説明

塗工欠陥検査法と、塗工欠陥検査装置を備えた塗工装置

【課題】磁気塗料をダイコータで塗布する際に、オンラインで塗工欠陥を検出してその位置を特定でき、その分だけ磁気テープを能率よく製造でき、しかも検査コストが少なくて済む磁気テープの塗工欠陥検査法を提供する。
【解決手段】ベースフィルムWの片面に配置されるコータ1と、コータ1に塗材を連続供給する塗材供給装置2と、ベースフィルムWの送給量を検知する送給量検知装置3と、塗工欠陥検査装置4などで塗工装置を構成する。コータ1に設けた一群の超音波発振器11から、スロット8・9を通過する塗材に向かって超音波を発振し、塗材から反射した超音波を一群の超音波センサー12で検知し、超音波センサー12の検知信号と、送給量検知装置3から出力される位置信号とから、ベースフィルムWにおける塗工欠陥の発生位置を判定装置13で特定できるようにする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エクストルージョン型のコータで塗工を行う際に、オンラインで塗工欠陥を検出するための塗工欠陥検査法と、塗工欠陥検査装置とを備えた塗工装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気テープの製造過程では、塗布むら、塗布筋などの塗工欠陥の有無を検査する。この種の検査法としては、基準磁気信号を記録ヘッドで書き込んだのち、書き込み信号を再生ヘッドで読み込み、基準磁気信号と読み込み信号とが一致するか否かで塗工欠陥を判定する手法(特許文献1参照)や、磁気テープ表面での反射光と、磁気テープを透過した透過光とを光センサーで受光して、受光信号の強度から塗工欠陥を判定する手法(特許文献2参照)などが知られている。いずれの場合にも、塗工工程とは別の検査工程で塗工欠陥の有無を検査している。
【0003】
本発明では、コータヘッドのスロットを通過する塗材の流動状態を超音波で検知して、塗工欠陥の有無を判定するが、流動する磁気塗料に含まれる磁性粉の分散度合いをオンラインで検出することが特許文献3に公知である。ただし、特許文献3では、流路の一方側に凹部を設けて磁気塗料の流線が曲率をもつようにし、凹部とこれに対向する流路壁とのそれぞれに圧力計を配置して、両圧力計の圧力差から流動する磁気塗料の圧力差(第1法線応力差)を測定し、その値から磁性粉の分散度合いを評価しているに過ぎず、塗工状態の欠陥を検知できる訳ではない。
【0004】
【特許文献1】特開平10―312509号公報(段落番号0012、図1)
【特許文献2】特開2002−148199号公報(段落番号0037、図1)
【特許文献3】特開平9−310035号公報(段落番号0022、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような従来の塗工欠陥検査法では、塗工工程が終了したのちの検査工程で塗工欠陥の有無を検査する必要があり、その分だけ余分な手間が掛かる。さらに、磁気信号の高密度記録を実現するために、磁性粉がますます微粒子化されるつつあることを考慮すると、極く小さな塗工欠陥を検出するには、より高精度で高額のセンサーを多数用意する必要があり、検査設備に多くのコストを要する点に問題がある。
【0006】
本発明の目的は、磁気塗料をダイコータで塗布する際に、オンラインで塗工欠陥を検出してその位置を特定でき、別途検査工程を設ける必要がない分だけ磁気テープを能率よく製造でき、しかも検査コストが少なくて済む磁気テープの塗工欠陥検査法と、塗工欠陥検査装置を備えた塗工装置とを提供することにある。
【0007】
本発明の目的は、磁性粉の再凝集を積極的に解消して、磁気塗料を安定した状態で均一に塗布でき、ベースフィルム送り方向、あるいはベースフィルム幅方向の塗膜の厚みむらをよく防止できる塗工欠陥検査法と、塗工欠陥検査装置を備えた塗工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の塗工欠陥検査法は、一定速度で送給されるベースフィルムWの片面にエクストルージョン型のコータ1を配置し、加圧された磁気塗料Mをコータ1のスロット8・9から吐出して、ベースフィルムWに磁性層を形成する塗工工程において、コータ1に設けた一群の超音波発振器11から、スロット8・9を通過する下地塗料Uおよび磁気塗料Mに向かって発振した超音波を、コータ1に設けた一群の超音波センサー12で検知する。以て、超音波センサー12の検知信号と、ベースフィルムWの送給量検知装置3から出力される位置信号とから、ベースフィルムWにおける塗工欠陥の発生位置を判定装置13で特定することを特徴とする。
