説明

塗料組成物から形成される硬化膜の色を維持する方法

塗料組成物から形成される金属基材上の硬化膜の色を標準と比べて維持する方法であって、樹脂を用意するステップと、顔料を用意するステップと、顔料と樹脂を混ぜ合わせて塗料組成物を形成するステップと、塗料組成物を金属基材に塗布するステップと、塗料組成物を硬化させて、L値、a値、及びb値によって定義される色を有する硬化膜を形成するステップと、Ls値、as値、及びbs値を有する標準と比べて色を維持するステップであって、L値、a値、及びb値のそれぞれの変化が標準のL5値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ20%未満であるようにするステップとを含む、方法。硬化膜は、250〜2,500nmの波長で0.75以上の太陽光反射率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2007年10月5日に出願された米国仮特許出願第60/977,743号の優先権及びあらゆる利益を主張するものである。
【0002】
本主題発明は一般に、塗料組成物から形成される金属基材上の硬化膜の色を維持する方法に関する。さらに具体的には、本主題発明は太陽光反射率を有する硬化膜に関する。
【0003】
塗装系は通常、金属基材に特定の機能的及び美的特性(色、外観、及び保護など)を与えるように配合される塗料組成物を含む。そのような塗料組成物はまた、通常は、金属基材が最終用途品に形成される前に塗料組成物が金属基材に塗布されるか、またはその後に塗布されるかに応じて配合される。例えば、自動車塗料組成物は、すでに車体に形成されているスチールに塗布して、色、光沢、及び防食性能を付与することができる。それに対して、工業用(例えば、コイル)塗料組成物は、スチールコイルに事前塗布して、色、太陽光反射率、及び耐候性をスチールに付与することができ、そのスチールは後で例えば、商業用及び住宅用屋根に形成されるであろう。
【0004】
既存の塗装系は、通常、金属基材上で硬化されて硬化膜を形成する塗料組成物を含む。商業用及び住宅用建築物及び車体の材料など多数の用途では、太陽光反射率を有する硬化膜が必要とされる。硬化膜の太陽光反射率は、反射太陽放射と入射束との比、すなわち、反射太陽放射と入射太陽放射との比の単位である。太陽光反射率は0〜1の範囲であり、0%〜100%のパーセントで表されることが多い(数字が大きいほど太陽光反射率が大きいことを示す)。比較的大きな太陽光反射率を有する硬化膜は、比較的小さい太陽光反射率を有する硬化膜と比べて、より多くの太陽放射を反射するであろう。さらに、太陽光反射率が1パーセント増えるごとに、通常は金属基材温度が1度減少する。
【0005】
連邦政府及び州政府は、硬化膜が0.75以上の太陽光反射率を有している場合に、屋根をエナジースターまたはクールルーフ評価委員会(CRRC)に準拠したものとして分類する。気温及びエネルギー消費量の低減ならびに付随するコストの低減を可能にする「クールルーフ」性能を実現する技術を利用できるが、それは白色及び他の明るい色についてのみである。それゆえに、既存の金属板葺きでは、「クールルーフ」性能に関する設計オプションは限られる。したがって、暗色でも「クールルーフ」性能が実現されるなら有利であろう。
【0006】
現在、顔料を塗料組成物に添加して機能的及び美的特性を調節することは、当該技術分野において既知である。しかし、顔料を塗料組成物に添加すると、(特に、暗色の場合に)塗料組成物から形成される硬化膜の色の変化が生じうる。その結果、多数の既存の硬化膜は、許容できる色の測定値を有するが、太陽光反射率に関しては準拠していない。すなわち、硬化膜は色標準に一致しうるが、その太陽光反射率が連邦政府または州の禁止規制の範囲に含まれてしまう。普通は、硬化膜の色を著しく変化させることなく、既存の硬化膜の太陽光反射率を変更することは困難である。したがって、硬化膜の色を著しく変化させることなく、太陽光反射率に関して準拠した硬化膜を得ることは有利であろう。
【0007】
既存の技術に欠陥があるため、前述の欠点のない塗装系が必要とされている。
【0008】
本発明は、塗料組成物から形成される金属基材上の硬化膜の色を、標準と比べて維持する方法を提供する。本方法は、樹脂を用意するステップ、顔料を用意するステップ、及び顔料と樹脂とを混ぜ合わせて塗料組成物を作るステップを含む。本方法は、塗料組成物を金属基材に塗布するステップ及び金属基材上の塗料組成物を硬化させて硬化膜を形成するステップも含む。硬化膜は、ハンターLabカラースケールに従って分光光度計で測定されたL値、a値、及びb値で定義される色を有する。本方法は、硬化膜のL値、a値、及びb値のそれぞれの変化が、標準のLs値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ20%未満となる、Ls値、as値、及びbs値を有する標準と比べて硬化膜の色を維持するステップも含む。塗料組成物から形成される硬化膜は、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定した場合に、250nm〜2,500nmの波長で0.75以上である太陽光反射率を有する。本発明は、金属基材と金属基材に施された硬化膜とを含む塗装系も提供する。
【0009】
本発明の方法及び塗装系は、有利なことに、硬化膜(暗色を有する硬化膜を含む)の「クールルーフ」性能を実現する。特に、本方法及び塗装系は、ある範囲の色の選択において優れた太陽光反射率を有する硬化膜を提供する。本方法及び塗装系は、硬化膜の色を維持したまま硬化膜の太陽光反射率を最適化する。最後の点として、本方法及び塗装系により、建物及び乗り物の内部空間が涼しく保たれるのでエネルギーコストの節約が可能になり、屋根の膨張と収縮が最小化されることに基づいて屋根の耐用期間が最適化され、かつ優れた太陽光反射率を有する硬化膜の場合に生じる金銭的動機付けの条件が潜在的に与えられる。
【0010】
本発明の他の利点は、添付図面と併せて考慮し、以下の詳細な説明を参照することにより本発明がよりよく理解されるにつれて、容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、塗装系の横断面図である。
【0012】
図1を参照すると、本発明は、金属基材12と金属基材12に施された色を有する硬化膜14とを含む塗装系10を提供する。本発明は、塗料組成物から形成される金属基材12上の硬化膜14の色を、標準と比べて維持する方法も提供する。塗料組成物は通常、金属基材12が最終用途品に形成される前に金属基材12に塗布される。すなわち、金属基材12は通常、最終用途品に形成される前に事前塗装される。塗料組成物の典型的な用途としては、商業用及び住宅用建物、暖房装置、換気装置及び空調装置、電気器具、トレーラートラック機器、及び家庭用電化製品の産業がある。特に、商業用及び住宅用建築産業においては、本方法は、屋根、窓、ドア、及び樋用の産業用塗料組成物から形成される硬化膜に、色及び太陽光反射率を与えるのに使用することができる。しかし、本発明の方法及び塗装系10は、自動車塗膜用途などの産業用塗膜用途を超えて利用できることを理解すべきである。
