説明

塗布装置および塗布方法

【課題】塗布液槽に塗布液を補充する際に、補充された塗布液が塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止するとともに、塗布液の補充時であっても塗布を中断することなく連続して塗布を行うことができる塗布装置および塗布方法を提供する。
【解決手段】塗布液槽T1から送出された塗布液L1を循環させて塗布液槽T1へ送入すると共に塗布液L1に補充液L2を混合させる混合配管系Mを備え、混合配管系Mには、補充液槽T2から送出された補充液L2を混合配管系Mへ送入する補充配管D3が連結されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗布装置および塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、レジスト液面を所定高さに制御し、レジスト液面の変動による塗布ムラのない高品質膜を得るレジスト塗布装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、省スペースでしかも塗布液の無駄を抑制しながら基板に塗布液を塗布することができる塗布装置および塗布方法が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平8−211625号公報
【特許文献2】特開平11−76894号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来の塗布装置および塗布方法では、塗布液を貯留する塗布液槽に塗布液を補充した後、補充された新しい塗布液と塗布液槽に貯留された塗布液とが十分に攪拌される前に塗布液を塗布すると、塗布液の組成や粘度の僅かな差異が塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすという課題がある。特に、補充する塗布液と塗布液槽の塗布液との組成や粘度の差異は、補充する塗布液の製造ロットが異なる場合は顕著となる。また、同一ロットの場合であっても、塗布液の経時変化により、膜厚、膜質に影響を及ぼす場合がある。
【0004】
また、上述の塗布液の組成や粘度の僅かな差異が塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止するために、補充された新しい塗布液と塗布液槽に貯留された塗布液とが十分に攪拌されるまでの間は、塗布を中断しなくてはならないという課題がある。このため、塗布装置の生産性が低下するという問題がある。
【0005】
そこで、この発明は、塗布液槽に塗布液を補充する際に、補充された塗布液が塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止するとともに、塗布液の補充時であっても塗布を中断することなく連続して塗布を行うことができる塗布装置および塗布方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の塗布装置は、補充液槽に貯留された塗布液を補充液として塗布液槽に補充しつつ、前記塗布液槽に貯留された前記塗布液を塗布する塗布装置であって、前記塗布液槽から送出された前記塗布液を循環させて前記塗布液槽へ送入すると共に前記塗布液に前記補充液を混合させる混合配管系を備え、前記混合配管系には、前記補充液槽から送出された前記補充液を前記混合配管系へ送入する補充配管が連結されていることを特徴とする。
【0007】
このように構成することで、塗布液槽に貯留された塗布液が、塗布液槽から混合配管系に送出され、混合配管系を循環した後、再び塗布液槽に戻される。このため、塗布液が混合配管系と塗布液槽とを常に循環している状態となる。これにより、塗布液が滞留したり、揮発したりすることで塗布液槽内において塗布液の組成や粘度の差異が発生することを防止して、塗布液槽内の塗布液の組成や粘度を均一にすることができる。
