説明

基板搬出装置

【課題】実装時に上昇した電子部品と基板の温度を実装後も維持できるようにした基板搬出装置を提供することを目的とする。
【解決手段】基板4を上方から加熱するヒートブロック33が、第1の位置から第2の位置に移動中の基板4を上方から加熱する第1の領域33aと、第2の位置から第3の位置に移動中の基板4を上方から加熱する第2の領域33bを備え、第1の領域33aと第2の領域33bの温度をそれぞれ独立して調整可能にした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品が実装された基板を後工程に搬出する基板搬出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子部品と基板を加熱し、接合部に熱エネルギを付与しつつ接合するときに、急激な温度変化による基板のクラックや反り等の発生を抑制するため、実装前に基板を予備加熱しておき、実装後には緩やかな速度で徐冷させる機能を備えた実装装置が提案されている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3857949号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された実装装置は、基板に生じるクラックや反りに着目した結果、基板を下方からのみ加熱して基板の温度管理を行う構成となっているため、基板の上面側に実装された電子部品については積極的な温度管理が行われることはない。加熱された電子部品と基板は、常温時に比べ熱膨張した状態で接合されるが、電子部品と基板は材質の違いによりそれぞれ熱膨張率が異なるため、実装後の電子部品と基板の両方の温度を適切に管理しないと接合部に応力が集中し、亀裂や破断等の接合不良が生じることがある。
【0004】
本発明は、実装時に上昇した電子部品と基板の温度を実装後も維持できるようにした基板搬出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1記載の基板搬出装置は、電子部品が実装された基板を加熱しながら後工程に搬出する基板搬出装置であって、前記基板を上方から加熱する上加熱手段と、第1の位置で電子部品が実装された前記基板を前記上加熱手段の下方に保持して第2の位置に移動させる第1の基板移動手段と、前記第2の位置から後工程への搬出位置となる第3の位置に前記基板を移動させる第2の基板移動手段とを備え、前記上加熱手段が、前記第1の位置から前記第2の位置に移動中の前記基板を上方から加熱する第1の領域と、前記第2の位置から前記第3の位置に移動中の前記基板を上方から加熱する第2の領域を有し、前記第1の領域と前記第2の領域の温度をそれぞれ独立して調整可能である。
【発明の効果】
【0006】
実装後の基板を加熱した状態におくことで実装後の放熱による急激な温度低下を回避し、電子部品と基板の接合状態を良好に維持したまま後工程に移送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1は本発明の実施の形態の基板搬出装置の構成図、図2は本発明の実施の形態のヒートブロックの側面図、図3は本発明の実施の形態の基板搬出装置の一部拡大図、図4、図5は本発明の実施の形態の基板搬出装置の動作説明図である。
【0008】
最初に基板搬出装置の構成について図1を参照して説明する。基板搬出装置1によって後工程に搬出される基板は、実装テーブル2で電子部品3が熱圧着された基板4である。実装テーブル2は、基板搬出装置1の基台5に設置された直動テーブル6、7によって水平移動可能である。実装テーブル2の上方には実装ヘッド8が配設されている。実装ヘッ
ド8は下端に電子部品3を吸着し、実装テーブル2の上面に載置されている基板4に向けて下降し、電子部品3の半田バンプ9を基板4の上面の電極10に圧力をかけながら接触させる。実装ヘッド8に内蔵されているヒータ11と、実装テーブル2に内蔵されているヒータ12の発熱によって半田バンプ9が溶融し、電子部品3と基板4を接続する。直動テーブル6、7の駆動により実装テーブル2に載置されている基板4の位置を実装ヘッド8に対して順次変更しながら基板4に複数の電子部品3を実装する。
