説明

基板用コネクタ

【課題】基板側コネクタを基板から引き剥がそうとする力に対して耐久性が高い基板用コネクタを提供する。
【解決手段】基板20に固定される基板側コネクタ10と、この基板側コネクタ10に嵌合可能な相手側コネクタ30とを有する基板用コネクタであって、前記基板20もしくは前記基板側コネクタ10を収容するケース50と、前記相手側コネクタ30とのいずれか一方に、前記基板側コネクタ10と前記相手側コネクタ30との嵌合方向に突出する嵌合凸部20Aを設け、他方には前記基板側コネクタ10と前記相手側コネクタ30との嵌合に伴って前記嵌合凸部20Aと嵌合する嵌合凹部34を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に取り付けられる基板用コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
基板用コネクタとして、例えば特許文献1に記載のものが知られている。この基板用コネクタは、基板に固定される基板側コネクタと、基板側コネクタに嵌合可能な相手側コネクタとを有している。基板側コネクタのハウジングには、金属板からなる固定金具が備えられ、固定金具の半田付け部が基板に半田付けされることで、基板側コネクタが基板に対して固定される。
【特許文献1】特開2007−87903公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、基板側コネクタと相手側コネクタとが嵌合した状態で、相手側コネクタから引き出されているワイヤハーネスが上方(基板とは反対側)へ引っ張られると、その上向きの力が固定金具の半田付け部分に集中して作用することになる。ここで、固定金具の半田付け部分が万が一損傷等してしまうと、基板側コネクタが基板から引き剥がされてしまうので、そのような事態を回避するべく、引き剥がし力に対する耐久性をさらに高めたいという要望があった。
【0004】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、基板側コネクタを基板から引き剥がそうとする力に対して耐久性が高い基板用コネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、基板に固定される基板側コネクタと、この基板側コネクタに嵌合可能な相手側コネクタとを有する基板用コネクタであって、前記基板もしくは前記基板側コネクタを収容するケースと、前記相手側コネクタとのいずれか一方に、前記基板側コネクタと前記相手側コネクタとの嵌合方向に突出する嵌合凸部を設け、他方には前記基板側コネクタと前記相手側コネクタとの嵌合に伴って前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を設けたことに特徴を有する。
【0006】
このような構成によれば、基板側コネクタと相手側コネクタとが嵌合した状態で、相手側コネクタに、基板側コネクタを基板から引き剥がす向きの力が作用すると、嵌合凸部が嵌合凹部に当接してその力が基板またはケースに受け持たれる。したがって、従来のように、基板側コネクタを基板から引き剥がそうとする力が、そのまま基板側コネクタに作用する場合に比べて、基板用コネクタの耐久性を高めることができる。
【0007】
前記嵌合凸部は、前記基板の周縁部のうち前記相手側コネクタとの嵌合側の縁部に設けられているものとしてもよい。
また、前記嵌合凸部または前記嵌合凹部は、前記ケースのうち前記相手側コネクタとの嵌合側を覆う蓋部に設けられているものとしてもよい。
【0008】
前記嵌合凸部または前記嵌合凹部は、前記相手側コネクタのうち前記嵌合方向に対して略直交方向に突出する形状をなす指当て部に設けられているものとしてもよい。これにより、指当て部とは別の部分に嵌合凸部または嵌合凹部を設ける場合に比べて、相手側コネクタをコンパクトにすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基板側コネクタを基板から引き剥がそうとする力に対して耐久性が高い基板用コネクタを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1を図1〜図4によって説明する。
本実施形態における基板用コネクタは、ハウジング11に備えられた固定金具13が基板20に半田付けされることにより基板20に対して固定される基板側コネクタ10と、この基板側コネクタ10に嵌合可能な相手側コネクタ30とを有するものである。以下、各構成部材において、両コネクタ10,30における嵌合面側を前方とし、また、図1の上側を上方、下側を下方として説明する。
【0011】