また、補充配管が混合配管系に連結されている。このため、塗布液槽内の塗布液とは組成や粘度が異なる塗布液を補充液槽から補充液として塗布液槽に補充する場合に、補充液槽から補充配管を介して混合配管系に補充された補充液は、混合配管系を循環する塗布液と合流し、混合配管系によって混合されながら混合配管系内を流れた後、混合配管系から塗布液槽に送入される。これにより、塗布液槽内の塗布液とは組成や粘度が異なる補充液槽内の塗布液を、混合配管系により塗布液槽内の塗布液と十分に混合させ、塗布液槽内の塗布液に近い組成や粘度にした上で、塗布液槽に補充することができるが、これは混合を密閉管内で行うことで揮発などによる組成、粘度変化を生じさせないことによっても達成されている。
したがって、塗布液槽に組成や粘度の異なる新しい塗布液を補充する際に、塗布液槽内の塗布液の組成や粘度を均一にして、塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止することができる。また、塗布液槽に塗布液を補充する際の塗布液槽の攪拌が不要になり、塗布液の補充時であっても塗布を中断することなく連続して塗布を行うことが可能になる。
【0008】
また、本発明の塗布装置は、前記混合配管系は、環状に連結された環状配管部と、前記塗布液槽の塗布液出口に連結された出口配管と、前記塗布液槽の塗布液入口に連結された入口配管と、を備え、前記環状配管部には、前記出口配管と、前記補充配管と、前記入口配管と、がそれぞれ連結されていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、塗布液槽に貯留された塗布液が、塗布液槽から出口配管を介して環状配管部へ送出され、環状配管部を循環した後、入口配管を介して再び塗布液槽へ戻される。このため、塗布液が環状配管部と塗布液槽とを常に循環している状態となる。これにより、塗布液が滞留して塗布液槽内で塗布液の組成や粘度の差異が発生することを防止して、塗布液槽内の塗布液の組成や粘度を均一にすることができる。
また、補充配管が環状配管部に連結されている。このため、塗布液槽内の塗布液とは組成や粘度が異なる塗布液を補充液槽から補充液として塗布液槽に補充する場合に、補充液槽から補充配管を介して環状配管部に補充された補充液は、環状配管部を循環する塗布液と合流し、混合されながら環状配管部内を流れた後、環状配管部から入口配管を介して塗布液槽に送入される。これにより、塗布液槽内の塗布液とは組成や粘度が異なる補充液槽内の塗布液を、環状配管部において塗布液槽内の塗布液と十分に混合させ、塗布液槽内の塗布液に近い組成や粘度にした上で、塗布液槽に補充することができる。
【0010】
また、本発明の塗布装置は、前記補充配管の途中には、前記補充液の流量を調整する補充液調整弁が開閉自在に設けられていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、補充液調整弁により環状配管部に循環する塗布液に送入する補充液の量を調整し、補充液の補充による塗布液の組成や粘度の変化を調整することができる。したがって、塗布液槽に新しい塗布液を補充する際に、補充された塗布液が塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0012】
また、本発明の塗布装置は、前記環状配管部には、前記塗布液の循環を遮断する環状配管部遮断弁が開閉自在に設けられ、前記環状配管部遮断弁から前記環状配管部の周方向に、前記出口配管、前記補充配管、前記入口配管がこの順で順次連結されていることを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、塗布液槽から出口配管を介して環状配管部へ送出された塗布液は、環状配管部と出口配管との連結部に到達すると、環状配管部の内部を環状配管部の周方向に流れる。このとき、環状配管部遮断弁を開放した状態では、塗布液を環状配管部に自由に循環させ、環状配管部を循環する塗布液と、補充配管を介して環状配管部へ補充した補充液とを十分に混合させることができる。
一方、環状配管部遮断弁を閉鎖した状態では、環状配管部遮断弁により塗布液の流れが遮断される。このため、塗布液槽から出口配管を介して環状配管部へ送出された塗布液は、環状配管部の周方向を環状配管部遮断弁よって遮断された方向とは反対方向、すなわち環状配管部と補充配管との連結部の方向へ流れていく。そして、塗布液は、環状配管部と補充配管との連結部を通過して、環状配管部と入口配管との連結部へ流れていく。環状配管部と入口配管との連結部に達した塗布液は、環状配管部の出口配管との連結部と入口配管との連結部の間が環状配管部遮断弁によって遮断されているので、入口配管を介して塗布液槽へ送入される。
