説明

塗料供給システム及び塗料供給方法

【課題】塗料の色替え時に行われる洗浄において、塗料ロスを大幅に削減する。
【解決手段】塗料供給システム10は、被塗装物に塗料を塗布する塗装ガン26に接続されて、複数種類の塗料及び洗浄流体のうち選択された塗料又は洗浄流体を塗装ガン26に供給する。塗料供給システム10は、選択された塗料又は洗浄流体を流入可能な貯留空間52を有する筒体30と、筒体30に連設されて複数種類の塗料及び洗浄流体を貯留空間に供給可能なCCV34と、を備える。貯留空間52には、選択された塗料又は洗浄流体が所定のタイミングで供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物に塗料を塗布する塗布部に、複数種類の塗料及び洗浄流体のうち選択された塗料又は洗浄流体を供給する塗料供給システム及び塗料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、塗装部に塗料を供給する塗料供給システムには、複数種類の塗料又は洗浄流体(洗浄に用いられる液体や気体)を選択的に供給する供給弁部、すなわち色替えバルブ装置(color change valve:以下、単にCCVともいう)が設けられている(特許文献1及び2参照)。この場合、塗料の色替え時に、先に使用(塗布)されていた塗料の洗浄が実施される。
【0003】
例えば、特許文献1には、塗料の色替え時に、CCVが有する所定のバルブから洗浄液(又は洗浄空気)が供給されて塗料供給システム(静電塗装装置)内の洗浄が行われる技術が開示されている。具体的には、バルブから供給される洗浄液が、CCV、塗料供給配管、ポンプのシリンダ(筒体)、静電塗装機(塗布部)の順に塗料供給システム内を通過していくことで、各構成内に残存している塗料を洗浄していく。
【0004】
同様に、特許文献2にも、塗料の色替え時に、洗浄弁から供給された洗浄液が、CCV(色替弁機構)の駆動作用下に、該CCV、管路、シリンダ及び送出路を洗浄することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平4−87755号公報
【特許文献2】特開2004−275977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1及び2のように、塗料の色替え時に、供給弁部(CCV)から洗浄液を供給して塗装装置までの洗浄を行う構成では、塗料供給システムを構成する部材(例えば、塗料を供給する配管)に、使用されていない塗料が比較的多く残った状態で洗浄が行われる。その結果、塗料ロス(洗浄によって廃棄される塗料)が増加し、被塗装物の塗装にかかるコストが増えてしまうという課題が生じる。
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、供給弁部から塗料又は洗浄流体を貯留空間に直接供給することで、塗料の色替え時の洗浄において塗料ロスを大幅に削減することができ、これにより塗装コストを低減することができる塗料供給システム及び塗料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するために、本発明は、被塗装物に塗料を塗布する塗布部に接続されて、複数種類の塗料及び洗浄流体のうち選択された塗料又は洗浄流体を前記塗布部に供給する塗料供給システムであって、前記塗布部に接続され、前記選択された塗料を一時的に貯留するとともに該塗料を所定のタイミングで排出可能な貯留空間を有する筒体と、前記複数種類の塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に個別に供給可能な供給弁部と、を備え、前記供給弁部は、前記筒体に連設され、前記選択された塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に直接供給することを特徴とする。
【0009】
上記によれば、供給弁部が筒体に連設され、選択された塗料又は洗浄流体を貯留空間に直接供給することで、塗料の色替え時には、貯留空間に洗浄流体を直接供給して洗浄を行うことができる。また、この洗浄流体を貯留空間から排出することで、塗布部にも該洗浄流体を容易に供給することができる。すなわち、供給弁部を筒体に連設することで、供給弁部と筒体の間の配管等が省略されるため、供給弁部から筒体に配管を接続して塗料を供給する従来の構成と比べて、塗料ロスを大幅に削減できる。よって、塗装コストを低減することができる。
【0010】
この場合、前記筒体には、前記貯留空間を摺動自在なピストンが設けられており、前記ピストンは、一方向の移動によって前記選択された塗料を前記供給弁部から前記貯留空間に流入させ、他方向の移動によって前記選択された塗料を前記貯留空間から排出させる構成とすることができる。
