基板用コネクタの接続構造および基板用コネクタ
【課題】基板用コネクタにおける厳密な端子平坦度の管理を不要にする。
【解決手段】本発明は、回路基板40に接続された基板用コネクタ10の接続構造であって、ハウジング11と、回路基板40の表面41に接触した上段側接点部22を有し、ハウジング11に保持された上段側基端部23と上段側接点部22との間で弾性的に変形した上段側端子20と、回路基板40の裏面42に接触した下段側接点部32を有し、ハウジング11に保持された下段側基端部33と下段側接点部32との間で弾性的に変形した下段側端子30とを備え、基板用コネクタ10が回路基板40に接続される前においては、回路基板40の板厚方向における上段側接点部22と下段側接点部32との離間距離S1が、回路基板40の板厚Tよりも小さい構成としたところに特徴を有する。
【解決手段】本発明は、回路基板40に接続された基板用コネクタ10の接続構造であって、ハウジング11と、回路基板40の表面41に接触した上段側接点部22を有し、ハウジング11に保持された上段側基端部23と上段側接点部22との間で弾性的に変形した上段側端子20と、回路基板40の裏面42に接触した下段側接点部32を有し、ハウジング11に保持された下段側基端部33と下段側接点部32との間で弾性的に変形した下段側端子30とを備え、基板用コネクタ10が回路基板40に接続される前においては、回路基板40の板厚方向における上段側接点部22と下段側接点部32との離間距離S1が、回路基板40の板厚Tよりも小さい構成としたところに特徴を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板用コネクタの接続構造および基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板の実装面に接続される複数の端子を備えた基板用コネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この基板用コネクタは、回路基板の実装面に載置されるハウジングを有している。端子は、ハウジングの背面から回路基板の実装面に向けて鉛直方向に延出された後、回路基板の実装面に沿って水平方向に延出されており、この水平方向に延出された部分が回路基板の実装面に接続される接点部とされている。
【0003】
また、ハウジングの両側部には、このハウジングを回路基板に固定する固定部材が装着されており、この固定部材の下端には、回路基板の実装面に半田付けされる接続部が形成されている。実装に際しては、回路基板の実装面における所定の載置位置に予めクリーム半田を印刷しておき、この印刷されたクリーム半田上に対応する接点部および接続部が配置されるように基板用コネクタを回路基板の実装面に載置する。そして、この回路基板をリフロー炉に通すことで半田付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−53025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような表面実装型の基板用コネクタでは、端子の接点部と固定部材の接続部とに対して厳密な端子平坦度が必要とされている。その理由は、端子平坦度が規格値から外れた場合には端子の接点部がクリーム半田と非接触状態となって半田接続がされないなどの不具合が発生してしまうからである。この対策として、全ての基板用コネクタについて接点部の端子平坦度を検査してから実装を行う方法では検査コストや検査時間などの面からも現実的ではなく、厳密な端子平坦度の管理が不要となる接続方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、基板用コネクタにおける厳密な端子平坦度の管理を不要にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回路基板に接続された基板用コネクタの接続構造であって、ハウジングと、回路基板の表面に接触した第1接点部を有し、ハウジングに保持された第1基端部と第1接点部との間で弾性的に変形した第1端子と、回路基板の裏面に接触した第2接点部を有し、ハウジングに保持された第2基端部と第2接点部との間で弾性的に変形した第2端子とを備え、基板用コネクタが回路基板に接続される前においては、回路基板の板厚方向における第1接点部と第2接点部との離間距離が、回路基板の板厚よりも小さい構成としたところに特徴を有する。
【0008】
また、本発明は、回路基板に接続される基板用コネクタであって、ハウジングと、回路基板の表面に接触する第1接点部を有し、ハウジングに保持された第1基端部と第1接点部との間で弾性的に変形可能とされた第1端子と、回路基板の裏面に接触する第2接点部を有し、ハウジングに保持された第2基端部と第2接点部との間で弾性的に変形可能とされた第2端子とを備え、回路基板の板厚方向における第1接点部と第2接点部との離間距離は、回路基板の板厚よりも小さい構成としたところに特徴を有する。
【0009】
このような構成によると、回路基板を第1接点部と第2接点部とによって弾性的に挟み付けることができる。したがって、第1端子を回路基板の表面に対して確実に接続することができ、第2端子を回路基板の裏面に対して確実に接続することができる。これにより、基板用コネクタにおける厳密な端子平坦度の管理が不要になる。
【0010】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
回路基板の端部に凹部が切り欠き形成されており、ハウジングは、回路基板の板厚方向に貫通する形態で凹部に適合して装着されている構成としてもよい。
【0011】
このような構成によると、回路基板の板厚方向に貫通する形態でハウジングを回路基板に装着できるため、例えば回路基板の表面側に配置される第1ハウジングと、回路基板の裏面側に配置される第2ハウジングと、第1および第2ハウジングを連結する連結部とからなる略門形のハウジングを形成した場合よりも、ハウジングを回路基板の板厚方向に低背化することができる。つまり、略門形のハウジングでは、第1ハウジングと第2ハウジングの間で対向する対向壁が余分に必要となることに加えて、回路基板の板厚が必要になる。その点、凹部に適合して装着されるハウジングとした場合には、対向壁の板厚と回路基板の板厚が不要になるため、これらの板厚分だけ低背化することができる。
【0012】
また、凹部に適合してハウジングを回路基板に装着できるため、凹部の切り欠き形状にハウジングを合わせることで回路基板の表面に沿った方向における位置決めを行うことができる。このため、例えば部品実装機を用いて基板用コネクタを回路基板に高精度で載置しなくてもよい。
【0013】
ハウジングの側部には、凹部の側縁に接触する段部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、ハウジングの段部を凹部の側縁に接触させることで回路基板の板厚方向における位置決めを行うことができる。
【0014】