したがって、塗布液槽から送出された塗布液は、環状配管部を周方向に一回り循環して、再び塗布液槽に送入される。また、環状配管部と補充配管との連結部において、環状配管部を流れる塗布液に補充配管を介して補充液を補充することもできる。これにより、環状配管部と補充配管との連結部から補充液槽までの間で補充液と塗布液とを混合させることができる。
【0014】
また、本発明の塗布装置は、前記環状配管部には、前記補充配管の連結部と、前記出口配管および前記入口配管の各連結部との間に、前記補充配管の連結部の上流側から下流側へ前記塗布液をバイパスするバイパス配管が連結され、前記環状配管部と前記バイパス配管との各連結部と、前記補充配管の連結部との間には、前記塗布液の流通を遮断する補充液遮断弁が各々開閉自在に設けられていることを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、各補充液遮断弁を閉鎖した状態で補充液槽から補充配管を介して環状配管部へ補充液を送出すると、補充液は環状配管部の各補充液遮断弁の間に充填された状態となる。このとき、塗布液槽から送出され環状配管部を循環する塗布液は、環状配管部とバイパス配管との一方の接続部に達すると、環状配管部の周方向の流れが補充液遮断弁により遮断されていることから、バイパス配管に流れ込む。そして、塗布液は、バイパス配管を通過して環状配管部とバイパス配管との他方の接続部に達する。このとき、環状配管部と補充配管との連結部方向への塗布液の流れが補充液遮断弁により遮断されていることから、環状配管部とバイパス配管との他方の接続部に達した塗布液は、環状配管部と入口配管との連結部方向へ流れていく。
このように、補充液槽から送出された補充液が環状配管部の各補充液遮断弁の間に充填され、塗布液槽から送出された塗布液が環状配管部およびバイパス配管を循環している状態で、各補充液遮断弁を開放すると、各補充液遮断弁の間に充填された補充液が環状配管部に補充される。これにより、補充液を定量ずつ環状配管部に補充することができる。
したがって、各補充液遮断弁の配置や環状配管部の内径等を調整して、環状配管部の各補充液遮断弁の間に充填される補充液の体積を調整することで、環状配管部に補充する補充液の量を調整し、補充液の補充による塗布液の組成や粘度の変化を調整することができる。これにより、塗布液槽に新しい塗布液を補充する際に、補充された塗布液が塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0016】
また、本発明の塗布装置は、前記出口配管および前記入口配管の途中には、前記塗布液を遮断する出口配管遮断弁および入口配管遮断弁がそれぞれ開閉自在に設けられ、前記環状配管部には、前記塗布液を循環させる循環ポンプが設けられていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、出口配管遮断弁および入口配管遮断弁を閉鎖して塗布液槽と環状配管部の間の塗布液の流通を遮断した状態で循環ポンプを作動させ、塗布液と補充液を環状配管部に循環させ、環状配管部により十分に混合させることができる。そして、出口配管遮断弁および入口配管遮断弁を開放して環状配管部から十分に混合された塗布液と補充液とを塗布液槽に送入することができる。
【0018】
また、本発明の塗布装置は、前記入口配管の途中には、前記環状配管部から前記塗布液槽へ前記塗布液を送入する送入ポンプが設けられていることを特徴とする。
【0019】
このように構成することで、塗布液を送入ポンプにより強制的に流動させ、塗布液槽の塗布液を環状配管部に循環させることができる。
【0020】
また、本発明の塗布装置は、前記出口配管の途中には、前記塗布液槽から前記環状配管部へ前記塗布液を送出する送出ポンプが設けられていることを特徴とする。
【0021】
このように構成することで、塗布液を送出ポンプにより強制的に流動させ、塗布液槽の塗布液を環状配管部に循環させることができる。
【0022】
また、本発明の塗布装置は、前記補充配管の途中には、前記補充液槽から前記環状配管部へ前記補充液を送入する補充ポンプが設けられていることを特徴とする。
【0023】
このように構成することで、補充液槽の補充液を環状配管部へ強制的に送入することができる。