【0011】
このような構成とすれば、ピストンの一方向の移動において、供給路以外の箇所(例えば、塗布部)から貯留空間への空気の入り込みを防ぎつつ選択された塗料のみを貯留空間に良好に流入することができ、またピストンの他方向の移動において、貯留空間に流入した塗料をスムーズに排出することができる。
【0012】
また、前記供給弁部は、前記複数種類の塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に個別に供給可能な複数の供給路を備え、前記複数の供給路は、前記筒体の側面に軸方向に並べて接続され、前記ピストンには、前記複数の供給路の配置位置に沿って軸方向に第1の溝部が形成されていることが好ましい。
【0013】
このように、複数の供給路が筒体の側面に軸方向に並べて接続され、ピストンに複数の供給路の配置位置に沿って軸方向に第1の溝部が形成されていることで、軸方向に接続されている供給路と貯留空間を容易に連通させることができる。このため、複数の供給路から供給される塗料又は洗浄流体を、貯留空間にスムーズに流入させることができるので、供給路以外の箇所(例えば、塗布部)から貯留空間に空気が入り込むことをより確実に防ぐことができる。
【0014】
さらに、前記複数の供給路は、前記筒体の側面に周方向に並べて接続され、前記ピストンには、前記複数の供給路の配置位置に沿って周方向に第2の溝部が形成されていることが好ましい。
【0015】
このように、複数の供給路が筒体の側面に周方向に並べて接続され、ピストンに複数の供給路の配置位置に沿って周方向に第2の溝部が形成されていることで、選択された供給路から流入される塗料を、第2の溝部を通過させることで、ピストンの反対側にも容易に案内することができる。これにより、塗料又は洗浄流体を、貯留空間によりスムーズに流入させることができる。
【0016】
ここで、前記筒体を前記塗布部の近傍に配設すると、供給弁部と塗布部との距離を短くすることができる。したがって、塗料の塗布の終了時に、供給弁部、塗布部及びその連通部分に残存する塗料を少なくすることができ、洗浄時の塗料ロスをさらに削減することができる。
【0017】
また、本発明は、被塗装物に塗料を塗布する塗布部に、複数種類の塗料及び洗浄流体のうち選択された塗料又は洗浄流体を供給する塗料供給方法であって、筒体に連設された供給弁部により、前記複数種類の塗料及び洗浄液のうち前記筒体の貯留空間に供給する塗料又は洗浄流体を選択する選択ステップと、前記選択ステップにおいて選択された塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に供給する供給ステップと、前記供給ステップにおいて前記貯留空間に貯留された塗料を排出して前記塗布部に供給し、該塗料を塗布する塗布ステップと、を有することを特徴とする。
【0018】
上記のように、選択ステップ、供給ステップ、塗布ステップを有することで、選択された塗料又は洗浄流体を、供給弁部から筒体の貯留空間を介して塗布部にスムーズに案内することができる。したがって、塗布部が塗布する塗料に空気が入り込む等の不都合を抑止することができる。また、筒体に連設された供給弁部により、選択された塗料又は洗浄流体を貯留空間に直接供給することができるため、塗料ロスを大幅に削減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、色替え時に行われる洗浄において、塗料ロスを大幅に削減することができ、塗装コストの低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施の形態に係る塗料供給システムを備えた塗装ロボットを示す斜視図である。
【図2】図1のシリンダ装置を説明するための図であり、図2Aは概略側面断面図、図2Bは概略正面断面図である。
【図3】図2のシリンダ装置のピストンを示す斜視図である。
【図4】図1の塗料供給システムのバルブの接続関係を示すブロック図である。
【図5】図4の塗料供給システムによる塗装時の動作フローを示すフローチャートである。
【図6】図4の塗料供給システムによる洗浄時の動作フローを示すフローチャートである。
【図7】図4の塗料供給システムによる洗浄時の動作フローの変形例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明に係る塗料供給システムについて、それを実施する塗料供給方法の関係で好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1は、本実施の形態に係る塗料供給システム10を備えた塗装ロボット12を示す斜視図である。塗料供給システム10は、自動車のボディ等のワーク(被塗装物)に塗料を塗布する塗装ロボット12に設けられている。よって、先ずこの塗装ロボット12について具体的に説明していく。