ハウジングの側部には、回路基板の表面に半田付けされた基板側接続部を有する固定部材が装着されており、基板側接続部と段部は、回路基板の表面に沿って面一をなして配置されている構成としてもよい。
このような構成によると、ハウジングの段部を回路基板の表面における凹部の側縁に接触させることで固定部材の基板側接続部を回路基板の表面に対して確実に接触させることができる。
【0015】
段部は、回路基板の表面側に形成されており、第2接点部の接圧は、第1接点部の接圧よりも高めに設定されている構成としてもよい。
このような構成によると、第2接点部の接圧が第1接点部の接圧よりも高いため、ハウジングが回路基板の表面側から裏面側へ引っ張られ、段部を凹部の側縁に対して確実に接触させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板用コネクタにおける厳密な端子平坦度の管理を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の基板用コネクタの接続構造を背面・平面・左側面側から見た斜視図
【図2】図1において基板用コネクタを回路基板に接続する前の状態を示す分解斜視図
【図3】基板用コネクタの接続構造を正面・平面・右側面側から見た斜視図
【図4】基板用コネクタの接続構造の正面図
【図5】基板用コネクタの接続構造の平面図
【図6】基板用コネクタの接続構造の左側面図
【図7】図4におけるA−A線断面図
【図8】図5におけるB−B線断面図
【図9】基板用コネクタを回路基板に装着する前の状態を簡易的に示した断面図
【図10】基板用コネクタの端子によって回路基板を挟み付ける直前の状態を簡易的に示した断面図
【図11】基板用コネクタを回路基板に装着した後の状態を簡易的に示した断面図
【図12】複数の端子の接点部の高さが異なる様子を簡易的に示した図
【図13】図6におけるC部を拡大して示した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図13の図面を参照しながら説明する。本実施形態における基板用コネクタの接続構造は、図1ないし図3に示すように、一つの基板用コネクタ10を回路基板40の表面41と裏面42の両面に接続したものを例示している。この基板用コネクタ10は、相手側コネクタ(図示せず)と嵌合可能なハウジング11を有している。このハウジング11は合成樹脂製であって、相手側コネクタが内部に嵌合可能なフード状とされている。なお、以下の説明において前後方向とは両コネクタ10の嵌合方向を基準とし、相手側コネクタとの嵌合が開始される側を前側とする。
【0019】
ハウジング11は左右方向に横長で、左右方向に比べて上下方向(回路基板40の板厚方向)が短寸の扁平形状をなしている。ハウジング11の後端には、左右方向に横長の長方形状をなす後壁12が設けられており、この後壁12の左右方向両側縁から前方に延びる形態で両側壁13,13が設けられている。また、後壁12の上縁から前方に延びる形態で天井壁14が設けられ、後壁12の下縁から前方に延びる形態で底壁15が設けられている。両側壁13,13と天井壁14と底壁15は互いに連結されており、ハウジング11は全体として角筒状とされている。
【0020】
ハウジング11の後壁12には、複数の上段側端子20と複数の下段側端子30とが前後方向に貫通する形態で圧入、保持されている。上段側端子20のうち相手側コネクタに設けられた相手側端子(図示せず)と接続される部分は、上段側接続部21とされている。同様に、下段側端子30のうち相手側コネクタの相手側端子と接続される部分は、下段側接続部31とされている。両接続部21,31は、図7に示すように、ハウジング11の内部で前方に突出する形態をなしている。また、上段側接続部21は、図4に示すように、左右方向に横並びで複数配置されており、下段側接続部31も同様に左右方向に横並びで複数配置されている。両接続部21,31の数はいずれも同じであり、例えば左端から数えて同じ番地の接続部21,31同士が上下方向に並ぶように配置されている。
【0021】
上段側端子20のうち回路基板40の表面41に接触した部分は、図13に示すように、上段側接点部22とされている。同様に、下段側端子30のうち回路基板40の裏面42に接触した部分は、下段側接点部32とされている。一方、上段側端子20のうち後壁12に保持された部分は上段側基端部23とされ、下段側端子30のうち後壁12に保持された部分は下段側基端部33とされている。また、上段側端子20のうち上段側接点部22よりも後方部分は回路基板40の表面41から離れるようにして斜め後方に立ち上がる上段側誘導部24とされ、下段側端子30のうち下段側接点部32よりも後方部分は回路基板40の裏面42から離れるようにして斜め後方に立ち上がる下段側誘導部34とされている。
【0022】
上段側端子20は、上段側基端部23から回路基板40の表面41と平行となる水平姿勢で後方に延び、その後端から回路基板40の表面41に向けて下方に延び、その下端から回路基板40の表面41に沿って後方に延びるようにして上段側接点部22が配され、その後端から斜め後方に延びるようにして上段側誘導部24が配された構成とされている。同様に、下段側端子30は、下段側基端部33から回路基板40の裏面42と平行となる水平姿勢で後方に延び、その後端から回路基板40の裏面42に向けて上方に延び、その上端から回路基板40の裏面42に沿って後方に延びるようにして下段側接点部32が配され、その後端から斜め後方に延びるようにして下段側誘導部34が配された構成とされている。
【0023】
ハウジング11の両側壁13,13には、図4に示すように、金属板材からなる一対の固定部材50,50が装着されている。この固定部材50は、母材となる金属平板を略直角に折り曲げて形成されており、ハウジング11の側壁13に配されたコネクタ側取付部51と、このコネクタ側取付部51の下縁から回路基板40の表面41に沿って延びる基板側接続部52とから構成されている。コネクタ側取付部51は、ハウジング11の側壁13に対して圧入などの固定手段によって固定されている。一方、基板側接続部52は、回路基板40の表面41に半田付けされている。
【0024】
ところで、回路基板40の端部には、図2に示すように、凹部43が切り欠き形成されている。この凹部43には、ハウジング11が適合して装着されており、このハウジング11は、回路基板40を上下方向に貫通する形態で配置されている。一方、ハウジング11の側壁13における上下方向略中央部には、段部16が設けられている。この段部16は、回路基板40の表面41側における凹部43の左右両側縁44,44に接触している。すなわち、ハウジング11の側壁13は、段部16を境として上段側が下段側よりも突出する形態をなしている。したがって、凹部43の内壁は、ハウジング11の側壁13における段部16よりも下側(下段側端子30に対応する側壁13)に接触している。これにより、ハウジング11の両側壁13,13が、凹部43の左右両側縁44,44に対して凹部43の内側から接触した状態となることで、ハウジング11は、左右方向に位置決めされる。
【0025】
また、ハウジング11の後壁12の後面は、凹部43の後側縁45に接触している。これにより、ハウジング11が凹部43の後側縁45によって前後方向に位置決めされる。