【0009】
超音波発振器11から発振される超音波の経路Rは、スロット8・9を通過する下地塗料Uおよび磁気塗料Mの流線に対して斜めに交差する状態に設定し、磁気塗料Mおよび下地塗料Uから反射した超音波を超音波センサー12で検知することができる。
【0010】
本発明に係る塗工装置は、一定速度で送給されるベースフィルムWの片面に配置されるコータ1と、コータ1に下地塗料Uおよび磁気塗料Mを連続して供給する塗材供給装置2と、ベースフィルムWの送給量を検知する送給量検知装置3と、塗工欠陥検査装置4とを含み、加圧された下地塗料Uおよび磁気塗料Mをコータ1のスロット8・9から吐出して、ベースフィルムWに磁性層を形成する。塗工欠陥検査装置4は、それぞれコータ1に設けられて、スロット8・9を流動する下地塗料Uおよび磁気塗料Mに向かって超音波を発振する一群の超音波発振器11と、流動する下地塗料Uおよび磁気塗料Mによって変調された超音波を検出する一群の超音波センサー12と、超音波センサー12の検知信号、およびベースフィルムWの送給量検知装置3から出力される位置信号から、ベースフィルムWにおける塗工欠陥の発生位置を特定する判定装置13とで構成されている。
【0011】
一群の超音波発振器11と、一群の超音波センサー12とは、コータ1のスロット8・9の一側上下に分離配置する。超音波発振器11から発振される超音波の経路Rを、スロット8・9を通過する下地塗料Uおよび磁気塗料Mの流線に対して斜めに交差するように設定する。以て、下地塗料Uおよび磁気塗料Mから反射される間に変調された超音波を超音波センサー12で検知する。
【0012】
一群の超音波発振器11と、一群の超音波センサー12とは、コータ1のスロット8・9を間にして対向配置し、超音波発振器11から発振される超音波の経路Rを、スロット8・9を通過する下地塗料Uおよび磁気塗料Mの流線に対して斜めに交差するように設定する。以て、下地塗料Uおよび磁気塗料Mを通過する間に変調された超音波を超音波センサー12で検知する。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、ベースフィルムWの片面に配置されるコータ1と、コータ1に塗材を連続供給する塗材供給装置2と、ベースフィルムWの送給量を検知する送給量検知装置3と、塗工欠陥検査装置4と含み、コータ1に設けた一群の超音波発振器11から、スロット8・9を通過する塗材に向かって発振し、塗材の流れによって変調された超音波、例えば塗材から反射された超音波をコータ1に設けた一群の超音波センサー12で検知し、超音波センサー12の検知信号と、送給量検知装置3から出力される位置信号とから、ベースフィルムWにおける塗工欠陥の発生位置を判定装置13で特定できるようにしたので、磁気塗料Mをコータ1で塗布する際に、オンラインで塗工欠陥を検出してその位置を特定できる。したがって、塗工工程とは別に検査工程を設ける場合に比べて、塗工欠陥の検査に要する手間と時間を省いて磁気テープを能率よく製造でき、塗工欠陥の検査に要するコストも少なくて済む。
【0014】
超音波発振器11と超音波センサー12とを検出要素にして、塗材の濃度分布の違いに伴う局所的な塗材の流速変化を検出して塗工欠陥の有無を判定するので、塗工後の磁性層の性状を磁気信号の変動や、光信号の変動などとして塗工欠陥を探す検査法に比べて、オンラインでしかも精密に検出でき、塗工欠陥検査装置4に要するコストが少なくて済む。超音波発振器11から発振された超音波は、塗材中の凝集塊に作用して凝集状態を解消し、塗布直前に再び分散できるので、塗工欠陥の検出を行うことで、磁気塗料Mをより安定した状態で均一に塗布して、ベースフィルムWの送り方向、あるいはベースフィルムWの幅方向の塗膜厚みむらをよく防止できる副次的な効果も発揮できる。
