説明

塗液供給装置

【課題】ドクタチャンバーから塗液を吸い出す際の、ドクタチャンバー内の内圧変動を抑えるとともに、極力省スペースで設置できる塗液供給装置を提供する。
【解決手段】塗液供給装置は、塗液を貯留する貯留タンクと、貯留タンクに貯留された塗液Lをドクタチャンバーの本体部に押出ホースを介して供給する供給ポンプと、ドクタチャンバーの本体部に貯留された塗液を吸引させて貯留タンクに引込ホースを介して排出させる吸引ポンプと、を備え、ドクタチャンバーは、押出ホースと本体部を連結し、供給ポンプにより供給された塗液を本体部に導入する導入部と、引込ホースと本体部を連結し、導入部より本体部に導入された塗液Lの一部を導出するための管状の継手33aを備えた導出部33と、を有し、導出部33の継手33aの上面に孔部33bを備えて構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗液を原紙に供給する塗液供給装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2枚の原紙を糊等の塗液で貼り合わせてなるキッチンタオル等は、当該塗液を原紙に塗付するにあたって、ドクタチャンバーとアニロックスロールを備えた塗液供給装置を用いる。すなわち、ドクタチャンバーより供給される塗液を、アニロックスロールを介して原紙に転写させている。
この際、ドクタチャンバーは、塗液供給用のタンクからポンプを介して塗液を導入するが、当該導入量がアニロックスロールに供給するための必要量を超過しないように、ドクタチャンバーから塗液を吸い出して循環させる必要がある。そのため、チャンバーより下方向きの流路を形成して自然落下により上記吸い出しを行うことが考えられるが、塗液供給装置の設置環境上、流路分の設置スペースが十分に確保できない場合が往々にしてある。
そこで、塗液の導入時と同じように、ポンプを用いた塗液の吸い出しが考えられる。ところが、ドクタチャンバーはアニロックスロールに密接して配されるため、上記ポンプを用いた塗液の吸い出しを行うと、ドクタチャンバー内の内圧が変動するため、ドクタチャンバーからアニロックスロールに供給される塗液の量も一定にならないという問題があった。
【0003】
そこで、例えば、ドクタチャンバーの上方にタンクを配設し、サイフォンの原理を利用して上記必要量を超過した塗液をドクタチャンバー内から汲み上げる機構を備えたものが知られている(例えば、特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−207454号公報
【0005】
上記特許文献1記載の発明によると、上記ポンプを用いた塗液の吸い出しを行う場合のようなドクタチャンバー内の内圧変動がもたらされることはなく、必要量を超過した塗液の回収が可能となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1記載の発明では、常にタンクをドクタチャンバーの上方に配設する必要があるため、塗液供給装置を設置できる環境が、ドクタチャンバーの上部に空間的な余裕のある場所などに限定されてしまうという問題がある。
【0007】
本発明の課題は、ドクタチャンバーから塗液を吸い出す際の、ドクタチャンバー内の内圧変動を抑えるとともに、極力省スペースで設置できる塗液供給装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、原紙の表面にアニロックスロールを介して塗液を転写させる塗液転写部と、前記アニロックスロールに隣接して配設され、前記アニロックスロールへ本体部に貯留した塗液を供給するドクタチャンバーと、を有する塗液供給装置において、前記塗液を貯留する貯留タンクと、前記貯留タンクに貯留された塗液を前記ドクタチャンバーの本体部に押出ホースを介して供給する供給ポンプと、前記ドクタチャンバーの本体部に貯留された塗液を吸引させて外部に引込ホースを介して排出させる吸引ポンプと、を備え、前記ドクタチャンバーは、前記供給ポンプと前記本体部を連結し、前記押出ホースにより供給された塗液を前記本体部に導入する導入部と、前記引込ホースと前記本体部を連結し、前記導入部より前記本体部に導入された塗液の一部を導出するための管状の継手を備えた導出部と、を有し、前記本体部の上面又は前記導出部の継手の