【0013】
本方法は、樹脂を用意するステップを含む。以下にさらに詳細に記載されているように、樹脂は通常、塗料組成物の他のどんな成分とも別個に用意することを理解すべきである。樹脂は通常、成分(顔料及び雲母など)を塗料組成物中に封じ込め、そのような成分を金属基材12に結合させる。樹脂を用意するステップには、1種類の樹脂を用意すること、少なくとも1種類の樹脂を用意すること、多種類の樹脂を用意すること、及び/または樹脂の組合わせを用意することが含まれうることも理解すべきである。以下にさらに詳細に記載されているように、樹脂は架橋されていても、架橋されていなくてもよいことも理解すべきである。
【0014】
一実施態様において、樹脂はシリコーン変性ポリエステル樹脂であるとさらに定義される。シリコーンは通常、温度変動によって生じる硬化膜の劣化を緩和するので、シリコーン変性ポリエステル樹脂は、通常は耐熱性及び耐候性を有する硬化膜を必要とする用途のために選択される。
【0015】
シリコーン変性ポリエステル樹脂は当該技術分野において既知の任意の方法で製造できるが、シリコーン変性ポリエステル樹脂は通常は、主鎖を有するポリエステル樹脂にシリコーンを組み込むことによって製造する。すなわち、シリコーンが通常は縮合反応によってポリエステル樹脂の主鎖に組み込まれて、シリコーン変性ポリエステル樹脂が形成される。通常は、シリコーン変性ポリエステル樹脂は、ポリエステル樹脂と、30℃より高いガラス転移温度(Tg)を有する任意の好適なシリコーンとを反応させることによって製造する。シリコーンは典型的には、シリコーン変性ポリエステル樹脂中に、シリコーン変性ポリエステル樹脂の全質量に対して1〜75、より典型的には10〜40、及びもっとも典型的には20〜35質量部の量で存在する。シリコーンの存在量が1質量部未満である場合、樹脂は温度変動によって生じる硬化膜14の劣化を緩和できない。同様に、シリコーンの存在量が75質量部より多い場合、通常、過剰のシリコーンはポリエステル樹脂の主鎖に容易に組み込まれない。
【0016】
シリコーン変性ポリエステル樹脂の主鎖となる好適なポリエステル樹脂は、典型的には数平均分子量(Mn)が1,000〜20,000、より典型的には1,500〜4,500、もっとも典型的には2,000〜4,000g/molである。ポリエステル樹脂は、典型的には質量平均分子量(Mw)が2,000〜40,000、より典型的には5,000〜20,000、もっとも典型的には5,000〜10,000g/molである。さらに、ポリエステル樹脂は、典型的にはヒドロキシル価が5〜150、より典型的には15〜105mgKOH/gであり、酸価が1〜30、より典型的には3〜15mgKOH/gである。
【0017】
ポリエステル樹脂は、通常は、ポリオール(主としてジオール及びトリオール)とポリカルボン酸またはその対応する無水物との間の縮合反応によって生成する。ポリオールは、通常は約2〜20個の炭素原子を含む。脂肪族ポリオール、特に2〜10個の炭素原子を含む脂肪族ジオールまたはトリオールが典型的である。好適なポリオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、グリセロール、1,2,3−ブタントリオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピル2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピオネート、1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジオール、ペンタエリスリトール、及びジペンタエリスリトールがあるが、これらに限定されない。2種類以上のポリオールを組み合わせて使用してもよい。トリメチロールプロパンなどのトリオールは、所望される場合にはポリエステル樹脂が分岐するように、通常は少量を使用する。
【0018】
ポリエステル樹脂を得るために縮合反応で通常使用するポリカルボン酸として、アジピン酸、メチルアジピン酸、マロン酸、セバシン酸、スベリン酸、グルタル酸、フマル酸、イタコン酸、リンゴ酸、ジグリコール酸、1,3−及び1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ピメリン酸、アゼライン酸、1,12−ドデカン二酸、マレイン酸、マレイン酸無水物、コハク酸、無水コハク酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びメチルコハク酸及びテトラプロペニルコハク酸及びそれらの無水物、ならびにテトラヒドロフタル酸無水物があるが、これらに限定されない。2種類以上のポリカルボン酸を組み合わせて使用することができる。脂肪酸または脂環式酸の代わりに、またはそれと組み合わせて使用できる芳香族ポリカルボン酸の例として、フタル酸及び無水フタル酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、ジフェン酸、4,4−ジカルボキシジフェニルエーテル、及びトリメリト酸がある。
【0019】
本発明の目的に適したシリコーン変性ポリエステル樹脂は、典型的には数平均分子量(Mn)が500〜9,000、より典型的には1,500〜4,500、もっとも典型的には2,000〜4,000g/molである。シリコーン変性ポリエステル樹脂は、典型的には質量平均分子量(Mw)が10,000〜50,000、より典型的には12,000〜40,000、もっとも典型的には15,000〜35,000g/molである。シリコーン変性ポリエステル樹脂は、通常はヒドロキシル官能性を有する脂肪族であり、典型的にはヒドロキシル価が5〜1,000、より典型的には15〜60mgKOH/gで、酸価が1〜30、より典型的には3〜15mgKOH/gである。
【0020】
樹脂がシリコーン変性ポリエステル樹脂である実施態様において、塗料組成物は通常、シリコーン変性ポリエステル樹脂と反応する架橋剤をさらに含む。架橋剤は通常、シリコーン変性ポリエステル樹脂中の活性水素原子と反応して硬化膜14を形成する。
【0021】
架橋剤は通常、メラミンホルムアルデヒド樹脂を含む。好適なメラミンホルムアルデヒド樹脂の一例として、完全にメチル化されたメラミンがある。メラミンホルムアルデヒド樹脂は、以下の一般式のアルコキシメチル基を含むことができる:
−CH2OR1
[式中、R1は1〜20個の炭素原子を有するアルキル鎖である。]。本発明の目的に適したメラミンホルムアルデヒド樹脂の具体例は、Resimene(登録商標)という商品名でSolutia(米国ミズーリ州セントルイス)から市販されているヘキサメトキシメチルメラミンである。
【0022】
