説明

塗布システム

【課題】塗布装置の塗布操作が周辺装置からの悪影響を受けて塗布液の厚さの均一性が悪化することを回避できる塗布システムを提供する。
【解決手段】本発明の塗布システムは、基板の表面に塗布液を塗布する塗布操作を実行する塗布装置2と、塗布装置2の周辺に設置され、塗布装置2が実行する塗布操作に悪影響を与える振動を発する動作A、Cを行う上流側移送ロボット3とを備え、塗布装置2による塗布操作の実行中に上流側移送ロボット3による動作A及びCの実行を禁止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に塗布液を塗布する塗布装置及びその周辺装置を運用する塗布システムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイに用いられるカラーフィルタの製造工程等では、ガラス基板にレジスト膜を形成するためダイコーターと称される塗布装置によって基板の表面にレジスト液が塗布される(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−216279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうした塗布装置は、塗布液を吐出する塗布ヘッドと基板との間隔を一定に保ちながら塗布ヘッド又は基板を移動させて塗布液を均一な厚さに塗布する。塗布ヘッドの移動速度や基板との間隔が僅かでも乱れれば塗布液の厚さの均一性が悪化する。塗布装置は製造ライン内に設置されることが一般的であり、その周辺には各種の周辺装置が設置される。周辺装置の中には振動を発する動作を行うものもあるが、こうした周辺装置が発する振動の他装置への悪影響を低減する防振対策等は各種存在する。しかし、完璧な防振対策には限界があるので、塗布装置の塗布操作に悪影響を及ぼす振動を発する周辺装置が存在する場合、塗布操作中に悪影響を受けて塗布ヘッドの移動速度や基板との間隔に乱れが生じ塗布液の厚さの均一性が悪化するおそれがある。
【0005】
そこで、本発明は、塗布装置の塗布操作が周辺装置からの悪影響を受けて塗布液の厚さの均一性が悪化することを回避できる塗布システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の塗布システムは、基板(S)の表面(f)に塗布液を塗布する塗布操作を実行する塗布装置(2)と、前記塗布装置の周辺に設置され、前記塗布装置が実行する前記塗布操作に悪影響を与える振動を発する所定動作を行う周辺装置(3)と、前記塗布装置による前記塗布操作の実行中に、前記周辺装置による前記所定動作の実行を禁止させる動作禁止手段(5)と、を備えるものである(請求項1)。
【0007】
この塗布システムによれば、塗布装置による塗布操作の実行中に、塗布操作に悪影響を与える動作の実行が禁止されるので、塗布操作が周辺装置からの悪影響を受けて塗布液の厚さの均一性が悪化することを回避できる。
【0008】
本発明の塗布システムの一態様において、前記動作禁止手段は、前記塗布操作が実行中か否かを判別可能な情報(Sg2)を出力する情報出力手段(21)と、前記塗布操作の実行中に前記所定動作が禁止されるように、前記情報出力手段が出力する前記情報に基づいて前記周辺装置を制御する禁止制御手段(22)と、を有してもよい(請求項2)。この態様によれば、塗布操作が実行中か否かを判別可能な情報に基づいて周辺装置を制御するので、塗布操作に悪影響を与える周辺装置の動作を塗布操作の実行中に確実に禁止することができる。
【0009】
上記態様において、前記情報出力手段は、前記塗布操作の実行中に前記情報として禁止信号(Sg2)を出力し、前記禁止制御手段は、前記禁止信号が出力されている間に前記所定動作が禁止されるように前記周辺装置を制御してもよい(請求項3)。この場合は、禁止信号の出力と塗布操作の実行とが同期するので、禁止信号の出力の有無のみで所定動作の禁止を行なえば足りる。これにより制御内容が簡素化される。
【0010】