上面に孔部を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の塗液供給装置において、前記ドクタチャンバーは、前記孔部に下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の塗液供給装置において、前記ドクタチャンバーは、前記孔部の周面に下端が接続され、上方に延伸した円筒状の円筒状部と、前記円筒状部に設けられ、前記円筒状部に流入する前記塗液の高さが所定の高さ位置に達したか否かを検知するセンサと、前記センサにより、前記円筒状部に流入する前記塗液の高さが所定の高さ位置に達したと検知された場合に、報知する報知部と、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は3に記載の塗液供給装置において、前記ドクタチャンバーは、前記孔部の開口量を調整する調整部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、本体部の上面又は導出部の継手の上面に孔部が備えられる。そのため、吸引ポンプを用いて本体部内の塗液の一部を排出する際に、上記孔部によって塗液が外気接触するので、吸引ポンプの動作に起因したドクタチャンバー内の内圧変動が抑えられる。また、本発明では、上記塗液の一部を排出する際に吸引ポンプを用いているため、塗液を自然落下させるための流路は必要なく、タンクの設置位置も特段ドクタチャンバーの上方等に限定されることもない。
したがって、本発明は、ドクタチャンバーから塗液を吸い出す際の、ドクタチャンバー内の内圧変動を抑えるとともに、極力省スペースで設置できる塗液供給装置であるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1実施形態の塗液供給装置の概略構成図である。
【図2】図1における塗液供給装置の導出部を説明するための模式図である。
【図3】第2実施形態の塗液供給装置の導出部を説明するための模式図である。
【図4】第3実施形態の塗液供給装置の導出部を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、図面を参照して、本発明に係る塗液供給装置の具体的な態様を詳細に説明する。ここで、図1に示す塗液供給装置の左右方向をX軸方向、上下方向をY軸方向とする。
ただし、発明の範囲は、図示例に限定されない。
【0015】
(実施形態1)
本実施形態に係る塗液供給装置1は、例えば、キッチンタオル等の原材となる原紙Pに糊等の塗液Lを塗工するための装置であり、図1〜図2に示すように、塗液Lを貯留する貯留タンク10と、貯留タンク10内の塗液Lを押出す押出部20と、押出部20より押出された塗液Lを貯留するドクタチャンバー30と、ドクタチャンバー30に貯留される塗液Lの一部をタンク10へ引き込む引込部40と、ドクタチャンバー30より供給される塗液Lを原紙Pの表面に転写させる塗液転写部50と、原紙Pを周面に巻き付けて回動させる回動部60と、等を含んで構成される。
【0016】
貯留タンク10は、内部に塗液Lを貯留するタンクであり、後述の押出部20の押出ホース21と、引込部40の引込ホース41と、が液層内に挿入されている。
【0017】
押出部20は、例えば、貯留タンク10内に挿入された押出ホース21と、貯留タンク10に貯留された塗液Lを押出してドクタチャンバー30に供給する供給ポンプ22と、供給ポンプ22による塗液Lの押出量(流量)を調整するための調整弁23と、を含んで構成される。
押出ホース21は、一端が貯留タンク10内に挿入され、他端がドクタチャンバー30の導入部32と接続されたホースであり、貯留タンク10内の塗液Lを搬送する流路として機能する。
供給ポンプ22は、押出ホース21に取り付けられ、図示しない駆動モータにより駆動されて、貯留タンク10内の塗液Lをドクタチャンバー30へ加圧送給する。
調整弁23は、供給ポンプ22により押出される塗液Lの流量を弁の開閉により調整する。
【0018】
引込部40は、例えば、貯留タンク10内に挿入された引込ホース41と、貯留タンク10に塗液Lを引込む吸引ポンプ42と、を含んで構成される。
引込ホース41は、一端が貯留タンク10内に挿入され、他端が後述のドクタチャンバー30の導出部33と接続されたホースであり、導出部33より導出される塗液Lを貯留タンク10に搬送する流路として機能する。