【0024】
また、本発明の塗布装置は、前記環状配管部の内側には、前記塗布液を攪拌する攪拌部が形成されていることを特徴とする。
【0025】
このように構成することで、環状配管部を循環する塗布液槽の塗布液と、補充液槽から環状配管部へ補充された補充液とを攪拌部によって攪拌し、十分に混合させることができる。
【0026】
また、本発明の塗布方法は、補充液槽に貯留された塗布液を補充液として塗布液槽に補充しつつ、前記塗布液槽に貯留された前記塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記塗布液槽から送出した前記塗布液を混合配管系により循環させて前記塗布液槽へ送入させる循環工程と、前記補充液槽から送出された前記補充液を前記混合配管系へ送入して前記塗布液に混合させる混合工程と、を有することを特徴とする。
【0027】
このように塗布することで、塗布液槽に貯留された塗布液が、塗布液槽から混合配管系に送出され、混合配管系を循環した後、再び塗布液槽に戻される。このため、塗布液が混合配管系と塗布液槽とを常に循環している状態となる。これにより、塗布液が滞留して塗布液槽内で塗布液の組成や粘度の差異が発生することを防止して、塗布液槽内の塗布液の組成や粘度を均一にすることができる。
また、塗布液槽内の塗布液とは組成や粘度が異なる塗布液を補充液槽から補充液として塗布液槽に補充する場合に、補充液槽から混合配管系に補充された補充液は、混合配管系を循環する塗布液と合流し、混合配管系によって混合されながら混合配管系内を流れた後、混合配管系から塗布液槽に送入される。これにより、塗布液槽内の塗布液とは組成や粘度が異なる補充液槽内の塗布液を、混合配管系により塗布液槽内の塗布液と十分に混合させ、塗布液槽内の塗布液に近い組成や粘度にした上で、塗布液槽に補充することができる。
したがって、塗布液槽に組成や粘度の異なる新しい塗布液を補充する際に、塗布液槽内の塗布液の組成や粘度を均一にして、塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止することができる。また、塗布液槽に塗布液を補充する際の塗布液槽の攪拌が不要になり、塗布液の補充時であっても塗布を中断することなく連続して塗布を行うことが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
次に、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、この実施の形態の塗布装置100の全体構成を示す模式図である。
図1に示すように、塗布装置100は、補充液槽T2に貯留された塗布液を補充液L2として塗布液槽T1に補充しつつ、塗布液槽T1に貯留された塗布液L1を塗布部Hに供給することにより、基板等に塗布液L1を塗布する装置である。
【0029】
塗布装置100は、環状に連結された環状配管部Lを備えている。環状配管部Lと塗布液槽T1は、出口配管D1および入口配管D2を介して連結されている。また、環状配管部Lと補充液槽T2とは、環状配管部Lに連結された補充配管D3を介して接続されている。
【0030】
出口配管D1は、一方の端部が塗布液槽T1の塗布液出口O1に連結され、他方の端部が環状配管部Lとの連結部J1に連結されて、塗布液槽T1に貯留された塗布液L1を環状配管部Lに送出可能に構成されている。出口配管D1の途中には、塗布液L1の流通を遮断する出口バルブV1(出口配管遮断弁)が開閉自在に設けられている。
【0031】
入口配管D2は、一方の端部が環状配管部Lの連結部J2に連結され、他方の端部が塗布液槽T1の塗布液入口I1に連結されて、環状配管部Lを循環する塗布液L1を塗布液槽T1に送入可能に構成されている。入口配管D2の途中には、塗布液L1の流通を遮断する入口バルブV3(入口配管遮断弁)が開閉自在に設けられている。また、入口配管D2の途中には、環状配管部Lから塗布液槽T1へ塗布液L1を送入する送入ポンプP1が設けられている。
【0032】
補充配管D3は、一方の端部が補充液槽T2に貯留された補充液L2に浸漬され、他方の端部が環状配管部Lの連結部J3に連結され、補充液槽T2から送出された補充液L2を環状配管部Lに送出可能に構成されている。補充配管D3の途中には、補充液L2の流量を調整する調整バルブV6(補充液調整弁)が開閉自在に設けられている。また、補充配管D3の途中には、補充液槽T2から環状配管部Lへ補充液L2を送入する補充ポンプP3が設けられている。
