説明

塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物の製造方法

【課題】従来の酢酸セロソルブ、フロン113、メチルクロロホルム等の代替溶媒の持つ欠点を克服し、低毒性で安全な溶媒系からなり、溶解能力が高く、環境破壊性物質の生成がなく、不快臭がなく、しかも沸点も比較的高く安全で操作性の良い塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物の製造方法の提供。
【解決手段】α−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル、β−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル、α−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステルから選ばれた少なくとも一種のオキシイソ酪酸エステルを5重量%以上含む溶媒(ただし、ハロゲン系溶剤を含有する溶媒は除く)に、高分子化合物(ただし、アルカリ可溶性樹脂、トリ有機錫含有重合体、その共重合体およびポリメタロキサンを除く)を溶解することを特徴とする塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
溶剤の利用は化学工業の発展に重要な役割を果たしてきたが、特に近年の高分子化学工業の著しい発達に伴い塗料、接着剤、印刷インキ等の分野で使用される溶剤の重要性は益々増大してきた。一般に、塗料、接着剤、印刷インキなどは基剤である高分子化合物を使用時に操作性良く、処理面へ均一に密着塗布するために溶剤に溶解して溶液状で用いる。このため使用する溶剤は操作性の良さはもとより、基剤である高分子化合物に対する大きな溶解性や塗布面の均一性を損なわない適度な溶剤の揮発性が非常に重要となる。すなわち、塗料、接着剤、印刷インキなどの性能の良否は溶剤の選択に大きく依存するとも言える。
【0003】
従来、塗料、接着剤、印刷インキ等の分野で常用されているセルロース樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂などのビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂などの溶剤としてはグリコールエーテル系のセロソルブ類、特に酢酸セロソルブ(エチルセロソルブアセテート)がその優れた性能から賞用されてきた。しかしながら、最近では公害問題等から化学物質の安全性に対する要求が極めて大きくなり、この酢酸セロソルブも毒性問題から使用制限が強化され、労働安全衛生法により作業環境管理濃度基準が設定されている。
【0004】
このため酢酸セロソルブに代わり得る溶解性を持ち、しかも安全性の懸念のない代替溶剤の開発が活発に行われている。例えば、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、メトキシプロパノール、β−エトキシプロピオン酸エチルなどが有力代替溶媒候補として検討されているが、溶解力、安全性、臭気、操作性など必ずしも満足できる性能でないことがわかった。これらの中でも安全性の観点からは食品添加物としても認可されている乳酸エチルが最も好ましいと考えられるが、高分子化合物および各種添加剤に対する溶解性の点では十分満足できるとは言えない。また、溶解性の観点からはβ−メトキシプロピオン酸メチルやβ−エトキシプロピオン酸エチルなどのβ−アルコキシプロピオン酸アルキルエステル類が最も好ましいと考えられるが、これとても高分子化合物あるいは各種添加剤に対する溶解性や塗布後の揮発性の点では未だ満足できるとは言いがたい。このためβ−メトキシプロピオン酸メチルとβ−エトキシプロピオン酸エチルの混合物として溶剤物性を改善する提案などがなされているが(特許文献1参照)、調製が煩雑であり工業溶媒としては適当でない。このように酢酸セロソルブと同等の性能を持った実用性のある溶剤は未だ見当たらない。
【0005】
また、溶剤は前述のような用途のほか、切削油、加工油、プレス油、防錆油、潤滑油、グリースあるいはピッチなどとして用いられている油類の洗浄用に、あるいはハンダフラックス、インキ、液晶などの洗浄用等に用いられているが、これらの洗浄剤としては、フロン113(1,1,2−トリクロロ−1,2,2−トリフルオロエタン)、メチルクロロホルム(1,1,1−トリクロロエタン)およびトリクロロエチレンなどハロゲン系溶剤を主体にしたものが広く用いられている。特にフロン113は不燃性で毒性も低く、安定性も優れており、しかも金属、プラスチック、エラストマー等を侵さず、各種の汚れを選択的に溶解する性質があるため、幅広く用いられていた。しかし、フロン113およびメチルクロロホルムは成層圏のオゾン層を破壊し、ひいては皮膚ガンの発生を引き起こす原因となることから、その使用が急速に制限されつつある。また、トリクロロエチレンは発ガン性の疑いが持たれるなどこれも安全性の面から使用が制限されつつある。
