説明

塗料組成物

【課題】従来のハードコート膜の耐擦傷性を更に向上させ、また、より高い膜強度を有するハードコート用塗料を提供する。
【解決手段】硬度や耐擦傷性に非常に優れた塗膜を形成することができる塗料組成物であって、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子を含有し、該複合酸化物微粒子の含有量が、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲にある。複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムとが、SiO2およびAl23換算基準としてそれぞれの含有量を合算したときに、複合酸化物微粒子の全重量に対して70〜100重量%の範囲にある。複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムのモル比はAl23/SiO2換算基準で0.0005〜0.05の範囲にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素とアルミニウムとを主成分とする複合酸化物微粒子を所定の範囲で含有する塗料組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、光学レンズ、特に眼鏡レンズの基材としてプラスチック基材が主流に用いられるようになった。しかし、プラスチック基材は無機ガラス基材等と比べて傷つきやすいという欠点を有している。
このため、基材表面にシリコン等のハードコート被膜層を設けることが一般的に行われている。また、例えば特許文献1などに記載されるように、シリカ系微粒子をハードコート層形成用塗料に配合すれば、これらのハードコート被膜層の耐擦傷性が向上することが知られている。
【0003】
また、眼鏡レンズ基材にハードコート層を付加する際には、干渉縞の発生を抑制するためにレンズとハードコート層との屈折率を同様に調整する必要があるが、近年では眼鏡レンズ基材に用いられる樹脂レンズの高屈折率化が進んでいるため、ハードコート層形成用塗料に屈折率の高いチタン系やジルコニア系の酸化物微粒子を配合することが一般的に行われている。たとえば特許文献2には、このような酸化物微粒子を配合したハードコート層が記載されており、このような酸化物微粒子を配合することによってハードコート膜の耐擦傷性を向上させる効果があることについても記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−197078号公報
【特許文献2】特開平05−264806号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1や特許文献2に記載されるようなシリカ系微粒子、またはチタンやジルコニウムを含む酸化物微粒子を塗料に配合すると、塗料から形成したハードコート層膜の耐擦傷性を向上させることができるが、このようなハードコート層膜の耐擦傷性をさらに向上させ、また、より高い膜硬度を有するハードコート膜の開発が求められていた。
本発明者らは、このような課題を解決するために鋭意研究した結果、ケイ素とアルミニウムとを主成分とする複合酸化物微粒子を塗料組成物に所定の範囲で配合することによって、この塗料組成物から、硬度や耐擦傷性に非常に優れた塗膜を形成できることを見出し、本発明を完成するに到った。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明はケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子を含有する塗料組成物であって、該複合酸化物微粒子の含有量が、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲にあることを特徴とする。
前記複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムとが、SiO2およびAl23換算基準としてそれぞれの含有量を合算したときに、該複合酸化物微粒子の全重量に対して70〜100重量%の範囲にあることが好ましい。
【0007】
前記複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムのモル比がAl23/SiO2換算基準で0.0005〜0.05の範囲にあることが好ましい。
前記複合酸化物微粒子の含有量が、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜3.0重量部の範囲にあることが好ましい。
前記複合酸化物微粒子の表面負電荷密度が、前記複合酸化物微粒子を含む分散ゾルのpHが5.0であるとき、0.5〜1.1μeq/m2の範囲にあることが好ましい。
【0008】
本発明の塗料組成物はさらに、前記複合酸化物微粒子以外にフィラーを含むことを特徴とする。
前記フィラーがジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上を含む無機酸化物微粒子であることが好ましい。
前記フィラーがコアシェル型の無機酸化物微粒子であって、該無機酸化物微粒子のコアがジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上を含む複合酸化物微粒子であり、シェルがケイ素を含む酸化物または複合酸化物であることが好ましい。
本発明の塗料組成物はハードコート層膜形成用塗料組成物であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る塗料組成物は、ケイ素とアルミニウムとを主成分とする複合酸化物微粒子を、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲で含むために、この塗料組成物から形成された塗膜の膜硬度および耐擦傷性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る塗料組成物について具体的に説明する。
【0011】
塗料組成物
本発明に係る塗料組成物は、ケイ素とアルミニウムとを主成分とする複合酸化物微粒子を含有する塗料組成物であって、該複合酸化物微粒子の含有量が、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲にあることを特徴としている。
本発明に係る塗料組成物が、前記ケイ素とアルミニウムとを主成分とする複合酸化物微粒子を上記の範囲で含有することによって、該塗料組成物を用いて形成した塗膜の耐擦傷性と膜硬度を向上させることができる。
その理由としては、定かではないものの、該塗料組成物に前記複合酸化物微粒子を上記範囲で配合することにより、塗膜の表面や、基材との界面の硬度が向上するためではないかと考えられる。
【0012】
前記塗料組成物中において、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜5重量部、より好ましくは0.1〜3重量部、さらに好ましくは0.1〜2.5重量部の範囲にあることが好ましい。
前記複合酸化物微粒子の含有量が該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1重量部未満の場合には、塗膜の耐擦傷性や膜硬度を向上させる効果が充分得られないため好ましくない。
前記複合酸化物微粒子の含有量が該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して5重量部を超えると、塗膜の耐擦傷性や膜硬度が低下する場合があるので好ましくない。
【0013】
複合酸化物微粒子
本発明に係る複合酸化物微粒子は、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含むことを特徴としている。
前記複合酸化物微粒子が、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含まない場合には、塗膜の膜硬度や耐擦傷性が向上する本発明の効果は充分得られにくい、または得られない。
ただし、ここで、「前記複合酸化物微粒子は、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む」とは、前記複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムとが、SiO2およびAl23換算基準としてそれぞれの含有量を合算したときに、その合算量が該複合酸化物微粒子の全重量に対して70重量%〜100重量%の範囲にあることを指すものとする。
前記複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムとの含有量をSiO2およびAl23換算基準で合算した合算量は、より好ましくは80〜100重量%、さらに好ましくは90〜100重量%の範囲にあることが好ましい。
すなわち、前記複合酸化物微粒子は、ケイ素とアルミニウムと酸素のみを含む複合酸化物微粒子であってもよい。
【0014】
前記複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムとの含有量の比は、前記ケイ素とアルミニウムの酸化物換算基準のモル比でAl23/SiO2=0.0005〜0.05の範囲にあることが好ましい。
