説明

基板検査装置

【課題】対物レンズの倍率を上げることなく、基板端部を詳細に観察することができる基板検査装置を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明に係る基板検査装置は、ウェハ2を保持するウェハホルダ14と、ウェハ2の端部を観察するラインセンサカメラ20と、ウェハ2の端部とラインセンサカメラ20とを相対移動させるウェハ支持部10とを備えている。ラインセンサカメラ20は、ウェハ2の端部に照射された照明光の反射光を受光するラインセンサ24を有しており、またラインセンサ24は、ウェハ2の相対移動方向に対して斜めに交差する向きに配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状の被検基板の端部を検査する基板検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置に用いられる半導体ウェハ(以下、単にウェハと称する)は、例えば厚みが1mm未満の円盤状に形成されており、そのため半導体装置の製造過程において外周端部に欠け、割れ等(以下、単に欠陥と呼ぶ)が発生することがあり、それらの欠陥を防ぐために、切り出されたウェハの外周端部に面取りを施している。また、上記のように面取りを施した場合においても、搬送装置の不具合等によりウェハの外周端部に欠陥が生じることがある。この欠陥は、ウェハに回路を焼き付ける際に不良発生の原因ともなるために、例えば特許文献1に示すような基板検査装置を用いて、ウェハを回転させながら欠陥の有無を検査することが知られている。また、特許文献1には、外周端部の欠陥部分をCCDカメラで撮像することにより、欠陥部分を検査する手法が開示されている。
【0003】
【特許文献1】特開2004−325389号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の基板検査装置において、ラインセンサを用いて画像を取得する場合、画面視野内に基板端部を大きく投影するために対物レンズの倍率を上げることで焦点深度が浅くなり、基板端部を大きく投影することが困難であるという課題があった。
【0005】
以上のような課題に鑑みて、本発明では、対物レンズの倍率を上げることなく基板端部を詳細に観察することができる基板検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る基板検査装置は、被検基板を保持する保持部と、前記被検基板の端部を観察する観察部と、前記被検基板の端部と前記観察部とを相対的に移動させる移動部とを備えている。そして、前記観察部は、前記被検基板に照射された観察光の反射光を受光するライン状の受光部を有しており、また、前記ライン状の延在方向は、前記相対移動方向に対して斜めに交差する向きに配置されている。
【0007】
上記構成の基板検査装置において、前記移動部は、円盤状の前記被検基板の中心部を回転軸として前記被検基板を回転させ、前記観察部は、前記被検基板の側端面と対向して配置されている構成が好ましい。さらに、上記構成の基板検査装置において、前記観察部は、前記移動部により移動する前記被検基板の端部を観察し、前記受光部において得られた観察結果を合成する合成部を備えている構成が好ましい。また、上記構成の基板検査装置において、前記観察部は、前記受光部に像を結像させる光学系を有しており、前記光学系が倍率約10倍で構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る基板検査装置によれば、対物レンズの倍率を上げることなく基板端部を詳細に観察することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の好ましい実施形態について説明する。図1に本発明に係る基板検査装置の一例を示しており、この基板検査装置1は、ウェハ2の端部近傍を撮像することにより、端部近傍において欠陥発生の有無を検査するように構成されている。ここで説明の便宜上、図1に示す矢印の方向をXYZ方向として定義する。
【0010】
まず、被検対象であるウェハ2について説明する。ウェハ2は、薄い円盤状に形成されており、その直径は規格(SEMI)管理されているため略円形とみなすことが可能であり、また表面にはウェハ2から取り出される複数の半導体チップ(チップ領域)に対応した回路パターン(図示せず)が形成される。図2に示すように、ウェハ2の上表面2eにおける外周端部内側には、回路パターンが形成されていない上ベベル部2cが径方向に幅Dを有してリング状に形成され、この上ベベル部2cの径方向内側に回路パターンが形成される。また、ウェハ2の下平面2hにおける外周端部内側には、下ベベル部2dが上ベベル部2cと表裏対称に形成される。そして、上ベベル部2cと下ベベル部2dとに繋がるウェハ端面には、アペックス部2iが形成される。なお、図1に示すように、ウェハ2の外周端部には、位置決めとして使用する所定形状に切り欠かれたノッチ2aが1つ形成されている。
【0011】
基板検査装置1は、図1に示すように、ウェハ支持部10およびラインセンサカメラ20を主体に構成されている。ウェハ支持部10は、θステージ12、回転軸13、ウェハホルダ14から構成されている。θステージ12は、内部にθ駆動機構(図示せず)を有しており、θ駆動機構が駆動することにより、回転軸13をZ軸方向に延びた回転中心軸Aを中心として矢印Bの方向に回転させる構成となっている。回転軸13は、θステージ12からZ軸正方向に延びており、θ駆動機構が駆動することにより回転し、回転軸13に連結されたウェハホルダ14を一体回転させる。ウェハホルダ14は、略円盤状に形成されており、その内部に設けられた真空吸着機構(図示せず)により、ウェハホルダ14上に載置されたウェハ2の下平面2hを吸着保持する構成となっている。
【0012】
また、ウェハホルダ14によって吸着保持されたウェハ2は、その上表面2eおよび下平面2hがXY平面と平行となっており、つまりウェハ2は、回転中心軸Aと直交するような位置関係となって吸着保持されている。なお、ウェハ2はウェハホルダ14よりも大きな径を有しているため、ウェハホルダ14上に吸着保持された状態において、ウェハ2の外周端部に形成された上ベベル部2c、下ベベル部2dおよびアペックス部2iは、ウェハホルダ14の外周端部から径方向側方にはみ出るようになっている。
【0013】
ラインセンサカメラ20は、照明光源21、落射照明光学系22、対物レンズ23、ラインセンサ24およびレンズ25を主体に構成されている。照明光源21から発光された光は、落射照明光学系22において集光されて、ウェハ2の端部近傍(上ベベル部2e、下ベベル部2dおよびアペックス部2i)に照射される。ラインセンサ24は、直線状に並んで配置された連続画像取得可能な複数の画素24aを有したセンサであり、ウェハ2の端部の像が、例えば倍率が10倍の対物レンズ23により拡大され、例えば倍率が1倍のレンズ25を介してラインセンサ24上に投影されて結像される。そして、投影されたウェハ2の端部の像が、明視野像として基板検査装置1の外部に設けられたディスプレイ100に出力される。なお、上ベベル部2eおよび下ベベル部2dで反射した照明光は、そのほとんどがラインセンサカメラ20に到達しないため、よって、ラインセンサ24によってアペックス部2iのみが撮像されることになる。
【0014】
また、ラインセンサ24は、ラインセンサカメラ20の内部において、ウェハ2に対して所望角度となるように角度変更自在となっている。ここで、図1の矢印IIIの方向から見たウェハ2とラインセンサ24との角度関係を示したものが図3であるが、本実施例においては、図3(a)および図3(b)に示すように、回転中心軸Aに対してラインセンサ24を傾斜角度θだけ傾斜させて配置して、ウェハ2の外周端面の像を取得する構成となっている。
【0015】
さらに、ラインセンサカメラ20は、ウェハ2のアペックス部2iと対向するように配置され、ウェハ2の回転中心軸Aと直交する方向からアペックス部2iを撮像するようになっている。こうすることで、ウェハ支持部10に支持されたウェハ2を回転させると、ウェハ2の外周端部、すなわちアペックス部2iが周方向へ相対移動する。よって、アペックス部2iと対向するように配置されたラインセンサカメラ20は、アペックス部2iを周方向へ連続的に撮像することができ、最終的にはウェハ2の全周にわたってアペックス部2iを撮像可能となる。
【0016】
以上、ここまでは基板検査装置1の各構成部材について説明したが、以下において、ウェハ2の端部を検査する際の各構成部材の動作について説明する。
【0017】
まず、ウェハ2がウェハホルダ14上に吸着保持された状態において、ウェハ2を回転中心軸Aを中心として矢印Bの方向に連続回転させながら、ラインセンサカメラ20によって、回転するウェハ2の外周端面を撮像する。このとき、図3(a)に示すように、ラインセンサ24の画素24aの列が回転中心軸Aに対して傾斜角度θだけ傾斜して配置されているので、図3(b)に示すように、ウェハ2の外周端面の撮像に関与するのは、例えばハッチングを施した5つの画素24bである。そして、5つの画素24bに投影された外周端面(アペックス部2i)の像が、ディスプレイ100に出力されることにより外周端面(アペックス部2i)が幅D1の大きさで表示される(図3(c)を参照)。
【0018】
このとき、ラインセンサカメラ20は、連続してウェハ2の外周端面の像を取得する構成となっており、また、ラインセンサ24上において一度に撮像される像は、図3(b)に示すように画素24aの列に沿った細長い領域に限られる。そこで、連続取得された像をメモリ(図示せず)に記憶しておき、記憶された複数の像を合成することで1つの表示画面分の明視野像とした後、ディスプレイ100に順次出力される。そうすることで、ディスプレイ100に外周端面(アペックス部2i)の明視野像が順次表示され、目視によって欠陥の有無が検査可能となる。
【0019】
ここで、上述の基板検査装置1において、図4(a)に示すように、ラインセンサ24の画素24aの列が、回転中心軸Aと平行となるようにラインセンサ24を配置した場合について説明する。この場合、図4(b)に示すようにウェハ2の外周端面の撮像に関与するのは、例えばハッチングを施した3つの画素24cである。そして、3つの画素24cに投影された外周端面(アペックス部2i)の像が、ディスプレイ100に出力されることにより、外周端面(アペックス部2i)が幅D2の大きさで表示されることになる(図4(c)を参照)。
【0020】