【0006】
このためフロン113等に代わり得る洗浄性を持ち、しかもオゾン層破壊の懸念のない代替フロン系洗浄剤の開発が活発に行われている。例えば、1,2−ジフルオロエタンを主成分とするもの(特許文献2参照)、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタンとジメトキシメタンの混合物(特許文献3参照)およびヘキサフルオロベンゼンを主成分とするもの(特許文献4参照)など多くの代替フロンが提案されている。しかし、これらの溶剤も性能的にフロン113に及ばないほか、将来的にはこれらのハロゲン系溶媒も環境問題と安全性の問題から全面的に使用規制される方向に進んでいるため本質的な解決にはほど遠い。
【0007】
一方、人体への安全性が高く、また環境破壊のない脱脂用洗浄剤としてノニオン系界面活性剤と乳酸アルキルエステルを主成分とするもの(特許文献5)、ノニオン系界面活性剤とアジピン酸エステルを主成分とするもの(特許文献6)、ノニオン界面活性剤とポリアルキレングリコールジアルキルエーテルを主成分とするもの(特許文献7)、ノニオン界面活性剤とN−メチルピロリドンなどを主成分とするもの(特許文献8)、ノニオン系界面活性剤とグリセリンアセタート類を主成分とするもの(特許文献9)、アルコールと脂肪酸エステルを主成分とするもの(特許文献10)などの提案がある。乳酸アルキルエステル、N−メチルピロリドンなどは低毒性であり、環境破壊、環境蓄積などもなく非常に安全性の高い溶剤ではあるが、上記特許比較例からも明らかなように溶剤単独では油脂類に対する溶解力が不十分であり、界面活性剤などの洗浄助剤の併用が不可欠であるなど脱脂用洗浄剤としては未だ満足できるものではない。
【0008】
また、人体への安全性が高く、また環境破壊のないインキ洗浄剤として乳酸アルキルエステルを主成分とするものが提案されている(特許文献11)。乳酸アルキルエステルは低毒性であり、環境破壊、環境蓄積などもなく非常に安全性の高い溶剤ではあるが、ポリマー系のインキに対する溶解力が不十分であり、インキ洗浄剤としては未だ満足できるものではない。
【0009】
【特許文献1】特開平3−284651号公報
【特許文献2】特開平1−132694号公報
【特許文献3】特開平2−178396号公報
【特許文献4】特開平3−167298号公報
【特許文献5】特開平4−68088号公報
【特許文献6】特開平4−59985号公報
【特許文献7】特開平4−59984号公報
【特許文献8】特開平4−68094号公報
【特許文献9】特開平4−68092号公報
【特許文献10】特開平4−68090号公報
【特許文献11】特開平3−41170号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このように当業技術分野では、人体に対する毒性や安全性上の問題もなく、しかも塗料、接着剤、印刷インキ等の主成分である高分子化合物、油脂、ハンダフラックス、液晶、農薬、化粧品等の有機化合物や各種添加剤に対し高い溶解力を有する酢酸セロソルブ、フロン113、メチルクロロホルム等の代替溶剤の開発が重要な課題になっている。
【0011】
本発明は、前述したような従来の酢酸セロソルブ、フロン113、メチルクロロホルム等の代替溶媒の持つ欠点を克服し、低毒性で安全な溶媒系からなり、溶解能力が高く、環境破壊性物質の生成がなく、不快臭がなく、しかも沸点も比較的高く安全で操作性の良い溶媒系を用いた塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物の製造方法を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、前記の好ましい性質を有する塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物を開発すべく鋭意研究を重ねた結果、α−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル、β−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル、およびα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステルなどのオキシイソ酪酸エステル類を用いることがその目的に適合することを見いだし、本発明に到達した。
【0013】
すなわち、本発明は、下記の一般式[1]で表されるα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル
【化4】