【0023】
塗装ロボット12は、例えば、産業用の多関節型ロボットであり、塗装室内の所定位置に固定されるベース部14上に、旋回部16が鉛直軸回りに旋回自在に設けられている。この旋回部16の上部には、第1アーム18の基端が鉛直方向に回動可能に連結されている。また、第1アーム18の先端には、第2アーム20が鉛直方向に回動可能に連結されている。
【0024】
第2アーム20は、第1アーム18に接続される基端側の連結部20aと、連結部20aの先端側に連設され、さらに先端方向に所定長さ延びる筒状の延出部20bとを有する。この延出部20bの側周面上部側には、シリンダ装置22が配設されている。また、延出部20bの先端からは、一対の挟持板24が延出しており、この一対の挟持板24は、第2アーム20の軸心回りに回動可能に配設されている。塗装ガン26は、この一対の挟持板24に支持(挟持)され、支持箇所を基点として揺動可能とされている。なお、塗装ロボット12は、上記のような構成に限定されるものではなく、ワークに対して塗装ガン26を相対的に移動可能な種々の装置及び機構を適用することができる。
【0025】
塗装ガン26は、例えば、ワークに対し静電塗装を行う周知の回転霧化式塗装装置を適用することができる。この場合、回転霧化式塗装装置(塗装ガン26)の先端部には、回転霧化頭26aが設けられている。ワークに塗料を塗布する場合は、高電圧を印加した状態で回転霧化頭26aを回転させて、この回転霧化頭26aに塗料を供給する。これにより、塗料をマイナス極に帯電させて霧化(微粒化)し、この霧化塗料を先端部(回転霧化頭26a)から噴霧することができる。そして、塗装ガン26は、アースにつながっているワークに霧化塗料を塗布することで、良好な塗装を実施することができる。なお、塗装ガン26は、静電塗装を行う回転霧化式塗装装置に限定されないことは勿論である。
【0026】
ワークの塗装を行う場合は、制御部58(図4参照)によって、塗装ロボット12の複数の関節部分(旋回部16、第1アーム18の一端、第2アーム20の一端及び一対の挟持板24)を駆動制御して塗装ガン26をワークに対し相対的に移動させ、塗装ガン26の回転霧化頭26aをワークの所定箇所に対向させる。すなわち、塗装ロボット12は、塗料の塗装位置(ワークの対向位置)に塗装ガン26を位置決めする。この状態で塗装ガン26により塗料を噴霧することで、ワークの所定箇所が塗装される。
【0027】
延出部20b(第2アーム20)の側面に装着されるシリンダ装置22は、複数種類の塗料又は洗浄流体を選択的に塗装ガン26に供給する機能を有している。すなわち、本実施の形態に係る塗料供給システム10では、塗料として、顔料(色)や溶剤、添加剤等に応じた複数種類の塗料が選択されてワークに塗布される。一方、洗浄流体は、シリンダ装置22及び塗装ガン26内の洗浄を目的として供給されるものであり、本実施の形態では、洗浄液と洗浄用空気の2つが所定のタイミングで供給される。
【0028】
図2は、図1のシリンダ装置22を説明するための図であり、図2Aは概略側面断面図、図2Bは概略正面断面図である。なお、以降の説明では、図2Aに示す矢印方向に基づき、シリンダ装置22の前方(先端)と後方(基端)を指示するものとする。
【0029】
本実施の形態に係るシリンダ装置22は、図2Aに示すように、第2アーム20の延出部20b側面に装着固定される筒体30と、筒体30の内部空間30aに収容されるピストン32と、筒体30の前部側に連設される色替えバルブ装置(CCV:供給弁部)34と、を備えている。
【0030】
シリンダ装置22は筒体30を有するとともに、ピストン32が前後方向に摺動自在に収容されている。この筒体30の前方側の開口部30bには、蓋体36が嵌合されている。すなわち、筒体30の内部空間30aは、筒体30の内壁30cと蓋体36によって密閉された状態となっている。
【0031】
蓋体36には、2つの連通路36aが形成されており、これらの連通路36aの前方側には2つの排出用端子(第1排出用端子38、第2排出用端子40)が取り付けられている。第1及び第2排出用端子38、40は、筒体30の内部空間30aから塗料を排出する機能を有している。図1に示すように、第1排出用端子38は、供給チューブ42を介して塗装ガン26に接続されており、第2排出用端子40は、排出チューブ44を介して、図示しない塗料廃棄部に接続されている。
【0032】
図2に戻り、筒体30は、後方側の底部に伝達棒46が挿通されている。伝達棒46は、先端部にピストン32が取り付けられるともに、筒体30から外側に延びる後端部に駆動モータ48が設けられている。
【0033】
