説明

塗布ロボット

【課題】 部品の表面あるいは裏面に塗料、接着剤あるいはシール剤を塗布する塗布ロボットを提供する。
【解決手段】 モータにより駆動されて塗布剤の瞬時吐出量を制御する塗布装置5をロボット先端に取付けるとともに、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでのロボット先端の速度パターンに沿って塗布剤の瞬時吐出量を制御するように構成する一方、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布剤の全塗布量を記憶しておき、この全塗布量とロボット先端の移動速度とから塗布装置の最大瞬時吐出量を算出するように構成されている。そのため、塗布面の厚さが均一に保持されるのはもちろんのこと、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布剤の全塗布量を設定するだけで、この全塗布量に応じて塗布装置の最大瞬時吐出量を算出でき、塗布剤の消費量を正確に管理することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車や電気機器等に使用される部品の表面あるいは裏面に塗料、接着剤あるいはシール剤を塗布する塗布ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、部品の表面あるいは裏面に塗料、接着剤、シール剤等の塗布剤を塗布する際には、その塗布面の厚さを均一にすることが要求されているが、この種作業を塗布ロボットで行う場合、塗布ロボットの先端に設けられた塗布装置の移動速度を一定にすることができないため、塗布面の厚さを均一にすることが難しいものとなっている。これを解消するため、特開平5−231546号に記載の塗布ロボットが開発されている。この塗布ロボットは、ロボット先端にモータにより駆動されて塗布剤の吐出量を制御できる塗布装置を有しており、ロボット先端の移動速度の速度パターンに沿って塗布装置の瞬時吐出量を算出し、塗布装置からロボット先端の移動速度に比例した吐出量の塗布剤を塗布して、塗布剤の塗布面を均一にするように構成されている。
【0003】
【特許文献1】特開平5−231546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この塗布ロボットでは、塗布作業工程中正確な位置決めをするため、ロボット先端の移動速度は一定速度に達するまでは加速され、一定速度から停止するまでは減速される。この移動速度の変化にともなって、塗布装置の瞬時吐出量も変化し、塗布面の厚さが均一に保たれている。しかしながら、この塗布ロボットでは塗布面の厚さを決める場合、作業者がサンプルワーク上で塗布作業を繰り返し、塗布装置の最大瞬時吐出量を調整する必要があり、極めて効率の悪いものとなるばかりか、塗布剤の全塗布量を管理できない等の欠点が生じている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題の解決を目的として本発明は、モータにより駆動されて塗布剤の瞬時吐出量を制御する塗布装置をロボット先端に取付ける一方、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの移動速度の速度パターンを記憶する記憶部を設け、ロボット先端の移動速度の速度パターンに沿って塗布剤の瞬時吐出量を制御し、塗布面の塗布量を均一にするように構成した塗布ロボットにおいて、前記記憶部に塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布剤の全塗布量を記憶しておき、この全塗布量とロボット先端の移動速度とから塗布装置の最大瞬時吐出量を算出するように構成されている。
【発明の効果】
【0006】
そのため、本発明によれば、ロボット先端の速度パターンに沿って塗布装置の瞬時吐出量が制御され、塗布面の厚さが均一に保持されるのはもちろんのこと、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布剤の全塗布量を設定することにより、この全塗布量に応じて塗布装置の最大瞬時吐出量を算出でき、塗布剤の塗布面を全塗布量から決まる厚さにすることができ、塗布剤の消費量を正確に管理することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1において、1は塗布ロボットであり、X軸テーブル2、Y軸テーブル3およびZ軸テーブル4を有している。これらテーブル2,3,4はそれぞれサーボモータ(図示せず)により駆動されており、X軸テーブル2およびY軸テーブル3が作動してZ軸テーブル4が任意の平面位置に位置決めされるように構成されている。また、このZ軸テーブル4はその作動によりスライド部(図示せず)をロボット先端として上下方向位置に位置決めするように構成されており、このスライド部には塗布用サーボモータ5aにより駆動される塗布ポンプ(図示せず)を備えた塗布装置5が取付けられている。この塗布装置は、塗布用サーボモータ5aの回転速度に応じて、塗布ノズル5bから塗布剤が吐出されるように構成されており、しかも塗布用サーボモータ5aに付設されたエンコーダ5cの回転パルスが後記する塗布用パルス処理部6jに送られ、瞬時吐出量が後記する瞬時吐出量パターンに制御されるように構成されている。
【0008】