下記の一般式[2]で表されるβ−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル
【化5】

および下記の一般式[3]で表されるα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステル
【化6】

(ただし、前記各式中のRおよびRは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
から選ばれた少なくとも一種のオキシイソ酪酸エステルを5重量%以上含む溶媒(ただし、ハロゲン系溶剤を含有する溶媒は除く)に、高分子化合物(ただし、アルカリ可溶性樹脂、トリ有機錫含有重合体、その共重合体およびポリメタロキサンを除く)を溶解することを特徴とする塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物(ただし、本組成物には1,2−キノンジアジド化合物を含有することはない)の製造方法に関する。
【0014】
本発明の塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物は、溶媒成分としてオキシイソ酪酸アルキルエステルを含有することが重要な点である。オキシイソ酪酸エステルとしては、α−メトキシイソ酪酸メチル、α−メトキシイソ酪酸エチル、α−エトキシイソ酪酸メチル、α−エトキシイソ酪酸エチルなどのα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[1]に相当);β−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸エチル、β−エトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸エチル、β−イソプロポキシイソ酪酸メチル、β−イソプロポキシイソ酪酸エチル、β−イソプロポキシイソ酪酸ブチル、β−ブトキシイソ酪酸メチル、β−ブトキシイソ酪酸エチル、β−ブトキシイソ酪酸ブチルなどのβ−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[2]に相当);およびα−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチル、α−ヒドロキシイソ酪酸イソプロピルまたはα−ヒドロキシイソ酪酸ブチルなどのα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[3]に相当)が挙げられ、特にα−メトキシイソ酪酸メチル、α−エトキシイソ酪酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸エチル、β−エトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸エチル、β−イソプロポキシイソ酪酸メチル、β−ブトキシイソ酪酸メチル、β−ブトキシイソ酪酸エチル、β−ブトキシイソ酪酸ブチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチル、α−ヒドロキシイソ酪酸イソプロピルまたはα−ヒドロキシイソ酪酸ブチルが溶解力および揮発性などの点から好ましい。
【0015】
これらのα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[1]に相当)、β−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[2]に相当)およびα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステル(一般式[3]に相当)は、単独で用いてもよいし、また2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0016】
本発明におけるα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル、β−アルコキシイソ酪酸アルキルエステルおよびα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステルは、アルコール、エステル、ケトン、アミド、芳香族等の他の一般有機溶剤とも良く相溶し、通常の炭化水素系の各種油脂類はもとより、セルロース系樹脂等の天然樹脂やエポキシ樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂などのビニル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂等の合成樹脂など広範囲の高分子化合物に対して極めて優れた溶解性を有している。このため、これら本発明のオキシイソ酪酸エステル類は、溶剤として単独で使用することができるが、他の有機溶媒に対する希釈剤や助溶剤としても優れた性能を発揮するので、オキシイソ酪酸エステルに有機溶媒を併用した溶剤組成物として使用することもできる。その割合は任意であるが、オキシイソ酪酸エステルの安全性、溶解性などを効果的に発現させるためには、オキシイソ酪酸エステルを5重量%以上、好ましくは10重量%以上とするのがよい。
【0017】
併用される水または有機溶媒は、特に制限されるものでなく、アルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、アミド類、脂族族または芳香族炭化水素など幅広く使用できるが、好ましいものとしては例えば、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルイソブチルカルビノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、3−メチルブタノール、プロピレングリコール、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、ジベンジルエーテル、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、ヘキサンおよびシクロヘキサンなどが挙げられ、好ましくは水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ヘプタノール、オクタノール、3−メチルブタノール、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、ジベンジルエーテル、アセトニトリル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレンなどである。
【0018】
これらの有機溶媒及び水は2種類以上を組み合わせて用いることもできる。これらの有機溶媒や水の併用により、洗浄性、安全性、操作性などを適宜調節し、また改善することができる。
【0019】
本発明におけるα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル、β−アルコキシイソ酪酸アルキルエステルおよびα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステルは、沸点が高く、蒸発速度が比較的遅いので、高沸点溶剤として使用される。混合溶剤に配合すると展延性の改良、塗面の平滑化、樹脂の融着などに対し作用効果を発現し、性能と作業性の向上がはかれる。
【0020】
本発明の樹脂組成物中におけるα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル、β−アルコキシイソ酪酸アルキルエステルおよびα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステルの含有量(合計)は、用途により異なるが、通常は5重量%程度以上、好ましくは10重量%以上であることが好ましい。
【0021】
本発明のオキシイソ酪酸エステル類は、極めて低毒性であるため安全性が高いこと、また、高分子化合物、天然物化合物をはじめとする種々の有機化合物に対する溶解性が非常に大きなことから、農薬の希釈用溶剤等の助剤、化粧品用の溶剤、助剤などとしても非常に有用である。
【発明の効果】
【0022】
本発明の塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物で使用する溶媒は、非常に優れた溶解性を有する上、不快臭がなく、環境保全上の問題もなく、且つ安全性も高いので、これらの効果は、本発明の樹脂組成物の製造方法としての効果でもある。また、本発明で使用する溶媒は次のような利点を有する。
(1)天然および合成高分子化合物類に対する溶解性が極めて高い。
(2)多くの有機溶剤と自由に混和する。
(3)生分解性であり、自然界への蓄積がない。
(4)低毒性であり、催奇形性などがなく、安全性が高い。
(5)沸点及び引火点が比較的高く、操作性や安全性も著しく向上する。
(6)基剤を侵さない。
【実施例】
【0023】
以下、本発明を実施例および比較例によって具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0024】
実施例1〜4
本発明のオキシイソ酪酸アルキルエステルについて、他の溶剤との相溶性を調べるために、オキシイソ酪酸アルキルエステルと他の代表的溶剤とを容積比1/1の割合で三角フラスコに採り、混合して室温で静置して相溶性を観察した。
【0025】
比較例1
オキシイソ酪酸アルキルエステルの代わりに従来汎用されていた酢酸セロソルブを用いて、実施例1〜4と同様の方法で酢酸セロソルブの相溶性を観察した。
【0026】
上記の実施例1〜4および比較例1の結果を表1、2に示す。なお、相溶性の程度は目視により判定した。
○ :完全に均一混合
△ :白濁
× :二相分離
【0027】
【表1】

