基板乾燥用支持体及び乾燥装置
【課題】伸展時に薄切片及び基板に付着した水分を積極的に排除することができ、乾燥に費やす時間を極力低減させて効率良く薄切片標本を作製すること。
【解決手段】底板5と背板6とからなる支持フレーム2と、背板に長辺が接触した状態で基板Gを立掛け可能に支持すると共に底面5aに対して長辺が所定角度傾くように基板を傾斜させる複数の傾斜用ピン3a、3b、3cと、基板を立掛けた際に基板の表面が底面に直交する面に対して所定角度傾くように立掛け角度を調整する複数の調整用ピン4a、4bと、を備え、複数の傾斜用ピン又は複数の調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンが、伸展時に付着した水分Wを自身のピンを伝わらせて落下させて基板から排除する基板乾燥用支持体1を提供する。
【解決手段】底板5と背板6とからなる支持フレーム2と、背板に長辺が接触した状態で基板Gを立掛け可能に支持すると共に底面5aに対して長辺が所定角度傾くように基板を傾斜させる複数の傾斜用ピン3a、3b、3cと、基板を立掛けた際に基板の表面が底面に直交する面に対して所定角度傾くように立掛け角度を調整する複数の調整用ピン4a、4bと、を備え、複数の傾斜用ピン又は複数の調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンが、伸展時に付着した水分Wを自身のピンを伝わらせて落下させて基板から排除する基板乾燥用支持体1を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学実験や顕微鏡観察等に用いられる薄切片標本を作製する際に使用されるもので、特に包埋ブロックから薄切された薄切片を伸展させて基板上に掬い取った後、該基板を乾燥させる際に用いられる基板乾燥用支持体、及び、該基板乾燥用支持体を有する乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片を、スライドガラス等の基板上に固定させたものである。ここで、ミクロトームを利用して薄切片試料を作製する一般的な方法について説明する。
【0003】
まず、ホルマリン固定された生物や動物等の生体試料をパラフィン置換した後、更に周囲をパラフィンで固めて強固にして、ブロック状態の包埋ブロックを作製する。次に、この包埋ブロックを専用の薄切り装置であるミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面が平滑面となると共に、実験や観察の対象物である包埋された生体試料が表面に露出した状態となる。
【0004】
粗削りが終了した後、本削りを行う。これは、ミクロトームが有する切断刃により、包埋ブロックを上述した厚みで極薄にスライスする工程である。これにより、薄切片を得ることができる。この際、包埋ブロックを可能な限り薄くスライスすることで、薄切片の厚みを細胞レベルの厚みに近付けることができるので、より正確な観察データを得ることができる。よって、可能な限り厚さが薄い薄切片を作製することが求められている。
【0005】
次いで、本削りによって得られた薄切片を伸展させる伸展工程を行う。つまり、本削りによって作製された薄切片は、上述したように極薄の厚みでスライスされたものであるので、皺がついた状態や、丸まった状態(例えば、Uの字状)となってしまう。そこで、この伸展工程によって、皺や丸みを取って伸ばす必要がある。
一般的には、水とお湯を利用して伸展させている。始めに、本削りによって得られた薄切片を水に浮かべる。これにより、生体試料を包埋しているパラフィン同士のくっつきを防止しながら、薄切片の大きな皺や丸みを取ることができる。その後、薄切片をお湯に浮かべる。これにより、薄切片が伸び易くなるので、水による伸展では取りきれなかった残りの皺や丸みを取ることができる。
【0006】
そして、お湯による伸展が終了した薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する。なお、この時点で仮に伸展が不十分であった場合には、基板ごとホットプレート等に乗せてさらに熱を加える。これにより、薄切片をより伸展させることができる。
最後に、薄切片を乗せた基板を乾燥器内に入れて乾燥させる。この乾燥により、伸展で付着した水分が蒸発すると共に、薄切片が基板上に固定される。その結果、薄切片標本を作製することができる。
【0007】
ところで、上述した工程のほとんどが高度な技術や経験を要するものであるため、一般には熟練した作業者が手作業で対応している。しかしながら、近年では作業者の負担を少しでも軽減するために、上述した工程の一部分を自動で行う薄切片試料作製装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。この薄切片試料作製装置によれば、作業者の負担を軽減することができると共に、作業者による人為的なミスもなくすことができ、良好な薄切片標本を作製することができる。
【特許文献1】特開2004−28910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1記載の薄切片試料作製装置では、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、この薄切片試料作製装置は、予めセットされた包埋ブロックから薄切片を作製すると共に伸展後の薄切片をスライドガラス上に固定させ、その後、ヒータや赤外線等を利用して薄切片及びスライドガラスの乾燥を自動的に行うことができる装置であるが、効率良く乾燥を行うことができるものではなかった。つまりこの装置は、薄切片及びスライドガラスに付着した水分を乾燥させる際に、該スライドガラスを水平に置いた状態で乾燥を行っている。そのため、水分がスライドガラス上に溜まったままの状態になってしまうものであった。従って、乾燥時にはこの水分が蒸発するのをただ待つしかなく、乾燥させるのに非常に時間がかかるものであった。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分を積極的に排除することができ、乾燥に費やす時間を極力低減させて効率良く薄切片標本を作製することができる基板乾燥用支持体、及び、該基板乾燥用支持体を有する乾燥装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る基板乾燥用支持体は、液体上に浮かべることで伸展がなされた薄切片が表面に掬い取られた矩形状の基板を支持する基板乾燥用支持体であって、底板と、該底板の一端側から底板の底面に直交する方向に延びた背板とからなる断面L型の支持フレームと、前記背板に基端側が固定され、背板に長辺が接触した状態で前記基板を立掛け可能に支持すると共に、前記底板の底面に対して長辺が所定角度傾くように基板を傾斜させる複数の傾斜用ピンと、前記底板に基端側が固定され、前記背板と前記傾斜用ピンとの間に前記基板を立掛けた際に、基板の表面が前記底板の底面に直交する面に対して所定角度傾くように立掛け角度を調整する複数の調整用ピンと、を備え、前記複数の傾斜用ピン又は前記複数の調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンが、前記伸展時に付着した水分を自身のピンを伝わらせて落下させて前記基板から排除することを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る基板乾燥用支持体においては、基板及び薄切片を乾燥させる際に、伸展時に付着した水分を基板から積極的に排除することができる。始めに前作業として、作業者は、生体試料が包埋材に包埋された包埋ブロックから薄切された薄切片を水やお湯等の液体上に浮かべて伸展させた後、この伸展がなされた薄切片を基板で掬い取る。そしてこの作業が終了した後、作業者は表面に薄切片が付いた基板を基板乾燥用支持体に置いて、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分を乾燥させる。
【0012】
ここで、支持フレームの背板には、複数の傾斜用ピンが固定されているので、従来のように基板を水平に置くのではなく、これら傾斜用ピンを利用して基板を立掛けた状態で置くことができる。即ち、基板の一方の長辺を背板に接触させると共に、他方の長辺を傾斜用ピンに接触させた状態で斜めに立掛けることができる。しかも、立掛けられた基板は、これら傾斜用ピンによって、基板の長辺が支持フレームの底板の底面に対して所定角度傾いた状態となっている。つまり、基板を斜めに傾けた状態で立掛けることができる。また、立掛けられた基板は、支持フレームの底板に固定された複数の調整用ピンに他方の長辺が接触した状態となっている。そのため基板は、傾斜用ピンの上をずるずると滑って動いてしまうことがなく、基板の表面が底板の底面に直交する面に対して所定角度だけ傾くように立掛け角度が調整されている。
【0013】
このように基板を斜めに傾けた状態で立掛けることができるので、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分が重力により流れて略1箇所に集まってくる。そして、集まってきた水分は、複数の傾斜用ピン又は調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンを伝わって落下していく。これにより、伸展時に付着した水分を積極的に排除することができ、自然に水切りすることができる。従って、乾燥に費やす時間を極力低減することができ、従来に比べて乾燥時間を遥かに短縮することができる。その結果、基板上に薄切片が固定された薄切片標本を効率良く作製することができる。
【0014】
また、本発明に係る基板乾燥用支持体は、上記本発明の基板乾燥用支持体において、前記傾斜用ピンが、前記背板に対して移動可能に固定され、前記傾斜角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る基板乾燥用支持体においては、基板の大きさや薄切片の大きさ、或いは、伸展時に付着した水分量等に応じて、立掛け角度を変更せずに基板の傾斜角度を任意の角度に調整することができる。従って、状況に応じて効率良く水分を水切りすることができ、乾燥時間の短縮化に繋げることができる。
【0016】
また、本発明に係る基板乾燥用支持体は、上記本発明の基板乾燥用支持体において、前記調整用ピンが、前記底板に対して移動可能に固定され、前記立掛け角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る基板乾燥用支持体においては、基板の大きさや薄切片の大きさ、或いは、伸展時に付着した水分量等に応じて、傾斜角度を変更せずに基板の立掛け角度を任意の角度に調整することができる。従って、状況に応じて効率良く水分を水切りすることができ、乾燥時間の短縮化に繋げることができる。