【0026】
固定部材50のコネクタ側取付部51は、ハウジング11の側壁13における段部16よりも上側(上段側端子20に対応する側壁13)に取り付け固定されている。ここで、固定部材50の基板側接続部52の下面と段部16の下面とはほぼ面一をなしており、回路基板40の表面41に沿う形態とされている。したがって、両段部16の下面を凹部43の左右両側縁44の上面に接触させると、基板側接続部52の下面が回路基板40の表面41に接触することになる。
【0027】
さて、本実施形態における基板用コネクタ10を回路基板40に接続する前の状態では、図9に示すように、上下方向に隣り合う両接点部22,32が上下方向に対向した状態で配置されており、両接点部22,32の対向部間の離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるように設定されている。しかも、上下方向に隣り合う両誘導部24,34が上下方向に対向した状態で配置されており、両誘導部24,34の先端部間における離間距離S2が回路基板40の板厚Tよりも大きくなるように設定されている。
【0028】
このため、図10に示すように、基板用コネクタ10を回路基板40に接近させると、両誘導部24,34のテーパ面が凹部43の後側縁45に接触し、さらに基板用コネクタ10を回路基板40に接近させていくと、両誘導部24,34のテーパ面が凹部43の後側縁45に摺接しつつ両接点部22,32が回路基板40の表裏両面41,42に乗り上げ、図11に示すように、両接点部22,32が回路基板40の表裏両面41,42に接続される。この間、各端子20,30が基端部23,33と接点部22,32との間で弾性的に撓み変形するため、両接点部22,32は回路基板40の表裏両面41,42に対して弾性的に接触する。
【0029】
ここで、両接点部22,32の離間距離S1は、次のように定義される。図12は、複数の端子20,30の接点部22,32の高さが異なる様子を簡易的に示した図であって、3つの上段側端子20と3つの下段側端子30を例示したものである。また、上段側端子20と下段側端子30との間に示した一点鎖線は、基準線DLである。3つの上段側端子20のうち基準線DLから最も離れた位置にある上段側端子20が左から2番目のものとした場合、この上段側端子20の基準線DLからの離間距離をL1とし、3つの下段側端子30のうち基準線DLから最も離れた位置にある下段側端子30が左から1番目のものとした場合、この下段側端子30の基準線DLからの離間距離をL2とすると、両接点部22,32の離間距離S1は、S1=L1+L2と定義される。さらに、離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるように設定することで全ての端子20,30の接点部22,32を回路基板40の表裏両面41,42に対して弾性的に接触させることができる。
【0030】
このようにすれば、端子平坦度の管理方法として従来より採用されているコプラナリティ(部品をその台座面に置いたときの、接点部の高さの最低値と最高値の差)による管理が不要になる。すなわち、両接点部22,32の離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるようにする管理方法であれば、端子20,30自身のばね性を利用して接点部22,32間の高さのバラツキを吸収できるため、端子平坦度の厳密な管理が不要になる。さらに、回路基板40の板厚Tの公差を加味して両接点部22,32の離間距離S1を設定することにより、回路基板40の板厚Tのバラツキにかかわらず、全ての接点部22,32を回路基板40の表裏両面41,42に対して確実に接触させることができる。
【0031】
また、上段側端子20のうち下方に延びる部分は、下段側端子30のうち上方に延びる部分よりも長めに形成されているため、下段側端子30の剛性が上段側端子20の剛性よりも高くなっている。したがって、上段側端子20の撓み量と下段側端子30の撓み量とが同じ場合には、下段側接点部32の回路基板40の裏面42に対する接圧は、上段側接点部22の回路基板40の表面41に対する接圧よりも高くなる。このように下段側接点部32の接圧を上段側接点部22の接圧よりも高めに設定することで、ハウジング11は下方へ(回路基板40の表面41から裏面42に向かう方向に)引っ張られることになり、両段部16,16を凹部43の左右両側縁44,44に対して確実に接触させることができる。これと同時に、両固定部材50,50の両基板側接続部52,52を回路基板40の表面41に対して確実に接触させることができる。
【0032】
なお、上記の説明においては詳細に説明していなかったものの、本実施形態における回路基板40は、例えばプリント配線技術によって表面41と裏面42の双方に回路パターン(図示せず)が形成されており、表面41の回路パターンと裏面42の回路パターンがスルーホール接続された両面基板とされている。上段側接点部22は、表面41の回路パターンに形成されたランド(図示せず)に接触して半田で接続されており、下段側接点部32は、裏面42の回路パターンに形成されたランド(図示せず)に接触して半田で接続されている。
【0033】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、図9に示すように、回路基板40のランド(図示せず)にクリーム半田Hを印刷しておき、回路基板40に対して基板用コネクタ10を前方から装着していく。この間、基板用コネクタ10は、ハウジング11が凹部43の左右両側縁44,44によって左右方向から挟まれた状態となり、左右方向の位置決めがなされた状態で凹部43に装着される。また、基板用コネクタ10は、ハウジング11の両段部16,16が凹部43の左右両側縁44,44に摺接した状態となり、上下方向の位置決めがなされた状態で凹部43に装着される。これにより、両端子20,30は、正規の装着姿勢で凹部43の後端縁45に近づいていく。
【0034】
次に、図10に示すように、両端子20,30の両誘導部24,34が凹部43の後端縁45に接触した状態となり、この状態からさらにハウジング11の後壁12を凹部43の後側縁45に近づけていくと、両誘導部24,34が凹部43の後側縁45に摺接しながら両接点部22,32が互いに離間し、両端子20,30が拡開する方向に弾性変形することになる。両誘導部24,34が回路基板40の表裏両面41,42に乗り上げると、両接点部22,32が回路基板40の表裏両面41,42に対してほぼ平行姿勢で接触した状態となる。
【0035】
この状態からさらにハウジング11の後壁12を凹部43の後側縁45に近づけていくと、図11に示すように、ハウジング11の後壁12が凹部43の後側縁45に接触することで、基板用コネクタ10が前後方向に位置決めされた状態で凹部43に装着される。この状態では、両接点部22,32が両ランド(図示せず)の面内に正確に位置決めされており、両端子20,30のばね力によって両接点部22,32が両ランドを上下方向から挟み付けるように接触し、両接点部22,32の周囲にクリーム半田Hが塗布された状態となる。この後、基板用コネクタ10が正規に装着された回路基板40をリフロー炉に通すことによりクリーム半田Hを加熱し、この加熱されたクリーム半田Hが溶融し、リフロー後に冷え固まることにより、半田接続が完了する。
