基板への塗布膜形成方法
【課題】基板端部での膜厚変化を抑制して基板全面に均一な膜厚の塗布膜を形成するとともに、基板を設置した架台や基板の塗布が不要な面の材料付着による汚れを防ぐことができる基板への塗布膜形成方法を提供すること。
【解決手段】基板2の側面にダミー基板3を密着させ、基板2とダミー基板3に跨がるように材料4を塗布し、塗布した材料4が乾燥することによって形成された塗布膜を基板2とダミー基板3の境界で切り離すことによって基板2の塗布面に塗布膜を形成する。ここで、ダミー基板3として基板2と同一高さのもの、或いは基板2よりも高さの高いものを使用する。
【解決手段】基板2の側面にダミー基板3を密着させ、基板2とダミー基板3に跨がるように材料4を塗布し、塗布した材料4が乾燥することによって形成された塗布膜を基板2とダミー基板3の境界で切り離すことによって基板2の塗布面に塗布膜を形成する。ここで、ダミー基板3として基板2と同一高さのもの、或いは基板2よりも高さの高いものを使用する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する基板への塗布膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶セル等の基板への塗布膜形成方法としてスプレーコート法やバーコート法が知られているが、図19及び図20にスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す。
【0003】
即ち、図19はスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図、図20は同平面図であり、図示のようにガラス等の一定の厚みを有した基板2の上方にはスプレーコート装置10のノズル11が配置されている。スプレーコート法によって基板2にマスキング等の塗り分け処理を施すことなく材料4を塗布して基板2上に塗布膜6を形成する場合、ノズル11から材料4を噴射しながら該ノズル11を図20に矢印にて示す方向に走査して基板2上に材料4を塗布するが、塗布された材料4は図20に示すようにノズル11の走査軌跡の周辺部ほど薄くなる。
【0004】
従って、塗布膜6の厚さが均一となるようにするためには、図21の平面図にその軌跡を示すように、ノズル11を一方向に沿って一定速度で基板2を横断するよう走査し、一定の間隔で折り返して逆方向にノズル11を一定速度で基板2を横断するよう走査する動作を繰り返す必要がある。或いは、基板2を設置した不図示の架台をノズル11の走査軌跡に沿って移動させる必要がある。このようにすることによって基板2上に形成され塗布膜6の厚さのバラツキを最小限に抑えることができる。
【0005】
しかしながら、材料4の塗布直後は、図22の断面図に示すように、基板2の周辺部で、塗布された材料4は表面張力によって端部に向かって薄くなる。この状態では、端部の厚みが薄い部分より材料4の乾燥が始まる。そのため、厚みが薄い部分は溶媒が揮発して固形分濃度が早く上がり始めることによって固形分濃度の偏りを生じる。材料4は、濃度の偏りが均一になるように塗布された内部で移動を生じつつ乾燥が進行する。この結果、周縁部には固形分がより多く集積し、図23に示すように周縁部で膜厚が厚い領域を生じて膜厚が不均一になる。
【0006】
又、基板2よりも広い範囲に材料4を塗布するため、基板2を設置した架台にも材料が付着して架台を汚したり、毛細管現象によって材料4が架台と基板2の間の隙間に染み込み、基板2の塗布が不要な面を汚してしまうという問題がある。
【0007】
一方、バーコート法は、図24の斜視図及び図25の断面図に示すように、基板2上に滴下された材料4を丸棒状のバー5を図24の矢印方向に移動させることによって基板2上に材料4を塗布する方法であるが、基板2の全面に亘って材料4を塗布するためには、図25に示すように基板2の幅よりも長いバー5を用いて材料4を基板2より溢れさせながら塗布しなければならない。このとき、材料4を塗布した直後は、図26の断面図に示すように、材料4は架台1とその上に設置された基板2を包み込むような状態となるが、表面張力の影響によって、図27の断面図に示すように基板2の端部を境として基板2上の材料4と架台1上に溢れた材料4に分かれる。
【0008】
基板2上の材料は、スプレーコートの場合と同様の形状となるため、乾燥後に形成される塗布膜6は図28の断面図に示すように周辺部で一度厚くなった後に薄くなる。そして、バーコート法では材料4を基板2から溢れさせるため、溢れた材料4は、スプレーコート法の場合と同様に架台1を汚したり、基板2の塗布が不要な面を汚してしまう。
【0009】
又、バーコート法によって基板2上に材料4を塗布すると、バー5と基板2の間の隙間に入り込んだ材料4が塗布膜厚となるが、膜厚の均一性はバー5の移動速度に依存するため、バー5を一定速度で移動させる必要がある。更に、バー5と基板2の間の隙間が一定であっても、基板2上に塗布される材料4の膜厚は該材料4の粘度によって変化するため、基板2の端部周辺では塗布した材料4の膜厚変化が大きくなってしまう。
【0010】
上述のように基板2の端部周辺において材料4の膜厚変化が大きくなると、特に光学機能材料膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求されるものでは大きな問題となる。
【0011】
そこで、本出願人は、基板の側面に撥水コート剤を塗布して撥水製膜を形成することによって上記問題を解決する方法を先に提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特願2010−036129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、基板の側面のみに撥水コート剤を塗布することは難しく、特に厚さが0.5mm未満の薄い基板の側面に撥水コート剤を塗布することは至難である。
【0014】
本発明はバーコート法における前記問題を解決するためになされたものであって、その目的とする処は、基板端部での膜厚変化を抑制して基板全面に均一な膜厚の塗布膜を形成するとともに、基板を設置した架台や基板の塗布が不要な面の材料付着による汚れを防ぐことができる基板への塗布膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基板と同一高さのダミー基板を使用することを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基板よりも高さの高いダミー基板を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すようにしたため、塗布膜の厚さの変化(不均一)はダミー基板上において発生し、ダミー基板を基板から切り離せば、基板上に残る塗布膜はその厚さが全面に亘ってほぼ均一となる。