【0028】
【表2】

【0029】
実施例5
本発明のオキシイソ酪酸アルキルエステルの蒸発速度を測定した。測定法は、No.4の濾紙(95mmφ)に試料0.75gを平均的に塗布し、それをフード付き実験台中、25℃で放置し、一定時間毎に重量測定して蒸発量を求め、蒸発速度を算出した。この時、酢酸ブチルをスタンダード(100)とした。
【0030】
比較例2
従来から溶剤として用いられている酢酸セロソルブ、乳酸エチルおよびβ−メトキシプロピオン酸メチルについて、実施例5と同様の方法で蒸発速度を測定した。
【0031】
上記の実施例5および比較例2の結果を表3に示す。
【表3】

【0032】
実施例6
β−メトキシイソ酪酸メチルの各種樹脂に対する溶解力を測定した。100mlの三角フラスコに樹脂2.0gを秤り採り、β−メトキシイソ酪酸メチル20mlを加え、25℃に保ち撹拌しながら樹脂の溶け具合を見て溶解時間を測定した。
【0033】
比較例3
β−メトキシイソ酪酸メチルの代わりに酢酸セロソルブを用いた以外は実施例6と同様の方法で溶解力を測定した。
【0034】
上記の実施例6および比較例3の結果を表4に示す。
【表4】

【0035】
実施例7〜11
オキシイソ酪酸アルキルエステルのエポキシ樹脂に対する溶解力を測定した。100mlの三角フラスコにエポキシ樹脂(エピコート1007:油化シェルエポキシ製)2.0gを秤り採り、オキシイソ酪酸アルキルエステル20mlを加えた。25℃に保ち撹拌しながら樹脂の溶け具合を見て溶解時間を測定した。
【0036】
比較例4〜6
オキシイソ酪酸アルキルエステルの代わりに酢酸セロソルブ、乳酸エチルまたはβ−メトキシプロピオン酸メチルを用いた以外は実施例7〜11と同様の方法で実験を行った。
【0037】
上記の実施例7〜11および比較例4〜6の結果を表5に示す。
【表5】

