説明

塗布膜の乾燥方法

【課題】連続走行する支持体に塗布液を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面において、塗布液物性を変更することなく、また既存の乾燥装置を大きく改造することなく、溶剤が揮発する乾燥過程においてに発生するムラを防止し、かつ効率良く乾燥させる塗布膜の乾燥方法を提供すること。
【解決手段】連続的に搬送される支持体上に溶剤を含む塗布液を塗布し、形成された溶剤を含む塗布膜を乾燥する、塗布膜の乾燥方法であって、該塗布膜の溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲である時の乾燥速度が0.2g/m・s以上であり、且つ該溶剤含有量範囲において該支持体を非接触で搬送することを特徴とする乾燥方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶剤を含む塗布膜の乾燥方法に関し、特に、長尺状反射防止フィルム等の長尺広幅塗工体の乾燥方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に反射防止フィルムは、陰極管表示装置(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)や液晶表示装置(LCD)のようなディスプレイ装置において、外光の反射によるコントラスト低下や像の映り込みを防止するために、光学干渉の原理を用いて反射率を低減するためにディスプレイの最表面に配置される。
【0003】
反射防止フィルム等の光学フィルムは、連続走行する長尺状支持体に、塗布液を塗布し、乾燥させ塗布膜を形成することで得られる。長尺で広幅な塗布膜面を乾燥する乾燥方法および装置については、非特許文献1に非塗布面側をローラで支持し、塗布面側にエア・ノズルから風を吹いて乾燥させる乾燥方法や、塗布面、非塗布面ともにエア・ノズルから風を吹いて、支持体を浮上させた状態、すなわち支持体がローラ等に接触しないで乾燥させる非接触式のエア・フローティング乾燥方法について記されている。この非接触式の乾燥方法については、スペースを効率良く利用し、かつ効率良く乾燥させる方法として特公昭48−42903に開示されているような弦巻き型の乾燥装置を用いた乾燥方法等がある。
【0004】
通常これらの風を吹かせて乾燥させる方法(以下、通風乾燥方法という)では、調湿した風を塗布面に吹きつけることにより、塗布面中に含まれる溶剤を蒸発させて乾燥させている。この通風乾燥方法は乾燥効率に優れるものの、塗布面に直接または多孔板、整流板等を介して風をあてるために、この風によって塗布面が乱れて塗布膜の厚さが不均一となってムラを生じたり、対流によって塗布面での溶剤の蒸発速度が不均一になったりし、いわゆるユズ肌(非特許文献2参照)等が発生して、均一な塗布膜が得られないという問題があった。
【0005】
特に、塗布液中に有機溶剤を含む場合には、このようなムラの発生は顕著である。この理由は、乾燥初期には塗布膜中に有機溶剤が十分に含まれた状態であり、この段階で有機溶剤の蒸発分布が生じると、その結果、塗布膜面に温度分布、表面張力分布を生じ、塗布膜面内で、いわゆるマランゴニー対流等の流動が起きることによる。このようなムラの発生は重大な塗布欠陥となる。
【0006】
これらの問題点を解決する方法として、特許文献1に塗布直後に乾燥ゾーンを設ける構成が示されている。ここでは、乾燥ゾーンを分割し、分割された部分に支持体の幅方向の一方端側から他方端側へ風速を制御しながら送風し乾燥させることにより、ムラの発生を抑える方法が開示されている。また特許文献2には、同様の目的で乾燥ゾーンを分割するかわりに金網を設置する方法が開示されている。
【0007】
具体的に特許文献1には、塗布液を高濃度化したり、塗布液に増粘剤を添加したりすることにより、塗布液の粘度を増加させ、これにより塗布直後の塗布膜面の乾燥風による流動を抑制する方法や、高沸点溶液を用いることにより、塗布直後の塗膜面の乾燥風による流動が発生してもレベリング効果によってムラの発生を防止する方法が開示されている。
【0008】
しかし、特許文献1及び2の方法では、乾燥ゾーン外からの不均一な風の流入抑止には
効果があるものの、塗布膜面を乱さないように風速を制御しようとすると、風速を大きく下げる必要がある。その結果、乾燥速度が大幅に低下し、それに対処するべく乾燥ゾーンの長さを長くする必要がある。そのため、塗布効率が悪くなる。また、それでも風の影響を完全になくすことは困難である。
【0009】
また、塗布液を増粘させたり、高沸点溶液を使用する方法は、特許文献1で述べられているように、高速塗布適性をなくしたり、乾燥時間の増大をもたらしたりし、生産効率が極端に悪くなるという問題があった。
【0010】
このように、通風乾燥方法、特に塗布液に有機溶剤を含む場合の通風乾燥方法では、乾燥の初期において塗布面の乾燥の不均一を招くため、風を吹きつけないで乾燥させる方法が、特許文献3〜5等に開示されている。
【0011】
すなわち、特許文献3には、風を吹かないで、塗布液中の溶剤を蒸発させ回収し乾燥させる方法が開示されている。この方法は、ケーシング上部に支持体の入り口、出口を設け、ケーシング内では非塗布面を加熱して塗布面からの溶剤の蒸発を促進し、塗布面側に設置した凝縮板に結露させる方法で溶剤を凝縮させて溶剤を回収し塗布膜を乾燥する方法である。
【0012】
また、特許文献4には、水平に走行する支持体の上部でドラムを使って溶剤を回収する方法が開示されている。さらに、特許文献5では、特許文献4のレイアウトの改良方法についての提案がなされている。
【0013】
しかし、特許文献3では、支持体の入り口、出口がケーシング上部に限定されているために、装置のレイアウトにおいて制約が大きく、既存の塗布工程に組み込むのが難しい。また、Fig.5 に示される実施例では、塗布後回収ドライヤに入るまでに一定以上の距離が必要なことや回収ドライヤに入る前にベースを反転する必要があるため、塗布直後のムラを効率良く抑えることが困難である。
【0014】
特許文献4では、塗布面から凝縮・溶剤回収ドラムまでの距離が塗布方向で変化することから、乾燥速度をケーシング内の全領域に亘って均一にコントロールすることが難しく、またケーシング入口、出口付近では塗布面と凝縮・冷却ドラムとの距離が不必要に離れてしまうため、自然対流の発生によって別の塗布ムラを生じてしまう。
【0015】
特許文献5では、塗布装置から凝縮・溶剤回収装置までの距離を接近させる構成を採ることが困難であり、塗布ムラ対策には不十分であった。
【非特許文献1】E.B.Gutoff、E.D.Cohen 著の『Coating and Drying Defects』(Wiley−Intersciece, John Wiley & Sons, Inc)
【非特許文献2】尾崎勇次著、『コーティング工学』、pp293〜294、朝倉書店、1971年
【特許文献1】特開2001−170547号公報
【特許文献2】特開平9−73016号公報
【特許文献3】英国特許公開1401041号明細書
【特許文献4】米国特許5168639号明細書
【特許文献5】米国特許5694701号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上記のように、従来提案されている塗布膜の乾燥方法では、所望の塗布液組成で、また
既存の乾燥装置で、乾燥ムラの発生を十分に防止することができなかった。
一方、本発明者は、溶剤を含む塗布液が塗布された長尺状支持体を搬送ローラで支持し、該溶剤が揮発する乾燥する過程において、溶剤含有量が特定の範囲内で搬送ローラが非塗布面に接触すると、斑点状のムラが発生することを知見した。
本発明は、連続走行する支持体に塗布液を塗布して形成した長尺で広幅な塗布膜面において、塗布液物性を変更することなく、また既存の乾燥装置を大きく改造することなく、溶剤が揮発する乾燥過程において発生するムラを防止し、かつ効率良く乾燥させる塗布膜の乾燥方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者は、上記課題を解消するために鋭意検討した結果、支持体上に形成された塗布膜の溶剤含有量が特定範囲内であるときの乾燥速度を特定範囲になるように設定し、且つ該溶剤含有量範囲において該支持体を搬送ローラに接触させることなく搬送することで本発明の上記目的を達成することを見出し本発明を完成するに至った。
【0018】
即ち、本発明は以下のとおりである。
1.連続的に搬送される支持体上に溶剤を含む塗布液を塗布し、形成された溶剤を含む塗布膜を乾燥する、塗布膜の乾燥方法であって、該塗布膜の溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲である時の乾燥速度が0.2g/m・s以上であり、且つ該溶剤含有量範囲において該支持体を非接触で搬送することを特徴とする乾燥方法。
【0019】
2.該乾燥速度が0.25g/m・s以上3.00g/m・s以下であることを特徴とする1に記載の乾燥方法。
3.該溶剤含有量範囲における乾燥温度が25℃以上120℃以下であることを特徴とする1又は2に記載の乾燥方法。
4.該溶剤含有量範囲における乾燥風速が0.1m/秒以上1.5m/秒以下であることを特徴とする1から3の何れかに記載の乾燥方法。
5.該溶剤含有量範囲において該支持体を非接触で搬送する距離が3m以下であることを特徴とする1から4の何れかに記載の乾燥方法。
【0020】
6.該溶剤がケトン系、芳香族炭化水素系から選ばれる有機溶剤であることを特徴とする1から5の何れかに記載の乾燥方法。
7.該塗布液が光学機能層形成用塗布液であることを特徴とする1から6の何れかに記載の乾燥方法。
8.該光学機能層形成用塗布液が防眩性ハードコート層形成用塗布液であることを特徴とする7に記載の乾燥方法。
9.該光学機能層形成用塗布液が光拡散性ハードコート層形成用塗布液であることを特徴とする7に記載の乾燥方法。
10.該光学機能層形成用塗布液が低屈折率層形成用塗布液であることを特徴とする7に記載の乾燥方法。
【0021】
11.1から10のいずれかの乾燥方法で形成された層を有する光学フィルム。
12.11に記載の光学フィルムに反射防止性能を付与してなる反射防止フィルム。
【発明の効果】
【0022】
本発明の乾燥方法は、塗布液物性の変更や乾燥装置の大きな改造を行なわずに、乾燥過程で発生するムラを防止でき、膜面状が良く、かつ効率良く乾燥できるので生産効率が良い。また本発明の乾燥方法で形成された塗布膜を有する光学フィルムおよび反射防止フィルムは、これらに要求される所望の性能を損なうことなく有するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、本発明について更に詳細に説明する。
本発明の乾燥方法は、連続的に搬送される支持体上に溶剤を含む塗布液を塗布し、形成された溶剤を含む塗布膜を乾燥する、塗布膜の乾燥方法であって、該塗布膜の溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲である時の乾燥速度が0.2g/m・s以上であり、且つ該溶剤含有量範囲において該支持体を非接触で搬送することを特徴とする。
本明細書中において、「塗布液」とは、支持体上に塗布する前の液状物を意味し、「塗布膜」とは、塗布液を支持体上に塗布して形成された乾燥前又は乾燥途中の塗膜を意味する。そして乾燥が終了して得られた目的の膜は「層」として記載する。
以下、まず、方法自体について説明した後、用いられる支持体や塗布液、本発明の乾燥方法により得られる層や、該層を有する物について説明する。
【0024】
本発明は、連続的に搬送される支持体上に溶剤を含む塗布液を塗布し、支持体上に形成された塗布膜を乾燥する際の乾燥方法に関する。
この際、本発明の乾燥方法においては、支持体上に溶剤を含む塗布液を塗布し非塗布面をローラで支持して連続的に搬送しながら、塗布膜に含まれる溶剤が揮発する乾燥過程で、塗布膜の溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲内である時の乾燥速度が0.2g/m・s以上として、塗布膜が形成された支持体を非接触で搬送しながら乾燥させる。
【0025】
上記溶剤含有量の範囲で搬送ローラ等が接触すると、接触面が非塗布面側であってもムラが発生する。この理由は、搬送ローラ表面にある極微小な凹凸が支持体と接触した時、支持体上の塗布液中に極微小範囲で膜面温度分布、表面張力分布が生じることにあると考えられる。搬送ローラ表面の凹凸は目視で観察できないほど微小でもムラは発生する。
【0026】
そのためムラを防止するには上記溶剤含有量の範囲では搬送ローラなしに、非接触で搬送する必要がある。既存の乾燥装置を用いたときに、上記溶剤含有量の範囲の箇所に搬送ローラが設置されている場合には、既存の乾燥装置を大きく改造しなくても良い点で、上記箇所の搬送ローラを取り外しても良い。
なお、本明細書中において塗布液の溶剤含有量は塗布液の固形分の対語であり、例えば溶剤含有量が20質量%であれば固形分は80質量%であり、溶剤含有量が45質量%であれば固形分は55質量%である。乾燥過程における任意の地点での溶剤含有量は、塗布量(g/m)と塗布前の塗布液の固形分濃度と、該任意の地点での質量減少分(g/m)から計算できる。しかし搬送されている支持体上に塗布された塗布液の質量減少分を直接的に測定することは難しい。そのため塗布部から任意の乾燥地点までの距離と搬送速度をもとに、任意の乾燥地点までの乾燥時間を算出し、別途オフライン塗布で前記乾燥時間、乾燥した後の質量減少量から溶剤含有量を見積もった。
溶剤含有量が45質量%より多ければ、たとえ搬送ローラ等が非塗布面側に接触していてもムラは発生しない。これは支持体に塗布された塗布液にまだ多くの溶剤を含んでおり塗布液の粘度が低いためレベリング性を有し、ムラにならないと考えられる。むしろ溶剤含有量が45質量%よりも多ければ、安定して搬送するためにも搬送ローラが設置されているほうが好ましい。
一方溶剤含有量が20質量%未満でも、搬送ローラ等が非塗布面側に接触していてもムラは発生しない。これは溶剤含有量が少なくなると塗布膜表面の液が流動しないほど塗布液の粘度が増加するため、ムラが発生しないものと考えられる。したがって溶剤含有量が20質量%未満の場合にも、安定して搬送するために搬送ローラが設置されているほうが好ましい。
【0027】
なお、塗布面、非塗布面ともに風をあてて支持体を浮上させた状態、すなわち支持体がローラ等に接触しないで乾燥させるエア・フローティング乾燥方式では、塗布面に風を吹
きつけることで風によるムラが発生するため好ましくない。
【0028】
本発明の乾燥方法においては、塗布膜中の溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の時の乾燥速度が0.2g/m・s以上となるように設定するが、好ましくは0.25g/m・s以上であり、更に好ましくは0.25g/m・s以上3.00g/m・s以下である。
【0029】
ここで乾燥速度の測定は、上記オフライン塗布での溶剤含有量測定の結果をもとに算出できる。即ち、乾燥時間t(秒)における溶剤含有量をプロットし、溶剤含有量45質量%になる時間t45%と溶剤含有量20質量%になる時間t20%を読み取る。溶剤含有量が45質量%から20質量%に濃縮されるのに要する時間と、その時間に揮発した溶剤量(g/m)と、その他、塗布量(g/m)および塗布前の塗布液の固形分濃度を用いて、塗布量溶剤含有量45質量%から20質量%までの乾燥速度を計算した。読み取り精度を上げるため、溶剤含有量の測定は少なくとも乾燥時間t=1から30まで1秒おきに溶剤含有量を測定する。
