説明

塗工白板紙の製造方法

【課題】本発明の目的は、塗工白板紙の製造において、ブレード塗工の際に、ストリークやスクラッチといった塗工欠陥を生じずに、高い面感、光沢、平滑性、ならびにグラビア適性を持った塗工白板紙の製造方法を提供することである。
【解決手段】ウェブ3上に塗工液を塗工するブレードコーターに用いられる塗工用ブレード1として、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部2と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有する塗工用ブレードを用い、中空構造を有するプラスチックピグメントを5質量%以上含有する塗工液を塗工することを特徴とする塗工白板紙の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、美術本、絵本、カード、化粧品、医薬品などの厚手印刷物および印刷箱などに使用される塗工白板紙の製造方法に関し、塗工操業時のストリーク、スクラッチなどの欠点が発生せず、面感、光沢、平滑性、ならびに印刷適性などが優れる塗工白板紙の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
塗工白板紙は、一般的に表層、中層、裏層の少なくとも3層以上の層構成からなる抄き合わせ原紙の両面に、少なくとも一層以上からなる塗工層を設けることよりなる。
【0003】
塗工白板紙は印刷用として、外観の美しさを得るために、高い面感、光沢、平滑性、ならびにグラビア印刷適性などが求められる。
【0004】
一般にグラビア印刷適性として、塗工層表面には高い平滑性が求められる。そのため、塗工白板紙の塗工層の処方には、塗工液に用いる顔料の大部分を扁平で配向性が高いカオリンとするなど、特別な処方が取られている。なかでも超微粒子カオリンやプラスチックピグメント、および特異なガラス転移点を持つラテックスを使用した配合に関する各種提案がなされている。
【0005】
また、塗工白板紙の塗工装置としては、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーターなど、通常の塗工装置が用いられている。
【0006】
塗工白板紙の塗工は片面15g/m2以上と比較的塗工量が多く、また極めて塗工速度が遅い範疇のものであり、一般的にその塗工液は塗工層に高い平滑性を持たすために高い塗工液濃度をもって塗工される。
【0007】
上記塗工装置による上記塗工液を塗工する際の問題点として、まず、エアナイフコーターでは、風圧で掻き落とすためにエアナイフ特有のパターンが表面に発生し、このため塗工層の平滑性が失われる。従って、高い平滑度が求められる塗工白板紙の製造には適さない。
【0008】
また、ロールコーターは、ロールを組み合わせてロール間で塗工液を転写するコーターであり、筋状のロール特有のパターンを発生し易く、ロール面との剥離の際に塗工層の平滑性が低下するだけでなく、印刷時にも重大な障害となる。この傾向は、塗工液濃度が高くなると顕著となる。したがって、これも高い平滑度が求められる塗工白板紙の製造には適さない。
【0009】
結局のところ、塗工白板紙の塗工としては、面感、光沢、平滑性、グラビア印刷適性と言った品質を考えた場合、一般に比較的塗工量が多い分野の塗工に適し、平滑性を持った塗工面を形成することが可能なブレードコーターが最も好ましい。
【0010】
しかしながら、ブレードコーターで塗工を行う際には、ブレード下にて顔料に高いシェアがかかり、細かい凝集を生じることで、ストリークやスクラッチと言った塗工欠点を生じる問題を抱えている。
【0011】
特に、この傾向は、極端に粒子径分布が均一である顔料(例えば、プラスチック顔料)や扁平な形状を持つ顔料(例えば、デラミネーションクレー)や針状の形状を持つ顔料(例えば、アラゴナイト系軽質炭酸カルシウム)を配合した場合に著しく、塗工液濃度が高くなるに従って一層顕著なものとなる。よって、塗工白板紙の塗工液では頻繁に発生する問題となっている。
【0012】
ブレード塗工の欠点を改善する方法として、幾つかの提案がなされている。例えば、塗工液の保水性に着目して、塗工液がアプリケートされてからブレードにより掻き落とされ、レベリングされるまでの時間に塗液中の水分が吸収され、塗工液濃度が高くなることによる高粘度化を防止する方法がある(例えば、特許文献1参照)。また、ブレード塗工を実施する前に表面を硬質粗面化ロールで表面処理する方法、あるいは鋭角を有しない球冠状およびまたは球帯状からなる型をロール周面に有する型付けロールと対向ロールとから形成されるニップ間に通して粗面化処理する方法(例えば、特許文献2、3参照)。さらに、下塗り層の顔料に少なくとも10重量%の澱粉粒子を含有させる(例えば、特許文献4参照)など、数多くの方法が提案されている。
