説明

基板検査装置および基板検査方法

【課題】 高い生産性を確保しつつ、製品基板の信頼性を向上させる。
【解決手段】 実装処理が施された基板をカメラにより撮像してその画像データに基づき実装処理の良否を検査する実装検査装置4において、画像データに基づいて処理の良否を判定する判定部612と、検査タイミングに関するパラメータおよび検査レベルに関するパラメータを記憶する記憶部613と、この記憶手段に記憶されたパラメータに基づいて検査タイミング等を設定可能とするキーボード68等の設定手段と、設定された検査タイミングおよび検査レベルに従って検査を実施すべくカメラ等を制御する主制御部611とを備える。前記設定手段については、複数の検査タイミングを設定可能に構成され、かつその設定タイミング毎に個別に検査レベルを設定可能に構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回路基板に電子部品を実装する実装ライン等において基板を検査する基板検査装置および基板検査方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、はんだ印刷装置(又はディスペンサ)、実装装置、リフロー炉等を一列に配列した生産ラインを構築し、回路基板を搬送しつつこれら各装置を経由させることにより基板上に電子部品を実装することが行われている。
【0003】
この種の生産ラインでは、例えば装置毎にその下流側に検査装置を設け、回路基板に施された処理(作業)内容を検査することにより、処理不良があると判断した場合には、必要に応じてその基板をライン落ちさせるとともに検査結果をフィードバックして次の基板の処理に反映させることが行われている(特許文献1)
【特許文献1】特許第3283275号公報(特開平5−7100号公報)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種の生産ラインでは、予め固定的に設定された検査タイミング、検査内容に従って各検査装置により基板(処理)を検査するのが一般的であり、この点に改善の余地がある。
【0005】
すなわち、例えば実装装置による部品搭載後の検査では、通常、全ての基板について毎回同じ検査レベルで全点検査(全ての部品搭載位置の検査)が実施されており、この際の検査レベルは、必要な製品精度を満足し得る範囲で比較的緩く、すなわち許容値が大きく設定されている。これは検査レベルを高く設定すると製品の信頼性は向上するもの、ライン落ちする基板が増加し、生産性が著しく低下するためである。しかしながら、この種の生産ラインでは、製品の信頼性を維持しつつ高い生産性を確保できるのが理想である。
【0006】
従って、検査タイミングや検査内容についても基板の種類や処理の内容に応じてより柔軟に対応できるようにして、製品の信頼性を維持しつつ高い生産性を確保できるようにすることが望まれる。
【0007】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであって、回路基板に電子部品を実装する実装ライン等において、高い生産性を確保しつつ製品基板の信頼性を向上させることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る基板検査装置は、複数の基板を順次搬送しながらペースト塗布、部品実装、リフローの少なくとも一つの処理を基板に施す処理装置の下流側に設けられ、前記処理が施された基板を撮像手段により撮像してその画像データに基づき前記処理の良否を検査する装置であって、前記撮像手段により撮像された基板の画像データに基づいて前記処理の良否を判定する判定手段と、検査タイミングに関するパラメータを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて検査タイミングを設定可能とする設定手段と、この設定手段により設定された検査タイミングで、かつ当該検査タイミングについて予め設定されている検査内容に従って前記検査を実施すべく前記撮像手段および判定手段を制御する制御手段とを備え、前記設定手段は、検査タイミングに関する前記パラメータから複数のタイミングを設定可能に構成されているものである(請求項1)。
【0009】
この装置では、撮像手段による基板の撮像結果(画像データ)に基づき判定手段において処理の良否判定が行われる。この装置では、オペレータによる設定手段の操作に基づき任意に設定される検査タイミングで、かつその検査タイミングについて予め固定的に設定されている検査内容に従って基板の撮像および判定手段による良否判定が行われる。そして、複数のタイミングがオペレータにより選定された場合には、各タイミングで、それぞれのタイミングについて予め固定的に設定されている検査内容に従って基板の撮像および良否判定が行われる。
【0010】
また、本発明に係る別の基板検査装置は、複数の基板を順次搬送しながらペースト塗布、部品実装、リフローの少なくとも一つの処理を基板に施す処理装置の下流側に設けられ、前記処理が施された基板を撮像手段により撮像してその画像データに基づき前記処理の良否を検査する装置であって、前記撮像手段により撮像された基板の画像データに基づいて前記処理の良否を判定する判定手段と、検査内容に関するパラメータを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて検査内容を設定可能とする設定手段と、予め設定されている検査タイミングで、かつ前記設定手段により設定された検査内容に従って前記検査を実施すべく前記撮像手段および判定手段を制御する制御手段とを備え、前記設定手段は、前記検査タイミングとして複数の検査タイミングが予め設定されている場合には、検査タイミング毎に個別に検査内容を設定可能に構成されているものである(請求項2)。
【0011】
この装置についても、撮像手段による基板の撮像結果(画像データ)に基づき判定手段において処理の良否判定が行われるが、この装置では、予め固定的に設定されている検査タイミングで、かつオペレータによる設定手段の操作に基づき任意に設定される検査内容に従って基板の撮像および判定手段による良否判定が行われる。そして、複数のタイミングが予め固定的に設定されている場合には、それらのタイミング毎に、オペレータにより任意に設定される検査内容に従って基板の撮像および良否判定が行われる。
【0012】
さらに、本発明に係る別の基板検査装置は、複数の基板を順次搬送しながらペースト塗布、部品実装、リフローの少なくとも一つの処理を基板に施す処理装置の下流側に設けられ、前記処理が施された基板を撮像手段により撮像してその画像データに基づき前記処理の良否を検査する装置であって、前記撮像手段により撮像された基板の画像データに基づいて前記処理の良否を判定する判定手段と、検査タイミングに関するパラメータおよび検査内容に関するパラメータを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて検査タイミングおよび検査内容を設定可能とする設定手段と、この設定手段により設定された検査タイミングおよび検査内容に従って前記検査を実施すべく前記撮像手段および判定手段を制御する制御手段とを備え、前記設定手段が、検査タイミングに関する前記パラメータから複数のタイミングを設定可能に構成され、かつその設定タイミング毎に個別に検査内容を設定可能に構成されているものである(請求項3)。
【0013】
この装置についても、撮像手段による基板の撮像結果(画像データ)に基づき判定手段において処理の良否判定が行われるが、この装置では、オペレータによる設定手段の操作に基づき任意に設定される検査タイミングおよび検査内容に従って基板の撮像および判定手段による良否判定が行われる。そして、オペレータにより複数のタイミングが選定され、かつタイミング毎に検査内容が設定された場合には、各タイミングで、それぞれのタイミングに対応した検査内容に従って基板の撮像および良否判定が行われる。
【0014】
請求項2又は3に記載の装置においては、例えば検査内容に関する前記パラメータとして精密度合いである検査レベルが予め記憶されており、制御手段は、設定された検査レベルに対応する検査内容に従って前記検査を実施するものであるのが好ましい(請求項4)。
【0015】
この装置によると、例えば前記検査タイミングとして基板毎に検査を実施する第1タイミングと特定の基板に検査を実施する第2タイミングとを設定し(任意に、又は予め固定的に設定し)、かつ第1タイミングで実施する検査に比べて第2タイミングで実施する検査の精密度合いが高くなるように検査レベルを設定し、この設定内容に従って基板の検査を実施することで(請求項6)、効率的でメリハリのある検査を実施することが可能となる。すなわち、基板毎に簡素な検査(精密度合いの低い低レベルの検査)を実施しながら、所定の基板、例えばロットの初品や最終品の基板については精密な検査(精密度合いの高い高レベルの検査)を実施することが可能となる。
【0016】
なお、請求項1又は3に記載の基板装置装置において、前記設定手段は、さらに設定タイミングのうちマニュアル操作で検査を行うものを設定可能に構成され、前記制御手段は、前記マニュアル操作で検査を行うタイミングについてはオペレータによる指示操作を待って検査を実行するように構成されているものであってもよい(請求項5)。
【0017】
この装置によると、特定のタイミングの検査についてはオペレータが付き添った状態で検査を行うことが可能となるため、目視を含めたより入念な検査が求められる場合に有用となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る基板検査装置によると、検査タイミング又は検査内容の何れか一方、又は双方を任意に設定することができ、検査タイミングや検査内容についての設定の自由度が高い。そのため、例えば基板毎に簡素な検査(必要な製品精度を満足し得る範囲で比較的緩い検査)を実施することにより基板の生産性を高く維持しつつ、ロットの初回や最終の基板については精密な検査を実施することにより不具合の発生を事前に察知して対策を採るといったことが可能となる。従って、効率的でメリハリのある検査を行うことが可能となり、その結果、高い生産性を維持しつつ、製品基板の信頼性を向上させることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0020】