【0036】
以上のように本実施形態では両接点部22,32によって回路基板40を表裏両面41,42から挟むようにしたから、端子平坦度の管理を緩やかにすることができる。すなわち、従来からの管理方法であるコプラナリティ(部品をその台座面に置いたときの、接点部の高さの最低値と最高値の差)による管理が不要になり、両接点部22,32の離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるようにする管理するだけでよくなる。この方法であれば、端子20,30自身のばね性を利用して接点部22,32間の高さのバラツキを吸収できるため、端子平坦度の厳密な管理が不要になる。
【0037】
また、回路基板40に凹部43を切り欠き形成し、回路基板40の板厚方向に貫通するようにハウジング11を凹部43に装着しかつ凹部43に適合してハウジング11を装着したから、回路基板に凹部43を設けることなくこの回路基板を迂回するようにして略門形のハウジングを形成した場合、あるいは回路基板の表裏両側に一対のハウジングを配置した場合よりもハウジング11を低背化することができる。
【0038】
また、凹部43により基板用コネクタ10の装着動作が案内されるとともに、基板用コネクタ10の回路基板40に対する位置決めが容易になる。具体的には、左右方向の位置決めは、ハウジング11の両側壁13,13が凹部43の左右両側縁44,44に対して凹部43の内側から接触することで行われ、前後方向の位置決めは、ハウジング11の後壁12が凹部43の後側縁45に対して前方から接触することで行われ、上下方向の位置決めは、ハウジング11の両段部16,16の下面が凹部43の左右両側縁44,44の上面に対して上方から接触することで行われる。
【0039】
さらに、上段側接点部22の接圧より下段側接点部32の接圧が高くなるようにしたから、ハウジング11を下方に引っ張ることができ、この結果、ハウジング11の両段部16,16を凹部43の左右両側縁44,44に接触させることができる。さらに、固定部材50の基板側接続部52の下面がハウジング11の段部16の下面と揃うように配置したから、両段部16,16の下面が凹部43の左右両側縁44,44の上面に接触することに伴って両固定部材50,50の両基板側接続部52,52の下面を回路基板40の表面41に接触させることができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では回路基板40として両面基板を例示しているものの、本発明によると、回路基板40の表面41のみに回路パターンが形成された片面基板としてもよい。この場合、下段側端子30は、電気的接続機能を有さず、上段側端子20との間で回路基板40を挟み付けるためのばね部材としてのみ機能することになる。
【0041】
(2)上記実施形態では凹部43を形成しているものの、本発明によると、凹部43を形成しなくてもよく、両端子20,30によって回路基板の端部を直接挟み付けてもよい。
【0042】
(3)上記実施形態ではハウジング11の側壁13の上段側が下段側よりも突出した形態の段部16を例示しているものの、本発明によると、ハウジング11の側壁13の下段側が上段側よりも突出した形態の段部としてもよい。このような段部によると、両段部の上面が凹部43の左右両側縁44,44の下面に対して下方から接触することになるため、上段側端子20の接圧を下段側端子30の接圧よりも高く設定すればよい。
【0043】
(4)上記実施形態では回路基板40の表面41に半田付けされる固定部材50を例示しているものの、本発明によると、回路基板40に対してねじ止めされる固定部材を用いてもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では上段側端子20の剛性よりも下段側端子30の剛性が高くなるように設定しているものの、本発明によると、上段側端子20の剛性と下段側端子30の剛性を同じに設定し、下段側端子30の撓み量が上段側端子20の撓み量よりも大きくなるようにすることで、下段側接点部32の接圧が上段側接点部22の接圧よりも高くなるようにしてもよい。
【0045】
(6)上記実施形態では両接点部22,32がともにランドに接触して回路基板40を上下方向から挟み付けるものを例示しているものの、本発明によると、両接点部22,32が少なくともクリーム半田Hに接触していればよく、ランドに直接接触していないものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…基板用コネクタ
11…ハウジング
16…段部
20…上段側端子(第1端子)
22…上段側接点部(第1接点部)
23…上段側基端部(第1基端部)
30…下段側端子(第2端子)
32…下段側接点部(第2接点部)
33…下段側基端部(第2基端部)
40…回路基板
41…表面
42…裏面
43…凹部
44…側縁
50…固定部材
52…基板側接続部
S1…上段側接点部と下段側接点部との離間距離
T…回路基板の板厚
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板用コネクタの接続構造および基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、回路基板の実装面に接続される複数の端子を備えた基板用コネクタとして、例えば下記特許文献1に記載のものが知られている。この基板用コネクタは、回路基板の実装面に載置されるハウジングを有している。端子は、ハウジングの背面から回路基板の実装面に向けて鉛直方向に延出された後、回路基板の実装面に沿って水平方向に延出されており、この水平方向に延出された部分が回路基板の実装面に接続される接点部とされている。
【0003】
また、ハウジングの両側部には、このハウジングを回路基板に固定する固定部材が装着されており、この固定部材の下端には、回路基板の実装面に半田付けされる接続部が形成されている。実装に際しては、回路基板の実装面における所定の載置位置に予めクリーム半田を印刷しておき、この印刷されたクリーム半田上に対応する接点部および接続部が配置されるように基板用コネクタを回路基板の実装面に載置する。そして、この回路基板をリフロー炉に通すことで半田付けが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−53025号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような表面実装型の基板用コネクタでは、端子の接点部と固定部材の接続部とに対して厳密な端子平坦度が必要とされている。その理由は、端子平坦度が規格値から外れた場合には端子の接点部がクリーム半田と非接触状態となって半田接続がされないなどの不具合が発生してしまうからである。この対策として、全ての基板用コネクタについて接点部の端子平坦度を検査してから実装を行う方法では検査コストや検査時間などの面からも現実的ではなく、厳密な端子平坦度の管理が不要となる接続方法の開発が望まれていた。