【0019】
又、材料がダミー基板を越えて架台上に溢れて落下することがなく、更に、ダミー基板は基板の側面に密着して両者間に材料が染み込む隙間が存在しないため、架台が材料によって汚れたり、基板の塗布が不要な面に材料が付着して汚れる等の不具合が発生することがなく、架台にこぼれ落ちた材料を拭き取ったり、基板の塗布面以外の面に付着した材料を拭き取って清掃する等の工程を省略することができ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において基板の側面全周にダミー基板を密着配置した状態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法においてバーコート法によって基板とダミー基板に材料を塗布する状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法においてバーコート法によって基板とダミー基板に材料を塗布する状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図5】図4のX部拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法においてダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1の別形態において基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す部分断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1の別形態において材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1の別形態において基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図である。
【図11】図10に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図12】ダミー基板を用いないで形成された基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図である。
【図13】図12に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法において基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法において材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法においてダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【図19】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図である。
【図20】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す平面図である。
【図21】スプレーノズルの走査軌跡を示す平面図である。
【図22】スプレーコート法によって基板上に材料が塗布された直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図23】スプレーコート法によって基板上に塗布された材料が乾燥して塗布膜が形成された状態を示す断面図である。
【図24】バーコート法による塗布幕形成方法を示す斜視図である。
【図25】バーコート法による塗布幕形成方法を示す断面図である。
【図26】バーコート法によって基板上に材料が塗布された直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図27】バーコート法によって基板上に材料のウエット状態を示す断面図である。
【図28】バーコート法によって基板上に塗布された材料が乾燥して塗布膜が形成された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法は、
基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すことを特徴としており、以下、該塗布膜形成方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において基板の側面全周にダミー基板を密着配置した状態を示す平面図、図2はバーコート法によって基板とダミー基板に材料を塗布する状態を示す斜視図、図3は同断面図、図4は基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図、図5は図4のX部拡大図、図6は材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図、図7はダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【0023】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法においては、図1に示すように、先ず、架台1(図3参照)上に設置された矩形平板状の基板2の四周に、基板2と同じ高さ(厚さ)の矩形の4枚のダミー基板3を基板2の側面(端面)に密着するよう架台1上に配置する。ここで、基板2の端面は塗布面である上面に対して直角な面を形成しており、各ダミー基板3の側面も上面に対して直角な面を形成しているため、基板2の四周の側面にダミー基板3の側面が密着し、両者間に材料4(図2参照)が染み込む隙間は発生しない。
【0024】
以上のように基板2の四周の側面にダミー基板3が密着配置されると、例えば図2及び図3に示すようにバーコート法によって材料4が基板2とダミー基板3に跨がるよう塗布される。即ち、基板2の塗布面(上面)に塗布すべき材料4が滴下されると、基板2の幅よりも長い棒状のバー5を図2の矢印方向に移動させることによって、材料4が基板2とダミー基板3に跨るように塗布される。つまり、基板2の塗布面の全面とダミー基板3の一部に材料4が塗布される。
【0025】