図1は、本発明が適用される基板の生産ラインを概略的に示している。この生産ラインは、ローダー(図示省略)、はんだ印刷装置(又はディスペンサ)1、印刷検査装置2、2種類の実装装置3A,3B、実装検査装置4、リフロー炉5、はんだ付検査装置6およびアンローダー(図示省略)を一列に備え、これらを互いにコンベア7等で連結した構成となっている。そして、回路基板(以下、単に基板という)を搬送しながら、順次、はんだ印刷、部品実装およびリフローの各処理を基板に対して施すとともに、検査装置2,4,6により各処理の検査を行うように構成されている。
【0021】
各装置1〜6にはそれぞれ制御装置が搭載されており基本的には各動作が各自の制御装置により個別に駆動制御されるが、この生産ラインではさらに各装置1〜6(制御装置)にオンラインで接続される中央管理装置8が設けられており、実装部品や基板に関するデータ、生産履歴に関するデータ等、各種データがこの中央管理装置8により集中管理されている。これにより当該各種データが各装置1〜6により共有化されている。
【0022】
この生産ラインにおいて、本発明は実装検査装置4に適用されており、以下、この実装検査装置4の構成について詳細に説明することにする。
【0023】
図2及び図3は、実装検査装置4の構成を概略的に示しており、図2は同装置4を平面図で、図3は同装置4を正面図でそれぞれ示している。この実装検査装置4は、実装装置3A,3Bにおいて実装処理が施された後の基板の実装ポイントを撮像することにより部品の実装状態を画像認識してその良否を判定するものである。
【0024】
実装検査装置4は、内部が空洞の略直方体形状に形成された基台10を有している。この基台10上には基板搬送手段12が設けられ、検査対象としての基板Pがこの基板搬送手段12の後記コンベアに沿って搬送されるようになっている。なお、当実施形態では、上記コンベアによる基板Pの搬送方向(図2で左右方向)をX軸方向、水平面上でX軸と直交する方向(図2で上下方向)をY軸方向という。
【0025】
基板Pは基板搬送手段12のコンベアに沿って装置右側から実装検査装置4に搬入され、基台10の略中央に設けられた検査作業領域において検査処理に供された後、装置左側から次工程に搬出される(同図中の白抜き矢印方向)。
【0026】
前記基板搬送手段12は、それぞれ一対のベルトコンベアを備えたX軸方向に並ぶ3つの構成部分からなり、具体的には、基板搬送方向両側の各所定範囲に、ベルトコンベア20A,21Aおよび同20C,21Cを備えた搬入・搬出部12A,12Cを有し、これらの間に、後記テーブル30上にベルトコンベア20B,21Bを備えた可動部12Bを有している。
【0027】
搬入・搬出部12A,12Cにおいては、前側のコンベア20A,20Cが基台10上に固定的に設けられる一方、後側のコンベア21A,21CがY軸方向に移動可能とされ、図略のモータで駆動されて後側のコンベア21A,21Cが移動することにより、基板Pのサイズに応じたコンベア間隔の調整が可能となっている。
【0028】
可動部12Bにおいては、Y軸方向に移動可能な後記テーブル30上に一対のコンベア20B,21Bが設けられ、そのうちの前側のコンベア20Bはテーブル30に対して固定され、後側のコンベア21Bはテーブル30に対しY軸方向に移動可能に支持されている。そして、図外のモータで駆動されて後側のコンベア21Bが移動することにより、コンベア20B,21Bの間隔が変化して、基板Pのサイズ変更に対応し得るようになっている。
【0029】
上記テーブル30は、基台10上に固定されたY軸方向のガイドレール31に沿って移動可能とされるとともに、基台10上に回転可能に支持されたY軸方向のボールねじ軸32に螺合するナット部(図示せず)を有し、上記ボールねじ軸32がモータ33によって回転駆動されることにより、テーブル30がガイドレール31に沿ってY軸方向に移動するようになっている。
【0030】
上記基台10の台面には門型の支持台35が立設されている。この支持台35は基台10の前後方向(図2における上下方向)における中央部に対してやや後寄りの位置に設けられており、この支持台35は左右方向の両端部からそれぞれ起立する脚柱部36と、この脚柱部36の上端部同士を橋渡す梁部37とからなっている。
【0031】
