説明

塗料及びその塗布方法

【課題】塗料系が良好な特性を持つ結果となるよう液状塗工層間の割り込みを最小化する、ウエット・オン・ウエット塗装系及び、そこで使用するための塗料を提供する。
【解決手段】塗装系が、第一塗料、第二塗料、及び、境界層を含む。第一塗料が、第一バルク・ポリマー樹脂、及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分とから成る群から選択された第一反応性成分を有する。第二塗料が、第二バルク・ポリマー樹脂、及び、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分とから成る群から選択されなかった第二反応性成分を含む。第一塗料の第一層を、第二塗料の第二層へ塗布すると同時に、境界層が形成される。境界層が、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応生成物を含み、そして、第一層と第二層との間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料及び、塗料を基材に塗布する方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
既知の塗装系の多くが、自動車を含むがそれに限定されない消費者製品の外面に独自の仕上がりをもたらす、複数層の塗膜の塗布及び硬化を含む。例の一つとして、ウエット・オン・ウエット塗装系(wet on wet paint application system)が、先に塗布されて実質的に硬化されていない塗膜に、次の塗膜を塗布する。それから、二つの実質的に硬化されていない塗膜が、キュア装置(curing oven)を含み得る硬化処理によって、一緒に硬化される。
【0003】
提案されているウエット・オン・ウエット塗装系の一つが、イーコート(electrocoat: ecoat)、プライマー・コート(primer coat)、ベース・コート(basecoat)、及び、クリア・コート(clear coat)を含む、複数の塗料の順次的な塗布を含む。イーコートは、基材(例えば、自動車パネル)に塗布され、そして、その後に硬化される。さらに、ウエット・オン・ウエット塗装系は、硬化されたイーコートにプライマー・コートを塗布する工程、プライマー・コートを硬化する工程、その後、硬化されたプライマー・コートにベース・コートを塗布する工程、及び、その後、硬化されていないベース・コートにクリア・コートを塗布する工程を含む。隣接する未硬化の塗工層、即ち、ベース・コート及びクリア・コートは、その後、硬化された塗装系を得るべく、一緒に硬化される。
【0004】
ウエット・オン・ウエット系は、そこにおいて、例えばプライマー・コートとベース・コートの塗布の間に、硬化処理が該して生じる今までの手法に対して一つ以上の利点を供給し得る。放射加熱や直火炉、或いは、赤外線加熱のような熱を利用する硬化方法が、設備の要件、比較的大きな工場据え付け面積の使用、比較的大きなユーティリティ消費のため、エネルギーやコストを概して多く使用する。エネルギー及び/又はコストの節約が、液状塗工層の塗布の間の硬化工程を削除することにより得られる。更に、塗料を硬化する為に通常使用される一つ以上の焼き付け炉が、ウエット・オン・ウエット系の使用を通じて削除可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
仕様を満たす外観と材料性能とを備える硬化塗料系を供給するため、液状層の夫々の健全性を、先に塗布された層の、その後に塗布される層への侵入、混入、及び/又は、混合(或いは、割り込み(strike-in)と称される)が無い状態に保つことが重要である。液状塗工層間の割り込み(strike-in)は、外観の質の低下、及び/又は、硬化された塗工層の特性の低下のような、望ましくない現象をもたらす。極端な場合は、そのような塗工層の特性の低下が、塗装系の初期不具合をもたらす場合がある。現在の方法によれば、層の塗布の間の空気乾燥、及び/又は、層の化学的分離を達成するために隣接層の化学成分を交互にすることにより、層分離が達成され得る。空気乾燥時間、或いは、フラッシュ時間(flash time)は、処理時間を増加させる可能性があり、そして/又は、処理用設備及び建物の機器設置面積コストを増加させる可能性がある。したがって、塗料系が良好な特性を持つ結果となるよう液状塗工層間の割り込みを最小化する、ウエット・オン・ウエット塗装系及び、ウエット・オン・ウエット塗装系で使用するための塗料を提供することが望ましく、そして、必要性が存在する。さらに、ウエット・オン・ウエット層の塗布の間にフラッシュ時間を必要としない、ウエット・オン・ウエット塗装系及び、ウエット・オン・ウエット塗装系で使用するための塗料を提供する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つによれば、塗装系が開示される。塗装系は、第一層、第二層、及び、境界層を含む。