前記モル比は、Al23/SiO2=0.0005〜0.05、より好ましくは0.005〜0.05の範囲にあることが好ましい。
前記Al23/SiO2モル比が0.0005〜0.05の範囲にある複合酸化物微粒子は安定性に優れ、均一で安定な塗膜を形成することができるので、塗膜の硬度や耐擦傷性が向上し、好ましい。
前記モル比が0.0005未満の場合には、塗料中で複合酸化物微粒子が凝集する場合があるので好ましくない。
前記モル比が0.05を超える場合には、塗料が増粘する場合があるので好ましくない。
【0015】
前記複合酸化物微粒子の平均粒子径は、特に制限されるものではないが、好ましくは5〜200nm、より好ましくは10〜100nmの範囲にあることが望ましい。
前記平均粒子径が5nm未満の場合には、複合酸化物微粒子が凝集し増粘する場合があり、前記平均粒子径が200nmを超えると塗膜の透明性や耐擦傷性が低下する場合があるので好ましくない場合がある。
【0016】
本発明に係る複合酸化物微粒子の形状は特に制限されるものではなく、どのような形状であっても使用することができる。具体的には、球状、鎖状、金平糖状などの形状が挙げられる。また、その他公知のいかなる形状であっても使用することができる。鎖状の複合酸化物微粒子を用いると塗膜の硬度や耐擦傷性がさらに向上するため好ましい。金平糖状の複合酸化物微粒子を用いると塗膜の密着性が向上するため好ましい。
【0017】
本発明に係る複合酸化物微粒子は粉末状であってもよく、コロイド、ゾルなどの分散液状態であってもよく、またゲル状のものであってもよい。分散液状の複合酸化物微粒子は、塗膜中での分散性や安定性が高く、塗膜の硬度や耐擦傷性を向上させる効果が高く、また塗膜の透明性も高いためより好ましい。
【0018】
また、前記複合酸化物微粒子は、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含み、さらにそれ以外の元素または有機基、例えば、希土類元素、アルカリ土類金属元素、遷移金属元素、アミノ基やカルボキシル基などの有機基などを含むものであってもよい。
前記複合酸化物微粒子としては、少なくともSi−O−Al結合を含むものであることが好ましい。
【0019】
前記複合酸化物微粒子は、シリカアルミナ微粒子や、ケイ素とアルミニウムを含む複合酸化物微粒子であってもよく、またシリカ微粒子とアルミナ微粒子の複合微粒子のようなものであってもよい。
前記複合酸化物微粒子は、コアシェル型微粒子や中空微粒子であってもよい。
また、前記ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子は、さらに、有機アミンや有機ケイ素化合物をはじめとする公知の表面処理剤や表面修飾剤で処理されたものであってもよい。
【0020】
前記複合酸化物微粒子の具体的な一例としては、例えば、日揮触媒化成(株)製のカタロイドSN(粒子径12nm、水分散ゾル)、カタロイドSN−30(粒子径17nm、水分散ゾル)、OSCAL1132(粒子径12nm、メタノール分散ゾル)、OSCAL1421(粒子径7nm、イソプロパノール分散ゾル)などの市販品が挙げられる。
【0021】
本発明に係る複合酸化物微粒子は公知の方法で製造することができる。
その具体的な一例としては例えば、シリカゲル、シリカゾル、ケイ酸液などのシリカ源と、アルミナゲル、アルミン酸ソーダ、アルミニウム塩などのアルミナ源とを混合し乾燥させる方法、またはシリカゾルにアルミニウム化合物溶液を添加し表面修飾または反応させる方法、またはアルコキシド法、または水硝子やケイ酸液を加水分解および/または縮重合させる工程のいずれかにアルミ二ウム化合物溶液を添加する方法などが挙げられる。
また、特開昭63−123807号公報に記載される酸性シリカゾルの製造方法や、特開平06−199515号公報に記載される酸性シリカゾルの製造方法を用いて製造することができる。
【0022】
また、本発明に係る複合酸化物微粒子うち、最も好ましい形態の一つとして、該複合酸化物微粒子の表面負電荷密度が、該複合酸化物微粒子を含む分散ゾルのpHが5.0であるとき、0.5〜1.1μeq/m2の範囲にあるものを挙げることができる。
前記表面負電荷密度は、0.5〜1.1μeq/m2、より好ましくは0.6〜0.9μeq/m2の範囲にあることが好ましい。
表面負電荷密度が0.5〜1.1μeq/m2の範囲にある複合酸化物微粒子を用いると、塗膜の硬度や耐擦傷性を向上させる効果が非常に高く、また塗膜の透明性も高まるため、好ましい。
【0023】
表面負電荷密度が前記の範囲にあるような複合酸化物微粒子の一例としては、表面にアルミニウムが修飾されたシリカ系微粒子であって、該シリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量が、該シリカ系微粒子の単位表面積当りで表したときにAl23換算基準で0.05×10-6〜6.0×10-6モル/m2の範囲にある複合酸化物微粒子が挙げられる。
また、このような複合酸化物微粒子を製造する方法の一例として、下記工程(1)〜(3)を含む製造方法を挙げることができる。
【0024】
アルミニウムで表面修飾されたシリカ系微粒子の製造方法
工程(1)
平均粒子径が5〜50nmのシリカ微粒子を含み、しかもpHが9.0〜11.5の範囲にあるアルカリ性シリカゾルに、アルミン酸塩の水溶液を、該シリカゾル中に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、さらに該アルミン酸塩中に含まれるアルミニウムをAl23で表したとき、そのモル比(Al23/SiO2)が0.005〜0.050となるような割合で混合する工程、
【0025】
工程(2)
前記工程により得られた混合液を60〜200℃の温度に加熱して、0.5〜20時間、撹拌する工程、
【0026】
工程(3)
前記工程(2)で得られた混合液を陽イオン交換樹脂と接触させて、該混合液中に含まれるアルカリ金属イオンをイオン交換除去して、該混合液のpHを3.0〜6.0の範囲に調整することにより、アルミニウムで表面修飾されたシリカ系微粒子を含む水分散液を得る工程。
【0027】
前記工程(1)〜(3)を含む方法により、表面にアルミニウムが修飾されたシリカ系微粒子であって、該シリカ系微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量が、該シリカ系微粒子の単位表面積当りで表したときにAl23換算基準で0.05×10-6〜6.0×10-6モル/m2の範囲にある複合酸化物微粒子を製造することができる。
【0028】
フィラー
本発明に係る塗料組成物は、さらに、前記複合酸化物微粒子以外にフィラーを含むことが好ましい。
前記塗料組成物が前記フィラーを含むことによって、本発明に係る塗料組成物より得られる塗膜の膜硬度や耐擦傷性を向上させることができる。
本発明においてフィラーとは、前記複合酸化物微粒子、すなわち、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子とは異なる粒子を意味する。
前記フィラーと複合酸化物微粒子が同一の粒子である場合には、本発明に係る塗料組成物に含まれる複合酸化物微粒子の含有量が多くなりすぎることとなり、膜硬度が低下する場合があるため好ましくない。
このようなフィラーとしては例えばケイ素とアルミニウムとを主成分として含まない複合酸化物微粒子や無機酸化物微粒子、有機樹脂などの粒子、あるいは有機無機複合微粒子などが挙げられる。
例えばシリカ微粒子や、アルミナ微粒子などもこれに含まれる。
【0029】
このようなフィラーを配合することによって塗膜の屈折率、導電性、平滑性、硬度など、所望の性能について調節することができる。
前記フィラーの性状は特に制限されず、例えば粉末状であっても、コロイドやゾルなどの分散液状であっても、またゲル状などであってもかまわない。
また前記フィラーはコアシェル型粒子や中空粒子であってもよい。
また前記フィラーの形状は特に制限されず、球状、棒状、鎖状、金平糖状などを含むいかなる形状であってもよい。
【0030】
前記フィラーは、ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上を含む無機酸化物微粒子であることが好ましい。
このような無機酸化物微粒子をフィラーとして用いれば、塗膜の屈折率や紫外線遮蔽効果、あるいは紫外線吸収効果などを様々に調節可能となるため、特に光学基材の塗膜を形成するのに適した塗料組成物を得ることができる。
またこのような無機酸化物微粒子をフィラーとして用いることによって、塗膜の膜硬度や耐擦傷性を向上させる効果を高めることができる。
また前記無機酸化物微粒子は有機ケイ素化合物やアミンなどの公知の表面処理剤で修飾されたものであってもよい。
【0031】
このような無機酸化物微粒子の製造方法は、特に制限されず、公知の方法で製造することができる。
その一例としては、金属塩または金属アルコキシドなどを原料とした中和加水分解法、加水分解法、金属塩水溶液にアルカリを加えて得られた金属水酸化物を解膠する中和共沈法、水熱合成法、アルコキシド法、ゾルゲル法、または酸化炎中などに金属粉末を投入して燃焼させる爆燃法、金属酸化物粉末を火炎中に投入して熔融させた後、冷却・固化させる火炎熔融法、蒸発乾固法などが挙げられる。
【0032】
また、前記フィラーがコアシェル型の無機酸化物微粒子であることが好ましい。