支持台35の梁部37には、基板Pを撮像するための撮像装置40と、この撮像装置40を梁部37に沿って移動させるための駆動装置42とが設けられている。この駆動装置42は、支持台35の梁部37上に設置されたモータ44と、このモータ44の出力軸に連結され且つ左右方向に延びるボールねじ軸46と、このボールねじ軸46と平行に梁部37上に設置された一対のガイドレール48とを有する。
【0032】
一方、撮像装置40は、上記ボールねじ軸46に螺合装着された支持フレーム50に支持されている。したがって、撮像装置40は、上記モータ44を駆動することにより、支持フレーム50と一体的に上記ガイドレール48に沿ってX軸方向に移動する。
【0033】
撮像装置40は、被写体としての上記基板Pを撮像するためのカメラ52と、基板Pを照明するための照明装置53とを備えている。カメラ52は、CCDカメラであり、固体撮像素子が内蔵されたカメラ本体の先端に対物レンズが内蔵されたレンズ部を有した構成となっており、下向きの姿勢で前記支持フレーム50に固定されている。
【0034】
以上の構成において、検査作業に際しては、まず基板搬送手段12の作動により基板Pが搬入部12Aから可動部12Bへと搬送され、可動部12Bの所定位置に基板Pが位置決め固定される。このとき、基板搬送手段12のテーブル30は、ホームポジション、すなわち可動部12Bのコンベア20B,21Bと、搬入部12Aおよび搬出部12Cのコンベア20A,21A等とが横並びとなる位置(図2に示す位置)にセットされており、これにより可動部12Bに対して基板Pの搬入が可能となる。
【0035】
そして、基板Pがテーブル30に位置決め固定された状態で、モータ33,44等が後記制御装置60により駆動制御されることにより、基板Pが固定されたテーブル30がY軸方向に移動し、かつ撮像装置40がX軸方向に移動する。これにより基板P上における実装ポイントの撮像が行われ、撮像結果に基づいた基板Pの検査が行われる。そして、検査が完了すると、テーブル30がホームポジションにリセットされ、基板Pが搬出部12Cを介して次工程(リフロー炉5)へと搬出されることとなる。
【0036】
図4は、実装検査装置4の制御系をブロック図で示している。
【0037】
この図に示すように、実装検査装置4は、基板搬送手段12や撮像装置40の駆動を制御する制御装置60を有している。この制御装置60は、制御部本体61、キーボード68、LCD69および光磁気ディスク等の外部記憶装置67を備えている。
【0038】
制御部本体61は、論理演算を実行する周知のCPU62、そのCPU62を制御する種々のプログラムなどを予め記憶するROM63、装置動作中に種々のデータを一時的に記憶するRAM64、種々のプログラムやOS、さらに後述する各種パラメータ等、検査に必要な各種データを記憶するHDD65およびI/Oコントローラ(IOC)66等を備え、これらCPU62等が互いに内部バスにより接続された構成となっている。
【0039】
IOC66には、キーボード68及びLCD69の他、モータ33,34等、照明装置53およびカメラ52の各制御回路71〜73と、表示器(警告灯)74が接続されており、CPU62からの指令に従い、各制御回路71〜73等と制御部本体61との間の各種制御信号および各種データの入出力がこのIOC66を介して制御されることにより、基板搬送手段12や撮像装置40の動作が制御部本体61により制御されるようになっている。
【0040】
図5は、制御部本体61に含まれる機能構成のうち、主に基板Pの検査を実行する機能構成をブロック図で示している。
【0041】
この図に示すように、制御部本体61は、上記の機能構成として主制御部611、判定部612および記憶部613を有している。
【0042】
主制御部611は、予め記憶されたプログラムに従って所定の検査処理を実行すべく前記制御回路71〜73を介して前記モータ33等を統括的に制御するもので、検査処理に先立ちオペレータにより設定される検査タイミング(設定タイミング)に基づいて検査処理を実行すべく前記モータ33等を制御する。また、検査後は、検査結果に応じた表示を行うべくLCD69、表示器74等に信号を出力する。
【0043】
判定部612は、制御回路73を介してカメラ52から出力される画像データに基づいて部品の実装誤差を求め、この誤差が許容値内か否かを判定するもので、検査処理に先立ちオペレータにより設定される検査レベル(検査内容)に基づいて判定を行う。
【0044】
記憶部613は、検査タイミングおよび検査内容に関するパラメータと各パラメータに対応するデータを記憶するものである。当実施形態では、検査タイミングに関するパラメータとして「通常」、「初品」、「最終品」、「既定数」の4つのタイミングが記憶されている。また、検査内容として、図6に示すように検査(実装)ポイント毎に「1」〜「3」の3段階の検査レベルと各レベルに対応する検査内容、具体的には実装誤差の許容値が記憶されている。
【0045】
ここで、検査タイミングとは、検査を実施するタイミング、換言すれば検査対象となる基板Pを特定する方法であって、上記タイミングの内容は次の通りである。
・「通常」 …全ての基板を検査対象とする。
・「初品」 …生産ライン起動後、最初の基板を検査対象とする。
・「最終品」…最終基板を検査対象とする。
・「既定数」…生産ライン起動後、決められた数毎の基板を検査対象とする。
【0046】
一方、検査レベルとは、検査の精密度合を示すもので、検査レベルが高い程、図6に示すように判定基準となる実装誤差の許容値が小さく設定されている。例えば検査レベル「1」の許容値は、必要な製品精度を満足し得る範囲で十分に緩い値とされている。
【0047】
つまり、この実装検査装置4では、生産ラインの稼働前にオペレータがLCD69を見ながらキーボード68を操作して検査タイミングおよび検査レベルを指定(入力)するようになっており、前記主制御部611は、この指定に基づき記憶部613から検査タイミングに関するデータを読出し設定し、当該検査タイミングで検査を実施すべく前記モータ33等を駆動制御するようになっている。また、判定部612は、上記指定に基づき記憶部613から検査レベルに関するデータを読出し設定し、当該検査レベルに従って実装状態の良否判定を行うようになっている。
【0048】
なお、検査タイミングとして上記パラメータから複数の検査タイミングを設定可能となっており、複数の検査タイミングを設定した場合には、さらに各タイミングの検査レベルを個別に設定できるようになっている。例えば、LCD69に表示される図7に示すような画面表示に従ってオペレータが該当箇所にチャックを入れることにより、検査タイミングと検査レベルとを設定可能となっている。図示の例では、検査タイミングとして「通常」、「初品」、「最終品」および「既定数」の全てのタイミングが指定されおり、各タイミングの検査レベルがそれぞれ「1」、「2」、「3」、「2」に指定されている。なお、当実施形態では、キーボード68、LCD69及び主制御部611等により本発明の設定手段が構成されている。
【0049】
次に、上記制御装置60による検査処理動作の制御について図8のフローチャートに従って説明する。
【0050】
このフローチャートがスタートすると、まずステップS1で基板搬送手段12を駆動し、実装装置3A,3Bから搬出された基板Pを実装検査装置4に搬入する。なお、当実施形態では、検査タイミングと検査レベルの設定が事前に行われていることを前提として基板Pの搬入が行われるものとする。
【0051】
基板Pが搬入されると、検査タイミングとして「初品」が設定されているか否かを判断し、YESと判断した場合には、当該基板Pが初品、つまり生産ライン起動後、最初の基板Pか否かを判断する(ステップS2,S3)。ここでYESと判断した場合には、ステップS4に移行して当該基板Pの検査を実行する。具体的には、撮像装置40およびテーブル30を駆動することにより基板P上の実装ポイントに順次撮像装置40(カメラ52)を移動させて当該ポイントを撮像し、その画像データに基づいて各実装ポイントの実装誤差を求め、この誤差が、設定された検査レベルを満足するものか否か、つまり当該検査タイミング(「初品」)について設定された検査レベルの許容値内か否かに基づいて実装状態の合否を判定する(図7の例では、検査レベル「2」で実装状態の合否を判定する)。
【0052】
ステップS2,S3においてNOと判断した場合にはステップS8に移行し、検査タイミングとして「最終品」が設定されているか否かを判断する。ここでYESと判断した場合には、さらに当該基板Pが最終品に該当するか否かを判断し、YESと判断した場合には上記と同様にして当該基板Pの検査を実行する(ステップS9,S10)。この際、当該検査タイミング(「最終品」)について設定された検査レベルに従って合否判定を行う(図7の例では、検査レベル「3」で実装状態の合否を判定する)。
【0053】
ステップS8,S9においてNOと判断した場合にはステップS11に移行し、検査タイミングとして「既定数」が設定されているか否かを判断する。ここでYESと判断した場合には、さらに当該基板Pが既定数の基板か否かを判断し、YESと判断した場合には当該基板Pの検査を実行する(ステップS12,S13)。この際、当該検査タイミング(「規定数」)について設定された検査レベルに従って合否判定を行う(図7の例では、検査レベル「2」で実装状態の合否を判定する)。
【0054】
ステップS11,S12においてNOと判断した場合にはステップS14に移行し、検査タイミングとして「通常」が設定されているか否かを判断する。ここでYESと判断した場合には、当該基板Pの検査を実行する(ステップS15)。この際、当該検査タイミング(「通常」)について設定された検査レベルに従って合否判定を行う(図7の例では、検査レベル「1」で実装状態の合否を判定する)。
【0055】