〔考察〕
【0038】
(1)本発明のオキシイソ酪酸エステルは、従来からの汎用溶剤ECAなどと同等またはそれ以上の相溶性を有し、幅広い他の溶剤との混合使用が可能なことがわかる(表1、表2)。
(2)エステル基の選択により、所望の蒸発速度が選べる。たとえば、本発明のオキシイソ酪酸エステルは、従来から多用されている酢酸セロソルブや乳酸エチルに比較して約2〜3倍の蒸発速度をもつことから、揮発性の良い溶媒系を作ることができる(表3)。
(3)塗料、接着剤等によく用いられる各種樹脂の溶解時間を比較すると、本発明のオキシイソ酪酸エステルは、従来の汎用溶剤よりも溶解時間が短く、樹脂溶解性に優れていることがわかる(表4、表5)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の一般式[1]で表されるα−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル
【化1】

下記の一般式[2]で表されるβ−アルコキシイソ酪酸アルキルエステル
【化2】

および下記の一般式[3]で表されるα−ヒドロキシイソ酪酸アルキルエステル
【化3】

(ただし、前記各式中のRおよびRは炭素数1〜4のアルキル基を表す。)
から選ばれた少なくとも一種のオキシイソ酪酸エステルを5重量%以上含む溶媒(ただし、ハロゲン系溶剤を含有する溶媒は除く)に、高分子化合物(ただし、アルカリ可溶性樹脂、トリ有機錫含有重合体、その共重合体およびポリメタロキサンを除く)を溶解することを特徴とする塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物(ただし、本組成物には1,2−キノンジアジド化合物を含有することはない)の製造方法。
【請求項2】
前記溶媒が、少なくとも一種のオキシイソ酪酸エステルに、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、メチルイソブチルカルビノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、3−メチルブタノール、プロピレングリコール、3−メトキシブタノール、3−メチル−3−メトキシブタノール、3,5,5−トリメチル−1−ヘキサノール、2−エチル−1−ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、イソホロン、ピロリドン、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、スルホラン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、2−エチルヘキシルアセテート、シクロヘキシルアセテート、ベンジルアセテート、ジベンジルエーテル、ニトロメタン、ニトロエタン、アセトニトリル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、ヘキサンおよびシクロヘキサンよりなる群から選ばれた少なくとも一種の化合物を加えるものである請求項1記載の塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物(ただし、本組成物には1,2−キノンジアジド化合物を含有することはない)の製造方法。
【請求項3】
オキシイソ酪酸エステルが、α−メトキシイソ酪酸メチル、α−メトキシイソ酪酸エチル、α−エトキシイソ酪酸メチル、α−エトキシイソ酪酸エチル、β−メトキシイソ酪酸メチル、β−メトキシイソ酪酸エチル、β−エトキシイソ酪酸メチル、β−エトキシイソ酪酸エチル、β−イソプロポキシイソ酪酸メチル、β−イソプロポキシイソ酪酸エチル、β−イソプロポキシイソ酪酸ブチル、β−ブトキシイソ酪酸メチル、β−ブトキシイソ酪酸エチル、β−ブトキシイソ酪酸ブチル、α−ヒドロキシイソ酪酸メチル、α−ヒドロキシイソ酪酸エチル、α−ヒドロキシイソ酪酸イソプロピルまたはα−ヒドロキシイソ酪酸ブチルである請求項1または2記載の塗料用、コーティング用、接着剤用または印刷インキ用樹脂組成物(ただし、本組成物には1,2−キノンジアジド化合物を含有することはない)の製造方法。

【公開番号】特開2007−92081(P2007−92081A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−327853(P2006−327853)
【出願日】平成18年12月5日(2006.12.5)
【分割の表示】特願2002−271986(P2002−271986)の分割
【原出願日】平成6年3月11日(1994.3.11)
【出願人】(000006035)三菱レイヨン株式会社 (2,875)
【Fターム(参考)】