このとき、本実施例から得られた幅D1と幅D2とを比較すると、撮像に関与した画素の個数に比例するので、例えば幅D1は幅D2の5/3倍だけ拡大されて表示されることになる。さらに、ラインセンサ24の傾斜角度θと、そのときディスプレイ100に表示されるウェハ2の外周端面の幅との関係を、より詳細に示した説明図が図5である。図5において、点線で示す円は対物レンズ23の視野23aを示しており、この視野23a内におけるラインセンサ24の有効領域長さを2rとする。このとき、回転中心軸Aに対してラインセンサ24を傾斜角度θだけ傾斜させて配置することで、cosθ=x/rの関係が成立する。よって、傾斜角度θだけ傾斜させると撮像領域は図4(a)に示す場合と比較してr/x倍、つまり、1/cosθ倍に拡大されてディスプレイ100に表示可能となる。
【0021】
本発明による効果を簡潔にまとめると、第1に、回転中心軸Aに対してラインセンサ24を傾斜させて配置するという簡易な方法によって、ラインセンサ24の検出領域を有効活用して、ウェハ2の外周端面の幅をディスプレイ100の画像視野内に拡大表示できるので、よって、端面検査の作業効率を高めることができるとともに、より厳格に検査を行うことが可能となる。第2に、回転中心軸Aに対してラインセンサ24を傾斜させる際に、対物レンズの倍率を上げることがないので焦点深度が浅くなることがなく、また、対物レンズ23の視野23a内で行う角度変更なので照明光量が低下せず、よって、撮像画像に影響を及ぼすことなくウェハ2の外周端面の幅を拡大表示可能となる。
【0022】
上述の実施例において、さらにラインセンサカメラ20をウェハ2のZ軸正方向およびZ軸負方向に対向するように追加して設置し、これらのカメラで上ベベル部2cおよび下ベベル部2dを撮像時においても、ウェハ2の回転進行方向に対してラインセンサ24を傾斜させることで、撮像倍率を適切に調整する構成も可能である。
【0023】
上述の実施例において、回転中心軸Aに対してラインセンサ24を傾斜させる際の傾斜角度θは特に制限がなく、ディスプレイ100に表示されるアペックス部2iの明視野像が、所望幅となるように任意に変更可能である。
【0024】
上述の実施例において、2000ピクセルで全長14mmのCCD(7μm/ピクセル)を使って、12インチウェハを観察する場合で説明したために、対物レンズ23とレンズ25による光学系の倍率を10倍とした。厚さ0.8mm(0.775±0.025mm)の12インチウェハでは、アペックス部の厚さは0.4mm程度であり、10倍の光学系を用いれば、ラインCCDを45°傾けると約40%のCCDを使うことになり、多少ウェハにソリがあっても観察領域からアペックスが外れることはない。このように約10倍の光学系を用いることが適していた。しかし、これに限ることなく、観察対象が大きければ光学系の倍率を下げることができ、CCDの全長が長ければ、光学系の倍率を上げることができる。つまり、ディスプレイ100に表示されるアペックス部2iの明視野像が所望幅となるように任意に倍率を変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る基板検査装置の構成を示す斜視図である。
【図2】図1のII−II部分を示す断面図である。
【図3】回転中心軸に対してラインセンサを傾斜させて撮像する場合の説明図である。
【図4】回転中心軸と平行にラインセンサを配置して撮像する場合の説明図である。
【図5】ラインセンサの傾斜角度と撮像範囲の関係を示す説明図である。
【符号の説明】
【0026】
1 基板検査装置 2 ウェハ(被検基板)
10 ウェハ支持部(移動保持部) 20 ラインセンサカメラ(観察部)
23 対物レンズ(光学系) 24 ラインセンサ(受光部)
25 レンズ(光学系)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検基板を保持する保持部と、
前記被検基板の端部を観察する観察部と、
前記被検基板の端部と前記観察部とを相対的に移動させる移動部とを備えた基板検査装置において、
前記観察部は、前記被検基板に照射された観察光の反射光を受光するライン状の受光部を有し、
前記ライン状の延在方向は、前記相対移動方向に対して斜めに交差する向きに配置されていることを特徴とする基板検査装置。
【請求項2】
前記移動部は、円盤状の前記被検基板の中心部を回転軸として前記被検基板を回転させ、
前記観察部は、前記被検基板の側端面と対向して配置されていることを特徴とする請求項1に記載の基板検査装置。
【請求項3】
前記観察部は、前記移動部により移動する前記被検基板の端部を観察し、前記受光部において得られた観察結果を合成する合成部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の基板検査装置。
【請求項4】
前記観察部は、前記受光部に像を結像させる光学系を有しており、前記光学系が倍率約10倍で構成されていることを特徴とする請求項1から3に記載の基板検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2009−31125(P2009−31125A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195467(P2007−195467)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】