ピストン32は、側周面が内部空間30aを構成する内壁30c(内径)に係合可能な外径に形成されている。ピストン32の後部側には、周方向に2つの凹部32aが刻設されており、この2つの凹部32aにはそれぞれOリング50が装着されている。このOリング50は、ピストン32を内部空間30a内に収容した状態で筒体30の内壁30cに当接し、ピストン32を液密に摺動可能としている。
【0034】
筒体30の内部空間30aには、内壁30cと、蓋体36の後面と、ピストン32の前部によって、塗料が流入される貯留空間52が形成される。この場合、貯留空間52は、ピストン32の前後方向の摺動にともない、その容積が変動自在となっている。
【0035】
また、駆動モータ48は、モータ(図示せず)の回転駆動力を進退方向の直線運動に変換する内部機構(図示せず)を有している。この駆動モータ48は、制御部58(図4参照)に接続され、伝達棒46を前後に移動させて、その先端部に取り付けられているピストン32を進退移動させる。駆動モータ48としては、特に限定されないが、例えば、ピストン32を精度よく移動させることができるサーボモータ等を用いると好適である。また、駆動モータ48以外の駆動源として、エアシリンダやリニアアクチュエータ等を適用してもよいことは勿論である。
【0036】
図1に示すように、シリンダ装置22のCCV34は、複数種類の塗料及び洗浄流体(洗浄液及び洗浄用空気)の供給を行う複数の供給路54を有している。これら複数の供給路54は、その端部54aが筒体30の側面に連設(接続)され、図2Aに示すように、端部54aの開口55が筒体30の内壁30cに露呈されている。すなわち、本実施の形態に係るシリンダ装置22は、筒体30の貯留空間52に塗料を貯留及び排出するシリンダとしての機能の他に、複数の供給路54から複数種類の塗料と洗浄流体(洗浄液及び洗浄用空気)が個別に流入されるマニホールド(多岐管)としての機能を有している。
【0037】
筒体30の側周面には、供給路54が軸方向に3本並べられるとともに周方向に7本並べられ、合計で21本接続されている。なお、供給路54の数は、これに限定されないことは勿論である。シリンダ装置22の貯留空間52には、この複数の供給路54によって複数種類の塗料及び洗浄流体が供給可能となっている。この場合、1種類の塗料(又は洗浄流体)は、1本の供給路54によって貯留空間52に供給されてもよく、複数本の供給路54によって貯留空間52に供給されてもよい。
【0038】
供給路54の開口55近傍(筒体30との連結部分)には、供給路54の連通を開閉する供給用バルブ56がそれぞれ設けられている。なお、図2では、供給路54(端部54a)を長方形状で示し、該供給路54内において先端が楔状のものを供給用バルブ56として概略的に示している。また、図2Aでは、筒体30の前方から後方に向かって3列配設される供給路54に対し符号A〜Cを付すこととする。
【0039】
CCV34は、制御部58(図4参照)や操作者により、複数の塗料及び洗浄流体の中から所望の塗料又は洗浄流体が選択されると、その塗料(又は洗浄流体)を供給する供給路54内の供給用バルブ56を開放し、該供給路54と貯留空間52を連通させる。これにより、選択された塗料(又は洗浄流体)を供給路54から貯留空間52に供給することが可能となる。
【0040】
貯留空間52に塗料(又は洗浄流体)を供給する場合は、供給用バルブ56の開放にともない、駆動モータ48によりピストン32を後退移動させる。これにより、ピストン32によって液密とされている貯留空間52の容積を変動させ、この容積変化にともなう吸引力によって供給路54から塗料(又は洗浄流体)を引き込むことができる。
【0041】
図3は、図2のシリンダ装置22のピストン32を示す斜視図である。本実施の形態に係るピストン32の側周面には、上記複数の供給路54の配置位置に沿って、複数の溝部(第1溝部60、第2溝部62)が形成されている。具体的には、ピストン32の中間部から前方に向かって軸方向に第1溝部60が刻設されており、この第1溝部60は、筒体30の周方向に7本配置された供給路54に対応して、ピストン32の側周面に7本設けられている。また、この第1溝部60と直交するように第2溝部62が周方向に刻設されており、この第2溝部62は、筒体30の軸方向に3本配置された供給路54に対応して、ピストン32の周面に3本設けられている。
【0042】
第1溝部60は、軸方向に3本並べられている最後方の供給路54C(図2A参照)と貯留空間52を連通させる機能を有している。すなわち、第1溝部60を有するピストン32により、軸方向に並べられた供給路54A〜54Cの開口55が全て貯留空間52に連通された状態となっている。
【0043】