なお、ステップS14でNOと判断した場合には、検査タイミングとして「通常」以外のタイミングが設定されているか否かを判断し(ステップS16)、ここでYESと判断した場合にはステップS6移行する。これに対してNOと判断した場合には、上記表示器74およびアラーム(図示せず)を作動させてエラー発生を報知するとともに実装検査装置4を停止させる(ステップS17)。すなわち、検査タイミングが設定されていることが基板搬入の前提となるため、ステップS16でNOの場合には何らかのエラーが発生したとしてオペレータに通報するようになっている。この通報に対してオペレータが所定のエラー処理を実行するとステップS2に移行する(ステップS18)。
【0056】
ステップS4,S10,S13,S15において基板Pの検査が実行されると、次いで検査結果が合格判定か否かを判断し(ステップS5)、ここでYESと判断した場合には当該基板Pを次工程へ搬出した後、実装検査装置4の検査処理動作を終了するか否かを判断する(ステップS6,S7)。そしてステップS7でNOと判断した場合にはステップS1に移行して次の基板Pを搬入し、YESと判断した場合には本フローチャートを終了する。
【0057】
一方、ステップS5でNOと判断した場合には、表示器74およびアラームを作動させてオペレータに対して報知するとともに実装検査装置4を停止させる(ステップS19,S20)。これに対してオペレータがLCD69に画像を表示させる等して当該基板Pを目視で判定し、その結果がキーボード68の操作に基づき入力されると、当該判定が合格判定か否かを判断する(ステップS21)。ここでYESと判断した場合にはステップS6に移行して当該基板Pを次工程に搬出する。一方、ステップS21でNOと判断した場合には、オペレータが所定の不良対応処理、例えば当該基板Pにマーキングを施した上で次工程に搬出する、あるいは当該基板Pをラインアウトさせる等の処理の終了を待ち、キーボード68の操作により当該処理の終了がオペレータにより入力されるとステップS7に移行する(ステップS22)。
【0058】
上記の制御に基づく実装検査装置4の動作について簡単にまとめると次の通りである。
【0059】
この実装検査装置4では、搬入された基板Pが事前に設定された検査タイミングの基板に該当するか否かが随時チェックされ、該当する場合にはその検査タイミングについて設定された検査レベルで当該基板Pの検査が実行され、該当しない場合には検査が行われることなく当該基板Pが次工程へと搬出される。
【0060】
検査タイミングとして複数のタイミングが設定されている場合には、それぞれのタイミングで検査が実行され、この際、搬入された基板Pが複数の検査タイミングのいずれにも該当する場合には、優先順位として「初品」、「最終品」、「既定数」、「通常」の順で、各検査タイミングについて設定された検査レベルに基づいて当該基板Pの検査が実行される。なお、このように「初品」、「最終品」、「既定数」の検査レベルを優先適用するのは、これらのタイミングでは精密度合いの高い検査が要求される場合が多いためである。
【0061】
以上のような実装検査装置4によると、撮像装置40により基板Pの撮像結果(画像データ)に基づき実装状態の良否判定を行うが、上記の通り、検査タイミングとして複数のタイミングを設定可能であり、しかも検査タイミング毎に個別に検査のレベル(精密度合い)を設定することができるので、検査タイミングおよび検査内容についての自由度が高く、効率的でメリハリのある検査を実施することが可能となり、これによって高い生産性を維持しつつ、製品基板の信頼性を向上させることができる。
【0062】
具体的には、例えば検査タイミングおよび検査レベルを予め図7に示すように設定することにより、効率的でメリハリのある検査を実施することが可能となる。すなわち、この設定によれば、大部分の基板Pについては基板毎に簡素な検査(必要な製品精度を満足し得る範囲で比較的緩い検査レベル「1」の検査)を実施することによりライン落ち基板Pの頻発を回避して基板Pの生産性を高く維持することができ、初品、最終品および既定数の基板Pについては精密な検査(すなわち検査レベル「2」,「3」の検査)を実施することによりその結果とそのときの実装誤差の傾向とから不具合の発生を事前に察知して対策を採ることが可能となる。従って、毎回同じ検査レベルで全点検査が実施される従来の検査装置と比較すると、基板Pの品質を保ちながらも効率的でメリハリのある検査が可能となり、その結果、高い生産性を維持しつつ、製品基板の信頼性を向上させることができるようになる。
【0063】
また、従来の生産ラインでは、実装ポイントの自動認識に基づいて比較的緩い検査レベルで全基板を検査しつつ、「初品」、「最終品」、「既定数」といった基板について入念なチェックを行いたい場合には、当該基板を目視等により検査することが行われていたが、上記の実装検査装置4によれば、「初品」、「最終品」、「既定数」についてのみ高いレベルで検査を実施する場合も含め、全ての検査を撮像装置40を用いた自動認識により行うことができる。そのため、従来のようなオペレータによるマニュアル作業(目視検査)を自動化することができ、その結果、基板Pの生産性を高めることができるという利点もある。