該乾燥速度が0.2g/m・s未満では溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲にある時間が長くなり、その結果、非接触で搬送する距離が長くなる。非接触で搬送する距離が長くなると、搬送方向にツレシワが発生する。これは支持体が搬送ローラにより巾方向で支持されない状態のまま搬送方向に長い距離を引っ張られるために発生すると考えられる。該非接触で搬送する距離を短くするには、搬送速度を遅くすることも考えられるが、生産効率の点で好ましくない。
溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲において非接触で搬送する距離は3m以下が好ましい。更に好ましくは2m以下で、最も好ましくは1m以下である。3m以下であれば上記のツレシワが発生する問題もなく好ましい。
【0030】
本発明に用いられる塗布液に含まれる、乾燥の対象となる溶剤とは、物質を溶解する性質をもつ有機化合物を意味する。具体的には、トルエン、キシレン、スチレン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、メタノール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール等のアルコール類、クロルベンゼン、オルトージクロルベンゼン等の塩化芳香族炭化水素類、モノクロルメタン等のメタン誘導体、モノクロルエタン等のエタン誘導体等を含む塩化脂肪族炭化水素類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、エチルエーテル、1,4−ジオキサン等のエーテル類、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル類、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ノルマルヘキサン等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。中でも、芳香族炭化水素系、ケトン系の有機溶剤が好ましい。
バインダー樹脂などを溶解するものであれば、特に限定はないが溶解性、汎用性、コストなどからメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、トルエンが好ましい。また乾燥速度を調整できる点で沸点の異なる2種類以上の溶剤を混合して使用することが好ましい。
塗布液における溶剤含有量は、40.0〜99.5質量%とするのが好ましく、45.0〜95.0質量%とするのが更に好ましい。
また、本発明において上述の溶剤含有量の範囲以外の範囲における乾燥速度や搬送方式は特に制限されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の条件を採用することが可能である。
【0031】
次いで、図1を参照して本発明の乾燥装置の概要について説明する。
図1は、本発明の乾燥方法を実施することができる好ましい乾燥装置を具備するフィルムの製造装置の概要を模式的に示す模式図である。
図1に本発明の乾燥方法に係る乾燥装置を用いて構成された反射防止フィルムの作製装置を示す。図1に示す作成装置によれば、送り出し機70から支持体20が送り出され、
送り出された支持体20は、除塵機90、塗布装置10へと搬送される。除塵機90は、搬送ローラ80によって支持された支持体20の表面に付着した塵を取り除き、除塵された支持体上に塗布装置10により所望の塗布液を塗布して塗布膜を形成する。そして、形成された塗布膜に対して乾燥装置300により本発明の特徴部分である特定の溶剤含有量において非接触で特定の乾燥速度での乾燥がなされる。その後、支持体20は加熱機40を通ることにより仕上げの乾燥処理を施された後、さらに、紫外線ランプ50を支持体20の表面に形成された塗布膜に照射して、塗布膜を硬化させて所望の層を得る。塗布液に熱硬化型のバインダーを含む時には加熱機40を通ることにより塗布膜を硬化させて所望の層を得る。層の形成された支持体20は、巻き取り機60により巻き取られる。支持体上に複数の層を積層する場合は、第1層が形成された支持体をもう一度送り出し機70に取り付け、第2層形成用の塗布液を塗布、乾燥、硬化、巻き取りの工程を繰り返して積層することができる。なお積層数は特に制限されず、複数層を形成しても良い。
【0032】
本発明の乾燥方法の特徴部分に係る乾燥装置300に関して以下に説明する。塗布装置10で塗布液を塗布した後、塗布装置10の直後より設けられた乾燥装置300によって初期の乾燥操作が行なわれる。乾燥装置300内には搬送ローラ30、31、32、33、34、35、36、37,38が設置されており、個々の搬送ローラは脱着が可能で、かつ脱着操作が容易であることが好ましい。図1においては便宜上全ての搬送ローラを記載しているが、実際の乾燥工程においては、前述したように塗布された塗布液の溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲にある搬送ローラは取り外し、該範囲では非接触で搬送される。搬送ローラ30、31、32、33、34、35、36、37,38のローラ表面の温度は調整できることが好ましい。ムラの抑制には塗布膜面の膜面温度分布を生じさせないことが重要であるため、搬送ローラ30、31、32、33、34、35、36、37,38のローラ表面温度は乾燥装置300内の雰囲気温度とできるだけ同じ温度に調整することが好ましい。
【0033】
乾燥装置300は支持体を通す通路室301と揮発した溶剤を排気する排気室302とを備えており、整風板303は通路室301と排気室302を仕切るように設けられている。排気室302には、排気パイプと吸気パイプとが取り付けられ、その吸気パイプにより排気室302内に空気(その他のガスであっても良い)が送られる。また、吸気パイプと排気パイプとは、支持体20の幅方向にそれぞれ反対側に取り付けられている。整風板303の開口率、材料などは特に限定されないが、50%以下の開口率である金網やパンチングメタルなどが好ましく、開口率が20%〜40%であることがより好ましい。具体的には、300メッシュで開口率30%の金網を用いることができる。また、支持体20に形成された塗布膜の塗膜面とのクリアランスが10mmになるように整風板303は取り付けられている。
【0034】
通路室301の風速は0.1m/秒以上1.5m/秒以下が好ましい。更に好ましくは0.1m/秒以上1.0m/秒以下であり、最も好ましくは0.2m/秒以上1.0m/秒以下である。風速が0.1m/秒より小さいと乾燥速度が大幅に低下し、上記整風されている乾燥装置300内では十分に乾燥せず、溶剤を多く含んだまま通風乾燥手段である加熱機40を通過し、その結果、激しいムラが発生する。それに対処すべく乾燥装置300の長さを長くする必要があり、塗布効率が悪くなる。また1.5m/秒より大きいと塗布面が風によって乱れて塗布膜の厚さが不均一となってムラが生じる。
【0035】
乾燥装置300内の温度は20℃以上120℃以下が好ましい。更に好ましくは25℃以上120℃以下であり、最も好ましくは25℃以上100℃以下である。乾燥装置300内の温度が20℃未満であると、塗布液に含まれる溶剤種によるが、上記整風されている乾燥装置300内では十分に乾燥せず、溶剤を多く含んだまま通風乾燥手段である加熱機40を通過し、その結果、激しいムラが発生する。また120℃より高いと、支持体2
0に含有される添加剤が揮散する問題が発生するため良くない。
以上説明したように、乾燥速度を調節する方法としては、乾燥装置内の風速や温度を調節することが挙げられるが、これらに制限されず種々手法を用いることが可能である。
【0036】
塗布液の塗布方法は、バーコーティング、カーテンコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、マイクログラビアコーティング、スプレーコーティング及びスライドコーティングを挙げることができる。特にマイクログラビアコーティング、グラビアコーティング、バーコーティング、エクストルージョンコーティング、が好ましい。
【0037】
次に、本発明の乾燥方法を適用できる物について説明する。
塗布液が塗布される支持体としては、プラスチックフィルムを用いることが好ましい。プラスチックフィルムを形成するポリマーとしては、セルロースエステル(例、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、代表的には富士写真フイルム社製TAC−TD80U,TD80UFなど)、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエステル(例、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート)、ポリスチレン、ポリオレフィン、ノルボルネン系樹脂(アートン:商品名、JSR社製)、非晶質ポリオレフィン(ゼオネックス:商品名、日本ゼオン社製)、などが挙げられる。このうちトリアセチルセルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、が好ましく、特にトリアセチルセルロースが好ましい。また、ジクロロメタン等のハロゲン化炭化水素を実質的に含まないセルロースアシレートフィルムおよびその製造法については発明協会公開技報(公技番号2001−1745、2001年3月15日発行、以下公開技報2001−1745号と略す)に記載されており、ここに記載されたセルロースアシレートも本発明に好ましく用いることができる。
【0038】
塗布液としては、光学機能層を形成するための光学機能層形成用塗布液を好ましく用いることができる。そして、該光学機能層形成用塗布液は、防眩性ハードコート層形成用塗布液、光拡散性ハードコート層形成用塗布液、又は低屈折率層形成用塗布液であるのが好ましい。すなわち、特にディスプレイ装置に用いられる反射防止フィルムはディスプレイの最表面に配置されるため、ムラなどの面状に関して特に高い品質が要求される。反射防止フィルムは、最表面に適切な膜厚の低屈折率層、必要に応じて支持体との間に防眩性ハードコート層や光拡散性ハードコート層などを形成して作製される。本発明の乾燥方法で、支持体に塗布された低屈折率層形成用塗布液や防眩性ハードコート層形成用塗布液や光拡散層形成用塗布液を乾燥させて、ムラのない反射防止フィルムを作製することができる。
以下に、防眩性ハードコート層形成用塗布液、光拡散性ハードコート層形成用塗布液、又は低屈折率層形成用塗布液について説明する。
【0039】
(低屈折率層形成用塗布液)
低屈折率層形成用塗布液は、以下に説明する低屈折率層を形成するための塗布液である。なお、溶剤については上述したので、以下の説明においては溶剤についての説明を省略する。
低屈折率層は含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分とする共重合体の硬化皮膜によって形成されるのが好ましい。該共重合体由来の成分は皮膜固形分の60質量%以上を占めることが好ましく、70質量%以上を占めることがより好ましく、80質量%以上を占めることが特に好ましい。低屈折率化と皮膜硬度の両立の観点から多官能(メタ)アクリレート等の硬化剤も相溶性を損なわない範囲の添加量で好ましく用いられる。
【0040】
低屈折率層の屈折率は、1.20〜1.46であることが好ましく、1.25〜1.4
6であることがより好ましく、1.30〜1.46であることが特に好ましい。
低屈折率層の厚さは、50〜200nmであることが好ましく、70〜100nmであることがさらに好ましい。低屈折率層のヘイズは、3%以下であることが好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることが最も好ましい。具体的な低屈折率層の強度は、500g荷重の鉛筆硬度試験でH以上であることが好ましく、2H以上であることがさらに好ましく、3H以上であることが最も好ましい。
また、光学フィルムの防汚性能を改良するために、表面の水に対する接触角が90゜以上であることが好ましい。更に好ましくは95゜以上であり、特に好ましくは100゜以上である。
【0041】
以下に低屈性率層に好ましく用いられる共重合体について説明する。
含フッ素ビニルモノマーとしてはフルオロオレフィン類(例えばフルオロエチレン、ビニリデンフルオライド、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン等)、(メタ)アクリル酸の部分または完全フッ素化アルキルエステル誘導体類(例えばビスコート6FM(商品名、大阪有機化学製)やR−2020(商品名、ダイキン製)等)、完全または部分フッ素化ビニルエーテル類等が挙げられるが、好ましくはパーフルオロオレフィン類であり、屈折率、溶解性、透明性、入手性等の観点から特に好ましくはヘキサフルオロプロピレンである。これらの含フッ素ビニルモノマーの組成比を上げれば屈折率を下げることができるが、皮膜強度は低下する。本発明では共重合体のフッ素含率が20〜60質量%となるように含フッ素ビニルモノマーを導入することが好ましく、より好ましくは25〜55質量%の場合であり、特に好ましくは30〜50質量%の場合である。
【0042】
共重合体は側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位を必須の構成成分として有するのが好ましい。これらの(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位の組成比を高めれば皮膜強度は向上するが屈折率も高くなる。含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位の種類によっても異なるが、一般に(メタ)アクリロイル基含有繰返し単位は5〜90質量%を占めることが好ましく、30〜70質量%を占めることがより好ましく、40〜60質量%を占めることが特に好ましい。
上記含フッ素ビニルモノマーから導かれる繰返し単位および側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する繰返し単位以外に、基材への密着性、ポリマーのTg(皮膜硬度に寄与する)、溶剤への溶解性、透明性、滑り性、防塵・防汚性等種々の観点から適宜他のビニルモノマーを共重合することもできる。これらのビニルモノマーは目的に応じて複数を組み合わせてもよく、合計で共重合体中の0〜65モル%の範囲で導入されていることが好ましく、0〜40モル%の範囲であることがより好ましく、0〜30モル%の範囲であることが特に好ましい。
【0043】
