説明

塗布膜の塗布乾燥方法および塗布乾燥装置

【課題】基材表面に塗布された紫外線硬化樹脂を、効率よく硬化、乾燥させ、塗布膜内部の残留溶剤を極力排除できる塗布膜の塗布乾燥方法および塗布乾燥装置を提供すること。
【解決手段】基材5表面に水または溶剤に希釈された紫外線硬化樹脂層4を塗布して形成し、紫外線硬化樹脂層4を硬化、乾燥する硬化乾燥工程とを有する塗布膜の塗布乾燥方法において、前記硬化乾燥工程が紫外線ランプ1から紫外線を、高周波照射装置6から高周波を同時に照射することを特徴とする塗布膜の塗布乾燥方法および塗布乾燥装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗布膜の塗布乾燥方法および塗布乾燥装置に関するものであり、詳しくは、基材表面に塗布された紫外線硬化樹脂を、効率よく硬化、乾燥させ得る塗布膜の塗布乾燥方法および塗布乾燥装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、紫外線硬化樹脂を基材表面に塗布し、乾燥させる方法としては、紫外線照射と乾燥を別々に行う方法が取られている(特許文献1参照)。
【0003】
しかし、この方法では水または沸点の高い溶剤に希釈された紫外線硬化樹脂である場合、乾燥オーブンの長さを長くしなければならない、乾燥オーブンの乾燥温度を非常に高くしなければならないなどの効率の悪い問題がある。
【0004】
また、塗布する紫外線硬化樹脂の塗布膜厚が4μm以上と厚い場合には、表面のみが硬化して内部に乾燥していない溶剤が残り耐性や臭気に問題がある場合もあった。
【特許文献1】特開2001−277467号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、基材表面に、例えばインキ、粘着剤、接着剤等の紫外線硬化樹脂を塗布し、乾燥する方法では、紫外線硬化樹脂が水または沸点の高い溶剤(例えば70℃以上)に希釈されている場合、非常に乾燥効率が悪く、とくに塗布膜厚が4μm以上と厚い場合は、塗布膜内部に溶剤が残るという問題があった。
【0006】
したがって本発明の目的は、基材表面に塗布された紫外線硬化樹脂を、効率よく硬化、乾燥させ、塗布膜内部の残留溶剤を極力排除できる塗布膜の塗布乾燥方法および塗布乾燥装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、
基材表面に水または溶剤に希釈された紫外線硬化樹脂を塗布する塗布工程と、
塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化、乾燥する硬化乾燥工程と
を有する塗布膜の塗布乾燥方法において、
前記硬化乾燥工程が紫外線と高周波を同時に照射する
ことを特徴とする塗布膜の塗布乾燥方法である。
【0008】
請求項2に記載の発明は、
前記硬化乾燥工程において、
塗布膜側より紫外線を照射し、基材側より高周波を照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の塗布膜の塗布乾燥方法である。
【0009】
請求項3に記載の発明は、
前記紫外線硬化樹脂の膜厚が4μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布膜の塗布乾燥方法である。
【0010】
請求項4に記載の発明は、
基材表面に水または溶剤により希釈された紫外線硬化樹脂を塗布する塗布手段と、
塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化、乾燥する硬化乾燥手段と
を有する塗布膜の塗布乾燥装置において、
前記硬化乾燥手段が紫外線照射装置と高周波照射装置からなる
ことを特徴とする塗布膜の塗布乾燥装置である。
【0011】
請求項5に記載の発明は、前記紫外線照射装置が塗布膜側に設置されており、かつ前記高周波照射装置が基材側に設置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の塗布膜の塗布乾燥装置である。
【0012】
請求項6に記載の発明は、前記紫外線照射装置のランプ部が水冷管に覆われていることを特徴とする請求項4または5に記載の塗布膜の塗布乾燥装置である。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の発明によれば、塗布された紫外線硬化樹脂を硬化、乾燥する硬化乾燥工程において、紫外線と高周波を同時に照射しているので、基材表面に塗布された紫外線硬化樹脂を、効率よく硬化、乾燥させ、塗布膜内部の残留溶剤を極力排除できる塗布膜の塗布乾燥方法を提供することができる。また、残留溶剤が排除されていることから、表面の耐性や臭気の低減にも優れる。
【0014】
請求項2に記載の発明によれば、塗布膜側より紫外線を照射し、基材側より高周波を照射しているので、さらなる高効率の硬化、乾燥、残留溶剤の排除が達成される。
【0015】