吸引ポンプ42は、引込ホース41に取り付けられ、図示しない駆動モータにより駆動されて、導出部33より導出される塗液Lを吸引させて貯留タンク10(外部)へ排出させる。
【0019】
ドクタチャンバー30は、後述のアニロックスロール51に隣接して配設され、塗液Lを貯留する本体部31と、押出部20と本体部31を連結する導入部32と、引込部40と本体部31を連結する導出部33と、を含んで構成される。
【0020】
本体部31は、ドクタチャンバー30の本体部分であり、貯留部31aと、ブレード31b,31cと、を含んで構成される。
貯留部31aは、アニロックスロール51側の端部が開口し、導入部32及び導出部33と連結され、内部に貯留される塗液Lをアニロックスロール51に供給する。そして、アニロックスロール51への供給量が一定となるように、導入部32より貯留部31aに導入される塗液Lの一部が導出部33を介して導出されることで、循環されるよう構成されている。
ブレード31b,31cは、アニロックスロール51と当接するように設けられ、アニロックスロール51に押しつけた状態で塗液Lの絞りを行う。
【0021】
導入部32は、一端が本体部31に接続され、他端が押出部20の押出ホース21に接続され、押出部20と本体部31とを連結する管状の継手であり、供給ポンプ22により供給された塗液Lを本体部31の貯留部31aに導入することができる。
【0022】
導出部33は、図1及び図2に示すように、継手33aと、孔部33bと、チューブ33cと、を含んで構成される。
継手33aは、一端が本体部31に接続され、他端が引込部40の引込ホース41に接続され、引込部40と本体部31とを連結する管状の継手である。
【0023】
孔部33bは、継手33aの上面に形成され、所定の径からなる開口部分である。
つまり、継手33aに孔部33bが設けられているため、継手33a内の塗液Lは外気接触することとなる。そのため、導入部32より導入した塗液Lの一部を排出(導出部33から導出)して塗液Lを循環させる際に、吸引ポンプ42で塗液Lの吸引を行っても、上記孔部33bによって塗液Lが外気接触して、内圧を外気圧に近づけることができるので、ドクタチャンバー30内の内圧変動を抑えることができる。
なお、当該孔部33bは、ドクタチャンバー30内の内圧変動が抑えられればよいため、例えば、本体部31の上面に貯留部31aに連通するように形成してもよい。
【0024】
チューブ33cは、孔部33bに下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブ状の部材である。そのため、導入部32より導入した塗液Lの一部を排出して塗液Lを循環させる際に、塗液Lが孔部33bを介して当該チューブ33c内に流入するか否かを目視により確認することができる。つまり、上記チューブ33c内への流入が確認された場合は、貯留部31aに貯留される塗液Lの量が過多になっている(アニロックスロール51に対して塗液Lが過供給状態となっている)ことが把握できる。したがって、上記過多の状態を目視で確認した使用者は、例えば、調整弁23を操作して塗液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
なお、チューブ33cは、内部が空洞で上端側が外気に接触しているため、上記孔部33bの作用を相殺してしまうことはない。
【0025】
塗液転写部50は、例えば、ドクタチャンバー30より塗液Lを供給されるアニロックスロール51と、アニロックスロール51及び後述の回動部60の間に設けられたゴムロール52と、を含んで構成される。
【0026】
アニロックスロール51は、ドクタチャンバー30のブレード31b,31cと当接するように設けられ、ドクタチャンバー30の貯留部31aの開口より供給される塗液Lが周面に吸着されるように構成されている。
さらに、アニロックスロール51は、円柱状をなし、XY平面に直交する軸回りに回動可能に構成されているため、上記のように周面に吸着された塗液Lは、回動によってゴムロール52に転写することが出来る。
【0027】
