説明

塗料組成物及びこれを塗布した塗装物品

【課題】環境破壊に対する負荷が小さく、外観性、密着性、耐擦傷性、耐薬品性等の塗膜性能の優れた塗料組成物及びこれを塗布した塗装物品を提供する。
【解決手段】塗料組成物は、水分散型のポリオール樹脂と、非水分散型のポリイソシアネート化合物と、を含有している。水分散型のポリオール樹脂は、ポリスチレン換算での重量平均分子量が2000〜30000である。また、水分散型のポリオール樹脂は、水酸基価が30〜200mgKOH/gである。さらに、水分散型のポリオール樹脂は、ガラス転移点温度が−20〜55℃である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料組成物及びこれを塗布した塗装物品に関し、詳しくは、環境破壊に対する負荷が小さい水系塗料組成物及びこれを塗布した塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用部品、家電製品などに用いられる成型品、例えば、プラスチック成形品には、その表面に模様を施して外観を美麗化する転写フィルム層が施されているものがある。このような転写フィルム層が施されたプラスチック成形品では、その表面に保護被膜が施されている。
【0003】
保護被膜には、外観性、密着性、耐擦傷性、耐薬品性等の塗膜性能を付与する目的で、種々の塗料組成物が用いられている。例えば、特許文献1では、有機溶剤に可溶なポリオール樹脂とポリイソシアネートとを含む塗膜を形成する溶剤系塗料組成物が用いられている。
【特許文献1】特開2004−223893号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、溶剤系塗料組成物は、塗膜性能において優れているが、塗装時の塗料中におけるVOC(揮発性有機化合物:Volatile Organic Compounds)が50〜70%高く、環境破壊に対する負荷が大きいという問題がある。このため、保護被膜に、VOCが低く、環境破壊に対する負荷が小さい水系塗料組成物を用いることが検討されている。しかし、水系塗料組成物により形成された保護被膜は、一般に塗膜性能が劣り、溶剤系塗料組成物と同等の塗膜性能を有するものは存在しない。このため、塗膜性能の優れた水系塗料組成物が求められている。
【0005】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、環境破壊に対する負荷が小さく、外観性、密着性、耐擦傷性、耐薬品性等の塗膜性能の優れた塗料組成物及びこれを塗布した塗装物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点にかかる塗料組成物は、
水分散型のポリオール樹脂と、非水分散型のポリイソシアネート化合物と、を含有し、前記水分散型のポリオール樹脂は、
ポリスチレン換算での重量平均分子量が2000〜30000であり、
水酸基価が30〜200mgKOH/gであり、
ガラス転移点温度が−20〜55℃である、
ことを特徴とする。
【0007】
前記水分散型のポリオール樹脂は、例えば、アクリルポリオール樹脂である。
前記水分散型のポリオール樹脂は、例えば、中和剤により中和されている。
前記水分散型のポリオール樹脂は、例えば、酸価が12.0〜60mgKOH/gである。
【0008】
前記非水分散型ポリイソシアネート化合物は、例えば、脂肪族系あるいは脂環式系のイソシアネート化合物である。
前記非水分散型ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基(NCO)と、前記水分散型のポリオール樹脂に含まれる水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が0.7〜3であることが好ましい。
【0009】
本発明の第2の観点にかかる塗装物品は、
成形品の表面に、本発明の第1の観点にかかる塗料組成物を塗布した、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、環境破壊に対する負荷が小さく、塗膜性能の優れた塗料組成物及びこれを塗布した塗装物品を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の塗料組成物及びこれを塗布した塗装物品について説明する。
【0012】
(塗料組成物)
本発明の塗料組成物は、水分散型のポリオール樹脂と、非水分散型のポリイソシアネート化合物と、を含有している。
【0013】
水分散型のポリオール樹脂は、安定して水中に分散可能なポリオール樹脂であり、例えば、アクリルポリオール樹脂、ポリエステルポリオール樹脂、ポリカーボネートポリオール樹脂、ポリウレタンポリオール樹脂などが挙げられる。これらの樹脂のうち、耐水性、耐薬品性、外観性、耐候性、その他の要求される耐久性、コスト面等からアクリルポリオール樹脂を用いることが好ましい。
【0014】
水分散型のポリオール樹脂は、公知の重合法、例えば、溶液重合法を用いて製造することができる。溶液重合法とは、重合溶媒中にモノマー(単量体)と重合開始剤とを加えて重合させる方法であり、例えば、溶液重合法により重合させた後、必要に応じて中和剤を加えて重合体溶液を中和し、純水中に均一に分散させた後、重合溶媒を除去することにより水分散型のポリオール樹脂(ポリオール樹脂水分散体)を製造することができる。
【0015】