【0015】
超音波発振器11と超音波センサー12を、コータ1の両スロット8・9の一側上下に分離配置し、超音波発振器11から発振される超音波の経路Rを、スロット8・9を通過する磁気塗料Mおよび下地塗料Uの流線に対して斜めに交差させて、磁気塗料Mおよび下地塗料Uから反射された超音波を超音波センサー11で検知する塗工装置によれば、ドップラー効果を利用して、下地塗料Uや磁気塗料Mの流れの影響を受けることに伴う超音波の周波数変化(周波数変調)から塗工欠陥を検出することができる。さらに、超音波の経路Rが、両スロット8・9を通過する塗材の流線に対して斜めに交差するように設定してあると、超音波が両スロット8・9を通過するときのドップラー効果をより顕著なものとして、塗材中に含まれる凝集塊の検出をより的確に行って、塗工欠陥の存在を確実に検出できる。
【0016】
超音波発振器11と超音波センサー12を、コータ1の両スロット8・9を間にして対向配置したうえで、超音波発振器11から発振される超音波の経路Rを、両スロット8・9を通過する塗材の流線に対して斜めに交差させ、磁気塗料Mおよび下地塗料Uを通り抜けた超音波を超音波センサー11で検知できるようにした塗工装置によれば、ドップラー効果によって、下地塗料Uや磁気塗料Mの流れを通過する間に変調された超音波の変化から塗工欠陥を検出することができる。さらに、上記と同様に、超音波が両スロット8・9を通過するときのドップラー効果を顕著なものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
(実施例) 図1ないし図4は本発明に係る塗工装置の実施例を示す。図1および図2において塗工装置は、ベースフィルムWを一定速度で送給する送給装置と、ベースフィルムWの片面に配置されるエクストルージョン型のコータ1と、コータ1に磁気塗料M、および下地塗料Uを連続して供給する塗材供給装置2と、ベースフィルムWの送給量を検知する送給量検知装置3と、塗工欠陥検査装置4とを含む。
【0018】
コータ1は、ベースフィルムWより僅かに広幅に形成された、3個の異形断面状の鋼ブロックを接合して構成してある。コータ1の内部には、断面円形の第1チャンバー6および第2チャンバー7を有し、各チャンバー6・7からコータ上面の塗布面にわたって第1スロット8と第2スロット9とが形成してある。第1スロット8のスロット中心軸線が、垂直線よりベースフィルムWの搬送方向下手側へ傾けてあるのに対し、第2スロット8の中心軸線は、垂直線よりベースフィルムWの搬送方向上手側へ僅かに傾けてある。
【0019】
第1スロット8は、第2スロット9よりベースフィルム送給方向上手側において開口している。第1チャンバー6には、塗材供給装置2から下地塗料Uが送給される。第2チャンバー7には、塗材供給装置2から磁気塗料Mが送給される。したがって、ベースフィルムWには、まず下地塗料Uが塗布され、下地層の外面側に磁気塗料Mが塗布される。
【0020】
塗材供給装置2は、下地塗料Uおよび磁気塗料Mを貯留するタンク21・22や、定量ポンプ23・24などで構成されている。下地塗料Uは、バインダーにカーボンブラックと非磁性の酸化鉄、および溶剤などを配合した分散液からなる。磁気塗料Mは、バインダーに磁性粉、分散剤および溶剤などを配合した磁性体分散液からなる。塗布対象となるベースフィルムWは、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレートなどの二軸延伸フィルムが使用される。
【0021】
送給量検知装置3は、ベースフィルムWの送給が開始された後のベースフィルム送給量を連続して検出しており、その検知信号は後述する判定装置13に出力される。送給量検知装置3からの出力信号によって、ベースフィルムWの送給方向のどの位置で塗工欠陥が生じたかを特定することができる。
【0022】
送給量検知装置3は、ベースフィルムWの搬送経路の任意位置に設けることができるが、この実施例ではベースフィルムWをコータ1に変向案内する上手側のガイドローラーに送給量検知装置3を配設した。
【0023】
塗工欠陥検査装置4は、それぞれ第2スロット9の外側方の上方に配置される超音波発振器11の一群と、超音波発振器群の下方に配置される超音波センサー12の一群と、判定装置13などで構成する。超音波発振器11および超音波センサー12は、それぞれコータ1の幅方向に沿って直線列状に配置される(図4参照)。
【0024】
超音波発振器11は、その中心軸線が図2に示すようにスロット8・9を通過する下地塗料U、および磁気塗料Mの流線に対して斜め下向きに交差する状態で配置する。また、超音波センサー12は、その中心軸線がスロット8・9を通過する下地塗料U、および磁気塗料Mの流線に対して斜め上向きに交差する状態で配置する。これにより、超音波発振器11から発振された超音波を各塗料U・Mの流動面で反射させ、反射された超音波を超音波センサー12で検知できる。図2に超音波発振器11から発振される超音波の経路を符号Rで示し、その下地塗料Uおよび磁気塗料Mの流線に対する交差角度をθ8 ・θ9 で示している。
【0025】
上記のように、超音波の経路Rを各塗料U・Mの流線に対して斜めに交差させると、超音波発振器11から発振された超音波が、各スロット8・9を通過するときのドップラー効果によって、各塗料U・Mから反射されるごとに周波数が増加する。また、各スロット8・9を通過する下地塗料U、または磁気塗料Mに分散むらなどがあると、局部的にスロット内の各塗料U・Mの流速が変化するため、ドップラー効果による周波数の変化度合いが変る。このような周波数変化を超音波センサー12で検出することにより、塗工欠陥の発生を検知することができる。
【0026】
さらに、第2スロット9を通過する磁気塗料Mの磁性粉が凝集している場合の流速の変動度合いと、下地塗料Uの分散むらに伴う流速の変動度合いは異なるので、超音波センサー12に到達する超音波の周波数の変化度合いによって、どちら側のスロット8・9で塗工欠陥が生じているかを特定できることになる。なお、磁気塗料Mと下地塗料Uとは媒質の違いがあるので、各塗料U・Mから反射する超音波の周波数変化は必ずしも同じではない。
【0027】
具体的には、塗工欠陥は以下のようにして特定できる。超音波発振器11と超音波センサー12とが図2および図4に示すように配置され、各スロット8・9内を塗料U・Mが平行に進む場合に、超音波発振器11から周波数f0 の超音波を発振すると、その一部は磁性塗料Mの流動面で反射し、この反射波が超音波センサー12で検知される。さらに、発振された超音波の一部は、磁性塗料Mの流動面を透過したのち下地塗料Uの流動面に達し、その一部が反射されて超音波センサー12に検知される。これらの超音波の現われかたを図3に示している。
【0028】
超音波発振器11で周波数f0 の超音波を発振するとき、下地塗料Uの流動面から反射される反射波の周波数f8 と、磁性塗料Mの流動面から反射される反射波の周波数f9 とは、それぞれ以下の数式で算出することができる。下地塗料Uおよび磁性塗料Mの流速をV8 ・V9 とし、各塗料U・Mの流線と超音波の発振経路との交差角度をθ8 ・θ9 とするとき、
[数1]
8 =f0 /(1−V8 COSθ8 /C)
[数2]
9 =f0 /(1−V9 COSθ9 /C)
となる。数式中の符号Cは音速である。
【0029】
また、図5に示すように各スロット8・9内を、各塗料U・Mが放射状に上向きに拡がる状態で進む場合には、塗料U・Mの拡がりに対して角度補正を行うとよい。合計でN組の超音波発振器11と超音波センサー12が配置してあるときのn番目の補正角度(拡がり度)をαn とすると、下地塗料Uの流動面から反射される反射波の周波数f8 と、磁性塗料Mの流動面から反射される反射波の周波数f9 は、以下の数式で求めることができる。
[数3]
8 =f0 /(1−V8 COSθ8 COSαn /C)
[数4]
9 =f0 /(1−V9 COSθ9 COSαn /C)
ここに、sinαn =sinα0 ×(N/2−n)である。ただし、α0 は最大補正角度、αn はn番目のセンサー対における塗料の流れと、発振方向との為す角度(補正角度)である。
【0030】