ゴムロール52は、周面がゴム材からなる円柱状をなし、左右端部の周面(図1に示す点P1,点P2)がアニロックスロール51及び回動部60(に巻きつけられる原紙P)の周面に当接するように設けられ、XY平面に直交する軸回りに回動可能に構成されている。そのため、ゴムロール52は、左端で当接する回動部60がr1方向に回動することでr2方向に回動するとともに、右端で当接するアニロックスロール51をr1方向に回動させる。つまり、ゴムロール52は、アニロックスロール51の周面に吸着された塗液Lを点P2にて取得し、r2方向への回動により点P1まで搬送して原紙Pに転写することができる。そのため、アニロックスロール51により吸着された塗液Lがアニロックスロール51の周面上に層状に不均一に残ってしまう場合でも、ゴムロール52の周面に移送させることで、原紙Pに塗液Lを均一に転写することができる。
【0028】
回動部60は、ゴムロール52に隣接して設けられ、図示しないモータ等より駆動力が付与されることで、XY平面に直交する軸回り(例えば、図1のr1方向)に回動する円柱状の部材であり、周面で原紙Pを把持できるように構成されている。そのため、回動部60は、r1方向に回動することにより、供給される原紙Pを周面に巻き付けるとともに、ゴムロール52及びアニロックスロール51を回動させ、点P1位置まで搬送した時点でゴムロール52より塗液Lを転写させることができる。
なお、回動部60の回動の向きは、図1においてr1方向としたが、r2方向に回動するように構成しても勿論良い。この場合、アニロックスロール51及びゴムロール52は図1とは逆方向(つまり、アニロックスロール51:r2方向、ゴムロール52:r1方向)に回動する。
【0029】
次に、本実施形態に係る塗液供給装置1による、塗液Lの循環動作について説明する。
【0030】
まず、供給ポンプ22を駆動させ、貯留タンク10より塗液Lを押出し、押出ホース21及びドクタチャンバー30の導入部32を介して本体部31の貯留部31aへ供給する。
次いで、回動部60を回動させてアニロックスロール51に貯留部31aの塗液Lを供給し、ゴムロール52を介して塗液Lを原紙P上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ42を駆動させ、導出部33を介して貯留部31aの塗液Lの一部を貯留タンク10へ向けて排出して循環させる。この際、導出部33の継手33a内で、孔部33bを介した外気接触によりドクタチャンバー30内の内圧変動が抑えられる。
また、上記循環の際に、塗液Lのチューブ33c内への流入が確認された場合、調整弁23を操作して塗液Lの流量の調整を行う。
【0031】
以上説明したように、本実施形態に係る塗液供給装置1によると、塗液Lを貯留する貯留タンク10と、貯留タンク10に貯留された塗液Lをドクタチャンバー30の本体部31に押出ホース21を介して供給する供給ポンプ22と、ドクタチャンバー30の本体部31に貯留された塗液Lを吸引させて貯留タンク10(外部)に引込ホース41を介して排出させる吸引ポンプ42と、を備え、ドクタチャンバー30は、押出ホース21と本体部31を連結し、供給ポンプ22により供給された塗液Lを本体部31に導入する導入部32と、引込ホース41と本体部31を連結し、導入部32より本体部31に導入された塗液Lの一部を導出するための管状の継手33aを備えた導出部33と、を有し、導出部33の継手33aの上面に孔部33bを備えて構成される。
【0032】
つまり、塗液供給装置1では、導出部33の継手33aの上面に孔部33bが備えられる。そのため、吸引ポンプ42を用いて本体部31内の塗液Lの一部を排出する際に、上記孔部33bによって塗液Lが外気接触するので、吸引ポンプ42の動作に起因したドクタチャンバー30内の内圧変動が抑えられる。また、本発明では、上記塗液Lの一部を排出する際に吸引ポンプ42を用いているため、塗液Lを自然落下させるための流路は必要なく、タンク10の設置位置も特段ドクタチャンバー30の上方等に限定されることもない。
したがって、塗液供給装置1は、ドクタチャンバー30から塗液Lを吸い出す際の、ドクタチャンバー30内の内圧変動を抑えるとともに、極力省スペースで設置できる塗液供給装置であるといえる。
【0033】
また、ドクタチャンバー30は、孔部33bに下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブ33cを備える。