第一層は、第一バルク・ポリマー樹脂及び、パートA反応性成分(part A reactive component)とパートB反応性成分(part B reactive component)とから成る群から選択された第一反応性成分を含む、第一塗料から構成される。パートA反応性成分は、パートB反応性成分と反応しやすい。第二層は、第二バルク・ポリマー樹脂及び、パートA反応性成分部とパートB反応性成分とから成る群から選択されなかった方の反応性成分から構成される第二反応性成分を含む、第二塗料から構成される。境界層は、第一塗料の第一層を第二塗料の第二層に塗布すると同時に形成される。境界層は、パートA反応性成分とパートB反応性成分の反応生成物を含み、そして、第一層と第二層との間に位置する。
【0007】
本発明の別の実施形態によれば、塗料の層の一つを既に塗布されている塗工層に塗布することを含む、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布工程に使用する為の塗料が開示される。塗料は、バルク・ポリマー樹脂及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分とから成る群から選択された反応性成分を含む。パートA反応性成分は、パートB反応性成分と反応しやすい。既に塗布された塗工層は、パートA反応性成分とパートB反応性成分とから成る群から選択されなかった方の反応性成分を含む。塗布された塗工層に塗料の一つを塗布すると同時に、境界層が形成される。境界層は、パートA反応性成分とパートB反応性成分の反応生成物を含む。
【0008】
本発明の実施形態の一つにおいて、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布方法が開示される。方法は、第一塗料、第二塗料、及び、基材を準備する工程を含む。第一塗料は、第一バルク・ポリマー樹脂及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分とから成る群から選択された第一反応性成分とを含む。パートA反応性成分は、パートB反応性成分と反応しやすい。第二塗料は、第二バルク・ポリマー樹脂及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分とから成る群から選択されなかった他方の反応性成分から構成される第二反応性成分とを含む。方法は更に、第一塗工層を形成すべく基材に第一塗料を塗布する工程、及び、第二塗工層を形成するため、及び、第一塗工層と第二塗工層との間に位置し、第一塗料の反応性成分と第二塗料の反応性成分との反応生成物を備える境界層を形成するために、第二塗料を第一塗工層に塗布する工程を含む。
【0009】
本発明の別の実施形態において、塗装系の一つが開示される。塗装系は、第一バルク・ポリマー樹脂、パートA反応性成分、及び、パートB反応性成分を有する第一塗料を含む。パートA反応性成分は、パートB反応性成分と反応しやすい。塗装系はまた、第二バルク・ポリマー樹脂及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒とを含む第二塗料を含む。塗装系は更に、第一塗料の第一層を第二塗料の第二層に相互作用させると同時に形成される境界層を含む。境界層は、触媒によって触媒作用を施され、そして、第一層と第二層との間に位置される、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応生成物を含む。
【0010】
本発明の別の実施形態によれば、塗料の層の一つの塗工層への塗布を含む、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布工程に使用する為の塗料が開示される。塗料は、バルク・ポリマー樹脂、パートA反応性成分、及び、パートB反応性成分を含む。パートA反応性成分は、パートB反応性成分と反応しやすい。塗工層は、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応に触媒作用及ぼすことが可能な触媒を有する。塗料の層を塗工層に相互作用させるときに、境界層が形成される。境界層は、触媒によって触媒作用を施された、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応性物を含む。
【0011】
