説明

塊状石材の連結工法

【課題】長期に亘って自然景観及び安全性を確保できる塊状石材相互の連結工法を提供する。
【解決手段】自然石やコンクリートブロック等の塊状石材相互を連結する塊状石材の連結工法において、非金属性の繊維状ロープ12と、該ロープ12が表裏を貫通して取り付けられている織布13とを備え、前記ロープ12の一方の端部をほぐし、該ほぐした部分14aを概ね360度均等に拡げて一方の前記塊状石材11の表面に当接配置し、かつ、該ほぐして拡げた部分14aの外側を覆って織布13を該一方の塊状石材11の表面に当接配置するとともに、織布13の外表面側から織布13とロープ12の端部14aに接着剤17を含浸させて該接着剤17の硬化によりロープ12の一方の端部14aと該織布13と該一方の塊状石材11とを連結一体化し、さらに、前記ロープの他方の端部と他方の前記塊状石材を同様して連結一体化するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自然石やコンクリートブロック等の塊状石材相互を連結する塊状石材の連結工法に関するものであり、特に、発錆がなく、長期に亘って自然景観及び安全性を確保できるようにして塊状石材相互を連結する塊状石材の連結工法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、河川や海岸線等の護岸や堤防を維持するために、自然石やコンクリートブロック等の塊状石材を敷設することが行われている。この塊状石材は自然景観の創出効果を高める観点等から、所定サイズ以上の自然石やコンクリートブロックを上面が地中から露出するようにして埋設し、かつ、隣り合う塊状石材との間を例えば亜鉛アルミ合金メッキ(高耐久メッキ)等を施した金属製の連結金具を用いて互いに連結し一体化している(例えば、特許文献参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−062529号公報。
【特許文献2】特開1999−100826号公報。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したように従来の塊状石材の連結構造では、塊状石材同士を連結金具を用いて連結する構造が取られていた。この連結構造では、河川や海岸線等においては、該連結金具に土砂が衝突し、あるいは波が作用して塊状石材が揺れ、金具相互が擦れたりして「錆」が生じる場合があった。
【0005】
そして、一旦錆びると、錆は金属内部に経年進行し、急速に強度低下を来す。また、錆または金具の破断部が鋭利になり、ケガをする危険性が高くなり安全性に欠けるという問題点もあった。
【0006】
そこで、発錆がなく、長期に亘って自然景観及び安全性を確保できる塊状石材相互の連結工法を提供するために解決すべき技術的課題が生じてくるのであり、本発明はこの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記目的を達成するために提案されたものであり、請求項1記載の発明は、自然石やコンクリートブロック等の塊状石材相互を連結する塊状石材の連結工法において、非金属性の繊維状ロープと、該ロープが表裏を貫通して取り付けられている織布とを備え、前記ロープの一方の端部をほぐし、該ほぐした部分を概ね360度均等に拡げて一方の前記塊状石材の表面に当接配置し、かつ、該ほぐして拡げた部分の外側を覆って前記織布を該一方の塊状石材の表面に当接配置するとともに、前記織布と前記ロープ端部に接着剤を含浸させて該接着剤の硬化により該ロープの一方の端部と該織布と該一方の塊状石材とを連結一体化し、さらに、前記ロープの他方の端部と他方の前記塊状石材を同様して連結一体化して成る塊状石材の連結工法を提供する。
【0008】
この構成によれば、ロープの一方の端部をほぐし、該ほぐした部分を概ね360度均等に拡げて一方の塊状石材の表面に当接配置し、かつ、該ほぐして拡げた部分の外側を覆って織布を該一方の塊状石材の表面に当接配置するとともに、該織布とロープ端部に接着剤を含浸させて硬化させると、該接着剤の硬化によりロープの一方の端部と織布と一方の塊状石材とが連結一体化される。また、この同じ作業をロープの他方の端部と他方の前記塊状石材について行うと、該ロープを介して塊状石材相互を連結することができる。
【0009】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記接着剤は、上記織布の表面側から塗布して含浸させる塊状石材の連結工法を提供する。
【0010】