他の架橋剤も好適でありうる。例えば、架橋剤は、他の単量体及び高分子のメラミンホルムアルデヒド樹脂であってよく、それには、部分的にアルキル化されたメラミン樹脂と完全にアルキル化されたメラミン樹脂の両方(他のメチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂、及びメチル化/ブチル化メラミン樹脂など)が含まれる。架橋剤は、他のアミノプラストであってもよく、それには、メチロール尿素樹脂及びアルコキシ尿素樹脂などの尿素樹脂、例えば、ブチル化尿素ホルムアルデヒド樹脂があるが、それらに限定されない。
【0023】
架橋剤は典型的には、塗料組成物100質量部に対して0.5〜3質量部、より典型的には1〜2質量部の量で塗料組成物中に存在する。存在する架橋剤の量が0.5質量部未満である場合、塗料組成物の硬化膜14を硬化させるのが困難である。同様に、存在する架橋剤の量が3質量部より多い場合、硬化膜14は通常は柔軟性がなくなり、金属基材12上で亀裂及び剥がれが起きやすくなる。
【0024】
別の実施態様において、樹脂はさらにポリフッ化ビニリデン(PVDF)樹脂と定義される。以下にさらに詳細に以下に記載されているように、通常は、優れた硬化膜強度、光沢、保色性、及び耐候性を必要とする用途のためにPVDF樹脂が選択される。
【0025】
PVDF樹脂は当該技術分野において既知の任意の方法で製造できるが、PVDF樹脂は通常は、フリーラジカル重合法によって気体状二フッ化ビリニデンモノマーから合成される。PVDF樹脂は通常は、−CH2基と−CF2基が交互になっているポリマー鎖を含み、それは通常、PVDF樹脂の選択的溶解性に寄与する。理論に縛られるわけではないが、ポリフッ化ビニリデン樹脂の選択的溶解性が、PVDF樹脂を含む塗料組成物から形成される硬化膜14の優れた耐候性に寄与すると考えられる。
【0026】
ポリフッ化ビニリデン樹脂は、典型的には質量平均分子量(Mw)が50,000〜500,000、より典型的には70,000〜250,000、より典型的には80,000〜150,000g/molである。好適なPVDF樹脂は、Kynar 500(登録商標)という商品名で入手可能であり、Arkema Inc.(米国ペンシルバニア州フィラデルフィア)から市販されている。
【0027】
本明細書に述べられていない他の樹脂(アクリル樹脂及びポリエステル樹脂など)も、本発明の目的に適したものでありうることを理解すべきである。好適なアクリル樹脂は、アクリル酸をアルコールと反応させてカルボン酸エステルを形成することにより製造できる。カルボン酸エステルは、それ自体またはモノマーと結合してアクリル樹脂(ホモポリマーでありうる)を形成しうる。アクリル樹脂は典型的には、数平均分子量(Mn)が2,000〜50,000、より典型的には3,000〜35,000、もっとも典型的には5,000〜25,000g/molである。アクリル樹脂は典型的には、質量平均分子量(Mw)が5,000〜100,000、より典型的には8,000〜80,000、もっとも典型的には10,000〜70,000g/molである。同様に、好適なポリエステル樹脂及びポリエステル樹脂の製造方法には、上述のいずれのものも含まれる。
【0028】
樹脂は典型的には、塗料組成物100質量部に対して30〜70質量部、より典型的には40〜65質量部、もっとも典型的には55〜60質量部の量で塗料組成物中に存在する。存在する樹脂の量が30質量部未満である場合、樹脂は他の成分(顔料及び雲母など)を塗料組成物中に効果的に封じ込めることができない。同様に、存在する樹脂の量が70質量部より多い場合、硬化膜14は通常は柔軟性がなくなり、金属基材12上で剥がれ及び亀裂が起きやすくなる。
【0029】
樹脂に加えて、塗料組成物は他の成分を含むことができる。例えば、塗料組成物は通常は、溶剤成分も含む。溶剤成分は通常は、樹脂及び他の成分を塗料組成物中に懸濁させ、硬化膜14の形成中の硬化時に蒸発する。溶剤成分は典型的には、塗料組成物100質量部に対して25〜60質量部、より典型的には30〜50質量部、もっとも典型的には35〜45質量部の量で塗料組成物中に存在する。存在する溶剤成分の量が25質量部未満であると、樹脂は、通常は塗料組成物中に効果的に懸濁しない。同様に、存在する溶剤成分の量が60質量部より多いと、溶剤成分は完全に蒸発しないことが多いので、多くの場合、硬化膜14は形成するのが難しいか、または許容できない色を有する。溶剤成分は通常、有機である。本発明の目的に適した溶剤成分としては、グリコール、エステル、エーテル−エステル、グリコール−エステル、エーテル−アルコール、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、フタレート可塑剤、及びそれらの組合わせがある。
【0030】
塗料組成物は通常、触媒も含む。触媒は通常は、硬化膜14を形成する塗料組成物の硬化を促進する。触媒は通常は、塗料組成物100質量部に対して0.1〜5.0質量部の量で塗料組成物中に存在する。本発明の目的に適した触媒としては、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、ジノニルナフタレンジスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェニルリン酸、マレイン酸モノブチル、リン酸ブチル、モノアルキル及びジアルキルリン酸、ヒドロキシリン酸エステル、ルイス酸、亜鉛塩、及びスズ塩がある。強酸を含む触媒は、アミンでブロックすることができる。
【0031】
塗料組成物は添加剤成分も含むことができる。添加剤成分は典型的には、塗料組成物100質量部に対して1〜20質量部、より典型的には5〜15質量部、もっとも典型的には7〜12質量部の量で塗料組成物中に存在する。好適な添加剤成分は、光沢低減剤または艶消剤、ワックス、界面活性剤、充填剤、可塑剤、乳化剤、品質改良剤、増粘剤、接着促進剤、安定剤、脱泡剤、湿潤添加剤、着色剤、及びそれらの組合わせの群から選択できる。本明細書に具体的に列挙していない他の添加剤成分も、本発明の目的に好適でありうる。
【0032】
本方法は顔料を用意するステップをさらに含む。本明細書に記載されているように、顔料は添加剤成分の前述の着色剤とは異なる。上に記載したように、塗料組成物は、以下に記載する顔料に加えて、着色剤(顔料など)を含むことができることを理解すべきである。すなわち、塗料組成物は、塗料組成物及び/または硬化膜14を着色することを意図した、着色剤(顔料など)を含むことができる。そのような着色剤は、以下に記載する顔料とは区別されるべきである。
【0033】
本発明の方法で用意する顔料は、通常は雲母粒子及び雲母粒子に施されたコーティングを含む。本明細書で使用される「施された」という用語は、コーティングが雲母粒子と接触しており、かつ雲母粒子を部分的または実質的に封じ込めうることを意味する。例えば、雲母粒子の一部が被覆されないように、コーティングは部分的に雲母粒子を封じ込めることができる。あるいは、コーティングは実質的に雲母粒子を封じ込めることができる。すなわち、雲母粒子の95%より多く覆うことができる。コーティングを数多くの方法で(沈殿などで)雲母に施して、干渉顔料を形成することができる。
【0034】