基板側コネクタ10のハウジング(以後、基板側ハウジング11と称する)は合成樹脂製であって、相手側コネクタ30のハウジング(同、相手側ハウジング31)を内嵌可能なフード部12を有し、全体として横長の扁平な形状をなしている。フード部12は、横長の角筒状をなして前方(相手側コネクタ30との嵌合方向)に開口している。基板側コネクタ10は、フード部12の開口端を基板20の周縁部に沿わせた姿勢で、基板20の上面に載置されて固定される。
【0012】
フード部12の奥壁12Aには、相手側コネクタ30と基板20との間を電気的に接続する複数本の端子14が備えられている。複数本の端子14は、幅方向に並列した状態で、基板側ハウジング11の厚さ方向(上下方向)に2段にわけて配されている。各端子14は、フード部12の奥壁12Aを前後方向に貫通しており、奥壁12Aから後側(相手側コネクタ30との嵌合側とは反対側)へ突出した部分は、奥壁12Aから後側へ所定寸法だけ延出した位置において下方(略直角方向)へ屈曲された後、さらにその先端部が基板20の板面に沿う向きに略直角方向に屈曲された形状をなしている。この先端部は、半田付けにより基板20の導電路(図示せず)に接続される基板側接続部14Aとされている。また、端子14のうちフード部12の奥壁12Aから前側(相手側コネクタ30との嵌合側)へ突出した部分は、相手側コネクタ30の相手側端子(図示せず)と接続可能な相手側接続部14Bとされている。
【0013】
フード部12の上壁12Bには、その幅方向略中央位置に、相手側コネクタ30のロックアーム32が係止可能なロック突部15が下方(フード部12の内方)へ突出して設けられている。
【0014】
基板側ハウジング11の両側面(フード部12の両側壁12C)には、固定金具13を装着可能な装着溝16が設けられている。装着溝16は、基板側ハウジング11の前後方向の略中央部に配され、上方から固定金具13が挿入されて装着される。
【0015】
固定金具13は、金属板をプレス加工して形成されたものである。固定金具13は、基板側ハウジング11の両側面に沿って配される本体部13Aと、基板20の上面に半田付けされる半田付け部13Bとを有している。本体部13Aの両側縁部には、幅方向に突出する図示しない食い込み部と段付き部とが設けられ、食い込み突起が装着溝16の側縁に食い込むとともに、段付き部が装着溝16の段付き部(図示せず)に当接することで、固定金具13の下端が基板側ハウジング11の下面と同じ高さ位置かそれよりも少し下方へ突出した位置に位置決めされるとともに抜け止めされて取り付けられている。
【0016】
固定金具13の半田付け部13Bは、本体部13Aの下端においてその板面に対して略直角に曲げられた部分であり、本体部13Aと一体に形成されている。基板側コネクタ10を基板20の上面に載置すると、半田付け部13Bの板面は基板20の上面に沿って配される。半田付け部13Bを上下方向から見ると、前後方向に長い略長方形状をなし、その長手方向寸法(前後方向寸法)は、本体部13Aの幅方向寸法と同等とされている。
【0017】
相手側ハウジング31は合成樹脂製であって、全体として横長のブロック状をなしている。相手側ハウジング31の内部には、図示しない電線の端末に接続された端子が幅方向に並列した状態で上下2段にわけて収容されている。相手側ハウジング31の側面には、正規位置に収容された端子14を、図示しないランスとともに抜け止めするサイドタイプのリテーナ35が装着されている。
【0018】
相手側ハウジング31の上面における幅方向の中央位置には、上下方向に撓み変形可能とされたロックアーム32が設けられ、その上面に突設された係止突起32Aがフード部12に設けられたロック突部15に弾性的に係止することにより、両コネクタ10,30は離脱規制状態にロックされる。
【0019】
また、相手側ハウジング31の後端部には、指当て部33が設けられている。指当て部33は、相手側ハウジング31の上方及び下方(嵌合方向に対して略直交方向)に突出する壁状をなしている。相手側ハウジング31の上面に設けられた上側指当て部33Aは、相手側ハウジング31の全幅にわたる幅寸法を備えている。一方、相手側ハウジング31の下面に設けられた下側指当て部33Bは、上側指当て部33Aよりも若干幅寸法が小さく、相手側ハウジング31の幅方向中央部に設けられている。相手側コネクタ30を基板側コネクタ10に対して嵌合・離脱する際には、上下指当て部33に手指を当てて、容易に行うことができる。
【0020】
さて、基板20には、前方(相手側コネクタ30との嵌合方向)に突出する嵌合凸部20Aが設けられている。嵌合凸部20Aは、基板20の周縁部のうち前側(相手側コネクタ30との嵌合側)の縁部、言い換えると、基板側コネクタ10のフード部12の開口端が沿って配される側の縁部に設けられている(図2参照)。
