説明

塗布量管理装置

【課題】乾燥前の塗布層の表面状態を基材を搬送しながら観測することによって、一定の塗布量を維持することを可能とする塗布量管理装置を提供する。
【解決手段】塗布装置によって基材上に塗布液を塗布して得られた塗布層の塗布量を管理する装置であって、塗布された塗布層を、乾燥する手前で基材を搬送しながら塗布層表面を照明する手段と、照明された塗布層表面を撮像する手段と、撮像した画像から塗布層の表面に発生した液滴の間隔を求める画像処理手段とを備え、求めた塗布層の表面に発生した液滴の間隔に基づいて塗布層の塗布量を管理することを特徴とする塗布層の塗布量管理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に塗布装置等によって塗布液を塗布して設けられた塗布層の塗布量管理を行う装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、基材に塗布層を設けるための方式として、例えばロールコート、グラビアコート、カーテンコート、ダイコート、ブレードコートなどが挙げられる。
【0003】
上記塗布方式は、連続したフィルムや紙等、または枚葉状の紙やガラス等の基材上に一定量の塗布層を形成する目的で使用されている。
【0004】
前記塗布方式において塗布量を一定に保つためには、例えば塗布液の溶質と溶媒の割合、塗布液の粘度、塗布速度等を管理する必要があり、特に、塗布液の粘度を管理するための装置は多種開発されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62−297151号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】2008/11/12、株式会社東京カソード研究所 「液体粘度測定装置の開発に関するお知らせ」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記塗布方式において、塗布量を一定に保つためには、例えば塗布液の溶質と溶媒の割合、塗布液の粘度、塗布速度等の条件を予め設定して塗布を行うが、これらの条件は、経験や実績値から決められることが多く、環境要因、材料起因の変化などに左右されている。また塗布層の良否については塗布層の完成状態から推測することが一般的に行われている。そのため条件設定は、完成物からのフィードバックとなり、中間ロス、製造ロス、条件出しロスが問題となっている。
【0008】
一方、フィルムや紙などの連続状または枚葉状の基材を搬送する機構やコーティングヘッド機構においても、一定量の塗布層膜を得るために搬送速度の均一性が要求されたり、各々の機構の機械精度が要求されたり、運転に伴う機械振動が塗布層の品質に影響を与えている。
【0009】
上記条件が決定されても、形成しようとする塗布層の膜厚によってはバラツキが生じたり、広幅の基材に塗布膜を形成する場合、基材の両端と中心では膜厚が異なる現象が多く発生したりする。また上記条件が塗布開始時には適性であっても、材料等の状態は塗布中に変動するものであるため、その都度塗布層を設けた完成物を検査し、塗布層の品質の良否を判断しなければならないといった問題がある。
【0010】
また塗布液の性状、例えば粘度については、塗布液を塗布する位置とは離れた場所にある塗布液タンク内で粘度を計測しフィードバックする装置は多々あるが、あくまでもこれらは代用値であり、まさに塗布しようとする位置での基材上での性状を計測し調整するものではない。
【0011】
非特許文献1のように、基材に塗布した状態で液体粘度を測ることができる装置は存在するが、未だラボ機レベルに留まっており、塗布液中への樹脂粒子投入等も必要であるので工業用の塗布管理には適用できない。
【0012】
本発明は、係る従来技術の課題を解決するものであり、乾燥前の塗布層の表面状態を基材を搬送しながら観測することによって、一定の塗布量を維持することを可能とする塗布量管理装置を提供する課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題を解決するための手段として、請求項1に記載の発明は、塗布装置によって基材上に塗布液を塗布して得られた塗布層の塗布量を管理する装置であって、塗布された塗布層を、乾燥する手前で基材を搬送しながら塗布層表面を照明する手段と、照明された塗布層表面を撮像する手段と、撮像した画像から塗布層の表面に発生した液滴の間隔を求める画像処理手段とを備え、求めた塗布層の表面に発生した液滴の間隔に基づいて塗布層の塗布量を管理することを特徴とする塗布層の塗布量管理装置である。
【0014】