【0034】
つまり、導入部32より導入した塗液Lの一部を排出して塗液Lを循環させる際に、塗液Lが孔部33bを介して当該チューブ33c内に流入するか否かを目視により確認することができる。そのため、上記チューブ33c内への流入が確認された場合は、貯留部31aに貯留される塗液Lの量が過多になっている(アニロックスロール51に対して塗液Lが過供給状態となっている)ことが把握できる。したがって、上記過多の状態を目視で確認した使用者は、例えば、調整弁23を操作して塗液Lの流量を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
また、チューブ33cの上端(自由端)を下向きにして設けることで、孔部33bへの紙粉等の異物の混入を防止することができる。
【0035】
(実施形態2)
次に、実施形態2の塗液供給装置100について、図3を用いて説明する。
実施形態1の塗液供給装置1では、孔部33bに連結されたチューブ33c内への塗液Lの流入を目視により確認することで、アニロックスロール51に対して塗液Lが過供給状態となっていることを把握できるように構成したが、実施形態2の塗液供給装置100では、上記状態に至ったか否かを自動的に判別し、使用者に判別結果を報知するように構成する。
以下の塗液供給装置100の説明においては、実施形態1の塗液供給装置1との相違点を中心に説明し、一致する構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0036】
導出部333は、図3に示すように、継手33aと、孔部33bと、孔部33bの上方に設けられた円筒状部33dと、円筒状部33dに取り付けられたセンサ部33eと、を含んで構成される。
【0037】
円筒状部33dは、孔部33bの周面に下端が溶接等により固着接続され、上方に延伸した円筒状の部材である。
【0038】
センサ部33eは、円筒状部33dに設けられたセンサ33fと、センサ33fに取り付けられ、センサ33fの検知に連動して報知を行う報知部33gと、を含んで構成される。
センサ33fは、例えば、被検知体に向けて発光する発光素子(図示省略)と、被検知体からの反射光を受光する受光素子(図示省略)と、を含み、受光素子からの反射光の受光量に基づいて、円筒状部33dに流入する塗液Lの高さが、当該センサ33fの設けられた高さ位置(図3に示すy1)に達したか否かを検知するセンサである。
報知部33gは、例えば、スピーカ等であり、センサ33fにより、円筒状部33dに流入する塗液Lの高さが、上記センサ33fの設けられた高さ位置に達したと検知された場合に、音声により使用者への報知を行うように構成されている。
【0039】
つまり、導入部32より導入した塗液Lの一部を排出して塗液Lを循環させる際に、センサ33fにより、円筒状部33dに流入する塗液Lが上記高さ位置に達したか否かを検知することで、貯留部31aに貯留される塗液Lの量が過多になっている(アニロックスロール51に対して塗液Lが過供給状態となっている)か否かを判別することが出来る。そして、上記過多の状態に至った場合、使用者は報知部33gによりその旨を知ることができるので、例えば、調整弁23を操作して塗液Lの押出量(流量)を調整することにより、当該過多の状態を解消することが可能となる。
なお、円筒状部33dは、内部が空洞で上端側が外気に接触しているため、孔部33bの作用を相殺してしまうことはない。
【0040】
次に、本実施形態に係る塗液供給装置100による、塗液Lの循環動作について説明する。
【0041】
まず、供給ポンプ22を駆動させ、貯留タンク10より塗液Lを押出し、押出ホース21及びドクタチャンバー30の導入部32を介して本体部31の貯留部31aへ供給する。
次いで、回動部60を回動させてアニロックスロール51に貯留部31aの塗液Lを供給し、ゴムロール52を介して塗液Lを原紙P上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ42を駆動させ、導出部333を介して貯留部31aの塗液Lの一部を貯留タンク10へ向けて排出して循環させる。この際、導出部333の継手33a内で、孔部33bでの外気接触を介してドクタチャンバー30内の内圧変動が抑えられる。