【0018】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明のいずれかの基板乾燥用支持体と、該基板乾燥用支持体を複数載置すると共に、各基板乾燥用支持体から排除された前記水分を回収して集める回収台と、前記基板を出し入れ可能な開口部を有し、前記回収台を内部に収納する収納ケースと、前記開口部を開閉する開閉シャッタと、前記収納ケース内に設けられ、該収納ケース内の温度を所定温度に調整する温度調整手段と、前記回収台で集められた前記水分を、前記収納ケース内から外部に排出させる排出手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る乾燥装置においては、基板の乾燥を行う際に、まず開閉シャッタを空けて収納ケースの開口部を開けた状態にする。そして、この開口部を通して回収台に複数載置された基板乾燥用支持体に基板を置いた後、開閉シャッタを閉める。そして、温度調整手段により収納ケースの温度を、乾燥に最適な所定温度に調整する。これにより、基板乾燥用支持体に置かれた薄切片及び基板に付着した水分を蒸発させて乾燥させることができる。しかも、付着した水分を積極的に排除して水切りすることができる基板乾燥用支持体を有しているので、短時間で効率良く乾燥させることができる。加えて、回収台には複数の基板乾燥用支持台が載置されているので、一度に複数の基板を乾燥することができる。
【0020】
また、各基板乾燥用支持体によって排除された水分は、回収台に落下した後、該回収台によって集められる。そして、集まられた水分は、排出手段によって収納ケース内から外部に排出される。これにより、排除された水分が収納ケース内で蒸発することがないので、乾燥に影響がおよぶことを防止することができる。また、収納ケース内を清潔に保つことができ、高品質な薄切片標本を得ることができる。
【0021】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明の乾燥装置において、前記収納ケース内の空気を決められた流れに沿って対流させる対流手段を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る乾燥装置においては、温度調整手段によって温度調整された空気を自然任せに対流させるのではなく、対流手段によって予め決められた流れに沿って対流させることができる。従って、基板及び薄切片に対して温度調整された空気を積極的に当てることができ、さらに効率良く乾燥を行うことができる。
【0023】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明の乾燥装置において、前記回収台を回転させる回転駆動手段を備えていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る乾燥装置においては、基板の乾燥を行っている際に、回転駆動手段が回収台を回転させるので、仮に収納ケース内の空気に温度の偏りがあったとしても、これらに影響されることなく各基板を均等の条件で乾燥させることができる。従って、全ての基板を同じ条件で乾燥させることができ、作製した薄切片標本の品質を揃えることができる。特に、回収台を回転させることで、基板及び薄切片に対して温度調整された空気を積極的に当てることができるので、より効率良く乾燥を行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明のいずれかの乾燥装置において、前記回収台が、前記収納ケース内に複数設けられていることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る乾燥装置においては、複数の基板乾燥用支持体が載置された回収台が収納ケース内に複数設けられているので、さらに多くの基板を一度に乾燥させることができる。従って、より効率良く乾燥を行って薄切片標本を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る基板乾燥用支持体によれば、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分を積極的に排除して水切りすることができ、乾燥に費やす時間を極力低減することができる。
また、本発明に係る乾燥装置によれば、積極的に水分を排除して水切りすることができる基板乾燥用支持体を備えているので、短時間で効率良く乾燥を行って、薄切片標本とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る基板乾燥用支持体の一実施形態を、図1から図5を参照して説明する。この治具(基板乾燥用支持体)1は、水やお湯等の図示しない液体上に浮かべることで伸展がなされた薄切片Mが表面に掬い取られた図1に示すスライドガラス(矩形状の基板)Gを支持するものである。また、この治具1にスライドガラスGを支持した状態で、伸展時に付着した水分Wを乾燥させる乾燥工程を行うことで、薄切片標本が作製される。
【0029】
始めに、薄切片Mについて簡単に説明する。この薄切片Mは、図2に示すように、生体試料Sが包埋材Nによって包埋された包埋ブロックBを図示しない切断刃によって例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切されたものである。なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Nによってブロック状に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。
また、伸展された薄切片Mは、図1に示すようにスライドガラスGの略中央付近に掬い取られてくっついた状態となっている。なお、スライドガラスGの一端側は、文字等を書き込むことができるフロスト部G1となっている。
【0030】
本実施形態の治具1は、図3から図5に示すように、支持フレーム2と、3つの傾斜用ピン3a、3b、3cと、2つの調整用ピン4a、4bとから構成されている。
支持フレーム2は、平面視略コ形状に形成された底板5と、該底板5の一端側から底板5の底面5aに直交する方向(図3に示す矢印Z方向)に延びた背板6とからなる断面L型のフレームである。
なお、本実施形態の背板6は、中央部分が大きく空いた状態で形成されており、スライドガラスGを立掛けた際にスライドガラスGの背面を広範囲で露出させるようになっている。また、背板6の上部には、一定の間隔を空けて2本のピン6aが固定されており、この2本のピン6aがスライドガラスGに接触するようになっている。但し、この2本のピン6aがなく、背板6自身がスライドガラスGに接触するように構成しても構わない。
【0031】
3本の傾斜用ピン3a、3b、3cは、背板6にそれぞれ基端側が固定されたピンであって、背板6の2本のピン6aに一方の長辺が接触した状態でスライドガラスGを立掛け可能に支持すると共に、底板5の底面5aに対して長辺が所定角度θ1(例えば2°前後)だけ傾くようにスライドガラスGを傾斜させている。
具体的に説明すると、これら3本の傾斜用ピン3a、3b、3cは、ステンレス等の耐食性に優れた材料により形成された丸棒であり、背板6に直交する方向に向いた状態で該背板6に固定されている。また、3本の傾斜用ピン3a、3b、3cのうち1つの傾斜用ピン3aは、傾斜用ピン3bよりも底面5aから離間した位置に固定されている。これにより、上述したようにスライドガラスGを立掛けた際に、所定角度θ1だけ傾くようになっている。また、残り1本の傾斜用ピン3cは、背板6の上方側に固定されており、スライドガラスGの短辺に接触することで、傾いたスライドガラスGがずれないように抑えている役目を果たしている。
【0032】
また、2本の調整用ピン4a、4bは、底板5にそれぞれ基端側が固定されたピンであって、背板6の2本のピン6aと3本の傾斜用ピン3a、3b、3cとの間にスライドガラスGを立掛けた際に、スライドガラスGの表面が底板5の底面5aに直交する面に対して所定角度θ2(例えば20°前後)だけ傾くように立掛け角度を調整している。
具体的に説明すると、これら2本の調整用ピン4a、4bは、傾斜用ピン3a、3b、3cと同様にステンレス等の耐食性に優れた材料で形成された丸棒であり、底面5aに直交する方向に向いた状態で底板5に固定されている。スライドガラスGは、この2本の調整用ピン4a、4bに他方の長辺が接触することで、上述したように所定角度θ2だけ傾いた状態で立掛けられるようになっている。
【0033】
次に、このように構成された治具1を利用して、薄切片M及びスライドガラスGを乾燥させて薄切片標本を作製する場合について説明する。
始めに前作業として、作業者は包埋ブロックBから薄切された図2に示す薄切片Mを、水、お湯の上に順次浮かべて伸展(水伸展及びお湯伸展)させ、薄切時の皺やカールを除去する。次いで、この伸展がなされた薄切片Mを、図1に示すようにスライドガラスGで掬い取る。そして、この作業が終了した後、作業者は表面に薄切片Mが付いたスライドガラスGを図3から図5に示すように治具1に置く。そして、この治具1を図示しない乾燥室内に入れて、伸展時に薄切片M及びスライドガラスGに付着した水分Wを乾燥させる。これにより、薄切片標本を作製することができる。
【0034】
ところで、スライドガラスGを治具1に置く際に、支持フレーム2の背板6に3本の傾斜用ピン3a、3b、3cが固定されているので、従来のようにスライドガラスGを水平に置くのではなく、これら傾斜用ピン3a、3b、3cを利用してスライドガラスGを立掛けた状態で置くことができる。即ち、スライドガラスGの一方の長辺を背板6の2本のピン6aに接触させると共に、他方の長辺を傾斜用ピン3a、3bに接触させた状態で斜めに立掛けることができる。しかも、立掛けられたスライドガラスGは、これら傾斜用ピン3a、3b、3cによって所定角度θ1だけ傾いた状態となっている。これにより、スライドガラスGを斜めに傾けた状態で立掛けることができる。
また、立掛けられたスライドガラスGは、2本の調整用ピン4a、4bに他方の長辺が接触した状態となっている。そのためスライドガラスGは、傾斜用ピン3a、3bの上をずるずると滑って動いてしまうことがなく、スライドガラスGの表面が所定角度θ2だけ確実に傾くように立掛け角度が調整されている。
【0035】
このように、スライドガラスGを斜めに傾けた状態で立掛けることができるので、伸展時に薄切片M及びスライドガラスGに付着した水分Wが重力により流れて略1箇所に集まってくる。本実施形態の場合には、傾斜用ピン3bの近傍に集まってくる。そして、集まってきた水分Wは、水滴となった後、図3に示すようにこの傾斜用ピン3bを伝わって落下していく。特に、スライドガラスGと調整用ピン4a、4bとは点接触している状態であるので、水滴が伝わり易い。これにより、伸展時に付着した水分Wを積極的に排除することができ、自然に水切りすることができる。