【0064】
ところで、上述した実装検査装置4およびこの装置を用いた基板Pの検査の方法(すなわち、図7に示したような設定内容で基板Pの検査を行う方法)は、本発明に係る基板検査装置および基板検査方法の一実施形態であって、その具体的な構成および方法は本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。例えば次のような装置構成を採用することもできる。
【0065】
(1)上記実施形態では、検査内容に関するパラメータとして精密度合いの異なる3段階の検査レベルを選定可能としているが、4段階、あるいはそれ以上の段階の検査レベルを選定可能としてもよい。また、検査レベル以外に、例えば検査ポイントの数をパラメータとしてもよい。すなわち、100%(全ての実装ポイントについて検査)、70%(実装ポイントのうち70%を検査)、50%(実装ポイントのうち50%を検査)といったパラメータを採用し、検査タイミングに応じて実装ポイントの数を変更するようにしてもよい。この場合、検査レベルと検査ポイントの数の双方を設定可能に構成してもよい。
【0066】
(2)上記実施形態では、検査タイミングに関するパラメータとして「通常」「初品」「最終品」「既定数」といった4つのタイミングが設定可能となっているが、3つ以下、あるいは5つ以上のタイミングを設定可能としてもよい。また、「既定数」についてはさらにキーボード68の操作により任意の数を設定可能に構成してもよい。
【0067】
(3)上記実施形態では、検査タイミングとして複数のタイミングが設定された場合には、優先順位として「初品」「最終品」「既定数」「通常」の順で、各検査タイミングについて設定された検査レベルで基板Pの検査を行うようにしているが(図8参照)、各タイミングについて設定されている検査レベルを比較し、その結果、レベルの高い方の検査レベルから順に検査を行うようにしてもよい。
【0068】
(4)上記実施形態では、設定したタイミングで自動的に検査を実行するようにしているが、設定タイミングのうちマニュアル操作で検査を行えるものを設定できるように構成してもよい。この場合、例えば図7に示した表示例にさらにマニュアル操作用のチェック欄を設け、チェックされたタイミングについては、当該タイミングに該当する基板Pが実装検査装置4に搬入された段階でオペレータに報知し、キーボード操作によるオペレータの指示入力を待って検査を実行するように構成することができる。このような構成によれば、特定のタイミングの検査についてオペレータが付き添った状態で検査を行うことが可能となるため、オペレータの目視検査を含めたより入念な検査が求められる場合に有用となる。
【0069】
(5)上記実施形態では、検査タイミングに関するパラメータおよび検査内容に関するパラメータの双方を設け、オペレータが検査タイミングと検査内容の組み合わせを任意に設定できるようにしているが、検査タイミング又は検査内容の何れか一方のパラメータのみ設けるようにしてもよい。具体的には、複数の検査タイミングを予め固定的に設定しておき、各検査タイミングの検査内容としてオペレータが上記検査レベル等を任意に設定できるようにしてもよい。また、複数の検査タイミングを任意に選定可能としておき、オペレータが選定した検査タイミングで、当該検査タイミングについて予め固定的に設定されている検査内容に従って検査を実施するようにしてもよい。これらの構成の場合も、検査タイミングや検査内容についての設定の自由度を高めることができ、その結果、基板の種類や処理の内容に応じて効率的でメリハリのある検査を行うことが可能となる。
【0070】
(6)上記実施形態では、実装装置3A,3Bによる実装処理後の基板Pを検査する実装検査装置4に本発明を適用した例について説明したが、本発明は、印刷検査装置2やはんだ付検査装置6についても勿論適用可能である。この場合、検査タイミングに関するパラメータや検査内容に関するパラメータについては、各装置2,6に応じて適宜選定するようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明が適用される回路基板の生産ラインを示す模式図である。
【図2】実装検査装置を示す平面略図である。
【図3】実装検査装置を示す正面略図である。
【図4】実装検査装置の制御系を示すブロックである。
【図5】制御部本体のうち基板の検査を実行するための機能構成を示すブロック図である。
【図6】検査ポイント(実装ポイント)と検査レベルとの関係(データ例)を示す図である。
【図7】LCDに表示された検査タイミングおよび検査レベルの設定例を示す図である。
【図8】制御装置による検査処理動作の制御例を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0072】
1 クリームはんだ印刷装置
2 印刷検査装置
3A,3B 実装装置
4 実装検査装置