好適な雲母粒子は、当該技術分野において既知のどんなものでも含まれ、一般にはK、Na、Ca、Ba、Rb、Cs、Al、Mg、Fe、Mn、Cr、Ti、Li、Si、及び/またはFe3+などの元素を含むものとして表すことができる。雲母粒子は、例えば、二八面体または三八面体に分類されうる。雲母は、白雲母または脆雲母にも分類されうる。
【0035】
雲母粒子に施されるコーティングは通常は少なくとも2つの層を含む。すなわち、コーティングは2つまたは3つ以上の層を含みうる。それぞれの層は互いに同一または異なっていてもよい。例えば、2つの同じ層を含む一実施態様において、各層は通常は別々に施される。本発明では、少なくとも1つの層は通常は無機酸化物を含む。さらに、無機酸化物は通常、金属酸化物、酸化ケイ素、及びそれらの組合わせの群から選択される。金属酸化物としては、当該技術分野において既知のどんな金属酸化物でも挙げることができる。好適な金属酸化物としては、二酸化チタン、酸化スズ、酸化ジルコニウム、及びそれらの組合わせがあるが、これらに限定されない。酸化ケイ素としては、当該技術分野において既知のどんな酸化ケイ素でも挙げることができる。例えば、一実施態様において、酸化ケイ素はさらに二酸化ケイ素と定義される。特に、無機酸化物は通常は、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化スズ、または酸化ジルコニウムである。一実施態様において、コーティングは、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化ジルコニウムを含む。
【0036】
塗料組成物に添加しやすくするため、顔料は通常は、ISO 1524に従って測定した場合に10〜60μmの粒径を有する。塗料組成物に含まれる雲母のような顔料は、通常は小板形状を有するため(すなわち、顔料は球形ではないため)、顔料の粒径は通常は顔料の長さを指すことを理解すべきである。さらにまた塗料組成物に添加しやすくするために、顔料は通常、20℃での密度が2.6〜2.8g/cm3であり、100g(顔料)/1リットル(水)のスラリーの20℃でのpH値が4〜8である。以下にさらに詳細に記載されているように、顔料の粒径及び小板形状により、顔料は従来の雲母よりもさらに粉末に似たものとなることができ、そのことは、本発明の方法で製造された硬化膜14の色を維持しつつ、硬化膜14の優れた太陽光反射率、放射率、及び太陽光反射指標に寄与すると考えられる。特に、従来の雲母は通常、「輝き」を有しかつ色の変化を伴う硬化膜を形成する傾向がある。
【0037】
顔料は通常、干渉顔料であるとさらに定義される。本明細書で使用される「干渉顔料」という用語は、雲母粒子と雲母粒子に施されたコーティングとの間の境界で、可視スペクトルの範囲の光を曲げかつ反射する顔料を指す。例えば、コーティングは通常は光を2回反射する。すなわち雲母粒子とコーティングとの間の境界で1回、コーティングの露出面で1回反射する。第1反射と第2反射との間の遅れにより、光の位相のずれが生じる。位相のずれにより、打ち消される光の波長もあれば、強化される光の波長もある。
【0038】
顔料は通常は無色である。本主題発明の目的において、「無色」という用語は、顔料に色がないことを意味すると定義される。「無色」という用語は、顔料の吸収曲線には400〜700nmの範囲に吸収ピークがなく、日光の当たる条件下で見たときに反射光または透過光において色調も色相も示さないことを意味するとさらに定義される。顔料は通常は半透明でもある。本主題発明の目的においては、「半透明」という用語は、光が顔料を通過するときに散乱することを意味すると定義される。理論に縛られるわけではないが、顔料が無色半透明であることは、硬化膜14の色を保ちつつ、塗料組成物から形成される硬化膜14の太陽光反射率を向上させるのに寄与すると考えられる。
【0039】
顔料は通常は、透過率が、400nm〜700nmの波長の電磁放射線で少なくとも50%であり、780nm〜2,500nmの波長の電磁放射線で少なくとも40%である。さらに詳細には、顔料は通常は、光合成活性光の波長で最高の透過値を有する半透明無色の多層顔料である。光合成活性光は、光合成のために植物が必要とする400〜700nmの波長を有する光と定義される。顔料は通常は、正の薄赤色/暗赤色の比率が1.4:1である。理論に縛られるわけではないが、光合成活性光の波長の透過値が高いこと及び正の薄赤色/暗赤色の比率が、塗料組成物から形成される硬化膜14の太陽光反射率の向上に寄与すると考えられる。本発明の目的に適した顔料として、ドイツ国ダルムシュタットのMerck KGaAから市販されているSolarflair(商標)9870顔料がある。
【0040】
本方法は、顔料と樹脂とを混ぜ合わせて塗料組成物を形成するステップも含む。顔料と樹脂は、当該技術分野において既知の任意の手段で混ぜ合わせることができ、添加の順序は重要ではない。例えば、顔料は、撹拌しながら、塗料組成物の樹脂に直接添加することができる。顔料は典型的には、塗料組成物100質量部に対して0.25〜5質量部、より典型的には0.5〜3質量部、もっとも典型的には0.75〜2.75質量部の量で塗料組成物中に存在する。顔料は通常は、塗料組成物から形成される硬化膜14に、優れた太陽光反射率(例えば、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定した場合に250nm〜2,500nmの波長で太陽光反射率が0.75以上)が付与されるように、前述の範囲で塗料組成物中に存在する。さらに、顔料は通常は、以下にさらに詳細に記載されているように、優れた太陽光反射率となるようにしつつ、硬化膜14の色を標準と比べて維持するために、前述の範囲で塗料組成物中に存在する。
【0041】
本方法は、塗料組成物を金属基材12に塗布するステップも含む。金属基材12は、当技術分野において既知の任意の金属から形成することができるが、通常はスチールまたはアルミニウムから形成される。一実施態様において、金属基材12は建物の屋根である。
【0042】
塗料組成物は、当該技術分野において既知の任意の手段で金属基材12に塗布できる。塗料組成物は通常は、少なくとも1つの移送手段、例えば、ローラーまたは噴霧器を用いて金属基材12に塗布されるが、これに限定することを意図している訳ではない。
【0043】
例えば、一実施態様において、塗料組成物の塗布ステップは、少なくとも1つのローラーを用意し、塗料組成物を少なくとも1つのローラーから金属基材12へ移すこととさらに定義される。例えば、第1ローラーは通常は、塗料組成物を開放型保持容器から第2ローラーへ移し、第2ローラーは通常は塗料組成物を金属基材12へ移す。塗料組成物は通常は、0〜100℃の周囲温度及び176〜290℃のピーク金属温度で塗布される。この実施態様において、塗料組成物は通常は産業用塗料組成物であるとさらに定義される。産業用塗料組成物は通常は、金属基材12が最終用途品に形成される前に、金属基材12に事前塗布される。例えば、産業用塗料組成物は、金属基材12が、例えば、屋根、羽目、または樋に形成される前に、少なくとも1個のローラーから金属基材12へ移される。この実施態様では、硬化膜14は通常は厚さが0.5〜0.9ミルである。
【0044】