従って、乾燥に費やす時間を極力低減することができ、従来に比べて乾燥時間を遥かに短縮することができる。その結果、スライドガラスG上に薄切片Mが固定された薄切片標本を効率良く作製することができる。
【0036】
次に、本発明に係る乾燥装置の一実施形態について、図6から12を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、上記実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の乾燥装置10は、図6から図9に示すように、治具1と、回収台11と、収納ケース12と、開閉シャッタ13と、温度調整手段14と、排出手段15とを備えている。
【0037】
回収台11は、開口の直径が漸次小さくなるように断面視略傘状に形成された回収体11aと、該回収体11aの開口を塞ぐと共に複数の治具1を載置する円盤状の載置板11bとを有しており、軸線L1回りに回転する軸体16に固定されている。載置板11bの上面には、複数の治具1が軸線L1回りに一定の間隔で固定されている。本実施形態では、10個の治具1が等間隔で載置板11bに固定されている場合を例に挙げている。また、載置板11bには、図示しない複数の貫通孔が形成されており、各治具1から落下してくる水分Wを、貫通孔を通して回収体11aに落下させている。また、回収体11aは、落下してきた水分Wを軸体16の近傍に集めている。
なお、本実施形態の乾燥装置10は、上記回収台11を2つ備えており、間隔を空けて軸体16に固定されている。即ち、上下2段の回収台11を備えている。
【0038】
上記収納ケース12は、金属材料により箱状に形成されたケースであり、2つの回収台11と軸体16の一部とを内部に収納した状態で、図示しない架台により基礎プレート17の上方に固定されている。また、収納ケース12の一側面には、スライドガラスGを出し入れするための2つの開口部12aが形成されている。この開口部12aは、2つの回収台11に載置された複数の治具1に対して、それぞれ対向するように形成されている。これにより、開口部12aを通して、2つの回収台11に載置された複数の治具1にスライドガラスGを置いたり、スライドガラスGを収納ケース12から取り出したりすることができるようになっている。
【0039】
上記開閉シャッタ13は、2つの開口部12aを一度に遮蔽できるサイズに形成されており、収納ケース12の外表面に沿ってスライド可能に取り付けられている。この開閉シャッタ13は、制御部18によって作動が制御されている。
上記軸体16は、軸線L1に沿って配された円柱状のシャフトであり、先端側が収納ケース12内に収納されていると共に基端側が収納ケース12の外側に突出している。軸体16の先端側には、上述したように2つの回収台11が間隔を空けて固定されている。また、軸体16の基端側は、制御部18に作動が制御され、基礎プレート17に取り付けられた基礎台19の内部に固定されたロータリーアクチュエータ等の駆動部20に連結されている。そして、軸体16は、この駆動部20が作動することで軸線L1回りに一定速度で回転するようになっている。また、この軸体16の回転に伴って2つの回収台11も一定速度で回転するようになっている。
【0040】
制御部18は、上述したように、開閉シャッタ13及び駆動部20の作動をそれぞれ制御している。この際、制御部18は、開閉シャッタ13を閉状態にして収納ケース12の2つの開口部12aを遮蔽させたときに、駆動部20を作動させて軸体16を一定速度で回転させるようにプログラミングされている。即ち、制御部18、駆動部20及び軸体16は、開閉シャッタ13が閉状態のときに、回収台11を一定速度で回転させる回転駆動手段21として機能している。
また、制御部18は、開閉シャッタ13を開状態にして収納ケース12の2つの開口部12aを露出させたときに治具1が開口部12aに対向した状態で停止するように、駆動部20を適宜作動させて治具1の位置を調整するようにもプログラミングされている。
【0041】
軸体16及び基礎台19の内部には、軸線L1に沿って排出管22が設けられている。この排出管22には、回収体11aが連結されており、回収体11aで集められた水分Wが排出管22に流れ込むようになっている。また、排出管22の基端側は、基礎プレート17に固定された排出継手23の凹部23a内に収納されている。これにより、排出管22内を流れた水分Wが排出継手23を介して外部に排出されるようになっている。即ち、排出管22及び排出継手23は、各回収台11で集められた水分Wを収納ケース12内から外部に排出させる排出手段15として機能している。
【0042】
また、収納ケース12内には、回収台11及び軸体16が収納されている第1空間E1と、これに隣接する第2空間E2とを間仕切る仕切板25が設けられている。第1空間E1内には、収納ケース12内の温度を測定する温度センサ26が取り付けられている。この温度センサ26は、測定した温度を制御部18に出力している。また、第2空間E2内には、収納ケース12内の空気を暖めるヒータ27が設けられている。このヒータ27は、制御部18によって発熱量が制御されている。そして、制御部18は、温度センサ26から送られてきた温度に基づいてヒータ27の発熱量を制御している。これにより、収納ケース12内の温度は、乾燥に最適な所定温度になるように常に温度調整されるようになっている。即ち、制御部18、ヒータ27及び温度センサ26は、収納ケース12内の温度を所定温度に調整する温度調整手段14として機能している。
【0043】
また、第1空間E1側の仕切板25には、合計6個のファン28が取り付けられている。この6個のファン28のうち上段に位置する3個は、ヒータ27によって温められた空気を上段の回収台11に向けて送風するファン28であり、下段に位置する3個は、ヒータ27によって暖められた空気を下段の回収台11に向けて送風するファン28である。
ここで、各回収台11の周囲は、仕切板25に固定された略コ形状のプレート29によって囲まれている。これにより、各ファン28によって送風された空気は、図6に示す矢印Rのように、各回収台11を通過して開口部12a付近まで一旦流れた後、収納ケース12の底面5aに向けて流れるように設計されている。また、収納ケース12の底面5aまで流れた空気は、仕切板25に形成された開口部25aを通過して第1空間E1に戻り、再度ヒータ27によって暖められるようになっている。
即ち、ファン28及び2枚のプレート29は、収納ケース12内の空気を予め設計された矢印Rの流れに沿って対流させる対流手段30として機能している。
【0044】
次に、このように構成された乾燥装置10を利用して、複数の薄切片M及びスライドガラスGを乾燥させて、複数の薄切片標本を作製する場合について説明する。なお、本実施形態では、ハンドロボット35を利用してスライドガラスGを出し入れする場合を例に挙げて説明する。
【0045】
始めに、このハンドロボット35について簡単に説明する。このハンドロボット35は、図10及び図11に示すように、スライドガラスGのフロスト部G1を把持する一対のハンド部36と、該一対のハンド部36の基端側を支持すると共に、一対のハンド部36を互いに接近或いは離間するように可動させるチャック部37と、該チャック部37の基端側を支持すると共に、該チャック部37を軸線L2回りに回転させる回転部38とを備えている。
【0046】
一対のハンド部36は、スライドガラスGに面接触する平坦な把持面36aが互いに対向するようにチャック部37に支持されている。チャック部37は、図示しないモータ等により一対のハンド部36をそれぞれ平行にスライド移動させている。これにより、一対のハンド部36は、把持面36aを対向させた状態のまま、互いに接近或いは離間するようになっている。また、チャック部37は、一対のハンド部36を接近させてスライドガラスGを把持する際に、一定の力で把持するように一対のハンド部36のスライド量をコントロールしている。
【0047】
回転部38は、チャック部37及び一対のハンド部36を軸線L2回りに回転させる図示しないモータを有している。これにより、把持したスライドガラスGを図11に示すように、水平にしたり、垂直にしたり、傾けたりできるようになっている。また、この回転部38は、図示しない移動アームの先端に固定されている。そのため、ハンドロボット35で把持されたスライドガラスGを自在に移動できるようになっている。
【0048】
次に、このように構成されたハンドロボット35を利用しながら、乾燥装置10で乾燥を行う場合について説明する。なお、初期状態として、開閉シャッタ13は閉じており、収納ケース12の2つの開口部12aは遮蔽された状態になっているものとする。また、温度調整手段14によって収納ケース12内の温度が乾燥に最適な所定温度に調整されているものとする。
【0049】
始めに前作業として、作業者は伸展がなされた薄切片MをスライドガラスGで掬い取った後、表面に薄切片Mが付いたスライドガラスGを図示しない乾燥前ケース内に複数枚収納しておく。すると、ハンドロボット35が移動アームによってこの乾燥前ケースまで移動されてくる。そして、ハンドロボット35は、チャック部37及び回転部38を適宜作動させながら、スライドガラスGのフロスト部G1を一対のハンド部36で挟み込んで把持する。移動アームは、ハンドロボット35がスライドガラスGを把持すると、該ハンドロボット35を収納ケース12の開口部12a付近まで移動させると共に、この位置でハンドロボット35を待機させる。また、この待機状態の間、ハンドロボット35は回転部38によりチャック部37及び一対のハンド部36を回転させて、図12に示すように、把持したスライドガラスGを垂直面に対して所定角度θ2だけ傾けた状態にしておく。
【0050】
ハンドロボット35が待機状態になると、制御部18は、開閉シャッタ13をスライド移動させて、収納ケース12の2つの開口部12aを露出させる。また、これと同時に駆動部20を作動させて軸体16を回転させ、回収台11に載置されている治具1を開口部12aに対向するように位置させる。
開口部12aが露出すると、移動アームは図13に示すようにハンドロボット35を移動させて、開口部12aを介して把持したスライドガラスGを収納ケース12内に搬入すると共に、治具1の傾斜用ピン3a、3b上に位置させる。この状態の後、チャック部37は一対のハンド部36を離間させて、スライドガラスGの把持を解く。すると、スライドガラスGは、重力によって落下した後、傾斜用ピン3a、3b、3cに支持されて姿勢が変化する。即ち、傾斜用ピン3a、3b、3cに倣って姿勢が変化するので、図3に示すように、所定角度θ1だけ傾いた状態になる。
【0051】
しかも、このスライドガラスGはハンドロボット35によって既に所定角度θ2だけ傾いているので、図5に示すように、背板6のピン6aに一方の長辺が接触すると共に調整用ピン4a、4bに他方の長辺が接触して、立掛けられた状態となる。また、移動アームは、ハンドロボット35がスライドガラスGを離して治具1に置くと、次のスライドガラスGを搬送するためにハンドロボット35を収納ケース12から再度乾燥前ケースに移動させる。そして、ハンドロボット35が次のスライドガラスGを把持すると、移動アームはハンドロボット35を開口部12aの近傍に再び移動させた後、この位置でハンドロボット35を待機させる。