【0033】
環状配管部Lには、塗布液L1の循環を遮断する循環バルブV2(環状配管部遮断弁)が開閉自在に設けられている。環状配管部Lには、循環バルブV2から環状配管部Lの周方向に、出口配管D1、補充配管D3、入口配管D2が順次連結されている。環状配管部Lには、補充配管D3の連結部J3と、出口配管D1および入口配管D2の連結部J1,J2との間に、連結部J3の上流側から下流側へ塗布液L1をバイパスするバイパス配管D4が連結されている。
【0034】
環状配管部Lとバイパス配管D4との各連結部J4,J5と、補充配管D3の連結部J3との間には、塗布液L1の流通を遮断する補充バルブV4,V5(補充液遮断弁)が各々開閉自在に設けられている。また、環状配管部Lの補充バルブV4と補充バルブV5との間には、環状配管部Lに塗布液L1を循環させる循環ポンプP2が設けられている。
【0035】
この実施の形態では、主に、上述の環状配管部L、出口配管D1、入口配管D2およびバイパス配管D4により、塗布液槽T1から送出された塗布液L1を循環させて塗布液槽T1へ送入すると共に、補充配管D3から送入された補充液L2を塗布液L1に混合させる混合配管系Mが構成されている。
【0036】
塗布部Hには、一方の端部が塗布液槽T1に貯留された塗布液L1に浸漬された塗布液補給配管D5が連結されている。塗布部Hは、塗布液槽T1に貯留された塗布液L1が塗布液補給配管D5を介して供給され、基板等に塗布液L1を塗布膜として塗布可能に構成されている。
【0037】
次に、この実施の形態の塗布装置100を用いた塗布方法について説明する。
図2は、塗布装置100の塗布開始時における運転状況を示す模式図である。尚、黒色のバルブは閉鎖状態を、白色のバルブは開放状態であることを示している。また、太線で表された配管は、実際に液体が流通していることを示している。
【0038】
図2に示すように、塗布装置100による塗布開始時には、出口配管D1の途中の出口バルブV1と入口配管D2の途中の入口バルブV3を開放し、それ以外の循環バルブV2、補充バルブV4,V5および調整バルブV6を閉鎖する。そして、入口配管D2の途中の送入ポンプP1を駆動させ、塗布液槽T1に貯留された塗布液L1を、塗布液槽T1から出口配管D1を介して環状配管部Lに送出する。塗布液L1は、環状配管部Lと出口配管D1との連結部J1に到達すると、環状配管部Lの内部を環状配管部Lの周方向に流れる。しかし、循環バルブV2を閉鎖した状態では、循環バルブV2により塗布液L1の周方向の一方向の流れが遮断される。このため、塗布液L1は、環状配管部Lとバイパス配管D4との連結部J4の方向に流れていく。
【0039】
塗布液L1は、環状配管部Lとバイパス配管D4との上流側の連結部J4に達すると、環状配管部Lの周方向の流れが補充バルブV4により遮断されていることから、バイパス配管D4に流れ込む。そして、塗布液L1は、バイパス配管D4を通過して環状配管部Lとバイパス配管D4との下流側の連結部J5に達する。このとき、補充バルブV5により環状配管部Lと補充配管D3との連結部J3方向への塗布液L1の流れが遮断されているので、塗布液L1は環状配管部Lと入口配管D2との連結部J2の方向へ流れていく。
【0040】
環状配管部Lと入口配管D2との連結部J2に達した塗布液L1は、環状配管部Lの周方向への塗布液L1の流れが循環バルブV2によって遮断されているので、入口配管D2を介して塗布液槽T1へ送入される。これにより、塗布液槽T1から送出された塗布液L1は、環状配管部Lおよびバイパス配管D4を周方向に一回り循環して、再び塗布液槽T1に送入される(循環工程)。
このように塗布液L1を循環させた状態で、塗布液槽T1に貯留された塗布液L1を塗布液補給配管D5により塗布部Hに供給し、塗布部Hによって基板等(不図示)に塗布液L1を塗布する。
【0041】
このとき、塗布液L1が環状配管部Lおよびバイパス配管D4と塗布液槽T1とに常に循環している状態となっている。そのため、塗布液L1が滞留して塗布液槽T1内で塗布液L1の組成や粘度の差異が発生することが防止され、塗布液槽T1内の塗布液L1の組成や粘度が均一になる。
