18に対し相対的に下降する動作を加えられることにより、上基板保持部18の基板保持面18aに保持されている上基板2を該基板保持面18aから剥離させる動作を行なうこともできる。
【0038】
従って、貼り合せ装置10によれば以下の作用効果を奏する。
(a)上基板保持部18に設けた貫通孔21にシール手段50としてのドーナツ状部材52を設け、このドーナツ状部材52と上基板保持部18に保持された上基板2との間に画成される環状空間51にガスを供給するガス供給手段60を有するものにした。
【0039】
下基板1と上基板2の貼り合せ後に、上基板2の保持を解除した上基板保持部18を上昇させる前に、ガス供給手段60から供給したガスが、シール手段50により閉鎖されている環状空間51から逃げることなく、上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間に侵入し、上基板2を上基板保持部18から確実に剥離できる。
【0040】
(b)前記シール手段50としてのドーナツ状部材52が、基板保持部18に設けた貫通孔21の内部に配置される。そして、このドーナツ状部材52は、貫通孔21内において、貫通孔21内に後退して入り込んだ状態の吸着部23の近傍位置に取付けられる。
【0041】
上基板保持部18に設けた貫通孔21にドーナツ状部材52によって形成される環状空間51の容積を小さ目にするものになる。これにより、環状空間51内の圧力がガス供給手段60から供給されたガスの圧力に到達するまでに要する時間が極力短縮される。よって、このガスを上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2との間に効率良く侵入させ、上基板2を上基板保持部18から迅速に剥離できる。
【0042】
(c)前記シール手段50が、上基板保持部18に設けた貫通孔21の内周面に設けた中空のドーナツ状部材52からなる。
【0043】
貼り合せ装置10では、大気圧下において、基板受渡しピン22が、上基板2を上基板保持部18に受渡すために上下に移動する。そして、上基板2を上基板保持部18から剥離する。
【0044】
本実施の形態のドーナツ状部材52によれば、基板受渡しピン22が上基板2を上基板保持部18に受渡しするときには、チャンバ12の内部が大気圧であるから、しぼんだ状態にある。そのため、ドーナツ状部材52の中央の孔と基板受渡しピン22との間には隙間が形成される。これにより、基板受渡しピン22はドーナツ状部材52の中央孔に隙間を介して擦らずに移動できる。基板受渡しピン22がドーナツ状部材52を擦って異物を生ずることが抑制され、上下の基板1、2の表示装置としての品質を損なうことが防止できる。
【0045】
また、上述(a)の、上基板2を上基板保持部18から剥離するときには、チャンバ12の内部が大気圧から減圧されている。減圧雰囲気下においては、ドーナツ状部材52は中空空間内の圧力とチャンバ12内の減圧された圧力との差圧により自然に膨らみ、ドーナツ状部材52の中央孔と基板受渡しピン22との間を気密にし、環状空間51を確実に閉鎖し、ガス供給手段60から供給されるガスを逃すことなく、上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間に確実に侵入させ、上基板2を上基板保持部18から確実に剥離させる。
【0046】
よって、このようなドーナツ状部材52によれば、中空状のという簡易な構成により、駆動源を必要とすることなく、基板受渡しピン22の良好な上下移動を確保しつつ、上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間にガスを確実に供給することができる。
【0047】
(d)前記ガス供給手段60が、基板受渡しピン22に設けられる。
環状空間51へのガス供給経路を、基板受渡しピン22の吸着部23への負圧の供給経路と兼用したので、安易に形成できる。
【0048】
(e)前記基板受渡しピン22が上基板2を吸着する吸着部23を備え、該吸着部23に吸着した上基板2を上基板保持部18の基板保持面18aに受渡し可能にするとともに、上基板保持部18の基板保持面18aに保持されていた上基板2を基板保持面18aから剥離可能にする。
【0049】
即ち、上下の基板1、2の貼り合せ後に、上述(a)によりガス供給手段60によって環状空間51に供給されるガスを上基板保持部18の基板保持面18aと上基板2の間に侵入させることに加え、基板受渡しピン22を上基板保持部18に対し相対的に下降させる動作を行なうことにより、上基板保持部18の基板保持面18aに保持されている上基板2を該基板保持面18aから一層確実に剥離できる。
【0050】
尚、本願発明に係るシール手段50は、上述したドーナツ状部材52に限られるものではなく、他の構成としても良い。図3〜図6は、シール手段50の変形例を示す。このような変形例においても、第1の実施形態の特に(a)の作用効果を共通して有する。
【0051】
図3に示したシール手段50は、上基板保持部18に設けた貫通孔21の内周面に取付けたシールリング53からなる。シールリング53は、その外周が上基板保持部18に設けた貫通孔21の内周面に気密に取付けられる。シールリング53の内周面は、基板受渡しピン22の外周面に常に気密に接する。シールリング53は、上基板保持部18に対して上下動する基板受渡しピン22の外周面に摺接するものになる。
【0052】