上述のように、バーコート法によって基板2とダミー基板3に跨って材料4を塗布すると、バー5と基板2及びダミー基板3の間の隙間に入り込んだ材料4が塗布膜厚となるが、膜厚の均一性はバー5の移動速度に依存するため、バー5を一定速度で移動させる必要がある。図4及び図5に基板2とダミー基板3に材料4を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示すが、塗布された材料4は表面張力によって端部に向かって薄くなってしまう。
【0026】
その後、ダミー基板3を基板2から切り離すことなく(基板2とダミー基板3の塗布前の位置関係を維持した状態で)、図6に示すように材料4を乾燥させて基板2とダミー基板3上に所望の塗布膜6を形成するが、基板2とダミー基板3との間に隙間が無く、且つ、基板2とダミー基板3の高さは同じであるため、形成された塗布膜6は、その周縁部を除く範囲で厚さがほぼ均一であることが分かる。但し、塗布膜6の周縁部で一度厚くなった後に薄くなっている。
【0027】
然るに、塗布膜6の厚さが厚くなった後に薄くなる周縁部はダミー基板3上に位置しているため、ダミー基板3を図7に示すように基板2から切り離せば、塗布膜6は基板2とダミー基板3の境界で切り離されることとなり、基板2上に残る塗布膜6はその厚さが全面に亘ってほぼ均一となる。このため、例えば塗布膜6が形成された基板2を分断するような用途の場合、ほぼ均一な塗布膜6の部分のみをギリギリまで残して分断することができ、基板2のディスプレイへの用途を考えた場合に額縁を細くすることができる。
【0028】
又、材料4がダミー基板3を越えて架台1上に溢れて落下することがなく、更に、前述のようにダミー基板3は基板2の側面に密着して両者間に材料4が染み込む隙間が存在しないため、架台1が材料4によって汚れたり、基板2の塗布が不要な面に材料4が付着して汚れる等の不具合が発生することがない。このため、架台1にこぼれ落ちた材料4を拭き取ったり、基板2の塗布面以外の面に付着した材料4を拭き取って清掃する等の工程を省略することができ、生産性の向上が図られる。
【0029】
尚、材料4の乾燥時に基板2とダミー基板3の位置関係を維持するため及び両者の密着性を高めるために、架台1に真空吸着機構等の基板2を固定する機構を設けることが望ましい。
【0030】
次に、本実施の形態の別形態を図8〜図13に基づいて以下に説明する。
【0031】
図8は基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す部分断面図、図9は材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図、図10は基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図、図11は図10に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図、図12はダミー基板を用いないで形成された基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図、図13は図12に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【0032】
基板2がガラスのような脆い材料で構成されている場合(液晶表示素子等)には、図8に示すように該基板2の上下端縁を面取りすることが一般に行われる。この場合、ダミー基板3の基板2の側面に密着される端面の上下端縁にも面取りが施される。
【0033】
而して、図8に示すように、前記と同様に架台1上に設置された基板2に、基板2と同じ高さ(厚さ)のダミー基板3を基板2の側面(端面)に密着するよう架台1上に配置し、例えばバーコート法によって材料4を基板2とダミー基板3に跨がるよう塗布する。
【0034】
材料4を塗布した直後は材料4の基板2とダミー基板3との境界部(面取り部)における膜厚は均一であるが、材料4の乾燥が始まると、図9に示すように、表面張力によって膜厚が均一になるように基板2とダミー基板3との境界に窪みを生じさせながら材料4が乾燥する。このとき、基板2とダミー基板3との間で膜厚差等を生じさせないため、材料4が塗布される基板2とダミー基板3の表面エネルギーが同一であることが望ましい。実用上は、ダミー基板3の材質、厚さ、洗浄条件等を塗布に用いる基板2に揃えることが考えられる。又、面取りは基板2とダミー基板3の何れか一方に施されていれば良い。尚、材料4を塗布し、塗布された材料4が乾燥した後に面取りを行う方法も考えられるが、この方法では塗布膜6の剥がれ、面取り時に発生する削り屑による塗布膜6の汚れが発生し易いため、材料4を塗布する前に面取り加工を施すことが望ましい。
【0035】
図9に示すように、材料4の乾燥が始まると、基板2とダミー基板3との境界に窪みが発生するため、この窪みを目印として塗布膜6をローラカッター等を用いて切り離せば良く、基板2上にはほぼ均一な厚さの塗布膜6が残る。
【0036】
ここで、実際に塗布に用いられる基板2とダミー基板3に面取りを施したものを用い、バーコート法によって塗布を行ったサンプルの塗布膜6の形状を図10に示し、膜厚の測定結果を図11に示す。尚、膜厚の測定には触針式表面形状測定器(Dektak6 M:Veeco 社製)を用いた。
【0037】
図11において横軸は走査幅(μm)、縦軸は膜厚(Å)である。塗布されたウエット状態の材料4は、端部の方が空気に触れる部分が大きく、この部分より乾燥が始まる。材料4の乾燥が始まって固形分濃度が上がり始めると、材料4の濃度が均一になるように移動が起こり、その結果、端部周辺部に材料4の盛り上がりが生じる。この盛り上がりの位置や高さ等は材料4の粘度、固形分濃度、溶媒の揮発速度等に依存する。
【0038】
図10において、矢印bより右側に基板2の面取り部分が存在するが、膜厚はその面取り部分で大きく減少している。この様子を実際の測定結果を示す図11において説明すると、矢印Bよりも右側に面取り部分が存在し、その部分の長さ(矢印Bより右側)は約1mmであり、面取りは0.3mmである。
【0039】
通常、液晶セルでは、面取りを含む端面から約1mm〜2mm程度を額縁とし、この部分は表示エリア外となっている。このため、この部分では塗布された材料4の特性、即ち膜厚は問題とされない。従って、図11の矢印Bより内側(表示側)の部分の膜厚が均一であることが求められる。ここで、矢印A−B間の膜厚変化を測定すると、A−B間の距離は約12mmであり、膜厚は矢印Bから矢印Aの向かって約14300Å(1.43μm)減少しているため、その減少の勾配は約0.12μm/mmとなり、非常に緩やかな変化であることが分かる。