併用可能なビニルモノマー単位には特に限定はなく、例えばオレフィン類(エチレン、プロピレン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン等)、アクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸2‐ヒドロキシエチル)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル等)、スチレン誘導体(スチレン、p−ヒドロキシメチルスチレン、p−メトキシスチレン等)、ビニルエーテル類(メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル等)、ビニルエステル類(酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、桂皮酸ビニル等)、不飽和カルボン酸類(アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸等)、アクリルアミド類(N、N−ジメチルアクリルアミド、N−tert−ブチルアクリルアミド、N−シクロヘキシルアクリルアミド等)、メタクリルアミド類(N、N−ジメチルメタクリルアミド)、アクリロニトリル等を挙げることができる。
上記共重合体の上記塗布液中の配合割合は、塗布液全体に対して1〜20質量%とする
のが好ましく、3〜10質量%とするのが更に好ましい。
【0044】
本発明において、反射防止膜の低屈折率層に好ましく用いることのできる無機微粒子について説明する。
無機微粒子の塗設量は、1mg/m〜100mg/mが好ましく、より好ましくは5mg/m〜80mg/m、更に好ましくは10mg/m〜60mg/mである。少なすぎると、耐擦傷性の改良効果が減る場合があり、また多すぎると、低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりなどの外観や積分反射率が悪化する場合がある。該無機微粒子は、低屈折率層に含有させることから、低屈折率であることが望ましい。
具体的には、シリル化処理で分散性の改良処理がなされている無機酸化物粒子または中空無機酸化物粒子であって、低屈折率のものが好ましく用いられる。例えば、シリカまたは中空シリカの微粒子が挙げられる。シリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層の厚みの30%以上150%以下が好ましく、より好ましくは35%以上80%以下、更に好ましくは40%以上60%以下である。即ち、低屈折率層の厚みが100nmであれば、シリカ微粒子の粒径は30nm以上150nm以下が好ましく、より好ましくは35nm以上80nm以下、更に好ましくは、40nm以上60nm以下である。
【0045】
シリカ微粒子の粒径が小さすぎると、耐擦傷性の改良効果が少なくなる場合があり、大きすぎると低屈折率層表面に微細な凹凸ができ、黒の締まりといった外観、積分反射率が悪化する場合がある。シリカ微粒子は、結晶質でも、アモルファスのいずれでも良く、また単分散粒子でも、所定の粒径を満たすならば凝集粒子でも構わない。形状は、球径が最も好ましいが、不定形であっても問題無い。
低屈折率層の屈折率を低下させるために、中空のシリカ微粒子を用いることが好ましい。該中空シリカ微粒子は屈折率が1.17〜1.40、より好ましくは1.17〜1.35、さらに好ましくは1.17〜1.30である。ここでの屈折率は粒子全体としての屈折率を表し、中空シリカ粒子を形成している外殻のシリカのみの屈折率を表すものではない。この時、粒子内の空腔の半径をa、粒子外殻の半径をbとすると、空隙率xは下記数式(I)で算出される。
【0046】
(数式 I) x=(4πa/3)/(4πb/3)×100
空隙率xは、好ましくは10〜60%、さらに好ましくは20〜60%、最も好ましくは30〜60%である。中空のシリカ粒子をより低屈折率に、より空隙率を大きくしようとすると、外殻の厚みが薄くなり、粒子の強度としては弱くなるため、耐擦傷性の観点から1.17未満の低屈折率の粒子は成り立たない。
なお、これら中空シリカ粒子の屈折率はアッベ屈折率計(アタゴ(株)製)にて測定をおこなった。
また、中空粒子を低屈折率層に含有させることで該層の屈折率を低下させることができる。中空粒子を用いた場合に好ましい該層の屈折率は1.20以上1.46以下であり、更に好ましくは1.25以上1.41以下であり、最も好ましくは1.30以上1.39以下である。
また、平均粒径が低屈折率層の厚みの25%未満であるシリカ微粒子(「小サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)の少なくとも1種を上記の粒径のシリカ微粒子(「大サイズ粒径のシリカ微粒子」と称す)と併用することが好ましい。小サイズ粒径のシリカ微粒子は、大サイズ粒径のシリカ微粒子同士の隙間に存在することができるため、大サイズ粒径のシリカ微粒子の保持剤として寄与することができる。
小サイズ粒径のシリカ微粒子の平均粒径は、低屈折率層が100nmの場合、1nm以上20nm以下が好ましく、5nm以上15nm以下が更に好ましく、10nm以上15nm以下が特に好ましい。このようなシリカ微粒子を用いると、原料コストおよび保持剤効果の点で好ましい。
上記無機微粒子の上記塗布液中の配合割合は、塗布液全体に対して0.1〜10.0質
量%とするのが好ましく、1.0〜5.0質量%とするのが更に好ましい。
【0047】
本発明においては、防汚性向上の観点から、反射防止膜表面の表面自由エネルギーを下げることが好ましい。具体的には、含フッ素化合物やポリシロキサン構造を有する化合物を低屈折率層に使用することが好ましい。ポリシロキサン構造を有する添加剤としては、反応性基含有ポリシロキサン(例えばKF−100T,X−22−169AS,KF−102,X−22−3701IE,X−22−164B,X−22−5002,X−22−173B,X−22−174D,X−22−167B,X−22−161AS(以上商品名、信越化学工業社製)、AK−5,AK−30,AK−32(以上商品名、東亜合成社製)、サイラプレーンFM0725,サイラプレーンFM0721(以上商品名、チッソ社製)等)を添加するのも好ましい。また、特開2003−112383号公報の表2、表3に記載のシリコーン系化合物も好ましく使用できる。これらのポリシロキサンは低屈折率層全固形分の0.1〜10質量%の範囲で添加されることが好ましく、特に好ましくは1〜5質量%の場合である。
【0048】
(防眩性ハードコート層形成用塗布液、光拡散性ハードコート層形成用塗布液)
防眩性ハードコート層形成用塗布液及び光拡散性ハードコート層形成用塗布液は、それぞれ防眩性を有するハードコート層か又は光拡散性を有するハードコート層を形成するための塗布液である。両者は、防眩性を有する化合物と光拡散性を有する化合物とのいずれを有するかの点で異なるがそれ以外の点については同じであるので、以下の説明においては、まず共通する点について説明した後、防眩性を有する化合物と光拡散性を有する化合物とについて説明する。なお、溶剤については上述したので、以下の説明においては溶剤についての説明を省略する。
ハードコート層はバインダー、防眩機能や光拡散機能を付与するためのマット粒子、および高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機微粒子から構成することができる。すなわち、マット粒子としていずれを用いるかによって防眩性ハードコート層形成用塗布液と光拡散性ハードコート層形成用塗布液とのいずれかを選択的に調製できる。
【0049】
バインダー成分として、エチレン性不飽和基を有する化合物を用いることが、皮膜強度、塗布液の安定性、塗膜の生産性、などの点で好ましい。主たる皮膜形成バインダーとは、無機微粒子を除く皮膜形成成分のうち10質量%以上を占めるものをいう。好ましくは、20質量%以上100質量%以下、更に好ましくは30質量%以上95%以下である。
飽和炭化水素鎖またはポリエーテル鎖を主鎖として有するポリマーであることが好ましく、飽和炭化水素鎖を主鎖として有するポリマーであることがさらに好ましい。飽和炭化水素鎖を主鎖として有し、かつ架橋構造を有するバインダーポリマーとしては、二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの(共)重合体が好ましい。
【0050】
高屈折率にするには、このモノマーの構造中に芳香族環や、フッ素以外のハロゲン原子、硫黄原子、リン原子、及び窒素原子から選ばれた少なくとも1種の原子を含むことが好ましい。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーとしては、多価アルコールと(メタ)アクリル酸とのエステル(例、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート)、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,2,3−シクロヘキサンテトラメタクリレート、ポリウレタンポリアクリレート、ポリエステルポリアクリレート)、ビニルベンゼンおよびその誘導体(例、1,4−ジビニルベンゼン、4−ビニル安息香酸−2−アクリロイルエチルエステル、
1,4−ジビニルシクロヘキサノン)、ビニルスルホン(例、ジビニルスルホン)、アクリルアミド(例、メチレンビスアクリルアミド)およびメタクリルアミドが挙げられる。上記モノマーは2種以上併用してもよい。尚、本明細書においては、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を表す。
【0051】
高屈折率モノマーの具体例としては、ビス(4−メタクリロイルチオフェニル)スルフィド、ビニルナフタレン、ビニルフェニルスルフィド、4−メタクリロキシフェニル−4’−メトキシフェニルチオエーテル等が挙げられる。これらのモノマーも2種以上併用してもよい。
【0052】
これらのエチレン性不飽和基を有するモノマーの重合は、光ラジカル開始剤あるいは熱ラジカル開始剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行うことができる。
光ラジカル重合開始剤としては、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物類、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、フルオロアミン化合物類や芳香族スルホニウム類が挙げられる。アセトフェノン類の例には、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、1−ヒドロキシジメチルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−4−メチルチオ−2−モルフォリノプロピオフェノンおよび2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノンが含まれる。ベンゾイン類の例には、ベンゾインベンゼンスルホン酸エステル、ベンゾイントルエンスルホン酸エステル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテルおよびベンゾインイソプロピルエーテルが含まれる。ベンゾフェノン類の例には、ベンゾフェノン、2,4−ジクロロベンゾフェノン、4,4−ジクロロベンゾフェノンおよびp−クロロベンゾフェノンが含まれる。ホスフィンオキシド類の例には、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシドが含まれる。
最新UV硬化技術(P.159,発行人;高薄一弘,発行所;(株)技術情報協会,1991年発行)にも種々の例が記載されており本発明に有用である。
市販の光開裂型の光ラジカル重合開始剤としては、日本チバガイギー(株)製のイルガキュア(651,184,907)等が好ましい例として挙げられる。
光重合開始剤は、多官能モノマー100質量部に対して、0.1〜15質量部の範囲で使用することが好ましく、より好ましくは1〜10質量部の範囲である。
【0053】
光重合開始剤に加えて、光増感剤を用いてもよい。光増感剤の具体例として、n−ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−ブチルホスフィン、ミヒラーのケトンおよびチオキサントンを挙げることができる。
熱ラジカル開始剤としては、有機あるいは無機過酸化物、有機アゾ及びジアゾ化合物等を用いることができる。
具体的には、有機過酸化物として過酸化ベンゾイル、過酸化ハロゲンベンゾイル、過酸化ラウロイル、過酸化アセチル、過酸化ジブチル、クメンヒドロぺルオキシド、ブチルヒドロぺルオキシド、無機過酸化物として、過酸化水素、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等、アゾ化合物として2−アゾ−ビス−イソブチロニトリル、2−アゾ−ビス−プロピオニトリル、2−アゾ−ビス−シクロヘキサンジニトリル等、ジアゾ化合物としてジアゾアミノベンゼン、p−ニトロベンゼンジアゾニウム等を挙げることができる。
【0054】
本発明においてはポリエーテルを主鎖として有するポリマーを使用することもできる。多官能エポシキシ化合物の開環重合体が好ましい。多官能エポシキ化合物の開環重合は、光酸発生剤あるいは熱酸発生剤の存在下、電離放射線の照射または加熱により行なうことができる。
二個以上のエチレン性不飽和基を有するモノマーの代わりにまたはそれに加えて、架橋
性官能基を有するモノマーを用いてポリマー中に架橋性官能基を導入し、この架橋性官能基の反応により、架橋構造をバインダーポリマーに導入してもよい。
架橋性官能基の例には、イソシアナート基、エポキシ基、アジリジン基、オキサゾリン基、アルデヒド基、カルボニル基、ヒドラジン基、カルボキシル基、メチロール基および活性メチレン基が含まれる。ビニルスルホン酸、酸無水物、シアノアクリレート誘導体、メラミン、エーテル化メチロール、エステルおよびウレタン、テトラメトキシシランのような金属アルコキシドも、架橋構造を導入するためのモノマーとして利用できる。ブロックイソシアナート基のように、分解反応の結果として架橋性を示す官能基を用いてもよい。すなわち、架橋性官能基は、すぐには反応を示すものではなくとも、分解した結果反応性を示すものであってもよい。
これら架橋性官能基を有するバインダーポリマーは塗布後、加熱することによって架橋構造を形成することができる。
上記バインダーの配合割合は、ハードコート層形成用塗布液の全固形分中20〜70質量%とするのが好ましく、35〜55質量%とするのが更に好ましい。
【0055】
ハードコート層には、防眩性や光拡散性付与の目的で、各種のマット粒子、微粒子を含有させることができる。マット粒子は、防眩性、防眩性と光拡散性付与の目的で用いられる粒子で、平均粒径が0.1〜10μm、好ましくは0.5〜5μmの粒子が用いられる。マット粒子としては、上記粒子径の無機化合物の粒子または樹脂粒子を用いることができる。マット粒子とバインダー間の屈折率差は、マット粒子による光拡散効果をどの程度見込むかにより異なるが、一般には0.5以下、好ましくは0.2以下である。大きすぎるとフィルムが白濁する欠点が生じる。マット粒子のバインダーに対する添加量も屈折率差同様、大きすぎるとフィルムが白濁する欠点が生じ、3〜30質量パーセントであることが好ましく、5〜20質量パーセントであることが特に好ましい。
マット粒子を防眩機能のみを付与するために用い、マット粒子による光拡散効果をできるだけ小さくする場合は、マット粒子とバインダー間の屈折率差はできるだけ小さくすることが望ましく、屈折率差が0.04以下が好ましく、0.02以下が特に好ましい。