この構成によれば、ロープ端部と該端部の外側を覆って設けられる織布を、一方の塊状石材の表面に当接配置させ、かつ、織布の表面側から接着剤を塗布すると、該織布とロープ端部にそれぞれ接着剤が含浸・硬化されるとともに、該接着剤の硬化によってロープ端部と織布と一方の塊状石材が連結一体化される。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の構成において、上記接着剤は、上記ロープ端部及び上記織布が当接配置される箇所に対応させて予め上記塊状石材の表面に塗布しておき、当接された前記ロープ端部及び前記織布に前記塊状石材の表面側から含浸させる塊状石材の連結工法を提供する。
【0012】
この構成によれば、ロープ端部及び上記織布が当接配置される箇所に対応させて、塊状石材の表面に予め接着剤を塗布しておき、該箇所にロープ端部と織布を当接配置させると、塊状石材の表面側から織布とロープ端部にそれぞれ接着剤が含浸され、かつ、該接着剤の硬化によってロープ端部と織布と一方の塊状石材が連結一体化される。
【0013】
請求項4記載の発明は、請求項1,2または3記載の構成において、上記ロープは、上記ほぐして拡げられた内側の繊維部と該内側繊維部の外周面を被覆して該内側繊維部と一体化された外側織布とを備える2重構造で形成され、かつ、外側織布に耐紫外線を有する繊維を使用している塊状石材の連結工法を提供する。
【0014】
この構成によれば、ロープの繊維部の外側を耐紫外線を有する繊維から成る織布で被覆一体化しているので、耐候性・耐摩耗性が高められる。
【0015】
請求項5記載の発明は、請求項1,2,3または4記載の構成において、上記織布は、外側が耐紫外線を有する繊維から成る織布で被覆されている塊状石材の連結工法を提供する。
【0016】
この構成によれば、織布の外側を耐紫外線材質を有する繊維から成る織布で被覆一体化しているので、耐候性・耐摩耗性が高められる。
【発明の効果】
【0017】
請求項1記載の発明は、連結材に金属は使わず、非金属性の繊維状ロープを使用するので、錆が発生することがなく、長期に亘って自然景観及び安全性を確保することができる。また、塊状石材に穿孔加工等を施す必要がないので、穿孔機、発電機等の穿孔設備及び穿孔作業等が不要であり、コストダウンが可能になる。さらに、穿孔作業が不要であるため、粉塵対策も不要になる。
【0018】
また、ロープをほぐして広げた端部外側から織布を当てて接着しているので、ロープに引張力が働いたとき、定着部(接着部)で荷重が分散でき、さらに接着性を高めることができる。
【0019】
さらに、ロープの働き長さ(定着部間の長さ)を短くなるように変えたいときには、ハサミ等で切断すれば長さを簡単に変更することができるので、定着部位の変更が容易になる。
【0020】
請求項2記載の発明は、ロープ端部と該端部の外側を覆って設けられる織布を、一方の塊状石材の表面に当接配置させ、かつ、織布の表面側から接着剤を塗布することによってロープ端部と織布と一方の塊状石材を連結一体化することができるので、連結作業が簡略化され、請求項1記載の発明の効果に加えて、作業性の向上が期待できる。
【0021】
請求項3記載の発明は、予め接着剤が塗布されている塊状石材の表面に、ロープ端部と織布を当接配置させることによってロープ端部と織布と一方の塊状石材を連結一体化することができるので、連結作業が簡略化され、請求項1記載の発明の効果に加えて、作業性の向上が期待できる。
【0022】
請求項4記載の発明は、ロープの繊維部の外側を耐紫外線材質を有する繊維から成る織布で被覆一体化しているので、耐候性・耐摩耗性が高められ、請求項1,2または3記載の発明の効果に加えて、さらに長期に亘って自然景観及び安全性を確保することができる。
【0023】
請求項5記載の発明は、織布の外側を耐紫外線を有する繊維から成る織布で被覆一体化しているので、耐候性・耐摩耗性が高められ、請求項1,2,3または4記載の発明の効果に加えて、さらに長期に亘って自然景観及び安全性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明を河川・海岸護岸に適用した例を示す斜視図。
【図2】本発明の連結工法を適用した塊状石材相互の連結状態を示す斜視図。
【図3】塊状石材とロープとの連結状態を示す拡大斜視図。
【図4】塊状石材とロープの連結部における一部切欠拡大断面図。
【図5】図4のA−A断面図。