【0040】
他方、ダミー基板3を用いず、面取りされた基板2に材料を塗布して塗布膜6’を形成した場合の塗布膜6’の形状を図12に示し、膜厚の測定結果を図13に示す。
【0041】
ダミー基板3を用いた場合と同様に、図12の矢印dより右側に面取り部分が存在する。ここで、図13に示す矢印C−D間の膜厚変化を測定すると、C−D間の距離は約12mmであり、膜厚をC−D間の最大高と最小高の差と定義すると51800Å(5.18μm)となるため、膜厚はC−D間で勾配約0.43μm/mmで大きく変化していることが分かる。即ち、ダミー基板3を用いない場合の膜厚の勾配は、用いた場合の勾配の約3.6倍となり、ダミー基板3を用いることによって塗布膜6の厚さの均一性が著しく向上することが分かる。
【0042】
次に、一例として実際に行われた塗布膜6の形成について説明する。
【0043】
基板2としては、厚さ0.7mm、150mm×75mmの大きさの青板ガラスを用いた。基板2に施された面取りの大きさは約0.3mm±0.1mm、45°±15°程度の範囲である。基板2の洗浄には工業用中性洗剤(セミクリーンFC−62C:横浜油脂工業社製)を純水で2.5w%の濃度に調整し、超音波洗浄器によって15分間洗浄した。その後、純水の流水によって10分間洗い流し、基板2にエアーを吹き付けて乾燥させた。
【0044】
そして、架台1上に基板2を設置し、基板2の周囲にダミー基板3を隙間無く配置した。その後、バーコータを隙間:8mil=203.2μmに設定し、材料(光学材料:粘度:約80cps、約3mL)4を塗布した。その後、基板2とダミー基板3の配置を崩さず、初めに設置した状態のままオーブンに入れて温度55℃で15分間加熱して材料4を乾燥させた。最後に、材料4の乾燥によって形成された塗布膜6をローラカッターを用いて基板2とダミー基板3の境界線上でカットして基板2上ほぼ均一な厚さの塗布膜6を残した。
【0045】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図14〜図18に基づいて以下に説明する。
【0046】
図14は本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法を示す斜視図、図15は同断面図、図16は基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図、図17は材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図、図18はダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【0047】
本実施の形態では、基板2よりも高さの高いダミー基板3を用いることを特徴としている。即ち、バーコート法によって基板2に塗布膜6を形成する場合、図14及び図15に示すように、架台1上に設置された矩形平板状の基板2に、該基板2よりも高さの高いダミー基板3を基板2の側面(端面)に密着するよう架台1上に配置する。
【0048】
上述のように基板2の側面にダミー基板3が密着配置されると、基板2の幅よりも長い棒状のバー5を図14の矢印方向に移動させることによって、材料4が基板2とダミー基板3に跨るように塗布される。つまり、基板2の塗布面の全面とダミー基板3の一部に材料4が塗布される。すると、バー5と基板2及びダミー基板3の間の隙間に入り込んだ材料4が塗布膜厚となる。図16に基板2とダミー基板3に材料4を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示すが、塗布された材料4は表面張力によって端部に向かって薄くなってしまう。
【0049】
その後、ダミー基板3を基板2から切り離すことなく(基板2とダミー基板3の塗布前の位置関係を維持した状態で)、材料4を乾燥させると、図17に示すように材料4がダミー基板3の側端上縁で途切れてダミー基板3上に薄く残るとともに、基板2の端部において材料4が部分的に盛り上がる。
【0050】
然るに、塗布膜6の厚さが薄くなる周縁部はダミー基板3上に位置しているため、ダミー基板3を図18に示すように基板2から切り離せば、塗布膜6は基板2とダミー基板3の境界で切り離されることとなり、基板2上に残る塗布膜6はその厚さが全面に亘ってほぼ均一となる。但し、この場合、基板2上の塗布膜6の端部には部分的な盛り上がりが生じているが、この盛り上がりは限定的であって、この部分には所定の光学特性が要求されないために問題はない。
【0051】
尚、以上の実施の形態では、バーコート法によって塗布膜を形成する方法について説明したが、本発明は、バーコート法以外の例えばスプレーコート法、スリットコート法、スリット&スピンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の種々の塗布膜形成方法に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、所定の厚みを有して側面にダミー基板を配置することができる基板上に光学膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求される塗布膜を形成する方法に関するものであって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(テレビ、携帯電話、デジタルカメラ用表示等)のディスプレイ装置全般、レンズ、プリズム等の光学機能部品全般、窓ガラス、自動車用ガラス等のガラス製品全般等に対して利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 架台
2 基板
3 ダミー基板
4 材料
5 バー
6 塗布膜
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の塗布面に材料を塗布して塗布膜を形成する基板への塗布膜形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶セル等の基板への塗布膜形成方法としてスプレーコート法やバーコート法が知られているが、図19及び図20にスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す。
【0003】