マット粒子を防眩性と光拡散性付与の目的で用いる場合のマット粒子とバインダー間の屈折率差は、0.5以下が好ましく、0.01〜0.2がより好ましく、0.02〜0.10が更に好ましい。
上記マット粒子の具体例としては、例えばシリカ粒子、TiO粒子等の無機化合物の粒子;アクリル粒子、架橋アクリル粒子、ポリスチレン粒子、架橋スチレン粒子、メラミン樹脂粒子、ベンゾグアナミン樹脂粒子等の樹脂粒子が好ましく挙げられる。なかでも架橋スチレン粒子、架橋アクリル粒子、シリカ粒子が好ましい。
マット粒子の形状は、真球あるいは不定形のいずれも使用できる。
【0056】
ハードコート層には異なる2種以上のマット粒子を併用して用いてもよい。2種類以上のマット粒子を用いる場合には両者の混合による屈折率制御を効果的に発揮するために屈折率の差が0.02以上、0.10以下であることが好ましく、0.03以上、0.07以下であることが特に好ましい。またより大きな粒子径のマット粒子で防眩性を付与し、より小さな粒子径のマット粒子で別の光学特性を付与することが可能である。例えば、133ppi以上の高精細ディスプレイに光学フィルムを貼り付けた場合に、ギラツキと呼ばれる光学性能上の不具合のないことが要求される。ギラツキは、フィルム表面に存在する凹凸(防眩性に寄与)により、画素が拡大もしくは縮小され、輝度の均一性を失うことに由来するが、防眩性を付与するマット粒子より小さな粒子径で、バインダーの屈折率と異なるマット粒子または後述の微粒子を併用し光散乱を大きくすることにより大きく改善することができる。
さらに、上記マット粒子の粒子径分布としては単分散であることが最も好ましく、各粒子の粒子径は、それぞれ同一に近ければ近いほど良い。例えば平均粒子径よりも20%以上粒子径が大きな粒子を粗大粒子と規定した場合には、この粗大粒子の割合は全粒子数の
1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.1%以下であり、さらに好ましくは0.01%以下である。このような粒子径分布を持つマット粒子は通常の合成反応後に、分級によって得られ、分級の回数を上げることやその程度を強くすることにより、より好ましい分布のマット剤を得ることができる。
上記マット粒子は、形成されたハードコート層中のマット粒子量が好ましくは10〜1000mg/m、より好ましくは100〜700mg/mとなるようにハードコート層形成用塗布液に含有される。
マット粒子の粒度分布はコールターカウンター法により測定し、測定された分布を粒子数分布に換算する。
【0057】
ハードコート層には、層の屈折率を高めるため、および硬化収縮を低減するために、上記のマット粒子に加えて、チタン、ジルコニウム、アルミニウム、インジウム、亜鉛、錫、アンチモンのうちより選ばれる少なくとも1種の金属の酸化物からなり、平均粒径が0.2μm以下、好ましくは0.1μm以下、より好ましくは0.06μm以下である無機微粒子が含有されることが好ましい。
また、マット粒子との屈折率差を大きくするために、高屈折率マット粒子を用いたハードコート層では層の屈折率を低目に保つためにケイ素の酸化物を用いることも好ましい。好ましい粒径は前述の無機微粒子と同じである。
ハードコート層に用いられる無機微粒子の具体例としては、TiO、ZrO、Al、In、ZnO、SnO、Sb、ITOとSiO等が挙げられる。なかでもTiOおよびZrOが高屈折率化の点で特に好ましい。該無機微粒子は表面をシリル化剤で処理されることも好ましく、フィラー表面にバインダー種と反応できる官能基を有する表面処理剤が好ましく用いられる。
これらの無機微粒子の添加量は、ハードコート層の全質量の10〜90質量%であることが好ましく、より好ましくは20〜80質量%であり、特に好ましくは30〜70質量%である。
なお、このようなフィラーは、粒径が光の波長よりも十分小さいために散乱が生じず、バインダーポリマーに該フィラーが分散した分散体は光学的に均一な物質として振舞う。
【0058】
ハードコート層のバインダーおよび無機微粒子の混合物のバルクの屈折率は、1.48〜2.00であることが好ましく、より好ましくは1.50〜1.80である。屈折率を上記範囲とするには、バインダー及び無機微粒子の種類及び量割合を適宜選択すればよい。どのように選択するかは、予め実験的に容易に知ることができる。
【0059】
上述のようにして本発明の乾燥方法により製造されるフィルムとしては、光学フィルム等が挙げられるが、本発明はこれに制限されるものではなく本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々用途のフィルムに適用される。
次に、本発明の光学フィルムについて説明する。
本発明の光学フィルムは、上述の本発明の乾燥方法で形成された層を有する光学フィルムである。そして、本発明の光学フィルムとしては、反射防止性能を付与してなる反射防止フィルムが好ましく挙げられる。
本発明の光学フィルムは、上記支持体上に上記低屈折率層、上記防眩性ハードコート層、又は上記光拡散性ハードコート層を形成されてなる。
上記支持体の厚みは、35〜200μmであるのが好ましく、55〜100μmであるのが更に好ましい。上記低屈折率層の厚みは、0.02〜0.30μmであるのが好ましく、0.07〜0.15μmであるのが更に好ましい。上記防眩性ハードコート層の厚みは、0.5〜15.0μmであるのが好ましく、2.0〜8.0μmであるのが更に好ましい。上記光拡散性ハードコート層の厚みは、0.5〜15.0μmであるのが好ましく、2.0〜8.0μmであるのが更に好ましい。
【0060】
このようにして形成された本発明の光学フィルムは、ヘイズ値が好ましくは3〜70%、更に好ましくは4〜60%の範囲にあり、そして450nmから650nmの平均反射率が好ましくは3.0%以下、更に好ましくは2.5%以下である。
本発明の光学フィルムが上記範囲のヘイズ値及び平均反射率であることにより、透過画像の劣化を伴なわずに良好な防眩性および反射防止性が得られる。
【0061】
本発明の光学フィルムを液晶表示装置に用いる場合、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置する。該透明支持体がトリアセチルセルロースの場合は偏光板の偏光層を保護する保護フィルムとしてトリアセチルセルロースが用いられるため、本発明の光学フィルムをそのまま保護フィルムに用いることがコストの上では好ましい。
本発明の光学フィルムは、片面に粘着層を設ける等してディスプレイの最表面に配置したり、そのまま偏光板用保護フィルムとして使用される場合には、十分に接着させるためには透明支持体上に含フッ素ポリマーを主体とする最外層を形成した後、鹸化処理を実施することが好ましい。鹸化処理は、公知の手法、例えば、アルカリ液の中に該フィルムを適切な時間浸漬して実施される。アルカリ液に浸漬した後は、該フィルムの中にアルカリ成分が残留しないように、水で十分に水洗したり、希薄な酸に浸漬してアルカリ成分を中和することが好ましい。
鹸化処理することにより、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面が親水化される。
親水化された表面は、ポリビニルアルコールを主成分とする偏向膜との接着性を改良するのに特に有効である。また、親水化された表面は、空気中の塵埃が付着しにくくなるため、偏向膜と接着させる際に偏向膜と光学フィルムの間に塵埃が入りにくく、塵埃による点欠陥を防止するのに有効である。
鹸化処理は、最外層を有する側とは反対側の透明支持体の表面の水に対する接触角が40゜以下になるように実施することが好ましい。更に好ましくは30゜以下、特に好ましくは20゜以下である。
【0062】
アルカリ鹸化処理の具体的手段としては、以下の(1)及び(2)の2つの手段から選択することができる。汎用のトリアセチルセルロースフィルムと同一の工程で処理できる点で(1)が優れているが、反射防止膜面まで鹸化処理されるため、表面がアルカリ加水分解されて膜が劣化する点、鹸化処理液が残ると汚れになる点が問題になり得る。その場合には、特別な工程となるが、(2)が優れる。
(1)透明支持体上に反射防止層を形成後に、アルカリ液中に少なくとも1回浸漬することで、該フィルムの裏面を鹸化処理する。
(2)透明支持体上に反射防止層を形成する前または後に、アルカリ液を該光学フィルムの光学フィルムを形成する面とは反対側の面に塗布し、加熱、水洗および/または中和することで、該フィルムの裏面だけを鹸化処理する。
本発明の反射防止フィルムは、偏光膜を両面から挟む2枚の保護フィルムのうち少なくとも1枚に用いることが好ましい。本発明の光学フィルムが保護フィルムを兼ねることで、偏光板の製造コストを低減できる。また、本発明の光学フィルムを最表層に使用することにより、外光の映り込み等が防止され、耐傷性、防汚性等も優れた偏光板とすることができる。
【0063】
偏光膜としては公知の偏光膜や、偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜から切り出された偏光膜を用いてもよい。偏光膜の吸収軸が長手方向に平行でも垂直でもない長尺の偏光膜は以下の方法により作成される。
即ち、連続的に供給されるポリマーフィルムの両端を保持手段により保持しつつ張力を付与して延伸した偏光膜で、少なくともフィルム幅方向に1.1〜20.0倍に延伸し、フィルム両端の保持装置の長手方向進行速度差が3%以内であり、フィルム両端を保持する工程の出口におけるフィルムの進行方向と、フィルムの実質延伸方向のなす角が、20
〜70゜傾斜するようにフィルム進行方向を、フィルム両端を保持させた状態で屈曲させてなる延伸方法によって製造することができる。特に45°傾斜させたものが生産性の観点から好ましく用いられる。
ポリマーフィルムの延伸方法については、特開2002−86554号公報の段落0020〜0030に詳しい記載がある。
【0064】
本発明の光学フィルムは、偏光膜の表面保護フィルムの片側として用いた場合、ツイステットネマチック(TN)、スーパーツイステットネマチック(STN)、バーティカルアライメント(VA)、インプレインスイッチング(IPS)、オプティカリーコンペンセイテットベンドセル(OCB)等のモードの透過型、反射型、または半透過型の液晶表示装置に好ましく用いることができる。
VAモードの液晶セルには、(1)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直に配向させ、電圧印加時に実質的に水平に配向させる狭義のVAモードの液晶セル(特開平2−176625号公報記載)に加えて、(2)視野角拡大のため、VAモードをマルチドメイン化した(MVAモードの)液晶セル(SID97、Digest of tech. Papers(予稿集)28(1997)845記載)、(3)棒状液晶性分子を電圧無印加時に実質的に垂直配向させ、電圧印加時にねじれマルチドメイン配向させるモード(n−ASMモード)の液晶セル(日本液晶討論会の予稿集58〜59(1998)記載)および(4)SURVAIVALモードの液晶セル(LCDインターナショナル98で発表)が含まれる。
【0065】
VAモードの液晶セル用には、2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムを本発明の光学フィルムと組み合わせて作成した偏光板が好ましく用いられる。2軸延伸したトリアセチルセルロースフィルムの作製方法については、例えば特開2001−249223号公報、特開2003−170492号公報などに記載の方法を用いることが好ましい。
OCBモードの液晶セルは、棒状液晶性分子を液晶セルの上部と下部とで実質的に逆の方向に(対称的に)配向させるベンド配向モードの液晶セルを用いた液晶表示装置であり、米国特許4583825号、同5410422号の各明細書に開示されている。棒状液晶性分子が液晶セルの上部と下部とで対称的に配向しているため、ベンド配向モードの液晶セルは、自己光学補償機能を有する。そのため、この液晶モードは、OCB(Optically Compensatory Bend)液晶モードとも呼ばれる。ベンド配向モードの液晶表示装置は、応答速度が速いとの利点がある。
ECBモードの液晶セルでは、電圧無印加時に棒状液晶性分子が実質的に水平配向しており、カラーTFT液晶表示装置として最も多く利用されており、多数の文献に記載がある。例えば「EL、PDP、LCDディスプレイ」東レリサーチセンター発行(2001)などに記載されている。
特にTNモードやIPSモードの液晶表示装置に対しては、特開2001−100043号公報等に記載されているように、視野角拡大効果を有する光学補償フィルムを偏光膜の裏表2枚の保護フィルムの内の本発明の光学フィルムとは反対側の面に用いることにより、1枚の偏光板の厚みで反射防止効果と視野角拡大効果を有する偏光板を得ることができ、特に好ましい。
【実施例】
【0066】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。
実験A〜Jに示す実施例及び比較例はそれぞれ、図1に示したモデル装置を用いて行った。しかしながら、本発明の所望の効果は以下に説明する装置に限らず他の装置によっても得られる。
具体的には、以下の実施例及び比較例では、送り出し機70から支持体20が送り出され、搬送ローラ80によって支持されながら、除塵機90により支持体20の表面に付着
した塵が取り除かれる。そして、塗布装置10により塗布液が塗布された後に、乾燥装置300で乾燥がなされる。その後、支持体20は加熱機40を通り、さらに、紫外線ランプ50を支持体20の表面に形成された塗布膜に照射して、塗布膜を硬化する。塗布膜が硬化されて所望の層が形成された支持体20は、巻き取り機60により巻き取られる。
乾燥装置300に関して更に詳細に説明する。塗布装置10で直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて塗布液を塗布した後、塗布装置10の直後より設けられた乾燥装置300によって初期の乾燥操作が行なわれる。乾燥装置300内には直径10mmの搬送ローラが9本(搬送ローラ30、31、32、33、34、35、36、37,38)が設置されている。隣りあった各々のローラ間の距離は1mであり、塗布装置10のマイクログラビアロールから搬送ローラ30までの距離は1mである。また個々の搬送ローラは脱着が可能である。
【0067】
乾燥装置300は支持体を通す通路室301と揮発した溶剤を排気する排気室302とを備えており、整風板303は通路室301と排気室302を仕切るように設けられている。排気室302には、排気パイプと吸気パイプとが取り付けられ、その吸気パイプにより排気室302内に空気が送られる。また、吸気パイプと排気パイプとは、支持体20の幅方向にそれぞれ反対側に取り付けられている。整風板303は300メッシュで開口率30%の金網を用い、支持体20に形成された塗布膜の塗膜面とのクリアランスが10mmになるように整風板303が取り付けられている。後述の実験における通路室301の風速は吸気パイプからの吸気量を変えて調整される。乾燥装置300内の雰囲気温度は後述する実験において適宜変更した。また通路室内を走行する支持体の搬送速度においても後述する実験において適宜変更した。
【0068】
モデル装置を用いて実験A〜Jを行った。各実験における塗布液、搬送速度、乾燥風速、乾燥温度、乾燥過程で溶剤含有量が45質量%から20質量%に濃縮されるときの乾燥速度を表1に示す。
【0069】
【表1】