【図6】塊状石材とロープの連結途中の状態を示す斜視図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明は、発錆がなく、長期に亘って自然景観及び安全性を確保できる塊状石材相互の連結工法を提供するという目的を達成するために、自然石やコンクリートブロック等の塊状石材相互を連結する塊状石材の連結工法において、非金属性の繊維状ロープと、該ロープが表裏を貫通して取り付けられている織布とを備え、前記ロープの一方の端部をほぐし、該ほぐした部分を概ね360度均等に拡げて一方の前記塊状石材の表面に当接配置し、かつ、該ほぐして拡げた部分の外側を覆って前記織布を該一方の塊状石材の表面に当接配置するとともに、前記織布と前記ロープ端部に接着剤を含浸させて該接着剤の硬化により該ロープの一方の端部と該織布と該一方の塊状石材とを連結一体化し、さらに、前記ロープの他方の端部と他方の前記塊状石材を同様して連結一体化することにより実現した。
【実施例】
【0026】
以下、本発明に係る塊状石材の連結工法の一実施例を添付図面を参照しつつ説明する。図1は本発明に係る塊状石材の連結工法を適用した河川護岸の一例を示す斜視図である。同図において、河川護岸1に敷設された塊状石材11,11…は、隣接する塊状石材11,11相互をロープ12で連結固定している。なお、ここでの塊状石材11,11は、適宜サイズ及び適宜の個数から成る自然石やコンクリートブロック等であり、連結は自然石同士、コンクリートブロック同士、及び、自然石とコンクリートブロックを相互に連結する場合等を含む。
【0027】
図2は、図1に示した河川護岸1に敷設されている塊状石材11,11相互を連結している部分の拡大斜視図である。同図は、隣り合う塊状石材11,11,11が、ロープ12と織布13等で相互に連結されている状態を示している。本例では3個を連結しているが、2個以上であれば適宜の個数でよい。
【0028】
図3は塊状石材11にロープ12の一端を固定する連結部の構造を示す拡大斜視図で、図4は図3に示す連結部構造の一部切欠拡大断面図、図5は図4のA―A線断面図である。
【0029】
図3〜図5において、前記織布13は、非金属性、例えばアラミド繊維で形成した高張力を有するメッシュ状の織布であり、該織布13の表面には耐紫外線を有する例えばポリエステル繊維織布を被覆一体化し、該ポリエステル繊維により紫外線による劣化防止処理を施している。
【0030】
前記ロープ12は、高張力を有する非金属性の繊維、例えばアラミド繊維を束ねて成る内側の繊維部14と、該内側の繊維部14の外周を被覆し、該内側の繊維部と一体化された外側織布15とを有して、2重構造に形成されている。該外側織布15は、耐紫外線を有する例えばポリエステル繊維を使用し、該ポリエステル繊維により該ロープ12の紫外線による劣化を防止し、かつ、耐摩耗性が得られるように構成されている。
【0031】
そして、ロープ12を使用して塊状石材11,11相互を連結する場合は、まず、ロープ12をハサミ等で必要な長さに切断し、かつ、両端側の外側織布15の一部を剥ぎ、内側繊維部14の両端を各々露出させる。また、剥がした外側織布15の端部15aはほぐれないように、その端部外周部分にテープ16を巻き付けて保護する。なお、テープ16を巻き付ける代わりに、外側織布15の端部15aを熱溶融して硬化、あるいは接着剤を含浸硬化させても良い。
【0032】
このようにして所望長さを有するロープ12が用意できたら、続いて図6に示すように、該ロープ12がそれぞれ表裏面を貫通するようにして、2枚の織布13,13を該ロープ12に装着する。また、該ロープ12の両側端に各々露出している内側繊維部14の一部14aをそれぞれほぐし、該ほぐした部分14aの一方を概ね360度均等に広げ、該ほぐした部分14aを一方の塊状石材11の表面に当接配置する。図6は、この状態を示す。
【0033】
次に、2枚の織布13,13のうち、片方の織布13をほぐした部分14aの外側から塊状石材11の表面に押し当てる。また、さらに該織布13の外表面側から接着剤17を塗布し、該接着剤17を該織布13と前記ロープ12のほぐした部分14aに各々含浸させ、その後、該接着剤17を硬化させると該ロープ12の一方側の端部(ほぐした部分14a)と該織布13と該一方の塊状石材11が一体に固定される。図3は、この状態を示す。なお、ロープ12を接着剤17で固定する際、塊状石材11側の表面に細かい凹凸を設けておくと接着性を高めることができ、あるいは塊状石材表面に接着剤を塗布しても接着性を高めることができる。
【0034】
このようにして、ロープ12の一方側の端部に塊状石材11が固定されたら、ロープ12の反対側の端部にも塊状石材11を織布13及び接着剤17を使用して同様に固定する。これにより、ロープ12の両端側にそれぞれ塊状石材11,11が取り付けられ、塊状石材11,11相互がロープ12で固定される。
【0035】
なお、ロープ12の連結本数及び太さ等は、塊状石材11,11の大きさ及び重量並びに設置環境等に応じて任意に選択される。