請求項3に記載の発明によれば、紫外線硬化樹脂の膜厚が4μm以上という厚膜であっても、紫外線硬化樹脂を、効率よく硬化、乾燥させることができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、紫外線硬化樹脂を硬化、乾燥する硬化乾燥手段が、紫外線照射装置と高周波照射装置からなるので、基材表面に塗布された紫外線硬化樹脂を、効率よく硬化、乾燥させ、塗布膜内部の残留溶剤を極力排除できる塗布膜の塗布乾燥装置を提供することができる。
【0017】
請求項5に記載の発明によれば、塗布膜側より紫外線を照射し、基材側より高周波を照射するような装置構成にしているので、さらなる高効率の硬化、乾燥、残留溶剤の排除が達成される。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、紫外線照射装置のランプ部が水冷管に覆われているので、ランプ部に高周波が届かず、ランプ部の破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を図面を参照しながらさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の塗布乾燥装置における、硬化乾燥手段を説明するための概略図である。なお、図1には示していないが、本発明における紫外線硬化樹脂を塗布する塗布手段は、公知の任意の方法を採用することができ、例えば本発明で使用される塗布手段としては、バーコーティング、カーテンコーティング、エクストルージョンコーティング、ロールコーティング、ディップコーティング、スピンコーティング、グラビアコーティング、ダイコーティングなどの装置を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
塗布後の紫外線硬化樹脂層は、4μm以上である場合に、とくに本発明の効果が良好に奏される。
【0020】
本発明で使用される基材は、例えばポリカーボネートまたはポリエチレン、ポリエステル、塩化ビニル、ポリオレフィン等のプラスチックフイルムを用いることができる。さらに、コートボール、マニラボール等のカートン用紙類、壁紙、包装紙等の用紙類も挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0021】
本発明で使用される紫外線硬化樹脂は、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレート、またはポリエーテルアクリレートなどを主成分とする紫外線硬化樹脂を使用することができるが、これらに限定されるものではない。
【0022】
本発明の塗布乾燥装置における硬化乾燥手段は、紫外線照射装置と高周波照射装置とを有し、紫外線と高周波を同時に照射することにより、紫外線硬化樹脂を硬化、乾燥させるものである。
【0023】
図1において、まず、紫外線ランプ1から紫外線を基材5の上にある紫外線硬化樹脂層4に照射する。紫外線は反射ミラー3によって反射され紫外線硬化樹脂層4側に照射されるようになっている。紫外線ランプ1は石英水冷管2により覆われている。高周波は高周波照射装置6から基材側より照射される。高周波はシールド7によって外部にはもれないようになっている。
【0024】
紫外線ランプ1は水銀ランプ、メタルハイライドランプが使用される。照射される波長は200〜400nmである。
【0025】
水冷管2は石英ガラス等の紫外線を透過する素材からなる。中に純水を流し循環させるようになっている。
【0026】
反射ミラー3はアルミニウム、ステンレスからなり紫外線を効果的に反射する。
【0027】
高周波照射装置6から高周波が基材5を透過して上にある紫外線硬化樹脂層4に照射される。高周波は水冷管2により吸収されるため紫外線ランプ1には届かないようになっている。本発明で使用される高周波は、発振周波数2.45GHz帯を用いることができるが、この周波数に限定されるものではない。
【0028】
高周波を遮断するシールド7は各種金属、網入ガラスからなる。またシールドは地面にアースを行う。反射ミラー3もシールド7に接続されアースされている。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例および比較例によりさらに説明するが、本発明は下記例に制限されるものではない。
【0030】
実施例1
300μm厚のコートボールに10μm厚の紫外線硬化樹脂を塗布したサンプルを図1に示したような装置に導入した。
【0031】
紫外線硬化樹脂はポリエステルアクリレートをトルエンにて希釈したものからなり固形分は60%、ベンゾフェノン系の開始剤が加えられている。
【0032】
紫外線照射装置からメタルハイライドランプを使用して紫外線200Wと高周波照射装置から周波数2.45GHzの高周波1000Wを同時に5秒間照射した。
【0033】
サンプルの硬化した樹脂面を鉛筆硬度2Hによる引っかき試験をしたところ傷は入らなかった。
【0034】
サンプルを60℃に加熱して揮発成分をガスクロマトグラフ質量分析装置にて分析したところトルエンは検出されなかった。
【0035】
実施例2
300μm厚のコートボールに7μm厚の紫外線硬化インキを塗布したサンプルを図1に示したような装置に導入した。
【0036】