請求項2に記載の発明は、塗布液の性状と塗布速度を一定とした場合の塗布液の粘度と液滴の間隔の関係を示す検量線を予め作成し、前記求められた液滴の間隔と前記検量線から塗布液の粘度を算出する粘度算出手段を有し、算出した塗布液の粘度から粘度または塗布速度を調整して塗布量を一定に保つことを特徴とする請求項1記載の塗布層の塗布量管理装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、様々な塗布方式において塗布後の基材上塗布層を未乾燥の状態で基材を搬送しながら塗布層の表面状態を撮像し、その表面状態を撮像した画像から、塗布層の表面に発生した液滴の間隔を求め、求められた液滴の間隔と予め作成した検量線から塗布液の粘度を求め、求められた粘度から塗布液の粘度、または塗布速度をリアルタイムに調整することによって塗布量を一定に保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る塗布量管理装置の概略図。
【図2】本発明に係る塗布量管理装置が適用される塗布装置を示し、グラビアコート装置 を一例として示す図。
【図3】本発明に係る塗布量管理装置の照明部及び撮像部を示す図。
【図4】本発明に係る撮像カメラで塗布層の表面状態を撮像した画像を模式的に示した図
【図5】各液滴間の間隔を模式的に示した図。
【図6】液滴の間隔と塗布液の粘度の関係を示す検量線を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に本発明を実施するための形態を図を用いて説明する。図1は、本発明に係る塗布量管理装置の概略図を示す。塗布量管理装置1は塗布装置(図示せず)によって基材10上に塗布液を塗布して得られた塗布層11の表面を照明する手段である照明部2と、照明された塗布層表面を撮像する手段である撮像部3と、撮像した画像を処理する画像処理手段である画像処理部4を備えている。照明部2、撮像部3、画像処理部4はコントローラ部5によって制御され、制御部7には画像処理部4、コントローラ部5、塗布量管理装置1を操作する操作パネルや画像処理結果等を表示する表示部6が備えられている。
【0018】
図2は、本発明に係る塗布量管理装置1が適用される塗布装置を示し、グラビアコート装置を一例として示す図である。図2において、例えばウェブ状基材21は、巻き出しロ
ール22から巻き出される。ウェブ状基材21は搬送方向を示す矢印28の方向に搬送されながらグラビアコートユニット23においてドクター31で余分な塗布液が掻きとられたインキローラ29と圧胴30によってウェブ状基材21上に塗布液が塗布され、塗布層24が形成される。更に乾燥炉25で塗布層24が乾燥された後、巻取りロール26でウェブ状基材21が巻き取られる。
【0019】
図2中の27は、照明部及び撮像部を含む部分を示すもので、グラビアコートユニットで塗布液が塗布された直後の塗布層を未乾燥状態でその表面を照明し、撮像カメラで撮影するものである。図3は、この照明部及び撮像部27を詳細に示した図で、塗布層24の表面を照明する照明光源32と撮像カメラ33は図に示されるように配置されている。
【0020】
照明部及び撮像部27は照明手段として用いられる照明光源32を例えばメタルハライドランプを使用して、塗布層の表面状態、特に表面凹凸の状態が撮像し易い状態とすることが望ましい。また照明光源32は単数でも良いが複数用いることによって、撮像視野全体を均一な明るさで照明することが望ましい。また撮像手段として用いる撮像カメラ33は基材21と直交する方向に配置し、光源32の反射光が直接、撮像カメラ33に入射しないようにすることが望ましい。
【0021】
撮像カメラ33と照明光源32の配置を上記のようにすることによって、塗布液は有色不透明な液に限定されず、無色透明な液であっても撮像カメラ33で撮像される塗布層表面の画像は、表面の凹凸画像を撮像することができる。
【0022】
撮像カメラ33は100コマ/秒以上の撮影速度が可能な高速度カメラを使用することによって、塗布速度が100〜数百m/分の塗布装置においても撮像が可能である。
【0023】
また上記照明部及び撮像部27はウェブ基材21が搬送されるパス内であれば複数設けても良く、グラビアコートユニット23から乾燥炉25の間であればどこに配置してもよい。
【0024】
粘度が比較的高い塗布液の場合、インキローラー29とウェブ状基材21が接触しつつ、インキローラー29が回転しウェブ状基材21が搬送されると、ウェブ状基材21の表面に塗布された塗布液の表面にリビング(ribbing)と呼ばれるうね状の凹凸が、搬送方向に発生する。発生後、少し時間が経過すると、このリビングはところどころで切れてうね状から液滴が点線状に並んだような状態になり、その状態で乾燥する。
【0025】