5 リフロー炉
6 はんだ付検査装置
8 中央管理装置
60 制御装置
61 制御部本体
68 キーボード
69 LCD
611 主制御部
612 判定部
613 記憶部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基板を順次搬送しながらペースト塗布、部品実装、リフローの少なくとも一つの処理を基板に施す処理装置の下流側に設けられ、前記処理が施された基板を撮像手段により撮像してその画像データに基づき前記処理の良否を検査する装置であって、
前記撮像手段により撮像された基板の画像データに基づいて前記処理の良否を判定する判定手段と、
検査タイミングに関するパラメータを記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて検査タイミングを設定可能とする設定手段と、
この設定手段により設定された検査タイミングで、かつ当該検査タイミングについて予め設定されている検査内容に従って前記検査を実施すべく前記撮像手段および判定手段を制御する制御手段とを備え、
前記設定手段は、検査タイミングに関する前記パラメータから複数のタイミングを設定可能に構成されていることを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
複数の基板を順次搬送しながらペースト塗布、部品実装、リフローの少なくとも一つの処理を基板に施す処理装置の下流側に設けられ、前記処理が施された基板を撮像手段により撮像してその画像データに基づき前記処理の良否を検査する装置であって、
前記撮像手段により撮像された基板の画像データに基づいて前記処理の良否を判定する判定手段と、
検査内容に関するパラメータを記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて検査内容を設定可能とする設定手段と、
予め設定されている検査タイミングで、かつ前記設定手段により設定された検査内容に従って前記検査を実施すべく前記撮像手段および判定手段を制御する制御手段とを備え、
前記設定手段は、前記検査タイミングとして複数の検査タイミングが予め設定されている場合には、検査タイミング毎に個別に検査内容を設定可能に構成されていることを特徴とする基板検査装置。
【請求項3】
複数の基板を順次搬送しながらペースト塗布、部品実装、リフローの少なくとも一つの処理を基板に施す処理装置の下流側に設けられ、前記処理が施された基板を撮像手段により撮像してその画像データに基づき前記処理の良否を検査する装置であって、
前記撮像手段により撮像された基板の画像データに基づいて前記処理の良否を判定する判定手段と、
検査タイミングに関するパラメータおよび検査内容に関するパラメータを記憶する記憶手段と、
この記憶手段に記憶された前記パラメータに基づいて検査タイミングおよび検査内容を設定可能とする設定手段と、
この設定手段により設定された検査タイミングおよび検査内容に従って前記検査を実施すべく前記撮像手段および判定手段を制御する制御手段とを備え、
前記設定手段は、検査タイミングに関する前記パラメータから複数のタイミングを設定可能に構成され、かつその設定タイミング毎に個別に検査内容を設定可能に構成されていることを特徴とする基板検査装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の基板検査装置において、
検査内容に関する前記パラメータとして精密度合いである検査レベルが予め記憶されており、前記制御手段は、設定された検査レベルに対応する検査内容に従って前記検査を実施することを特徴とする基板検査装置。
【請求項5】
請求項1又は3に記載の基板検査装置において、
前記設定手段は、さらに設定タイミングのうちマニュアル操作で検査を行うものを設定可能に構成され、前記制御手段は、前記マニュアル操作で検査を行うタイミングについてはオペレータによる指示操作を待って検査を実行するように構成されていることを特徴とする基板検査装置。
【請求項6】
請求項4に係る基板検査装置を用いた基板の検査方法であって、
前記検査タイミングとして基板毎に検査を実施する第1タイミングと特定の基板に検査を実施する第2タイミングとを設定し、かつ第1タイミングで実施する検査に比べて第2タイミングで実施する検査の精密度合いが高くなるように検査レベルを設定し、この設定内容に従って基板の検査を実施することを特徴とする基板検査方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−214820(P2006−214820A)
【公開日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−26703(P2005−26703)
【出願日】平成17年2月2日(2005.2.2)
【出願人】(000010076)ヤマハ発動機株式会社 (3,045)
【Fターム(参考)】