説明

基板用コネクタ

【課題】基板用端子のハウジング部材への圧入に起因する問題や、基板用端子のプリント基板への半田付け部分におけるクラック発生の問題に対して、何れも優れた効果を発揮し得る、新規な構造の基板用コネクタを提供する。
【解決手段】ハウジング部材14の底壁18におけるプリント基板12への重ね合わせ面30に、端子挿入孔28の開口部から重ね合わせ面30の外周縁部にまで延びる位置決め溝36を形成し、基板用端子16の長さ方向の中間部分38を位置決め溝36に嵌め入れると共に、ハウジング部材14をプリント基板12に固定する固定手段46を設けて、ハウジング部材14の位置決め溝36に嵌め入れた基板用端子16をプリント基板12に押し付けて位置決めした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板に装着されることにより、外部の電気部品をプリント基板に対して着脱可能とする基板用コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、自動車の電気接続箱等において、プリント基板に対してコネクタ等の電気部品を着脱可能に接続するために、基板用コネクタが用いられている。かかる基板用コネクタは、特開平7−161406号公報(特許文献1)に示されているように、電気部品が装着される収容部を備えたハウジング部材に対して、その収容部の底壁に端子挿入孔を形成し、そこに基板用端子を圧入固定した構造とされている。そして、この基板用コネクタは、収容部の底壁をプリント基板に重ね合わせて、底壁から突出した基板用端子をプリント基板のスルーホールに挿通して半田付けすることによって、プリント基板に実装される。
【0003】
ところが、このような従来構造の基板用コネクタは、その製造工程で基板用端子をハウジング部材に圧入固定する際、圧入力の調節が難しく基板用端子の挫屈による不良品が発生し易い問題があった。また、ガラス繊維入りの硬質樹脂製のハウジング部材が採用されることで、基板用端子の圧入に際して端子表面のめっきの剥がれやウィスカの発生等が問題となり易く、それによって電気的な通電性能が低下するおそれもあった。
【0004】
さらに、基板用端子のプリント基板への半田付けに際しての加熱によるプリント基板とハウジング部材との熱膨張差に起因して、半田付け部に外力が加わり半田クラックが発生し易いという問題もあった。また、基板用端子のプリント基板への半田付け部分が、ハウジング部材の底壁部で覆われてしまうことから、半田付け状態の目視確認が困難であるといった問題もあった。
【0005】
また、プリント基板に実装された基板用コネクタに電気部品を着脱する際、電気部品から及ぼされる押込力や引抜力が基板用端子のプリント基板への半田付け部分に直接に作用することとなり、かかる作用力により半田クラック等の不具合が発生するおそれもあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−161406号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上述の如き事情を背景に為されたものであって、その解決課題は、基板用端子のハウジング部材への圧入に起因する問題や、基板用端子のプリント基板への半田付け部分におけるクラック発生の問題に対して、何れも優れた効果を発揮し得る、新規な構造の基板用コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第一の態様は、電気部品が装着される収容部を有し、プリント基板に装着されるハウジング部材を備え、前記収容部の底壁に端子挿入孔を形成し、該端子挿入孔に基板用端子を挿し入れて、該基板用端子の一端側を前記プリント基板のスルーホールに挿通して半田付けする一方、前記基板用端子の他端側を前記電気部品に導通させる基板用コネクタにおいて、前記ハウジング部材の前記底壁における前記プリント基板への重ね合わせ面に、前記端子挿入孔の開口部から前記重ね合わせ面の外周縁部にまで延びる位置決め溝を形成し、前記基板用端子の長さ方向の中間部分を前記位置決め溝に嵌め入れると共に、前記ハウジング部材を前記プリント基板に固定する固定手段を設けて、前記ハウジング部材の前記位置決め溝に嵌め入れた前記基板用端子を前記プリント基板に押し付けて位置決めする基板用コネクタを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、基板用端子の中間部分をハウジング部材とプリント基板との間で挟み込むことで、基板用端子を位置決め保持することができる。それ故、ハウジングの挿通孔に基板用端子を圧入する必要がなく、圧入による基板用端子の挫屈変形や、表面のめっき剥がれ等の問題を回避乃至は低減することが出来る。従って、基板用端子の表面に安定して形成されるめっき層により、端子の劣化を抑えることが出来ると共に、半田濡れ性を確保して、安定的な半田付けをすることが可能となる。更に、ウィスカの発生も抑えることが出来て、ウィスカに起因する短絡等の問題も防止される。