【0009】
基板4の搬送方向に対して実装テーブル2の下流側に基板搬送装置20が配設されている。基板搬送装置20は、実装テーブル2で電子部品3が熱圧着された基板4を後工程への搬出位置まで搬送する装置である。この搬出位置は、後工程に配置されている基板の搬送装置100に基板4を受け渡す位置であり、基板搬出装置1はこの搬出位置において基板4を搬送装置100に受け渡す。
【0010】
基板搬送装置20は、一対のコンベアベルト21と、コンベアベルト21を水平に張設するプーリ22、23と、コンベアベルト21に駆動力を供給する駆動ローラ24と、搬送中の基板4を下方から加熱する下加熱手段となるポストヒートブロック25と、プーリ22、23によって水平に張設された一対のコンベアベルト21の間でポストヒートブロック25を昇降させ、ポストヒートブロック25の上面(加熱面)と基板4の下面との距離(クリアランス)を調整するシリンダ機構26と、一対のコンベアベルト21の高さを調整するシリンダ機構27と、水平に張設された一対のコンベアベルト21によって搬送される基板4の搬送経路を間に形成する一対の搬送ガイド28とで構成されている。
【0011】
基板4は幅方向の両端をそれぞれ一対のコンベアベルト21の水平部分に載置し、一対のコンベアベルト21の駆動によって長さ方向に搬送される。ポストヒートブロック25は、プーリ22、23によって張設された一対のコンベアベルト21の水平部分の長さと略同じ長さを有し、搬送中の基板4を下方から常時加熱することができる。
【0012】
基板移載装置30は、基板4の搬送方向に延伸されたアーム31と、アーム31に下向きに取り付けられた吸着パッド32と、同じくアーム31に取り付けられたヒートブロック33とで構成されている。吸着パッド32は、図外の真空発生源と連結して基板4の上面を吸着して保持する。基板4の四隅と対応する位置にそれぞれ一個ずつ配置されている。ヒートブロック33は、基板4の幅方向に離れて配置された吸着パッド32の間に配設されている。ヒートブロック33の基板4の長さ方向における長さは、少なくとも最大の長さを有する基板4の長さを考慮して定められるものであり、吸着パッド32で吸着した基板4の全長がヒートブロック33の全長に収まるようにする。コンベアベルト21の水平部分と同程度の長さがあることが望ましい。
【0013】
ヒートブロック33の下面は実装後の基板4を上方から加熱する加熱面となっている。図2に示すように、ヒートブロック33は基板4の搬送方向において2つの領域に分割されている。基板4の搬送方向に対して上流側が第1の領域33aであり、その下流側が第2の領域33bである。第1の領域の下面は、吸着パッド32に吸着された基板4の上面(実装されている電子部品を含む)と対向し、基板4を上方から加熱する。第1の領域33aに設けられたストッパ33cは加熱面と基板4の上面との間の距離(クリアランス)を調整する。
【0014】
第1の領域33aは、ストッパ33cによって調整されたクリアランスc1の分だけ基板4の上面と距離をおいて対向し、実装テーブル2から基板搬送装置20に移動中の基板4を上方から加熱する。基板4は、第1の領域33aによって上方から加熱されながら基板搬送装置20のコンベアベルト21に移載され、コンベアベルト21に移載された後は第2の領域33bによって上方から加熱されながら後工程への搬出位置に向けて搬送され
る。搬送中の基板4の上面と第2の領域33bとの間の距離(クリアランス)はc1より大きいc2である。ヒートブロック33は、第1の領域33aと第2の領域33bでそれぞれ独立して温度調整が可能である。クリアランスc1、c2の差に応じて第1の領域33aと第2の領域33bを調整し、ヒートブロック33による基板4の加熱効果がクリアランスの差に関わらず一定になっている。ヒートブロック33は輻射熱により間接的に基板4を加熱するので、基板4の上面とのクリアランスがより大きい第2の領域33bの温度を第1の領域33aの温度より高くなるように調整することで、クリアランスが大きくなっても基板4の温度が低下しないようにしている。
【0015】