【0070】
乾燥過程で溶剤含有量が45質量%から20質量%に濃縮されるときの乾燥速度の測定について以下に説明する。溶剤含有量は、塗布してから特定時間の乾燥後の質量減量測定
で測定することができるが、搬送されている支持体上の塗布液の溶剤含有量を直接測定することは難しい。そのため別途オフライン塗布実験で溶剤含有量を見積もった。オフライン塗布実験はまず18cm×40cmの大きさに支持体を切り出し、恒温プレート上でその支持体を一定温度にする。その後、塗布液を垂らしてワイヤーバーで塗布液を引き伸ばして、所定時間乾燥後の質量減少分を計量する。以下の式(1)を用いて搬送ローラの地点での溶剤含有量を計算した。
搬送ローラ地点の溶剤含有量(質量%)=100−A×(B−C)/(D−C)・・式(1)
A:塗布液の固形分(質量%)
B:塗布液を塗布した直後の支持体の重さ(g)
C:塗布する前の支持体の重さ(g)
D:塗布して乾燥時間T後の支持体の重さ(g)
【0071】
総塗布量は塗布液が防眩性ハードコート層形成用塗布液Aの場合、支持体1m当たり19.9gで、塗布液が光拡散性ハードコート層形成用塗布液Bの場合、支持体1m当たり11.8gで、塗布液が低屈折率層形成用塗布液CおよびDでは支持体1m当たり2.3gになるように塗布した。
乾燥時間t(秒)における溶剤含有量をプロットし、溶剤含有量45質量%になる時間t45%と溶剤含有量20質量%になる時間t20%を読み取り、以下の式(2)を用いて溶剤含有量45質量%から20質量%までの乾燥速度を計算した。読み取り精度をあげるため、溶剤含有量の測定は少なくとも乾燥時間を1秒から30秒まで1秒おきに溶剤含有量を測定する。
乾燥速度=(E−F)/(t45%−t20%)・・・式(2)
E:溶剤含有量45質量%の時の溶剤量(g/m
F:溶剤含有量20質量%の時の溶剤量(g/m
EおよびFは、塗布前の塗布液の固形分と塗布量を用いて算出することができる。
【0072】
以下実験A〜Jを詳細に説明し、本発明の効果を示す。
実験A
(実施例1)
透明支持体として80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して直接、後述する防眩性ハードコート層形成用塗布液Aを線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度30m/分の条件で支持体1m当たり19.9gを塗布する。通路室301の風速が0.2m/秒であって、搬送ローラ30から38のうち搬送ローラ32と33を取り外した乾燥装置300内で100℃で16秒乾燥した後、110℃に調整された加熱機40を通過させて、塗布液を更に乾燥させる。その後、窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、防眩性ハードコートフィルムを作製し、巻き取った。防眩性ハードコート層の厚みは6μmであった。オフライン塗布実験で測定した溶剤含有量45質量%から20質量%までの濃縮される乾燥速度は1.47g/m・sであった。
【0073】
(比較例1)
搬送ローラ32と33を取り付けた他は実施例1と同じ条件で実験を実施した。
(比較例2)
搬送ローラ32を取り付けた他は実施例1と同じ条件で実験を実施した。
(比較例3)
搬送ローラ33を取り付けた他は実施例1と同じ条件で実験を実施した。
実験Aで得られたフィルムについて、以下の項目の評価をおこなった。評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表2に示す。
【0074】
【表2】