【0010】
また、固定手段を用いて、基板用端子の中間部分をハウジング部材とプリント基板との間に挟み込んで保持できることから、半田付けに際して基板用端子のローリング等を防止して、基板用端子のアライメントが精度よく実現され得る。しかも、外部の電気部品をハウジングの電気部品収容部に対して着脱するに際して、基板用端子に加えられる押込力や引抜力が、基板用端子の中間部分を通じてプリント基板とハウジング部材へ及ぼされる。それ故、そのような基板用端子の接続端部に加えられる電気部品の押込力や引抜力が半田付け部に直接及ぼされることに起因する半田クラック等の問題が効果的に防止される。
【0011】
本発明の第二の態様は、前記第一の態様に記載の基板用コネクタにおいて、前記位置決め溝に嵌め入れられた前記基板用端子の前記中間部分が、前記ハウジング部材の前記プリント基板への前記重ね合わせ面から外方に延び出しており、前記プリント基板における前記ハウジング部材の前記重ね合わせ面を外れた位置に設けられた前記スルーホールに挿通されて半田付けされるものである。
【0012】
本態様によれば、基板用端子の中間部分を、プリント基板の表面に沿わせる等して位置決め溝から外方に延び出させ、ハウジング部材のプリント基板への重ね合わせ面を外れた位置において、プリント基板に対して半田付けすることが出来る。これにより、基板用端子のプリント基板への半田付け部分を容易に目視可能とすることが可能となる。
【0013】
本発明の第三の態様は、前記第一又は第二の態様に記載の基板用コネクタであって、前記ハウジング部材の前記底壁には前記プリント基板に向かって部分的に突出する当接突部が形成されており、該当接突部を貫通して前記端子挿入孔が形成されていると共に、前記当接突部の突出先端面が前記プリント基板への前記重ね合わせ面とされて、前記当接突部の前記突出先端面に前記位置決め溝が形成されているものである。
【0014】
本態様によれば、電気部品が装着される収容部の底壁に比して、位置決め溝が形成されるプリント基板への重ね合わせ面を小さくすることが出来る。それ故、電気部品が装着される収容部のサイズを確保しつつ、基板用コネクタを実装するのに必要とされるプリント基板上の面積を小さく出来、プリント基板における回路や素子等の密度を向上させることが可能となる。
【0015】
本発明の第四の態様は、前記第一〜三の何れか一の態様に記載の基板用コネクタであって、前記基板用端子が、前記位置決め溝に嵌め入れられた前記中間部分の長さ方向両側でそれぞれ屈曲されたクランク形状とされており、前記中間部分の長さ方向両側が互いに反対側に突出されて、前記プリント基板の前記スルーホールに挿通される一端側と前記ハウジング部材の前記端子挿入孔に挿し入れられる他端側とが形成されているものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ハウジング部材をプリント基板に固定する固定手段による固定力を巧く利用して基板用端子を位置決め保持することが出来る。それ故、ハウジング部材に基板用端子を圧入する必要がなく、圧入による端子の挫屈やめっき剥がれ等の問題の発生が防止され得る。また、基板用端子の中間部分がハウジング部材とプリント基板で挟圧支持されることから、電気部品の着脱に伴う外力の半田付け部分への作用を軽減することが出来、半田クラックの発生も効果的に防止され得る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一〜第三の実施形態としての基板用コネクタがそれぞれ実装されたプリント基板を示す斜視図。
【図2】図1に示した第一の実施形態としてのワイヤコネクタ用の基板用コネクタのハウジング部材を示す斜視図。
【図3】図2に示したハウジング部材の底面図。
【図4】図2に示したハウジング部材の正面図。