本発明の実施形態の一つによれば、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布方法が記載される。方法は、第一塗料と第二塗料と基材を用意する工程を含む。第一塗料は、第一バルク・ポリマー樹脂、パートA反応性成分、及び、パートB反応性成分を含む。パートA反応性成分は、パートB反応性成分と反応しやすい。第二塗料は、第二バルク・ポリマー樹脂及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒とを含む第二塗料を含む。方法は更に、第一塗工層を形成すべく、第一塗料又は第二塗料の一方を基材に塗布する工程を含む。方法はまた、第一塗料又は第二塗料の塗布されなかった他方を、第二塗工層を形成するため、及び、第一塗工層と第二塗工層との間に位置し、触媒によって触媒作用を施された、第一塗料の反応性成分と第二塗料の反応性成分との反応生成物を備える境界層を形成するために、塗布する工程を含む。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態がここに記述される。しかしながら、記述された実施形態が、種々の代替形態を含み得る本発明の単なる典型例であることを理解すべきである。したがって、ここに記述する具体的な詳細は、限定するものとして解釈されるべきでは無く、単なる特許請求の範囲のための典型的な基本構成、及び/又は、本技術分野の当業者に対して本発明の観点を様々に用いることを教唆するための典型的な基本構成として解釈されるべきである。さらに、明確に指示された場合を除き、本実施形態において物質の量を表す数値の全ては、本発明の最も広い範囲を記述する際に、「約」という言葉で修正されるものとして理解されるべきである。述べられている数値限定内での実行が、概して好ましい。
【0013】
逆に、明確に述べられない限り、パーセント、「一部」、及び、割合の値が、重量パーセント、「重量の一部」、重量比である。「ポリマー」が、「オリゴマー」、「共重合体」、「三元重合体」、及び、同様のものを含む。本発明の観点の少なくとも一つに関連して所定の目的に適しているもの、或いは、望ましいものとしての材料の群或いは類の記述が、材料群、或いは、材料類を構成する材料のいずれか二つ以上の混合物が、同等に適している、或いは、望ましいことを意味する。化学用語の中の成分の記述が、記述の中で明記されるあらゆる組み合わせを追加したときの成分を指し、そして、混合物が混合された時点の成分間の化学的相互作用を必ずしも除外しない。頭字語、或いは、他の省略形の最初の定義づけが、ここにおける同じ省略形の使用の全てに適用され、そして、最初に定義された省略形の通常の文法にかなった変化に必要な変更を加えて適用される。
【0014】
本発明の一つ以上の実施形態が、割り込みを最小化するために、フラッシュ時間(flash time)の必要性に起因するウエット・オン・ウエット系の容認できない処理時間の問題に取り組む。現在の方法が、割り込みを軽減可能な処理時間を犠牲にする一方で、本発明の一つ以上の実施形態は、割り込み及び処理時間を低減し、それによって、現在の方法では認識されていない、又は、取り組まれていない問題の組み合わせに取り組む。一つ以上の実施形態において、処理時間、即ち、フラッシュ時間の低減又は削除は、従来の方法及び系に比べて、電力消費とコスト消費を低減し得る。
【0015】
本発明は、ウエット・オン・ウエット塗装系、及び、ウエット・オン・ウエット塗装系で使用するための塗料に対する実施形態を含む。その塗装系及び塗料は、自動車の外面のような、消費者製品の内側、及び/又は、外側の仕上げとして使用され得る。
【0016】
本発明の実施形態の一つにおいて、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布処理に使用するための塗装系が開示される。塗装系は、第一塗料、第二塗料、及び、境界層を含む。第一塗料は、第一バルク・ポリマー樹脂、及び、互いに反応しやすいパートA反応性成分とパートB反応性成分の群とから選択された第一反応性成分を含む。第一塗料は、第二バルク・ポリマー樹脂、及び、互いに反応しやすいパートA反応性成分とパートB反応性成分との群とから選択されなかった他方の第二反応性成分を含む。境界層は、第一塗料の第一層を第二塗料の第二層に塗布すると同時に形成される。境界層は、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応生成物を含み、そして、第一層と第二層との間に配置される。実施形態の一つにおいて、第一塗料はベース・コートであり、そして、第二塗料はプライマー・コートである。別の実施形態において、第一塗料はクリア・コートであり、そして、第二塗料はベース・コートである。パートA反応性成分はイソシアネートであり得、そして、パートB反応性成分はポリオールであり得る。
【0017】
本発明の別の実施形態によれば、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布処理に使用するための塗装系が開示される。塗装系は、第一塗料、第二塗料、及び、境界層を含む。第一塗料は、第一バルク・ポリマー樹脂、パートA反応性成分、及び、パートB反応性成分を含む。第二塗料は、第二バルク・ポリマー樹脂、及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分との間の反応に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒を含む。境界層は、第一塗料の第一層を第二塗料の第二層に塗布すると同時に形成される。境界層は、触媒によって触媒作用を及ぼされ、そして、第一層と第二層との間に配置される、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応生成物を含む。少なくとも一つの実施形態において、第一塗料はベース・コートであり、そして、第二塗料はプライマー・コートである。別の実施形態において、第一塗料はクリア・コートであり、そして、第二塗料はベース・コートである。