【0006】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、基板用コネクタにおける厳密な端子平坦度の管理を不要にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、回路基板に接続された基板用コネクタの接続構造であって、ハウジングと、回路基板の表面に接触した第1接点部を有し、ハウジングに保持された第1基端部と第1接点部との間で弾性的に変形した第1端子と、回路基板の裏面に接触した第2接点部を有し、ハウジングに保持された第2基端部と第2接点部との間で弾性的に変形した第2端子とを備え、基板用コネクタが回路基板に接続される前においては、回路基板の板厚方向における第1接点部と第2接点部との離間距離が、回路基板の板厚よりも小さい構成としたところに特徴を有する。
【0008】
また、本発明は、回路基板に接続される基板用コネクタであって、ハウジングと、回路基板の表面に接触する第1接点部を有し、ハウジングに保持された第1基端部と第1接点部との間で弾性的に変形可能とされた第1端子と、回路基板の裏面に接触する第2接点部を有し、ハウジングに保持された第2基端部と第2接点部との間で弾性的に変形可能とされた第2端子とを備え、回路基板の板厚方向における第1接点部と第2接点部との離間距離は、回路基板の板厚よりも小さい構成としたところに特徴を有する。
【0009】
このような構成によると、回路基板を第1接点部と第2接点部とによって弾性的に挟み付けることができる。したがって、第1端子を回路基板の表面に対して確実に接続することができ、第2端子を回路基板の裏面に対して確実に接続することができる。これにより、基板用コネクタにおける厳密な端子平坦度の管理が不要になる。
【0010】
本発明の実施の態様として、以下の構成が好ましい。
回路基板の端部に凹部が切り欠き形成されており、ハウジングは、回路基板の板厚方向に貫通する形態で凹部に適合して装着されている構成としてもよい。
【0011】
このような構成によると、回路基板の板厚方向に貫通する形態でハウジングを回路基板に装着できるため、例えば回路基板の表面側に配置される第1ハウジングと、回路基板の裏面側に配置される第2ハウジングと、第1および第2ハウジングを連結する連結部とからなる略門形のハウジングを形成した場合よりも、ハウジングを回路基板の板厚方向に低背化することができる。つまり、略門形のハウジングでは、第1ハウジングと第2ハウジングの間で対向する対向壁が余分に必要となることに加えて、回路基板の板厚が必要になる。その点、凹部に適合して装着されるハウジングとした場合には、対向壁の板厚と回路基板の板厚が不要になるため、これらの板厚分だけ低背化することができる。
【0012】
また、凹部に適合してハウジングを回路基板に装着できるため、凹部の切り欠き形状にハウジングを合わせることで回路基板の表面に沿った方向における位置決めを行うことができる。このため、例えば部品実装機を用いて基板用コネクタを回路基板に高精度で載置しなくてもよい。
【0013】
ハウジングの側部には、凹部の側縁に接触する段部が形成されている構成としてもよい。
このような構成によると、ハウジングの段部を凹部の側縁に接触させることで回路基板の板厚方向における位置決めを行うことができる。
【0014】
ハウジングの側部には、回路基板の表面に半田付けされた基板側接続部を有する固定部材が装着されており、基板側接続部と段部は、回路基板の表面に沿って面一をなして配置されている構成としてもよい。
このような構成によると、ハウジングの段部を回路基板の表面における凹部の側縁に接触させることで固定部材の基板側接続部を回路基板の表面に対して確実に接触させることができる。
【0015】
段部は、回路基板の表面側に形成されており、第2接点部の接圧は、第1接点部の接圧よりも高めに設定されている構成としてもよい。
このような構成によると、第2接点部の接圧が第1接点部の接圧よりも高いため、ハウジングが回路基板の表面側から裏面側へ引っ張られ、段部を凹部の側縁に対して確実に接触させることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基板用コネクタにおける厳密な端子平坦度の管理を不要にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施形態の基板用コネクタの接続構造を背面・平面・左側面側から見た斜視図
【図2】図1において基板用コネクタを回路基板に接続する前の状態を示す分解斜視図
【図3】基板用コネクタの接続構造を正面・平面・右側面側から見た斜視図
【図4】基板用コネクタの接続構造の正面図
【図5】基板用コネクタの接続構造の平面図
【図6】基板用コネクタの接続構造の左側面図
【図7】図4におけるA−A線断面図
【図8】図5におけるB−B線断面図
【図9】基板用コネクタを回路基板に装着する前の状態を簡易的に示した断面図
【図10】基板用コネクタの端子によって回路基板を挟み付ける直前の状態を簡易的に示した断面図
【図11】基板用コネクタを回路基板に装着した後の状態を簡易的に示した断面図
【図12】複数の端子の接点部の高さが異なる様子を簡易的に示した図
【図13】図6におけるC部を拡大して示した図
【発明を実施するための形態】
【0018】
<実施形態>
本発明の実施形態を図1ないし図13の図面を参照しながら説明する。本実施形態における基板用コネクタの接続構造は、図1ないし図3に示すように、一つの基板用コネクタ10を回路基板40の表面41と裏面42の両面に接続したものを例示している。この基板用コネクタ10は、相手側コネクタ(図示せず)と嵌合可能なハウジング11を有している。このハウジング11は合成樹脂製であって、相手側コネクタが内部に嵌合可能なフード状とされている。なお、以下の説明において前後方向とは両コネクタ10の嵌合方向を基準とし、相手側コネクタとの嵌合が開始される側を前側とする。
【0019】
ハウジング11は左右方向に横長で、左右方向に比べて上下方向(回路基板40の板厚方向)が短寸の扁平形状をなしている。ハウジング11の後端には、左右方向に横長の長方形状をなす後壁12が設けられており、この後壁12の左右方向両側縁から前方に延びる形態で両側壁13,13が設けられている。また、後壁12の上縁から前方に延びる形態で天井壁14が設けられ、後壁12の下縁から前方に延びる形態で底壁15が設けられている。両側壁13,13と天井壁14と底壁15は互いに連結されており、ハウジング11は全体として角筒状とされている。
【0020】