したがって、塗布部Hに供給される塗布液L1の組成や粘度が均一になり、塗布部Hにより基板等に塗布した塗布膜の膜厚、膜質を均一にすることができる。
【0042】
次に、塗布液L1の塗布により、塗布液槽T1に貯留された塗布液L1が減少し始めたら、図3に示すように、調整バルブV6を開放し、補充ポンプP3を駆動させて、補充液L2を補充液槽T2から環状配管部Lへ送出する(太破線)。ここでは、調整バルブV6は全開にする。そして、環状配管部Lの各補充バルブV4,V5の間に補充液L2を充填したら、調整バルブV6を閉鎖する。これにより、補充液L2は環状配管部Lの各補充バルブV4,V5および調整バルブV6の間に充填された状態となる。
【0043】
次に、図4に示すように、環状配管部Lの各補充バルブV4,V5を開放し、各補充バルブV4,V5の間に充填された補充液L2を環状配管部Lに補充して循環させる。このとき、出口バルブV1および入口バルブV3を閉鎖して送入ポンプP1を停止すると共に、循環バルブV2を開放し、環状配管部Lを塗布液槽T1および補充液槽T2から隔離する。この状態で、循環ポンプP2を駆動させ塗布液L1および補充液L2を環状配管部Lに循環させて混合させる(混合工程)。
【0044】
このように、補充液槽T2から送出された補充液L2を環状配管部Lの各補充バルブV4,V5および調整バルブV6の間に充填し、補充バルブV4,V5を開放すると、各補充バルブV4,V5の間に充填された補充液L2が、環状配管部Lおよびバイパス配管D4に循環させていた塗布液L1に補充される。すなわち、一度の補充で補充される補充液L2の量を、各補充バルブV4,V5および調整バルブV6により隔離された部分の環状配管部Lおよび補充配管D3の体積とすることができる。これにより、補充液L2を定量ずつ環状配管部Lに補充することができる。
【0045】
したがって、各補充バルブV4,V5および調整バルブV6の配置や環状配管部Lおよび補充配管D3の長さ、内径等を調整して、環状配管部Lの各補充バルブV4,V5および調整バルブV6によって隔離された部分に充填される補充液L2の体積を調整することで、環状配管部Lに補充する補充液L2の量を調整することができる。また、同様に補充液L2が補充される塗布液L1の体積を調整することができる。これにより、混合される補充液L2の体積と塗布液L1の体積の比を一定にして補充液L2の補充による塗布液L1の組成や粘度の変化を調整することができる。
【0046】
また、出口バルブV1および入口バルブV3を閉鎖して塗布液槽T1と環状配管部Lの間の塗布液L1の流通を遮断した状態で循環ポンプP2を作動させることで、塗布液L1と補充液L2を環状配管部Lに循環させ、環状配管部Lによって十分に混合させることができる。
ここで、塗布液L1に補充する補充液L2の体積は、例えば、塗布液L1の約2%以下であることが望ましい。このような体積比で混合することで、環状配管部Lで混合された塗布液L1と塗布液槽T1に貯留されている塗布液L1との組成や粘度の差を、塗布膜の膜質や膜厚に影響を与えない程度に、より確実に抑えることができる。
【0047】
次に、図5に示すように、出口バルブV1および入口バルブV3を開放し、循環バルブV2を閉鎖した状態で、送入ポンプP1を駆動させ、補充液L2と十分に混合された塗布液L1を環状配管部Lから塗布液槽T1に送入する。このとき、塗布液槽T1から出口配管D1を介して環状配管部Lへ送出された塗布液L1は、環状配管部Lにおいて補充液L2と十分に混合された塗布液L1を環状配管部Lおよびバイパス配管D4から押し出しながら一巡した後、入口配管D2を介して塗布液槽T1へ送入される。
【0048】
環状配管部Lにおいて補充液L2と十分に混合された塗布液L1を塗布液槽T1へ送入した後は、図6に示すように、環状配管部Lの上流側の補充バルブV4を閉鎖し、調整バルブV6を全開にして補充ポンプP3を駆動させ、補充液L2を環状配管部Lに送出する。このとき、例えば、補充ポンプP3の吐出流量および駆動時間等を調整し、補充液L2を各補充バルブV4,V5および調整バルブV6により区画される部分に充填される量だけ送出する。そして、図3に示すように、環状配管部Lの下流側の補充バルブV5を閉鎖して循環ポンプP2および補充ポンプP3を停止する。