なお第2の領域33bを複数の領域に細分化し、各領域を独立して温度管理可能に構成してもよい。このように構成すれば、搬送中の基板4の温度の挙動に応じた細やかな温度管理が可能になり、特に基板搬出装置20による搬送距離が長くなるほど効果的である。
【0016】
送りねじ機構40は、実装テーブル2と基板搬送装置20に跨ってこれらの上方に配設された水平ねじ41と、水平ねじ41を水平軸周りに回転させる水平モータ42と、水平ねじ41に螺合し、水平ねじの41の回転に伴って水平方向に移動する水平ナット43と、水平ナット43に配設された鉛直ねじ44と、鉛直ねじ44を鉛直軸周りに回転させる鉛直モータ45と、鉛直ねじ44に螺合し、鉛直ねじの44の回転に伴って鉛直方向に移動する鉛直ナット46とで構成されている。
【0017】
鉛直ナット46に取り付けられたアーム31は、水平ねじ41の回転によって水平方向に移動し、鉛直ねじ44の回転によって鉛直方向に移動することができる。アーム31を主体とする基板移載装置30は、実装後の基板4を吸着パッド32で吸着し、実装テーブル2から基板搬送装置20に移動させ、ポストヒートブロック25に載置する。
【0018】
次に搬送中の基板の加熱について図1、図3を参照して説明する。基板搬送装置20に移送された基板4は、両側部が載置された一対のコンベアベルト21の駆動によって搬送される。基板4の搬送中、基板移載装置30は基板4の上方に位置し、ヒートブロック33の下面と基板4の上面(電子部品3を含む)の間を所定の距離に維持している。ポストヒートブロック25は、基板4の下面と所定の距離をおいた位置に上面(加熱面)が位置するように高さ調整されている。
【0019】
基板搬出装置1は、搬送中の基板4をヒートブロック33とポストヒートブロック25の輻射熱で加熱するため、基板4の周囲の気密性が熱効率に大きな影響を与える。ここでは、図3に示すように、基板移載装置30にヒートブロック33の上方および側方を覆う上カバー35を設け、基板搬送装置20に上カバー35を側方から覆う下カバー29を設け、基板4の搬送時に上カバー35と下カバー29が重なって基板4の周囲に気密性の高い空間36を形成するようにしている。
【0020】
次に基板搬出装置が行う基板移送動作について図4、図5を参照して説明する。図4(a)において、基板移載装置30が実装後の基板4を実装テーブル2から基板搬送装置20に移載する。基板4の上面には電子部品3が実装されており、ヒートブロック33によって上方から加熱されることで電子部品3と基板4の両方が加熱される。ポストヒートブロック25は、その上面がコンベアベルト21の平面部分より上方となる位置に移動しており、基板移載装置30はポストヒートブロック25に基板4を直に載置する。ポストヒートブロック25は輻射加熱より効率のよい直接的な加熱によって基板4を下方から加熱する。
【0021】
実装後の基板4は、実装テーブル2から基板搬送装置20への移動中は上方から加熱された状態にあり、基板搬送装置20に移動した直後はこれに加えて下方から直接加熱され
た状態にある。移動中の基板4は上方から加熱されているだけなので、移動距離を可能な限り短くすることが基板4と電子部品3の温度維持の上で望ましい。そのため、ここでは基板搬送装置20を実装テーブル2と同じ高さにして基板移載装置30の昇降距離を短縮するようにしている。
【0022】
実装テーブル2と同じ高さにある基板搬送装置20は、それより高い位置にある搬送装置100と高さを合わせる必要があるため、最初に、図4(b)に示すように基板移載装置30が上昇し、次に、図5(a)に示すように基板搬送装置20が上昇し、コンベアベルト21の高さを搬送装置100のコンベアベルト101の高さに合わせる。先に上昇する基板移載装置30は、基板搬送装置20が上昇してきたときに基板4の上面(実装されている電子部品3を含む)が吸着パッド32やヒートブロック33に接触しないような高さまで上昇しておく。
【0023】
基板移載装置30が上昇を開始してから基板搬送装置20が上昇を完了するまでの間は基板4とヒートブロック33の距離が広がるため、基板4を上方から加熱する熱効率が低下することになるが、その間はポストヒートブロック25が下方から直接的に加熱した状態となっているので、基板4および電子部品3の温度が低下することはない。
【0024】