【図5】図1に示した第一の実施形態としてのワイヤコネクタ用の基板用コネクタの側面図。
【図6】図5に示した基板用コネクタの正面図。
【図7】図5に示した基板用コネクタの底面図。
【図8】図1のXIII−XIII断面図。
【図9】図1に示した第一〜第三の実施形態としての各基板用コネクタのプリント基板装着前の状態を示す斜視図。
【図10】図9に示した各基板用コネクタに対してプリント基板が固定された状態を示す斜視図。
【図11】図10に示した各基板用コネクタが固定されたプリント基板の側面図。
【図12】図1に示した第二の実施形態としてのヒューズ用の基板用コネクタのハウジング部材を示す平面図。
【図13】図12に示したハウジング部材の底面図。
【図14】図12に示したハウジング部材の正面図。
【図15】図12に示したハウジング部材の側面図。
【図16】図1に示した第二の実施形態としてのヒューズ用の基板用コネクタの平面図。
【図17】図16に示した基板用コネクタの底面図。
【図18】図16に示した基板用コネクタの正面図。
【図19】図16に示した基板用コネクタの側面図。
【図20】図1に示した第三の実施形態としてのリレー用の基板用コネクタのハウジング部材の平面図。
【図21】図20に示したハウジング部材の底面図。
【図22】図20に示したハウジング部材の正面図。
【図23】図20に示したハウジング部材の側面図。
【図24】図1に示した第三の実施形態としてのリレー用の基板用コネクタの平面図。
【図25】図24に示した基板用コネクタの底面図。
【図26】図24に示した基板用コネクタの正面図。
【図27】図24に示した基板用コネクタの側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
先ず、図1に、第一の実施形態としての第一の基板用コネクタ10および後述する第二の基板用コネクタ50並びに第三の基板用コネクタ52がそれぞれ装着されたプリント基板12が示されている。なお、このプリント基板12は、図示しない自動車用の電気接続箱に収容されて電気回路を構成するものである。
【0020】
より詳細には、第一の基板用コネクタ10は、外部通電線の先端に装着された電気部品としての公知の雄形ワイヤコネクタを、プリント基板12に対して着脱可能に接続して、プリント基板12に形成されたプリント回路に導通可能とするものである。
【0021】
具体的には、かかる第一の基板用コネクタ10は、ハウジング部材14を備えていると共に、このハウジング部材14を内外に貫通して複数本の基板用端子16が組み付けられている。
【0022】
ハウジング部材14は、図2〜4に示されているように、板状の底壁18に対して、その外周縁部から上方に向かって突出する筒状の周壁20が一体形成されている。なお、本実施形態では、矩形平板状の底壁18に対して、矩形筒状の周壁20が形成されていると共に、周壁20の内周面上に位置合せ突起22が形成されている。また、ハウジング部材14は、絶縁材で形成されており、例えば、必要に応じて繊維補強された合成樹脂材の一体成形品で構成される。
【0023】
そして、これら底壁18と周壁20により、ハウジング部材14には、上方に向かって開口する収容部24が設けられている。この収容部24に対して、外部の雄形ワイヤコネクタが挿抜可能に嵌め込まれるようになっている。
【0024】
また、ハウジング部材14の底壁18には、下面から部分的に突出する当接突部26が一体形成されている。この当接突部26は、矩形ブロック形状とされており、かかる当接突部26が底壁18に一体形成されることにより、底壁18の幅方向(短辺方向)の中央部分が、長さ方向(長辺方向)の全長に亘って突出されている。要するに、本実施形態では、ハウジング部材14の底壁18が、当接突部26を含んで構成されており、底壁18の厚さ寸法が、当接突部26の形成部分において厚くされることで部分的に異ならされているのである。
【0025】
そして、この厚肉とされた底壁18の幅方向中央部分に、複数の端子挿入孔28が形成されている。これらの端子挿入孔28は、底壁18を厚さ方向で直線的に貫通しており、端子挿入孔28の下端が当接突部26におけるプリント基板12への重ね合わせ面となる突出先端面30(図4中の下面)に開口している一方、端子挿入孔28の上端が収容部24内に開口している。
【0026】