また、前記所定動作は、動作開始から動作終了までの動作期間の途中で停止できない動作であり、前記情報出力手段は、前記塗布操作の実行中に前記情報として禁止信号(Sg2)を出力し、前記禁止制御手段は、前記塗布操作の開始時期よりも前記動作期間以上先行する時期に開始し前記禁止信号の出力停止に合わせて終了する禁止制御モードを設定し、前記禁止制御モードが設定されている間に前記所定動作の開始を禁止してもよい(請求項4)。周辺装置が行う所定動作が動作期間の途中で中断できない動作の場合、塗布操作の実行前に所定動作が開始しても、その終了前に塗布操作が開始する可能性がある。そこで、塗布操作の開始時期よりも動作期間以上先行する時期に開始し禁止信号の出力停止に合わせて終了する禁止制御モードを設定し、その禁止制御モードが設定されている間に所定動作の開始を禁止することにより、所定動作の終了前に塗布操作が開始する事態を確実に回避できる。
【0011】
なお、本発明の理解を容易にするために添付図面の参照符号を括弧書きにて付記したが、それにより本発明が図示の形態に限定されるものではない。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明の塗布システムによれば、塗布装置による塗布操作の実行中に、塗布操作に悪影響を与える動作の実行が禁止されるので、塗布操作が周辺装置からの悪影響を受けて塗布液の厚さの均一性が悪化することを回避できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】塗布システムの全体構成を示した図。
【図2】塗布システムの制御系を示したブロック図。
【図3】塗布システムが実行するタクトの一例を示したタイミングチャート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
図1に示すように、塗布システム1は、基板Sを矢印方向に搬送する搬送経路を持つ生産ラインに適用される。塗布システム1は、ガラス製の基板Sの表面fに塗布液であるレジスト液を塗布する塗布操作を実行する塗布装置2と、塗布装置2の周辺に設置され、搬送上流側に設置された空冷セクションSCで処理された基板Sを塗布装置2に移送する上流側移送ロボット3と、塗布装置2にてレジスト液が塗布された基板Sを搬送下流側の不図示の下流セクションに移送する下流側移送ロボット4と、これらの各装置を制御する制御ユニット5とを含む。
【0015】
塗布装置2は、基板Sを水平に保持するステージ10と、基板Sの表面fにレジスト液を塗布する塗布ヘッド11とを含む。塗布装置2による塗布操作は、塗布ヘッド11が所定の流量でレジスト液を吐出しながら基板Sとの間隔を一定に保ちつつ一方向(図の上方向)に所定速度で移動することによって実行される。塗布ヘッド11の移動は不図示の駆動装置にて行なわれ、その駆動装置の制御は制御ユニット5にて行なわれる。なお、塗布ヘッド11の構造は移動方向と直交する方向に延びるスリットを有する周知の構造と同じであるので説明を省略する。各移送ロボット3、4はガラス基板搬送用ロボットとして市販されているものと同じである。制御ユニット5は、マイクロプロセッサ及びその動作に必要なROM、RAM等の記憶装置やハードディスク等の外部記憶装置を含んだコンピュータとして構成されている。
【0016】
上流側移送ロボット3は、基板Sを上流側から下流側へ移送が完了するまでの間に複数態様の動作A〜Dが順番に実行される。動作Aはロボットの基板Sを把持する不図示のハンド部を上流側に振り向けつつ昇降させる動作である。動作Bは振り向けられたハンド部にて基板Sを把持して空冷セクションSCから取り出す動作である。動作Cは基板Sをハンド部にて把持しながらハンド部を下流側に振り向けつつ昇降させる動作である。動作Dは基板Sを把持したハンド部を塗布装置2の所定位置に移動させて収納する動作である。各動作A〜Dはその開始から終了までの動作期間の途中で中断できない動作である。なお、下流側移送ロボット4も上流側移送ロボット3と同様に複数態様の動作を順番に実行する。上流側移送ロボット3が行う動作A〜Dはいずれも振動を発する動作であるが、これら動作A〜Dのうち、動作A及び動作Cが塗布装置2による塗布操作に悪影響を与える振動を発するものであることが判明した。即ち、動作A及びCが塗布操作中に行なわれた場合に、塗布装置2の塗布操作が乱れて基板Sに塗布されたレジスト液の厚さ分布が許容限度を超えて不均一になることが明らかとなった。そこで、制御ユニット5は上述した各装置2〜4の基本的な動作制御の他に、塗布装置2の塗布操作の実行中に上流側移送ロボット3の動作A及び動作Cの実行を禁止する以下の動作禁止制御を実行する。
【0017】
制御ユニット5には動作禁止制御を実行するためのプログラムが記憶されている。制御ユニット5はこのプログラムを実行することにより、図2に示す各機能部21〜24がその内部に論理的に構成される。
【0018】
禁止信号出力部21は塗布装置2が塗布操作の開始とともに出力する実行信号Sg1を受信すると禁止信号Sg2を出力する。禁止制御部22は禁止制御モード設定部23と禁止制御実行部24とを備えている。禁止信号Sg2は禁止制御部22の各部23、24に送られる。
【0019】
禁止制御モード設定部23は、上流側移送ロボット3から出力される動作信号Sg3を参照して各動作A〜Dの開始及び終了を特定する。禁止制御モード設定部23は上流側移送ロボット3の動作Dの終了を特定した場合、その特定時から所定期間後に禁止制御モードを設定する。この所定期間は動作Aの動作期間と塗布装置2の塗布操作とが重ならないように設定される。これにより、禁止制御モードは塗布操作の開始時期よりも動作Aの動作期間以上先行する時期に開始される。禁止制御モード設定部23は禁止制御モードを設定する際にモード設定信号Sg4を出力し、そのモード設定信号Sg4は禁止制御モードの設定が解除されるまで出力される。禁止制御モードの解除は、禁止信号出力部21による禁止信号Sg2の出力停止に同期して行なわれる。
【0020】
禁止制御実行部24は、禁止信号Sg2又はモード設定信号Sg4を受信している間、上流側移送ロボット3の動作A及び動作Cが開始されないように、上流側移送ロボット3を制御する。
【0021】
次に、制御ユニット5が実行する動作禁止制御の一例を図3のタイミングチャートを参照しながら説明する。基板Sが塗布装置2に搬入されて塗布操作後に基板Sが搬出されるまでのタクトTaは時刻t0から開始して時刻t5にて終了する。塗布装置2は、上流側移送ロボット3から受け渡された基板Sの固定や塗布ヘッド11の初期化等を含む前処理を時刻t0から時刻t2まで実行し、その前処理に続いて塗布操作を時刻t4まで実行する。塗布操作の終了に続いて基板Sの固定解除等を含む後処理を時刻t5まで実行する。なお、塗布操作にはいわゆる初期ビードを形成する予備塗布が含まれる。
【0022】
制御ユニット5は塗布装置2の塗布操作に合わせて禁止信号を出力する。禁止制御モードは動作Dの終了時刻t1から所定期間T1後に開始され、禁止信号の出力停止と同期して終了する。上述したように、所定期間T1は動作Aの動作期間と塗布操作とが重ならないように設定されるので、禁止制御モードは塗布操作の開始時期t2よりも動作Aの動作期間以上先行する開始時期taに開始される。従って、動作Aが2点鎖線で示したように、仮に禁止制御モードの開始時期taと同時に開始されたとしても、動作Aは塗布操作の開始前に終了するので塗布操作に悪影響を及ぼすことはない。
【0023】
禁止制御モードの設定中は動作A及び動作Cの開始が禁止される。禁止制御モードが解除されていれば動作Cは動作Bの終了後直ちに開始される。しかし、図示の場合は禁止制御モードが設定されているので、動作Bの終了時刻t3から禁止制御モードの解除時刻t4までの制限期間T2だけ動作Cの開始が繰り下げられる。そして、動作Cの終了後、所定のインターバルを経て時刻t5に動作Dが開始される。
【0024】