6は塗布ロボット1の制御装置であり、この制御装置6は後記するサーボモータ駆動部6gに指令信号を送る制御部6aと、各テーブル2,3,4を位置決め制御する制御プログラム、速度パラメータ等各種制御パラメータおよび図2に示す各サーボモータの速度パターン並びに塗布個所の位置情報を記憶する記憶部6bと、作業開始信号等各種指令信号を制御部6aに送る操作部6cと、位置情報を記憶部6bに送るティーチングペンダント6dと、各種情報を表示する表示部6eと、前記制御部6aに入出力部6fを介して接続されるサーボモータ駆動部6gおよびパルス処理部6hとからなっている。これらサーボモータ駆動部6gおよびパルス処理部6hは各テーブル毎に設けられており、各テーブル2,3,4のサーボモータが同一の制御プログラムにより駆動されるように構成されている。
【0009】
前記操作部6cは動作モード、設定モード等のモード指令信号を制御部6aに送るように構成されており、動作モード時には制御部6aに作業開始信号を、また設定モード時には記憶部6bに各種情報を送ることができるように構成されている。また、前記ティーチングペンダント6dは設定モード指令信号を選択できるように構成されており、設定モード時にティーチングペンダント6d内に持つ位置情報、制御パラメータを記憶部6bに送ることができるように構成されている。
【0010】
前記記憶部6bには所望ワーク上の塗布個所毎に塗布開始ポイント、塗布終了ポイント、通過ポイント、塗布開始ポイントでの上下方向の高さ位置、塗布装置5の吐出量制御パラメータ並びに塗布用サーボモータ5aを駆動するための各種制御パラメータが位置情報として記憶されている。また、この位置情報にはワーク(図示せず)上に塗布個所が複数ある場合に対応して、作業サイクル完了指令信号の有無が含まれており、塗布装置5が塗布終了ポイントに達して停止する都度、作業サイクル完了指令信号の有無を判断することにより連続して塗布作業が行えるように構成されている。また、前記記憶部6bには塗布個所毎に塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布剤の全塗布量が記憶されており、塗布開始ポイントに塗布装置5が位置決めされると、この全塗布量が呼び出されるように構成されている。
【0011】
前記制御部6aには入出力部6fを介して塗布用サーボモータ駆動部6iおよび塗布用パルス処理部6jが接続されており、塗布装置5もテーブル2,3,4と同一の制御プログラムで、しかも塗布終了ポイントまでの移動距離の長い方のテーブルの指令信号により駆動され、図2に示す瞬時吐出量パターンが得られるように構成されている。
【0012】
また、前記制御部6aは操作部6cから作業開始信号を受けると、図3に示すように
1)記憶部から塗布開始ポイントを呼び出す。
2)あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでX軸テーブルおよびY軸テーブルのサーボモータを駆動するように各サーボモータ駆動部に指令信号を送るとともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置を速度制御しながら塗布開始ポイントに位置決めする。
3)記憶部から塗布開始ポイントでの上下方向の高さ位置を呼出し、あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでZ軸テーブルのサーボモータを駆動するようにサーボモータ駆動部に駆動指令信号を送るともに、パルス処理部からのパルスを受けて塗布装置の塗布ノズル先端を速度制御しながら所定の高さに位置決めする。
4)記憶部から通過ポイント、塗布終了ポイントを記憶部から呼出す。
5)記憶部から塗布個所での塗布剤の全塗布量を呼出すとともに、塗布用サーボモータの速度パターンと速度パラメータと塗布剤の全塗布量とから塗布装置の最大瞬時吐出量を得る乗数Kを算出する。
6)塗布用サーボモータ駆動部に指令受入可信号を送る。
7)あらかじめ設定された速度パラメータで決まる最高速度で、しかも所定の速度パターンでX軸テーブルおよびY軸テーブルのサーボモータを駆動するように各サーボモータ駆動部に指令信号を送ってロボット先端の塗布装置の塗布ノズルを通過ポイントを経由して塗布終了ポイントに位置決めするとともに、これら指令信号に乗数Kを乗して新たな指令信号を算出し、これを塗布用サーボモータ駆動部に送り、塗布用パルス処理部からのパルスを受け、瞬時吐出量を所定瞬時吐出量パターンとなるように制御する。
8)Z軸テーブルのサーボモータ駆動部に原点復帰指令信号を送るとともに、塗布用サーボモータ駆動部に受入停止指令信号を送る(塗布開始ポイントのアドレスを+1)。
9)作業サイクル完了信号の有無を判断して、これがない時、1)に戻る。
10)X軸テーブルおよびY軸テーブルの各サーボモータ駆動部に原点復帰指令信号を送る。
11)原点復帰確認信号を待つ。
12)エンド。
となるように構成されている。
【0013】