その後、上述のように、図3〜図6を用いて説明した手順を繰り返すことで、補充液槽T2に貯留された塗布液を補充液L2として塗布液槽T1に補充しつつ、塗布液槽T1に貯留された塗布液L1の塗布を連続して行うことができる。
【0049】
以上説明したように、この実施の形態の塗布装置100および塗布方法によれば、塗布液槽T1内の塗布液L1とは組成や粘度が異なる補充液槽T2内の塗布液を補充液L2として補充する場合であっても、環状配管部Lにおいて塗布液L1と補充液L2とを十分に混合させ、塗布液槽T1内の塗布液L1に補充しても塗布膜の膜質や膜厚に影響を及ぼさない組成や粘度にした上で、塗布液槽T1に補充することができる。
【0050】
したがって、塗布液槽T1に組成や粘度の異なる新しい塗布液である補充液L2を補充する際に、塗布液槽T1内の塗布液L1の組成や粘度を均一にして、塗布部Hにより塗布される塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止することができる。また、塗布液槽T1に塗布液L1を補充する際の塗布液槽T1の攪拌が不要になり、補充液L2の補充時であっても塗布を中断することなく連続して塗布を行うことが可能になる。これにより、塗布膜の生産性を向上させることができる。
【0051】
また、図7に示すように、環状配管部Lの内側には、塗布液L1および補充液L2を攪拌する攪拌部Sとして、拡径部Dおよび縮径部dを設けてもよい。このように、環状配管部Lに攪拌部Sを設けることで、拡径部Dと縮径部dとを流れる塗布液L1および補充液L2に乱流が発生する。これにより、環状配管部Lを循環する塗布液槽T1の塗布液L1と補充液槽T2から環状配管部Lへ補充された補充液L2とを攪拌部Sによって攪拌し、十分に混合させることができる。
【0052】
尚、この発明は上述した実施の形態に限られるものではなく、混合配管系は上述した環状配管部を備えていなくてもよい。例えば、U字型配管の両端部を塗布液槽の塗布液出口と塗布液入口とに連結して直結し、塗布液槽の塗布液をU字型配管に循環させると共に、U字型配管の途中から補充液槽の補充液を補充することができる。
【0053】
また、補充液を環状配管部に送入する際には、上述のように各補充液遮断弁の間に充填した補充液を環状配管部に供給するだけでなく、補充液調整弁により環状配管部に送入する補充液の量を調整してもよい。これにより、補充液が補充された後の塗布液の組成や粘度の変化を調整することができ、塗布液槽に新しい塗布液を補充しながら塗布を継続しても塗布膜の膜厚、膜質に影響を及ぼすことを防止することができる。
【0054】
また、塗布液槽の塗布液の減少量は、例えば、液面センサ等により測定してもよい。また、出口配管の途中に、塗布液槽から環状配管部へ塗布液を送出する送出ポンプを設けてもよい。これにより、塗布液を送出ポンプにより強制的に流動させ、塗布液槽の塗布液を環状配管部に循環させることができる。また、攪拌部は、板材等により形成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態における塗布装置の全体構成を示す模式図である。
【図2】本発明の実施の形態における塗布装置を用いた塗布方法の説明図である。
【図3】本発明の実施の形態における塗布装置を用いた塗布方法の説明図である。
【図4】本発明の実施の形態における塗布装置を用いた塗布方法の説明図である。
【図5】本発明の実施の形態における塗布装置を用いた塗布方法の説明図である。
【図6】本発明の実施の形態における塗布装置を用いた塗布方法の説明図である。
【図7】本発明の実施の形態における攪拌部の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0056】
100 塗布装置、D1 出口配管、D2 入口配管、D3 補充配管、D4 バイパス配管、I1 塗布液入口、J1,J2,J3,J4,J5 連結部、L 環状配管部、L1 塗布液、L2 補充液、M 混合配管系、O1 塗布液出口、P1 送入ポンプ、P2 循環ポンプ、P3 補充ポンプ、S 攪拌部、T1 塗布液槽、T2 補充液槽、V1 出口バルブ(出口配管遮断弁)、V2 循環バルブ(環状配管部遮断弁)、V3 入口バルブ(入口配管遮断弁)、V4,V5 補充バルブ(補充液遮断弁)、V6 調整バルブ(補充液調整弁)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補充液槽に貯留された塗布液を補充液として塗布液槽に補充しつつ、前記塗布液槽に貯留された前記塗布液を塗布する塗布装置であって、
