説明

塑性加工用潤滑油組成物

【課題】高面圧下で加工されるメカニカル拡管、引き抜き成形、しごき成形などでは、極圧性と加工後の洗浄性が両立した塑性加工油は得られていない。また、近年の環境配慮の観点から、塩素系溶剤やポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等の界面活性剤を用いることは好ましくない。
【解決手段】鉱油及び/又は合成油を基油とし、(A)ジチオリン酸亜鉛化合物、(B)硫黄化合物及び(C)HLB値が9〜14のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを配合することを特徴とする塑性加工用潤滑油組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塑性加工用潤滑油組成物に関し、詳しくは特に、鋼、ステンレス鋼、表面処理鋼、アルミ合金などに、メカニカル拡管、プレス成形、曲げ成形、引き抜き成形、しごき成形などの塑性加工を施す際の良好な潤滑性と塑性加工後の良好な洗浄性を発揮する塑性加工用潤滑油組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油基油に、硫黄系化合物、塩素系化合物、リン酸エステル等、脂肪酸エステルなどを配合した組成物が、金属の塑性加工用潤滑剤として優れた適性を備えていることは従来から知られている。そして、鋼板、ステンレス鋼板、表面処理鋼板、アルミ合金板などの難加工性材料に、メカニカル拡管、プレス成形、曲げ成形、引き抜き成形、しごき成形などの塑性加工を施す場合には、潤滑油基油に上記の化合物を配合したものが多用されてきた。
【0003】
特に、メカニカル拡管、引き抜き成形、しごき成形など高面圧下で加工される分野では、高い極圧性を保持するため吸着活性の高い硫黄系、塩素系あるいはリン系添加剤が多用されている(特許文献1〜4参照)。
ここで(A)ジチオリン酸亜鉛化合物と(B)硫黄化合物を組み合わせると、極圧性に優れる塑性加工油となりえることが見出された。
一般に加工油添加剤は極性化合物であることが多いので、塑性加工後はこれら添加剤は脱脂等、洗浄除去する必要がある。
【0004】
しかしながら、組み合わせられた(A)ジチオリン酸亜鉛化合物と(B)硫黄化合物は、極圧性が高く吸着活性の高いが故に、加工後の洗浄除去が困難である。つまり、極圧性と洗浄性を両立させることが難しいものである。
さらに、近年の環境配慮の観点から、たとえ洗浄性が悪いからといって安易な塩素系化合物等の溶剤使用や、たとえ界面活性剤を用いるとしてもポリオキシエチレンノニルフェノールエーテル等の界面活性剤を用いることは好ましくない。
【特許文献1】特開平10−245579号公報
【特許文献2】特開平10−273685号公報
【特許文献3】特開2001−348586号公報
【特許文献4】特開2002−285181号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように、鋼板、ステンレス鋼板などの塑性加工用潤滑剤として、極圧性に優れ、且つ加工後の洗浄性が優れた油剤は得られていない。
本発明は、従来の組成加工潤滑油と同等又はそれ以上の極圧性が得られ、特に、鋼板、ステンレス鋼板、表面処理鋼板、アルミ合金板などに塑性加工後に、油剤の除去性が極めて高く、且つ、環境に対して悪影響のある塩素系化合物およびポリオキシエチレンノニルフェノールエーテルを使用しない組成加工用潤滑油組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
即ち本発明は、鉱油及び/又は合成油を基油とし、(A)ジチオリン酸亜鉛化合物、(B)硫黄化合物及び(C)ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを配合することを特徴とする塑性加工用潤滑油組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、鉱油及び/又は合成油を基油とし、極圧剤としてジチオリン酸亜鉛化合物及び硫黄化合物を配合し、界面活性剤としてポリオキシアルキレンアルキルエーテルを配合することによって、極圧性に優れ、且つ加工後の洗浄性にも優れた塑性加工用潤滑油組成物を提供することが可能となる。さらに、用いるポリオキシアルキレンアルキルエーテルは環境保護にも好ましい界面活性剤である。そして加工後の洗浄には簡易な水洗洗浄が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。本発明における基油は、鉱油及び/又は合成油である。鉱油としては、例えば、原油を常圧蒸留および減圧蒸留して得られた潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理等の精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系、ナフテン系などの油が使用できる。特に、多環芳香族炭化水素(PCA)含量がDMSO抽出物として3質量%未満のナフテン系油が好ましい。
【0009】
また、合成油としては、例えば、ポリαーオレフィン(ポリブテン、1−オクテンオリゴマー、1−デセンオリゴマーなど)、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、エステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテルなどが使用できる。本発明において、基油の動粘度には何ら制限はないが、通常40℃における動粘度が20〜2000mm2 /s、好ましくは80〜1000mm2 /sのものが用いられる。また、当然のことながらこれらの鉱油および合成油は単独でも、また2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0010】
本発明の塑性加工用潤滑油剤は、下記一般式(1)で表される(A)ジチオリン酸亜鉛化合物を含有する。
【化1】

上記一般式(1)式中、R1 、R2 、R3 およびR4 は同一でも異なっていてもよく、それぞれ、炭素数1〜30の炭化水素基、たとえば具体的には,それぞれ炭素数1〜30のアルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数5〜7のシクロアルキル基、炭素数6〜30のアルキルシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜30のアルキルアリール基、炭素数7〜30のアルケニルアリール基、炭素数7〜30のアリールアルキル基等が挙げられる。
【0011】
本発明では上に規定した一般式(1)に包含されるジチオリン酸亜鉛化合物の1種を単独で使用することができ、また2種以上を混合して使用することもできる。
【0012】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物は、上記したジチオリン酸亜鉛化合物(以下(A)成分という)を基油に配合して調製され、配合量は任意であるが、(A)成分の含有量の下限値は、組成物全量基準で好ましくは4質量%、さらに好ましくは10質量%、より好ましくは15質量%、最も好ましくは20質量%であり、一方、含有量の上限値は、組成物全量基準で好ましくは60質量%、より好ましくは50質量%であり、最も好ましくは40質量%である。
【0013】
(A)成分の含有量が組成物全量基準で0.5質量%未満の場合は潤滑性向上の添加効果が現れず、一方、含有量が組成物全量基準で50質量%を超える場合は、得られる潤滑性向上の添加効果添加がコスト的に見合わないものとなり、それぞれ好ましくない。
なお、上記式(1)で表されるジチオリン酸亜鉛化合物は中性塩であるが、これを製造する場合には塩基性ジチオリン酸亜鉛化合物が通常副生される。副生物である塩基性塩は、中性塩100重量部に対して0〜150重量部の範囲であれば、本発明の潤滑油組成物に含まれても差し支えない。ただし、その場合でも、一般式(1)で表されるジチオリン酸亜鉛化合物(中性塩)の含有量は、組成物全量基準で4〜60質量%の範囲にある。
【0014】
本発明で用いる硫黄化合物(以下(B)成分ともいう)は、硫黄系極圧剤である。ここでいう硫黄系極圧剤としては、具体的には例えば、硫化エステル、ジハイドロカルビルポリサルファイド、硫化油等が挙げられる。
【0015】
上記硫化エステルとしては、具体的には例えば、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などの動植物油脂;不飽和脂肪酸(オレイン酸、リノール酸又は上記の動植物油脂から抽出された脂肪酸類などを含む)と各種アルコールとを反応させて得られる不飽和脂肪酸エステル;及びこれらの混合物などを任意の方法で硫化することにより得られるものが挙げられる。本発明にかかる硫化エステルにおける硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化油脂全量を基準として好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは10〜40質量%であり、最も好ましくは15〜30質量%である。
【0016】
また、上記ジハイドロカルビルポリサルファイドとは、一般的にポリサルファイド又は硫化オレフィンと呼ばれる硫黄系化合物であり、具体的には下記一般式(2):

5 −Sx −R6 一般式(2)

で表される化合物であり、上記式(2)中、R5 及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ炭素数3〜20の炭化水素基、たとえば、具体的にはそれぞれ、炭素数3〜20の直鎖状又は分枝状のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数6〜20のアルキルアリール基あるいは炭素数6〜20のアリールアルキル基を表し、xは2〜6、好ましくは2〜5の整数を表す。
【0017】
上記一般式(2)中のR5 及びR6としては、その加工性の点から、別個に、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数3〜18の分枝状アルキル基であることがより好ましく、エチレン又はプロピレンから誘導された炭素数6〜15の分枝状アルキル基であることが特に好ましい。また、本発明にかかるジハイドロカルビルポリサルファイドにおける硫黄含有量に特に制限はないが、通常、ジハイドロカルビルポリサルファイド全量を基準として好ましくは10〜50質量%であり、より好ましくは20〜45質量%である。
【0018】
本発明にかかる硫化油とは、鉱油、合成油および油脂の中から選ばれる少なくとも1種に単体硫黄を溶解させたものをいう。ここでいう鉱油としては特に制限されないが、具体的には、具体的には、原油に常圧蒸留及び減圧蒸留を施して得られる潤滑油留分を、溶剤脱れき、溶剤抽出、水素化分解、溶剤脱ろう、接触脱ろう、水素化精製、硫酸洗浄、白土処理などの精製処理を適宜組み合わせて精製したパラフィン系鉱油、ナフテン系鉱油などが挙げられる。また、合成油としては、ポリαオレフィン、アルキルベンゼン、アルキルナフタレン、ジエステル、ポリオールエステル、ポリオキシアルキレングリコール、ポリフェニルエーテル、シリコーン油、パーフルオロアルキルエーテルなどが挙げられる。
【0019】
また、油脂としては、牛脂、豚脂、魚脂、菜種油、大豆油などが挙げられる。また、単体硫黄としては、塊状、粉末状、溶融液体状等いずれの形態のものを用いてもよいが、粉末状又は溶融液体状の単体硫黄を用いると油への溶解を効率よく行うことができるので好ましい。なお、溶融液体状の単体硫黄は液体同士を混合するので溶解作業を非常に短時間で行うことができるという利点を有しているが、単体硫黄の融点以上で取り扱わねばならず、加熱設備などの特別な装置を必要としたり、高温雰囲気下での取り扱いとなるため危険を伴うなど取り扱いが必ずしも容易ではない。これに対して、粉末状の単体硫黄は、安価で取り扱いが容易であり、しかも溶解に要する時間が十分に短いので特に好ましい。また、本発明にかかる硫化油における硫黄含有量に特に制限はないが、通常、硫化油全量を基準として好ましくは5〜30質量%であり、より好ましくは10〜20質量%である。
【0020】
本発明において(B)成分としては、上記の中から選ばれる1種のみを用いても良いし、2種以上の混合物を用いても良い。
本発明の塑性加工用潤滑油組成物は、上記した(B)成分を基油に配合して調製され、その配合量は任意であるが、(B)成分の含有量の下限値は、組成物全量基準で好ましくは5質量%、より好ましくは10質量%、最も好ましくは20質量%であり、一方、含有量の上限値は、組成物全量基準で好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%、最も好ましくは30質量%である。(B)成分の含有量が組成物全量基準で5質量%未満の場合は潤滑性向上の添加効果が現れず、一方、含有量が組成物全量基準で50質量%を超える場合は、得られる潤滑性向上の添加効果添加がコスト的に見合わないものとなり、それぞれ好ましくない。
特に、(B)成分が硫化エステルである場合、その配合量は組成物全量基準で、好ましくは5質量%、より好ましくは10質量%、最も好ましくは20質量%であり、一方、含有量の上限値は、組成物全量基準で好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%、最も好ましくは30質量%である。
【0021】
また、(B)成分がジハイドロカルビルポリサルファイドである場合、その配合量は組成物全量基準で、好ましくは10質量%、より好ましくは15質量%、最も好ましくは20質量%であり、一方、含有量の上限値は、組成物全量基準で好ましくは50質量%、より好ましくは40質量%、最も好ましくは30質量%である。
【0022】
本発明で用いるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(以下(C)成分という)は、下記一般式(3)で示され、界面活性剤として配合される。

7−O−(R8−O)n−R9 一般式(3)

上記式(3)中、R7 、R9は、炭素数1〜20のアルキル基であり、R8は炭素数2〜4のアルキレン基である。また、nは2〜20の整数を示す。中でもHLB(Hydrophile-Lipophile Balance)値は9〜14が好ましく、11〜13がより好ましい。HLB値が9以下であると、油剤の洗浄性が悪くなり、またHLB値が14以上であると、油剤の安定性が悪くなり、好ましくない。なお、HLB値は、付加するエチレンオキサイド等のモル数や、付加されるアルコール等のアルキル基の長さ等を適宜に変えることで所定のHLB値のものが得られる。
【0023】
たとえば、具体的には以下のようなポリオキシアルキレンアルキルエーテルが例示される。
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB値、12.6;エチレンオキサイド付加モル数 8.5)、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB値、10;エチレンオキサイド付加モル数 5)、
ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB値、14.5;エチレンオキサイド付加モル数 12)。
【0024】
また、本発明にかかる(C)成分の含有量に特に制限はないが、通常、潤滑油組成物全量基準として、好ましくは4〜50質量%であり、より好ましくは7〜30質量%であり、もっとも好ましくは10〜20質量%である。(C)成分の含有量が組成物全量基準で4質量%未満の場合は洗浄性向上の添加効果が現れず、一方、含有量が組成物全量基準で50質量%を超える場合は、得られる洗浄性向上の添加効果添加がコスト的に見合わないものとなり、それぞれ好ましくない。
【0025】
本発明の塑性加工用潤滑油組成物においては、その優れた効果をより一層向上させるため、必要に応じてその他の極圧剤、酸化防止剤、さび止め剤、腐食防止剤、消泡剤等の添加剤を単独で又は2種以上を組み合わせて更に含有してもよい。
【0026】
その他の極圧剤としては、リン系化合物、硫黄系化合物が挙げられる。酸化防止剤としては、2,6−ジターシャリーブチル−p−クレゾール(DBPC)等のフェノール系化合物、フェニル−α−ナフチルアミン等の芳香族アミン及び有機金属化合物が挙げられる。さび止め剤としては、オレイン酸等の脂肪酸の塩、ジノニルナフタレンスルホネート等のスルホン酸塩、ソルビタンモノオレエート等の多価アルコールの部分エステル、アミン及びその誘導体、リン酸エステル及びその誘導体が挙げられる。腐食防止剤としては、ベンゾトリアゾール等が挙げられる。消泡剤としては、シリコーン系のものが挙げられる。
上記添加剤の合計含有量は、組成物全量基準で、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
【0027】
本発明の塑性加工用滑油組成物の動粘度は特に制限されないが、40℃における動粘度は、好ましくは20〜300mm/s、より好ましくは40〜200mm/s、更に好ましくは60〜150mm/sである。当該動粘度が20mm/s未満であると、潤滑性が低下する傾向にある。一方、当該動粘度が300mm/sを超えるような高粘度である場合には、加工後の油剤の洗浄性が低下することがある。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明は良好な潤滑性と塑性加工後の良好な洗浄性を発揮する塑性加工用潤滑油組成物に利用でき、さらに詳しくは、特に、鋼、ステンレス鋼、表面処理鋼、アルミ合金などをメカニカル拡管、プレス成形、曲げ成形、引き抜き成形、しごき成形などの塑性加工を施す際の良好な潤滑性と塑性加工後の良好な洗浄性を発揮する塑性加工用潤滑油組成物として利用することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例及び比較例に基づき本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0030】
[実施例1〜16、比較例1〜5]
実施例1〜16及び比較例1〜5においては、それぞれ以下に示す基油及び添加剤を用いて表1及び表2に示す組成を有する潤滑油組成物を調製した。