また、当接突部26の突出先端面30には、長さ方向の両端部分に僅かな段差が設けられており、長さ方向両端部分が中央部分よりも僅かに外方に突出した台座部32,32とされている。そして、当接突部26において、両端の台座部32,32の間に位置する中央部分に端子挿入孔28が開口されている。一方、両端の台座部32,32には、固定用のボルト穴34,34が、それぞれ当接突部26の突出先端面に開口して底壁18の厚さ方向に所定深さで形成されている。
【0027】
さらに、端子挿入孔28が開口された、当接突部26の突出先端面30における長さ方向の中間部分には、各端子挿入孔28の開口部から当接突部26の外周縁部にまで延びる位置決め溝36が、それぞれ形成されている。即ち、かかる位置決め溝36は、一端が端子挿入孔28の開口部の周壁面に開口しており、他端が当接突部26の外周面に開口している。
【0028】
特に本実施形態では、図3に示されているように、当接突部26の突出先端面30において、長さ方向(図3中の上下方向)に2列で並列的に配された複数の端子挿入孔28が形成されている。そして、各位置決め溝36が、各端子挿入孔28の開口部から、突出先端面30の外周縁部に向かって直線的に延びるように形成されている。
【0029】
なお、各位置決め溝36は、各端子挿入孔28の横幅寸法(図3中のA寸法)と同じ幅寸法の一定断面形状で延びており、各端子挿入孔28に挿入される各基板用端子16の端子挿入孔28周りの変位が各位置決め溝36への当接により阻止されるようになっている。また、各位置決め溝36の深さ寸法は、挿通される各基板用端子16の厚さ寸法と略同一となる各端子挿入孔28の縦幅寸法(図3中のB寸法)よりも小さくされている。本実施形態では、位置決め溝36の深さ寸法(図4中のC寸法)と、台座部32の突出高さ寸法(図4中のD寸法)とを足した寸法が、端子挿入孔28の縦幅寸法(図3中のB寸法)と略同じか僅かに小さく設定されている。これにより、後述の如く各基板用端子16の中間部分38を当接突部26とプリント基板12との重ね合わせ面間で挟み込むことが可能となる。
【0030】
さらに、このようなハウジング部材14に組み付けられる基板用端子16は、図5〜8に示されているように、長さ方向の中間部分で曲げられた全体としてクランク形状とされている。なお、かかる基板用端子16は、従来から公知のプレス成形されたプレス端子や線材を切断した線材端子等が適宜に採用され得、表面にメッキを施して保護層を設けたものが好適である。
【0031】
基板用端子16は、その長さ方向の中間部分38から両側部分が互いに反対側に向かってそれぞれ略直角に曲げられて直線的に延び出している。この中間部分38から延び出した一端側が、ハウジング部材14の端子挿入孔28に挿し入れられる接続部40とされている。また、中間部分38から延び出した他端側が、プリント基板12に対して半田付けされる半田付部42とされている。
【0032】
すなわち、基板用端子16は、その接続部40を、ハウジング部材14の端子挿入孔28に対して、当接突部26の突出先端面30から挿し入れることによりハウジング部材14に組み付けられている。かかる接続部40は、端子挿入孔28を貫通して、ハウジング部材14の収容部24内に突出されて、電気部品(ワイヤコネクタ)への導通用のピン端子を構成している。また、接続部40が端子挿入孔28に挿し入れられることにより、基板用端子16の中間部分38が、ハウジング部材14の当接突部26の突出先端面30に当接されており、かかる当接によって接続部40の収容部24内への突出量が規定されている。
【0033】
そして、基板用端子16の中間部分38は、当接突部26の突出先端面30に形成された位置決め溝36に嵌め込まれており、かかる中間部分38が、位置決め溝36から更に外方に突出して配設されている。即ち、中間部分38の長さ寸法は、位置決め溝36の長さよりも大きくされており、位置決め溝36から外方に突出した位置から半田付部42が突設されている。
【0034】
なお、中間部分38の長さ寸法は、端子挿入孔28の開口位置からハウジング部材14の底壁18の外周縁部に至るまでの距離よりも小さくされている。これにより、位置決め溝36から外方に突出した中間部分38の突出先端部が、当接突部26の外周面よりも外方に突出するが底壁18の外周面からは突出しないように位置設定されている。
【0035】