【0013】
しかしながら、塗工白板紙のブレード塗工において、未だに十分満足できる方法が見出されておらず、結局のところ、塗工白板紙におけるブレード塗工では、これら塗工欠点を減じるために、塗工液濃度を下げる処置が取られているのが実状であり、目的とする高い面感、光沢、ならびにグラビア印刷適性を多少とも犠牲にしている結果となっている。
【0014】
また、塗工白板紙のブレード塗工において、塗工液濃度を減じた状態でも、目的とする高い面感、光沢、ならびにグラビア印刷適性を得るために、これら特性の向上効果が大きい中空構造を有するプラスチックピグメントを用いる方法が考えられるが、この場合、充分な塗工量を塗工することが非常に困難であり、解決に至っていない。
【特許文献1】特開平3−59195号公報
【特許文献2】特開平5−51898号公報
【特許文献3】特開平5−106200号公報
【特許文献4】特開平5−59692号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、塗工白板紙の製造において、ブレード塗工の際に、ストリークやスクラッチといった塗工欠陥を生じずに、高い面感、光沢、平滑性、ならびにグラビア印刷適性を有する塗工白板紙の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者が前述の問題点を解決するために鋭意検討した結果、顕著に効果が確認された塗工白板紙を提供する手法を見出し、遂に本発明を完成するに至った。
【0017】
即ち、本発明の塗工白板紙の製造方法は、ウェブ上に塗工液を塗工するブレードコーターに用いられる塗工用ブレードとして、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有するブレードを用い、中空構造を有するプラスチックピグメントを5質量%以上含有する塗工液を塗工することを特徴とする塗工白板紙の製造方法により、塗工液をブレードにて塗工する際のブレード下におけるシェアを軽減して塗工欠陥の発生を減少させるとともに、塗工白板紙として充分な、面感、光沢、ならびにグラビア印刷適性を有するだけの、塗工量を塗工するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、塗工操業時のストリーク、スクラッチなどの欠点が発生せず、面感、光沢、ならびに印刷適性などが優れる塗工白板紙の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の塗工白板紙について、詳細に説明する。
本発明に係る中空構造を有するプラスチックピグメント(以下、中空PPと略記する)は、熱可塑性または熱硬化性のいずれであってもよい。熱可塑性プラスチックピグメントとしては、スチレン系(ポリスチレン、スチレン/ブタジエン共重合体等)、アクリル系〔アルキル(メタ)アクリレート系(共)重合体、アクリル/スチレン共重合体〕等のものが挙げられる。熱硬化性プラスチックピグメントとしては、エポキシ樹脂系(エポキシ樹脂とアミンの硬化物)等のものが挙げられる。
【0020】
前記中空PPは、粒子径が100〜1000nmのものが好ましいが、なんら制限されるものではない。一般に、プラスチックピグメントとして密実状、コアシェル状またはお椀状等の構造を有するものが挙げられるが、いずれも塗工白板紙の製造において、塗工層中に5質量%以上用いたとしても、塗工白板紙として充分な、面感、光沢ならびにグラビア印刷適性を得ることができず、充分とは言えない。
【0021】
本発明に係る塗工層中に用いられる中空PP以外の顔料としては特に制限はなく、各種クレー、カオリン、炭酸カルシウム、サチンホワイト、酸化チタン、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、硫酸カルシウム、タルク等の紙と効用塗料に使用されるの顔料を併用しても良い。
【0022】
本発明の塗工白板紙の製造において、塗工層中に用いられる中空PPの含有量は5質量%以上であり、好ましくは7〜20質量%である。塗工層中に用いられる中空PPの含有量を5質量%以上とした場合、塗工白板紙のブレード塗工に際して、ブレード下で顔料にかかるシェアは、中空PPの粒子形状とその添加により塗工液濃度が低下したことにより軽減され、ストリークならびにスクラッチは減少する。また、塗工白板紙の塗工層表面に占有する中空PPの表面積が一定比率を越えて大きくなるため、面感、光沢、ならびにグラビア印刷適性が向上する。なお、塗工白板紙の塗工層表面に占有する中空PPの表面積の比率は、中空PP以外の顔料の種類と質量%、ならびにカレンダー処理条件によって決定される。
【0023】
本発明における塗工層中に用いられるバインダーには、一般的に塗工白板紙を製造する上で用いられるものは全て配合して構わない。バインダーとしては、通常の澱粉、酸化澱粉、エーテル化澱粉、エステル化澱粉、酵素変性澱粉やそれらをフレッシュドライして得られる冷水可溶性澱粉などの澱粉類、スチレン/ブタジエン系、酢酸ビニル系などの各種共重合ラテックス、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ユリアまたはメラミン/ホルマリン樹脂、ポリエチレンイミン、ポリアミドポリアミン/エピクロルヒドリンなどの水溶性合成物、ワックス、カゼイン、大豆蛋白などの天然物およびこれらをカチオン化したものなどが挙げられる。添加部数については特に制限するものではない。
【0024】
本発明において塗工層中に、必要に応じて、消泡剤、耐水化剤、着色剤などの通常塗工白板紙を作製する上で使用されている各種助剤、およびこれらの各種助剤をカチオン化したものが好適に用いられる。
【0025】
本発明に係る塗工層の層構造は特に単層に限定されるものではなく、必要に応じて二層以上の塗工層であってもよい。
【0026】
本発明に係る塗工白板紙に用いられる原紙としては、LBKP、NBKPなどの化学パルプ、GP、PGWRMP、TMP、CTMP、CGPなどの機械パルプ、および故紙パルプなどの各種パルプを含み、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー、カオリンなどの各種填料、サイズ剤、定着剤、歩留り剤、紙力増強剤などの各種配合剤を好適に配合し、酸性、中性、アルカリ性のいずれかでも抄造できる。
【0027】
本発明において用いられる原紙としては、ノーサイズプレス原紙、あるいは澱粉、ポリビニルアルコールなどでサイズプレスされた原紙などを用いることができる。また、必要とする原紙の密度、平滑度を得る為に各種カレンダー処理を施す場合もある。一連の操業で、塗工、乾燥された印刷用塗工紙は、必要に応じて各種カレンダー処理が施される。
【0028】
本発明において、印刷用塗工紙を製造する際の塗工方式は、ブレード方式によって塗工される。
【0029】
本発明において用いられる塗工用ブレードは、図1に示すように、ウェブ3と接して塗工液6を掻き取る先端部2と、この先端部2をウェブ3に付勢する、先端部2とは異なる素材のブレード母材1とから構成されており、ブレード母材1はスチールその他の形状安定材料からなり、このブレード母材1には、ウェブ3に接触させて過剰の塗工液を掻き取ることを意図した、ブレード母材1とは異なる素材で構成される先端部2を備えている。この先端部2を備えたブレード母材1の先端部2とは反対部分をブレード保持部材であるクランプ7に設置し、このクランプ7をバッキングロール4の方向に向かって移動することによりブレード母材1がたわみ、その反力としてウェブ3に係接触した先端部2に押しつけ圧が発生して塗工液6を掻き落とし、塗工量の計量を行う。尚、5はファウンテン・アプリケーターであり、塗工液6をウェブ3に付着させる。
【0030】
本発明によれば、先端部2を比較的低い硬度の材料、すなわち、50〜100のショアA硬度を有する材料で構成される塗工用ブレードを使用したときに、かなりの利点が得られることがわかった。尚、本発明でいうショアA硬度とは、JIS K6263に準拠するデュロメータタイプAによる硬度である。
【0031】
本発明による塗工用ブレードは図2に示すように移動するウェブ3に接触している先端部2はその弾性と先端角度8によって変形し、或る程度まで、ウェブ3表面の凹凸に順応し、接触部分の圧力分布が均一になる。その結果、塗工層が、硬度の高い金属やセラミックのブレードに比べ均等にウェブ3の凹凸を覆うという望ましい効果を与える。特に、先端角度8が3〜40°であれば、より均一な原紙被覆性、ストリークやスクラッチ等の塗工欠陥の防止性に優れた効果が得られる。
【0032】
本発明による塗工用ブレードの先端部2は、有機重合体によって構成することができる。有効な重合体の例としては、ポリウレタン類、スチレンブ−タジエン重合体類(すなわち、ラバータイプの重合体類)およびポリオレフィン類がある。
【0033】
特に好ましいタイプの重合体はポリウレタン類である。ポリウレタンの先端部2の材料は、普通の方法で、ポリオール類およびジイソシアネート類によって構成される。ポリウレタン系用の普通のジイソシアネートは、トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートおよびナフタレンジイソシアネートである。また、普及度の低いジイソシアネート類も利用できるが、たとえば、ヘキサメチレンジイソシアネートおよびイソフォロンジイソシアネートがある。ポリウレタン類としては、たとえばエステルウレタン類、エーテルウレタン類およびヒドロキシル末端付きポリブタジエンに基づいたウレタン類が利用できる。
本発明において使用されるいかなるタイプのポリウレタンも、硬度が上記範囲内にある限り、実用上の結果に対して必須ではない。
【0034】
本発明による塗工用ブレードで使用されるブレード母材1は、好ましくは0.2〜2mmの範囲内にある厚さを有する。設置した先端部2は、好ましくは0.1〜5mmの範囲内にある厚さを有する。また、ブレードの平面でその長手方向に対して直角に見た先端部2の幅は、適切には5〜25mmであるが、この寸法は特に必須ではない。
【0035】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。実施例配合中の部および%はそれぞれ質量部および質量%を示し、固形分で表したものである。
【実施例1】
【0036】
<原紙配合>
表層
LBKP(濾水度410mlcsf) 80部
NBKP(濾水度450mlcsf) 20部
中層
LBKP(濾水度410mlcsf) 40部
CGP(濾水度400mlcsf) 60部
裏層
LBKP(濾水度410mlcsf) 100部
【0037】
<内添薬品>
表層
炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *20部
硫酸バンド定着剤 0.4部
カチオン系ポリアクリルアミド歩留まり向上剤 0.05部
中層
硫酸バンド定着剤 0.4部
裏層
炭酸カルシウム(*原紙中灰分で表示) *20部
硫酸バンド定着剤 1.0部
パルプ、内添薬品を上記の配合で調整し、坪量200g/m2の原紙を抄造した。
【0038】
<塗工液の配合>
微粒カオリンクレー 43部
一級カオリンクレー 50部
中空構造を有するプラスチックピグメント(中空PP) 7部
ポリアクリル酸系分散剤 0.1部
ラテックスバインダー(スチレン/ブタジエン系) 15部
燐酸エステル澱粉 2部
水酸化ナトリウム pH9.6に調製
【0039】
中空PPとしては、日本ゼオン株式会社製ローペイクHP91を使用した。
【0040】
<塗工用ブレードの仕様>
ブレード母材の素材 スチール
ブレード母材の幅 81mm
ブレード母材の厚さ 0.4mm
先端部の素材 ポリウレタン
先端部の厚さ 0.2mm
先端部の幅 15mm
先端部の先端角度 10°
先端部の硬度(ショアA硬度) 75
【0041】
上記により得られた原紙に対して、塗工液を上記の配合により調製し、ファウンテンアプリケーション/ベントブレード方式塗工機を用いて、ブレードアングル、ローディングアングルおよび塗工装置のステッピングパルスの条件を調節し、塗工速度200m/分で塗工液を目標片面15g/m2塗工することとして、塗工を行った後に、乾燥して塗工紙を得た。なお、片面塗工量が15g/m2に満たなかった際には、塗工液による原紙被覆が不十分で原紙が露出した部分がみられる塗工ムラの発生がまったく見られないか、ストリークおよびスクラッチの発生が1000mあたりに3本未満で、塗工可能である最大片面塗工量となる条件にて、塗工を行った後に乾燥して塗工紙を得た。
【0042】
得られた塗工紙に対し、オフラインでスーパーカレンダー装置(段数:10段、剛性ロール:外径400mmのチルドロール、弾性ロール:外径400mmのコットンロール、線圧:220kN/m)を用いてカレンダリング処理を施し、実施例1の塗工紙を製造した。
【実施例2】
【0043】
実施例1において、塗工液に用いた微粒カオリンクレーを45部、中空PPを5部に代えた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【実施例3】
【0044】
実施例1において、塗工液に用いた微粒カオリンクレーを30部、中空PPを20部に代えた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【実施例4】
【0045】
実施例1において、塗工液に用いた微粒カオリンクレーを用いずに、一級カオリンクレーを30部、中空PPを70部用いた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【実施例5】
【0046】
実施例1において、塗工を行う際に用いる塗工用ブレードの先端部のショアA硬度を50とした以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【実施例6】
【0047】
実施例1において、塗工を行う際に用いる塗工用ブレードの先端部のショアA硬度を100とした以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【0048】
(比較例1)
実施例1において、塗工液に用いた微粒カオリンクレーを50部、一級カオリンクレーを50部に代え、中空PPを用いなかった以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【0049】
(比較例2)
実施例1において、塗工液に用いた中空PPの代わりに日本ゼオン株式会社製密実型有機顔料V1004を同量用いた以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【0050】
(比較例3)
実施例1において、塗工を行う際に用いる塗工用ブレードの先端部のショアA硬度を40とした以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【0051】
(比較例4)
実施例1において、塗工を行う際に用いる塗工用ブレードの先端部のショアA硬度を110とした以外は実施例1と同様にして塗工白板紙を得た。
【0052】
各実施例、比較例における塗工液および製造例を用いて製造した塗工白板紙の物性評価は以下の方法で行い、各実施例および比較例の評価結果を表1に示す。
【0053】
<評価方法>
1)塗工量
原紙上に塗工された塗工層の1m2あたりの塗工量は、横河電機株式会社製BM計にて測定した。
【0054】
2)面感
原紙被覆性ならびに印刷ムラによってあわせて評価した。
【0055】
2)−1.原紙被覆性
燃焼テストによって評価した。塗工紙を約10%塩化アンモニウム溶液で湿らせ、炉内で塗工紙を300〜400℃まで加熱したときに、この化学薬品によってセルロース繊維が黒くなる。それ故、黒い基体とは対照的に白い塗工層が現れ、この均一性を官能評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):白い塗工層がほぼ完全に均一
○(良好) :黒い繊維部分が若干認められるが全体的に均一
△(普通) :黒い繊維部分が全面積の約1/3を占め、部分的に不均一
×(不良) :黒い繊維部分が全面積の半分以上を占め全面不均一
【0056】
2)−2.印刷ムラ
RI印刷適性試験機を用い、紅色(インキ量0.3cc)のベタ印刷を施した後、印刷ムラを目視観察した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):印刷ムラが全く観察されない。
○(良好) :印刷ムラがごく僅かに観察されるが、製品として良好。
△(普通) :印刷ムラが観察されるが製品として可のレベル。
×(不良) :印刷ムラが観察され、製品として使用不可。
【0057】
3)光沢
白紙光沢ならびに印刷光沢によってあわせて評価した。
【0058】
3)−1.白紙光沢
グロスメーターにて、光沢を75°−75°反射率で評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):印刷光沢が75%以上
○(良好) :印刷光沢が70%以上で75%未満
△(普通) :印刷光沢が65%以上で70%未満
×(不良) :印刷光沢が65%未満
【0059】
3)−2.印刷光沢
RI印刷適性試験機を用い、藍色、紅色、黄色(インキ量各0.2cc)の重色ベタ印刷を施した後、グロスメーターにて、光沢を60°−60°反射率で評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):印刷光沢が70%以上
○(良好) :印刷光沢が65%以上で70%未満
△(普通) :印刷光沢が55%以上で65%未満
×(不良) :印刷光沢が55%未満
【0060】
4)平滑性
カレンダー処理を施した塗工白板紙の塗工層表面をエアリーク式紙平滑度試験器パーカープリントサーフでH10kgf/cm2の条件のもと評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):パーカープリントサーフ平滑度が1.50未満
○(良好) :パーカープリントサーフ平滑度が1.50以上で1.85未満
△(普通) :パーカープリントサーフ平滑度が1.85以上で2.20未満
×(不良) :パーカープリントサーフ平滑度が2.20以上
【0061】
5)塗工欠陥
操業中、10000mあたりに発生したストリークおよびスクラッチの本数で評価した。評価基準を以下に示す。ただし、本発明においては、○以上を発明の対象とした。
◎(非常に良好):1本未満
○(良好) :1本以上、3本未満
△(普通) :3本以上、10本未満
×(不良) :10本以上
【0062】
【表1】

【0063】
評価:
実施例1〜4および比較例1、2の結果から、塗工白板紙の製造において、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有する塗工用ブレードを用い、かつ塗工層中に中空PPを5質量%以上含有させることで、塗工層中に中空PPを含有させなかったものに比較して、塗工液をブレードコーターにて塗工する際の塗工用ブレード下におけるシェアを軽減して塗工欠陥の発生を減少させる効果、および面感、光沢、平滑性、ならびに印刷適性を向上させる効果に優れることがわかる。
【0064】
実施例1、5、6および比較例3、4の結果から、中空構造を有するプラスチックピグメントを5質量%以上含有する塗工液を塗工することを特徴とする塗工白板紙の製造方法において、塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有することを特徴とする塗工用ブレードを用いて塗工することで、塗工液をブレードにて塗工する際のブレード下におけるシェアを軽減して塗工欠陥の発生を減少させる効果、および面感、光沢、平滑性、並びに印刷適性を向上させる効果に優れることがわかる。また、ショアAが50未満(比較例3)では、塗工液をブレードにて塗工する際のブレード下におけるシェアを軽減して塗工欠陥の発生を減少させる効果、および面感、平滑性、ならびに印刷適性を向上させる効果が不十分であることがわかる。また。ショアAが100より大きい(比較例4)と、塗工白板紙として充分な塗工量を確保することができないこと、塗工液をブレードにて塗工する際のブレード下におけるシェアを軽減して塗工欠陥の発生を減少させる効果、および面感、平滑性、ならびに印刷適性を向上させる効果が不十分であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】塗工用ブレードがブレードコーターに設置され塗工している状態を示す断面図。
【図2】塗工用ブレードに設けられた先端角度を示す断面図。
【符号の説明】
【0066】
1 ブレード母材
2 先端部
3 ウェブ
4 バッキングロール
5 ファウンテン・アプリケーター
6 塗工液
7 クランプ
8 先端角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェブ上に塗工液を塗工するブレードコーターに用いられる塗工用ブレードが、ウェブと接して塗工液を掻き取る先端部と、該先端部をウェブに付勢する、先端部とは異なる素材のブレード母材とから構成されており、該先端部がショアAで50〜100の硬度を有するブレードを用い、中空構造を有するプラスチックピグメントを5質量%以上含有する塗工液を塗工することを特徴とする塗工白板紙の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−257584(P2006−257584A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−77043(P2005−77043)
【出願日】平成17年3月17日(2005.3.17)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】