なお、基板移載装置30と基板搬送装置20を一定の間隔を保ちながら同時に上昇させることも可能である。この場合は上昇中も基板4を上方から加熱した状態に維持できるので、時間差をもって上昇させる場合に比べさらに効果的に基板4および電子部品3の温度維持を図ることができる。
【0025】
図5(b)において、ポストヒートブロック25を下降させて基板4をコンベアベルト21に移載する。コンベアベルト21によって搬送装置100に向けて搬送中の基板4は、ヒートブロック33とポストヒートブロック25によって上下両方向から間接的に輻射加熱された状態にあるので、上面に実装された電子部品3を含め全体の温度が維持される。
【0026】
この実施の形態において、電子部品3を熱圧着によって基板4に実装する位置、すなわち実装テーブル2が配置された位置が第1の位置であり、基板搬送装置20が基板移載装置30から基板4を受け取る位置が第2の位置である。基板移載装置30は、第1の位置で電子部品3が実装された基板4を第2の位置に移動させる第1の基板移動手段として機能し、基板搬送装置20は、第2の位置から後工程への搬出位置となる第3の位置に基板4を移動させる第2の基板移動手段として機能する。そして、基板移載装置30に備えられたヒートブロック33は、基板4を上方から加熱する上加熱手段として機能し、第1の位置から第2の位置に移動中の基板4を上方から加熱する第1の領域33aと、第2の位置から第3の位置に移動中の基板4を上方から加熱する第2の領域33bをそれぞれ独立して温度管理可能に備えている。
【0027】
本発明によれば、実装後の基板4は基板移載装置30によって基板搬送装置20まで移動される間はヒートブロック33によって上方から加熱され、基板搬送装置20によって搬出位置に向けて搬送される間はヒートブロック33とポストヒートブロック25によって上下両方向から加熱された状態に維持される。従って、基板搬出装置1によれば、実装時の加熱によって膨張した状態で接合された電子部品3と基板4の温度低下を回避することが可能であり、電子部品3と基板4の接合状態を良好に維持したまま後工程に移送することができる。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は電子部品を熱圧着により基板に実装する分野において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態の基板搬出装置の構成図
【図2】本発明の実施の形態のヒートブロックの側面図
【図3】本発明の実施の形態の基板搬出装置の一部拡大図
【図4】本発明の実施の形態の基板搬出装置の動作説明図
【図5】本発明の実施の形態の基板搬出装置の動作説明図
【符号の説明】
【0030】
1 基板搬出装置
3 電子部品
4 基板
20 基板搬送装置
25 ポストヒートブロック
30 基板移載装置
33 ヒートブロック
33a 第1の領域
33b 第2の領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子部品が実装された基板を加熱しながら後工程に搬出する基板搬出装置であって、
前記基板を上方から加熱する上加熱手段と、第1の位置で電子部品が実装された前記基板を前記上加熱手段の下方に保持して第2の位置に移動させる第1の基板移動手段と、前記第2の位置から後工程への搬出位置となる第3の位置に前記基板を移動させる第2の基板移動手段とを備え、
前記上加熱手段が、前記第1の位置から前記第2の位置に移動中の前記基板を上方から加熱する第1の領域と、前記第2の位置から前記第3の位置に移動中の前記基板を上方から加熱する第2の領域を有し、前記第1の領域と前記第2の領域の温度をそれぞれ独立して調整可能であることを特徴とする基板搬出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−50121(P2010−50121A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−210409(P2008−210409)
【出願日】平成20年8月19日(2008.8.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】