【0018】
少なくとも一つの実施形態において、イーコートの基材(例えば、車体パネルの外表面)に対する塗布及び硬化、それに続く液状プライマー・コートの硬化されたイーコートへの塗布、それに続く少なくとも実質的に硬化されていないプライマー・コートへのベース・コートの塗布、それに続く少なくとも実質的に硬化されていないベース・コートに対するクリア・コート(或いは、トップ・コートとも呼ばれる)の塗布、それに続く少なくとも実質的に硬化されていないプライマー・コート、ベース・コート、及び、クリア・コートの同時硬化を含む、ウエット・オン・ウエット塗装系が開示される。本発明に従って利用され得る他の基材の限定されない例が、シート成形材料基材(seat molding compound: SMC)、GTX樹脂基材、及び、車体の構造に適した他の基材物質を含む。
【0019】
本発明の塗料は該して、少なくとも0.0127ミリメートル(0.5mil)の厚さ、即ち、或る実施形態においては0.0127ミリメートル以下の厚さの硬化塗工層を生成すべく、十分な厚さで塗布される。塗料がプライマー・コートとして使用されるとき、硬化された塗膜の厚さは0.0127ミリメートル(0.5mil)から0.0381ミリメートル(1.5mil)である。塗料がベース・コートとして使用されるとき、硬化された塗膜の厚さは0.01016ミリメートル(0.4mil)から0.04064ミリメートル(1.6mil)である。塗料がクリア・コートとして使用されるとき、硬化された塗膜の厚さは0.0254ミリメートル(1.0mil)から0.0635ミリメートル(2.5mil)である。
【0020】
塗料は、実質的な量のポリマー樹脂(バルク・ポリマー樹脂と称される場合もある)を含み得る。塗料がベース・コートのとき、バルク・ポリマー樹脂は、例えばアクリル系、ポリウレタン系、又は、ポリエステル系の色素性樹脂であり得る。ベース・コート成分として本技術分野で知られている他のポリマー樹脂が、ビニル、ポリカーボネート、アルキド樹脂、及び、ポリシロキサンを含むが、これらに限定されない。ベース・コート・ポリマーは、架橋(cross-link)可能であり、従って、一つ以上の架橋可能な官能基を含む。そのような官能基は、例えば、ヒドロキシル基、イソシアネート、アミン、ビニル基、シラン、及び、アセト・アセレート群を含む。これらの官能基は、概して高温度状態である望ましい硬化条件の下での架橋反応を妨げず、そしてその架橋反応に利用可能な方法でマスクされ、或いは、ブロックされ得る。或る実施形態において、架橋可能な官能基は、ヒドロキシ官能基と、アミノ官能基とを含む。塗料がクリア・コートのとき、バルク・ポリマー樹脂はカルボネート官能基を含み得る。バルク・ポリマー樹脂は、如何なる既知の作用或いは硬化剤によっても硬化され得る。或る実施形態において、硬化処理は高温において大量に生じる。塗膜は少なくとも約80℃、或る実施形態においては少なくとも約100℃、そして他の実施形態においては少なくとも約120℃の温度において硬化され得る。硬化時間は、使用される具体的な成分と、層の厚さのような物理的パラメータに依存し得る。典型的な硬化時間は、15分から60分の範囲である。
【0021】
塗料の成分は、他の含有物と一様に混合されている場合がある。塗料の成分は、バルク・ポリマー樹脂に加え、有機溶剤、抗酸化物質、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料、溶加剤、触媒、レオロジー制御剤、及び、接着促進剤を含み得る。
【0022】
少なくとも一つの実施形態において、隣接する液状塗工層(第一液状塗工層、及び。第二液状塗工層と称される)の塗料(第一塗料、及び、第二塗料と称される)は、パートA反応性成分系とパートB反応性成分系とを含む。第一塗料は、順次的なウエット・オン・ウエット塗布処理において、先に、或いは、後からのどちらか一方で塗布される層であり得、第二塗料は、先に、或いは、後からの他方で塗布される層であり得る。第二塗工層の塗布のとき、パートA反応性成分系とパートB反応性成分系が、第一液状塗工層と第二液状塗工層との間の接触面において、移動及び/又は混合、即ち、隣接する液状塗工層間の割り込み(strike-in)を最小化するための境界層を形成すべく、反応する。
【0023】
少なくとも一つの実施形態において、第一塗料は、パートA反応性成分、或いは、パートB反応性成分を含む。或る実施形態において、反応性成分の重量パーセントが、10〜70重量パーセントの範囲であり得る。第一塗料はまた、バルク・ポリマー樹脂を含む。或る実施形態において、バルク・ポリマー樹脂の重量パーセントが、30〜90重量パーセントの範囲であり得る。