【0021】
嵌合凸部20Aは、基板20の周縁部が部分的に突出してなるものであり、基板20のうち基板側コネクタ10が載置される載置部20Bと一体である。嵌合凸部20Aは、基板20の周方向に長い略長方形状をなしており、嵌合凸部20Aの両側縁は、両コネクタ10,30の嵌合方向に略平行をなし、嵌合凸部20Aの前縁は、同嵌合方向に略直交をなしている。嵌合凸部20Aは、基板20の載置部20Bに取り付けられた基板側コネクタ10の幅方向中央に配される位置に設けられている。
【0022】
一方、相手側コネクタ30には、基板側コネクタ10との嵌合に伴って、基板20の嵌合凸部20Aと嵌合する嵌合口34(本発明の嵌合凹部に該当する)が設けられている。嵌合口34は、図3に示すように、下側指当て部33Bの幅方向中央部に形成されている。嵌合口34は、嵌合凸部20Aにほぼ隙間なく外嵌する幅方向に細長い略長方形状をなして、下側指当て部33Bを前後方向に貫通している。
【0023】
次に、基板20に固定された基板側コネクタ10と相手側コネクタ30との嵌合動作について説明する。
基板側コネクタ10のフード部12に、相手側ハウジング31の先端部を少しずつ嵌合させると、端子14の相手側接続部14Bが相手側ハウジング31内に挿入されていく。やがて、両コネクタ10,30が正規の嵌合状態に近づくと、基板20の嵌合凸部20Aの先端が、下側指当て部33Bの嵌合口34に差し入れられる。そして、両コネクタ10,30が正規の嵌合状態に至ったときには、嵌合凸部20Aの先端部が下側指当て部33Bを貫通して先方に突出し、また嵌合凸部20Aの周面が嵌合口34の周面にほぼ隙間なく接した状態になる。こうして、嵌合凸部20Aと嵌合口34とが嵌合するとともに、ロックアーム32がロック突部15に係止して両コネクタ10,30が離脱規制状態に保持される。
【0024】
上記のように構成された本実施形態によれば、以下の効果を奏する。
相手側コネクタ30から引き出された電線が上方へ引っ張られる等により相手側ハウジング31に上向きの力が作用すると、相手側ハウジング31は後側(電線が導出されている側)から上方へ持ち上がるように変位しようとする。すると、下側指当て部33Bに設けられた嵌合口34が基板20に設けられた嵌合凸部20Aに当接し、相手側ハウジング31にかかる上向きの力(基板側コネクタ10を基板20から引き剥がそうとする力)が基板20に受け持たれた状態になる。これにより、基板側ハウジング11に作用する上向きの力は小さくなるから、従来のように、相手側ハウジング31にかかる上向きの力がそのまま基板側ハウジング11に作用して固定金具13の半田付け部13Bのみがその力を受け持つ場合に比べて、確実に半田付け部13Bの半田層の損傷を防止することができ、もって基板用コネクタの耐久性を高めることができる。
【0025】
<実施形態2>
次に、本発明の実施形態2に係る基板用コネクタを図5〜図7によって説明する。
本実施形態の基板用コネクタは、嵌合凸部51が、基板ではなく基板側コネクタ10を収容するケース50に設けられている点で、実施形態1とは相違する。なお、実施形態1と同様の構成には同一符号を付して重複する説明を省略する。
【0026】
本実施形態の基板用コネクタは、実施形態1と同様、基板Pに対して固定される基板側コネクタ10と、この基板側コネクタ10に嵌合可能な相手側コネクタ30とを有している。
【0027】
基板側コネクタ10を収容するケース50は、基板側コネクタ10を収容するケース本体部52と、ケース本体部52の開口を塞ぐ蓋部53とを有している。ケース本体部52は前側(相手側コネクタ30の嵌合側)に開口している。ケース本体部52の両側壁には、基板Pの両側縁が係合する係合溝54が前後方向に延びて設けられている。この係合溝54に、基板側コネクタ10が固定された基板Pの両側縁を嵌め込んでケース50の奥側へ押し込むと、基板Pはケース50内に水平な姿勢で収容されて保持される。基板Pに固定された基板側コネクタ10は、ケース50の開口側にフード部12が開口する向きでケース50内に収容され、フード部12の開口端はケース50の開口端と前後方向のほぼ同位置に配される(図5参照)。
【0028】
ケース50の蓋部53は、ケース本体部52の開口に着脱自在に取り付けられるものであり、図示しない係合手段によりケース本体部52に閉じ状態に保持される。蓋部53のうちケース50内に収容された基板側コネクタ10のフード部12との対向部分には、開口窓55が形成されている。開口窓55は、基板側コネクタ10のフード部12の外形に沿う形状をなし、基板側コネクタ10のフード部12が開口窓55を介してケース50の外側に臨んだ状態になる。
【0029】
