説明

塗料を脱気する方法及び装置

本発明は塗料を脱気する方法と装置に関する。本方法では、塗料は真空容器内に供給され、その内部に塗料からガスを分離する手段が設けられている。本方法では、二つの分離した区画室が形成されており、単一の装置を使用して二つの異なる段階で脱気が行われる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料の脱気方法及び装置に関する。この方法においては、塗料は、塗料からガスを分離する手段を有する真空容器内に供給される。
【背景技術】
【0002】
当該処理産業分野において、処理において使用される液体と成分に空気のようなガスを混合する場合、いくつかの問題に遭遇する。特に、紙や繊維ウェブの塗装の場合、塗料中のガスや気泡が塗装する紙の表面を粗面にし、塗装が全く行われない部分でさえそのようなことが生じる。この問題はある種の塗料においては他の材料より大きく、ガスをより多く蓄積する塗料において特に強くなる。例えば、タルクを含む塗料は、タルクの特性により多量のガスを含む。
【0003】
この問題の重要性は、更に、使用される塗装方法によっても影響される。例えば、カーテン塗装においては、塗料のガス含量は、多くても体積の0-0.25%である。そうでなくても、塗料中に拘束されたガスは紙又はボードのような塗装される材料中に非塗装領域を生じることとなる。
【0004】
多層カーテン塗装においては、脱気の重要度はより大きくなる。したがって、もし、例えば、3乃至4層ある場合、各層を形成するために使用される塗料は出来るだけ注意深く脱気を行う必要がある。
【0005】
塗料中に混合又は溶解しているガスを除くため、真空脱気器が開発されているが、その一つの例が図1に示されている。この装置は、真空容器内に配置された塗料が導入される回転ドラムを有し、塗料が遠心力によりドラム内壁を上昇し、真空容器壁と衝突して薄いフィルム状となってドラムから排出される。
【0006】
先行技術の真空脱気器の問題点は、特に高い粘度を持つ材料において脱気の能力が十分でないということである。これは、高い粘度の塗料に含まれる小さい空気の気泡が、高い真空度、即ち低い絶対圧力、の下においてでさえ、破裂、或いは特別の上昇速度により顕著なものとなるのに十分な程大きくなることができないという事実によるものである。
真空度を上げてこの問題を除く試みがなされたが、その結果、塗料に使用される溶媒、例えば、水、が著しく沸騰し易くなり、その結果、塗料の溶媒の蒸発によって塗料中の固形分が増加することとなり、塗料の質の劣化をもたらす。使用される他の方法には混合時間を増やすことがあるが、この場合、脱気器の運転能力が低くなり、脱機器の台数を多くする必要がある。更に、既知の脱機器の分離能力を装置の規模を大きくして増したとしても、装置の規模が非常に大きくなり、製造コストが著しく増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明による方法及び装置の目的は、塗料に含まれるガスが従来のものより良好に除去することのできる改良されたガス分離の解決を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するため、本発明による方法は、第2の容器部の内部に実質的に垂直な軸の周りに回転する回転ドラムを配置することを特徴とし、また、本方法において、塗料が第1の容器部からドラムの底部に導入され、ドラムの回転運動が塗料をドラムの内壁を上昇させ、ドラムの上側縁から第2の容器部の内壁に対して薄いフィルム状に放出させ、そこから塗料は下降して排出手段により装置から排出されるようにすることを特徴としている。本発明によるこの装置は、真空にするための手段が連結されている第1容器部と、前記第1容器部に塗料を供給するための手段と、前記第1容器部内の塗料を脱気する手段と、前記第1容器部から前記塗料を排出する手段と、真空にするための装置が連結されている第2容器部と、第2容器部内に塗料を供給するための手段と、第2容器部内の塗料を脱気する手段と、第2容器部内の塗料を排出するための手段とを有し、塗料は、先ず、第1容器部に供給され、そこで、第1の脱気が行われ、次に、第1容器部から第2容器部に供給され、そこで第2の脱気が行われ、前記第2容器部の内部に実質的に垂直軸の周りに回転するドラムが配置され、その底部に塗料が前記第1容器部より供給され、前記ドラムの回転運動が塗料をドラムの内壁を上昇させ、ドラムの上縁から薄いフィルム状にして前記容器部の内壁に向けて排出させ、そこから塗料を下降させて排出手段により装置より排出させるようにすることを特徴としている。
【0009】
本発明の好ましい実施例においては、略1kPa-15kPaの絶対圧力が真空容器部に与えられる。もし、より低い圧力がチャンバ内に与えられると、このことは、塗料中の溶媒の沸点が下がり、脱気の結果、塗料の質が低下するリスクが出てくることを意味する。一方、より高い圧力がチャンバ内に与えられると、真空によって塗料中の気泡のサイズを必ずしも十分に大きくすることができないということとなる。真空チャンバ内の絶対圧力3kPa-15kPaが非常に好ましい。使用される絶対圧力の下限を上げることにより、脱気の間に塗料が沸騰できなくなるということを良好に確実なものとする。
【発明の効果】
【0010】
本発明による方法と装置の利点は、その効率にあり、これにより、極めて多量の塗料中に含まれるガスを迅速に除去することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、以下に図面を参照にして以下により詳細に説明され、ここで:
図1は、先行技術の真空脱気器を概略的に示し、
図2は、本発明による解決原理を概略的に示す図であり、
図3〜5は、本発明による装置の他の実施例を概略的に示す図である。
【0012】
図1は塗料から、ガス、典型的には空気、を除去するための真空-作動による装置を概略的に示す。図示されるように、このシステムは、防水性の真空容器1,その内部に配置されたモータ2により回転されるドラム3を有している。ガスを含有する塗料はパイプ4を通してドラムの内部に供給される。ドラムが回転すると、塗料は遠心力によりドラムの内壁を上昇し、遠心分離作用によりドラムの上縁から接線方向に薄いフィルム状となって真空容器の壁に向けて放出され、その壁に沿って下降し、容器の底部にある排出口7を通して排出される。フィルム内にある気泡は破裂し、空気は真空源に連通する脱気器を経て真空パイプを通して排出される。
【0013】
図2は本発明による装置の原理を概略的に示す。装置10は、第1の上側容器部11及び第2の下側容器部12を備える。脱気される塗料はパイプ13を通して上側容器部に供給され、そこで第1の脱気段階が行われ、その後、塗料は下側容器部に送られ、そこで第2の脱気段階が行われ、その後、塗料はそこから放出手段14を介して使用される場所に移送される。上記第1段階、即ち、予備脱気段階においては、好ましくは、塗料中に含まれるガスの主要部分が除去され、残りの部分が後の段階で除去される。この方法は脱気の効率を実質的に高め、単一の段階の脱気能力の少なくとも2倍、好ましくは3乃至4倍の能力を出すこととなり、例えば、単一の段階の装置を2台使用した場合と比較して、比較的低コストでより小さいスペースですむという結果を生む。
【0014】
図3は本発明による実施例の装置を示す。本装置は各容器部11内に配置される回転ドラム3を有し、この回転ドラム3はモータ2により駆動される。ドラムの内面はステップを有し、図示の実施例では2ステップのレベル20,21を有し、回転運動の作用により上昇する塗料が各ステップレベルにおいて、それぞれ、薄い、ベールのようなフィルムを形成する。最後のレベルを去るとき、フィルム状ペーストはドラムの上端縁から容器部11に内壁に案内され、内壁に沿って更に容器の下方に案内され、そこから下側容器12に導かれる。図示された実施例においては、下側容器部に対応するドラムがあり、そのドラムも同様にモータ2により駆動される。両方の容器部11,12のドラムは、本出願人により既に出願されたフィンランド特許出願F1 20055280号に開示された解決法に対応しており、そこでは先行技術と比較して改良された脱気能力が達成されている。
【0015】
下側容器1の上部領域には、好ましくは、形成されるベール状のフィルムを表示する手段(図示ぜす)が設けられていて、ベール状フィルムが損傷のない状態を保持しているとき、そのペースト中には気泡が存在しないことがわかる。その表示手段により形成される映像情報は脱気装置の運転パラメータを制御するためにも使用することができる。
【0016】
ステップレベルは、例えば、図3の連続する凹状区域を持つように造ることができ、その前縁20a、21aはステップのレベルの上昇程度、即ち、形成される薄いベール状フィルムの上昇の程度を決定している。脱基効率の向上と装置のコンパクト化を達成するため、連続するステップレベル間の高低差は、好ましくは、20mmから150mmの範囲であり、より好ましくは40mmから100mmの範囲である。ステップレベルの半径方向の差、即ち、生成されるベールの幅は、好ましくは、20mmから200mmの範囲、より好ましくは40mmから120mmの範囲である。ドラム3を出る最終的なベール状フィルムの厚さは、最大で所望される塗装層の厚さと同程とするのが好ましい。
【0017】
塗料供給手段4,4aは、好ましくは、ノズル部24を有し、このノズル部は、ドラムの底部の中央近傍に設けられ、そのノズル部の周囲に環状の保護部25が配置され、この保護部は、塗料が横方向に飛び散ること、及び塗料の厚い部分が形成され、その結果、塗料がドラム壁を上昇して塗料の脱気が不均一となり、繊維ウェブ状に形成する塗装に欠陥が生じることを防ぐ。
【0018】
本発明による解決方法は、ペーストの脱気を改善すると共に処理能力を増加させる。この方法は、また、処理時間をモニターし、そのモニタリングに基づいて処理の運転パラメータを制御することを可能とする。この運転パラメータには、ドラム3の回転速度、容器部11,12の真空度、ドラムに供給されるペーストの供給量により影響される下側容器部の底部における流体レベルの高さ、及び容器部から排出される脱気されたペーストの排出量が含まれる。
【0019】
塗料ペーストの多段階にベール状とすることは脱気を改善し、このことは、従来のものより絶対圧力レベルの下限を高くして使用することを可能とし、従って、低すぎる圧力によって成分の一部が蒸発することにより生じるペーストの質を悪くすることを避けることができる。
【0020】
図4は本発明による他の実施例の装置を示し、ここでは下側容器部12は図3の下側容器部に対応している。上側容器部11はサイクロンとして造られており、ここで予備脱気が行われる。
【0021】
図5本発明により更なる他の実施例の装置を示し、ここでは、下側容器部12は図3の下側容器部に対応している。上側容器部11には噴霧手段23が設けられおり、ここから脱気される塗料が小滴となって流出し、これにより真空の作用によってより容易にガスの分離が行われる。
【0022】