【0075】
(1)斑点状ムラ評価
巻き取ったハードコートフィルムおよび反射防止フィルムの表面の斑点状ムラを観察した。観察方法は1.34m×1mの大きさに該フィルムを切り出し、塗設されていない側に油性黒インクを塗り、反射光で目視により観察し、斑点状ムラの度合いを以下の基準で判定した。
○ :斑点状ムラが全く発生しなかった。
△ :非常に弱い斑点状ムラが発生しているが製品として問題にならない。
× :斑点状ムラが多数あり製品として使用不可能。
【0076】
(2)ツレシワ
巻き取ったハードコートフィルムおよび反射防止フィルムのツレシワを観察した。観察方法は1.34m×1mの大きさに該フィルムを切り出して、塗設された側を表にして目の高さに吊るし、光をあてて長尺方向に発生するシワを目視で観察した。ツレシワの度合いは以下の基準で判定した。
○ :ツレシワが全く発生しなかった。
△ :非常に弱いツレシワが発生しているが製品として問題にならない。
× :強いツレシワがあり製品として使用不可能。
【0077】
(3)乾燥風ムラ
巻き取ったハードコートフィルムおよび反射防止フィルムの表面の乾燥風ムラを観察した。観察方法は1.34m×1mの大きさに該フィルムを切り出し、塗設されていない側に油性黒インクを塗り、反射光で目視により観察し、乾燥風ムラの度合いを以下の基準で判定した。
○ :乾燥風ムラが全く発生しなかった。
△ :乾燥風ムラが多少発生しているが製品として問題にならない。
× :乾燥風ムラが激しくあり製品として使用不可能。
【0078】
各搬送ローラ地点での溶剤含有量の測定について以下に説明する。塗布液が塗布された支持体20は、下流の乾燥装置300内を非塗布面側の搬送ローラによって支持され搬送される。搬送ローラ30、31、32、33、34、35、36、37、38の各地点での塗布液中の溶剤含有量を質量測定などで直接的に測定することは難しいため、前述したオフライン塗布実験により溶剤含有量を見積もった。塗布部から各搬送ローラまでの距離と搬送速度をもとに、塗布から前記搬送ローラ地点までの乾燥時間Tを以下の式(3)で算出し、オフライン塗布実験で前記乾燥時間T、乾燥した後の質量減少量を測定し、前述した式(1)を用いて溶剤含有量を計算した。
乾燥時間T(秒)=G/H・・・式(3)
G:塗布部から搬送ローラまでの距離(m)
H:搬送速度(m/分)
【0079】
実験B
(実施例2)
透明支持体として80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して直接、後述する防眩性ハードコート層形成用塗布液Aを線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度30m/分の条件で支持体1m当たり19.9gを塗布する。通路室301の風速が1.0m/秒であって、搬送ローラ30から38のうち搬送ローラ31を取り外した乾燥装置300内で100℃で16秒乾燥した後、110℃に調整された加熱機40を通過させて、塗布液を更に乾燥させる。その後、窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、防眩性ハードコートフィルムを作製し、巻き取った。防眩性ハードコート層の厚みは6μmであった。オフライン塗布実験で測定した溶剤含有量45質量%から20質量%までの濃縮される乾燥速度は2.10g/m・sであった。
(比較例4)
搬送ローラ31を取り付けた他は実施例2と同じ条件で実験を実施した。
実験Bで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表3に示す。
【0080】
【表3】