【0052】
一方、制御部18は、最初のスライドガラスGが治具1に置かれてハンドロボット35が収納ケース12内から退出すると、開閉シャッタ13をスライド移動させて2つの開口部12aを遮蔽させる。また、制御部18は、開閉シャッタ13を閉じると同時に駆動部20を作動させて回収台11を軸線L1回りに一定速度で回転させると共に、ファン28を作動させて収納ケース12内の空気を対流させる。
これにより、ほぼ密閉された収納ケース12内で、治具1に置かれたスライドガラスGの乾燥を行うことができる。特に、収納ケース12内は、温度調整手段14によって乾燥に最適な温度に調整されているので、伸展時に薄切片M及びスライドガラスGに付着した水分Wを蒸発させて乾燥させることができる。しかも、スライドガラスGは、治具1に置かれているので、付着した水分Wを積極的に排除して水切りすることができる。そのため、短時間で効率良く乾燥させることができる。
【0053】
特に、収納ケース12内では、温度調整された空気が自然任せに対流しているのではなく、ファン28及びプレート29からなる対流手段30によって決められた矢印Rの流れに沿って対流している。従って、スライドガラスG及び薄切片Mに対して温度調整された空気を積極的に当てることができ、より効率良く乾燥を行うことができる。
【0054】
また、治具1によって水切りされた水分Wは、載置板11bの貫通孔を介して回収体11aに落下する。落下した水分Wは、回収体11aに沿って流れて軸体16の近傍に集まった後、排出管22に流れ込む。そして、流れ込んだ水分Wは、排出管22を流れた後、排出継手23を介して収納ケース12の外部に排出される。このように、スライドガラスGから排除した水分Wを収納ケース12の外部に排出できるので、この水分Wが収納ケース12内で蒸発することがない。従って、薄切片M及びスライドガラスGの乾燥に影響がおよぶことを防止することができる。また、収納ケース12内を清潔に保つことができるので、高品質な薄切片標本を作製することができる。
【0055】
また、本実施形態の乾燥装置10は、複数の治具1を備えているので、複数枚のスライドガラスGを効率良く同時に乾燥させることができる。
つまり、上述したように、ハンドロボット35が次のスライドガラスGを把持した状態で開口部12aの近傍に待機した状態になると、制御部18は、軸体16の回転を一旦停止させると共に、まだスライドガラスGが置かれていない治具1を開口部12aに対向させるように駆動部20を制御する。また、制御部18は、これと同時に開閉シャッタ13をスライド移動させて、開口部12aを露出させる。すると、移動アーム及びハンドロボット35は、上述した動作を再度繰り返して、次のスライドガラスGを治具1に置く。その結果、2枚のスライドガラスGを治具1に置くことができ、同時に乾燥を行うことができる。
【0056】
また、この動作を複数回繰り返すことで、回収台11に載置されている全ての治具1にスライドガラスGを置くことができる。また、上段の回収台11に載置されている全ての治具1にスライドガラスGを置いた後は、下段の回収台11に載置されている治具1に順次スライドガラスGを置く。このように、本実施形態の乾燥装置10によれば、回収台11を2つ備えているので、一度に多くのスライドガラスGを乾燥させることができ、効率良く多数の薄切片標本を作製することができる。
【0057】
また、回収台11は、開閉シャッタ13が閉じているときに軸体16と共に回転している。そのため、仮に収納ケース12内の空気に温度の偏りがあったとしても、これらに影響されることなく、各スライドガラスGを均等の条件で乾燥させることができる。従って、全てのスライドガラスGを同じ条件で乾燥させることができ、同じ品質の薄切片標本を確実に作製することができる。特に、回収台11を回転させることで、複数のスライドガラスG及び薄切片に対して温度調整された空気を積極的に当てることができるので、乾燥を効率良く行うことができる。しかも、収納ケース12内の空気は、上述したように対流手段30によって対流しているので、この対流による効果と回収台11の回転による効果とを相乗させることができ、短時間で確実に乾燥させることができる。
【0058】
なお、乾燥が終了して薄切片標本となったスライドガラスGは、搬入時と同様に、移動アーム及びハンドロボット35によって、収納ケース12内から取り出される。そして、取り出されたスライドガラスGは、図示しない保管ケース内に次々と保管される。従って、作業者の手を煩わすことなく、乾燥工程を自動的に行って多数の薄切片標本を作製することができる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、収納ケース12内に回収台11を2つ備えた乾燥装置10を例に挙げたが、回収台11は1つでも構わないし、3つ以上備えても構わない。また、ハンドロボット35を利用してスライドガラスGの出し入れを行った場合を例にしたが、作業者が手動でスライドガラスGを出し入れしても構わない。但し、本実施形態のようにハンドロボット35を利用することで、伸展が終了した後のスライドガラスGを乾燥前ケースに収納しておくだけで、自動的に乾燥が終了した薄切片標本が保管ケース内にストックされるので、作業者にかかる負担を極力低減することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、傾斜角度θ1及び立掛け角度θ2が予め決められた角度になるように治具1を構成したが、傾斜角度θ1及び立掛け角度θ2を自在に調整できるように治具1を構成しても構わない。
例えば、図14に示すように、支持フレーム2の背板6にスライド溝6bを形成し、該スライド溝6bに沿って傾斜用ピン3aが移動可能となるように構成しても構わない。このように構成することで、スライドガラスGの大きさや薄切片Mの大きさ、或いは、伸展時に付着した水分W量等に応じて、スライドガラスGの傾斜角度θ1を任意の角度に調整することができる。従って、状況に応じてより効率良く水分Wを水切りすることができ、乾燥時間の短縮化に繋げることができる。
【0062】
また、図15及び図16に示すように、支持フレーム2の底板5にスライド溝5bを形成し、該スライド溝5bに沿って調整用ピン4a、4bが移動可能となるように構成しても構わない。このように構成することで、スライドガラスGの立掛け角度θ2を任意の角度に調整することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る基板乾燥用支持体に置かれて乾燥される薄切片付のスライドガラスの斜視図である。
【図2】図1に示す薄切片が包埋ブロックから作製される状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る基板乾燥用支持体の一実施形態を示す正面図であって、スライドガラスが置かれた状態の図である。
【図4】図3に示す基板乾燥用支持体の上面図である。
【図5】図3に示す基板乾燥用支持体の側面図である。
【図6】本発明に係る乾燥装置の一実施形態を示す断面図である。
【図7】図6に示す乾燥装置の断面矢視A−A図である。
【図8】図7に示す乾燥装置の断面矢視B−B図である。
【図9】図8に示す乾燥装置の断面矢視C−C図である。
【図10】図6に示す乾燥装置内にスライドガラスを出し入れするハンドロボットを上面図である。
【図11】図10に示すハンドロボットの側面図である。
【図12】図10に示すハンドロボットで把持されたスライドガラスが軸線回りに回転している状態を示す図である。
【図13】図10に示すハンドロボットを利用してスライドガラスを収納ケース内に搬入している状態を示す図である。
【図14】本発明に係る基板乾燥用支持体の変形例を示す図である。
【図15】本発明に係る基板乾燥用支持体の更に別の変形例を示す図である。
【図16】図15に示す基板乾燥用支持体の側面図である。
【符号の説明】
【0064】
G スライドガラス(基板)
M 薄切片
W 水分
1 治具(基板乾燥用支持体)
2 支持フレーム
3a、3b、3c 傾斜用ピン
4a、4b 調整用ピン
5 支持フレームの底板
5a 底板の底面
6 支持フレームの背板
10 乾燥装置
11 回収台
12 収納ケース
12a 収納ケースの開口部
13 開閉シャッタ
14 温度調整手段
15 排出手段
21 回転駆動手段
30 対流手段
【技術分野】
【0001】
本発明は、理化学実験や顕微鏡観察等に用いられる薄切片標本を作製する際に使用されるもので、特に包埋ブロックから薄切された薄切片を伸展させて基板上に掬い取った後、該基板を乾燥させる際に用いられる基板乾燥用支持体、及び、該基板乾燥用支持体を有する乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、理化学実験や顕微鏡観察に用いられる薄切片標本を作製する装置として、ミクロトームが一般的に知られている。この薄切片標本は、厚さが数μm(例えば、3μm〜5μm)の薄切片を、スライドガラス等の基板上に固定させたものである。ここで、ミクロトームを利用して薄切片試料を作製する一般的な方法について説明する。
【0003】
まず、ホルマリン固定された生物や動物等の生体試料をパラフィン置換した後、更に周囲をパラフィンで固めて強固にして、ブロック状態の包埋ブロックを作製する。次に、この包埋ブロックを専用の薄切り装置であるミクロトームにセットして、粗削りを行う。この粗削りによって、包埋ブロックの表面が平滑面となると共に、実験や観察の対象物である包埋された生体試料が表面に露出した状態となる。
【0004】
粗削りが終了した後、本削りを行う。これは、ミクロトームが有する切断刃により、包埋ブロックを上述した厚みで極薄にスライスする工程である。これにより、薄切片を得ることができる。この際、包埋ブロックを可能な限り薄くスライスすることで、薄切片の厚みを細胞レベルの厚みに近付けることができるので、より正確な観察データを得ることができる。よって、可能な限り厚さが薄い薄切片を作製することが求められている。
【0005】
次いで、本削りによって得られた薄切片を伸展させる伸展工程を行う。つまり、本削りによって作製された薄切片は、上述したように極薄の厚みでスライスされたものであるので、皺がついた状態や、丸まった状態(例えば、Uの字状)となってしまう。そこで、この伸展工程によって、皺や丸みを取って伸ばす必要がある。
一般的には、水とお湯を利用して伸展させている。始めに、本削りによって得られた薄切片を水に浮かべる。これにより、生体試料を包埋しているパラフィン同士のくっつきを防止しながら、薄切片の大きな皺や丸みを取ることができる。その後、薄切片をお湯に浮かべる。これにより、薄切片が伸び易くなるので、水による伸展では取りきれなかった残りの皺や丸みを取ることができる。
【0006】
そして、お湯による伸展が終了した薄切片をスライドガラス等の基板で掬って該基板上に載置する。なお、この時点で仮に伸展が不十分であった場合には、基板ごとホットプレート等に乗せてさらに熱を加える。これにより、薄切片をより伸展させることができる。
最後に、薄切片を乗せた基板を乾燥器内に入れて乾燥させる。この乾燥により、伸展で付着した水分が蒸発すると共に、薄切片が基板上に固定される。その結果、薄切片標本を作製することができる。
【0007】
ところで、上述した工程のほとんどが高度な技術や経験を要するものであるため、一般には熟練した作業者が手作業で対応している。しかしながら、近年では作業者の負担を少しでも軽減するために、上述した工程の一部分を自動で行う薄切片試料作製装置が提供されている(例えば、特許文献1参照)。この薄切片試料作製装置によれば、作業者の負担を軽減することができると共に、作業者による人為的なミスもなくすことができ、良好な薄切片標本を作製することができる。
【特許文献1】特開2004−28910号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1記載の薄切片試料作製装置では、まだ以下の課題が残されていた。
即ち、この薄切片試料作製装置は、予めセットされた包埋ブロックから薄切片を作製すると共に伸展後の薄切片をスライドガラス上に固定させ、その後、ヒータや赤外線等を利用して薄切片及びスライドガラスの乾燥を自動的に行うことができる装置であるが、効率良く乾燥を行うことができるものではなかった。つまりこの装置は、薄切片及びスライドガラスに付着した水分を乾燥させる際に、該スライドガラスを水平に置いた状態で乾燥を行っている。そのため、水分がスライドガラス上に溜まったままの状態になってしまうものであった。従って、乾燥時にはこの水分が蒸発するのをただ待つしかなく、乾燥させるのに非常に時間がかかるものであった。
【0009】
本発明は、このような事情に考慮してなされたもので、その目的は、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分を積極的に排除することができ、乾燥に費やす時間を極力低減させて効率良く薄切片標本を作製することができる基板乾燥用支持体、及び、該基板乾燥用支持体を有する乾燥装置に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、前記課題を解決するために以下の手段を提供する。
本発明に係る基板乾燥用支持体は、液体上に浮かべることで伸展がなされた薄切片が表面に掬い取られた矩形状の基板を支持する基板乾燥用支持体であって、底板と、該底板の一端側から底板の底面に直交する方向に延びた背板とからなる断面L型の支持フレームと、前記背板に基端側が固定され、背板に長辺が接触した状態で前記基板を立掛け可能に支持すると共に、前記底板の底面に対して長辺が所定角度傾くように基板を傾斜させる複数の傾斜用ピンと、前記底板に基端側が固定され、前記背板と前記傾斜用ピンとの間に前記基板を立掛けた際に、基板の表面が前記底板の底面に直交する面に対して所定角度傾くように立掛け角度を調整する複数の調整用ピンと、を備え、前記複数の傾斜用ピン又は前記複数の調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンが、前記伸展時に付着した水分を自身のピンを伝わらせて落下させて前記基板から排除することを特徴とするものである。
【0011】
この発明に係る基板乾燥用支持体においては、基板及び薄切片を乾燥させる際に、伸展時に付着した水分を基板から積極的に排除することができる。始めに前作業として、作業者は、生体試料が包埋材に包埋された包埋ブロックから薄切された薄切片を水やお湯等の液体上に浮かべて伸展させた後、この伸展がなされた薄切片を基板で掬い取る。そしてこの作業が終了した後、作業者は表面に薄切片が付いた基板を基板乾燥用支持体に置いて、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分を乾燥させる。
【0012】
ここで、支持フレームの背板には、複数の傾斜用ピンが固定されているので、従来のように基板を水平に置くのではなく、これら傾斜用ピンを利用して基板を立掛けた状態で置くことができる。即ち、基板の一方の長辺を背板に接触させると共に、他方の長辺を傾斜用ピンに接触させた状態で斜めに立掛けることができる。しかも、立掛けられた基板は、これら傾斜用ピンによって、基板の長辺が支持フレームの底板の底面に対して所定角度傾いた状態となっている。つまり、基板を斜めに傾けた状態で立掛けることができる。また、立掛けられた基板は、支持フレームの底板に固定された複数の調整用ピンに他方の長辺が接触した状態となっている。そのため基板は、傾斜用ピンの上をずるずると滑って動いてしまうことがなく、基板の表面が底板の底面に直交する面に対して所定角度だけ傾くように立掛け角度が調整されている。
【0013】
このように基板を斜めに傾けた状態で立掛けることができるので、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分が重力により流れて略1箇所に集まってくる。そして、集まってきた水分は、複数の傾斜用ピン又は調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンを伝わって落下していく。これにより、伸展時に付着した水分を積極的に排除することができ、自然に水切りすることができる。従って、乾燥に費やす時間を極力低減することができ、従来に比べて乾燥時間を遥かに短縮することができる。その結果、基板上に薄切片が固定された薄切片標本を効率良く作製することができる。
【0014】
また、本発明に係る基板乾燥用支持体は、上記本発明の基板乾燥用支持体において、前記傾斜用ピンが、前記背板に対して移動可能に固定され、前記傾斜角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とするものである。
【0015】
この発明に係る基板乾燥用支持体においては、基板の大きさや薄切片の大きさ、或いは、伸展時に付着した水分量等に応じて、立掛け角度を変更せずに基板の傾斜角度を任意の角度に調整することができる。従って、状況に応じて効率良く水分を水切りすることができ、乾燥時間の短縮化に繋げることができる。
【0016】
また、本発明に係る基板乾燥用支持体は、上記本発明の基板乾燥用支持体において、前記調整用ピンが、前記底板に対して移動可能に固定され、前記立掛け角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とするものである。
【0017】
この発明に係る基板乾燥用支持体においては、基板の大きさや薄切片の大きさ、或いは、伸展時に付着した水分量等に応じて、傾斜角度を変更せずに基板の立掛け角度を任意の角度に調整することができる。従って、状況に応じて効率良く水分を水切りすることができ、乾燥時間の短縮化に繋げることができる。
【0018】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明のいずれかの基板乾燥用支持体と、該基板乾燥用支持体を複数載置すると共に、各基板乾燥用支持体から排除された前記水分を回収して集める回収台と、前記基板を出し入れ可能な開口部を有し、前記回収台を内部に収納する収納ケースと、前記開口部を開閉する開閉シャッタと、前記収納ケース内に設けられ、該収納ケース内の温度を所定温度に調整する温度調整手段と、前記回収台で集められた前記水分を、前記収納ケース内から外部に排出させる排出手段と、を備えていることを特徴とするものである。
【0019】
この発明に係る乾燥装置においては、基板の乾燥を行う際に、まず開閉シャッタを空けて収納ケースの開口部を開けた状態にする。そして、この開口部を通して回収台に複数載置された基板乾燥用支持体に基板を置いた後、開閉シャッタを閉める。そして、温度調整手段により収納ケースの温度を、乾燥に最適な所定温度に調整する。これにより、基板乾燥用支持体に置かれた薄切片及び基板に付着した水分を蒸発させて乾燥させることができる。しかも、付着した水分を積極的に排除して水切りすることができる基板乾燥用支持体を有しているので、短時間で効率良く乾燥させることができる。加えて、回収台には複数の基板乾燥用支持台が載置されているので、一度に複数の基板を乾燥することができる。
【0020】
また、各基板乾燥用支持体によって排除された水分は、回収台に落下した後、該回収台によって集められる。そして、集まられた水分は、排出手段によって収納ケース内から外部に排出される。これにより、排除された水分が収納ケース内で蒸発することがないので、乾燥に影響がおよぶことを防止することができる。また、収納ケース内を清潔に保つことができ、高品質な薄切片標本を得ることができる。
【0021】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明の乾燥装置において、前記収納ケース内の空気を決められた流れに沿って対流させる対流手段を備えていることを特徴とするものである。
【0022】
この発明に係る乾燥装置においては、温度調整手段によって温度調整された空気を自然任せに対流させるのではなく、対流手段によって予め決められた流れに沿って対流させることができる。従って、基板及び薄切片に対して温度調整された空気を積極的に当てることができ、さらに効率良く乾燥を行うことができる。
【0023】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明の乾燥装置において、前記回収台を回転させる回転駆動手段を備えていることを特徴とするものである。
【0024】
この発明に係る乾燥装置においては、基板の乾燥を行っている際に、回転駆動手段が回収台を回転させるので、仮に収納ケース内の空気に温度の偏りがあったとしても、これらに影響されることなく各基板を均等の条件で乾燥させることができる。従って、全ての基板を同じ条件で乾燥させることができ、作製した薄切片標本の品質を揃えることができる。特に、回収台を回転させることで、基板及び薄切片に対して温度調整された空気を積極的に当てることができるので、より効率良く乾燥を行うことができる。
【0025】
また、本発明に係る乾燥装置は、上記本発明のいずれかの乾燥装置において、前記回収台が、前記収納ケース内に複数設けられていることを特徴とするものである。
【0026】
この発明に係る乾燥装置においては、複数の基板乾燥用支持体が載置された回収台が収納ケース内に複数設けられているので、さらに多くの基板を一度に乾燥させることができる。従って、より効率良く乾燥を行って薄切片標本を得ることができる。
【発明の効果】
【0027】
本発明に係る基板乾燥用支持体によれば、伸展時に薄切片及び基板に付着した水分を積極的に排除して水切りすることができ、乾燥に費やす時間を極力低減することができる。