【0036】
したがって、本実施例によれば、塊状石材11,11相互を連結するのに繊維性のロープ12を使用するので、錆が発生することがない。これにより、長期に亘って自然景観及び安全性を確保することができる。また、塊状石材11,11に穿孔加工を施す必要がないので、穿孔機、発電機等の穿孔設備、及び、穿孔作業等が不要となり、コストダウンに寄与もする。さらに、穿孔作業が無くなることにより、粉塵対策も不要になる。
【0037】
また、ロープ12をほぐして広げた部分14aの外側から織布13を当てて接着剤で接着をしているので、ロープ11に引張力が働いたとき定着部となる織布13により荷重が分散でき、さらに接着性を高めることができる。
【0038】
さらに、ロープ12の働き長さ(定着部間の長さ)を短くなるように変えたいときには、ハサミ等で切断すれば長さを簡単に変更することができるので、定着部位の変更が容易になる。
【0039】
また、さらにロープ12の内側繊維部14の外側を耐紫外線・耐摩耗性に優れたポリエステル繊維から成る外側織布15で被覆一体化するとともに、織布13の外側を同じく耐紫外線に優れたポリエステル繊維から成る織布で被覆一体化しているので、耐候性・耐摩耗性がさらに向上する。
【0040】
なお、本発明は、本発明の精神を逸脱しない限り種々の改変を為すことができ、そして、本発明が該改変されたものに及ぶことは当然である。
【0041】
例えば、上記実施例では、織布13の表面側から接着剤17を塗布する構成を開示したが、塊状石材11の表面上で、かつ、ロープ端部14a及び外側織布15が当接配置される箇所に接着剤17を予め塗布して置き、該ロープ端部14a及び外側織布15が当接配置された際に、該塊状石材11の表面側からロープ端部14a及び外側織布15に接着剤17を含浸・硬化させるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0042】
以上説明したように、本発明は河川・海岸護岸を施工する例に適用しているが、前記以外の場所、例えば水制工、突堤工、消波工、離岸堤工、等の被覆工の施工にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
11 塊状石材
12 ロープ
13 織布
14 内側繊維部
14a ほぐした部分
15 外側織布
15a 端部
16 テープ
17 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自然石やコンクリートブロック等の塊状石材相互を連結する塊状石材の連結工法において、
非金属性の繊維状ロープと、該ロープが表裏を貫通して取り付けられている織布とを備え、前記ロープの一方の端部をほぐし、該ほぐした部分を概ね360度均等に拡げて一方の前記塊状石材の表面に当接配置し、かつ、該ほぐして拡げた部分の外側を覆って前記織布を該一方の塊状石材の表面に当接配置するとともに、前記織布と前記ロープ端部に接着剤を含浸させて該接着剤の硬化により該ロープの一方の端部と該織布と該一方の塊状石材とを連結一体化し、さらに、前記ロープの他方の端部と他方の前記塊状石材を同様して連結一体化して成ることを特徴とする塊状石材の連結工法。
【請求項2】
上記接着剤は、上記織布の表面側から塗布して含浸させることを特徴とする請求項1記載の塊状石材の連結工法。
【請求項3】
上記接着剤は、上記ロープ端部及び上記織布が当接配置される箇所に対応させて予め上記塊状石材の表面に塗布しておき、当接された前記ロープ端部及び前記織布に前記塊状石材の表面側から含浸させることを特徴とする請求項1記載の塊状石材の連結工法。
【請求項4】
上記ロープは、上記ほぐして拡げられた内側の繊維部と、該内側繊維部の外周面を被覆して該内側繊維部と一体化された外側織布とを備える2重構造で形成され、かつ、該外側織布に耐紫外線を有する繊維を使用していることを特徴とする請求項1,2または3記載の塊状石材の連結工法。
【請求項5】
上記織布は、外側が耐紫外線を有する繊維から成る織布で被覆されていることを特徴とする請求項1,2,3または4記載の塊状石材の連結工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−17142(P2011−17142A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160994(P2009−160994)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000226356)日建工学株式会社 (24)
【Fターム(参考)】