ハウジング11の後壁12には、複数の上段側端子20と複数の下段側端子30とが前後方向に貫通する形態で圧入、保持されている。上段側端子20のうち相手側コネクタに設けられた相手側端子(図示せず)と接続される部分は、上段側接続部21とされている。同様に、下段側端子30のうち相手側コネクタの相手側端子と接続される部分は、下段側接続部31とされている。両接続部21,31は、図7に示すように、ハウジング11の内部で前方に突出する形態をなしている。また、上段側接続部21は、図4に示すように、左右方向に横並びで複数配置されており、下段側接続部31も同様に左右方向に横並びで複数配置されている。両接続部21,31の数はいずれも同じであり、例えば左端から数えて同じ番地の接続部21,31同士が上下方向に並ぶように配置されている。
【0021】
上段側端子20のうち回路基板40の表面41に接触した部分は、図13に示すように、上段側接点部22とされている。同様に、下段側端子30のうち回路基板40の裏面42に接触した部分は、下段側接点部32とされている。一方、上段側端子20のうち後壁12に保持された部分は上段側基端部23とされ、下段側端子30のうち後壁12に保持された部分は下段側基端部33とされている。また、上段側端子20のうち上段側接点部22よりも後方部分は回路基板40の表面41から離れるようにして斜め後方に立ち上がる上段側誘導部24とされ、下段側端子30のうち下段側接点部32よりも後方部分は回路基板40の裏面42から離れるようにして斜め後方に立ち上がる下段側誘導部34とされている。
【0022】
上段側端子20は、上段側基端部23から回路基板40の表面41と平行となる水平姿勢で後方に延び、その後端から回路基板40の表面41に向けて下方に延び、その下端から回路基板40の表面41に沿って後方に延びるようにして上段側接点部22が配され、その後端から斜め後方に延びるようにして上段側誘導部24が配された構成とされている。同様に、下段側端子30は、下段側基端部33から回路基板40の裏面42と平行となる水平姿勢で後方に延び、その後端から回路基板40の裏面42に向けて上方に延び、その上端から回路基板40の裏面42に沿って後方に延びるようにして下段側接点部32が配され、その後端から斜め後方に延びるようにして下段側誘導部34が配された構成とされている。
【0023】
ハウジング11の両側壁13,13には、図4に示すように、金属板材からなる一対の固定部材50,50が装着されている。この固定部材50は、母材となる金属平板を略直角に折り曲げて形成されており、ハウジング11の側壁13に配されたコネクタ側取付部51と、このコネクタ側取付部51の下縁から回路基板40の表面41に沿って延びる基板側接続部52とから構成されている。コネクタ側取付部51は、ハウジング11の側壁13に対して圧入などの固定手段によって固定されている。一方、基板側接続部52は、回路基板40の表面41に半田付けされている。
【0024】
ところで、回路基板40の端部には、図2に示すように、凹部43が切り欠き形成されている。この凹部43には、ハウジング11が適合して装着されており、このハウジング11は、回路基板40を上下方向に貫通する形態で配置されている。一方、ハウジング11の側壁13における上下方向略中央部には、段部16が設けられている。この段部16は、回路基板40の表面41側における凹部43の左右両側縁44,44に接触している。すなわち、ハウジング11の側壁13は、段部16を境として上段側が下段側よりも突出する形態をなしている。したがって、凹部43の内壁は、ハウジング11の側壁13における段部16よりも下側(下段側端子30に対応する側壁13)に接触している。これにより、ハウジング11の両側壁13,13が、凹部43の左右両側縁44,44に対して凹部43の内側から接触した状態となることで、ハウジング11は、左右方向に位置決めされる。
【0025】
また、ハウジング11の後壁12の後面は、凹部43の後側縁45に接触している。これにより、ハウジング11が凹部43の後側縁45によって前後方向に位置決めされる。
【0026】
固定部材50のコネクタ側取付部51は、ハウジング11の側壁13における段部16よりも上側(上段側端子20に対応する側壁13)に取り付け固定されている。ここで、固定部材50の基板側接続部52の下面と段部16の下面とはほぼ面一をなしており、回路基板40の表面41に沿う形態とされている。したがって、両段部16の下面を凹部43の左右両側縁44の上面に接触させると、基板側接続部52の下面が回路基板40の表面41に接触することになる。
【0027】
さて、本実施形態における基板用コネクタ10を回路基板40に接続する前の状態では、図9に示すように、上下方向に隣り合う両接点部22,32が上下方向に対向した状態で配置されており、両接点部22,32の対向部間の離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるように設定されている。しかも、上下方向に隣り合う両誘導部24,34が上下方向に対向した状態で配置されており、両誘導部24,34の先端部間における離間距離S2が回路基板40の板厚Tよりも大きくなるように設定されている。
【0028】
このため、図10に示すように、基板用コネクタ10を回路基板40に接近させると、両誘導部24,34のテーパ面が凹部43の後側縁45に接触し、さらに基板用コネクタ10を回路基板40に接近させていくと、両誘導部24,34のテーパ面が凹部43の後側縁45に摺接しつつ両接点部22,32が回路基板40の表裏両面41,42に乗り上げ、図11に示すように、両接点部22,32が回路基板40の表裏両面41,42に接続される。この間、各端子20,30が基端部23,33と接点部22,32との間で弾性的に撓み変形するため、両接点部22,32は回路基板40の表裏両面41,42に対して弾性的に接触する。
【0029】
ここで、両接点部22,32の離間距離S1は、次のように定義される。図12は、複数の端子20,30の接点部22,32の高さが異なる様子を簡易的に示した図であって、3つの上段側端子20と3つの下段側端子30を例示したものである。また、上段側端子20と下段側端子30との間に示した一点鎖線は、基準線DLである。3つの上段側端子20のうち基準線DLから最も離れた位置にある上段側端子20が左から2番目のものとした場合、この上段側端子20の基準線DLからの離間距離をL1とし、3つの下段側端子30のうち基準線DLから最も離れた位置にある下段側端子30が左から1番目のものとした場合、この下段側端子30の基準線DLからの離間距離をL2とすると、両接点部22,32の離間距離S1は、S1=L1+L2と定義される。さらに、離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるように設定することで全ての端子20,30の接点部22,32を回路基板40の表裏両面41,42に対して弾性的に接触させることができる。
【0030】
このようにすれば、端子平坦度の管理方法として従来より採用されているコプラナリティ(部品をその台座面に置いたときの、接点部の高さの最低値と最高値の差)による管理が不要になる。すなわち、両接点部22,32の離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるようにする管理方法であれば、端子20,30自身のばね性を利用して接点部22,32間の高さのバラツキを吸収できるため、端子平坦度の厳密な管理が不要になる。さらに、回路基板40の板厚Tの公差を加味して両接点部22,32の離間距離S1を設定することにより、回路基板40の板厚Tのバラツキにかかわらず、全ての接点部22,32を回路基板40の表裏両面41,42に対して確実に接触させることができる。