【0081】
実験C
(比較例5)
透明支持体として80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して直接、後述する防眩性ハー
ドコート層形成用塗布液Aを線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度30m/分の条件で支持体1m当たり19.9gを塗布する。通路室301の風速が0.2m/秒であって、搬送ローラ31から38のうち搬送ローラ35から38を取り外した乾燥装置300内で25℃で16秒乾燥した後、110℃に調整された加熱機40を通過させて、塗布液を更に乾燥させる。その後、窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、防眩性ハードコートフィルムを作製し、巻き取った。防眩性ハードコート層の厚みは6μmであった。オフライン塗布実験で測定した溶剤含有量45質量%から20質量%までの濃縮される乾燥速度は0.17g/m・sであった。
実験Cで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表4に示す。
【0082】
【表4】

【0083】
実験D
(実施例3)
透明支持体として80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して直接、後述する防眩性ハードコート層形成用塗布液Aを線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で支持体1m当たり19.9gを塗布する。通路室301の風速が0.2m/秒であって、搬送ローラ31から38のうち、搬送ローラ31を取り外した乾燥装
置300内で100℃で48秒乾燥した後、110℃に調整された加熱機40を通過させて、塗布液を更に乾燥させる。その後、窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、防眩性ハードコートフィルムを作製し、巻き取った。防眩性ハードコート層の厚みは6μmであった。オフライン塗布実験で測定した溶剤含有量45質量%から20質量%までの濃縮される乾燥速度は1.47g/m・sであった。
【0084】
(比較例6)
搬送ローラ31を取り付けた他は実施例3と同じ条件で実験を実施した。
実験Dで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表5に示す。
【0085】
【表5】

【0086】
実験E
(比較例7)
透明支持体として80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して直接、後述する防眩性ハードコート層形成用塗布液Aを線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度10m/分の条件で支持体1m当たり19.9gを塗布する。通路室301の風速が0.2m/秒であって、搬送ローラ31から38のうち、搬送ローラ32から36を取り外し
た乾燥装置300内で25℃で48秒乾燥した後、110℃に調整された加熱機40を通過させて、塗布液を更に乾燥させる。その後、窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、防眩性ハードコートフィルムを作製し、巻き取った。防眩性ハードコート層の厚みは6μmであった。オフライン塗布実験で測定した溶剤含有量45%から20%までの濃縮される乾燥速度は0.17g/m・sであった。
実験Eで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表6に示す。
【0087】
【表6】

【0088】
実験F
(実施例4)
透明支持体として80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)をロール形態で巻き出して直接、後述する光拡散性ハードコート層形成用塗布液Bを線数135本/インチ、深度60μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度20m/分の条件で支持体1m当たり11.8gを塗布する。通路室301の風速が0.2m/秒であって、搬送ローラ31から38のうち、搬送ローラ31を取り外した乾燥装置300内で25℃で24秒乾燥した後、110℃に調整された加熱機40を通過させて、塗布液を更に乾燥させる。その後、窒素パージ下で160W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量250mJ/cmの紫外線を照射して塗布膜を硬化させ、光拡散性ハードコートフィルムを作製し、巻き取った。光拡散性ハードコート層の厚みは3.7μmであった。オフライン塗布実験で測定した溶剤含有量45質量%から20質量%までの濃縮される乾燥速度は0.68g/m・sであった。
(比較例8)
搬送ローラ31を取り付けた他は実施例3と同じ条件で実験を実施した。
実験Fで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表7に示す。
【0089】
【表7】

【0090】
実験G
(実施例5)
実施例1で作製した防眩性ハードコート層を有するトリアセチルセルロースフイルムを再び巻き出して、後述する低屈折率層形成用塗布液Cを線数200本/インチ、深度30μmのグラビアパターンを有する直径50mmのマイクログラビアロールとドクターブレードを用いて、搬送速度25m/分の条件で支持体1m当たり2.3gを塗布する。通路室301の風速が0.2m/秒であって、搬送ローラ31から38のうち搬送ローラ31を取り外した乾燥装置300内で25℃で19秒乾燥した後、115℃に調整された加
熱機40を通過させて、塗布液を更に乾燥させる。その後、窒素パージ下で240W/cmの空冷メタルハライドランプ(アイグラフィックス(株)製)を用いて、照度400mW/cm、照射量240mJ/cmの紫外線を照射し、厚さ100nmの低屈折率層を形成して反射防止フィルムを作製し、巻き取った。オフライン塗布実験で測定した溶剤含有量45質量%から20質量%までの濃縮される乾燥速度は0.25g/m・sであった。
(比較例9)
搬送ローラ31を取り付けた他は実施例4と同じ条件で実験を実施した。
実験Gで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表8に示す。
【0091】
【表8】

【0092】
実験H
(実施例6)
搬送速度を30m/分に変更し、乾燥装置30内での乾燥時間が16秒になった他は実施例5と同じ条件で実験を実施した。
(比較例10)
搬送ローラ31を取り付けた他は実施例6と同じ条件で実験を実施した。
実験Hで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表9に示す。
【0093】
【表9】

【0094】
実験J
(実施例7)
塗布液を後述する低屈折率層形成用塗布液Dに変更し、塗布される支持体を実施例3で作製した光拡散性ハードコートフィルムに変更した他は実施例5と同じ条件で実験を実施した。
実験Jで得られたフィルムについて、評価結果と各搬送ローラ地点での溶剤含有量を表10に示す。
【0095】
【表10】

【0096】
塗布液の調整方法と組成は以下に説明する。
(防眩性ハードコート層形成用塗布液Aの調製)
ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物(PET−30、日本化薬(株)製)50kgをトルエン38.5kgとシクロヘキサノン31.7kgで希釈した。更に、重合開始剤(イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)を2kg添加し、混合攪拌した。さらにこの溶液にポリトロン分散機にて10000rpmで20分間分散した平均粒径3.5μmの架橋ポリ
スチレン粒子(屈折率1.60、SX−350、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を1.5kgおよび平均粒径3.5μmの架橋アクリル−スチレン粒子(屈折率1.55、綜研化学(株)製)の30%トルエン分散液を13.0kg加え、最後に、下記化学式で表されるフッ素系表面改質剤(FP−132)0.75kg、シランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10kg加え、完成液とした。
【0097】
【化1】