本発明による解決方法は塗料以外の材料の脱気にも使用できることは着想できるところであり、例えば、スラッジの脱気にも使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】先行技術の真空脱気器を概略的に示す図である。
【図2】本発明による解決原理を概略的に示す図である。
【図3】本発明による装置の他の実施例を概略的に示す図である。
【図4】本発明による装置の他の実施例を概略的に示す図である。
【図5】本発明による装置の他の実施例を概略的に示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗料を、塗料からガスを分離するための手段を内部に有する真空容器内に供給し、単一の装置を使用して二つの異なる段階で脱気が行われるように、二つの分離した容器部が設けられた脱気装置が使用される塗料を脱気する方法であって、
第2容器部に実質的に垂直な軸の周りを回転するドラムが設けられ、塗料は第1容器部から前記ドラムの底部に供給され、
前記ドラムの回転運動が塗料をドラムの内壁に沿って上昇させ、前記ドラムの上端縁から薄いフィルム状にして第2容器部の内壁に向けて放出させ、前記塗料を流下させて排出手段により前記装置より排出させるようにしたことを特徴とする塗料を脱気する方法。
【請求項2】
内部を真空にするための手段が連結された第1容器部と、前記第1容器部に塗料を供給するための手段と、前記第1容器部内で塗料を脱気する手段と、前記第1容器部から前記塗料を排出する手段と、
真空にするための手段が連結された第2容器部と、前記第2容器部に塗料を供給するための手段と、前記第2容器内の前記塗料を脱気する手段と、前記第2容器部内から前記塗料を排出するための手段を有し、
前記塗料は、第1の脱気が行われる前記第1容器部に先ず供給され、次に、前記塗料は前記第1容器部から第2の脱気が行われる前記第2容器部に供給されるようにした塗料を脱気する装置であって、
前記第2容器部内には、塗料が前記第1容器部から底部に供給される実質的に垂直な軸の周りに回転する回転ドラムが設けられ、
前記ドラムの回転運動が前記塗料を前記ドラムの内壁に沿って上昇させ、前記ドラムの上端縁から薄いフィルム状にして第2容器部の内壁に向けて放出させ、前記塗料を流下させて排出手段により前記装置より排出させるようにしたことを特徴とする、
塗料を脱気する装置。
【請求項3】
前記塗料が、少なくとも二つの異なるステップレベル上で薄いベール状のフィルムを形成するようにして前記ドラムの内壁を段階的に上昇するようになし、前記塗料中の気泡が破壊及び/又は前記塗料から除去されて前記第2容器部から更に排出されることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1容器部及び/又は第2容器部内は約1KPaから15KPaの絶対圧力とされる請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記第1容器部及び/又は第2容器部内は約3KPaから15KPaの絶対圧力とされる請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記塗料供給手段は前記ドラムの底部の中央近傍に設けられたノズル部を有し、前記ノズル部の周囲に前記塗料が横方向に飛散することを防止するための環状保護部が設けられていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかの装置。
【請求項7】
前記第1容器部内には、塗料が前記第1容器部から底部に供給される実質的に垂直な軸の周りに回転する回転ドラムが設けられ、
前記ドラムの回転運動が前記塗料を前記ドラムの内壁に沿って上昇させ、前記ドラムの上端縁から薄いフィルム状にして前記容器部の内壁に向けて放出させ、前記塗料を流下させて排出手段により前記第2容器部に排出させるようにしたことを特徴とする、請求項2乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記塗料が、少なくとも二つの異なるステップレベル上で薄いベール状のフィルムを形成するようにして前記第1容器部内の前記ドラムの内壁を段階的に上昇するようになし、前記塗料中の気泡が破壊及び/又は前記塗料から除去されて前記第1容器部から更に排出されることを特徴とする請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第1容器部の内部に前記塗料からガスを分離させるサイクロンが設けられることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の装置。
【請求項10】
前記第1容器部の内部に前記塗料を前記第1容器内に小滴の状態で供給するための噴霧手段が設けられていることを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−521325(P2009−521325A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548001(P2008−548001)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【国際出願番号】PCT/FI2006/050486
【国際公開番号】WO2007/074211
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507009216)メッツォ ペーパー インコーポレイテッド (76)
【Fターム(参考)】