別の実施態様において、塗料組成物を塗布するステップは、塗料組成物を金属基材12に吹き付けることとさらに定義される。例えば、噴霧器は通常は、塗料組成物を保持する容器へ管を介して接続される。塗料組成物は通常は、管を通して噴霧器に供給して、金属基材12に吹き付ける。塗料組成物は通常は、0〜100℃の周囲温度及び176〜290℃のピーク金属温度で塗布する。この実施態様において、塗料組成物は通常は自動車塗料組成物であるとさらに定義される。自動車塗料組成物は通常は、金属基材12が最終用途品に形成された後に金属基材12に塗布される。例えば、自動車塗料組成物は、金属基材12が車体に形成された後に金属基材12に吹き付けられる。この実施態様では、硬化膜14は通常は厚さが0.5〜4ミルである。塗料組成物を金属基材12に塗布する他の方法も使用できることを理解すべきである。例えば、塗料組成物は手によって、または浸漬によって塗布できる。
【0045】
本方法は、金属基材12上の塗料組成物を硬化させて、ハンターLabカラースケールに従って分光光度計で測定したL値、a値、及びb値で定義される色を有する硬化膜14を形成するステップを含む。当該技術分野において既知のように、ハンターLabカラースケールは物体の色を測定する方法である。ハンターLabカラースケールのL値は、L値100が明るさ(例えば、完全拡散反射面)を表し、L値0が暗さ(例えば、黒色)を表す、明るさ/暗さスケールと関連している。同様に、ハンターLabカラースケールのa値は赤色/緑色スケールと関連し、b値は黄色/青色スケールと関連している。a値及びb値には数値的な限界はない。正のa値は赤色を表し、負のa値は緑色を表す。正のb値は黄色を表し、負のb値は青色を表す。硬化膜14の色を測定するのに適した分光光度計は、例えば、45°/0°紫外・可視分光光度計である。典型的な実施態様において、硬化膜14は暗色を有する。すなわち、硬化膜14の色は、ハンターLabカラースケールに従って分光光度計で測定した場合に、75以下のL値、負のa値、及び負のb値で定義される。
【0046】
塗料組成物は通常は、オーブン中において金属基材12上で硬化される。しかし、塗料組成物の硬化ステップは通常はオーブン中で行われるが、塗料組成物は開放型の熱源を用いて硬化させることもできることを理解すべきである。
【0047】
金属基材12を最終用途品に形成する前に塗料組成物を金属基材12に塗布する実施態様、例えば、少なくとも1つのローラーによって産業用塗料組成物を金属基材12に塗布することを含む実施態様において、塗料組成物を硬化させるステップは通常は、20〜100秒間の間、700°F〜900°Fの温度で実施する。さらに具体的には、オーブン中にある間に金属基材12のピーク金属温度(PMT)が435°F〜500°Fとなるように、通常は、20〜100秒間の間、700°F〜900°Fのオーブン温度においてオーブン中で金属基材12上の塗料組成物を硬化させる。
【0048】
金属基材12を最終用途品に形成した後に塗料組成物を金属基材12に塗布する実施態様、例えば、噴霧器によって金属基材12に自動車塗料組成物を塗布することを含む実施態様において、塗料組成物を硬化させるステップは通常は、60〜1,200秒間の間、75°F〜450°Fの温度で実施する。さらに具体的には、オーブン中にある間に金属基材12のピーク金属温度(PMT)が300°F〜350°Fとなるように、通常は、900〜1,200秒間の間、300°F〜350°Fのオーブン温度においてオーブン中で金属基材12上の塗料組成物を硬化させる。
【0049】
本方法は通常は、塗料組成物から形成される硬化膜14をほぼ周囲温度に冷却するステップをさらに含む。金属基材12上の硬化膜14には、通常は冷却するために冷却液(水など)を吹き付ける。冷却ステップにより、硬化膜14及び金属基材12は更なるどんな処理に対しても準備が整うことになる。例えば、産業用塗料組成物を含む一実施態様において、金属基材12に施された硬化膜14を有する金属基材12は、通常は、例えば、建物の屋根のパネルに形成される。同様に、自動車塗料組成物、他の乗り物の構成部品及び装置を含む一実施態様において、例えば、トリム部品、電子装置、及びパワートレインを、金属基材12に施された硬化膜14を有する金属基材12と一体化して、乗り物にする。
【0050】
本方法は、硬化膜14のL値、a値、及びb値のそれぞれの変化が、標準のLs値、as値、及びbs値と比較してそれぞれ20%未満となる、Ls値、as値、及びbs値を有する標準と比べて硬化膜14の色を維持するステップも含む。別の言い方をすれば、顔料と樹脂を混ぜ合わせて塗料組成物を形成する場合でも、塗料組成物から形成される硬化膜14の色は標準と比べて維持される。標準のLs値、as値、及びbs値は、顔料を添加する前の標準塗料組成物から形成された硬化膜のL値、a値、及びb値を表す。顔料と樹脂を混ぜ合わせたとき、その塗料組成物から形成される得られた硬化膜14の色は、標準の色、すなわち、顔料を添加する前の標準塗料組成物から形成される硬化膜の色と一致する。すなわち、塗料組成物から形成される硬化膜14のL値、a値、及びb値のそれぞれの変化は、標準のLs値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ20%未満、通常は10%未満である。さらに具体的には、暗色であっても、塗料組成物から形成される硬化膜14の色(L値、a値、及びb値で表される)は、実質的に標準(すなわち、標準塗料組成物から形成される硬化膜の色)と違わない。「実質的に違わない」という用語は、L値、a値、及びb値のそれぞれの変化が、典型的には、Ls値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ20%未満、より典型的には15%未満、もっとも典型的には10%未満であるという事実を指す。それゆえに、上述の顔料は、標準と比べて硬化膜14の色を実質的に変えない。理論に縛られるわけではないが、顔料の無色半透明性、光合成活性光の波長の高い透過値、及び正の薄赤色/暗赤色の比率は、硬化膜14の色を維持するのに寄与すると考えられる。
【0051】
塗料組成物から形成される硬化膜14は、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定した場合に、250nm〜2,500nmの波長で0.75以上の太陽光反射率を有する。比較的大きな太陽光反射率を有する硬化膜は、比較的小さい太陽光反射率を有する硬化膜と比べて、より多くの太陽放射を反射するであろう。さらに、太陽光反射率が1パーセント増えるごとに、通常は金属基材温度が1度減少する。それゆえに、硬化膜14は通常は、最小金属基材温度を必要とする用途(例えば、商業用及び住宅用屋根に形成されるであろう金属基材)に有用である。特に、硬化膜14は通常は、「クールルーフ」(例えば、太陽光エネルギーを屋根から効果的に反射する屋根)を必要とする用途に有用である。
【0052】