【0024】
第二塗料は他方の反応性成分を含む。或る実施形態において、他方の反応性成分の重量パーセントが、10〜70重量パーセントの範囲であり得る。第二塗料はまた、バルク・ポリマー樹脂を含む。或る実施形態において、バルク・ポリマー樹脂の重量パーセントが、30〜90重量パーセントの範囲であり得る。
【0025】
実施例の一つによれば、第一塗料は、パートA反応性成分として、第一塗料の総量に対して40重量パーセントのポリオールを含むベース・コートである。或る実施形態において、ベース・コートは、メラミン樹脂と混合された、ヒドロキシル官能基を備えるアクリル酸化合物を含む。第二塗料は、パートB反応性成分として、第二塗料の総量に対して30重量パーセントのイソシアネートを含むクリア・コートである。或る実施形態において、クリア・コートは、メラミン樹脂と混合された、ヒドロキシル官能基を備えるアクリル酸化合物を含む。
【0026】
少なくとも一つの実施形態において、第一塗料はプライマー・コートであり、そして、第二塗料はベース・コートである。
【0027】
別の実施例によれば、第一塗料はプライマー・コートであり、そして、第二塗料はベース・コートである。さらに、本発明によって第三塗料、即ち、クリア・コートが企図され、そこにおいて、第一、第二、そして第三塗料が液状塗工層として順次的に塗布される。夫々の塗料は、反応性成分を含む。例えば、プライマー・コートはパートA反応性成分を含み、べース・コートはパートB反応性成分を含み、そして、クリア・コートはパートA反応性成分を含む。3つの液状層を塗布した後、隣接する液状層、即ち、プライマー・コートとベース・コート、及び、ベース・コートとクリア・コートとの間に、第一及び第二境界層が形成される。
【0028】
如何なる重量パーセントのパートA反応性成分とパートB反応性成分が、重量パーセントが第一塗料および第二塗料のバルク・ポリマー樹脂の硬化速度に実質的に影響を与えないという条件で、利用され得る。重量パーセントは、高温で生じるバルク・ポリマー樹脂の硬化に実質的に影響を与えない一方で、隣接する液状層間の割り込みを最小化すべくポリオールとイソシアネートとの間の反応が室温で比較的敏速に生じるように、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応性に基づいて選択される。例えば、境界層を形成する反応は、20℃(華氏68度)から23.9℃(華氏75度)の範囲で生じ得る一方で、バルク硬化は26.7℃(華氏80度)かそれ以上で生じ得る。境界層を形成するための時間は、1分から10分からの範囲であり、そして、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応性及び、使用されるバルク・ポリマー樹脂に依存する。或る実施形態において、硬化される界面層の厚さは、0.00254ミリメートル(0.1mil)から0.0127ミリメートル(0.5mil)である。
【0029】
別の、パートA反応性成分−パートB反応性成分系が、本発明によって意図される。限定しない実施例が、イソシアネートとチオール、エポキシ樹脂と多機能酸、エポキシ樹脂とチオール、エポキシ樹脂とアミン、エポキシ樹脂と無水物、エポキシ樹脂とポリオール、不活性化イソシアネートとポリオール、不活性化イソシアネートとチオール、アクリレートとアセト・アセレート(マイケル付加反応(Michaels addition reaction))、及び、ケチミンとアセト・アセレートである。
【0030】
上で規定された反応性成分の多くが、上で規定された反応性成分から選択された反応性官能基を持って、主ポリマー鎖がアクリル系であるように、アクリル系基幹の中に組み込まれ得る。例えば、エポキシ樹脂と多機能酸系の両方の反応性成分内の主ポリマー鎖が、A側のエポキシ(例えば、メタクリル酸グリシジル・モノマーから生成されたエポキシ)とB側の一つ以上のカルボン酸基である官能基を備えたアクリルであり得る。
【0031】
実施形態の少なくとも一つにおいて、第一塗料、及び/又は第二塗料は、二つの隣接する液状層の間の界面におけるパートAとパートB反応速度を調整するための一つ以上の触媒を更に備える。実施形態の少なくとも一つにおいて、触媒の重量パーセントが、界面におけるパートAとパートB反応速度が、バルク・ポリマー樹脂の硬化速度に実質的に影響しないようにしつつ、調整、及び/又は、増加されるように選択される。或る実施形態において、界面触媒の重量パーセントは、0.05パーセントから2パーセントの範囲であり得る。塗料の各々がまた、バルク・ポリマー樹脂の硬化反応を調整、及び/又は、促進するための触媒を含み得る。
【0032】
実施形態の少なくとも一つにおいて、第一塗料は、バルク反応に触媒作用を及ぼすためのバルク・ポリマー樹脂触媒と、塗工層とそれに続いて塗布された液状塗工層との間の界面における反応に触媒作用を及ぼすための界面触媒とを、含み得る。バルク触媒の重量パーセントは、0.05重量パーセントから2重量パーセントの範囲にあり得る。界面触媒の限定しない実施例が、強有機酸またはスズを基礎にした化合物を含む。他の実施例が、例えば、チオール/エポキシ反応、及び、マイケル付加反応と共に使用される塩基触媒を含む。