上記塗装ロボットでは、塗布作業開始前に操作部6cで設定モードが選択されて、操作部6cあるいはティーチングペンダント6dから塗装ロボット1を駆動するための各種制御パラメータに加えて、塗布個所の塗布作業開始ポイント、塗布作業終了ポイント、経路を決める通過ポイントが位置情報として記憶部6bに記憶される。また、塗布個所が最終の個所である時には作業サイクル完了信号が前記位置情報として記憶されるとともに、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布剤の全塗布量が記憶部6bに記憶される。その後、動作モード時に操作部6cから作業開始信号が送られると、塗布開始ポイントが呼び出されてX軸テーブル2およびY軸テーブル3の各サーボモータが所定の最高速度で、しかも所定の速度パターンで駆動されるとともに、Z軸テーブル4に取付けられた塗布装置5が塗布開始ポイントに位置決めされる。同時に、この塗布開始ポイントでの上下方向の高さ位置が呼出され、Z軸テーブル4のサーボモータが所定の最高速度で、しかも所定の速度パターンで駆動され、塗布装置5の塗布ノズル5bの先端が塗布開始ポイントでの上下方向の所定高さ位置に円滑に位置決めされる。
【0014】
ロボット先端の塗布装置5の塗布開始位置での位置決めが完了すると、塗布終了ポイントおよび通過ポイントが呼び出され、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の各サーボモータが所定の最高速度で、しかも所定の速度パターンで駆動されるように各サーボモータ駆動部6gに指令信号が送られる。同時に、各パルス処理部6hからのパルスを受けて、塗布装置5が通過ポイントにより決まる経路上を速度制御されながら移動し、塗布終了ポイントに達する。
【0015】
一方、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の各サーボモータ駆動部6gに指令信号が送られると同時に、ワーク上の塗布個所での塗布剤の全塗布量が記憶部6bから呼び出され、この全塗布量と速度パターンと速度パラメータとから最大瞬時吐出量を決めるための乗数Kが算出される。また、塗布用サーボモータ駆動部6iに指令受入可信号が送られた後、前記X軸テーブル2およびY軸テーブル3の各サーボモータ駆動部6gに送られる指令信号は塗布用サーボモータ駆動部6iにも同様に送られるが、この指令信号に前記乗数Kが乗算され、新たな指令信号が算出される。この新たな指令信号が塗布用サーボモータ駆動部6iに送られ、塗布用サーボモータ5aが駆動される。この時、塗布用サーボモータ5aはロボット先端に取付けられた塗布装置5の移動速度に応じて回転するので、塗布装置5の瞬時吐出量も同様に変化し、しかも新たな指令値により決まる最大瞬時吐出量で、すなわち塗布剤の全塗布量から決まる塗布面の厚さが得られる瞬時吐出量で塗布剤が塗布装置5から吐出される。そのため、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの速度パターンに応じて塗布装置5の瞬時吐出量が変化し、塗布剤の塗布面の厚さは均一に保たれる。しかも、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの経路での全塗布量があらかじめ設定した塗布量となるように塗布装置5の最大瞬時吐出量が設定されているので、塗布剤の塗布量を正確に管理することができる。
【0016】
前記塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布作業が完了すると、Z軸テーブル4のサーボモータ駆動部6gに原点復帰指令信号が送られる。その後、前記塗布開始ポイントの位置情報に作業サイクル完了信号が記憶されているか否かが判断され、これが記憶されてない時には新たな塗布開始ポイントが呼び出され、前記作業が繰り返される。また、前記位置情報に作業サイクル完了信号が記憶されている時には、X軸テーブル2およびY軸テーブル3の各サーボモータ駆動部6gに原点復帰指令信号が送られ、これらの原点復帰確認信号を待って、すべての作業を完了することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の塗布ロボットの説明図である。
【図2】本発明に係るサーボモータおよび塗布装置の速度パターンー瞬時吐出量パターン図である。
【図3】本発明に係る制御部の動作を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0018】
1 塗布ロボット
2 X軸テーブル
3 Y軸テーブル
4 Z軸テーブル
5 塗布装置
5a 塗布用サーボモータ
5b 塗布ノズル
5c エンコーダ
6 制御装置
6a 制御部
6b 記憶部
6c 操作部
6d ティーチングペンダント
6e 表示部
6f 入出力部
6g サーボモータ駆動部
6h パルス処理部
6i 塗布用サーボモータ駆動部
6j 塗布用パルス処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータにより駆動されて塗布剤の瞬時吐出量を制御する塗布装置をロボット先端に取付ける一方、塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの移動速度の速度パターンを記憶する記憶部を設け、ロボット先端の移動速度の速度パターンに沿って塗布剤の瞬時吐出量を制御し、塗布面の塗布量を均一にするように構成した塗布ロボットにおいて、
記憶部に塗布開始ポイントから塗布終了ポイントまでの塗布剤の全塗布量を記憶し、この全塗布量とロボット先端の移動速度とから塗布装置の最大瞬時吐出量を算出するように構成したことを特徴とする塗装ロボット。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate