説明

塗壁材および塗壁材の製造方法

【課題】 塗り壁に用いられる塗壁材において、基本的な断熱・調湿・消臭機能と、内壁仕上げ材としての本来的意匠性を発揮することができ、癒しの居住空間を演出できる塗壁材を提供できるようにすることを課題とする。
【解決手段】 無機多孔質材による主材と、無機質イオン結合促進剤と、水硬性バインダーとを含有する塗壁材であり、前記の主材として沖縄産トラバーチン、琉球石灰岩(コーラル)、風化造礁珊瑚が混合され、さらに赤土、又は赤瓦、オニヒトデ炭、月桃繊維を含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は住宅などの内壁面の仕上げなどに使用される塗壁材に関し、特に、無機多孔質自然素材による安全、安心で快適さを向上させることのできる塗壁材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅の塗壁材としては、石膏や漆喰などの水硬性材料を主成分とする塗壁材が使用されている。
【0003】
塗壁材に水を加えて練り、得られた練状物を壁の下地面に塗り付け、乾燥硬化させることで、塗り壁が構築される。
【0004】
近年、塗壁材に珪藻土を配合することで、塗り壁に調湿機能を持たせる技術が提案されている。
【0005】
珪藻土は吸放湿性に優れた材料であり、室内空問の湿度が高くなると、塗り壁に配合された珪藻土が湿気を吸収することで、室内空問の湿度を下げることとなる。
【0006】
室内空問が乾燥し過ぎる場合には、珪藻土が吸収した水分を放出することで、室内空問の乾燥を抑えることとなる。
【0007】
このように室内空問の湿度は一定範囲に調整されることとなる。
【0008】
珪藻土には、調湿機能に加えて、脱臭機能があることや、シックハウス症候群の原因物質ともなるホルムアルデヒドなどの揮発性ガスの吸着機能などがあることも知られている。
【0009】
また、特許第3190284号公報では、壁材などの機能性建材として、水硬性材料に調湿機能や断熱機構などを有する珪藻土や遠赤外線効果を有する紫金石などの機能性素材を混合しても、その本質的機能を損なうことがないようにするために、特定の組み合わせからなる無機塩の混合物を配合する技術が開示されている。
【0010】
珪藻土入りの塗り壁においては、珪藻土が本来有する各種の機能が十分に発揮されないという問題があった。
【0011】
その理由としては、珪藻土の表面あるいは細孔が水硬性バインダーで塞がれてしまうために、前記した調湿機能などが発揮できなくなるという問題である。
【0012】
水硬性バインダーの配合量を減らせば、珪藻土の機能は発揮させ易いが、塗り壁の強度が低下する。
【0013】
塗り壁が、経時的あるいは外力によって、ひび割れや欠け落ちなどが生じないようにするには、十分な量の水硬性バインダーを配合して、珪藻土を強固に結合一体化させておく必要がある。
【0014】
珪藻土そのものは、それほど強度がないため、水硬性バインダーによる結合が十分でないと、塗り壁の強度は大幅に低下してしまう。
【0015】
前記特許文献1に開示された無機塩混合物を配合すると、比較的に少量の水硬性バインダーを使用するだけでも珪藻土入りの硬化物が得られる。
【0016】
特開2005−15257号公報では、珪藻土入りの塗り壁が有する上記の問題点を無機塩調整剤を混合することで解消し、珪藻土の調湿機能などを、より良好に発揮させることができる塗り壁を提供する技術が開示されている。
【特許文献1】特許第3190284号公報
【特許文献2】特開2005−15257号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
このような従来の塗り壁に使用される塗壁材においては、調湿効果、揮発性有害化学物質の吸着効果、断熱効果、あるいは消臭効果などが発揮されるものであるが、マイナスイオン効果などが発揮されるものはなかった。
【0018】
また、本来、塗り壁は、住宅などの内壁の仕上げ材であり、その意匠性が求められるものである。
【0019】
また、近年、ストレス社会が問題視され、住宅環境に癒しを求めるアイデア、デザインが多く取り入れられてきている。
【0020】
本発明の課題は、前記した問題点に鑑みてなされたものであり、塗り壁に用いられる塗壁材において、基本的な断熱・調湿・消臭機能と、内壁仕上げ材としての本来的意匠性を発揮することができ、癒しの居住空間を演出できる塗壁材を提供できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記の問題を解決するために、本発明の請求項1の塗壁材は、無機多孔質材による主材と、無機質イオン結合促進剤と、水硬性バインダーとを含有することを特徴とする。
【0022】
該無機多孔質材は、無機質材であって、多孔質のものであればいずれでも良く、多孔質石灰岩や化石サンゴ、シリカゲル、ガラス発泡材などでも良い。
【0023】
該無機イオン結合促進剤は、無機質でイオン結合を促進するものであり、そのイオン結合による針状結晶化を促進し、多孔質素材の気孔を塞ぐことなく固めることができるものであればいずれでも良く、例えば、アルカリイオンや金属イオンを多量に含有する無機塩類や金属塩類などでも良い。
【0024】
アンモニウム塩類、ナトリウム塩類、カリウム塩類、マグネシウム塩類、鉄分化合物などや、それらを主成分とする結合剤などが使用できる。
【0025】
該水硬性バインダーは、通常の水硬化性バインダーが使用でき、ポルトランドセメント、焼石灰、石膏、モルタルなどが使用できる。
【0026】
である。
【0027】
本発明の請求項2の塗壁材は、前記の主材として沖縄産トラバーチンが混合されていることを特徴とする。
【0028】
該沖縄産トラバーチンは、石灰岩の一種で多孔質石灰石で、イタリアのチポリ市から最も多量に生産され、ローマの遺跡に用いられたことで知られている。
【0029】
日本では、沖縄県の瀬底島、勝連、本部、知念、糸満、大島群島、宮古、八重山などで採掘され、琉球トラバーチン、沖縄産トラバーチンなどとして広く利用されているものである。
【0030】
琉球石灰岩が再結晶化した岩石であり、緻密で硬く美しい大理石である。
【0031】
国会議事堂にも使用されている。
【0032】
断熱・浄化機能が極めて高い高級装飾資材として活用されているものである。
【0033】
本発明の請求項3の塗壁材は、前記の主材として風化造礁珊瑚が混合されていることを特徴とする。
【0034】
該風化造礁珊瑚は、浅瀬のサンゴ(造礁サンゴ)が長い間、波の作用でバラバラに破壊されて生じた粉砕物、すなわち、サンゴの細かい破片が周囲の海底に沈積したものである。
【0035】
基本的には、炭酸カルシウムが主成分であるが、マグネシウム、カリウム、などの人体の生命維持に必要な微量ミネラル40数種類を含む。
【0036】
また、東京大学の生理学研究室でサンゴの血圧降下作用・血糖値の研究が行われた中でマイナスイオンの発生が発見され、トルマリンの300〜1000倍ものマイナスイオンを発生することが確認されているものである。
【0037】
この風化造礁サンゴは、沖縄県や環境省が指定した海域から採取されているものである。
【0038】
多孔質物質であり、臭いや湿気の吸湿除去に効果があり、マイナスイオン発生効果も注目されているものである。
【0039】
本発明の請求項4の塗壁材は、前記の主材として琉球石灰岩(コーラル)が混合されていることを特徴とする。
【0040】
該コーラルは、沖縄県で採掘される石灰岩であり、路面や壁材として広く使用されており、調湿機能にも優れているものである。
【0041】
カルサイトを主成分とする。
【0042】
本発明の請求項5の塗壁材は、前記の主材に赤土が混合されていることを特徴とする。
【0043】
該赤土は、沖縄県で産出される、国頭マージと呼ばれ、粘土でセッ器粘土であり、雲母粘土鉱物とカオリン鉱物を主成分とする。
【0044】
優秀な左官用素材として使用されているものである。
【0045】
本発明の請求項6の塗壁材は、前記の主材に赤瓦粉末が混合されていることを特徴とする。
【0046】
該赤瓦は、沖縄県で屋根材として広く利用されいるものであり、この赤瓦を破砕し粉砕して得られる鮮やかな赤色の粉末としたものであり、リサイクル製品である。
【0047】
本発明の請求項7の塗壁材は、前記の主材にオニヒトデ炭化物が混合されていることを特徴とする。
【0048】
該オニヒトデ炭化物は、サンゴの天敵として知られる海洋生物のオニヒトデを炭化したものであり、サンゴを食することからカルシウムが多く、炭としては非常に緻密であり、臭いを吸収するものである。
【0049】
破砕して粒上にして使用すると良い。
【0050】
本発明の請求項8の塗壁材は、前記の主材に月桃繊維が混合されていることを特徴とする。
【0051】
該月桃繊維は、沖縄県で繁殖している植物である、月桃の葉をすりつぶし繊維化して乾燥させたものである。
【0052】
抗菌作用があることが知られている。
【発明の効果】
【0053】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0054】
1)無機多孔質自然素材による安全で、安心して使用できる塗壁材を提供できる。
【0055】
2)内壁仕上げ材としての本来の意匠性を発揮することができ、デザイン性を高めることができる。
【0056】
3)癒しの居住空間を演出できる塗壁材を提供できる。
【0057】
4)マイナスイオン生成効果を有する塗壁材を提供できる。
【0058】
5)沖縄らしさを表現できる塗壁材を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0059】
本発明による実施の形態について、図面を用いて説明する。
【0060】
図1は、本発明による塗壁材の一実施例を示す図であり、沖縄産トラバーチンである勝連トラバーチンを用いた塗壁材の製造工程を示すフロー図である。
【0061】
勝連トラバーチンを粉砕して粉末処理し、(径は0.6mm以下とする。)無機質イオン促進剤であるFC剤と、ポルトランドセメントとともに混合して、塗壁材とした。
【0062】
白色の塗壁材として使用でき、勝連トラバーチンの優れた断熱性と、吸湿性を有する塗壁材となる。
【0063】
図2は、本発明による、風化造礁珊瑚を用いた塗壁材の製造工程を示すフロー図である。
【0064】
風化造礁珊瑚を粉砕して粉末処理し、赤土と、破砕したオニヒトデの炭化物と、月桃繊維と、FC剤と、焼石灰とを混合して塗壁材とした。
【0065】
風化造礁珊瑚の白色と赤土の赤色とが混合され、落ち着いた心地良い褐色の塗壁材となった。
【0066】
また、オニヒトデ炭粒が散りばめられ、さらに月桃繊維が地肌の凹凸模様を呈する。
【0067】
室内空間を癒しの配色と、凹凸模様で演出することができ、今までにない新しい内装仕上げを実現できるものである。
【0068】
また、組成の配合例としては、
組成配合例1
勝連トラバーチン 64.0重量%
無機イオン結合促進剤 1.4重量%
焼石灰 34.0重量%
スサ 0.6重量%
【0069】
組成配合例2
風化造礁珊瑚 39.0重量%
コーラル 23.5重量%
無機イオン結合促進剤 1.5重量%
焼石灰 36.0重量%
【0070】
組成配合例3
コーラル 64.5重量%
無機イオン結合促進剤 1.5重量%
石膏 34.0重量%
【0071】
組成配合例4
勝連トラバーチン 32.4重量%
赤土 30.0重量%
オニヒトデ炭 0.1重量%
無機イオン結合促進剤 1.5重量%
焼石 36.0重量%
【0072】
組成配合例5
コーラ 32.5重量%
赤瓦 32.0重量%
無機イオン結合促進剤 1.5重量%
石膏 34.0重量%
【0073】
次に本発明の塗壁材の使用例について説明する。
本発明の塗壁材は、完全プレミックスの製品であるので、適量の水を加え、攪拌するだけで良い。
【0074】
塗壁材20kgに対して、水8〜12リットルを混合、攪拌し、ペースト状とする。
【0075】
できたペース状の塗り壁材を壁面の下地材の表面に左官施工する。
【0076】
自然養生により24時間以上で使用硬度に達する。
【0077】
塗壁厚は2mm〜4mm程度が好ましい。
【0078】
重ね塗りが可能である。
【0079】
塗り壁の特性は、図3のおりであり、(財)日本建築総合試験所によるJISA6906の建築用仕上げ材の品質試験結果である。
【0080】
ITK−1は、無機多孔質主材として、勝連トラバーチン(39%)とコーラル(22.5%)を用いた。
【0081】
ITK−2は、無機多孔質主材として、勝連トラバーチン(32%)と赤瓦(32%)を用いた。
【0082】
ICO−0は、無機多孔質主材として、コーラル(64%)を用いた。
【0083】
ICS−0は、無機多孔質主材として、風化造礁珊瑚(64%)を用いた。
【0084】
試験結果としては、付着強さ:0.74〜1.03(N/mm2)耐変退色性:4号〜5号吸放湿性:54.0〜63.0(g/m2)であり、いずれも良好な結果が得られ、優れた塗壁材であることが証明された。
【0085】
また、壁面の色彩は、各組成の配合を変えることにより、白色から乳白色、褐色から茶褐色まで、基本的な塗壁性能に加えて、癒しを演出できる、優しく、柔らかい彩色を可能とする。
【0086】
さらに、肌面においても、オニヒトデ炭粒のアクセントとなる黒い斑点模様や、月桃繊維による柔らかい線による凹凸模様など、癒し空間演出のための新しい試みを実現できる。
【0087】
尚、月桃繊維やオニヒトデ炭粒などは、施工段階で配合しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】本発明による勝連トラバーチンを主材とする塗壁材の製造工程を示すフロー図である。
【図2】本発明による風化造礁珊瑚を主材とする塗壁材の製造工程を示すフロー図である。
【図3】本発明による塗壁材のJIS A6906の建築用仕上げ材の品質試験結果である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機多孔質材による主材と、無機質イオン結合促進剤と、水硬性バインダーとを含有することを特徴とする塗壁材。
【請求項2】
前記の主材として沖縄産トラバーチンが混合されていることを特徴とする請求項1に記載の塗壁材。
【請求項3】
前記の主材として風化造礁珊瑚が混合されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の塗壁材。
【請求項4】
前記の主材として琉球石灰岩(コーラル)が混合されていることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれかの項に記載の塗壁材。
【請求項5】
前記の主材に赤土が混合されていることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれかの項に記載の塗壁材。
【請求項6】
前記の主材に赤瓦粉末が混合されていることを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれかの項に記載の塗壁材。
【請求項7】
前記の主材にオニヒトデ炭化物が混合されていることを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれかの項に記載の塗壁材。
【請求項8】
前記の主材に月桃繊維が混合されていることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの項に記載の塗壁材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−161504(P2007−161504A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−357035(P2005−357035)
【出願日】平成17年12月9日(2005.12.9)
【出願人】(000140568)株式会社沖坤 (3)
【Fターム(参考)】