説明

塗布装置および塗布方法

【課題】 複数の塗布液供給タンクを交互に使用することで連続的に塗布液をノズルに供給するにあたり、ゲル化した塗布液がノズルに供給されるのを防止した塗布装置と塗布方法を提供する。
【解決手段】 塗布液供給タンク10内の塗布液を最後まで使い切ると、個別供給管11内にはエアが入り込む。このエアの噛込みをセンサ14で検出したら、センサ14からの信号によって開閉弁12をオフにするとともに三方弁13の流路を廃液タンク50側に切り替える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交換可能な塗布液タンクが適用される塗布装置とこの塗布装置を用いた塗布方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの塗布液タンクを用意し、それぞれの塗布液タンクからノズルユニットに向かって、フィルタ、エアオペレートバルブ、エア抜きニードルバルブ、エアベントタンクを配置し、一方の塗布液タンク内の塗布液を使い切ったら他方の塗布液タンクに切り替え、その間に一方の塗布液タンクを新たな塗布液タンクに交換することで、連続してノズルユニットに塗布液を供給できる塗布装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、塗布液供給タンクからスリットノズルに塗布液を供給する配管の途中に分岐管を設け、この分岐管を介して配管内に存在する余剰圧力を逃がすことが開示されている。
【0004】
【特許文献1】特開平5−305263号公報
【特許文献2】特開2006−43584号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献も含め、従来の塗布液供給タンクからノズルに塗布液を供給する配管の概略構成は図3のようになっている。即ち、塗布液供給タンク10,20のそれぞれに塗布液の個別供給管11,21が挿入され、これら個別供給管11,21は開閉弁12,22を介して合流供給管30が接続され、この合流供給管30の先端はノズル40に接続され、また途中にはエアベントタンク31及びフィルタ32が設けられている。
【0006】
塗布液供給タンク内の塗布液を出来るだけ無駄なく有効に使い切るため、供給管の下端をタンクの底部近くまで下げ、更にタンクの底面形状を擂鉢状にしている。そして、塗布液を最後まで使い切ろうとするとどうしても供給管内にエアを噛んでしまう。
【0007】
供給管内に入ったエアはエアベントタンクにおいて除去することができる。しかしながら、エアが入るとエアと塗布液が反応して微小ゲル化物を生じてしまう。この微小ゲル化物が発生するとこれを含む塗布液は流動性であることからエアベントタンクにおいて除去することはできず、そのまま微粒子状になってノズルに供給され塗布される。この結果、塗布膜に欠陥が生じ、歩留まりが悪くなる。
尚、加圧に窒素ガスを用いていても、タンク交換の際に供給管内に残っている塗布液とエアとが接触して微小ゲル化物が発生してしまうこともある。
【0008】
例えば、供給管中で塗布液がどのくらいの時間の間、エアに曝されるか以下に計算する。
通常、塗布液供給タンクには、18リットルの塗布液供給タンクが用いられることから、これを用い塗布液25mlを1分毎にノズルから吐出した場合、塗布液供給タンク中の塗布液を使い切るのに約12時間かかる。
塗布液供給タンク10と20の片方づつ交互に使うので、例えば最初に塗布液供給タンク10内の塗布液を使い切って、塗布液供給タンク20に切り替えた場合、塗布液供給タンク10からの個別供給管11内にはエアと塗布液が混在した状態(塗布液がエアと接触した状態)が発生する。塗布液供給タンク10は新たに新品のものと交換されるが、個別供給管11内はそのままである。
次に塗布液供給タンク10からの個別供給管11内に新たな塗布液が供給されるのは、塗布液供給タンク20が空になる12時間後である。このような長時間、供給管内で塗布液がエアに接触していると微小ゲル化物発生のリスクが高まる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため本発明は、複数の塗布液供給タンクのそれぞれに塗布液供給管が接続され、1つの塗布液供給タンク内の塗布液を使い切ったら他の塗布液供給タンクに切り替えることで、連続してノズルに塗布液を供給するようにした塗布装置において、前記塗布液供給管は各塗布液供給タンクが着脱自在とされた個別供給管と、各塗布液供給タンクからの個別供給管が合流するとともに先端がノズルに接続される合流供給管とからなり、各個別供給管には合流供給管への塗布液の供給をオン・オフする開閉弁が設けられ、この開閉弁よりも塗布液供給タンク寄りの個別供給管には廃液タンクに流路を切り替えることが可能な三方弁を設けた構成とした。さらに、この三方弁よりも塗布液供給タンク寄りの個別供給管には個別供給管内のエアを感知して前記三方弁に廃液タンクに流路を切り替える信号を発するセンサを設けた構成とした。