【0031】
また、上段側端子20のうち下方に延びる部分は、下段側端子30のうち上方に延びる部分よりも長めに形成されているため、下段側端子30の剛性が上段側端子20の剛性よりも高くなっている。したがって、上段側端子20の撓み量と下段側端子30の撓み量とが同じ場合には、下段側接点部32の回路基板40の裏面42に対する接圧は、上段側接点部22の回路基板40の表面41に対する接圧よりも高くなる。このように下段側接点部32の接圧を上段側接点部22の接圧よりも高めに設定することで、ハウジング11は下方へ(回路基板40の表面41から裏面42に向かう方向に)引っ張られることになり、両段部16,16を凹部43の左右両側縁44,44に対して確実に接触させることができる。これと同時に、両固定部材50,50の両基板側接続部52,52を回路基板40の表面41に対して確実に接触させることができる。
【0032】
なお、上記の説明においては詳細に説明していなかったものの、本実施形態における回路基板40は、例えばプリント配線技術によって表面41と裏面42の双方に回路パターン(図示せず)が形成されており、表面41の回路パターンと裏面42の回路パターンがスルーホール接続された両面基板とされている。上段側接点部22は、表面41の回路パターンに形成されたランド(図示せず)に接触して半田で接続されており、下段側接点部32は、裏面42の回路パターンに形成されたランド(図示せず)に接触して半田で接続されている。
【0033】
本実施形態は以上のような構成であって、続いてその作用を説明する。まず、図9に示すように、回路基板40のランド(図示せず)にクリーム半田Hを印刷しておき、回路基板40に対して基板用コネクタ10を前方から装着していく。この間、基板用コネクタ10は、ハウジング11が凹部43の左右両側縁44,44によって左右方向から挟まれた状態となり、左右方向の位置決めがなされた状態で凹部43に装着される。また、基板用コネクタ10は、ハウジング11の両段部16,16が凹部43の左右両側縁44,44に摺接した状態となり、上下方向の位置決めがなされた状態で凹部43に装着される。これにより、両端子20,30は、正規の装着姿勢で凹部43の後端縁45に近づいていく。
【0034】
次に、図10に示すように、両端子20,30の両誘導部24,34が凹部43の後端縁45に接触した状態となり、この状態からさらにハウジング11の後壁12を凹部43の後側縁45に近づけていくと、両誘導部24,34が凹部43の後側縁45に摺接しながら両接点部22,32が互いに離間し、両端子20,30が拡開する方向に弾性変形することになる。両誘導部24,34が回路基板40の表裏両面41,42に乗り上げると、両接点部22,32が回路基板40の表裏両面41,42に対してほぼ平行姿勢で接触した状態となる。
【0035】
この状態からさらにハウジング11の後壁12を凹部43の後側縁45に近づけていくと、図11に示すように、ハウジング11の後壁12が凹部43の後側縁45に接触することで、基板用コネクタ10が前後方向に位置決めされた状態で凹部43に装着される。この状態では、両接点部22,32が両ランド(図示せず)の面内に正確に位置決めされており、両端子20,30のばね力によって両接点部22,32が両ランドを上下方向から挟み付けるように接触し、両接点部22,32の周囲にクリーム半田Hが塗布された状態となる。この後、基板用コネクタ10が正規に装着された回路基板40をリフロー炉に通すことによりクリーム半田Hを加熱し、この加熱されたクリーム半田Hが溶融し、リフロー後に冷え固まることにより、半田接続が完了する。
【0036】
以上のように本実施形態では両接点部22,32によって回路基板40を表裏両面41,42から挟むようにしたから、端子平坦度の管理を緩やかにすることができる。すなわち、従来からの管理方法であるコプラナリティ(部品をその台座面に置いたときの、接点部の高さの最低値と最高値の差)による管理が不要になり、両接点部22,32の離間距離S1が回路基板40の板厚Tよりも小さくなるようにする管理するだけでよくなる。この方法であれば、端子20,30自身のばね性を利用して接点部22,32間の高さのバラツキを吸収できるため、端子平坦度の厳密な管理が不要になる。
【0037】
また、回路基板40に凹部43を切り欠き形成し、回路基板40の板厚方向に貫通するようにハウジング11を凹部43に装着しかつ凹部43に適合してハウジング11を装着したから、回路基板に凹部43を設けることなくこの回路基板を迂回するようにして略門形のハウジングを形成した場合、あるいは回路基板の表裏両側に一対のハウジングを配置した場合よりもハウジング11を低背化することができる。
【0038】
また、凹部43により基板用コネクタ10の装着動作が案内されるとともに、基板用コネクタ10の回路基板40に対する位置決めが容易になる。具体的には、左右方向の位置決めは、ハウジング11の両側壁13,13が凹部43の左右両側縁44,44に対して凹部43の内側から接触することで行われ、前後方向の位置決めは、ハウジング11の後壁12が凹部43の後側縁45に対して前方から接触することで行われ、上下方向の位置決めは、ハウジング11の両段部16,16の下面が凹部43の左右両側縁44,44の上面に対して上方から接触することで行われる。
【0039】
さらに、上段側接点部22の接圧より下段側接点部32の接圧が高くなるようにしたから、ハウジング11を下方に引っ張ることができ、この結果、ハウジング11の両段部16,16を凹部43の左右両側縁44,44に接触させることができる。さらに、固定部材50の基板側接続部52の下面がハウジング11の段部16の下面と揃うように配置したから、両段部16,16の下面が凹部43の左右両側縁44,44の上面に接触することに伴って両固定部材50,50の両基板側接続部52,52の下面を回路基板40の表面41に接触させることができる。
【0040】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では回路基板40として両面基板を例示しているものの、本発明によると、回路基板40の表面41のみに回路パターンが形成された片面基板としてもよい。この場合、下段側端子30は、電気的接続機能を有さず、上段側端子20との間で回路基板40を挟み付けるためのばね部材としてのみ機能することになる。
【0041】
(2)上記実施形態では凹部43を形成しているものの、本発明によると、凹部43を形成しなくてもよく、両端子20,30によって回路基板の端部を直接挟み付けてもよい。
【0042】