前記塗布液槽から送出された前記塗布液を循環させて前記塗布液槽へ送入すると共に前記塗布液に前記補充液を混合させる混合配管系を備え、
前記混合配管系には、前記補充液槽から送出された前記補充液を前記混合配管系へ送入する補充配管が連結されていることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記混合配管系は、環状に連結された環状配管部と、前記塗布液槽の塗布液出口に連結された出口配管と、前記塗布液槽の塗布液入口に連結された入口配管と、を備え、
前記環状配管部には、前記出口配管と、前記補充配管と、前記入口配管と、がそれぞれ連結されていることを特徴とする請求項1記載の塗布装置。
【請求項3】
前記補充配管の途中には、前記補充液の流量を調整する補充液調整弁が開閉自在に設けられていることを特徴とする請求項2記載の塗布装置。
【請求項4】
前記環状配管部には、前記塗布液の循環を遮断する環状配管部遮断弁が開閉自在に設けられ、前記環状配管部遮断弁から前記環状配管部の周方向に、前記出口配管、前記補充配管、前記入口配管がこの順で順次連結されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記環状配管部には、前記補充配管の連結部と、前記出口配管および前記入口配管の各連結部との間に、前記補充配管の連結部の上流側から下流側へ前記塗布液をバイパスするバイパス配管が連結され、
前記環状配管部と前記バイパス配管との各連結部と、前記補充配管の連結部との間には、前記塗布液の流通を遮断する補充液遮断弁が各々開閉自在に設けられていることを特徴とする請求項4記載の塗布装置。
【請求項6】
前記出口配管および前記入口配管の途中には、前記塗布液を遮断する出口配管遮断弁および入口配管遮断弁がそれぞれ開閉自在に設けられ、
前記環状配管部には、前記塗布液を循環させる循環ポンプが設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項5のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記入口配管の途中には、前記環状配管部から前記塗布液槽へ前記塗布液を送入する送入ポンプが設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記出口配管の途中には、前記塗布液槽から前記環状配管部へ前記塗布液を送出する送出ポンプが設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項7のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記補充配管の途中には、前記補充液槽から前記環状配管部へ前記補充液を送入する補充ポンプが設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項8のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記環状配管部の内側には、前記塗布液を攪拌する攪拌部が形成されていることを特徴とする請求項2ないし請求項9のいずれか一項に記載の塗布装置。
【請求項11】
補充液槽に貯留された塗布液を補充液として塗布液槽に補充しつつ、前記塗布液槽に貯留された前記塗布液を塗布する塗布方法であって、
前記塗布液槽から送出した前記塗布液を混合配管系により循環させて前記塗布液槽へ送入させる循環工程と、
前記補充液槽から送出された前記補充液を前記混合配管系へ送入して前記塗布液に混合させる混合工程と、
を有することを特徴とする塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−112913(P2009−112913A)
【公開日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−287012(P2007−287012)
【出願日】平成19年11月5日(2007.11.5)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】