また、上記循環の際に、センサ33fにより、円筒状部33dに流入する塗液Lの高さが、センサ33fの設けられた高さ位置に達したと検知され、報知部33gにより使用者へその旨が報知された場合、調整弁23を操作して塗液Lの流量の調整を行う。
【0042】
以上説明したように、本実施形態に係る塗液供給装置100によると、ドクタチャンバー30は、孔部33bの周面に下端が接続され、上方に延伸した円筒状の円筒状部33dと、円筒状部33dに設けられ、円筒状部33dに流入する塗液Lの高さが所定の高さ位置(センサ33fの設けられた高さ位置)に達したか否かを検知するセンサ33fと、センサ33fにより、円筒状部33dに流入する塗液Lの高さが上記所定の高さ位置に達したと検知された場合に報知する報知部33gと、を備えて構成される。
【0043】
つまり、塗液供給装置100によると、塗液供給装置1と同様の効果を発揮するのは勿論のこと、塗液Lを循環させる際に、センサ33f及び報知部33gにより、アニロックスロール51に対して塗液Lが過供給状態に至ったか否かを自動的に判別し、使用者に判別結果を報知することができるので、上記状態判別を使用者自身が行う負担が軽減される。
【0044】
(実施形態3)
次に、実施形態3の塗液供給装置1000について、図4を用いて説明する。
実施形態1の塗液供給装置1及び実施形態2の塗液供給装置100では、孔部33bの開口量は固定値となるように構成したが、実施形態3の塗液供給装置1000では、当該開口量を調整できるように構成する。
以下の塗液供給装置1000の説明においては、実施形態1の塗液供給装置1及び実施形態2の塗液供給装置100との相違点を中心に説明し、一致する構成には、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0045】
導出部3333は、図4に示すように、継手33aと、円筒状部33dと、センサ部33eと、円筒状部33dに取り付けられた調整部33hと、を含んで構成される。
調整部33hは、例えば、ニードルバルブであり、継手33aの上面に形成される開口としての孔部33jと、孔部33jの開口量を調整するバルブ本体33iと、を含んで構成される。
【0046】
孔部33jは、所定径からなる開口の周囲がオリフィスで囲まれた形状からなる。
バルブ本体333iは、上記孔部33jの開口の上方に配設され、先端がテーパ状で上下動可能なニードル軸(図示省略)を備え、当該ニードル軸を上下動させて、孔部33jのオリフィスと接触する際の開度に応じて孔部33jの開口量を調整できるように構成されている。
【0047】
つまり、上記調整部33hにより、孔部33jの開口量を調整することが可能となるので、塗液Lを循環させる際に、ドクタチャンバー31内の内圧変動量に応じて、孔部33jの開口量を適宜に調整することができる。そのため、例えば、センサ部33eにより、円筒状部33dに流入する塗液Lの高さが、センサ33fの設けられた高さ位置に達したと検知された場合、調整弁23を操作して塗液Lの押出量を調整することで対処するばかりでなく、調整部33hによる孔部33jの開口量の調整により、孔部33jによるエアー抜きの能力を高めて(外気との接触面積を拡張して)、ドクタチャンバー30内の内圧変動を抑えるという対処をとることも可能となる。つまり、内圧変動を抑えることで、内圧変動によりもたらされるドクタチャンバー30内からの塗液Lの噴出や、アニロックスロール51上の塗液Lのドクタチャンバー30側への吸込み等が好適に防止されるので、塗液Lの循環が促進される。
【0048】
次に、本実施形態に係る塗液供給装置1000による、塗液Lの循環動作について説明する。
【0049】
まず、供給ポンプ22を駆動させ、貯留タンク10より塗液Lを押出し、押出ホース21及びドクタチャンバー30の導入部32を介して本体部31の貯留部31aへ供給する。
次いで、回動部60を回動させてアニロックスロール51に貯留部31aの塗液Lを供給し、ゴムロール52を介して塗液Lを原紙P上に転写させる。
加えて、吸引ポンプ42を駆動させ、導出部3333を介して貯留部31aの塗液Lの一部を貯留タンク10へ向けて排出して循環させる。上記循環の際、センサ33fにより、円筒状部33dに流入する塗液Lの高さが、センサ33fの設けられた高さ位置に達したと検知され、報知部33gにより使用者へその旨が報知された場合、調整弁23の操作又は調整部33hによる孔部33jの開口量の調整により対処することが出来る。