塗料組成物から形成される硬化膜14はまた、通常、ASTM E408−71おおびASTM C1371−04aに従って測定した場合に250nm〜2,500nmの波長で0.75以上の放射率を有する。放射率は一般に、同じ温度において同じ面積を有する黒体と比べた場合の、表面の放射エネルギー放出能力と定義される。すなわち、表面が吸収エネルギーを放射する能力の尺度である。放射率は一般に0〜1の無次元の値で表現される。無光沢の黒い表面は1に近い放射率を有する。それに対して、反射材料は0に近い放射率を有する。顔料を含む塗料組成物から形成される硬化膜14は通常は、0.75以上の放射率を有するので、硬化膜14は通常は、赤外線エネルギーを発することができる表面を必要とする用途(例えば、商業用及び住宅用屋根に形成されることになる金属基材)に有用である。さらに、顔料を含む塗料組成物から形成される硬化膜14は、通常は、顔料を添加する前の標準塗料組成物(すなわち、顔料を含まない標準塗料組成物)から形成される硬化膜と比較すると、容易に吸収エネルギーを放射しない。それゆえに、顔料を含む塗料組成物から形成される硬化膜14は、通常は、都市のヒートアイランドにある地域(すなわち、周辺の農村地域よりも著しく暖かい大都市圏)における商業用及び住宅用屋根材用途に有用である。
【0053】
さらに、塗料組成物から形成される硬化膜14は、通常は、ASTM 1980−01に従って求めた場合に78より大きい太陽光反射指標(SRI)を有する。ASTM 1980−01で定義される太陽光反射指標は、標準の太陽光条件及び周囲条件の下での標準白色(SRI=100)及び標準黒色(SRI=0)を基準にした表面の相対定常表面温度である。同等の条件では、太陽光反射率の低い暗い表面の定常表面温度は、太陽光反射率の高い明るい色の表面の定常表面温度よりも高い。また、熱放射率の低い表面は、熱放射率の高い表面よりも定常表面温度が高い。それゆえに、表面の太陽光反射指標は、太陽熱をうけつけない表面の全体的能力を評価するために、反射率と放射率とを組み合わせたものである。太陽光反射指標が100により近い表面は、太陽光反射率が0により近い表面よりも定常表面温度が低くなる。顔料を含む塗料組成物から形成される硬化膜14は、通常は、78より大きい太陽光反射指標を有するので、硬化膜14は通常は、低い定常表面温度を必要とする用途(例えば、商業用及び住宅用屋根に形成される金属基材か、または車体に形成される金属基材)に有用である。それゆえに、顔料を含む塗料組成物から形成される硬化膜14は、通常は、都市のヒートアイランドにある地域での商業用及び住宅用屋根材用途、及び一日の平均気温が60°Fより高い気候で運転される車体にも有用である。
【0054】
理論に縛られるわけではないが、顔料の無色半透明性、光合成活性光の波長の高い透過値、及び正の薄赤色/暗赤色の比率は、硬化膜14の優れた太陽光反射率値、放射率、及び太陽光反射指標に寄与すると考えられる。顔料を含む塗料組成物の硬化膜14の場合に、なぜ太陽光反射率が250nm〜2,500nmの波長において0.75以上なのか、またL値、a値、及びb値のそれぞれの変化が通常は標準のLs値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ20%未満であるのか理解されていないが、塗料組成物中に顔料が存在するために、硬化膜14の色が標準と比べて維持されると考えられる。特に、顔料のコーティングは通常は光を2回反射する(雲母粒子とコーティングとの間の境界で1回、コーティングの露出面で1回反射する)という説が立てられている。第1反射と第2反射との間の遅れにより、光の位相のずれが生じ、またそれにより打ち消される光の波長もあれば、強化される光の波長もあることになる。
【0055】
雲母粒子を含む顔料を塗料組成物が含んでいるので、硬化膜14の色を維持しつつ、硬化膜14の太陽光反射率、放射率、及び太陽光反射指標が優れていることは、意外なことである。一般に、従来の雲母粒子と樹脂を混ぜ合わせて塗料組成物を形成した場合、雲母により、硬化膜において「輝き」効果が生み出され、色の変化が伴う。意外にも、本発明の方法の顔料は、優れた太陽光反射率、放射率、及び太陽光反射指標を有し、かつ標準と比べて色が維持される硬化膜14をもたらす。
【0056】
それゆえに、本発明の方法は、有利なことに、硬化膜14(暗色を有する硬化膜14を含む)の「クールルーフ」性能を実現する。特に、本方法は、ある範囲の色の選択において優れた太陽光反射率を有する硬化膜14を提供する。本方法は、硬化膜14の色を維持しつつ、硬化膜14の太陽光反射率を最適化する。最後の点として、太陽光反射率が1パーセント増えるごとに、金属基材温度が1度下がるので、本発明の方法はエネルギー消費量及びエネルギーコストの最適化も行う。特に、本方法により、建物及び乗り物の内部空間が涼しく保たれるのでエネルギーコストの節約が可能になり、屋根の膨張と収縮が最小化されることに基づいて屋根の耐用期間が最適化され、かつ優れた太陽光反射率を有する硬化膜14の場合に生じる金銭的動機付けの条件が潜在的に与えられる。
【0057】
本発明は塗装系10も提供する。塗装系10は、金属基材12及び金属基材12に施された塗料組成物から形成される硬化膜14を含む。一実施態様において、金属基材12は建物の屋根である。別の実施態様において、金属基材12は車体である。しかし、塗装系10として、壁パネル、電気器具、樋、航空機、及び船舶などの他の金属基材用途を挙げることができることを理解すべきである。
【0058】
以下の実施例は、本発明を単に説明するためのものであり、決して本発明の範囲を限定するものと見るべきものではない。
【0059】
塗料組成物(実施例1〜2)は、本発明の方法に従って従来の投入及び混合手順で製造する。塗料組成物は、樹脂と顔料を撹拌下で混ぜ合わせて塗料組成物を形成する、バッチブレンド法で形成する。
【0060】
参考塗料組成物(参考例3〜4)も、従来の投入及び混合手順で製造する。参考塗料組成物は、参考塗料組成物の構成成分を攪拌下で混ぜ合わせるバッチブレンド法で形成する。注目すべき点として、参考塗料組成物を形成するために、顔料と参考塗料組成物の樹脂とを混ぜ合わせることはしない。それどころか、参考塗料組成物は顔料を含まない。
【0061】
塗料組成物の各構成成分の具体的な量を第1表に示す(量はすべて、塗料組成物100部に対する質量部である)。
【0062】
【表1】

【0063】
樹脂Aは、33,000g/molの質量平均分子量(Mw)、50mgKOH/gのヒドロキシル価、及び8.0mgKOH/gの酸価を有するシリコーン変性ポリエステル樹脂である。
【0064】
架橋剤Bはヘキサメトキシメチルメラミンである。
【0065】
溶剤Cは、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテートである。
【0066】
基剤Dは、ポリエステル樹脂、着色顔料、炭化水素流体(Aromatic 100という名称の市販のもの)、溶剤、及びヘキサメトキシメチルメラミンを組み合わせたものである。
【0067】
ワニスEは、フルオロポリマー樹脂、芳香族炭化水素、トリメチルベンゼン、ナフタレン、シクロヘキサノン、キシレン、及びエチルベンゼンを含む、フルオロポリマーワニスである。