また、本発明に係る乾燥装置によれば、積極的に水分を排除して水切りすることができる基板乾燥用支持体を備えているので、短時間で効率良く乾燥を行って、薄切片標本とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明に係る基板乾燥用支持体の一実施形態を、図1から図5を参照して説明する。この治具(基板乾燥用支持体)1は、水やお湯等の図示しない液体上に浮かべることで伸展がなされた薄切片Mが表面に掬い取られた図1に示すスライドガラス(矩形状の基板)Gを支持するものである。また、この治具1にスライドガラスGを支持した状態で、伸展時に付着した水分Wを乾燥させる乾燥工程を行うことで、薄切片標本が作製される。
【0029】
始めに、薄切片Mについて簡単に説明する。この薄切片Mは、図2に示すように、生体試料Sが包埋材Nによって包埋された包埋ブロックBを図示しない切断刃によって例えば、3μm〜5μmの極薄に薄切されたものである。なお、包埋ブロックBは、ホルマリン固定された生体試料S内の水分をパラフィン置換した後、さらに周囲をパラフィン等の包埋剤Nによってブロック状に固めたものである。これにより、生体試料Sがパラフィン内に包埋された状態となっている。また、生体試料Sとしては、例えば、人体や実験動物等から取り出した臓器等の組織であり、医療分野、製薬分野、食品分野、生物分野等で適時選択されるものである。
また、伸展された薄切片Mは、図1に示すようにスライドガラスGの略中央付近に掬い取られてくっついた状態となっている。なお、スライドガラスGの一端側は、文字等を書き込むことができるフロスト部G1となっている。
【0030】
本実施形態の治具1は、図3から図5に示すように、支持フレーム2と、3つの傾斜用ピン3a、3b、3cと、2つの調整用ピン4a、4bとから構成されている。
支持フレーム2は、平面視略コ形状に形成された底板5と、該底板5の一端側から底板5の底面5aに直交する方向(図3に示す矢印Z方向)に延びた背板6とからなる断面L型のフレームである。
なお、本実施形態の背板6は、中央部分が大きく空いた状態で形成されており、スライドガラスGを立掛けた際にスライドガラスGの背面を広範囲で露出させるようになっている。また、背板6の上部には、一定の間隔を空けて2本のピン6aが固定されており、この2本のピン6aがスライドガラスGに接触するようになっている。但し、この2本のピン6aがなく、背板6自身がスライドガラスGに接触するように構成しても構わない。
【0031】
3本の傾斜用ピン3a、3b、3cは、背板6にそれぞれ基端側が固定されたピンであって、背板6の2本のピン6aに一方の長辺が接触した状態でスライドガラスGを立掛け可能に支持すると共に、底板5の底面5aに対して長辺が所定角度θ1(例えば2°前後)だけ傾くようにスライドガラスGを傾斜させている。
具体的に説明すると、これら3本の傾斜用ピン3a、3b、3cは、ステンレス等の耐食性に優れた材料により形成された丸棒であり、背板6に直交する方向に向いた状態で該背板6に固定されている。また、3本の傾斜用ピン3a、3b、3cのうち1つの傾斜用ピン3aは、傾斜用ピン3bよりも底面5aから離間した位置に固定されている。これにより、上述したようにスライドガラスGを立掛けた際に、所定角度θ1だけ傾くようになっている。また、残り1本の傾斜用ピン3cは、背板6の上方側に固定されており、スライドガラスGの短辺に接触することで、傾いたスライドガラスGがずれないように抑えている役目を果たしている。
【0032】
また、2本の調整用ピン4a、4bは、底板5にそれぞれ基端側が固定されたピンであって、背板6の2本のピン6aと3本の傾斜用ピン3a、3b、3cとの間にスライドガラスGを立掛けた際に、スライドガラスGの表面が底板5の底面5aに直交する面に対して所定角度θ2(例えば20°前後)だけ傾くように立掛け角度を調整している。
具体的に説明すると、これら2本の調整用ピン4a、4bは、傾斜用ピン3a、3b、3cと同様にステンレス等の耐食性に優れた材料で形成された丸棒であり、底面5aに直交する方向に向いた状態で底板5に固定されている。スライドガラスGは、この2本の調整用ピン4a、4bに他方の長辺が接触することで、上述したように所定角度θ2だけ傾いた状態で立掛けられるようになっている。
【0033】
次に、このように構成された治具1を利用して、薄切片M及びスライドガラスGを乾燥させて薄切片標本を作製する場合について説明する。
始めに前作業として、作業者は包埋ブロックBから薄切された図2に示す薄切片Mを、水、お湯の上に順次浮かべて伸展(水伸展及びお湯伸展)させ、薄切時の皺やカールを除去する。次いで、この伸展がなされた薄切片Mを、図1に示すようにスライドガラスGで掬い取る。そして、この作業が終了した後、作業者は表面に薄切片Mが付いたスライドガラスGを図3から図5に示すように治具1に置く。そして、この治具1を図示しない乾燥室内に入れて、伸展時に薄切片M及びスライドガラスGに付着した水分Wを乾燥させる。これにより、薄切片標本を作製することができる。
【0034】
ところで、スライドガラスGを治具1に置く際に、支持フレーム2の背板6に3本の傾斜用ピン3a、3b、3cが固定されているので、従来のようにスライドガラスGを水平に置くのではなく、これら傾斜用ピン3a、3b、3cを利用してスライドガラスGを立掛けた状態で置くことができる。即ち、スライドガラスGの一方の長辺を背板6の2本のピン6aに接触させると共に、他方の長辺を傾斜用ピン3a、3bに接触させた状態で斜めに立掛けることができる。しかも、立掛けられたスライドガラスGは、これら傾斜用ピン3a、3b、3cによって所定角度θ1だけ傾いた状態となっている。これにより、スライドガラスGを斜めに傾けた状態で立掛けることができる。
また、立掛けられたスライドガラスGは、2本の調整用ピン4a、4bに他方の長辺が接触した状態となっている。そのためスライドガラスGは、傾斜用ピン3a、3bの上をずるずると滑って動いてしまうことがなく、スライドガラスGの表面が所定角度θ2だけ確実に傾くように立掛け角度が調整されている。
【0035】
このように、スライドガラスGを斜めに傾けた状態で立掛けることができるので、伸展時に薄切片M及びスライドガラスGに付着した水分Wが重力により流れて略1箇所に集まってくる。本実施形態の場合には、傾斜用ピン3bの近傍に集まってくる。そして、集まってきた水分Wは、水滴となった後、図3に示すようにこの傾斜用ピン3bを伝わって落下していく。特に、スライドガラスGと調整用ピン4a、4bとは点接触している状態であるので、水滴が伝わり易い。これにより、伸展時に付着した水分Wを積極的に排除することができ、自然に水切りすることができる。
従って、乾燥に費やす時間を極力低減することができ、従来に比べて乾燥時間を遥かに短縮することができる。その結果、スライドガラスG上に薄切片Mが固定された薄切片標本を効率良く作製することができる。
【0036】
次に、本発明に係る乾燥装置の一実施形態について、図6から12を参照しながら説明する。なお、本実施形態においては、上記実施形態における構成要素と同一の部分については、同一の符号を付しその説明を省略する。
本実施形態の乾燥装置10は、図6から図9に示すように、治具1と、回収台11と、収納ケース12と、開閉シャッタ13と、温度調整手段14と、排出手段15とを備えている。
【0037】
回収台11は、開口の直径が漸次小さくなるように断面視略傘状に形成された回収体11aと、該回収体11aの開口を塞ぐと共に複数の治具1を載置する円盤状の載置板11bとを有しており、軸線L1回りに回転する軸体16に固定されている。載置板11bの上面には、複数の治具1が軸線L1回りに一定の間隔で固定されている。本実施形態では、10個の治具1が等間隔で載置板11bに固定されている場合を例に挙げている。また、載置板11bには、図示しない複数の貫通孔が形成されており、各治具1から落下してくる水分Wを、貫通孔を通して回収体11aに落下させている。また、回収体11aは、落下してきた水分Wを軸体16の近傍に集めている。
なお、本実施形態の乾燥装置10は、上記回収台11を2つ備えており、間隔を空けて軸体16に固定されている。即ち、上下2段の回収台11を備えている。
【0038】
上記収納ケース12は、金属材料により箱状に形成されたケースであり、2つの回収台11と軸体16の一部とを内部に収納した状態で、図示しない架台により基礎プレート17の上方に固定されている。また、収納ケース12の一側面には、スライドガラスGを出し入れするための2つの開口部12aが形成されている。この開口部12aは、2つの回収台11に載置された複数の治具1に対して、それぞれ対向するように形成されている。これにより、開口部12aを通して、2つの回収台11に載置された複数の治具1にスライドガラスGを置いたり、スライドガラスGを収納ケース12から取り出したりすることができるようになっている。
【0039】
上記開閉シャッタ13は、2つの開口部12aを一度に遮蔽できるサイズに形成されており、収納ケース12の外表面に沿ってスライド可能に取り付けられている。この開閉シャッタ13は、制御部18によって作動が制御されている。
上記軸体16は、軸線L1に沿って配された円柱状のシャフトであり、先端側が収納ケース12内に収納されていると共に基端側が収納ケース12の外側に突出している。軸体16の先端側には、上述したように2つの回収台11が間隔を空けて固定されている。また、軸体16の基端側は、制御部18に作動が制御され、基礎プレート17に取り付けられた基礎台19の内部に固定されたロータリーアクチュエータ等の駆動部20に連結されている。そして、軸体16は、この駆動部20が作動することで軸線L1回りに一定速度で回転するようになっている。また、この軸体16の回転に伴って2つの回収台11も一定速度で回転するようになっている。
【0040】
制御部18は、上述したように、開閉シャッタ13及び駆動部20の作動をそれぞれ制御している。この際、制御部18は、開閉シャッタ13を閉状態にして収納ケース12の2つの開口部12aを遮蔽させたときに、駆動部20を作動させて軸体16を一定速度で回転させるようにプログラミングされている。即ち、制御部18、駆動部20及び軸体16は、開閉シャッタ13が閉状態のときに、回収台11を一定速度で回転させる回転駆動手段21として機能している。
また、制御部18は、開閉シャッタ13を開状態にして収納ケース12の2つの開口部12aを露出させたときに治具1が開口部12aに対向した状態で停止するように、駆動部20を適宜作動させて治具1の位置を調整するようにもプログラミングされている。
【0041】