溶液重合法では、製造される水分散型のポリオール樹脂の種類に応じて各種の単量体が用いられる。例えば、水分散型のポリオール樹脂がアクリルポリオール樹脂の場合、単量体に、水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルと、これと共重合可能な重合性単量体とが用いられる。
【0016】
水酸基を含有する(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチルにエチレングリコールやプロピレングリコールを付加したもの等が挙げられる。
【0017】
共重合可能な重合性単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸iso−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルへキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸イソペンタニル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル等が挙げられる。なお、(メタ)アクリル酸は、メタアクリル酸またはメタクリル酸を意味する。
【0018】
重合溶媒としては、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒などが挙げられる。
【0019】
重合開始剤としては、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)、アゾビスジメチルバレロニトリル等のアゾビスニトリル類などが挙げられる。
【0020】
中和剤としては、ジメチルモノエタノール、アンモニア、Na塩、ジメチルエタノールアミン等が挙げられる。中和剤は、重合開始剤等に起因する分散液の酸性化傾向を緩和するものであり、重合体溶液を中和させることにより、形成された塗膜の耐アルカリ性を向上させることができる。
【0021】
また、水分散型のポリオール樹脂は、重量平均分子量が、ポリスチレン換算で、2000〜30000、好ましくは4000〜25000、さらに好ましくは4000〜20000である。重量平均分子量をかかる範囲とすることにより、高外観、すなわち、高光沢で透明性、鮮映性、肉持ち感に優れた塗膜を形成することができる。これは、重量平均分子量が2000より小さいと、塗膜の強度不足、耐薬品性等の性能を満たすことができず、また、重量平均分子量が30000より大きいと、求められる外観性を得ることができないためである。なお、水分散型のポリオール樹脂の重量平均分子量は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィーによって測定された、ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
【0022】
水分散型のポリオール樹脂の水酸基価は、30〜200mgKOH/gであり、好ましくは50〜180mgKOH/g、さらに好ましくは70〜150mgKOH/gである。水酸基価が30mgKOH/gより小さいと、架橋密度が低すぎてしまい、耐薬品性、耐擦傷性等の性能を満足することができなくなるためである。また、水酸基価が200mgKOH/gより大きいと、架橋密度が高すぎてしまい、過剰な硬化収縮が起き、被塗物や下塗り塗膜との密着不良となってしまうためである。なお、水分散型のポリオール樹脂の水酸基価は、試料中の水酸基をアセチル化して、アセチル化に要した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムの量を、試料1.0gに対するmg数で表したものであり、試料中の水酸基の含有量を示す尺度となるものである。
【0023】
水分散型のポリオール樹脂のガラス転移点温度は、−20〜55℃、好ましくは−10〜45℃、さらに好ましくは−5〜35℃である。ガラス転移点温度が−20℃より低いと、保護塗膜の硬さ、強度不足により密着不良の原因となるためである。また、ガラス転移点温度が55℃より高いと、塗膜を造膜する際、多量の造膜助剤を必要とし、水系塗料本来の目的から逸脱してしまうためである。なお、水分散型のポリオール樹脂のガラス転移点温度(Tg)は、単量体a、b、・・・からなる共重合体の場合、以下に示すFOXの式で表される。
1/Tg=m/Tg+m/Tg+・・・
(上記式において、mは単量体aの質量分率、Tgは単量体aから得られる単独重合体のTg[k]、mは単量体bの質量分率、Tgは単量体bから得られる単独重合体のTg[k]である。)
【0024】
水分散型のポリオール樹脂の酸価は、12.0〜60mgKOH/gであることが好ましく、14.5〜50mgKOH/gであることがさらに好ましく、19.5〜40mgKOH/gであるが最も好ましい。酸価が12.0mgKOH/gより小さいと、水中における安定性の低下につながるためである。また、60mgKOH/gより大きいと、樹脂溶液の粘度が高くなってしまうためである。
【0025】
非水分散型ポリイソシアネート化合物は、水分散型のポリオール樹脂を硬化させるために用いられるものであり、無黄変タイプのものである。このような非水分散型ポリイソシアネート化合物としては、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート化合物と、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート化合物とがあり、これらの変性体も含まれる。