いずれの場合にも、図3に示すように、反射してきた超音波の周波数をモニターして、下地塗料Uの流動面から反射される反射波の周波数f8 と、磁性塗料Mの流動面から反射される反射波の周波数f9 とに変化が検出されれば、塗材の濃度分布異常である可能性が高く、そのとき超音波センサー12から出力される信号を判定装置13で判定することにより、異常信号を検知した超音波センサー12と対応する個所に異常のあることが判る。
【0031】
上記のようにして、超音波センサー12からの異常を意味する出力信号と判定装置13とによって、ベースフィルムWの幅方向の特定位置で塗工欠陥が生じるであろうことを知ることができる。さらに、送給量検知装置3からの出力信号によって、ベースフィルムWの送給方向のどの位置で塗工欠陥が生じたかを判定装置13で特定することができる。これら両信号からベースフィルムWの塗工欠陥発生位置を判定装置13で平面座標値として特定できる。
【0032】
なお、塗工欠陥発生位置は、原則としてベースフィルムWをテープ化し、あるいはディスク化する段階で除去するが、場合によっては除去することなく使用できる場合もある。これは、両スロット8・9を通過する下地塗料Uの非磁性粉末や、磁気塗料Mの磁性粉の凝集度合いが一定以下である場合には、超音波を受けた凝集塊が破壊されて塗布直前に再び分散するからである。その場合には、判定装置13で特定された位置に、検査用の磁気信号を記録し、再生することによって塗工欠陥が認められないことを確かめたうえで使用することができる。
【0033】
上記構成の塗工装置を用いたベースフィルムWに磁性層を形成する塗工過程において、以下の検査方法によって塗工欠陥の発生位置を特定することができる。一定速度で送給されるベースフィルムWの片面にエクストルージョン型のコータ1を配置し、加圧された下地塗料Uと磁気塗料Mとを前記コータ1のスロット8・9から吐出して、ベースフィルムWに磁性層を形成する塗工工程において、コータ1に設けた一群の超音波発振器11から、スロット8・9を通過する下地塗料Uと磁気塗料Mとに向かって発振した超音波の反射波を、コータ1に設けた一群の超音波センサー12で検知する。
【0034】
以て、超音波センサー12の異常を意味する検知信号と、ベースフィルムWの送給量検知装置3から出力される位置信号とから、ベースフィルムWにおける塗工欠陥の発生位置を判定装置13で特定する。
【0035】
上記の検査方法において、超音波発振器11から発振される超音波の経路Rを、各スロット8・9を通過する下地塗料Uと磁気塗料Mの流線に対して斜めに交差する状態に設定して、下地塗料Uと磁気塗料Mとから反射された後の超音波を超音波センサー12で検知することにより塗工欠陥を検出すればよい。
【0036】
図6は塗工欠陥検査装置4の別の実施態様を示す。そこでは、第1スロット8を挟む状態で、超音波発振器11の一群と超音波センサー12の一群とを対向配置し、同様に第2スロット9を挟む状態で、超音波発振器11の一群と超音波センサー12の一群とを対向配置した。先の実施例と同様に、超音波発振器11および超音波センサー12は、それぞれコータ1の幅方向に沿って直線列状に配置される。また、超音波発振器11は、その中心軸線が各ロット8・9を通過する下地塗料U、および磁気塗料Mの流線に対して斜め下向きに交差する状態で配置する。他は先の実施例と同じであるので、同じ部材に同じ符号を付してその説明を省略する。
【0037】
上記の実施例では、ドップラー効果を利用して、下地塗料Uや磁気塗料Mの流れの影響を受けることに伴う超音波の周波数変化から塗工欠陥を検出したが、例えば塗料からの反射波の検出時間や反射波の位相差を超音波発振器11と超音波センサー12とで計測して、塗工欠陥を検出することができる。また、上記の実施例では、超音波発振器11の一群と、超音波センサー12の一群とを、第2スロット9の外側方の上下に配置したが、その必要はなく、第1スロット8の外側方の上下に配置することができる。必要があれば、超音波発振器11の一群を下方に、超音波センサー12の一群を上方に配置することができる。
【0038】