【0031】
(基油)
基油1:高度精製鉱油(40℃における動粘度:322mm2/s)
基油2:ポリα−オレフィン合成油(40℃における動粘度:400mm2/s,数平均分子量:1100)
【0032】
(添加剤)
A成分
A1:前記一般式(1)でR1 、R2 、R3 、R4が炭素数4のアルキル基である亜鉛ジチオフォスフェート
A2:前記一般式(1)でR1 、R2 、R3 、R4が炭素数12のアルキル基である亜鉛ジチオフォスフェート
【0033】
B成分
B1:硫化エステル(硫黄分:20質量%)
B2:ジハイドロカルビルサルファイド(硫黄分:38質量%)
【0034】
C成分
C1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB値、12.6;エチレンオキサイド付加モル数 8.5)
C2:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB値、10;エチレンオキサイド付加モル数 5)
C3:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(HLB値、14.5;エチレンオキサイド付加モル数 12)
【0035】
その他の添加剤
D1:ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル
D2:塩素化パラフィン
D3:Caスルフォネート
D4:高級アルコール
D5:窒素系金属不活性剤
D6:ポリブテン
D7:ダイマー酸
D8:ポリオールエステル
【0036】
次に、実施例1〜16及び比較例1〜5の潤滑油組成物について以下の試験を行った。
(極圧性)
ASTM D 2670“FALEX WEAR TEST”に基づいて、ジャーナル:ASTMスチール、ブロック:ASTMスチールを用いて、回転数290回/分で、慣らし運転を250lb荷重の下に5分間行った。次いで、規定荷重1000 lbの下に15分運転した後の、テストジャーナル(ピン)の摩耗量(mg)を測定した。テストジャーナルの摩耗量が100mg以上のものは極圧性が劣ると判定した。得られた結果を表1〜表2に示す。
【0037】
(油剤の安定性)
油剤を100mlの栓付ガラス容器に採取し、0℃において、168時間静置した後の油剤の分離及び沈殿の状態を観察した。評価は透明な状態を○、濁り或いはくもりのある場合を△、分離及び/又は沈殿のある場合を×として評価する。○又は△の場合を合格と判定した。
【0038】
(洗浄性)
常温の水を入れた10Lのステンレス製ビーカ中に、200×300mmの鋼板の下半面にはけで油剤を塗った鋼板を浸せきし、攪拌モータ(400rpm)で5分間かき混ぜた。評価は、試験後、鋼板をビーカから取り出して、鋼板表面に油剤が全く残らないか又は僅かに残る場合を○、やや残る場合を△、かなり残る場合を×として評価し、○又は△の場合を合格と判定した。
【0039】
表1及び表2に示すように、C成分のHLB値が本願発明の範囲に入らない比較例1及び比較例2は、実施例に比べて油剤の安定性が悪く、また、A成分あるいはB成分が本願発明の範囲に入らない比較例3及び比較例4は、油剤の安定性、洗浄性は良好なものの実施例に比べて潤滑性が劣っている。また、比較例5は、環境に悪影響のある従来使用されていた添加剤、D1及びD2を配合しており、さらに実施例に比較して油剤の安定性が悪い。
【0040】
【表1】

【0041】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱油及び/又は合成油を基油とし、(A)ジチオリン酸亜鉛化合物、(B)硫黄化合物及び(C)HLB値が9〜14のポリオキシアルキレンアルキルエーテルを配合することを特徴とする塑性加工用潤滑油組成物であって、極圧剤に塩素系化合物を使用しない非塩素系塑性加工油組成物。

【公開番号】特開2009−209239(P2009−209239A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−52276(P2008−52276)
【出願日】平成20年3月3日(2008.3.3)
【出願人】(000004444)新日本石油株式会社 (1,898)
【Fターム(参考)】