(3)上記実施形態ではハウジング11の側壁13の上段側が下段側よりも突出した形態の段部16を例示しているものの、本発明によると、ハウジング11の側壁13の下段側が上段側よりも突出した形態の段部としてもよい。このような段部によると、両段部の上面が凹部43の左右両側縁44,44の下面に対して下方から接触することになるため、上段側端子20の接圧を下段側端子30の接圧よりも高く設定すればよい。
【0043】
(4)上記実施形態では回路基板40の表面41に半田付けされる固定部材50を例示しているものの、本発明によると、回路基板40に対してねじ止めされる固定部材を用いてもよい。
【0044】
(5)上記実施形態では上段側端子20の剛性よりも下段側端子30の剛性が高くなるように設定しているものの、本発明によると、上段側端子20の剛性と下段側端子30の剛性を同じに設定し、下段側端子30の撓み量が上段側端子20の撓み量よりも大きくなるようにすることで、下段側接点部32の接圧が上段側接点部22の接圧よりも高くなるようにしてもよい。
【0045】
(6)上記実施形態では両接点部22,32がともにランドに接触して回路基板40を上下方向から挟み付けるものを例示しているものの、本発明によると、両接点部22,32が少なくともクリーム半田Hに接触していればよく、ランドに直接接触していないものでもよい。
【符号の説明】
【0046】
10…基板用コネクタ
11…ハウジング
16…段部
20…上段側端子(第1端子)
22…上段側接点部(第1接点部)
23…上段側基端部(第1基端部)
30…下段側端子(第2端子)
32…下段側接点部(第2接点部)
33…下段側基端部(第2基端部)
40…回路基板
41…表面
42…裏面
43…凹部
44…側縁
50…固定部材
52…基板側接続部
S1…上段側接点部と下段側接点部との離間距離
T…回路基板の板厚
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に接続された基板用コネクタの接続構造であって、
ハウジングと、
前記回路基板の表面に接触した第1接点部を有し、前記ハウジングに保持された第1基端部と前記第1接点部との間で弾性的に変形した第1端子と、
前記回路基板の裏面に接触した第2接点部を有し、前記ハウジングに保持された第2基端部と前記第2接点部との間で弾性的に変形した第2端子とを備え、
前記基板用コネクタが前記回路基板に接続される前においては、前記回路基板の板厚方向における前記第1接点部と前記第2接点部との離間距離が、前記回路基板の板厚よりも小さいことを特徴とする基板用コネクタの接続構造。
【請求項2】
前記回路基板の端部に凹部が切り欠き形成されており、前記ハウジングは、前記回路基板の板厚方向に貫通する形態で前記凹部に適合して装着されていることを特徴とする請求項1に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項3】
前記ハウジングの側部には、前記凹部の側縁に接触する段部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項4】
前記ハウジングの側部には、前記回路基板の表面に半田付けされた基板側接続部を有する固定部材が装着されており、前記基板側接続部と前記段部は、前記回路基板の表面に沿って面一をなして配置されていることを特徴とする請求項3に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項5】
前記段部は、前記回路基板の表面側に形成されており、前記第2接点部の接圧は、前記第1接点部の接圧よりも高めに設定されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項6】
回路基板に接続される基板用コネクタであって、
ハウジングと、
前記回路基板の表面に接触する第1接点部を有し、前記ハウジングに保持された第1基端部と前記第1接点部との間で弾性的に変形可能とされた第1端子と、
前記回路基板の裏面に接触する第2接点部を有し、前記ハウジングに保持された第2基端部と前記第2接点部との間で弾性的に変形可能とされた第2端子とを備え、
前記回路基板の板厚方向における前記第1接点部と前記第2接点部との離間距離は、前記回路基板の板厚よりも小さいことを特徴とする基板用コネクタ。
【請求項1】
回路基板に接続された基板用コネクタの接続構造であって、
ハウジングと、
前記回路基板の表面に接触した第1接点部を有し、前記ハウジングに保持された第1基端部と前記第1接点部との間で弾性的に変形した第1端子と、
前記回路基板の裏面に接触した第2接点部を有し、前記ハウジングに保持された第2基端部と前記第2接点部との間で弾性的に変形した第2端子とを備え、
前記基板用コネクタが前記回路基板に接続される前においては、前記回路基板の板厚方向における前記第1接点部と前記第2接点部との離間距離が、前記回路基板の板厚よりも小さいことを特徴とする基板用コネクタの接続構造。
【請求項2】
前記回路基板の端部に凹部が切り欠き形成されており、前記ハウジングは、前記回路基板の板厚方向に貫通する形態で前記凹部に適合して装着されていることを特徴とする請求項1に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項3】
前記ハウジングの側部には、前記凹部の側縁に接触する段部が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項4】
前記ハウジングの側部には、前記回路基板の表面に半田付けされた基板側接続部を有する固定部材が装着されており、前記基板側接続部と前記段部は、前記回路基板の表面に沿って面一をなして配置されていることを特徴とする請求項3に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項5】
前記段部は、前記回路基板の表面側に形成されており、前記第2接点部の接圧は、前記第1接点部の接圧よりも高めに設定されていることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の基板用コネクタの接続構造。
【請求項6】
回路基板に接続される基板用コネクタであって、
ハウジングと、
前記回路基板の表面に接触する第1接点部を有し、前記ハウジングに保持された第1基端部と前記第1接点部との間で弾性的に変形可能とされた第1端子と、
前記回路基板の裏面に接触する第2接点部を有し、前記ハウジングに保持された第2基端部と前記第2接点部との間で弾性的に変形可能とされた第2端子とを備え、
前記回路基板の板厚方向における前記第1接点部と前記第2接点部との離間距離は、前記回路基板の板厚よりも小さいことを特徴とする基板用コネクタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−138178(P2012−138178A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−287966(P2010−287966)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】
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