前記無機酸化物微粒子のコアはジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上を含む複合酸化物微粒子であることが好ましい。また、前記無機酸化物微粒子のシェルが、ケイ素を含む酸化物または複合酸化物であることが好ましい。
【0033】
前記コアシェル型の無機酸化物微粒子は、前記コアを前記シェルで被覆した無機酸化物微粒子であって、このような粒子をフィラーとして用いると、塗膜の耐候性、耐光性、安定性、耐変色性、耐酸性が向上するとともに、塗膜の耐擦傷性や膜硬度が向上するため、好ましい。
このようなフィラーを配合した塗料組成物は、ハードコート層膜形成用塗料組成物、特に眼鏡レンズなどの光学基材用のハードコート層膜形成用塗料組成物として特に好ましい。
ただし、このような塗料組成物を、プライマー層膜形成用塗料組成物や、反射防止層膜形成用塗料組成物として用いることもできる。
【0034】
また前記シェルは、ケイ素と、ジルコニウムおよび/またはアルミニウムを含む複合酸化物であることが好ましい。
このようなシェルを有する前記無機酸化物微粒子をフィラーとして用いると、塗膜の耐候性、耐光性、安定性、耐変色性、耐酸性が非常に向上するとともに、塗膜の耐擦傷性や膜硬度が非常に向上し、より好ましい。
このようなシェルを有する無機酸化物微粒子のより具体的な一例としては、特開平08−048940号公報に記載の複合酸化物微粒子、特開2010−168266号公報に記載の金属酸化物微粒子、特開2010−042947号公報に記載された酸化チタン系複合粒子、特開2009−155496号公報に記載されたコアシェル型構造を有する無機酸化物微粒子、およびこれらに類するものなどが挙げられる。またこのような無機酸化物微粒子の製造方法の一例としては、上述した引用文献に記載された方法およびそれらに準ずる方法を用いることができる。
【0035】
また、本発明に係るフィラーの一例として、日揮触媒化成(株)製1130Z(S−7・A8)(粒子径8nm、アナターゼ型酸化チタン系微粒子、メタノール分散ゾル)、2130Z(S−7・A8)(粒子径8nm、アナターゼ型酸化チタン系微粒子、プロピレングリコールモノメチルエーテル分散ゾル)、1130Z(8RS−25・A17)(粒子径15nm、ルチル型酸化チタン系微粒子、メタノール分散ゾル)などの市販品を使用してもよい。
【0036】
前記フィラーの平均粒子径は特に制限されるものではないが、望ましくは5〜50nmの範囲にあることが好ましい。
フィラーの平均粒子径が前記範囲にあると、塗膜の透明性が向上し、またフィラーの分散性や安定性が高いために塗膜の硬度が向上するのでより好ましい。
前記フィラーの形状は特に制限されるものではなく、球状、鎖状、金平糖状などあらゆるものを用いることができる。鎖状のフィラーを用いると塗膜の硬度および耐擦傷性がさらに向上するので好ましい。
【0037】
本発明に係る塗料組成物中における前記フィラーの含有量は特に制限されるものではないが、好ましくは、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子以外の塗料組成物形成成分のうち0.1〜40重量%、より好ましくは10〜30重量%を占める範囲にあることが好ましい。
前記フィラーの含有量が上記範囲にある塗料組成物は、塗膜の膜硬度や耐擦傷性、透明性がより高く、耐候性や耐光性が高く、屈折率等を向上させることができるため、好ましい。
【0038】
さらに、本発明に係るフィラーとして、最も好ましい形態の一つとして、ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上の元素を主成分として含む酸化物微粒子または複合酸化物微粒子をコア粒子とし、その表面をケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物からなるシェルであって、該シェルに含まれるケイ素とアルミニウムの含有量が酸化物換算基準の重量比でSiO2/Al23=2.0〜30.0の範囲にあるコアシェル型複合酸化物微粒子が挙げられる。
【0039】
前記コア粒子は、ジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上の元素を金属酸化物換算基準(ZrO2、SnO2、TiO2、Nb25、WO3、Sb25、In23)で70重量%以上含むものであることが好ましい。
また、前記コア粒子に対する前記シェルの被覆量は、該コア粒子の固形分100重量部に対して該シェルの固形分が5〜100重量部、より好ましくは7〜80重量部となるような範囲にあることが好ましい。
【0040】
また、前記コアシェル型複合酸化物微粒子の表面がシランカップリング剤や有機アミンなどの公知の表面処理剤により表面処理されていてもよい。
このようなコアシェル型複合酸化物微粒子は、該微粒子の単位表面積あたりの表面負電荷量が高く、分散安定性が高く、また、酸性領域でも安定であって、塗料組成物の材料と優れているため、塗膜の膜硬度、耐擦傷性および密着性を向上させる効果が非常に高く、耐光性、耐項性、耐変色性を向上させる効果も非常に優れているため、非常に好ましい。
このようなコアシェル型複合酸化物微粒子を製造する方法の一例として、下記工程(1)〜(2)を含む方法を挙げることができる。
【0041】
コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液の製造方法
工程(1)
平均粒子径が5.0〜50.0nmの範囲にあるコア粒子の水分散液に、シリコンアルコキシドおよび/またはケイ酸を含むケイ素化合物溶液と、アルミン酸塩の水溶液とを、該ケイ素化合物溶液に含まれるケイ素成分をSiO2で表し、さらに該アルミン酸塩の水溶液に含まれるアルミニウム成分をAl23で表したとき、その酸化物換算基準の重量比がSiO2/Al23=2.0〜40.0となるような割合で混合する工程、
【0042】
工程(2)
前記工程により得られた混合液を60〜200℃の温度に加温して、0.5〜20時間攪拌することにより、コアシェル型複合酸化物微粒子の分散液を得る工程。
なお、前記工程(1)で使用された前記コア粒子の水分散液については、金属塩または金属アルコキシドなどを原料とした中和加水分解法、加水分解法、金属塩水溶液にアルカリを加えて得られた金属水酸化物を解膠する中和共沈法、あるいは水熱合成法などの公知の液相法により製造することができる。
【0043】
複合酸化物微粒子以外の成分
次に、本発明に係る塗料組成物の構成成分のうち、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子以外の成分について説明する。
前記複合酸化物微粒子以外の成分の一つとしては、マトリックス形成成分が挙げられる。また、本発明に係る塗料組成物は、前記マトリックス形成成分以外にも、塗料に配合されうるあらゆる成分、例えば、pH調整剤、溶媒、触媒、酸、アルカリ、紫外線吸収剤などを一例とする公知の成分を含んでいても良い。
また、前記複合酸化物微粒子以外の成分としては、前記「フィラー」の項で詳述したようなフィラーを含んでいてもよい。
すなわち、塗料組成物が、前記複合酸化物微粒子と、フィラーとを含む場合には、該複合酸化物微粒子の含有量が、フィラーと、マトリックス成分と、その他の添加成分との合計100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲にあればよい。
塗料組成物がこのようなフィラーを含んでいる場合には、得られる塗膜の屈折率や紫外線遮蔽能を調節できたり、塗膜の高度や耐擦傷性を向上させることができるので特に好ましい。
【0044】
前記マトリックス形成成分の一例としては、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物や、熱硬化性有機樹脂、熱可塑性有機樹脂、紫外線硬化性有機樹脂などの樹脂等が挙げられる。
さらに、前記有機ケイ素化合物の一例としてはアルコキシシラン化合物が代表例として挙げられ、具体的には、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、トリメチルクロロシラン、α―グルシドキシメチルトリメトキシシラン、α―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β―グリシドキシエチルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ―グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ―γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β―(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシラン、β―(3、4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリエトキシシラン、γ―アミノプロピルトリメトキシシラン、γ―アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)―γ―アミノプロピルメチルジエトキシシランなどが挙げられる。これらは1種で用いても2種以上を混合して用いても良い。
【0045】
さらに、前記熱硬化性有機樹脂の好ましい一例としては、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂およびメラミン系樹脂などがあげられる。
さらに具体的に述べれば、前記ウレタン系樹脂の一例としては、たとえばヘキサメチレンジイソシアネート等のブロック型ポリイシシアネートとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等の活性水素含有化合物との反応物などが挙げられ、また前記エポキシ樹脂の一例としては、たとえばポリアルキレンエーテル変性エポキシ樹脂や分子鎖に柔軟性骨格(ソフトセグメント)を導入したエポキシ基含有化合物などが挙げられる。
【0046】
さらに、前記メラミン系樹脂の一例としては、たとえばエーテル化メチロールメラミンとポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオールとの硬化物などが挙げられる。これらの中でも、ブロック型イシシアネートとポリオールとの硬化物であるウレタン系樹脂を使用することが好ましい。また、これらの熱硬化性有機樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0047】
本発明に係るマトリックス形成成分として使用される前記熱可塑性有機樹脂としては、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂およびエステル系樹脂から選ばれた少なくとも1種であることが好ましく、さらには自己乳化型の水系エマルジョン樹脂であることがより好ましい。
【0048】
さらに具体的に述べれば、前記アクリル系樹脂の一例としては、たとえば(メタ)アクリル酸アルキスエステルモノマーから得られる水系エマルジョンや前記モノマーとスチレン、アクリロニトリル等とを共重合させたポリマーエマルジョンなどが挙げられ、また前記ウレタン系樹脂の一例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオールなどのポリオール化合物とポリイシシアネートとを反応させてなる水系エマルジョンなどが挙げられ、さらに前記エステル系樹脂の一例としては、たとえばハードセグメントにポリエステル、ソフトセグメントにポリエーテルまたはポリエステルを用いたマルチブロック共重合体の水分散型エラストマーなどが挙げられる。これらの中でも、ポリエステルポリオールまたはポリエーテルポリオールとポリイシシアネートから得られる水分散型ウレタン系樹脂を使用することが好ましい。これらの熱可塑性有機樹脂は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0049】
本発明の塗料組成物に使用される前記pH調整剤としては、公知のものを使用することができ、その一例としては例えば、塩酸、硝酸、硫酸、燐酸などの無機酸、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、酢酸などの有機酸、アンモニア、イソプロピルアミン、イソビブチルアミン、ジイシプロピルアミン、ジイソブチルアミンなどの有機アミンなどが挙げられる。
本発明の塗料組成物に使用される前記溶媒としては、公知のものを使用することができ、その一例としては例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、イソプロピルアルコ-ル等のアルコール類、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、メチルエチルケトン、γ−ブチロラクトン等のケトン類などが挙げられる。
【0050】
塗料組成物の製造方法
次に、本発明に係る塗料組成物の調製方法について具体的に説明する。これらの塗料組成物は、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子の分散液と、マトリックス形成成分とを混合して調製される。その一例を以下に示す。
ただし、ここで述べる調製方法はその一態様を示すものであるので、本発明に係る塗料組成物はこれらの調製方法から得られたものに限定されない。
なお、本発明で使用される純水とはイオン交換水をいい、また超純水とは純水中に含まれる不純物をさらに取り除いたもので、不純物の含有量が0.01μg/L以下のものをいう。
【0051】
有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物をマトリックス形成成分として用いた場合の、本発明に係る塗料組成物の製法の一例を以下に述べる。
【0052】
塗料組成物の製造方法(1)
本発明に係る塗料組成物を調製する際に、マトリックス形成成分として、有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物を用いる場合には、該有機ケイ素化合物は、無溶媒下またはアルコール等の極性有機溶媒中で、酸および水の存在下で部分加水分解または加水分解して、前記ケイ素とアルミニウムとを主成分とする複合酸化物微粒子を含む分散液ならびにフィラーと混合することが好ましい。ただし、前記有機ケイ素化合物は、前記分散液と混合した後に、部分加水分解または加水分解してもよい。このように調製された前記塗料組成物は、ハードコート層膜形成用塗料組成物として好適に使用することができる。
【0053】
前記複合酸化物微粒子または前記フィラーが分散液状である場合には、その分散媒は水であっても有機溶媒であってもよい。
前記分散媒が有機溶媒である場合の好ましい一例としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類やプロピレングリコールモノメチルエーテルなどのエーテル類が挙げられる。また、その場合、前記有機ケイ素化合物の分散媒は、前記有機溶媒分散ゾルの分散媒と相性のよいものであれば特に制限なく使用できるが、前記複合酸化物微粒子および前記フィラーの分散媒と同種のものを使用することがより好ましい。
また、前記有機ケイ素化合物の部分加水分解や加水分解の条件については、撹拌しながら5〜30℃の温度で1〜48時間かけて行うことが好ましい。また、加水分解を行った後、−10〜1℃の低温度条件下に静置して熟成を行ってもよい。
【0054】
なお、前記塗料組成物は、ハードコート層膜などの塗膜の染色性や、プラスチックレンズ基材などへの密着性を向上させ、更にはクラックの発生を防止するために、上記の成分に加えて、未架橋エポキシ化合物を含有していてもよい。
この未架橋エポキシ化合物としては、たとえば1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、グリセロールトリグリシジルエーテルなどを使用することが好ましい。また、これらの未架橋エポキシ化合物は、1種類だけでなく2種類以上を使用してもよい。
【0055】
さらに、前記塗料組成物は、上記以外の成分、たとえば界面活性剤、レベリング剤および/または紫外線吸収剤、さらには特開平11−310755号公報、国際公開公報WO2007/046357などの従来公知の文献に記載されている有機化合物や無機化合物などを含んでいてもよい。
次に、熱硬化性有機樹脂または熱可塑性有機樹脂をマトリックス形成成分として用いた場合の、本発明に係る塗料組成物の製造方法の一例を以下に述べる。
【0056】
塗料組成物の製造方法(2)
本発明に係る塗料組成物は、前記熱硬化性有機樹脂または前記熱可塑性有機樹脂と前記ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子、さらに必要に応じてフィラーなどその他の成分とを混合して調製される。さらに、前記塗料組成物は、上記以外の成分、たとえば中和剤、界面活性剤または紫外線吸収剤、さらには国際公開公報WO2007/026529などの従来公知の文献に記載されている有機化合物や無機化合物などを含んでいてもよい。
【0057】
また、前記熱硬化性樹脂を有機溶媒に溶解させた分散液または前記熱可塑性樹脂を有機溶媒や水に溶解または分散させた分散液に、前記複合酸化物微粒子と、必要に応じその他の成分を混合してもよい。いずれの場合も、複合酸化物微粒子およびフィラーは分散液状であっても固形であってもよく、分散液状の場合には、分散媒が水であっても、有機溶媒であってもよい。
このような塗料組成物は、プライマー層膜形成用塗料組成物として特に好ましい。
【0058】
本発明に係る塗料組成物は、膜硬度、耐擦傷性、透明性が高く、様々な用途に使用することができる。特に、ハードコート層膜形成用塗料組成物、またはプライマー層形成用塗料組成物として好ましい。
本発明に係る塗料組成物を塗布する基材としては、特に制限されるものではないが、例えば、光学用基材の一例として、ポリスチレン樹脂、アリル樹脂(特に、芳香族系アリル樹脂)、ポリカーボネート樹脂、ポリチオウレタン樹脂、ポリチオエポキシ樹脂などで構成されたプラスチックレンズ基材が挙げられる。また、光学レンズ以外に用いられるプラスチック基材としては、PMMA樹脂、ABS樹脂、エポキシ樹脂、ポリサルフォン樹脂などで構成されたプラスチック基材が挙げられる。またガラス、金属などの基材にも使用できる。
【0059】
前記基材上に前記塗料組成物を塗布する方法としては、公知の方法にて直接塗布、または基材を該塗料組成物中に浸漬すればよく、その一例としては、スピンコート法、ディップコート法などが挙げられる。
このようにして基材上に前記塗料組成物を塗布することによって得られた塗膜を従来公知の方法によって硬化させれば硬化塗膜が形成される。
なお、前記硬化法の一例としては、熱硬化、紫外線硬化などが挙げられる。
なお、眼鏡レンズなどの光学基材の場合、ハードコート層膜は基材の上に直接形成されても、プライマー層膜の上に形成されてもよく、プライマー層膜は、通常基材に直接形成される。
【0060】
[測定方法]
次に、本発明の実施例その他で使用された測定方法および評価試験法を具体的に述べれば、以下の通りである。
【0061】
(1)平均粒子径の測定方法
ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子の平均粒子径
前記複合酸化物微粒子の平均粒子径は窒素吸着法(BET法)により求めた比表面積より下記式にて求めた。
平均粒子径(nm)=6000/[比表面積(m2/g)×密度(ρ)]
ここで、密度(ρ)としてはシリカの密度2.2を用いた。
【0062】
フィラーの平均粒子径
(A)平均粒子径が200nm未満のフィラー
フィラーの分散液(固形分含有量20重量%)0.15gに純水19.85gを混合して調製した固形分含有量0.15%の試料を、長さ1cm、幅1cm、高さ5cmの石英セルに入れて、動的光散乱法による超微粒子粒度分析装置(大塚電子(株)製、型式ELS−Z2)を用いて、粒子群の粒子径分布を測定する。なお、本発明でいう平均粒子径は、この測定結果をキュムラント解析して算出された値を示す。
【0063】
(B)平均粒子径が200nm以上のもの(乾燥粉末など)
粒子の分散液の乾燥粉末または焼成粉末を、濃度40重量%のグリセリン含有水溶液に分散させたスラリー液(固形分濃度1.0重量%)を調製し、これに超音波発生装置(iuchi社製、US−2型)を用いて5分間、超音波を照射して前記粒子を分散させたのち、このスラリー液をガラスセル(長さ10mm、幅10mm、高さ45cmのサイズ)に入れて、遠心沈降式粒度分布測定装置(堀場製作所製CAPA−700)を用いて300〜10000rpmの回転速度で2分〜2時間かけて平均粒子径を測定した。
【0064】
(2)比表面積の測定方法
複合酸化物微粒子、またはフィラーの分散液(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)50mlをHNO3でpH3.5に調整し、1−プロパノール40mlを加え、110℃で16時間乾燥させた。得られた試料を乳鉢で粉砕した後、マッフル炉にて500℃、1時間焼成し、測定用試料とした。得られた測定用試料について、比表面積測定装置(ユアサアイオニクス製、型番マルチソーブ12)を用いて窒素吸着法(BET法)により窒素吸着量を測定し、得られた吸着量からBET1点法による比表面積を算出した。
【0065】
(3)pHの測定方法
固形分濃度30重量%の複合酸化物微粒子の水分散液50mlを入れたセルを、25℃の温度に保たれた恒温槽中で、pH4、7および9の標準液で更正が完了したpHメータ(堀場製作所製、F22)のガラス電極を挿入してpH値を測定した。
【0066】
(4)複合酸化物微粒子に含まれるケイ素およびアルミニウム含有量の測定方法
(a)ケイ素の含有量
ケイ素とアルミニウムとを含む複合酸化物微粒子の分散液(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)10gに50%硫酸水溶液2mlを加え、白金皿上にて蒸発乾固し、得られた固形物を1000℃にて1時間焼成後、冷却して秤量する。次に、秤量した固形物を微量の50%硫酸水溶液に溶かし、更にフッ化水素酸20mlを加えてから、白金皿上にて蒸発乾固し、1000℃にて15分焼成後、冷却して秤量する。これらの重量差をシリカゾルまたはシリカ系微粒子水分散ゾルまたはシリカ系微粒子有機溶媒分散ゾルに含まれるケイ素の含有量(SiO2換算基準での重量%)とした。
【0067】
(b)アルミニウムの含有量
1) ケイ素とアルミニウムとを含む複合酸化物微粒子の分散液(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い。)1gを白金皿に採取し、0.1mgまで秤量する。
2) フッ化水素酸20mlを加えて、サンドバス上で加熱し、蒸発乾固する。
3) 上記2)で得られた試料を室温まで冷却したのち、塩酸5mlと水を約50ml加えて、サンドバス上で加熱し溶解させる。
4) 上記3)で得られた試料を室温まで冷却したのち、容量200mlのフラスコに供して、水で200mlに希釈して試料溶液を作成する。
5) 上記4)で得られた試料溶液に含まれるアルミニウムの量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置(島津製作所(株)製、ICPS−8100、検出波長396.153nm)により測定し、Al23換算基準での重量%を求めた。
なお、フィラーが無機酸化物微粒子である場合に、該無機酸化物微粒子に含まれる金属元素の組成分析についても、ICP装置((株)島津製作所製、ICPS−8100)を用いることにより、酸化物換算基準での含有量を測定した。
【0068】
(5)表面負電荷量の測定方法
固形分濃度30重量%の複合酸化物微粒子の分散液(分散媒は水であっても有機溶媒であっても良い)を1.67g採取し、蒸留水98.53gを添加して固形分濃度0.5重量%の混合溶液100.00gを調製した。得られた混合溶液に塩酸水溶液あるいはアンモニア水溶液を添加して25℃においてpHを5.0に調整した測定用水溶液を調製し、そのなかから20.00gを分取して流動電位測定装置(MUETEK社製、PCD-T3)によりカチオン標準滴定液としてPoly−Dadmacを用いてカチオン流動電位滴定値を測定して得られた流動電位滴定値を表面負電荷量とした。
なお、上記測定により得られる値は複合酸化物微粒子1gあたりの表面負電荷量(μeq/g)である。この値を複合酸化物微粒子の比表面積(m2/g)で割った値を複合酸化物微粒子の単位比表面積あたりに存在する負の電荷量とした。
【0069】
(6)塗膜の外観(干渉縞)
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、蛍光灯の光を実施例および比較例で調製したプラスチックレンズ基板上に形成された反射防止膜表面で反射させ、光の干渉による虹模様(干渉縞)の発生を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
S:干渉縞が殆ど無い
A:干渉縞が目立たない
B:干渉縞が認められるが、許容範囲にある
C:干渉縞が目立つ
D:ぎらつきのある干渉縞がある。
【0070】
(7)塗膜の外観(曇り)
内壁が黒色である箱の中に蛍光灯「商品名:メロウ5N」(東芝ライテック(株)製、三波長型昼白色蛍光灯)を取り付け、実施例および比較例で調製したプラスチックレンズ基板を蛍光灯の直下に垂直に置き、これらの透明度(曇りの程度)を目視にて確認し、以下の基準で評価する。
A:曇りが無い
B:僅かに曇りがある
C:明らかな曇りがある
D:著しい曇りがある。
【0071】
(8)膜硬度(Bayer試験値)の試験方法
磨耗試験機BTM(米コルツ社製)およびヘイズ値測定装置(NIPPON DENSGOKU製NDH2000)を使用し、実施例の調製例にて作成したプラスチックレンズ基板と、基準レンズとのヘーズ値の変化によりBayer値を測定する。基準レンズはCR39基材(ジエチレングリコールビスアリルカーボネート)を使用し、まずそれぞれのヘーズ値を測定する。基準レンズの初期ヘーズ値をD(std0)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(test0)とする。それぞれのレンズを耐摩耗性試験機パンに設置し、その上に研磨材(専用砂)500gを充填し、600回左右に振動させ試験を行う。試験後の基準レンズの初期ヘーズ値をD(stdf)、被試験レンズの初期ヘーズ値をD(testf)とする。Bayer試験値(R)は以下の式から算出する。
R=[D(stdf)−D(std0)]/[D(testf)−D(test0)]
【0072】
(9)塗膜の耐擦傷性試験
実施例および比較例で調製したプラスチックレンズ基板の表面をボンスタースチールウール♯0000(日本スチールウール(株)製)で手擦りし、傷の入り具合を目視にて判定し、以下の基準で評価する。
A:殆ど傷が入らない
B:若干の傷が入る
C:かなりの傷が入る
D:擦った面積のほぼ全面に傷が入る。
【0073】
(10)塗膜の密着性試験
実施例および比較例で調製したプラスチックレンズ基板のレンズ表面に、ナイフにより1mm間隔で切れ目を入れ、1平方mmのマス目を100個形成し、セロハン製粘着テープを強く押し付けた後、プラスチックレンズ基板の面内方向に対して90度方向へ急激に引っ張り、この操作を合計5回行い、剥離しないマス目の数を数え、以下の基準で評価する。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0074】
(11)塗膜の耐候性試験
実施例および比較例で調製したプラスチックレンズ基板をキセノンウエザーメーター(スガ試験機(株)製X−75型)で曝露試験をした後、外観の確認および前記の密着性試験と同様の試験を行い、以下の基準で評価する。なお、曝露時間は、反射防止膜を有している基板は200時間、反射防止膜を有していない基板は50時間とする。
良好:剥離していないマス目の数が95個以上
不良:剥離していないマス目の数が95個未満。
【0075】
(12)塗膜の耐光性試験
退色試験用水銀ランプ(東芝(株)製H400−E)により紫外線を50時間照射し、試験前後のプラスチックレンズ基板の色の目視確認を行い、以下の基準で評価する。なお、ランプと試験片との照射距離は、70mmとし、ランプの出力は、試験片の表面温度が45±5℃となるように調整する。
○:あまり変色が認められない
△:若干の変色が認められる
×:明らかな変色が認められる。
【実施例】
【0076】
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0077】
[実施例1]
ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子の水分散液の調製(1)
工程(1)
球状のコロイド状シリカ微粒子が分散した市販のアルカリ性シリカゾル(商品名カタロイドSI−40、日揮触媒化成(株)製、SiO2濃度40重量%、Na2O濃度0.40重量%、pH9.5、平均粒子径17nm、Al23/SiO2(モル比)=0.0006)4000gを撹拌機と加熱装置を備えた内容積13リットルのSUS製反応容器に供して、温度25℃で撹拌しながらAl23換算基準で0.9重量%のアルミン酸ナトリウム水溶液2712gを1.0時間かけて一定速度で添加して混合溶液を得た。この時、Al23/SiO2(混合モル比)は0.009であり、アルミン酸ナトリウム水溶液の添加速度は1.5×10-2g/Hrであった。
【0078】
工程(1.1)
得られた混合溶液を攪拌しながら、95℃に加熱したのち、温度を95℃に保ちながら6.0時間撹拌を続けた。この混合液のpH は10.9、SiO2換算基準の固形分濃度は24.2重量%、Al23換算基準の固形分濃度は0.36重量%であった。
工程(1.2)
上記工程で得られた混合溶液に陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)ダイヤイオン SK1BH)を投入してpHを9に調整した。
工程(2)
上記工程で得られた混合溶液から樹脂を分離除去したのち、オートクレーブにて165℃で1時間加熱処理して、アルカリ性のシリカ系微粒子の水分散液を得た。
【0079】
工程(3)
次いで、上記工程により得られたアルカリ性のシリカ系微粒子の水分散液を室温まで冷却した後に、陽イオン交換樹脂(三菱化学(株)ダイヤイオン SK1BH)を投入して、pH3.5に調整した後、樹脂を分離せず、攪拌下で80℃に保ちながら7時間熟成した。
その後、陽イオン交換樹脂を分離除去し、SiO2換算基準で固形分濃度 24.2重量%、粘度 1.99mPa・s、pH4.9の複合酸化物微粒子の水分散液を得た。
上記で得られた複合酸化物微粒子の水分散液を、限外ろ過膜を用いて濃縮し、固形分濃度30重量%のケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子の水分散液(SW1)5400gを得た。この水分散液のSiO2濃度は29.34重量%、Al23濃度は0.42重量%、 Na2O濃度は0.24重量%、Al23/SiO2モル比は84×10-4、 pHは4.8であった。また、この複合酸化物微粒子の水分散液に含まれる複合酸化物微粒子は球状で、BET法より求めた平均粒子径は16.8nm、比表面積は162m2/g、該複合酸化物微粒子の単位比表面積当りに存在する負の電荷量は0.9μeq/m2であった。
また、この複合酸化物微粒子に含まれるアルミニウムの修飾量は単位表面積換算基準で0.85×10-6モル/m2であった。
【0080】
ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液の調製(1)
上記の工程で得られた複合酸化物微粒子の水分散液(SW1)5400gを限外濾過膜装置(旭化成(株)製濾過膜、SIP−1013)を用いて分散媒を水からメタノール(林純薬(株)製、メチルアルコール濃度:99.9重量%)に置換した。
得られた複合酸化物微粒子のメタノール分散液(SM1)の水分含有量は約10重量%であって、固形分濃度は30重量%、SiO2換算基準の固形分濃度は29.34重量%、蒸留水で10倍希釈した時のpHは5.2、粘度は1.5mPa・sであった。また前記複合酸化物微粒子のメタノール分散液に含まれる複合酸化物微粒子の平均粒子径は16.8nm、比表面積は162m2/gであって、該複合酸化物微粒子に修飾されたアルミニウムの量はAl23基準の単位表面積換算で0.85×10-6モル/m2、複合酸化物微粒子の単位比表面積当りに存在する負電荷量は0.9μeq/m2であった。
【0081】
塗料組成物の調製(1)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)41.0g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)13.7gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.1Nの塩酸水溶液36.1gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、上記工程にて調製した、ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子を含有したメタノール分散液(SM1)16.8gと、さらに無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾル(日揮触媒化成(株)製オプトレイク1120Z(8RS−25・A17)、固形分濃度20重量%、平均粒子径15nm、コアにTiO2、SnO2、SiO2、K2Oを含みシェルにSiO2、ZrO2を含む無機酸化物微粒子)313.2gと、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)6.6g、トリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.4gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用のハードコート層膜形成用塗料としての塗料組成物(1)を調製した。このとき、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物以外の成分100重量部に対して4.3重量部であった。
【0082】
プラスチックレンズ基板の作成(1)
(1)プラスチックレンズ基材の前処理
市販のプラスチックレンズ基材「モノマー名:MR−7」(三井化学(株)製、基材の屈折率1.67)を、40℃に保った10重量%濃度のKOH水溶液に2分間浸漬してエッチング処理を行った。更に、これらを取り出して水洗したのち、十分に乾燥させた。
【0083】
(2)ハードコート層膜の形成
前記プラスチックレンズ基材の表面に、本実施例で調製した塗料組成物(1)を塗布してハードコート層塗膜を形成した。なお、この塗料組成物の塗布は、ディッピング法(引き上げ速度300分)を用いて行った。
次に、前記塗膜を90℃で10分間、乾燥させた後、110℃で2時間、加熱処理して、塗膜(ハードコート層)の硬化を行った。
なお、このようにして形成された前記ハードコート層膜の硬化後の膜厚は、概ね2.5〜3.0μmであった。
【0084】
(3)反射防止膜層の形成
前記ハードコート層膜の表面に、以下に示す構成の無機酸化物成分を真空蒸着法によって蒸着させることによって、塗膜付きの実施例基板HX−1を得た。ここでは、ハードコート層側から大気側に向かって、SiO2:0.06λ、ZrO2:0.15λ、SiO2:0.04λ、ZrO2:0.25λ、SiO2:0.25λの順序で積層された反射防止層膜の層をそれぞれ形成した。また、設計波長λは、520nmとした。
この実施例基板HX−1について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表1に示す。
【0085】
[実施例2]
塗料組成物の調製(2)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)41.0g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)13.7gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.1Nの塩酸水溶液36.1gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、実施例1で調製した、ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液(SM1)0.8gと、さらに無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾル(日揮触媒化成(株)製オプトレイク1120Z(8RS−25・A17)、固形分濃度20重量%、平均粒子径15nm、コアにTiO2、SnO2、SiO2、K2Oを含みシェルにSiO2、ZrO2を含む無機酸化物微粒子)313.2g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)6.6g、トリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.4gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用のハードコート層膜形成用塗料としての塗料組成物(2)を調製した。このとき、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物以外の成分100重量部に対して0.2重量部であった。
【0086】
プラスチックレンズ基板の作成(2)
ついで、実施例1のプラスチックレンズ基板の作成(1)の工程において、塗料組成物(1)のかわりに、本実施例で調製した塗料組成物(2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、実施例基板HX−2を得た。
この実施例基板HX−2について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表1に示す。
【0087】
[実施例3]
塗料組成物の調製(3)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)41.0g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)13.7gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.1Nの塩酸水溶液36.1gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、実施例1で調製した、ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液(SM1)19.2gと、さらに無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾル(日揮触媒化成(株)製オプトレイク1120Z(8RS−25・A17)、固形分濃度20重量%、平均粒子径15nm、コアにTiO2、SnO2、SiO2、K2Oを含みシェルにSiO2、ZrO2を含む無機酸化物微粒子)313.2g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)6.6g、トリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.4gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用のハードコート層膜形成用塗料としての塗料組成物(3)を調製した。このとき、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物以外の成分100重量部に対して4.8重量部であった。
【0088】
プラスチックレンズ基板の作成(3)
ついで、実施例1のプラスチックレンズ基板の作成(1)の工程において、塗料組成物(1)のかわりに、本実施例で調製した塗料組成物(3)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、実施例基板HX−3を得た。
この実施例基板HX−3について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表1に示す。
【0089】
[実施例4]
ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子の水分散液の調製(2)
実施例1のケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子の水分散液の調製(1)の工程(1)において、アルカリ性シリカゾルに添加するアルミン酸ナトリウム水溶液(濃度0.9重量%)の量を2712gから611gに変更した以外は実施例1と同様の方法で固形分濃度30重量%の、ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子の水分散液(SW2)を得た。
この時、工程(1)においてアルカリ性シリカゾルにアルミン酸ナトリウム水溶液を混合したときのAl23/SiO2モル比は0.2であった。
また、この複合酸化物微粒子の水分散液のSiO2濃度は30.32重量%、Al23濃度は0.05重量%、 Na2O濃度は0.03重量%、Al23/SiO2モル比は9.7×10-4、 pHは6.3であった。
【0090】
また、この複合酸化物微粒子の水分散液(SW2)に含まれる複合酸化物微粒子の平均粒子径は16.7nm、比表面積は160m2/g、単位表面積あたりの負の電荷量は0.12μeq/m2、単位表面積あたりのアルミニウムの修飾量は9.7×10-4モル/m2であった。
【0091】
ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液の調製(2)
ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子の水分散液(SW1)のかわりに本実施例で調製した複合酸化物微粒子の水分散液(SW2)を用いた以外は実施例1に記載のケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液の調製(1)と同様の方法でケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液(SM2)を調製した。
得られた複合酸化物微粒子のメタノール分散液(SM2)の水分含有量は約10重量%であって、固形分濃度は30重量%、SiO2換算基準の固形分濃度は30.32重量%、蒸留水で10倍希釈した時のpHは5.2、粘度は1.5mPa・sであった。また前記メタノール分散液に含まれる複合酸化物微粒子の平均粒子径は16.7nm、比表面積は160m2/gであって、該複合酸化物微粒子に修飾されたアルミニウムの量はAl23基準の単位表面積換算で9.7×10-4モル/m2、複合酸化物微粒子の単位比表面積当りに存在する負電荷量は0.12μeq/m2であった。
【0092】
塗料組成物の調製(4)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)41.0g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)13.7gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.1Nの塩酸水溶液36.1gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、本実施例で調製した、ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液(SM2)16.8g、さらに無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾル(日揮触媒化成(株)製オプトレイク1120Z(8RS−25・A17)、固形分濃度20重量%、平均粒子径15nm、コアにTiO2、SnO2、SiO2、K2Oを含みシェルにSiO2、ZrO2を含む無機酸化物微粒子)313.2g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)6.6g、トリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.4gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用のハードコート層膜形成用塗料としての塗料組成物(4)を調製した。このとき、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物以外の成分100重量部に対して4.3重量部であった。
【0093】
プラスチックレンズ基板の作成(4)
ついで、実施例1のプラスチックレンズ基板の作成(1)の工程において、塗料組成物(1)のかわりに、本実施例で調製した塗料組成物(4)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、実施例基板HX−4を得た。
この実施例基板HX−4について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表1に示す。
【0094】
[比較例1]
塗料組成物の調製(5)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)41.0g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)13.7gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.1Nの塩酸水溶液36.1gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾル(日揮触媒化成(株)製オプトレイク1120Z(8RS−25・A17)、固形分濃度20重量%、平均粒子径15nm、コアにTiO2、SnO2、SiO2、K2Oを含みシェルにSiO2、ZrO2を含む無機酸化物微粒子)313.2g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)6.6g、トリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.4gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用のハードコート層膜形成用塗料としての塗料組成物(R1)を調製した。このとき、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物以外の成分100重量部に対して0重量部であった。
【0095】
プラスチックレンズ基板の作成(5)
ついで、実施例1のプラスチックレンズ基板の作成(1)の工程において、塗料組成物(1)のかわりに、本比較例で調製した塗料組成物(R1)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、比較例基板HR−1を得た。
この比較例基板HR−1について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表1に示す。
【0096】
[比較例2]
塗料組成物の調製(6)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)41.0g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)13.7gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.1Nの塩酸水溶液36.1gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、ケイ素のみを主成分として含む複合酸化物微粒子の水分散液(日揮触媒化成(株)製カタロイドSI−40、固形分濃度40重量%、平均粒子径17nm、SiO2含有量99.0重量%)12.6g、さらに無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾル(日揮触媒化成(株)製オプトレイク1120Z(8RS−25・A17)、固形分濃度20重量%、平均粒子径15nm、コアにTiO2、SnO2、SiO2、K2Oを含みシェルにSiO2、ZrO2を含む無機酸化物微粒子)313.2g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)6.6g、トリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.4gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用のハードコート層膜形成用塗料としての塗料組成物(R2)を調製した。このとき、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物以外の成分100重量部に対して4.3重量部であった。
ついで、実施例1のプラスチックレンズ基板の作成(1)の工程において、塗料組成物(1)のかわりに、本比較例で調製した塗料組成物(R2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、比較例基板HR−2を得た。
この比較例基板HR−2について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表1に示す。
【0097】
[比較例3]
塗料組成物の調製(7)
γ―グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6040)41.0g、γ―グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製Z−6042)13.7gの混合液を入れた容器を複数用意し、これらの混合液中に攪拌しながら0.1Nの塩酸水溶液36.1gを滴下した。更に、この混合液を室温で一昼夜攪拌して、シラン化合物の加水分解を行った。
次いで、これらの加水分解液が入った容器中に、実施例1で調製した、ケイ素とアルミニウムを主成分として含む複合酸化物微粒子のメタノール分散液(SM1)39.0g、さらに無機酸化物微粒子を含むメタノール分散ゾル(日揮触媒化成(株)製オプトレイク1120Z(8RS−25・A17)、固形分濃度20重量%、平均粒子径15nm、コアにTiO2、SnO2、SiO2、K2Oを含みシェルにSiO2、ZrO2を含む無機酸化物微粒子)313.2g、さらにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGM)6.6g、トリス(2.4-ペンタンジオナト)アルミニウムIII(東京化成工業(株)製)1.4gおよびレベリング剤としてシリコーン系界面活性剤(東レ・ダウコーニング(株)製、L−7001)0.2gを加え、室温で一昼夜攪拌して、光学基材用のハードコート層膜形成用塗料としての塗料組成物(R3)を調製した。このとき、前記複合酸化物微粒子の含有量は、該複合酸化物以外の成分100重量部に対して10.0重量部であった。
【0098】
ついで、実施例1のプラスチックレンズ基板の作成(1)の工程において、塗料組成物(1)のかわりに、本比較例で調製した塗料組成物(R3)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、比較例基板HR−3を得た。
この比較例基板HR−3について、上記の評価試験法を用いて、外観(干渉縞)、外観(曇り)、耐擦傷性、膜硬度、密着性、耐候性および耐光性を試験して評価した。その結果を表1に示す。
【0099】
表1から示されるように、ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子を、それ以外の成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲で含む塗料組成物を用いてハードコート層膜を形成した実施例基板の膜硬度は飛躍的に向上することがわかった。また、該実施例基板は耐擦傷性に優れ、干渉縞もなく、密着性、耐光性、耐候性にも優れることがわかった。これらのことから、本発明に係る塗料組成物が、高屈折率基材用の塗膜形成用塗料組成物として優れた性能を有することが示された。
【0100】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素とアルミニウムとを主成分として含む複合酸化物微粒子を含有する塗料組成物であって、該複合酸化物微粒子の含有量が、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜5重量部の範囲にあることを特徴とする塗料組成物。
【請求項2】
前記複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムとが、SiO2およびAl23換算基準としてそれぞれの含有量を合算したときに、該複合酸化物微粒子の全重量に対して70〜100重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の塗料組成物。
【請求項3】
前記複合酸化物微粒子に含まれるケイ素とアルミニウムのモル比がAl23/SiO2換算基準で0.0005〜0.05の範囲にあることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の塗料組成物。
【請求項4】
前記複合酸化物微粒子の含有量が、該複合酸化物微粒子以外の成分100重量部に対して0.1〜3.0重量部の範囲にあることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項5】
前記複合酸化物微粒子の表面負電荷密度が、前記複合酸化物微粒子を含む分散ゾルのpHが5.0であるとき、0.5〜1.1μeq/m2の範囲にあることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項6】
さらに、前記複合酸化物微粒子以外にフィラーを含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の塗料組成物。
【請求項7】
前記フィラーがジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上を含む無機酸化物微粒子であることを特徴とする請求項6に記載の塗料組成物。
【請求項8】
前記フィラーがコアシェル型の無機酸化物微粒子であって、該無機酸化物微粒子のコアがジルコニウム、スズ、チタニウム、ニオブ、タングステン、アンチモン、インジウムから選ばれた1種以上を含む複合酸化物微粒子であり、シェルがケイ素を含む酸化物または複合酸化物であることを特徴とする請求項6または請求項7に記載の塗料組成物。
【請求項9】
ハードコート層膜形成用塗料組成物であることを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の塗料組成物。

【公開番号】特開2012−140520(P2012−140520A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−293571(P2010−293571)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】