軸体16及び基礎台19の内部には、軸線L1に沿って排出管22が設けられている。この排出管22には、回収体11aが連結されており、回収体11aで集められた水分Wが排出管22に流れ込むようになっている。また、排出管22の基端側は、基礎プレート17に固定された排出継手23の凹部23a内に収納されている。これにより、排出管22内を流れた水分Wが排出継手23を介して外部に排出されるようになっている。即ち、排出管22及び排出継手23は、各回収台11で集められた水分Wを収納ケース12内から外部に排出させる排出手段15として機能している。
【0042】
また、収納ケース12内には、回収台11及び軸体16が収納されている第1空間E1と、これに隣接する第2空間E2とを間仕切る仕切板25が設けられている。第1空間E1内には、収納ケース12内の温度を測定する温度センサ26が取り付けられている。この温度センサ26は、測定した温度を制御部18に出力している。また、第2空間E2内には、収納ケース12内の空気を暖めるヒータ27が設けられている。このヒータ27は、制御部18によって発熱量が制御されている。そして、制御部18は、温度センサ26から送られてきた温度に基づいてヒータ27の発熱量を制御している。これにより、収納ケース12内の温度は、乾燥に最適な所定温度になるように常に温度調整されるようになっている。即ち、制御部18、ヒータ27及び温度センサ26は、収納ケース12内の温度を所定温度に調整する温度調整手段14として機能している。
【0043】
また、第1空間E1側の仕切板25には、合計6個のファン28が取り付けられている。この6個のファン28のうち上段に位置する3個は、ヒータ27によって温められた空気を上段の回収台11に向けて送風するファン28であり、下段に位置する3個は、ヒータ27によって暖められた空気を下段の回収台11に向けて送風するファン28である。
ここで、各回収台11の周囲は、仕切板25に固定された略コ形状のプレート29によって囲まれている。これにより、各ファン28によって送風された空気は、図6に示す矢印Rのように、各回収台11を通過して開口部12a付近まで一旦流れた後、収納ケース12の底面5aに向けて流れるように設計されている。また、収納ケース12の底面5aまで流れた空気は、仕切板25に形成された開口部25aを通過して第1空間E1に戻り、再度ヒータ27によって暖められるようになっている。
即ち、ファン28及び2枚のプレート29は、収納ケース12内の空気を予め設計された矢印Rの流れに沿って対流させる対流手段30として機能している。
【0044】
次に、このように構成された乾燥装置10を利用して、複数の薄切片M及びスライドガラスGを乾燥させて、複数の薄切片標本を作製する場合について説明する。なお、本実施形態では、ハンドロボット35を利用してスライドガラスGを出し入れする場合を例に挙げて説明する。
【0045】
始めに、このハンドロボット35について簡単に説明する。このハンドロボット35は、図10及び図11に示すように、スライドガラスGのフロスト部G1を把持する一対のハンド部36と、該一対のハンド部36の基端側を支持すると共に、一対のハンド部36を互いに接近或いは離間するように可動させるチャック部37と、該チャック部37の基端側を支持すると共に、該チャック部37を軸線L2回りに回転させる回転部38とを備えている。
【0046】
一対のハンド部36は、スライドガラスGに面接触する平坦な把持面36aが互いに対向するようにチャック部37に支持されている。チャック部37は、図示しないモータ等により一対のハンド部36をそれぞれ平行にスライド移動させている。これにより、一対のハンド部36は、把持面36aを対向させた状態のまま、互いに接近或いは離間するようになっている。また、チャック部37は、一対のハンド部36を接近させてスライドガラスGを把持する際に、一定の力で把持するように一対のハンド部36のスライド量をコントロールしている。
【0047】
回転部38は、チャック部37及び一対のハンド部36を軸線L2回りに回転させる図示しないモータを有している。これにより、把持したスライドガラスGを図11に示すように、水平にしたり、垂直にしたり、傾けたりできるようになっている。また、この回転部38は、図示しない移動アームの先端に固定されている。そのため、ハンドロボット35で把持されたスライドガラスGを自在に移動できるようになっている。
【0048】
次に、このように構成されたハンドロボット35を利用しながら、乾燥装置10で乾燥を行う場合について説明する。なお、初期状態として、開閉シャッタ13は閉じており、収納ケース12の2つの開口部12aは遮蔽された状態になっているものとする。また、温度調整手段14によって収納ケース12内の温度が乾燥に最適な所定温度に調整されているものとする。
【0049】
始めに前作業として、作業者は伸展がなされた薄切片MをスライドガラスGで掬い取った後、表面に薄切片Mが付いたスライドガラスGを図示しない乾燥前ケース内に複数枚収納しておく。すると、ハンドロボット35が移動アームによってこの乾燥前ケースまで移動されてくる。そして、ハンドロボット35は、チャック部37及び回転部38を適宜作動させながら、スライドガラスGのフロスト部G1を一対のハンド部36で挟み込んで把持する。移動アームは、ハンドロボット35がスライドガラスGを把持すると、該ハンドロボット35を収納ケース12の開口部12a付近まで移動させると共に、この位置でハンドロボット35を待機させる。また、この待機状態の間、ハンドロボット35は回転部38によりチャック部37及び一対のハンド部36を回転させて、図12に示すように、把持したスライドガラスGを垂直面に対して所定角度θ2だけ傾けた状態にしておく。
【0050】
ハンドロボット35が待機状態になると、制御部18は、開閉シャッタ13をスライド移動させて、収納ケース12の2つの開口部12aを露出させる。また、これと同時に駆動部20を作動させて軸体16を回転させ、回収台11に載置されている治具1を開口部12aに対向するように位置させる。
開口部12aが露出すると、移動アームは図13に示すようにハンドロボット35を移動させて、開口部12aを介して把持したスライドガラスGを収納ケース12内に搬入すると共に、治具1の傾斜用ピン3a、3b上に位置させる。この状態の後、チャック部37は一対のハンド部36を離間させて、スライドガラスGの把持を解く。すると、スライドガラスGは、重力によって落下した後、傾斜用ピン3a、3b、3cに支持されて姿勢が変化する。即ち、傾斜用ピン3a、3b、3cに倣って姿勢が変化するので、図3に示すように、所定角度θ1だけ傾いた状態になる。
【0051】
しかも、このスライドガラスGはハンドロボット35によって既に所定角度θ2だけ傾いているので、図5に示すように、背板6のピン6aに一方の長辺が接触すると共に調整用ピン4a、4bに他方の長辺が接触して、立掛けられた状態となる。また、移動アームは、ハンドロボット35がスライドガラスGを離して治具1に置くと、次のスライドガラスGを搬送するためにハンドロボット35を収納ケース12から再度乾燥前ケースに移動させる。そして、ハンドロボット35が次のスライドガラスGを把持すると、移動アームはハンドロボット35を開口部12aの近傍に再び移動させた後、この位置でハンドロボット35を待機させる。
【0052】
一方、制御部18は、最初のスライドガラスGが治具1に置かれてハンドロボット35が収納ケース12内から退出すると、開閉シャッタ13をスライド移動させて2つの開口部12aを遮蔽させる。また、制御部18は、開閉シャッタ13を閉じると同時に駆動部20を作動させて回収台11を軸線L1回りに一定速度で回転させると共に、ファン28を作動させて収納ケース12内の空気を対流させる。
これにより、ほぼ密閉された収納ケース12内で、治具1に置かれたスライドガラスGの乾燥を行うことができる。特に、収納ケース12内は、温度調整手段14によって乾燥に最適な温度に調整されているので、伸展時に薄切片M及びスライドガラスGに付着した水分Wを蒸発させて乾燥させることができる。しかも、スライドガラスGは、治具1に置かれているので、付着した水分Wを積極的に排除して水切りすることができる。そのため、短時間で効率良く乾燥させることができる。
【0053】
特に、収納ケース12内では、温度調整された空気が自然任せに対流しているのではなく、ファン28及びプレート29からなる対流手段30によって決められた矢印Rの流れに沿って対流している。従って、スライドガラスG及び薄切片Mに対して温度調整された空気を積極的に当てることができ、より効率良く乾燥を行うことができる。
【0054】
また、治具1によって水切りされた水分Wは、載置板11bの貫通孔を介して回収体11aに落下する。落下した水分Wは、回収体11aに沿って流れて軸体16の近傍に集まった後、排出管22に流れ込む。そして、流れ込んだ水分Wは、排出管22を流れた後、排出継手23を介して収納ケース12の外部に排出される。このように、スライドガラスGから排除した水分Wを収納ケース12の外部に排出できるので、この水分Wが収納ケース12内で蒸発することがない。従って、薄切片M及びスライドガラスGの乾燥に影響がおよぶことを防止することができる。また、収納ケース12内を清潔に保つことができるので、高品質な薄切片標本を作製することができる。
【0055】
また、本実施形態の乾燥装置10は、複数の治具1を備えているので、複数枚のスライドガラスGを効率良く同時に乾燥させることができる。
つまり、上述したように、ハンドロボット35が次のスライドガラスGを把持した状態で開口部12aの近傍に待機した状態になると、制御部18は、軸体16の回転を一旦停止させると共に、まだスライドガラスGが置かれていない治具1を開口部12aに対向させるように駆動部20を制御する。また、制御部18は、これと同時に開閉シャッタ13をスライド移動させて、開口部12aを露出させる。すると、移動アーム及びハンドロボット35は、上述した動作を再度繰り返して、次のスライドガラスGを治具1に置く。その結果、2枚のスライドガラスGを治具1に置くことができ、同時に乾燥を行うことができる。
【0056】
また、この動作を複数回繰り返すことで、回収台11に載置されている全ての治具1にスライドガラスGを置くことができる。また、上段の回収台11に載置されている全ての治具1にスライドガラスGを置いた後は、下段の回収台11に載置されている治具1に順次スライドガラスGを置く。このように、本実施形態の乾燥装置10によれば、回収台11を2つ備えているので、一度に多くのスライドガラスGを乾燥させることができ、効率良く多数の薄切片標本を作製することができる。
【0057】
また、回収台11は、開閉シャッタ13が閉じているときに軸体16と共に回転している。そのため、仮に収納ケース12内の空気に温度の偏りがあったとしても、これらに影響されることなく、各スライドガラスGを均等の条件で乾燥させることができる。従って、全てのスライドガラスGを同じ条件で乾燥させることができ、同じ品質の薄切片標本を確実に作製することができる。特に、回収台11を回転させることで、複数のスライドガラスG及び薄切片に対して温度調整された空気を積極的に当てることができるので、乾燥を効率良く行うことができる。しかも、収納ケース12内の空気は、上述したように対流手段30によって対流しているので、この対流による効果と回収台11の回転による効果とを相乗させることができ、短時間で確実に乾燥させることができる。
【0058】
なお、乾燥が終了して薄切片標本となったスライドガラスGは、搬入時と同様に、移動アーム及びハンドロボット35によって、収納ケース12内から取り出される。そして、取り出されたスライドガラスGは、図示しない保管ケース内に次々と保管される。従って、作業者の手を煩わすことなく、乾燥工程を自動的に行って多数の薄切片標本を作製することができる。
【0059】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、収納ケース12内に回収台11を2つ備えた乾燥装置10を例に挙げたが、回収台11は1つでも構わないし、3つ以上備えても構わない。また、ハンドロボット35を利用してスライドガラスGの出し入れを行った場合を例にしたが、作業者が手動でスライドガラスGを出し入れしても構わない。但し、本実施形態のようにハンドロボット35を利用することで、伸展が終了した後のスライドガラスGを乾燥前ケースに収納しておくだけで、自動的に乾燥が終了した薄切片標本が保管ケース内にストックされるので、作業者にかかる負担を極力低減することができる。
【0061】
また、上記実施形態では、傾斜角度θ1及び立掛け角度θ2が予め決められた角度になるように治具1を構成したが、傾斜角度θ1及び立掛け角度θ2を自在に調整できるように治具1を構成しても構わない。
例えば、図14に示すように、支持フレーム2の背板6にスライド溝6bを形成し、該スライド溝6bに沿って傾斜用ピン3aが移動可能となるように構成しても構わない。このように構成することで、スライドガラスGの大きさや薄切片Mの大きさ、或いは、伸展時に付着した水分W量等に応じて、スライドガラスGの傾斜角度θ1を任意の角度に調整することができる。従って、状況に応じてより効率良く水分Wを水切りすることができ、乾燥時間の短縮化に繋げることができる。
【0062】
また、図15及び図16に示すように、支持フレーム2の底板5にスライド溝5bを形成し、該スライド溝5bに沿って調整用ピン4a、4bが移動可能となるように構成しても構わない。このように構成することで、スライドガラスGの立掛け角度θ2を任意の角度に調整することができ、同様の作用効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明に係る基板乾燥用支持体に置かれて乾燥される薄切片付のスライドガラスの斜視図である。
【図2】図1に示す薄切片が包埋ブロックから作製される状態を示す斜視図である。
【図3】本発明に係る基板乾燥用支持体の一実施形態を示す正面図であって、スライドガラスが置かれた状態の図である。
【図4】図3に示す基板乾燥用支持体の上面図である。
【図5】図3に示す基板乾燥用支持体の側面図である。
【図6】本発明に係る乾燥装置の一実施形態を示す断面図である。
【図7】図6に示す乾燥装置の断面矢視A−A図である。
【図8】図7に示す乾燥装置の断面矢視B−B図である。
【図9】図8に示す乾燥装置の断面矢視C−C図である。
【図10】図6に示す乾燥装置内にスライドガラスを出し入れするハンドロボットを上面図である。
【図11】図10に示すハンドロボットの側面図である。
【図12】図10に示すハンドロボットで把持されたスライドガラスが軸線回りに回転している状態を示す図である。
【図13】図10に示すハンドロボットを利用してスライドガラスを収納ケース内に搬入している状態を示す図である。
【図14】本発明に係る基板乾燥用支持体の変形例を示す図である。
【図15】本発明に係る基板乾燥用支持体の更に別の変形例を示す図である。
【図16】図15に示す基板乾燥用支持体の側面図である。
【符号の説明】
【0064】
G スライドガラス(基板)
M 薄切片
W 水分
1 治具(基板乾燥用支持体)
2 支持フレーム
3a、3b、3c 傾斜用ピン
4a、4b 調整用ピン
5 支持フレームの底板
5a 底板の底面
6 支持フレームの背板
10 乾燥装置
11 回収台
12 収納ケース
12a 収納ケースの開口部
13 開閉シャッタ
14 温度調整手段
15 排出手段
21 回転駆動手段
30 対流手段
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体上に浮かべることで伸展がなされた薄切片が表面に掬い取られた矩形状の基板を支持する基板乾燥用支持体であって、
底板と、該底板の一端側から底板の底面に直交する方向に延びた背板とからなる断面L型の支持フレームと、
前記背板に基端側が固定され、背板に長辺が接触した状態で前記基板を立掛け可能に支持すると共に、前記底板の底面に対して長辺が所定角度傾くように基板を傾斜させる複数の傾斜用ピンと、
前記底板に基端側が固定され、前記背板と前記傾斜用ピンとの間に前記基板を立掛けた際に、基板の表面が前記底板の底面に直交する面に対して所定角度傾くように立掛け角度を調整する複数の調整用ピンと、を備え、
前記複数の傾斜用ピン又は前記複数の調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンは、前記伸展時に付着した水分を自身のピンを伝わらせて落下させて前記基板から排除することを特徴とする基板乾燥用支持体。
【請求項2】
請求項1に記載の基板乾燥用支持体において、
前記傾斜用ピンは、前記背板に対して移動可能に固定され、前記傾斜角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とする基板乾燥用支持体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板乾燥用支持体において、
前記調整用ピンは、前記底板に対して移動可能に固定され、前記立掛け角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とする基板乾燥用支持体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板乾燥用支持体と、
該基板乾燥用支持体を複数載置すると共に、各基板乾燥用支持体から排除された前記水分を回収して集める回収台と、
前記基板を出し入れ可能な開口部を有し、前記回収台を内部に収納する収納ケースと、
前記開口部を開閉する開閉シャッタと、
前記収納ケース内に設けられ、該収納ケース内の温度を所定温度に調整する温度調整手段と、
前記回収台で集められた前記水分を、前記収納ケース内から外部に排出させる排出手段と、を備えていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
請求項4に記載の乾燥装置において、
前記収納ケース内の空気を決められた流れに沿って対流させる対流手段を備えていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の乾燥装置において、
前記回収台を回転させる回転駆動手段を備えていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の乾燥装置において、
前記回収台が、前記収納ケース内に複数設けられていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項1】
液体上に浮かべることで伸展がなされた薄切片が表面に掬い取られた矩形状の基板を支持する基板乾燥用支持体であって、
底板と、該底板の一端側から底板の底面に直交する方向に延びた背板とからなる断面L型の支持フレームと、
前記背板に基端側が固定され、背板に長辺が接触した状態で前記基板を立掛け可能に支持すると共に、前記底板の底面に対して長辺が所定角度傾くように基板を傾斜させる複数の傾斜用ピンと、
前記底板に基端側が固定され、前記背板と前記傾斜用ピンとの間に前記基板を立掛けた際に、基板の表面が前記底板の底面に直交する面に対して所定角度傾くように立掛け角度を調整する複数の調整用ピンと、を備え、
前記複数の傾斜用ピン又は前記複数の調整用ピンのうち少なくともいずれか一方のピンは、前記伸展時に付着した水分を自身のピンを伝わらせて落下させて前記基板から排除することを特徴とする基板乾燥用支持体。
【請求項2】
請求項1に記載の基板乾燥用支持体において、
前記傾斜用ピンは、前記背板に対して移動可能に固定され、前記傾斜角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とする基板乾燥用支持体。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の基板乾燥用支持体において、
前記調整用ピンは、前記底板に対して移動可能に固定され、前記立掛け角度が任意の角度に調整可能とされていることを特徴とする基板乾燥用支持体。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の基板乾燥用支持体と、
該基板乾燥用支持体を複数載置すると共に、各基板乾燥用支持体から排除された前記水分を回収して集める回収台と、
前記基板を出し入れ可能な開口部を有し、前記回収台を内部に収納する収納ケースと、
前記開口部を開閉する開閉シャッタと、
前記収納ケース内に設けられ、該収納ケース内の温度を所定温度に調整する温度調整手段と、
前記回収台で集められた前記水分を、前記収納ケース内から外部に排出させる排出手段と、を備えていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項5】
請求項4に記載の乾燥装置において、
前記収納ケース内の空気を決められた流れに沿って対流させる対流手段を備えていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の乾燥装置において、
前記回収台を回転させる回転駆動手段を備えていることを特徴とする乾燥装置。
【請求項7】
請求項4から6のいずれか1項に記載の乾燥装置において、
前記回収台が、前記収納ケース内に複数設けられていることを特徴とする乾燥装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2008−209269(P2008−209269A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−46804(P2007−46804)
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年2月27日(2007.2.27)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】
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