【0010】
また、本発明に係る塗布方法は、前記した複数の塗布液供給タンクのそれぞれに塗布液供給管が接続され、1つの塗布液供給タンク内の塗布液を使い切ったら他の塗布液供給タンクに切り替えることで、連続してノズルに塗布液を供給するようにした塗布装置を用いることを前提とし、前記センサからの信号で個別供給管の流路を廃液タンクに切り替えた後に、新たな塗布液供給タンクを個別供給管に接続し、この新たな塗布液供給タンクから塗布液を供給するときには、三方弁よりも上流側の個別供給管内に残っている塗布液を新たな塗布液供給タンクからの塗布液で廃液タンクに排出し、この後、三方弁を合流供給管側に切り替えるようにした。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る塗布装置によれば、塗布液を連続供給可能なことから塗布液供給タンク内の塗布液を最後まで使い切る直前で塗布液の供給を停止する必要がなくなる。したがって、管理が容易になり作業性が向上する。また、塗布液供給タンク内の塗布液を最後まで使い切ってエアが供給管内に入っても、三方弁よりも下流側には行かないため、微小ゲル化物の発生を抑制することができ、欠陥の少ない又は欠陥のない良好な塗布膜を得ることが出来るし、歩留まりが向上する。
【0012】
また、本発明に係る塗布方法によれば、供給管内に微小ゲル化物を含む塗布液が残っていても、当該ゲル化物は新たな塗布液供給タンクの使用を開始する際に、当該塗布液供給タンクの最初の塗布液によって廃液タンクに排出されるため、ノズルから吐出する塗布液中に微小ゲル化物が混入することがない又は混入を相当な程度まで低減できる。従って、欠陥の少ない又は欠陥のない良好な塗布膜を得ることが出来るし、歩留まりが向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に本発明の好適な実施例を添付図面に基づいて説明する。図1は本発明に係る塗布装置の塗布液ライン構成図であり、基本構成は従来と同様である。即ち、塗布液供給タンク10,20のそれぞれに塗布液の個別供給管11,21が挿入され、これら個別供給管11,21は開閉弁12,22を介して合流供給管30が接続され、この合流供給管30の先端はノズル40に接続され、また合流供給管30の途中にはエアベントタンク31及びフィルタ32が設けられている。
【0014】
本発明にあっては、前記開閉弁12,22よりも上流側の塗布液供給タンク10,20寄りの個別供給管11,21に三方弁13,23を設け、この三方弁13,23によって流路をノズル40側と廃液タンク50側に切り替えることが可能になっている。
【0015】
更に、三方弁13,23よりも上流側の塗布液供給タンク10,20寄りの個別供給管11,21にセンサ14,24を設け、このセンサ14,24によって個別供給管11,21内を流れる塗布液中にエア(ガス)が混入しているか否かを検出し、検出した場合には前記三方弁13,23に流路を廃液タンク50側に切り替える信号を発するようにしている。
【0016】
以上の構成からなる塗布装置を用いた塗布方法を図1の状態(三方弁13,23は流路をノズル40側にしている)を出発点として説明する。
先ず、図1に示す状態から一方の塗布液供給タンク10の開閉弁12をオンにし、塗布液供給タンク10内の塗布液を、合流供給管30、エアベントタンク31及びフィルタ32を介してノズル40に供給する。
【0017】
塗布液供給タンク10内の塗布液を最後まで使い切る。すると、個別供給管11内にはエア(ガス)が入り込む。このエアの噛込みをセンサ14で検出したら、センサ14からの信号によって開閉弁12をオフにするとともに三方弁13の流路を廃液タンク50側に切り替える。なお、センサ14を設けたほうが自動的に検知できることから好ましいが、なくとも目視で確認して三方弁の流路を切り替えることもできる。
【0018】
また、センサ14はエアベントタンク31より塗布液供給タンクより(上流)であれば、特に限定されない。例えば、22・12と31の間、23と22の間、13と12の間、20と23の間13と10の間であればよい。好ましくは、前記記載の三方弁よりも塗布液供給タンク寄りの個別配管に設置される。
【0019】