必要があれば、超音波センサーを備えた超音波発振器11を用いて、下地塗料Uや磁気塗料Mの流れを2回横切った反射信号から塗工欠陥を検出してもよい。その場合には、超音波センサーが一体的に設けてある超音波発振器11と反射板とを、各スロット8・9を間にして対向配置するとよい。上記の実施例では、コータ1に2個のスロット8・9を設けた場合について説明したが、本発明は、コータ1に磁気塗料Mを塗布するためのスロット9のみが設けてある場合にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】塗工装置の概略構造を示す断面図
【図2】超音波発振器と超音波センサーとの配置構造の詳細を示す断面図
【図3】ドップラー効果による超音波の周波数変化を示す図表
【図4】超音波発振器と超音波センサーとの配置構造を示す縦断面図
【図5】スロットの内部構造が異なるコータの断面図
【図6】塗工欠陥検査装置の別の実施態様を示すコータ要部の断面図
【符号の説明】
【0040】
1 コータ
2 塗材供給旧装置
3 送給量検知装置
4 塗工欠陥検査装置
8 第1スロット
9 第2スロット
11 超音波発振器
12 超音波センサー
13 判定装置
W ベースフィルム
U 下地塗料
M 磁気塗料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定速度で送給されるベースフィルムの片面にエクストルージョン型のコータを配置し、加圧された磁気塗料を前記コータのスロットから吐出して、前記ベースフィルムに磁性層を形成する塗工工程において、
前記コータに設けた一群の超音波発振器から、前記スロットを通過する磁気塗料に向かって発振した超音波を、前記コータに設けた一群の超音波センサーで検知して、
前記超音波センサーの検知信号と、前記ベースフィルムの送給量検知装置から出力される位置信号とから、前記ベースフィルムにおける塗工欠陥の発生位置を判定装置で特定することを特徴とする塗工欠陥検査法。
【請求項2】
前記超音波発振器から発振される前記超音波の経路が、前記スロットを通過する前記磁気塗料の流線に対して斜めに交差する状態に設定されており、
前記磁気塗料から反射した超音波を前記超音波センサーで検知する請求項1記載の塗工欠陥検査法。
【請求項3】
一定速度で送給されるベースフィルムの片面に配置されるコータと、前記コータに磁気塗料を連続して供給する塗材供給装置と、前記ベースフィルムの送給量を検知する送給量検知装置と、塗工欠陥検査装置とを含み、前記加圧された前記磁気塗料を前記コータのスロットから吐出して、前記ベースフィルムに前記磁性層を形成する塗工装置であって、
前記塗工欠陥検査装置が、それぞれ前記コータに設けられて、前記スロットを流動する前記磁気塗料に向かって超音波を発振する一群の超音波発振器と、流動する前記磁気塗料によって変調された前記超音波を検出する一群の超音波センサーと、前記超音波センサーの検知信号および前記ベースフィルムの前記送給量検知装置から出力される位置信号から、前記ベースフィルムにおける塗工欠陥の発生位置を特定する判定装置とで構成してある、塗工欠陥検査装置を備えた塗工装置。
【請求項4】
一群の前記超音波発振器と、一群の前記超音波センサーとが、前記コータの前記スロットの一側上下に分離配置されており、
前記超音波発振器から発振される前記超音波の経路が、前記スロットを通過する前記磁気塗料の流線に対して斜めに交差するように設定されており、
前記磁気塗料から反射される間に変調された超音波を前記超音波センサーで検知する請求項3記載の塗工装置。
【請求項5】
一群の前記超音波発振器と、一群の前記超音波センサーとが、前記コータの前記スロットを間にして対向配置されており、
前記超音波発振器から発振される前記超音波の経路が、前記スロットを通過する前記磁気塗料の流線に対して斜めに交差するように設定されており、
前記磁気塗料を通過する間に変調された超音波を前記超音波センサーで検知する請求項3記載の塗工欠陥検査装置を備えた塗工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−205843(P2007−205843A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−24427(P2006−24427)
【出願日】平成18年2月1日(2006.2.1)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】