ここで、例えば、第1溝部60が設けられていないピストンを用いた場合、このピストンの側周面と筒体30の内壁30cとの間に僅かな隙間しか存在しないことになる。このため、ピストンを後退移動しても、供給路54Cから貯留空間52への塗料の流入が、ピストンの側周面によって阻害されてしまい、その流入量が低下する可能性がある。この場合、貯留空間52の容積変化にともなう吸引力によって、貯留空間52内に塗料以外の混入物(空気等)が入り込むおそれもある。
【0044】
また、複数の供給路54を軸方向に配置せず、例えば、図2A中の供給路54Aの位置に対し、周方向に多数の供給路54を接続する構成も考えられるが、この場合、筒体30の大型化を招くことになる。その結果、シリンダ装置22を塗装ロボット12に配設することが困難となり、また配設できたとしても、塗装ロボット12の駆動制御(塗装ガン26の位置決め)に影響を与えることになる。
【0045】
これに対し、本実施の形態に係るシリンダ装置22は、筒体30の後方側に接続された供給路54Cと貯留空間52が連通するように、第1溝部60が刻設されているため、供給路54A、54Bを含む全ての供給路54が貯留空間52に連通した状態となっている。よって、この第1溝部60を介して、全ての供給路54から塗料又は洗浄流体を貯留空間52にスムーズに流入させることができ、貯留空間52内に塗料以外の混入物(空気等)が入り込むことを抑止することができる。
【0046】
また、第2溝部62は、第1溝部60に直交して各第1溝部60をピストン32の周方向を連通させるものである。例えば、図2A中の筒体30の上部側に接続されている供給路54Cから流入された塗料は、第2溝部62を通ってピストン32の反対側(下部側)にも案内されることになる。これにより、筒体30に21本連設された供給路54のうち、どの供給路54から塗料又は洗浄流体が流入されても、全ての第1溝部60及び第2溝部62から貯留空間52に塗料を流入させることができる。すなわち、ピストン32は、第1溝部60と第2溝部62を備えることによって、貯留空間52に塗料をスムーズに導くことができる。
【0047】
次に、本実施の形態に係る塗料供給システム10の塗料及び洗浄流体の供給経路について説明する。図4は、図1の塗料供給システム10のバルブの接続関係を示すブロック図である。
【0048】
塗料供給システム10は、塗装ロボット12、シリンダ装置22、塗装ガン26に接続する制御部58を備え、この制御部58は各装置の駆動制御を行う機能を有している。すなわち、制御部58は、塗装ロボット12の関節部分(旋回部16、第1アーム18の基端、第2アーム20の基端及び一対の挟持板24)の回動を制御し、シリンダ装置22の供給用バルブ56の開閉動作を制御しつつ駆動モータ48の駆動を制御し、塗装ガン26の動作(回転霧化頭26aの回転や高電圧の印加等)を制御する。
【0049】
また、シリンダ装置22と塗装ガン26は、供給チューブ42によって接続されており、塗装ガン26には、シリンダ装置22から塗料又は洗浄流体が供給される。
【0050】
塗装ガン26の内部には、供給チューブ42に接続されて先端部(回転霧化頭26a)に塗料を流通させる流通路64、及び該流通路64に接続されて図示しない廃棄部に連通する排出路66が設けられている。供給チューブ42と流通路64の間(流通路64の端部)にはトリガバルブ68が設けられている。トリガバルブ68は、制御部58からのON/OFF信号によって供給チューブ42と流通路64の連通を開閉するものである。すなわち、塗装ガン26は、供給チューブ42と流通路64の連通によって、シリンダ装置22から供給されてきた塗料を先端部から噴霧する。
【0051】
また、塗装ガン26内の流通路64と排出路66の間には第1ダンプバルブ70が配設されている。第1ダンプバルブ70は、制御部58からのON/OFF信号によって、塗装ガン26内の流通路64と排出路66の連通を開閉するものである。塗装ガン26は、この流通路64と排出路66の連通によって、内部の塗料や洗浄液を排出路66から廃棄部に導くことができる。
【0052】
一方、シリンダ装置22は、上述のとおり、21本の供給路54(図4中のP1〜P21の部分)が筒体30に連設されている。これら複数の供給路54は、塗料タンク、洗浄液タンク及びエアボンベ(ともに図示せず)にそれぞれ接続されている。この場合、各供給路54(端部54a)に設けられた供給用バルブ56はノーマリ・クローズ(NC)とされており、制御部58からON信号を送ることで、選択的に供給用バルブ56を開放することができる。これにより、開放された供給路54から、シリンダ装置22の貯留空間52に選択された塗料(又は洗浄流体)を流入することができる。
【0053】
また、シリンダ装置22の蓋体36に取り付けられる第2排出用端子40には、第2ダンプバルブ72が内蔵されている。この第2ダンプバルブ72は、排出チューブ44に接続されており、制御部58のON/OFF信号により開閉して、シリンダ装置22内の流入物を外部の廃棄部に排出することができる。