【0026】
脂肪族イソシアネート化合物としては、例えば、旭化成工業株式会社製の「デュラネート24A−100」、「デュラネートTKA−100」、「デュラネートE402−90T」、住化バイエルウレタン社製の「スミジュールN−3300」、「スミジュールN−3200」、「デスモジュールN−3400」、「スミジュールN−75」、日本ポリウレタン工業株式会社製の「コロネートHZ」、「コロネートEZ」、三井武田化学株式会社製の「タケネートD−165N」等がある。
【0027】
脂環式イソシアネート化合物としては、例えば、住化バイエルウレタン社製の「デスモジュール4470BA」、デグサジャパン株式会社製の「VESTANAT T1890E」等がある。
【0028】
このような水分散型のポリオール樹脂と、非水分散型のポリイソシアネート化合物とを混合(微粒化混合)することにより、本発明の塗装組成物を製造することができる。両者の混合割合は、非水分散型ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基(NCO)と、水分散型のポリオール樹脂に含まれる水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が0.7〜3となることが好ましく、1〜2となることがさらに好ましい。当量比が0.7より小さいと、架橋密度の低下により、耐薬品性、耐水性、耐擦傷性等が劣るおそれがあるためである。また、当量比が3より大きいと、塗膜形成後の乾燥性が劣り、加えて、ポットライフを短くするおそれがあるためである。
【0029】
また、本発明の塗料組成物は、さらに、通常の塗料に添加できる各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤としては、例えば、表面調整剤、消泡剤、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、レベリング剤、流動性改良剤、酸化防止剤等が挙げられる。これらの各種添加剤は、例えば、水分散型のポリオール樹脂が水中に分散されたポリオール樹脂水分散体に、各配合量に従って配合し混合することにより添加することができる。
【0030】
(塗装物品)
本発明の塗装物品は、成形品の表面に本発明の塗料組成物を塗布したものである。図1は、本発明の塗装物品の一例を示す断面図である。
【0031】
図1に示すように、塗装物品1は、成形品2の表面に転写フィルム層3が形成され、この転写フィルム層3の表面に本発明の塗料組成物からなる塗膜4が形成されている。
【0032】
成形品2は、例えば、プラスチックから形成されている。プラスチックとしては、例えば、ポリプロピレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂等の各種の材料が適用可能である。また、成形品2は、射出成形法、押出成形法、圧縮成形法等の各種の成形方法により形成されている。
【0033】
転写フィルム層3は、成形品2の表面に、例えば、公知の転写フィルムを用いて、形成された層である。転写フィルム層3は、例えば、公知の水圧転写技術により形成することができる。
【0034】
塗膜4は、転写フィルム層3の表面に、本発明の塗料組成物を塗布、乾燥させて形成したものである。塗布方法としては、スプレーコート法、ロールコート法、はけ塗り等の公知の塗布方法が挙げられる。乾燥条件としては、塗布した塗料組成物が乾燥できる条件であればよく、通常は、80℃で30分程度である。
【0035】
なお、本例では、成形品2の表面に転写フィルム層3が形成されている場合を例に本発明を説明したが、成形品2の表面に転写フィルム層3が形成されていなくてもよい。この場合、成形品2の表面に塗膜4が形成される。
【実施例】
【0036】
次に、実施例および比較例を挙げ、本発明をさらに詳しく説明する。なお、以下の説明における「部」は「重量部」を意味する。
【0037】
(実施例1)
攪拌機と冷却器と温度計とモノマー滴下装置を備えた1リットル容積の4つ口フラスコに、重合溶媒としてのメチルエチルケトンを500部仕込み、撹拌しながら内部温度が80℃になるまで加熱した。次に、この内部温度を維持しつつ、表1のポリオール成分(モノマー)計500部と、重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)50部との混合溶液を滴下し、6時間にわたってラジカル重合を行った。
【0038】
ラジカル重合終了後、中和剤としてのジメチルモノエタノールアミンで中和(ph=7〜8)し、続いて、重合体溶液を純水760部中に均一に分散した。その後、減圧蒸留により重合溶媒(メチルエチルケトン)を除去することにより、ポリオール樹脂水分散体を得た。このようにして得られたポリオール樹脂水分散体は、表1に示すように、重量平均分子量が8000,ガラス転移点温度が30℃、水酸基価が70mgKOH/g、酸価が26mgKOH/gであった。
【0039】
得られたポリオール樹脂水分散体の粘度を調整した後、ポリイソシアネート化合物としての「デスモジュールN−3400」を当量比(NCO/OH)=1.5となるように加え、モノジナイザーで微粒化混合を行い、塗料組成物を得た。
【0040】