このような構造とされた第一の基板用コネクタ10は、図1に示されているように、その底壁18の当接突部26の突出先端面30がプリント基板12の表面に重ね合わされて装着される。かかる装着状態下、基板用端子16の半田付部42がプリント基板12に形成されたスルーホール44に挿通されており、スルーホール44への挿通部位においてプリント基板12上の図示しない通電回路に対して半田付けされて導通されている。なお、スルーホール44はハウジング部材14のプリント基板12への突出先端面30から外周側に離隔した位置に設けられている。
【0036】
かかる第一の基板用コネクタ10のプリント基板12への装着は、図9〜11に示されているように、例えば、以下のような手順にて行われる。
【0037】
先ず、図9に示すように、ハウジング部材14を上下反転させて底壁18の突出先端面30を上に向けた状態で、前述のようにハウジング部材14の端子挿入孔28に対して、予めクランク状の所定形状に成形した複数の基板用端子16を挿通して中間部分38それぞれ位置決め溝36で位置決め保持させる。そして、図10に示すように、同様に表裏反転させたプリント基板12の実装表面に対して、かかるハウジング部材14の突出先端面30を重ね合わせる。
【0038】
この重ね合わせに際して、ハウジング部材14に組み付けた複数の基板用端子16の半田付部42をそれぞれプリント基板12の対応するスルーホール44に挿通させる。この挿通作業は、各基板用端子16が予め位置決め溝36で位置決めされていることから、容易に行うことが出来る。
【0039】
その後、プリント基板12の上面側から、該プリント基板12に形成されたボルト挿通孔を通じて固定手段としての固定ボルト46を挿し入れて、ハウジング部材14の底壁18に形成されたボルト穴34に対して、それぞれ締め付ける。これにより、ハウジング部材14がプリント基板12に対して適当な押付力をもって重ね合わされて固定的に組み付けられる。また、この組付けにより、基板用端子16の中間部分38が、ハウジング部材14とプリント基板12との重ね合わせ面間で締め付けられ、位置決め溝36による位置決め効果と相俟って、ハウジング部材14及びプリント基板12に対して強固に固定的に位置決めされる。
【0040】
そして、このようにハウジング部材14をプリント基板12にボルト固定した後、プリント基板12を反転させ、各基板用端子16の半田付部42が突出されたプリント基板12の下面側からリフロー半田等で半田付けして、各半田付部42をプリント基板12の通電回路に導通させることによって、前述の如き、第一の基板用コネクタ10の実装プリント基板12を得ることが出来る。
【0041】
このようにして得られたプリント基板12では、ハウジング部材14のプリント基板12に対してボルト固定力を利用して、基板用端子16がハウジング部材14及びプリント基板12に対して固定的に位置決め保持されることから、ハウジング部材14の端子挿入孔28に対して基板用端子16を圧入する必要がない。実際には、手指で押すことによって殆ど抵抗無く或いは容易に、基板用端子16を端子挿入孔28に挿し入れることが出来るように、且つ挿通状態下で基板用端子16に大きなガタツキが発生しない程度に、基板用端子16の断面形状が、端子挿入孔28の断面形状と略同じか僅かに小さく設定される。
【0042】
それ故、基板用端子16を端子挿入孔28に対して機械で強く圧入することに伴って問題となり易い端子の挫屈やめっき剥がれ等の問題の発生が効果的に防止されるのである。
【0043】
しかも、外部のワイヤコネクタを第一の基板用コネクタ10に対して着脱する際に第一の基板用コネクタ10の基板用端子16に及ぼされる挿抜方向の外力は、基板用端子16の中間部分38がハウジング部材14やプリント基板12に押し付けられることによって、それらハウジング部材14やプリント基板12に対して直接に及ぼされる。それ故、かかる外力が、基板用端子16の半田付部42に及ぼされることを軽減することが出来、半田クラックの発生も効果的に防止され得るのである。
【0044】
また、基板用端子16の半田付部42が、ハウジング部材14のプリント基板12への突出先端面30を外れた外方に位置していることから、かかる半田付部42における半田付けの状態を目視で容易に確認することが出来るという利点もある。
【0045】
更にまた、基板用端子16の半田付部42が突出される、当接突部26の外周部分は、その外方において底壁18が庇状に突出して覆われている領域にある。それ故、底壁18によって構成される電気部品の装着部である収容部24の必要面積を大きく確保しつつ、プリント基板12に重ね合わされる当接突部26の突出先端面30の面積を小さく抑えてプリント基板12への実装密度の向上を図り、且つ、半田付部42の目視確認を可能と為すことが可能となるのである。
【0046】
以上、本発明の第一の実施形態としてのワイヤコネクタ用の第一の基板用コネクタ10について詳述してきたが、本発明は、ワイヤコネクタ用の他にも各種の電気部品を装着するための基板用コネクタに適用可能である。
【0047】
そのような他の基板用コネクタの実施形態として、図1には、前述の第一の実施形態としての第一の基板用コネクタ10の他、第二の実施形態としての第二の基板用コネクタ50と、第三の実施形態としての第三の基板用コネクタ52が、併せ示されている。
【0048】
かかる第二の基板用コネクタ50は、電気部品としての公知の低背ヒューズが着脱可能に装着されるものであり、第三の基板用コネクタ52は、電気部品としての公知のリレーが着脱可能に装着されるものである。これら第二の基板用コネクタ50及び第三の基板用コネクタ52は、詳述した第一の基板用コネクタ10と特徴的な部分の基本構造を同じにするものであるが、以下、必要な説明を加える。
【0049】
第二の基板用コネクタ50は、図12〜15に示されているハウジング部材54に対して、図16〜19に示されているように基板用端子56が組み付けられた構造とされている。ハウジング部材54は、矩形板状の底壁58とその周縁部から上方に突出する矩形筒状の周壁60を備えた一体成形品であり、全体として縦形の矩形箱体形状とされている。そして、このハウジング部材54の内部には、上方に向かって開口して、低背ヒューズが収容状態で装着される収容部62が形成されている。
【0050】
また、かかる収容部62の左右両側部分(図12中の左右両側部分)には、低背ヒューズの両側タブ端子がそれぞれ差し入れられるタブ挿入部64,64が上方と周壁60に開口して設けられている。更に、これら各タブ挿入部64から連続して、収容部62の底壁58に向かって延出して、底壁58を貫通して開口する端子挿入孔66が形成されている。また、底壁58において、プリント基板12に重ね合わされる重ね合わせ面68には、端子挿入孔66の下端開口部から外周縁部にまで延びる位置決め溝70が形成されている。更にまた、底壁58の中央部分には、固定用のボルト穴72が外面に開口して形成されている。
【0051】
なお、底壁58においてプリント基板12に重ね合わされる重ね合わせ面68には、部分的に僅かな段差部が形成されており、位置決め溝70が形成された左右両側部分に比して、ボルト穴72が開口形成された中央部分の方が僅かに外方に突出位置している。
【0052】
一方、基板用端子56は、長さ方向の中間部分74に対して両側が反対側に屈曲されてクランク形状とされている。その一端側の接続部76は、先端が音叉端子とされており、ハウジング部材54の端子挿入孔66に対して挿し入れられている。また他端側の半田付部80は、先端が二股状に分岐されてそれぞれがプリント基板12のスルーホール44に挿通されて半田付けされるようになっている。
【0053】
なお、本実施形態では、端子挿入孔66に比して接続部76が短くされており、接続部76の先端部分が端子挿入孔66の長さ方向中間部分に位置されており、接続部76が端子挿入孔66に収容状態で収容部62の両側に位置して組み付けられている。これにより、収容部62に装着されるヒューズの通電タブが、端子挿入孔66に対して、収容部62側の開口部から差し入れられ、端子挿入孔66内で接続部76に対して接続されるようになっている。なお、基板用端子56の接続部76が端子挿入孔66の内部に収容配置されていることにより、接続部76の保護が図られている。これにより、音叉形状とされた基板用端子56の接続部76の変形が有利に防止されて、導通安定性の確保が達成される。
【0054】
そして、かかる基板用端子56は、その中間部分74が、ハウジング部材54の位置決め溝70に嵌め入れられて位置決めされて組み付けられている。これら左右の基板用端子56,56を組み付けたハウジング部材54は、図9〜11に示されているように反転され、重ね合わせ面68に重ね合わされるプリント基板12に対して、固定ボルト46をボルト穴72に螺入させてボルト固定すると共に、左右の基板用端子56,56をスルーホール44,44に挿通する。その後、再反転させてリフロー半田等により半田付部80をプリント基板12の通電回路に半田付けして導通させることによって、第二の基板用コネクタ50がプリント基板12に対して実装される。