【0068】
添加剤Fは、テトラアルキルアンモニウムベントナイトを含む有機変性ベントナイト粘土増粘剤である。
【0069】
溶剤Gはn−ブタノールである。
【0070】
イソシアネートHは、ヘキサメチレンジイソシアネートをベースにした脂肪族ブロックポリイソシアネートである。
【0071】
添加剤Jは、n−ブタノール中に含まれるブチル化メラミンとメチル化メラミン−ホルムアルデヒド樹脂との組合わせである。
【0072】
紫外線吸収剤Kは、2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−ドデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス)2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンと2−[4−[(2−ヒドロキシ−3−トリデシルオキシプロピル)オキシ]−2−ヒドロキシフェニル]−4,6−ビス)2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジンとの混合物を含んでいる液体ヒドロキシフェニル−トリアジン紫外線吸収剤を含む、組合わせである。
【0073】
添加剤Lは、ジイソプロパノールアミンである。
【0074】
添加剤Mは、ポリエーテル変性メチルアルキルポリシロキサンコポリマーのブトキシエタノール溶液とポリエステル変性ジメチルポリシロキサンのキシレン溶液とを組み合わせたものである。
【0075】
添加剤Nは、Aromatic 150という名称で市販されている炭化水素流体である。
【0076】
触媒Pはジノニルナフタレンスルホン酸である。
【0077】
添加剤Qはシリカゲルである。
【0078】
顔料Xは、400nm〜700nmの波長での電磁放射線の透過率を有し、透過率が780nm〜2,500nmの波長の電磁放射線では少なくとも40%である干渉顔料である。顔料Xは、光合成活性光の波長で最大の透過値を有する半透明の多層顔料である。顔料Xは、正の薄赤色/暗赤色の比率が1.4:1である。
【0079】
次いで、実施例1〜2の塗料組成物及び参考例3〜4の参考塗料組成物を、ロール塗布法で別個のスチール基材に塗布して約0.7ミルの塗り厚にする。塗料組成物は、450°Fのピーク金属温度(PMT)でオーブン中において金属基材上で硬化し、実施例1A〜2A及び参考例3A〜4Aの硬化膜が形成される。それぞれの実施例及び参考例の硬化膜の太陽光反射率及び放射率は、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定する。各実施例及び参考例の太陽光反射指標は、ASTM El980−01に従って求める。実施例1A及び参考例3Aの太陽光反射率の具体的な値を第2表に示す。
【0080】
【表2】

【0081】
実施例1の塗料組成物から形成される実施例1Aの硬化膜は、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定した場合に250nm〜2,500nmの波長で0.75より大きい太陽光反射率を有する。
【0082】
それに対して、参考例3の参考塗料組成物から形成される参考例3Aの硬化膜は、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定した場合に250nm〜2,500nmの波長で0.75未満の太陽光反射率を有する。
【0083】
実施例1A及び参考例3Aの太陽光反射率を比較すると明らかなように、本発明の方法は有利にも実施例1Aの硬化膜で「クールルーフ」性能を実現する。特に、本方法は、優れた太陽光反射率を有する実施例1Aの硬化膜を提供する。最後の点として、太陽光反射率が1パーセント増えるごとに、金属基材温度が1度下がるので、本発明の方法によってエネルギー消費量及びエネルギーコストの最適化も行われる。特に、本方法により、建物及び乗り物の内部空間が涼しく保たれるのでエネルギーコストの節約が可能になり、屋根の膨張と収縮が最小化されることに基づいて屋根の耐用期間が最適化され、かつ優れた太陽光反射率を有する硬化膜14の場合に生じる金銭的動機付けの条件が潜在的に与えられる。
【0084】
注目すべき点として、実施例1Aの硬化膜は、カリフォルニア州の第24章Building Energy Efficiency Standard(2005年10月より有効)のLeadership in Energy and Environmental Design(LEED)第2.2版ガイドライン(2006年1月より有効)の太陽光反射率に法令上準拠している。
【0085】
実施例1Aの硬化膜からも明らかなように、顔料Xを含む塗料組成物から形成される硬化膜の色を維持する方法は、参考例3Aの硬化膜の色などの色に関して硬化膜の太陽光反射率を最適化する。さらに具体的に言えば、本方法は、硬化膜の色を維持しつつ、実施例1Aの硬化膜の太陽光反射率を最適化する。
【0086】
本発明を例示的に説明してきたが、用いられた用語は、本質的には説明のためであって、制限するためのものではないことを理解すべきである。上述の教示を考慮すれば、本発明の多数の変更形態及び変形形態が可能であることは明らかである。本発明は、添付の特許請求の範囲内において、明確に記載した以外の方法で実施することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂を用意するステップと、
雲母粒子と前記雲母粒子に施されたコーティングとを含む無色である顔料を用意するステップと、
前記顔料と前記樹脂とを混ぜ合わせて塗料組成物を形成するステップと、
前記塗料組成物を金属基材に塗布するステップと、
前記金属基材上の塗料組成物を硬化させて、ハンターLabカラースケールに従って分光光度計で測定した場合にL値、a値、及びb値で定義される色を有する硬化膜を形成するステップと、
s値、as値、及びbs値を有する標準と比べて前記硬化膜の色を維持するステップであって、前記硬化膜のL値、a値、及びb値のそれぞれの変化が、前記標準のLs値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ20%未満であるようにするステップと、
を含む、塗料組成物から形成される金属基材上の硬化膜の色を標準と比べて維持する方法において、
前記塗料組成物から形成される硬化膜が、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定した場合に250nm〜2,500nmの波長で0.75以上の太陽光反射率を有する、塗料組成物から形成される金属基材上の硬化膜の色を標準と比べて維持する方法。
【請求項2】