塗布液の性質(粘度、溶質/溶媒の割合)や塗布量により、発生するリビングの間隔や、リビングが切れて液滴になるときの間隔が変化する。本発明の装置は、この液滴の間隔の変化をモニタリングするものである。
【0026】
図4は撮像カメラ33で塗布層24の表面状態を撮像した画像を模式的に示した図である。ここで、塗布層24上の円形の点40はウェブ状基材の搬送方向41に平行に点線状に並んだ液滴を示しており、図5に示される各液滴間の例えば間隔D1を求めることによって、塗布液粘度やウェブ基材21の速度の変動有無を知ることができる。各液滴の間隔はD1を採用しても良いが、D1、D2、D3、D4、D5の平均を求め、それを液滴の間隔としても良い。
【0027】
塗布液粘度や塗布速度の変化は急激に発生するものではないため、撮像カメラ33は100コマ/秒以上の撮影速度を有するカメラであるが、撮像した全ての画像を画像処理に用いる必要が無く、例えば毎秒1コマの画像を処理して上記液滴の間隔を求めればよい。
【0028】
上記液滴の間隔に基づいて塗布量を管理するが、図6に示すように予め塗布液の性状(例えば溶質と溶媒の割合)と塗布速度を一定にして、塗布液の塗布量を塗布量A、塗布量B、塗布量Cのようにパラメータとした場合の液滴の間隔と塗布液の粘度の関係を示す検量線を予め作成しておき、求められた液滴の間隔から塗布液の粘度を算出する。前記粘度算出手段によって算出された塗布液の粘度から、塗布量管理装置は、表示部に算出した塗布液の粘度、塗布液の粘度調整、または塗布速度を調節する旨の表示を行い、塗布液タンクに粘度データ、または塗布装置に速度制御データを送信する。このようにして塗布量を一定に保持することが可能となる。一般的には、塗布速度は塗布装置の速度に由来するため、塗布装置の速度を調節するよりも、塗布液の粘度を調節することが望ましい。
【0029】
以上のように、本発明による塗布量管理装置によれば塗布層の表面を撮像し、撮像した画像から塗布層の表面に発生した液滴の間隔を測定して、得られた液滴の間隔と予め作成された検量線から塗布液の粘度を算出して、その結果、塗布液の粘度または塗布速度を調節することによって、塗布量を一定に保持することが可能となる。
【0030】
なおここではグラビアコート装置の一例を挙げたが、本発明は他の塗布方式でも同様に展開が可能で、また、基材が巻き取り状であっても、枚葉状であっても適用することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0031】
従って本発明は、接着液を均一に塗布することが求められる食品包装分野や、塗布量が機能性に大きく関わる機能性フィルム分野や液晶ディスプレイパネルやプラズマディスプレイパネル等のフラットパネルディスプレイ分野において、優れた実用上の効果を発揮する。
【符号の説明】
【0032】
1・・・塗布量管理装置
2・・・照明部
3・・・撮像部
4・・・画像処理部
5・・・コントローラ部
7・・・制御部
10・・・基材
11・・・塗布層
21・・・ウェブ状基材
22・・・巻き出しロール
23・・・グラビアコートユニット
24・・・塗布層
25・・・乾燥炉
26・・・巻取りロール
28・・・ウェブ状基材の搬送方向を示す矢印
29・・・インキローラ
30・・・圧胴
31・・・ドクター
32・・・照明光源
33・・・撮像カメラ
40・・・円形の点
41・・・ウェブ状基材の搬送方向を示す矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗布装置によって基材上に塗布液を塗布して得られた塗布層の塗布量を管理する装置であって、塗布された塗布層を、乾燥する手前で基材を搬送しながら塗布層表面を照明する手段と、照明された塗布層表面を撮像する手段と、撮像した画像から塗布層の表面に発生した液滴の間隔を求める画像処理手段とを備え、求めた塗布層の表面に発生した液滴の間隔に基づいて塗布層の塗布量を管理することを特徴とする塗布層の塗布量管理装置。
【請求項2】
塗布液の性状と塗布速度を一定とした場合の塗布液の粘度と液滴の間隔の関係を示す検量線を予め作成し、前記求められた液滴の間隔と前記検量線から塗布液の粘度を算出する粘度算出手段を有し、算出した塗布液の粘度から粘度または塗布速度を調整して塗布量を一定に保つことを特徴とする請求項1記載の塗布層の塗布量管理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−11104(P2011−11104A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−155011(P2009−155011)
【出願日】平成21年6月30日(2009.6.30)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】