【0054】
本実施の形態に係る塗料供給システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次に、この塗料供給システム10の作用及び効果について説明する。図5は、図4の塗料供給システム10による塗装時の動作フローを示すフローチャートであり、図6は、図4の塗料供給システム10による洗浄時の動作フローを示すフローチャートである。
【0055】
図1〜図5に示すように、塗料供給システム10は、塗装ガン26に塗料を供給する場合、操作者や制御部58により、塗装するワークに応じた塗料が選択される。この場合、制御部58は、選択された塗料を供給する供給路54の供給用バルブ56を開放して、シリンダ装置22の貯留空間52内への塗料の流入を可能にする(ステップS10:選択ステップ)。
【0056】
そして、選択された供給用バルブ56の開放後(又は開放と同時)に、駆動モータ48を駆動制御して、ピストン32を後退させる(ステップS11:供給ステップ)。このピストン32の後退とともに、供給路54からの圧送力(サーキュレーション圧)によって、貯留空間52に塗料を供給することにより、選択された塗料が供給路54から貯留空間52に流入する。
【0057】
この場合、ピストン32外周面の第1溝部60及び第2溝部62によって、供給路54から貯留空間52にスムーズに塗料が供給される。このため、シリンダ装置22の外部から空気等を貯留空間52に入り込ませることなく、塗料のみを貯留空間52に充填していくことができる。
【0058】
ピストン32の後退移動が終了し、貯留空間52に所定量の塗料が貯留されると、制御部58は、選択された供給路54の供給用バルブ56を閉じ、貯留空間52に対する塗料の供給を停止する(ステップS12)。
【0059】
次に、制御部58は、塗装ロボット12を駆動制御して、塗装ガン26をワークの塗装箇所と対向する位置に移動させる(ステップS13)。
【0060】
また、塗装ガン26の回転霧化頭26aに高電圧を印加するとともに、該回転霧化頭26aの回転を開始する(ステップS14)。
【0061】
さらに、塗装ガン26のトリガバルブ68を開放することで、供給チューブ42と流通路64との連通状態を形成する(ステップS15)。
【0062】
その後、駆動モータ48を駆動制御して、ピストン32の先端方向の移動(進出)を開始し、貯留空間52から貯留されている塗料を流出させる(ステップS16:塗布ステップ)。シリンダ装置22から流出された塗料は、第1排出用端子38から供給チューブ42を介して、塗装ガン26に供給される。塗装ガン26に供給された塗料は、ピストン32の押出力を受けて流通路64内を流通し、先端部の回転霧化頭26aにおいて帯電されて、ワークに噴霧される。
【0063】
そして、制御部58は、ワークの塗装が終了する、又は貯留空間52に供給された塗料がなくなると、トリガバルブ68を閉塞し、塗装ガン26の塗料の供給を停止する(ステップS17)。
【0064】
その後、制御部58は、次に塗布する塗料が前回塗布した塗料と異なるか否かを判別する(ステップS18)。前回塗布した塗料と一致する場合は、ステップS10に戻って、以下同じステップを繰り返す。
【0065】
一方、前回塗布した塗料と異なる場合は、図6のステップS19に進み、シリンダ装置22と塗装ガン26の洗浄を実施する。この場合、制御部58は、洗浄液を選択して、該洗浄液を供給する供給路54の供給用バルブ56を開放して、貯留空間52内への洗浄液の流入を可能にする(ステップS19)。
【0066】
また、塗装ガン26のトリガバルブ68と、第1ダンプバルブ70を開放して、貯留空間52から供給チューブ42を介して流通路64(塗装ガン26)までを連通状態とする(ステップS20)。
【0067】
その後、供給用バルブ56が開放されている供給路54からの洗浄液の圧送力によって、貯留空間52内に洗浄液を供給する(ステップS21)。この洗浄液は、貯留空間52内に残存している塗料と混合して貯留空間52を洗浄する。さらに、貯留空間52に供給された洗浄液は、供給チューブ42を介して、塗装ガン26に供給される。塗装ガン26に供給された洗浄液は、塗装ガン26内を洗浄して先端部(回転霧化頭26a)及び排出路66から排出される。
【0068】
洗浄液による洗浄が終了すると、制御部58は洗浄用空気を選択して、該洗浄用空気を供給する供給路54の供給用バルブ56を開放し、貯留空間52内への洗浄用空気を流入可能とする(ステップS22)。
【0069】
その後、供給用バルブ56が開放されている供給路54からの洗浄用空気の圧送力によって、貯留空間52内に洗浄用空気を供給する(ステップS23)。この洗浄用空気は、貯留空間52に残存していた洗浄液をその流動力によって外部に排出する。すなわち、洗浄用空気(及び洗浄液)は、供給チューブ42を介して、塗装ガン26に供給される。塗装ガン26に供給された洗浄用空気は、塗装ガン26内を流動して先端部(回転霧化頭26a)及び排出路66から排出される。