そして、ケース50の蓋部53には、嵌合凸部51が設けられている。嵌合凸部51は、実施形態1と同様、相手側コネクタ30の嵌合口34に嵌合可能な横長の略長方形状をなし、開口窓55の下縁に沿って蓋部53から略水平方向に突出して設けられている。嵌合凸部51は、基板Pの板厚寸法と同等の厚さ寸法を備え、ケース50の側壁に設けられた係合溝54と同等の高さ位置に設けられており、その上面はケース50に収容された基板Pの上面と面一をなす。
【0030】
上記のように構成された実施形態2によれば、以下の効果を奏する。
基板側コネクタ10と相手側コネクタ30とが嵌合した状態で、相手側コネクタ30から引き出された電線が上方へ引っ張られる等すると、相手側ハウジング31の後端が上方へ持ち上がろうとし、下側指当て部33Bに設けられた嵌合口34がケース50に設けられた嵌合凸部51に当接する。これにより、相手側ハウジング31にかかる上向きの力(基板側コネクタ10を基板Pから引き剥がそうとする力)は、ケース50に受け持たれた状態になり、実施形態1と同様、基板側ハウジング11の基板Pとの固定部分に作用する上向きの力は小さくなるから、基板用コネクタの耐久性を高めるという効果を得ることができる。
【0031】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0032】
(1)上記実施形態では、嵌合凸部20Aは略長方形状をなしているが、どのような形状であってもよく、また、嵌合凸部を、基板用コネクタの幅方向に複数、間欠的に設けるようにしてもよい。
【0033】
(2)上記実施形態では、相手側コネクタ30には、嵌合凸部20Aが嵌合する嵌合口34が下側指当て部33Bを貫通して形成されているが、これに限らず、下側指当て部に凹み(嵌合凹部)を形成してもよい。また、嵌合凹部は、下側指当て部に限らず、相手側コネクタのどの部位に設けてもよい。
【0034】
(3)実施形態2では、ケース50の蓋部53に嵌合凸部51が設けられ、相手側コネクタ30に嵌合口34が設けられているが、これとは逆に、ケースの蓋部に嵌合口を設け、相手側コネクタに嵌合凸部を設けるようにしてもよい。
【0035】
(4)実施形態2では、ケース50の蓋部53はケース本体部52に対して着脱自在なものとされているが、例えばケースの蓋部はケース本体部と一体に形成された壁部であってもよく、この壁部に嵌合凸部または嵌合口を設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態1にかかる基板用コネクタの嵌合前の状態を表す側断面図
【図2】同平断面図
【図3】相手側コネクタの正面図
【図4】基板用コネクタの正規の嵌合状態を表す側断面図
【図5】実施形態2にかかる基板用コネクタの嵌合前の状態を表す側断面図
【図6】ケースに収容された基板側コネクタの正断面図
【図7】基板用コネクタの正規の嵌合状態を表す側断面図
【符号の説明】
【0037】
10…基板側コネクタ
20,P…基板
20A,51…嵌合凸部
30…相手側コネクタ
33B…下側指当て部(指当て部)
34…嵌合口(嵌合凹部)
50…ケース
53…蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に固定される基板側コネクタと、この基板側コネクタに嵌合可能な相手側コネクタとを有する基板用コネクタであって、
前記基板もしくは前記基板側コネクタを収容するケースと、前記相手側コネクタとのいずれか一方に、前記基板側コネクタと前記相手側コネクタとの嵌合方向に突出する嵌合凸部を設け、他方には前記基板側コネクタと前記相手側コネクタとの嵌合に伴って前記嵌合凸部と嵌合する嵌合凹部を設けたことを特徴とする基板用コネクタ。
【請求項2】
前記嵌合凸部は、前記基板の周縁部のうち前記相手側コネクタとの嵌合側の縁部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板用コネクタ。
【請求項3】
前記嵌合凸部または前記嵌合凹部は、前記ケースのうち前記相手側コネクタとの嵌合側を覆う蓋部に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の基板用コネクタ。
【請求項4】
前記嵌合凸部または前記嵌合凹部は、前記相手側コネクタのうち前記嵌合方向に対して略直交方向に突出する形状をなす指当て部に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の基板用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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