この後、空になった塗布液供給タンク10を新塗布液が充填されている新たな塗布液供給タンクに切り替える。このとき三方弁13の流路は廃液タンク50側のままにしておく。
【0020】
また、塗布液供給タンク10の個別供給管11内にはエアが入り込んだことをセンサ14で検出したら、センサ14からの信号で開閉弁12をオフにするとともに或いは12をオフにした後、開閉弁22をオンにし、他の塗布液供給タンク20からノズル40に塗布液を連続的に供給する。この操作においても、センサ14を設けたほうが自動的に検知できることから好ましいが、なくとも目視で確認して三方弁の流路を切り替えることもできる。
【0021】
そして、塗布液供給タンク20内の塗布液を使い切った場合、前記同様にして塗布液供給タンク10と交換した新たな塗布液供給タンクに切り替える。この場合、個別供給管11内にはエア(ガス)が入り込んでおり、塗布液中に微小ゲル化物が発生していることが多いので、前記したように三方弁13の流路は廃液タンク50側のままにしておく。この状態で新たな塗布液供給タンクから個別供給管11内に新たな塗布液を供給すると、当該新たな塗布液とともに微小ゲル化物を含んだ塗布液は廃液タンク50に排出される。
【0022】
以上の如くして、個別供給管11内に残っている微小ゲル化物を含んだ塗布液を排出した後、三方弁13をノズル40側に切り替えるとともに開閉弁12をオンにして新たな塗布液をノズル40に供給する。
【0023】
図2は別実施例を示す塗布液ライン構成図であり、この実施例にあっては個別供給管11,21の最も高い位置に三方弁13,23を設け、この三方弁13,23よりも低い位置に開閉弁12,22を設けている。このようにすることで、個別供給管11,21内のエアを廃液タンク50に戻し、ノズル側にエアを送り込むことを防止できる。
【0024】
尚、図示はしなかったが、個別供給管11,21或いは合流供給管30の途中にエアベントタンクとは別に脱気モジュールを設けてもよい、またガスの圧力で塗布液を送り出す代わりにポンプを用いて塗布液供給タンクから塗布液を吸引する場合にも本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る塗布装置の塗布液ライン構成図
【図2】別実施例を示す塗布液ライン構成図
【図3】従来の塗布装置の塗布液ライン構成図
【符号の説明】
【0026】
10,20…塗布液供給タンク、11,21…塗布液の個別供給管、12,22…開閉弁、13,23…三方弁、14,24…センサ、30…合流供給管、31…エアベントタンク、32…フィルタ、40…ノズル、50…廃液タンク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の塗布液供給タンクのそれぞれに塗布液供給管が接続され、1つの塗布液供給タンク内の塗布液を使い切ったら他の塗布液供給タンクに切り替えることで、連続してノズルに塗布液を供給するようにした塗布装置において、前記塗布液供給管は各塗布液供給タンクが着脱自在とされた個別供給管と、各塗布液供給タンクからの個別供給管が合流するとともに先端がノズルに接続される合流供給管とからなり、各個別供給管には合流供給管への塗布液の供給をオン・オフする開閉弁が設けられ、この開閉弁よりも塗布液供給タンク寄りの個別供給管には廃液タンクに流路を切り替えることが可能な三方弁が設けられていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗布装置において、前記三方弁よりも塗布液供給タンク寄りの個別供給管には個別供給管内のエアを感知して前記三方弁に廃液タンクに流路を切り替える信号を発するセンサを設けていることを特徴とする塗布装置。
【請求項3】
請求項2に記載の塗布装置を用いた塗布方法において、前記センサからの信号で個別供給管の流路を廃液タンクに切り替えた後に、新たな塗布液供給タンクを個別供給管に接続し、この新たな塗布液供給タンクから塗布液を供給するときには、三方弁よりも上流側の個別供給管内に残っている塗布液を新たな塗布液供給タンクからの塗布液で廃液タンクに排出し、この後、三方弁を合流供給管側に切り替えることを特徴とする塗布方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−119617(P2008−119617A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−307305(P2006−307305)
【出願日】平成18年11月14日(2006.11.14)
【出願人】(000220239)東京応化工業株式会社 (1,407)
【Fターム(参考)】