【0098】
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して防眩性ハードコート層形成用塗布液Aを調製した。
防眩性ハードコート層形成用塗布液Aの固形分濃度は45質量%(溶剤含有量は55質量%)であった。
【0099】
(光拡散性ハードコート層形成用塗布液Bの調製)
デソライトZ7404(ジルコニア微粒子含有ハードコート組成液:JSR(株)製)100kgにジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの混合物(DPHA、日本化薬(株)製)31kgを混合した。この混合組成物に、予めポリトロン分散機にて5000rpmで3時間分散した粒子径3.0μmの架橋アクリレート粒子(屈折率1.49、MXS−300、綜研化学(株)製)の30%メチルイソブチルケトン分散液を11.3kgと1.5μmのシリカ粒子の30%メチルエチルケトン分散液を29.7kg加え、最後に、メチルエチルケトン20.7kg、メチルイソブチルケトン23.9kgおよびシランカップリング剤(KBM−5103、信越化学工業(株)製)を10kg加え、完成液とした。
上記混合液を孔径30μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して光拡散性ハードコート層形成用塗布液Bを調製した。
光拡散性ハードコート層形成用塗布液Bの固形分濃度は50質量%(溶剤含有量は50質量%)であった。
【0100】
(ゾル液aの調製)
攪拌機、還流冷却器を備えた反応器、メチルエチルケトン120部、アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン(KBM5103(商品名);信越化学工業社製)100部、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート3部を加え混合したのち、イオン交換水30部を加え、60℃で4時間反応させたのち、室温まで冷却し、ゾル液aを得た。質量平均分子量は1800であり、オリゴマー成分以上の成分のうち、分子量が1000〜20000の成分は100%であった。また、ガスクロマトグラフィー分析から、原料のアクリロイルオキシプロピルトリメトキシシランは全く残存していなかった。
【0101】
(低屈折率層形成用塗布液Cの調製)
屈折率1.44の熱架橋性含フッ素ポリマー(JTA113B、固形分濃度6%、主溶剤メチルエチルケトン、JSR(株)製)30kgにメチルエチルケトン6.1kg、シクロヘキサノン1.2kg、45nmシリカ微粒子分散液(MEK−ST−L、固形分濃
度30%、主溶剤メチルエチルケトン、日産化学工業(株)製)3.1kg、ゾル液a1.5kgを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層形成用塗布液を調製した。
低屈折率層形成用塗布液Cの固形分濃度は7.6質量%(溶剤含有量は92.4質量%)であった。
【0102】
(低屈折率層形成用組成物Dの調製)
屈折率1.42の熱架橋性含フッ素ポリマー(JN7228A、固形分濃度6%、主溶剤メチルエチルケトン、JSR(株)製)30kgにメチルエチルケトン2.8kg、シクロヘキサノン1.1kg、45nmシリカ微粒子分散液(MEK−ST−L、固形分濃度30%、主溶剤メチルエチルケトン、日産化学工業(株)製)1.5kg、12nmシリカ微粒子分散液(MEK−ST、固形分濃度30%、主溶剤メチルエチルケトン、日産化学工業(株)製)1.3kg、ゾル液a0.6kgを添加、攪拌の後、孔径1μmのポリプロピレン製フィルターでろ過して、低屈折率層形成用組成物Dを調製した。
低屈折率層形成用塗布液Dの固形分濃度は7.6質量%(溶剤含有量は92.4質量%)であった。
【0103】
表2〜10に示される結果より、以下のことが明らかである。乾燥過程で塗布液中の溶剤が揮発し、濃縮された塗布液の溶剤含有量が20質量%から45質量%の範囲にある搬送ローラを予め取り外しておき、該溶剤含有量の範囲内の時に支持体が搬送ローラと接触しないようにしておくと、斑状ムラが発生しない。
一方、上記の溶剤含有量の範囲のときに搬送ローラ上を支持体が接触して通過する場合、斑状ムラが発生した。支持体と搬送ローラとが接触すると、搬送ローラの極微小(目視では観察できない。)な凹凸により、支持体上の塗布液中に極微小範囲で温度差が生じ、結果、濃度勾配差による液移動のため斑点状の膜厚みムラが発生したと考えられる。
溶剤含有量が45質量%以上であれば、搬送ローラが非塗布面側に接触していても、斑点状ムラは発生しない。多くの溶剤を含むと塗布液はレベリング性を有し、ムラにならないと考えられる。一方溶剤含有量が20質量%以下でも、搬送ローラが非塗布面側に接触して斑点状ムラが発生することはない。残留溶剤が少なくなると塗布液の粘度が増加し、液の移動が起こりにくいと考えられる。
比較例7ように乾燥速度が遅いと、溶剤含有量が20質量%から45質量%の濃度範囲で取り外す搬送ローラの本数が多くなり、非接触で搬送する距離が長くなる。その結果、斑点状ムラは発生しないが、搬送方向にツレシワが発生する。これは支持体が搬送ローラにより巾方向で支持されない状態のまま搬送方向に長い距離を引っ張られるために発生すると考えられる。
【0104】
(実施例8)
1.5mol/L、55℃のNaOH水溶液中に2分間浸漬したあと中和、水洗した、80μmの厚さのトリアセチルセルロースフイルム(TAC−TD80U、富士写真フイルム(株)製)と、実施例5の本発明試料(鹸化処理済み)に、ポリビニルアルコールにヨウ素を吸着させ、延伸して作製した偏光膜の両面を接着、保護して偏光板を作製した。このようにして作製した偏光板を、反射防止膜側が最表面となるように透過型TN液晶表示装置搭載のノートパソコンの液晶表示装置(偏光選択層を有する偏光分離フィルムである住友3M(株)製のD−BEFをバックライトと液晶セルとの間に有する)の視認側の偏光板と貼り代えたところ、背景の映りこみが極めて少なく、表示品位の非常に高い表示装置が得られた。
【0105】
(実施例9)
PVAフィルムをヨウ素2.0g/l、ヨウ化カリウム4.0g/lの水溶液に25℃にて240秒浸漬し、さらにホウ酸10g/lの水溶液に25℃にて60秒浸漬後、特開
2002−86554号公報の図2に示される形態のテンター延伸機に導入し、5.3倍に延伸し、テンターを延伸方向に対し該図2の如く屈曲させ、以降幅を一定に保った。80℃雰囲気で乾燥させた後テンターから離脱した。左右のテンタークリップの搬送速度差は、0.05%未満であり、導入されるフィルムの中心線と次工程に送られるフィルムの中心線のなす角は、46゜であった。ここで|L1−L2|は0.7m、Wは0.7mであり、|L1−L2|=Wの関係にあった。テンター出口における実質延伸方向Ax−Cxは、次工程へ送られるフィルムの中心線22に対し45゜傾斜していた。テンター出口におけるシワ、フィルム変形は観察されなかった。
さらに、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤としてケン化処理した富士写真フイルム(株)製フジタック(セルローストリアセテート、レターデーション値3.0nm)と貼り合わせ、さらに80℃で乾燥して有効幅650mmの偏光板を得た。得られた偏光板の吸収軸方向は、長手方向に対し45゜傾斜していた。この偏光板の550nmにおける透過率は43.7%、偏光度は99.97%であった。さらに310×233mmサイズに裁断したところ、91.5%の面積効率で辺に対し45゜吸収軸が傾斜した偏光板を得た。
次に、実施例5の本発明試料(鹸化処理済み)の各々のフィルムを上記偏光板と貼り合わせて反射防止付き偏光板を作製した。この偏光板を用いて反射防止層を最表層に配置した液晶表示装置を作製したところ、外光の映り込みがないために優れたコントラストが得られ、反射像が目立たず優れた視認性を有していた。
【0106】
(実施例10)
実施例5の本発明試料を貼りつけた透過型TN液晶セルの視認側の偏光板の液晶セル側の保護フィルム、およびバックライト側の偏光板の液晶セル側の保護フィルムとして、光学補償フィルム(ワイドビューフィルムエース、富士写真フイルム(株)製)を用いたところ、明室でのコントラストに優れ、且つ上下左右の視野角が非常に広く、極めて視認性に優れ、表示品位の高い液晶表示装置が得られた。
また、実施例7の本発明試料は、出射角0°に対する30°の散乱光強度が0.06%であり、この光拡散性により、特に下方向の視野角アップ、左右方向の黄色味が改善され、非常に良好な液晶表示装置であった。比較として、該光拡散性ハードコート層形成用塗布液Bから、架橋PMMA粒子、シリカ粒子を除去した以外、全く実施例6と同じく作製したフィルムでは、出射角0°に対する30°の散乱光強度が実質0%であり、下方向視野角アップ、黄色味改善効果は全く得られなかった。
【0107】
(実施例11)
アセチル置換度2.94のセルロースアシレートを用い、光学的異方性低下剤A−19を49.3%(対セルロースアシレート)、波長分散調整剤UV−102を7.6%(対セルロースアシレート)となるようにして、実施例5と同様の製膜法により厚み80μmのセルロースアシレート試料201を作製した。得られたフィルムのレターデーションReは−1.0nm(TD方向に遅相軸のため負とする)、厚み方向のレターデーションRthは−2.0nmといずれも十分に小さい値であった。このセルロースアシレートフィルム試料を偏光子の2枚の保護フィルムのうちセル側の保護フィルムの透明支持体に、本発明の実施例1を偏光子の視認側の保護フィルムとしたところ、特開平10−48420号公報の実施例1に記載の液晶表示装置、特開平9−26572号公報の実施例1に記載のディスコティック液晶分子を含む光学異方性層、ポリビニルアルコールを塗布した配向膜、特開2000−154261号公報の図2〜9に記載のVA型液晶表示装置、特開2000−154261号公報の図10〜15に記載のOCB型液晶表示装置での評価をしたところ、いずれの場合においてもコントラスト視野角が良好な性能が得られた。
A−19
【0108】
【化2】


【0109】
波長分散調整剤UV−102
【0110】
【化3】


【0111】
(実施例12)
実施例5の本発明試料を、有機EL表示装置の表面のガラス板に粘着剤を介して貼り合わせたところ、ガラス表面での反射が抑えられ、視認性の高い表示装置が得られた。
(実施例13)
実施例5の本発明試料を用いて、片面反射防止フィルム付き偏光板を作製し、偏光板の反射防止膜を有している側の反対面にλ/4板を張り合わせ、反射防止膜側が最表面になるように、有機EL表示装置の表面のガラス板に貼り付けたところ、表面反射および、表面ガラスの内部からの反射がカットされ、極めて視認性の高い表示が得られた。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】図1は、本発明の乾燥方法を実施することができる好ましい乾燥装置を具備するフィルムの製造装置の概要を模式的に示す模式図である。
【0113】
10 塗布装置
20 支持体
300 乾燥装置
30、31、32、33、34、35、36、37、38 乾燥装置内の搬送ローラ
301 通路室
302 排気室
303 整風板
40 加熱機
50 紫外線ランプ
60 巻き取り機
70 送り出し機
80 搬送ローラ
90 除塵機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に搬送される支持体上に溶剤を含む塗布液を塗布し、形成された溶剤を含む塗布膜を乾燥する、塗布膜の乾燥方法であって、
該塗布膜の溶剤含有量が20質量%以上45質量%以下の範囲である時の乾燥速度が0.2g/m・s以上であり、且つ該溶剤含有量範囲において該支持体を非接触で搬送することを特徴とする乾燥方法。
【請求項2】
該乾燥速度が0.25g/m・s以上3.00g/m・s以下であることを特徴とする請求項1に記載の乾燥方法。
【請求項3】
該溶剤含有量範囲における乾燥温度が25℃以上120℃以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の乾燥方法。
【請求項4】
該溶剤含有量範囲における乾燥風速が0.1m/秒以上1.5m/秒以下であることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の乾燥方法。
【請求項5】
該溶剤含有量範囲において該支持体を非接触で搬送する距離が3m以下であることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の乾燥方法。
【請求項6】
該溶剤がケトン系、芳香族炭化水素系から選ばれる有機溶剤であることを特徴とする請求項1から5の何れかに記載の乾燥方法。
【請求項7】
該塗布液が光学機能層形成用塗布液であることを特徴とする請求項1から6の何れかに記載の乾燥方法。
【請求項8】
該光学機能層形成用塗布液が防眩性ハードコート層形成用塗布液であることを特徴とする請求項7に記載の乾燥方法。
【請求項9】
該光学機能層形成用塗布液が光拡散性ハードコート層形成用塗布液であることを特徴とする請求項7に記載の乾燥方法。
【請求項10】
該光学機能層形成用塗布液が低屈折率層形成用塗布液であることを特徴とする請求項7に記載の乾燥方法。
【請求項11】
前記請求項1から10のいずれかの乾燥方法で形成された層を有する光学フィルム。
【請求項12】
前記請求項11に記載の光学フィルムに反射防止性能を付与してなる反射防止フィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2006−334561(P2006−334561A)
【公開日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−165736(P2005−165736)
【出願日】平成17年6月6日(2005.6.6)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】