即ち、図19はスプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図、図20は同平面図であり、図示のようにガラス等の一定の厚みを有した基板2の上方にはスプレーコート装置10のノズル11が配置されている。スプレーコート法によって基板2にマスキング等の塗り分け処理を施すことなく材料4を塗布して基板2上に塗布膜6を形成する場合、ノズル11から材料4を噴射しながら該ノズル11を図20に矢印にて示す方向に走査して基板2上に材料4を塗布するが、塗布された材料4は図20に示すようにノズル11の走査軌跡の周辺部ほど薄くなる。
【0004】
従って、塗布膜6の厚さが均一となるようにするためには、図21の平面図にその軌跡を示すように、ノズル11を一方向に沿って一定速度で基板2を横断するよう走査し、一定の間隔で折り返して逆方向にノズル11を一定速度で基板2を横断するよう走査する動作を繰り返す必要がある。或いは、基板2を設置した不図示の架台をノズル11の走査軌跡に沿って移動させる必要がある。このようにすることによって基板2上に形成され塗布膜6の厚さのバラツキを最小限に抑えることができる。
【0005】
しかしながら、材料4の塗布直後は、図22の断面図に示すように、基板2の周辺部で、塗布された材料4は表面張力によって端部に向かって薄くなる。この状態では、端部の厚みが薄い部分より材料4の乾燥が始まる。そのため、厚みが薄い部分は溶媒が揮発して固形分濃度が早く上がり始めることによって固形分濃度の偏りを生じる。材料4は、濃度の偏りが均一になるように塗布された内部で移動を生じつつ乾燥が進行する。この結果、周縁部には固形分がより多く集積し、図23に示すように周縁部で膜厚が厚い領域を生じて膜厚が不均一になる。
【0006】
又、基板2よりも広い範囲に材料4を塗布するため、基板2を設置した架台にも材料が付着して架台を汚したり、毛細管現象によって材料4が架台と基板2の間の隙間に染み込み、基板2の塗布が不要な面を汚してしまうという問題がある。
【0007】
一方、バーコート法は、図24の斜視図及び図25の断面図に示すように、基板2上に滴下された材料4を丸棒状のバー5を図24の矢印方向に移動させることによって基板2上に材料4を塗布する方法であるが、基板2の全面に亘って材料4を塗布するためには、図25に示すように基板2の幅よりも長いバー5を用いて材料4を基板2より溢れさせながら塗布しなければならない。このとき、材料4を塗布した直後は、図26の断面図に示すように、材料4は架台1とその上に設置された基板2を包み込むような状態となるが、表面張力の影響によって、図27の断面図に示すように基板2の端部を境として基板2上の材料4と架台1上に溢れた材料4に分かれる。
【0008】
基板2上の材料は、スプレーコートの場合と同様の形状となるため、乾燥後に形成される塗布膜6は図28の断面図に示すように周辺部で一度厚くなった後に薄くなる。そして、バーコート法では材料4を基板2から溢れさせるため、溢れた材料4は、スプレーコート法の場合と同様に架台1を汚したり、基板2の塗布が不要な面を汚してしまう。
【0009】
又、バーコート法によって基板2上に材料4を塗布すると、バー5と基板2の間の隙間に入り込んだ材料4が塗布膜厚となるが、膜厚の均一性はバー5の移動速度に依存するため、バー5を一定速度で移動させる必要がある。更に、バー5と基板2の間の隙間が一定であっても、基板2上に塗布される材料4の膜厚は該材料4の粘度によって変化するため、基板2の端部周辺では塗布した材料4の膜厚変化が大きくなってしまう。
【0010】
上述のように基板2の端部周辺において材料4の膜厚変化が大きくなると、特に光学機能材料膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求されるものでは大きな問題となる。
【0011】
そこで、本出願人は、基板の側面に撥水コート剤を塗布して撥水製膜を形成することによって上記問題を解決する方法を先に提案した(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特願2010−036129号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、基板の側面のみに撥水コート剤を塗布することは難しく、特に厚さが0.5mm未満の薄い基板の側面に撥水コート剤を塗布することは至難である。
【0014】
本発明はバーコート法における前記問題を解決するためになされたものであって、その目的とする処は、基板端部での膜厚変化を抑制して基板全面に均一な膜厚の塗布膜を形成するとともに、基板を設置した架台や基板の塗布が不要な面の材料付着による汚れを防ぐことができる基板への塗布膜形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するため、請求項1記載の発明は、基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すことを特徴とする。
【0016】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基板と同一高さのダミー基板を使用することを特徴とする。
【0017】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明において、前記基板よりも高さの高いダミー基板を使用することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すようにしたため、塗布膜の厚さの変化(不均一)はダミー基板上において発生し、ダミー基板を基板から切り離せば、基板上に残る塗布膜はその厚さが全面に亘ってほぼ均一となる。
【0019】
又、材料がダミー基板を越えて架台上に溢れて落下することがなく、更に、ダミー基板は基板の側面に密着して両者間に材料が染み込む隙間が存在しないため、架台が材料によって汚れたり、基板の塗布が不要な面に材料が付着して汚れる等の不具合が発生することがなく、架台にこぼれ落ちた材料を拭き取ったり、基板の塗布面以外の面に付着した材料を拭き取って清掃する等の工程を省略することができ、生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において基板の側面全周にダミー基板を密着配置した状態を示す平面図である。
【図2】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法においてバーコート法によって基板とダミー基板に材料を塗布する状態を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法においてバーコート法によって基板とダミー基板に材料を塗布する状態を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図5】図4のX部拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図である。
【図7】本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法においてダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【図8】本発明の実施の形態1の別形態において基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す部分断面図である。
【図9】本発明の実施の形態1の別形態において材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図である。
【図10】本発明の実施の形態1の別形態において基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図である。
【図11】図10に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図12】ダミー基板を用いないで形成された基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図である。
【図13】図12に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【図14】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法を示す斜視図である。
【図15】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法を示す断面図である。
【図16】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法において基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図17】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法において材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図である。
【図18】本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法においてダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【図19】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す側面図である。
【図20】スプレーコート法による塗布膜形成方法を示す平面図である。
【図21】スプレーノズルの走査軌跡を示す平面図である。
【図22】スプレーコート法によって基板上に材料が塗布された直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図23】スプレーコート法によって基板上に塗布された材料が乾燥して塗布膜が形成された状態を示す断面図である。
【図24】バーコート法による塗布幕形成方法を示す斜視図である。
【図25】バーコート法による塗布幕形成方法を示す断面図である。
【図26】バーコート法によって基板上に材料が塗布された直後の状態(ウエット状態)を示す断面図である。
【図27】バーコート法によって基板上に材料のウエット状態を示す断面図である。
【図28】バーコート法によって基板上に塗布された材料が乾燥して塗布膜が形成された状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法は、
基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すことを特徴としており、以下、該塗布膜形成方法の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
【0022】
<実施の形態1>
図1は本発明の実施の形態1に係る基板への塗布膜形成方法において基板の側面全周にダミー基板を密着配置した状態を示す平面図、図2はバーコート法によって基板とダミー基板に材料を塗布する状態を示す斜視図、図3は同断面図、図4は基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図、図5は図4のX部拡大図、図6は材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図、図7はダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【0023】
本発明に係る基板への塗布膜形成方法においては、図1に示すように、先ず、架台1(図3参照)上に設置された矩形平板状の基板2の四周に、基板2と同じ高さ(厚さ)の矩形の4枚のダミー基板3を基板2の側面(端面)に密着するよう架台1上に配置する。ここで、基板2の端面は塗布面である上面に対して直角な面を形成しており、各ダミー基板3の側面も上面に対して直角な面を形成しているため、基板2の四周の側面にダミー基板3の側面が密着し、両者間に材料4(図2参照)が染み込む隙間は発生しない。
【0024】
以上のように基板2の四周の側面にダミー基板3が密着配置されると、例えば図2及び図3に示すようにバーコート法によって材料4が基板2とダミー基板3に跨がるよう塗布される。即ち、基板2の塗布面(上面)に塗布すべき材料4が滴下されると、基板2の幅よりも長い棒状のバー5を図2の矢印方向に移動させることによって、材料4が基板2とダミー基板3に跨るように塗布される。つまり、基板2の塗布面の全面とダミー基板3の一部に材料4が塗布される。
【0025】
上述のように、バーコート法によって基板2とダミー基板3に跨って材料4を塗布すると、バー5と基板2及びダミー基板3の間の隙間に入り込んだ材料4が塗布膜厚となるが、膜厚の均一性はバー5の移動速度に依存するため、バー5を一定速度で移動させる必要がある。図4及び図5に基板2とダミー基板3に材料4を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示すが、塗布された材料4は表面張力によって端部に向かって薄くなってしまう。
【0026】
その後、ダミー基板3を基板2から切り離すことなく(基板2とダミー基板3の塗布前の位置関係を維持した状態で)、図6に示すように材料4を乾燥させて基板2とダミー基板3上に所望の塗布膜6を形成するが、基板2とダミー基板3との間に隙間が無く、且つ、基板2とダミー基板3の高さは同じであるため、形成された塗布膜6は、その周縁部を除く範囲で厚さがほぼ均一であることが分かる。但し、塗布膜6の周縁部で一度厚くなった後に薄くなっている。
【0027】
然るに、塗布膜6の厚さが厚くなった後に薄くなる周縁部はダミー基板3上に位置しているため、ダミー基板3を図7に示すように基板2から切り離せば、塗布膜6は基板2とダミー基板3の境界で切り離されることとなり、基板2上に残る塗布膜6はその厚さが全面に亘ってほぼ均一となる。このため、例えば塗布膜6が形成された基板2を分断するような用途の場合、ほぼ均一な塗布膜6の部分のみをギリギリまで残して分断することができ、基板2のディスプレイへの用途を考えた場合に額縁を細くすることができる。
【0028】
又、材料4がダミー基板3を越えて架台1上に溢れて落下することがなく、更に、前述のようにダミー基板3は基板2の側面に密着して両者間に材料4が染み込む隙間が存在しないため、架台1が材料4によって汚れたり、基板2の塗布が不要な面に材料4が付着して汚れる等の不具合が発生することがない。このため、架台1にこぼれ落ちた材料4を拭き取ったり、基板2の塗布面以外の面に付着した材料4を拭き取って清掃する等の工程を省略することができ、生産性の向上が図られる。
【0029】
尚、材料4の乾燥時に基板2とダミー基板3の位置関係を維持するため及び両者の密着性を高めるために、架台1に真空吸着機構等の基板2を固定する機構を設けることが望ましい。
【0030】
次に、本実施の形態の別形態を図8〜図13に基づいて以下に説明する。
【0031】
図8は基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す部分断面図、図9は材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図、図10は基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図、図11は図10に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図、図12はダミー基板を用いないで形成された基板塗布面上の塗布膜形状を示す部分断面図、図13は図12に示す塗布膜の膜厚測定結果を示す図である。
【0032】
基板2がガラスのような脆い材料で構成されている場合(液晶表示素子等)には、図8に示すように該基板2の上下端縁を面取りすることが一般に行われる。この場合、ダミー基板3の基板2の側面に密着される端面の上下端縁にも面取りが施される。
【0033】
而して、図8に示すように、前記と同様に架台1上に設置された基板2に、基板2と同じ高さ(厚さ)のダミー基板3を基板2の側面(端面)に密着するよう架台1上に配置し、例えばバーコート法によって材料4を基板2とダミー基板3に跨がるよう塗布する。
【0034】
材料4を塗布した直後は材料4の基板2とダミー基板3との境界部(面取り部)における膜厚は均一であるが、材料4の乾燥が始まると、図9に示すように、表面張力によって膜厚が均一になるように基板2とダミー基板3との境界に窪みを生じさせながら材料4が乾燥する。このとき、基板2とダミー基板3との間で膜厚差等を生じさせないため、材料4が塗布される基板2とダミー基板3の表面エネルギーが同一であることが望ましい。実用上は、ダミー基板3の材質、厚さ、洗浄条件等を塗布に用いる基板2に揃えることが考えられる。又、面取りは基板2とダミー基板3の何れか一方に施されていれば良い。尚、材料4を塗布し、塗布された材料4が乾燥した後に面取りを行う方法も考えられるが、この方法では塗布膜6の剥がれ、面取り時に発生する削り屑による塗布膜6の汚れが発生し易いため、材料4を塗布する前に面取り加工を施すことが望ましい。
【0035】
図9に示すように、材料4の乾燥が始まると、基板2とダミー基板3との境界に窪みが発生するため、この窪みを目印として塗布膜6をローラカッター等を用いて切り離せば良く、基板2上にはほぼ均一な厚さの塗布膜6が残る。
【0036】
ここで、実際に塗布に用いられる基板2とダミー基板3に面取りを施したものを用い、バーコート法によって塗布を行ったサンプルの塗布膜6の形状を図10に示し、膜厚の測定結果を図11に示す。尚、膜厚の測定には触針式表面形状測定器(Dektak6 M:Veeco 社製)を用いた。
【0037】
図11において横軸は走査幅(μm)、縦軸は膜厚(Å)である。塗布されたウエット状態の材料4は、端部の方が空気に触れる部分が大きく、この部分より乾燥が始まる。材料4の乾燥が始まって固形分濃度が上がり始めると、材料4の濃度が均一になるように移動が起こり、その結果、端部周辺部に材料4の盛り上がりが生じる。この盛り上がりの位置や高さ等は材料4の粘度、固形分濃度、溶媒の揮発速度等に依存する。
【0038】
図10において、矢印bより右側に基板2の面取り部分が存在するが、膜厚はその面取り部分で大きく減少している。この様子を実際の測定結果を示す図11において説明すると、矢印Bよりも右側に面取り部分が存在し、その部分の長さ(矢印Bより右側)は約1mmであり、面取りは0.3mmである。
【0039】
通常、液晶セルでは、面取りを含む端面から約1mm〜2mm程度を額縁とし、この部分は表示エリア外となっている。このため、この部分では塗布された材料4の特性、即ち膜厚は問題とされない。従って、図11の矢印Bより内側(表示側)の部分の膜厚が均一であることが求められる。ここで、矢印A−B間の膜厚変化を測定すると、A−B間の距離は約12mmであり、膜厚は矢印Bから矢印Aの向かって約14300Å(1.43μm)減少しているため、その減少の勾配は約0.12μm/mmとなり、非常に緩やかな変化であることが分かる。
【0040】
他方、ダミー基板3を用いず、面取りされた基板2に材料を塗布して塗布膜6’を形成した場合の塗布膜6’の形状を図12に示し、膜厚の測定結果を図13に示す。
【0041】
ダミー基板3を用いた場合と同様に、図12の矢印dより右側に面取り部分が存在する。ここで、図13に示す矢印C−D間の膜厚変化を測定すると、C−D間の距離は約12mmであり、膜厚をC−D間の最大高と最小高の差と定義すると51800Å(5.18μm)となるため、膜厚はC−D間で勾配約0.43μm/mmで大きく変化していることが分かる。即ち、ダミー基板3を用いない場合の膜厚の勾配は、用いた場合の勾配の約3.6倍となり、ダミー基板3を用いることによって塗布膜6の厚さの均一性が著しく向上することが分かる。