【0033】
実施形態の少なくとも一つにおいて、第一塗料が、第一塗料の総重量に対して規定された重量パーセントの、パートA反応性成分とパートB反応性成分とを含む。例えば、パートA反応性成分が、10〜70重量パーセントの範囲にあり得、そして、パートB反応性成分が、10〜70重量パーセントの範囲にあり得る。第一塗料はまた、第一塗料の総重量に対して規定された重量パーセントのバルク・ポリマー樹脂を含む。例えば、バルク・ポリマー樹脂の重量パーセントは、30〜90重量パーセントの範囲にあり得る。第二塗料は、パートA反応性成分とパートB反応性成分との間の反応に触媒作用を及ぼすための触媒を含む。界面触媒は、そのパートAとパートBとの間の反応に触媒作用を及ぼす能力に基づいて、第一塗料及び第二塗料のバルク・ポリマー樹脂の硬化速度を増加させないまま、二つの塗工層の間の界面において反応を促進させるように、選択され得る。第二塗料は、第二塗料の総重量に対して規定された重量パーセントのバルク・ポリマー樹脂を含む。例えば、その重量パーセントは、30〜90重量パーセントの範囲にある。
【0034】
第一塗料は、順次的なウエット・オン・ウエット塗布処理において、先に塗布される塗工層、或いは、後に塗布される塗工層の一方として塗付され得、一方で、第二塗料は、それら塗布された塗工層の他方であり得る。
【0035】
第一塗料、及び、第二塗料の各々はまた、パートA−パートB反応の反応速度を調整、及び/又は増加するための界面触媒に加え、第一バルク・ポリマー樹脂、及び、第二バルク・ポリマー樹脂の硬化速度を調整、及び/又は、増加させるための第一触媒及び第二触媒を含み得る。
【0036】
実施例の一つによれば、第一塗料は、パートA反応性成分として10重量パーセントのポリオールと、パートB反応性成分として10重量パーセントのイソシアネートを含む、ベース・コートである。或る実施形態において、ベース・コートは、メラミン樹脂と混合されたヒドロキシル官能基を備えたアクリル酸化合物を含む。第二塗料は、第二塗料の総重量の0.5重量パーセントの、スズを基礎とする触媒を含む、クリア・コートである。或る実施形態において、クリア・コートは、メラミン樹脂と混合されたヒドロキシル官能基を備えたアクリル酸化合物を含む。パートA-パートB反応は、界面において境界層を生成すべく比較的敏速に進行する。或る実施形態において、境界層を形成するための反応時間は、1分から10分の範囲にある。さらに、スズを基礎とする触媒は、ベース・コートとクリア・コートの中で、バルク・ポリマー樹脂の硬化速度に実質的に影響を与えない。そのような硬化は、隣接する液状塗工層が、例えば、塗装炉の中の硬化用高温に晒されるときに生じる。
【0037】
別の実施例によれば、第一塗料が、例えば、イソシアネート/チオール系、或いは、マイケル付加反応系のような、塩基触媒のパートA-パートB反応系を含む、ベース・コートである。或る実施形態において、ベース・コートは、メラミン樹脂と混合されたヒドロキシル官能基を備えたアクリル酸化合物を含む。第二塗料は、例えば、第3アミンである塩基触媒を第二塗料の総重量に対して0.5重量パーセント含む、クリア・コートである。或る実施形態において、クリア・コートは、イソシアネート/ポリオールを基礎とするポリマー樹脂を含む。クリア・コート内の塩基触媒の存在のため、パートA-パートB反応は、室温において境界層を形成すべく、界面において比較的敏速に進行する。或る実施形態において、境界層を形成するための時間は、1分から10分の範囲である。さらに、塩基触媒は、ベース・コート及びクリア・コート内のバルク・ポリマー樹脂の硬化速度に実質的に影響を与えない。そのような硬化は、隣接する液状層が高温における硬化処理に晒されるときに生じる。
【0038】
更に別の実施例によれば、第一塗料は、例えば、チオール/エポキシ系、イソシアネート/チオール系、或いは、マイケル付加反応系のような、塩基触媒のパートA-パートB成分反応系と、例えばチバ・スペシャルティ・ケミカル株式会社製のIrgacure 907のようなフォトラテント主剤(photolatent base compound)とを含む、ベース・コートである。或る実施形態において、ベース・コートは、メラミン樹脂と混合されたヒドロキシル官能基を備えたアクリル酸化合物を含む。第二塗料は、クリア・コートである。或る実施形態において、クリア・コートは、イソシアネート/ポリオールを基礎とするポリマー樹脂である。隣接する液状塗工層の塗布の後、紫外光源が液状塗工層に向けられ得、それによって、ベース・コートの上端部のフォトラテント主剤を、不透過性(opacity)がベース・コートの残りの部分における硬化を禁止しつつ上端部を敏速に硬化するため、少なくとも部分的に遊離させる。上端部の厚さは、ベース・コートのトータルの深さに対して1〜20パーセントの範囲であり得る。さらに、不透過性がベース・コートの残りの部分の効果を妨げ、それによって、紫外光源が、ベース・コート及びクリア・コート内のポリマー樹脂の硬化速度に実質的に影響を与えない。そのような硬化は、隣接する液状塗工層が、例えば、塗装炉の中で硬化するような硬化処理に晒されるときに生じる。