【0055】
さらに、第三の基板用コネクタ52は、図20〜23に示されているハウジング部材84に対して、図24〜27に示されているように基板用端子86が組み付けられた構造とされている。ハウジング部材84は、矩形板状の底壁88とその周縁部から上方に突出する矩形筒状の周壁90を備えた一体成形品であり、全体として縦形の矩形箱体形状とされている。そして、このハウジング部材84の内部には、上方に向かって開口して、リレーが収容状態で装着される収容部92が形成されている。なお、底壁88には、収容部92に装着されるリレーのタブ端子が挿し入れられる複数(本実施形態では4つ)のタブ挿入部93が、厚さ方向に貫通して設けられている。
【0056】
また、ハウジング部材84の底壁88には、外方に向かって突出する当接突部94が、底壁88の底面から部分的に突出する態様で一体形成されている。この当接突部94には、厚さ方向に貫通して延びる複数(本実施形態では4つ)の端子挿入孔96が形成されている。この端子挿入孔96は、その下端がプリント基板12に重ね合わされる当接突部94の突出先端面98に開口している一方、その上端が収容部92の底壁88に貫通形成されたタブ挿入部93を介して収容部92に開口している。また、当接突部94には、端子挿入孔96から外れた位置に、ボルト穴100が形成され、当接突部94の突出先端面98に開口されている。なお、当接突部94の周壁には、端子挿入孔96に連接して設けられたタブ挿入スリット97が開口して形成されており、タブ挿入部93から挿し入れられて基板用端子86と接続されるリレーのタブ端子が挿入されるようになっている。
【0057】
更にまた、当接突部94の突出先端面98には、端子挿入孔96の外側開口部から外周縁部にまで延びる位置決め溝102が形成されている。なお、当接突部94の突出先端面98には、部分的に僅かな段差部が形成されており、位置決め溝102が形成された面に比して、ボルト穴100が開口形成された面の方が僅かに外方に突出位置している。
【0058】
一方、基板用端子86は、長さ方向の中間部分104に対して両側が反対側に屈曲されてクランク形状とされている。その一端側の接続部106は、先端が音叉端子とされており、ハウジング部材84の端子挿入孔96に対して挿し入れられている。また他端側の半田付部108は、先端が二股状に分岐されてそれぞれがプリント基板12のスルーホール44に挿通されて半田付けされるようになっている。
【0059】
なお、本実施形態では、端子挿入孔96に比して接続部106が短くされており、接続部106の先端部分が端子挿入孔96の長さ方向中間部分に位置されて、収容部92に突出しないで組み付けられている。これにより、収容部92に装着されるリレーのタブ端子が、端子挿入孔96に対して、タブ挿入部93を介して収容部92側の開口部から挿し入れられ、端子挿入孔96内で接続部106に対して接続されるようになっている。なお、基板用端子86の接続部106が端子挿入孔96の内部に収容配置されて、収容部92内に突出されていないことにより、接続部106の保護が図られている。
【0060】
そして、かかる基板用端子86は、その中間部分104が、ハウジング部材84の位置決め溝102に嵌め入れられて位置決めされて組み付けられている。これら複数の基板用端子86を組み付けたハウジング部材84は、図9〜11に示されているように反転され、突出先端面98に重ね合わされるプリント基板12に対して、固定ボルト46をボルト穴100に螺入させてボルト固定すると共に、左右の基板用端子86,86をスルーホール44,44に挿通する。その後、再反転させてリフロー半田等により半田付部108をプリント基板12の通電回路に半田付けして導通させることによって、第三の基板用コネクタ52がプリント基板12に対して実装される。
【0061】
上述の如き構造とされた第二の基板用コネクタ50及び第三の基板用コネクタ52においても、第一の基板用コネクタ10と同様に、本発明に従う基本的構造を備えており、従って、第一の基板用コネクタ10と同様な効果を何れも有効に奏し得るものである。
【0062】
以上、本発明の実施形態について詳述してきたが、本発明は、これらの実施形態における具体的な記載によって限定解釈されるものでない。例えば、採用されるハウジング部材の形状や基板用端子の形状及び配設位置や数等は、ハウジング部材に装着される電気部品等に応じて適宜に設定されるものであり、複数の基板用端子を装着する場合に、その一部だけを本発明に従う構造とすることも可能である。
【0063】
また、ハウジング部材をプリント基板に固定する固定手段として、プリント基板とハウジング部材を共に貫通して装着されるボルト・ナットやリベット等の公知の締結具を採用することも可能であり、ハウジング部材に一体形成した溶着突部をプリント基板の貫通孔に挿通して溶着固定等しても良い。
【0064】
更にまた、リレーやヒューズ、ワイヤコネクタ等、複数の電気部品を併せて装着することが出来るように複数の収容部を設けたハウジング部材を採用することも可能である。
【0065】
また、ハウジング部材におけるプリント基板への重ね合わせ面は、必ずしも当接状態で密接される必要はない。例えば、重ね合わせ面に形成した位置決め溝36に嵌め込んで配設した基板用端子の中間部分を、かかる重ね合わせ面よりも突出させることにより、基板用端子の中間部分を挟んで、ハウジング部材とプリント基板が重ね合わせ方向にボルト等で締め付けた状態で、それらハウジング部材とプリント基板の重ね合わせ面間に隙間が残存していても良い。
【符号の説明】
【0066】
10:第一の基板用コネクタ、12:プリント基板、14,54,84:ハウジング部材、16,56,86:基板用端子、18,58,88:底壁、24,62,92:収容部、26,94:当接突部、28,66,96:端子挿入孔、30,98:突出先端面(重ね合わせ面)、36,70,102:位置決め溝、38,74,104:中間部分、44:スルーホール、46:固定ボルト(固定手段)、50:第二の基板用コネクタ、52:第三の基板用コネクタ、68:重ね合わせ面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気部品が装着される収容部を有し、プリント基板に装着されるハウジング部材を備え、前記収容部の底壁に端子挿入孔を形成し、該端子挿入孔に基板用端子を挿し入れて、該基板用端子の一端側を前記プリント基板のスルーホールに挿通して半田付けする一方、前記基板用端子の他端側を前記電気部品に導通させる基板用コネクタにおいて、
前記ハウジング部材の前記底壁における前記プリント基板への重ね合わせ面に、前記端子挿入孔の開口部から前記重ね合わせ面の外周縁部にまで延びる位置決め溝を形成し、前記基板用端子の長さ方向の中間部分を前記位置決め溝に嵌め入れると共に、前記ハウジング部材を前記プリント基板に固定する固定手段を設けて、前記ハウジング部材の前記位置決め溝に嵌め入れた前記基板用端子を前記プリント基板に押し付けて位置決めすることを特徴とする基板用コネクタ。
【請求項2】
前記位置決め溝に嵌め入れられた前記基板用端子の前記中間部分が、前記ハウジング部材の前記プリント基板への前記重ね合わせ面から外方に延び出しており、前記プリント基板における前記ハウジング部材の前記重ね合わせ面を外れた位置に設けられた前記スルーホールに挿通されて半田付けされる請求項1に記載の基板用コネクタ。
【請求項3】
前記ハウジング部材の前記底壁には前記プリント基板に向かって部分的に突出する当接突部が形成されており、該当接突部を貫通して前記端子挿入孔が形成されていると共に、前記当接突部の突出先端面が前記プリント基板への前記重ね合わせ面とされて、前記当接突部の前記突出先端面に前記位置決め溝が形成されている請求項1又は2に記載の基板用コネクタ。
【請求項4】
前記基板用端子が、前記位置決め溝に嵌め入れられた前記中間部分の長さ方向両側でそれぞれ屈曲されたクランク形状とされており、前記中間部分の長さ方向両側が互いに反対側に突出されて、前記プリント基板の前記スルーホールに挿通される一端側と前記ハウジング部材の前記端子挿入孔に挿し入れられる他端側とが形成されている請求項1〜3の何れか1項に記載の基板用コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【公開番号】特開2011−216321(P2011−216321A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83180(P2010−83180)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【Fターム(参考)】