紫外線硬化インキはエポキシアクリレートとカーボンブラック顔料からなり固形分は70%、ベンゾフェノン系の開始剤が加えられている。希釈溶剤はエタノールと水を7対3で混合させたものである。
【0037】
紫外線照射装置からメタルハイライドランプを使用して紫外線400Wと高周波照射装置から周波数2.45GHzの高周波1000Wを同時に5秒間照射した。
【0038】
サンプルの硬化した樹脂面を鉛筆硬度2Hによる引っかき試験をしたところ傷は入らなかった。
【0039】
サンプルを60℃に加熱して揮発成分をガスクロマトグラフ質量分析装置にて分析したところエタノールは検出されなかった。
【0040】
比較例1
300μm厚のコートボールに10μm厚の紫外線硬化樹脂を塗布したサンプルを紫外線照射装置に導入した。
【0041】
紫外線硬化樹脂はポリエステルアクリレートをトルエンにて希釈したものからなり固形分は60%、ベンゾフェノン系の開始剤が加えられている。
【0042】
紫外線照射装置からメタルハイライドランプを使用して紫外線200Wを5秒間照射した。
【0043】
次に120℃に設定したオーブンにサンプルをいれ30秒間加熱した。
【0044】
サンプルの硬化した樹脂面を鉛筆硬度2Hによる引っかき試験をしたところ引っかき傷が入った。
【0045】
サンプルを60℃に加熱して揮発成分をガスクロマトグラフ質量分析装置にて分析したところトルエンが30ppb検出された。
【0046】
比較例2
300μm厚のコートボールに7μm厚の紫外線硬化インキを塗布したサンプルを紫外線照射装置に導入した。
【0047】
紫外線硬化インキはエポキシアクリレートとカーボンブラック顔料からなり固形分は70%、ベンゾフェノン系の開始剤が加えられている。希釈溶剤はエタノールと水を7対3で混合させたものである。
【0048】
紫外線照射装置からメタルハイライドランプを使用して紫外線400Wを5秒間照射した。
【0049】
次に120℃に設定したオーブンにサンプルをいれ30秒間加熱した。
【0050】
サンプルの硬化した樹脂面を鉛筆硬度2Hによる引っかき試験をしたところ引っかき傷が入った。
【0051】
サンプルを60℃に加熱して揮発成分をガスクロマトグラフ質量分析装置にて分析したところエタノールが50ppb検出された。
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の塗布膜の塗布乾燥方法および塗布乾燥装置は、様々な包装材料製品、建装材料製品、商業印刷物の印刷、塗工を行う上で使用することが出来る。また、産業資材を含めた接着剤や粘着剤の塗工にも使用することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の塗布乾燥装置における、硬化乾燥手段を説明するための概略図である。
【符号の説明】
【0054】
1……紫外線ランプ、2……水冷管、3……反射ミラー、4……紫外線硬化樹脂層、5……基材、6……高周波照射装置、7……高周波シールド。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材表面に水または溶剤に希釈された紫外線硬化樹脂を塗布する塗布工程と、
塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化、乾燥する硬化乾燥工程と
を有する塗布膜の塗布乾燥方法において、
前記硬化乾燥工程が紫外線と高周波を同時に照射する
ことを特徴とする塗布膜の塗布乾燥方法。
【請求項2】
前記硬化乾燥工程において、
塗布膜側より紫外線を照射し、基材側より高周波を照射する
ことを特徴とする請求項1に記載の塗布膜の塗布乾燥方法。
【請求項3】
前記紫外線硬化樹脂の膜厚が4μm以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の塗布膜の塗布乾燥方法。
【請求項4】
基材表面に水または溶剤により希釈された紫外線硬化樹脂を塗布する塗布手段と、
塗布された前記紫外線硬化樹脂を硬化、乾燥する硬化乾燥手段と
を有する塗布膜の塗布乾燥装置において、
前記硬化乾燥手段が紫外線照射装置と高周波照射装置からなる
ことを特徴とする塗布膜の塗布乾燥装置。
【請求項5】
前記紫外線照射装置が塗布膜側に設置されており、かつ前記高周波照射装置が基材側に設置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の塗布膜の塗布乾燥装置。
【請求項6】
前記紫外線照射装置のランプ部が水冷管に覆われていることを特徴とする請求項4または5に記載の塗布膜の塗布乾燥装置。

【図1】
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【公開番号】特開2008−62197(P2008−62197A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−244061(P2006−244061)
【出願日】平成18年9月8日(2006.9.8)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】