【0039】
本発明の実施形態が説明され、そして、記述されてきたが、これらの実施形態が、本発明の可能な形態の全てを説明、及び、記述することを意図していない。むしろ、この明細書の中で使用されている言葉は、限定より寧ろ説明の言葉であり、そして、本発明の技術思想、及び、範囲を逸脱しないで種々の変更が可能であることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一バルク・ポリマー樹脂、及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分とから成る群から選択される第一反応性成分を有し、そこにおいて、上記パートA反応性成分が上記パートB反応性成分と反応しやすい、第一塗料の第一層、
第二バルク・ポリマー樹脂、及び、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分とから成る群から選択されなかった方の第二反応性成分を有する、第二塗料の第二層、及び、
上記第一塗料の上記第一層を、上記第二塗料の上記第二層へ塗布すると同時に形成される境界層を有し、
上記境界層が、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分との反応生成物を有し、そして、上記第一層と上記第二層との間に配置されることを特徴とする、塗装系。
【請求項2】
上記第一塗料が、ベース・コートであり、そして、上記第二塗料が、プライマー・コートである、請求項1に記載の塗装系。
【請求項3】
上記第一塗料が、クリア・コートであり、そして、上記第二塗料が、ベース・コートである、請求項1に記載の塗装系。
【請求項4】
上記パートA反応性成分が、イソシアネートであり、そして、上記パートB反応性成分が、ポリオールである、請求項1乃至3のいずれか一つに記載の塗装系。
【請求項5】
塗布されている塗工層へのコーティング成分の層の塗布を含む、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布処理に使用される塗料において、
バルク・ポリマー樹脂、及び、
パートA反応性成分とパートB反応性成分とから成る群から選択された第一反応性成分とを有し、
上記パートA反応性成分が、上記パートB反応性成分と反応しやすく、
塗布されている塗工層が上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分とから成る群から選択されなかった他の反応性成分を含み、
上記塗料を塗布されている塗工層に塗布するときに、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分との反応生成物を有する境界層を形成する、塗料。
【請求項6】
上記塗料の層がベース・コートであり、そして、上記塗布されている層がプライマー・コートである、請求項5に記載の塗料。
【請求項7】
上記塗料の層がクリア・コートであり、そして、上記塗布されている層がベース・コートである、請求項5に記載の塗料。
【請求項8】
上記パートA反応性成分がイソシアネートであり、そして、上記パートB反応性成分がポリオールである、請求項5乃至7のいずれか一つに記載の塗料。
【請求項9】
ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布方法において、
第一塗料、第二塗料、及び、基材を用意する工程、
ここにおいて、上記第一塗料は、第一バルク・ポリマー樹脂、及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分とから構成される群から選択される第一反応性成分を有し、
上記パートA反応性成分は、上記パートB反応性成分と反応しやすく、
上記第二塗料は、第二バルク・ポリマー樹脂、及び、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分とから構成される群から選択されなかった方の第二反応性成分を有し、
第一塗工層を形成すべく上記基材に上記第一塗料を塗布する工程、及び、
第二塗工層を形成するため、及び、上記第一塗工層と上記第二塗工層との間に位置して、上記選択される反応性成分と上記選択されなかった反応性成分との反応生成物を有する境界層を形成するため、上記第二塗料を上記第一塗工層に塗布する工程、を有する方法。
【請求項10】
上記基材がイーコート基材であり、上記第一塗工層がプライマー・コートであり、そして、上記第二塗工層がクリア・コートである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