また、ポリプロピレン(新神戸電機社製の表面未処理ポリプロピレンPP−N−AN)を成形して、樹脂成形品を形成した。次に、樹脂成形品の表面に、転写フィルム(大日本印刷社製の水圧転写用印刷シート)を用いて水圧転写印刷を施し、転写フィルム層を形成した。続いて、スプレーガンを用いて、樹脂成形品の転写フィルム層の表面に塗料組成物を塗布(スプレーコート)し、80℃の炉内で30分乾燥した。これにより、塗膜を有する塗装物品を得た。
【0041】
(実施例2)
ポリオール成分(モノマー)を割合を変更した他は実施例1と同様にして、ポリオール樹脂水分散体を得た。このようにして得られたポリオール樹脂水分散体では、表1に示すように、ガラス転移点温度が45℃、水酸基価が90mgKOH/gであった。得られたポリオール樹脂水分散体から、実施例1と同様にして、塗料組成物、および、塗膜を有する塗装物品を得た。
【0042】
(比較例1)
重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を80部に変更した他は実施例1と同様にして、ポリオール樹脂水分散体を得た。このようにして得られたポリオール樹脂水分散体では、表1に示すように、重量平均分子量が1700であった。得られたポリオール樹脂水分散体から、実施例1と同様にして、塗料組成物、および、塗膜を有する塗装物品を得た。
【0043】
(比較例2)
重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)を3部、純水を1200部に変更した他は実施例1と同様にして、ポリオール樹脂水分散体を得た。このようにして得られたポリオール樹脂水分散体では、表1に示すように、重量平均分子量が32000であった。得られたポリオール樹脂水分散体から、実施例1と同様にして、塗料組成物、および、塗膜を有する塗装物品を得た。
【0044】
(比較例3)
ポリオール成分(モノマー)を割合を変更した他は実施例1と同様にして、ポリオール樹脂水分散体を得た。このようにして得られたポリオール樹脂水分散体では、表1に示すように、水酸基価が25mgKOH/gであった。得られたポリオール樹脂水分散体から、実施例1と同様にして、塗料組成物、および、塗膜を有する塗装物品を得た。
【0045】
(比較例4)
ポリオール成分(モノマー)を割合を変更した他は実施例1と同様にして、ポリオール樹脂水分散体を得た。このようにして得られたポリオール樹脂水分散体では、表1に示すように、水酸基価が220mgKOH/gであった。得られたポリオール樹脂水分散体から、実施例1と同様にして、塗料組成物、および、塗膜を有する塗装物品を得た。
【0046】
(比較例5)
ポリオール成分(モノマー)を割合を変更した他は実施例1と同様にして、ポリオール樹脂水分散体を得た。このようにして得られたポリオール樹脂水分散体では、表1に示すように、ガラス転移点温度が−30℃であった。得られたポリオール樹脂水分散体から、実施例1と同様にして、塗料組成物、および、塗膜を有する塗装物品を得た。
【0047】
(評価)
このように製造した塗料組成物およびこれを塗布した塗装物品について、以下のように評価を行った。この結果を表1に示す。
【0048】
(1)外観性
光沢計を用いて塗膜の60°の光沢を測定し、外観性を以下の基準で評価した。
「○」・・・60°の光沢が90以上
「△」・・・60°の光沢が80以上、90未満
「×」・・・60°の光沢が80未満
【0049】
(2)密着性
JIS K5400の「8.5.1碁盤目法」に従って、塗膜の密着試験(隙間1mm、升目数100)により評価した。
【0050】
(2−A)初期密着性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後に、塗膜の密着試験を行い、初期密着性を以下の基準で評価した。
「○」・・・塗膜の剥離の痕跡が認められない(0升)
「△」・・・塗膜の剥離が1升以上、10升未満
「×」・・・塗膜の剥離が10升以上、100升以下
【0051】
(2−B)耐熱密着性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後、80℃で300時間放置した後に、塗膜の密着試験を行い、耐熱密着性を評価した。評価基準は初期密着性と同じである。
【0052】
(2−C)耐湿密着性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後、50℃、相対湿度95%の雰囲気下で500時間放置した後に、塗膜の密着試験を行い、耐湿密着性を評価した。評価基準は初期密着性と同じである。
【0053】
(2−D)耐冷熱サイクル密着性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後、80℃で10時間の耐熱試験を行い、次いで−30℃で10時間の冷熱試験を行った。この工程を1サイクルとし、合計10サイクル行った後に、塗膜の密着試験を行い、耐冷熱サイクル密着性を評価した。評価基準は初期密着性と同じである。
【0054】
(3)耐擦傷性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後、塗膜上に研磨剤溶液を滴下し、1cm当たり100gの荷重で50往復させた後に光沢保持率を測定し、耐擦傷性を以下の基準で評価した。
「○」・・・光沢保持率が80%以上
「×」・・・光沢保持率が80%未満
【0055】
(4)耐薬品性
(4−A)耐水性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後、塗膜上に純水を2.0g滴下し、24時間放置した。その後、純水を拭き取り、塗膜表面を目視にて、以下の基準で耐水性を評価した。
「○」・・・塗膜に異常および変色が認められない
「×」・・・塗膜に異常および変色が認められる
【0056】
(4−B)耐アルカリ性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後、塗膜上に水酸化ナトリウム1%水溶液を2.0g滴下し、24時間放置した。その後純水で洗浄し、塗膜表面を目視し、耐アルカリ性を評価した。評価基準は耐水性と同じである。
【0057】
(4−C)耐酸性
塗膜を形成した塗装物品を室温で72時間放置後、塗膜上に硫酸1%水溶液を2.0g滴下し、24時間放置した。その後純水で洗浄し、塗膜表面を目視し、耐酸性を評価した。評価基準は耐水性と同じである。
【0058】
(5)ポリオール樹脂安定性
得られたポリオール樹脂水分散体を40℃雰囲気下で10日間放置し、目視にて以下の基準でポリオール樹脂安定性を評価した
「○」・・・樹脂溶液に異常が認められない
「×」・・・樹脂溶液に異常が認められる
【0059】
【表1】

【0060】
表1に示すように、実施例1、2の塗料組成物により形成された塗膜は、外観性、密着性、耐擦傷性、耐薬品性に優れ、保護塗膜としての性能が優れていることが確認できた。このため、本発明の塗料組成物は、外観性、密着性、耐擦傷性、耐薬品性等の塗膜性能の優れた塗料組成物であることが確認できた。また、実施例1、2のポリオール樹脂は、ポリオール樹脂安定性に優れていることが確認できた。このように、本発明の塗料組成物は、高光沢で鮮映性に優れ、従来の溶剤系樹脂組成物と同等の外観品質、塗膜性能を有することが確認できた。
【0061】
また、この塗料組成物を塗装物品に塗布(スプレーコート)時の塗料組成物中におけるVOC(Volatile Organic Compounds)は10%程度であり、環境破壊に対する負荷が小さいことが確認できた。このように、本発明の塗料組成物は、水系樹脂組成物であり、環境破壊に対する負荷が小さいことが確認できた。
【0062】
さらに、本発明の塗料組成物は、水系樹脂組成物であるため、100℃以下の乾燥により、耐薬品性、耐熱性、耐湿性、耐候性等の耐久性に優れた塗膜を得ることができる。
【0063】
一方、比較例1、2に示すように、ポリオール樹脂水分散体の重量平均分子量が小さいと耐薬品性を満たすことができず、重量平均分子量が大きいと外観性に劣ることが確認できた。また、比較例3、4に示すように、水分散型のポリオール樹脂の水酸基価が小さいと耐薬品性、耐擦傷性等の性能を満足することができなり、水酸基価が大きいと密着性が悪くなることが確認できた。さらに、比較例5に示すように、ガラス転移点温度が低いと、密着性が悪くなることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の塗装物品の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
【0065】
1 塗装物品
2 成形品
3 転写フィルム層
4 塗膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水分散型のポリオール樹脂と、非水分散型のポリイソシアネート化合物と、を含有し、前記水分散型のポリオール樹脂は、
ポリスチレン換算での重量平均分子量が2000〜30000であり、
水酸基価が30〜200mgKOH/gであり、
ガラス転移点温度が−20〜55℃である、
ことを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記水分散型のポリオール樹脂は、アクリルポリオール樹脂である、ことを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記水分散型のポリオール樹脂は、中和剤により中和されている、ことを特徴とする請求項1または2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記水分散型のポリオール樹脂は、酸価が12.0〜60mgKOH/gである、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記非水分散型ポリイソシアネート化合物は、脂肪族系あるいは脂環式系のイソシアネート化合物である、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項6】
前記非水分散型ポリイソシアネート化合物に含まれるイソシアネート基(NCO)と、前記水分散型のポリオール樹脂に含まれる水酸基(OH)との当量比(NCO/OH)が0.7〜3である、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗料組成物。
【請求項7】
成形品の表面に、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗料組成物を塗布した、ことを特徴とする塗装物品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−221437(P2009−221437A)
【公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−70326(P2008−70326)
【出願日】平成20年3月18日(2008.3.18)
【出願人】(000103976)オリジン電気株式会社 (223)
【Fターム(参考)】