前記コーティングが少なくとも2つの層を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記コーティングが、二酸化チタン、二酸化ケイ素、酸化スズ、及び酸化ジルコニウムを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記顔料の透過率が、400nm〜700nmの波長の電磁放射線で少なくとも50%であり、780nm〜2,500nmの波長の電磁放射線で少なくとも40%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記顔料が半透明である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記顔料がISO 1524に従って測定した場合に約10〜60μmの粒径を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記顔料が、塗料組成物100質量部に対して0.25〜5質量部の量で塗料組成物中に存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記維持ステップは、さらに、硬化膜のL値、a値、及びb値のそれぞれの変化が、標準のLs値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ15%未満であるように、標準と比べて前記硬化膜の色を維持すると定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記塗料組成物から形成される硬化膜が、ASTM E408−71及びASTM C1371−04aに従って測定して250nm〜2,500nmの波長で0.75以上の放射率を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記塗料組成物から形成される硬化膜が、ASTM E1980−01に従って求めて78より大きい太陽光反射指標を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記塗料組成物から形成される硬化膜が、ASTM El980−01に従って求めて78より大きい太陽光反射指標を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記樹脂がさらにシリコーン変性ポリエステル樹脂と定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記樹脂がさらにポリ二フッ化ビニリデン樹脂と定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記塗料組成物を塗布するステップが、さらに、少なくとも1つのローラーを用意して、前記塗料組成物を少なくとも1つのローラーから金属基材へ移すことであると定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記塗料組成物を硬化させるステップが20〜100秒間の間700°F〜900°Fの温度で実施される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記塗料組成物を塗布するステップが、さらに、金属基材へ塗料組成物を吹き付けることと定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記塗料組成物から形成される硬化膜をほぼ周囲温度に冷却するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記硬化膜の色が、ハンターLabカラースケールに従って分光光度計で測定して75以下のL値、負のa値、及び負のb値によって定義される、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
金属基材と、
前記金属基材に施された色を有する硬化膜であって、塗料組成物から形成され、標準と比べて前記硬化膜の色を維持するための顔料を含み、前記顔料が雲母粒子および前記雲母粒子に施されたコーティングを含み、前記顔料が無色である、硬化膜と、
を含む塗装系であって、
前記硬化膜の色が、ハンターLabカラースケールに従って分光光度計で測定されたL値、a値、及びb値で定義され、
前記標準がLs値、as値、及びbs値を有し、
前記硬化膜の色が、硬化膜のL値、a値、及びb値のそれぞれの変化が標準のLs、値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ20%未満となるように、標準と比べて維持されて、前記硬化膜は、ASTM E903−96及びASTM C1549−04に従って測定して250nm〜2,500nmの波長で0.75より大きい太陽光反射率を有する塗装系。
【請求項20】
前記硬化膜が、ASTM E408−71及びASTM C1371−04aに従って測定して250nm〜2,500nmの波長で0.75以上の放射率を有する、請求項19に記載の塗装系。
【請求項21】
前記硬化膜が、ASTM El980−01に従って求めて78より大きい太陽光反射指標を有する、請求項20に記載の塗装系。
【請求項22】
前記硬化膜が、ASTM El980−01に従って求めて78より大きい太陽光反射指標を有する、請求項19に記載の塗装系。
【請求項23】
前記雲母粒子上に施されたコーティングが少なくとも1種の無機酸化物を含む、請求項19に記載の塗装系。
【請求項24】
前記顔料の透過率が、400nm〜700nmの波長の電磁放射線で少なくとも50%であり、780nm〜2,500nmの波長の電磁放射線で少なくとも40%である、請求項23に記載の塗装系。
【請求項25】
前記硬化膜の色が、硬化膜のL値、a値、及びb値のそれぞれの変化が標準のLs値、as値、及びbs値と比べてそれぞれ15%未満であるように、標準と比べて維持される、請求項19に記載の塗装系。
【請求項26】
前記硬化膜の色が、ハンターLabカラースケールに従って分光光度計で測定して75以下のL値、負のa値、及び負のb値によって定義される、請求項19に記載の塗装系。
【請求項27】
前記金属基材が建物の屋根とさらに定義される、請求項19に記載の塗装系。
【請求項28】
前記顔料の吸収曲線が、400〜700nmの範囲に吸収ピークを持っておらず、かつ前記顔料が日光の当たる条件下で見たときに反射光または透過光では色調も色相も示さない、請求項1に記載の方法。
【請求項29】
前記顔料の吸収曲線が、400〜700nmの範囲に吸収ピークを持っておらず、かつ前記顔料が日光の当たる条件下で見たときに反射光または透過光では色調も色相も示さない、請求項19に記載の塗装系。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540748(P2010−540748A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527963(P2010−527963)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/011291
【国際公開番号】WO2009/048515
【国際公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【出願人】(505470786)ビー・エイ・エス・エフ、コーポレーション (81)
【Fターム(参考)】