【0070】
最後に、塗装の終了を判別し(ステップS24)、塗装を終了する場合は、制御部58により所定の駆動停止処理が行われて塗装を終了する。一方、塗装を再開する場合は、ステップS10に戻って同様のフローを実施する。
【0071】
このような方法で塗料を塗装ガン26に供給することで、選択された塗料又は洗浄流体を、CCV34から筒体30の貯留空間52を介して塗装ガン26にスムーズに案内することができる。したがって、塗装ガン26が塗布する塗料に空気が入り込む等の不都合を抑止することができる。
【0072】
また、塗料供給システム10は、塗料の色替え時に実施する洗浄の工程(ステップS18よりも後の工程)として、図7に示す別の工程(変形例)を採ることもできる。
【0073】
図7に示す洗浄の工程では、先ず制御部58が洗浄液を選択し、該洗浄液を供給する供給路54の供給用バルブ56を開放して、シリンダ装置22の貯留空間52内への洗浄液の流入を可能にする(ステップS30)。
【0074】
そして、選択された供給用バルブ56の開放後(又は開放と同時)に、駆動モータ48を駆動制御して、ピストン32を後退させる(ステップS31)。このピストン32の後退と供給用バルブ56が開放されている供給路54からの洗浄液の圧送力によって、貯留空間52内に洗浄液を供給する。
【0075】
ピストン32の後退移動が終了し、貯留空間52に洗浄液が流入(貯留)されると、制御部58は、選択された供給路54の供給用バルブ56を閉じ、貯留空間52に対する洗浄液の流入を停止する(ステップS32)。
【0076】
次に、塗装ガン26のトリガバルブ68と、第2ダンプバルブ72を開放して、供給チューブ42と流通路64との連通状態を形成するとともに、排出チューブ44との連通状態を形成する(ステップS33)。
【0077】
その後、駆動モータ48を駆動制御して、ピストン32を先端方向に移動(進出)して、貯留空間52に流入した洗浄液を流出させる(ステップS34)。この場合、シリンダ装置22から流出した洗浄液は、その一部が第1排出用端子38から供給チューブ42を介して、塗装ガン26に供給され、その他の洗浄液は、排出チューブ44を介して廃棄部に排出される。塗装ガン26に供給された洗浄液は、塗装ガン26内を洗浄する。
【0078】
そして、塗装ガン26内の洗浄が終了すると、制御部58は、第1ダンプバルブ70を開放して洗浄液を排出路66から廃棄部に排出する(ステップS35)。
【0079】
洗浄液による洗浄が終了すると、制御部58は洗浄用空気を選択し、該洗浄用空気を供給する供給路54の供給用バルブ56を開放して、シリンダ装置22の貯留空間52内への洗浄用空気を流入可能とする(ステップS36)。
【0080】
そして、選択された供給用バルブ56の開放後(又は開放と同時)に、駆動モータ48を駆動制御して、ピストン32を後退させる(ステップS37)。このピストン32の後退と供給用バルブ56が開放されている供給路54からの洗浄用空気の圧送力によって、貯留空間52内に洗浄用空気を供給する。
【0081】
ピストン32の後退移動が終了し、貯留空間52に洗浄用空気が流入されると、制御部58は、選択された供給路54の供給用バルブ56を閉じ、貯留空間52に対する洗浄用空気の流入を停止する(ステップS38)。
【0082】
次に、塗装ガン26のトリガバルブ68と、第2ダンプバルブ72を開放して、供給チューブ42と流通路64との連通状態を形成するとともに、排出チューブ44との連通状態を形成する(ステップS39)。
【0083】
その後、駆動モータ48を駆動制御して、ピストン32の先端方向の移動(進出)を開始し、貯留空間52に流入されている洗浄用空気を流出させる(ステップS40)。これにより、貯留空間52に残存していた洗浄液を洗浄用空気によって排出することができる。この洗浄用空気は、第1排出用端子38から供給チューブ42を介して塗装ガン26に供給されるとともに、排出チューブ44を介して廃棄部に排出される。
【0084】
そして、制御部58は、第1ダンプバルブ70を開放することにより、塗装ガン26内に残存していた洗浄液を、洗浄用空気によって排出路66から廃棄部に排出する(ステップS41)。
【0085】
最後に、塗装の終了を判別し(ステップS42)、塗装を終了する場合は、制御部58により所定の駆動停止処理が行われて塗装を終了する。一方、塗装を再開する場合は、ステップS10に戻って同様のフローを実施する。
【0086】
このように、洗浄液及び洗浄用空気を貯留空間52内に供給する場合に、ピストン32を往復移動させて、洗浄液及び洗浄用空気を流入させるようにしてもよい。
【0087】