以上から明らかなように、塗布システム1によれば、塗布装置2による塗布操作の実行中に、塗布操作に悪影響を与える上流側移送ロボット3の動作A及び動作Cの実行が禁止されるので、塗布操作が上流側移送ロボット3からの悪影響を受けてレジスト液の厚さの均一性が悪化することを回避できる。しかも、塗布システム1は、上流側移送ロボット3の各動作A〜Dが開始後に中断できない動作であることを考慮して禁止制御モードを設定し、その禁止制御モードの設定中に上流側移送ロボット3の動作A及びCを禁止しているので、動作A又は動作Cの終了前に塗布操作が開始する事態を確実に回避できる。
【0025】
本形態においては、上流側移送ロボット3が本発明に係る周辺装置に、制御ユニット5が本発明に係る動作禁止手段に、禁止信号出力部21が本発明に係る情報出力手段に、禁止制御部22が本発明に係る禁止制御手段に、それぞれ相当する。但し、本発明は上記形態に限定されず、本発明の要旨の範囲内において種々の形態にて実施できる。塗布操作が実行中であるか否かを識別する情報としては、その実行中に出力する禁止信号に限らない。例えば、塗布操作の不実行時に出力され実行時に出力停止される信号をこの情報として利用することもできる。上記形態は上流側移送ロボット3に対する振動対策であるが、下流側ロボット4やその他の周辺装置の動作が塗布装置の塗布操作に悪影響を及ぼすもののであれば、本発明に係る振動対策を適用することが可能である。
【0026】
周辺装置の所定動作としては、動作期間中の中断が可能な動作であってもよい。この場合には禁止制御モードを設定せずに、禁止信号の有無のみで当該動作を禁止させることも可能である。また、周辺装置は複数態様の動作が段階的に実行されるものである必要はない。周辺装置の動作が単一の動作態様であり、その動作が塗布操作に悪影響を与える場合には、塗布操作の実行中に当該動作を禁止させてもよい。
【0027】
上記形態では、塗布液としてレジスト液を例示したが、本発明の適用範囲はこれらに限定されない。塗布液が乾燥して形成される塗布膜の厚さの精度に一定の制約があればどのような液体でも本発明の適用対象となり得る。
【符号の説明】
【0028】
1 塗布システム
2 塗布装置
3 上流側移送ロボット(周辺装置)
5 制御ユニット(動作禁止手段)
21 禁止信号出力部(情報出力手段)
22 禁止制御部(禁止制御手段)
Sg2 禁止信号(情報)
S 基板
f 表面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面に塗布液を塗布する塗布操作を実行する塗布装置と、前記塗布装置の周辺に設置され、前記塗布装置が実行する前記塗布操作に悪影響を与える振動を発する所定動作を行う周辺装置と、前記塗布装置による前記塗布操作の実行中に、前記周辺装置による前記所定動作の実行を禁止させる動作禁止手段と、を備える塗布システム。
【請求項2】
前記動作禁止手段は、前記塗布操作が実行中か否かを判別可能な情報を出力する情報出力手段と、前記塗布操作の実行中に前記所定動作が禁止されるように、前記情報出力手段が出力する前記情報に基づいて前記周辺装置を制御する禁止制御手段と、を有する請求項1に記載の塗布システム。
【請求項3】
前記情報出力手段は、前記塗布操作の実行中に前記情報として禁止信号を出力し、
前記禁止制御手段は、前記禁止信号が出力されている間に前記所定動作が禁止されるように前記周辺装置を制御する、請求項2に記載の塗布システム。
【請求項4】
前記所定動作は、動作開始から動作終了までの動作期間の途中で中断できない動作であり、
前記情報出力手段は、前記塗布操作の実行中に前記情報として禁止信号を出力し、
前記禁止制御手段は、前記塗布操作の開始時期よりも前記動作期間以上先行する時期に開始し前記検出信号の出力停止に合わせて終了する禁止制御モードを設定し、前記禁止制御モードが設定されている間に前記所定動作の開始を禁止する、請求項2に記載の塗布システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−74267(P2013−74267A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−214561(P2011−214561)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】