図4に示したシール手段50は、貫通孔21と基板受渡しピン22との間に配置されたベローズ54を備える。ベローズ54は、一端を上基板保持部18の貫通孔21まわりの上面にフランジ54aを介して取付けられる。フランジ54aと上基板保持部18との間は、Oリング54bによって気密にされる。また、他端を基板受渡しピン22の外周にフランジ54cを介して取付けられる。フランジ54cと基板受渡しピン22との間は、Oリング54dによって気密にされる。ベローズ54は、上基板保持部18に対する基板受渡しピン22の上下動により伸縮する。
【0053】
図5に示したシール手段50は、基板受渡しピン22の外周に設けたフランジ22aとその上面に貼着されたOリング55を備える。また、上基板保持部18の貫通孔21には、フランジ22aの上面に対向する下面を有する縮径部が形成される。この縮径部はシール手段の一部を構成する。
【0054】
Oリング55は、基板受渡しピン22が後退して上基板保持部18に入り込む上昇端で、貫通孔21の下面に当接し、上基板保持部18の貫通孔21まわりに環状空間51を形成する。
【0055】
図6に示したシール手段50は、Oリング56を備える。また、上基板保持部18の貫通孔21には、上方に向かって縮径する側面視で台形形状の外形を備える吸着部23の外径に合せて内径が徐々に減少する傾斜面を備えた縮径部が形成される。Oリング56は、この縮径部に設けられる。そして、吸着部23が縮径部に収容されたとき、Oリング56が吸着部23の外周面に当接し、吸着部23の外周面と前記縮径部の傾斜面との間に環状空間51を形成するものになる。
【0056】
以上、本発明の実施形態を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
本発明によれば、2枚の基板の貼り合せ後に、基板の保持を解除した基板保持部を上昇させる前に、該基板を基板保持部から確実に離すことができる。
【符号の説明】
【0058】
1 下基板
2 上基板
10 貼り合せ装置
12 チャンバ
15 下基板保持部(第1の基板保持部)
15a 基板保持面
18 上基板保持部(第2の基板保持部)
18a 基板保持面
21 貫通孔
22 基板受渡しピン
23 吸着部
50 シール手段
51 環状空間(閉空間)
52 ドーナツ状部材
60 ガス供給手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
チャンバ内にて対向して配置された第1と第2の基板保持部の基板保持面にそれぞれ保持した2枚の基板を貼り合せる基板の貼り合せ装置において、
第1と第2の基板保持部の少なくとも一方に前記基板保持面とは交差する方向に貫通して設けられた貫通孔に当該基板保持面に対して突没可能に挿通され、前記基板を吸着保持する吸着部を備えた基板受渡しピンと、
前記貫通孔と前記基板受渡しピンとの間に配置され、前記基板保持面に保持された基板との間で閉空間を形成するシール手段と、
前記閉空間にガスを供給するガス供給手段と、を有してなることを特徴とする基板の貼り合せ装置。
【請求項2】
前記シール手段が、前記基板保持部に設けた貫通孔の内部に配置される請求項1に記載の基板の貼り合せ装置。
【請求項3】
前記シール手段が、前記基板保持部に設けた貫通孔の内周面に取付けた中空のドーナツ状部材からなる請求項1又は2に記載の基板の貼り合せ装置。
【請求項4】
前記ガス供給手段が、前記基板受渡しピンに設けられる請求項1〜3のいずれかに記載の基板の貼り合せ装置。
【請求項5】
前記基板受渡しピンは、前記基板保持面から突出し前記基板保持面に保持されている基板を該基板保持面から剥離可能にする請求項1〜4のいずれかに記載の基板の貼り合せ装置。
【請求項1】
チャンバ内にて対向して配置された第1と第2の基板保持部の基板保持面にそれぞれ保持した2枚の基板を貼り合せる基板の貼り合せ装置において、
第1と第2の基板保持部の少なくとも一方に前記基板保持面とは交差する方向に貫通して設けられた貫通孔に当該基板保持面に対して突没可能に挿通され、前記基板を吸着保持する吸着部を備えた基板受渡しピンと、
前記貫通孔と前記基板受渡しピンとの間に配置され、前記基板保持面に保持された基板との間で閉空間を形成するシール手段と、
前記閉空間にガスを供給するガス供給手段と、を有してなることを特徴とする基板の貼り合せ装置。
【請求項2】
前記シール手段が、前記基板保持部に設けた貫通孔の内部に配置される請求項1に記載の基板の貼り合せ装置。
【請求項3】
前記シール手段が、前記基板保持部に設けた貫通孔の内周面に取付けた中空のドーナツ状部材からなる請求項1又は2に記載の基板の貼り合せ装置。
【請求項4】
前記ガス供給手段が、前記基板受渡しピンに設けられる請求項1〜3のいずれかに記載の基板の貼り合せ装置。
【請求項5】
前記基板受渡しピンは、前記基板保持面から突出し前記基板保持面に保持されている基板を該基板保持面から剥離可能にする請求項1〜4のいずれかに記載の基板の貼り合せ装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2012−247507(P2012−247507A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117466(P2011−117466)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】
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