以上のように、本実施の形態に係る塗料供給システム10は、複数種類の塗料及び洗浄流体を選択的に貯留空間52に供給可能なCCV34が筒体30に連設されていることで、選択された塗料又は洗浄流体を貯留空間52に直接供給することができる。したがって、塗料の色替え時には、この貯留空間52に洗浄流体を直接供給して洗浄を行うことができ、例えば、CCV34から筒体30に配管等を接続して塗料を供給する構成(特許文献1及び2の構成等)と比べて、塗料ロスを大幅に削減することができる。よって、塗装コストを低減することができる。
【0088】
また、本実施の形態に係る塗料供給システム10は、筒体30を第2アーム20に配設することで、CCV34と塗装ガン26との距離を短くすることができる。したがって、塗料の塗布の終了時には、CCV34、塗装ガン26及びその連通部分に残存する塗料を少なくすることができ、洗浄時の塗料ロスをさらに削減することができる。
【0089】
なお、本発明は、上記の実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成乃至工程を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0090】
10…塗料供給システム 12…塗装ロボット
22…シリンダ装置 26…塗装ガン
30…筒体 32…ピストン
34…CCV 52…貯留空間
54…供給路 56…供給用バルブ
60…第1溝部 62…第2溝部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物に塗料を塗布する塗布部に接続されて、複数種類の塗料及び洗浄流体のうち選択された塗料又は洗浄流体を前記塗布部に供給する塗料供給システムであって、
前記塗布部に接続され、前記選択された塗料を一時的に貯留するとともに該塗料を所定のタイミングで排出可能な貯留空間を有する筒体と、
前記複数種類の塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に個別に供給可能な供給弁部と、を備え、
前記供給弁部は、前記筒体に連設され、前記選択された塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に直接供給することを特徴とする塗料供給システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗料供給システムにおいて、
前記筒体には、前記貯留空間を摺動自在なピストンが設けられており、
前記ピストンは、一方向の移動によって前記選択された塗料を前記供給弁部から前記貯留空間に流入させ、他方向の移動によって前記選択された塗料を前記貯留空間から排出させることを特徴とする塗料供給システム。
【請求項3】
請求項2記載の塗料供給システムにおいて、
前記供給弁部は、前記複数種類の塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に個別に供給可能な複数の供給路を備え、
前記複数の供給路は、前記筒体の側面に軸方向に並べて接続され、
前記ピストンには、前記複数の供給路の配置位置に沿って軸方向に第1の溝部が形成されていることを特徴とする塗料供給システム。
【請求項4】
請求項3記載の塗料供給システムにおいて、
前記複数の供給路は、前記筒体の側面に周方向に並べて接続され、
前記ピストンには、前記複数の供給路の配置位置に沿って周方向に第2の溝部が形成されていることを特徴とする塗料供給システム。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の塗料供給システムにおいて、
前記筒体は、前記塗布部の近傍に配設されることを特徴とする塗料供給システム。
【請求項6】
被塗装物に塗料を塗布する塗布部に、複数種類の塗料及び洗浄流体のうち選択された塗料又は洗浄流体を供給する塗料供給方法であって、
筒体に連設された供給弁部により、前記複数種類の塗料及び洗浄液のうち前記筒体の貯留空間に供給する塗料又は洗浄流体を選択する選択ステップと、
前記選択ステップにおいて選択された塗料又は洗浄流体を前記貯留空間に供給する供給ステップと、
前記供給ステップにおいて前記貯留空間に貯留された塗料を排出して前記塗布部に供給し、該塗料を塗布する塗布ステップと、を有することを特徴とする塗料供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−13866(P2013−13866A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149313(P2011−149313)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】