【0050】
以上説明したように、本実施形態に係る塗液供給装置1000によると、ドクタチャンバー30は、孔部33jの開口量を調整する調整部33hを備える。
【0051】
つまり、塗液供給装置1000によると、塗液供給装置1と同様の効果を発揮するのは勿論のこと、上記調整部33hにより、孔部33jの開口量を調整することが可能となるので、塗液Lを循環させる際に、ドクタチャンバー31内の内圧変動量に応じて、孔部33jの開口量を適宜に調整することで、ドクタチャンバー30内の内圧変動を一層好適に抑えることができる。
【0052】
なお、本発明の範囲は上記実施形態に限られることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の改良並びに設計の変更を行っても良い。
例えば、塗液供給装置1において、チューブ33cを設けない場合は、孔部33bの上部にエアーフィルタを設置し、孔部33bへの紙粉等の異物の混入を防止するように構成してもよい。
また、孔部33bは、貯留部31aの塗液Lの液面より上方であれば、本体部31の側面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1,100,1000 塗液供給装置
10 貯留タンク
20 押出部
22 供給ポンプ
30 ドクタチャンバー
31 本体部
32 導入部
33,333,3333 導出部
33a 継手
33b,33j 孔部
33c チューブ
33d 円筒形状部
33e センサ部
33f センサ
33g 報知部
33h 調整部
40 引込部
42 吸引ポンプ
50 塗液転写部
51 アニロックスロール
60 回動部
P 原紙
L 塗液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
原紙の表面にアニロックスロールを介して塗液を転写させる塗液転写部と、前記アニロックスロールに隣接して配設され、前記アニロックスロールへ本体部に貯留した塗液を供給するドクタチャンバーと、を有する塗液供給装置において、
前記塗液を貯留する貯留タンクと、
前記貯留タンクに貯留された塗液を前記ドクタチャンバーの本体部に押出ホースを介して供給する供給ポンプと、
前記ドクタチャンバーの本体部に貯留された塗液を吸引させて外部に引込ホースを介して排出させる吸引ポンプと、
を備え、
前記ドクタチャンバーは、
前記押出ホースと前記本体部を連結し、前記供給ポンプにより供給された塗液を前記本体部に導入する導入部と、
前記吸引引込ホースと前記本体部を連結し、前記導入部より前記本体部に導入された塗液の一部を導出するための管状の継手を備えた導出部と、
を有し、
前記本体部の上面又は前記導出部の継手の上面に孔部を備えることを特徴とする塗液供給装置。
【請求項2】
請求項1に記載の塗液供給装置において、
前記ドクタチャンバーは、
前記孔部に下端が連結され、上方に延伸した透明又は半透明のチューブを備えることを特徴とする塗液供給装置。
【請求項3】
請求項1に記載の塗液供給装置において、
前記ドクタチャンバーは、
前記孔部の周面に下端が接続され、上方に延伸した円筒状の円筒状部と、
前記円筒状部に設けられ、前記円筒状部に流入する前記塗液の高さが所定の高さ位置に達したか否かを検知するセンサと、
前記センサにより、前記円筒状部に流入する前記塗液の高さが所定の高さ位置に達したと検知された場合に、報知する報知部と、
を備えることを特徴とする塗液供給装置。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の塗液供給装置において、
前記ドクタチャンバーは、
前記孔部の開口量を調整する調整部を備えることを特徴とする塗液供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−68048(P2011−68048A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221811(P2009−221811)
【出願日】平成21年9月28日(2009.9.28)
【出願人】(390029148)大王製紙株式会社 (2,041)
【Fターム(参考)】