【0042】
次に、一例として実際に行われた塗布膜6の形成について説明する。
【0043】
基板2としては、厚さ0.7mm、150mm×75mmの大きさの青板ガラスを用いた。基板2に施された面取りの大きさは約0.3mm±0.1mm、45°±15°程度の範囲である。基板2の洗浄には工業用中性洗剤(セミクリーンFC−62C:横浜油脂工業社製)を純水で2.5w%の濃度に調整し、超音波洗浄器によって15分間洗浄した。その後、純水の流水によって10分間洗い流し、基板2にエアーを吹き付けて乾燥させた。
【0044】
そして、架台1上に基板2を設置し、基板2の周囲にダミー基板3を隙間無く配置した。その後、バーコータを隙間:8mil=203.2μmに設定し、材料(光学材料:粘度:約80cps、約3mL)4を塗布した。その後、基板2とダミー基板3の配置を崩さず、初めに設置した状態のままオーブンに入れて温度55℃で15分間加熱して材料4を乾燥させた。最後に、材料4の乾燥によって形成された塗布膜6をローラカッターを用いて基板2とダミー基板3の境界線上でカットして基板2上ほぼ均一な厚さの塗布膜6を残した。
【0045】
<実施の形態2>
次に、本発明の実施の形態2を図14〜図18に基づいて以下に説明する。
【0046】
図14は本発明の実施の形態2に係る基板への塗布膜形成方法を示す斜視図、図15は同断面図、図16は基板とダミー基板に材料を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示す断面図、図17は材料が乾燥した後の状態を示す部分断面図、図18はダミー基板を基板から切り離した状態を示す部分断面図である。
【0047】
本実施の形態では、基板2よりも高さの高いダミー基板3を用いることを特徴としている。即ち、バーコート法によって基板2に塗布膜6を形成する場合、図14及び図15に示すように、架台1上に設置された矩形平板状の基板2に、該基板2よりも高さの高いダミー基板3を基板2の側面(端面)に密着するよう架台1上に配置する。
【0048】
上述のように基板2の側面にダミー基板3が密着配置されると、基板2の幅よりも長い棒状のバー5を図14の矢印方向に移動させることによって、材料4が基板2とダミー基板3に跨るように塗布される。つまり、基板2の塗布面の全面とダミー基板3の一部に材料4が塗布される。すると、バー5と基板2及びダミー基板3の間の隙間に入り込んだ材料4が塗布膜厚となる。図16に基板2とダミー基板3に材料4を塗布した直後の状態(ウエット状態)を示すが、塗布された材料4は表面張力によって端部に向かって薄くなってしまう。
【0049】
その後、ダミー基板3を基板2から切り離すことなく(基板2とダミー基板3の塗布前の位置関係を維持した状態で)、材料4を乾燥させると、図17に示すように材料4がダミー基板3の側端上縁で途切れてダミー基板3上に薄く残るとともに、基板2の端部において材料4が部分的に盛り上がる。
【0050】
然るに、塗布膜6の厚さが薄くなる周縁部はダミー基板3上に位置しているため、ダミー基板3を図18に示すように基板2から切り離せば、塗布膜6は基板2とダミー基板3の境界で切り離されることとなり、基板2上に残る塗布膜6はその厚さが全面に亘ってほぼ均一となる。但し、この場合、基板2上の塗布膜6の端部には部分的な盛り上がりが生じているが、この盛り上がりは限定的であって、この部分には所定の光学特性が要求されないために問題はない。
【0051】
尚、以上の実施の形態では、バーコート法によって塗布膜を形成する方法について説明したが、本発明は、バーコート法以外の例えばスプレーコート法、スリットコート法、スリット&スピンコート法、スピンコート法、インクジェット法等の種々の塗布膜形成方法に対しても同様に適用可能であることは勿論である。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明は、所定の厚みを有して側面にダミー基板を配置することができる基板上に光学膜(ハードコート、反射防止膜、位相差膜等)やレジスト等の膜厚の均一性が要求される塗布膜を形成する方法に関するものであって、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ(テレビ、携帯電話、デジタルカメラ用表示等)のディスプレイ装置全般、レンズ、プリズム等の光学機能部品全般、窓ガラス、自動車用ガラス等のガラス製品全般等に対して利用可能である。
【符号の説明】
【0053】
1 架台
2 基板
3 ダミー基板
4 材料
5 バー
6 塗布膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すことを特徴とする基板への塗布膜形成方法。
【請求項2】
前記基板と同一高さのダミー基板を使用することを特徴とする請求項1記載の基板への塗布膜形成方法。
【請求項3】
前記基板よりも高さの高いダミー基板を使用することを特徴とする請求項1記載の基板への塗布膜形成方法。
【請求項1】
基板の側面にダミー基板を密着させ、基板とダミー基板に跨がるように材料を塗布し、塗布した材料が乾燥することによって形成された塗布膜を基板とダミー基板の境界で切り離すことを特徴とする基板への塗布膜形成方法。
【請求項2】
前記基板と同一高さのダミー基板を使用することを特徴とする請求項1記載の基板への塗布膜形成方法。
【請求項3】
前記基板よりも高さの高いダミー基板を使用することを特徴とする請求項1記載の基板への塗布膜形成方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
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【図10】
【図11】
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【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【公開番号】特開2012−106203(P2012−106203A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258495(P2010−258495)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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