上記第一塗工層がベース・コートであり、そして、上記第二塗工層がクリア・コートである、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
上記第二塗料の上記第一塗工層への塗布の後に、上記第一塗工層と上記第二塗工層との間に配置される境界層を形成する工程を更に含む、請求項9乃至11のいずれか一つに記載の方法。
【請求項13】
塗装系において、
第一バルク・ポリマー樹脂、パートA反応性成分、及び、パートB反応性成分を有し、上記パートA反応性成分が上記パートB反応性成分と反応しやすい第一塗料、
第二バルク・ポリマー樹脂、及び、パートA反応性成分とパートB反応性成分との反応に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒とを有する第二塗料、及び、
上記第一塗料の第一層が上記第二塗料の第二層に相互作用するときに形成され、上記触媒によって触媒作用を及ぼされた上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分の反応生成物を有し、そして、上記第一層と上記第二層との間に配置される、境界層、を有する塗装系。
【請求項14】
上記第一塗料がベース・コートであり、そして、上記第二塗料がプライマー・コートである、請求項13に記載の塗装系。
【請求項15】
上記第一塗料がクリア・コートであり、そして、上記第二塗料がベース・コートである、請求項13に記載の塗装系。
【請求項16】
上記触媒の上記第二塗料の総量に対する重量パーセントが、0.05重量パーセントから2重量パーセントの範囲である、請求項13乃至15のいずれか一つに記載の塗装系。
【請求項17】
塗工層に対する塗料の層の塗布を含む、ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布処理に使用される塗料において、
バルク・ポリマー樹脂、
パートA反応性成分、及び、
パートB反応性部分を備え、
上記パートA反応性成分が上記パートB反応性成分と反応しやすく、
上記塗工層が、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分との反応に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒を有し、
上記塗料の層を上記塗工層に相互作用させるときに、上記触媒によって触媒作用を及ぼされた上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分との反応生成物を有する境界層を形成する、塗料。
【請求項18】
上記塗料の層がベース・コートであり、そして、上記塗工層がプライマー・コートである、請求項17に記載の塗料。
【請求項19】
上記塗料の層がクリア・コートであり、そして、上記塗工層がベース・コートである、請求項17に記載の塗料。
【請求項20】
上記パートA反応性成分がイソシアネートであり、そして、上記パートB反応性成分がポリオールである、請求項17乃至19のいずれか一つに記載の塗料。
【請求項21】
ウエット・オン・ウエット・コーティング塗布方法において、
第一塗料、第二塗料、及び、基材を用意する工程、
ここにおいて、上記第一塗料は、第一バルク・ポリマー樹脂、及び、パートA反応性成分、及び、パートB反応性成分を有し、
上記パートA反応性成分は、上記パートB反応性成分と反応しやすく、
上記第二塗料は、第二バルク・ポリマー樹脂、及び、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分との反応に触媒作用を及ぼすことが可能な触媒を有し、
第一塗工層を形成すべく上記基材に上記第一塗料或いは上記第二塗料の一方を塗布する工程、及び、
第二塗工層を形成するため、及び、上記第一塗工層と上記第二塗工層との間に位置し、上記触媒によって触媒作用を及ぼされる、上記パートA反応性成分と上記パートB反応性成分との反応生成物を有する境界層を形成するため、上記第一塗料と上記第二塗料のうち塗布されていない方の成分を塗布する工程、を有する方法。
【請求項22】
上記パートA反応性成分がイソシアネートであり、そして、上記パートB反応性成分がポリオールである、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
上記第一塗料或いは上記第二塗料のうち、塗布されていない他方の塗料を塗布した後、上記第一塗工層と上記第二塗工層との間に配置される境界層を形成する工程を更に有する、請求項21又は22に記載の塗料。

【公開番号】特開2008−36630(P2008−36630A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201484(P2007−201484)
【出願日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【出願人】(500493207)フォード モーター カンパニー (22)
【Fターム(参考)】