説明

塗膜形成方法及びこの塗膜形成方法による塗膜を有する基材

【課題】 光干渉性薄片顔料を用い、多色に塗り分けられた仕上がり塗膜が得られる塗膜形成方法であって、優れた仕上がり外観を損なうことなく、工程の簡便化を実現し、多様な意匠性に対するニーズに応じた塗膜形成方法を提供する。
【解決手段】 光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料を被塗装物に塗布する工程、及び、クリヤー塗料を塗布する工程を含む塗膜形成方法であって、上記被塗装物は、少なくとも2色に塗り分けられたものであり、上記被塗装物の色のうち何れかの2色についてL値の差が15〜70であることを特徴とする塗膜形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料及びクリヤー塗料を塗布する工程を含む塗膜形成方法、詳しくは、光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料及びクリヤー塗料を塗布する工程を含む塗膜形成方法であって多色に塗り分けられた塗膜が得られる方法に関し、及び、上記塗膜形成方法による塗膜を有する基材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の車体に、下塗りとして電着塗膜を形成し、この上に中塗り塗膜、ベース塗膜及びクリヤー塗膜が順次形成される塗膜形成方法において、ベース塗膜に光干渉性薄片顔料を含有させると、入射光の角度又は見る角度の変化に応じて色が移り変わるように観察される光干渉多色性を呈するので、多様な意匠性に対するニーズに応じるものとして使用が期待される。
【0003】
この光干渉性薄片顔料は、例えば、特許3056253号公報において開示されているように、クロム層等の半透明金属層、フッ化マグネシウム層等の誘電体層、アルミニウム層等の金属反射層、上記半透明金属層及び上記誘電体層がこの順に形成されてなる多層構造を有する。
【0004】
一方、例えばツートーンカーのように、自動車車体を仕上がり外観においてA色とB色とを含む多色に塗り分ける場合があり、これによっても多様な意匠性が提供される。この場合における従来の塗膜形成方法の一例としては、鋼板等の基材に電着塗膜、次いで中塗り塗膜を形成し、この上に仕上がり塗色としてA色を呈するようにベース塗膜及びクリヤー塗膜を形成し、これら塗膜を焼き付け硬化させた後、得られた塗装物のうちB色を呈するよう所望する部分について、仕上がり塗色としてB色を呈するようにベース塗膜及びクリヤー塗膜を形成し、これら塗膜を焼き付け硬化させる工程がふまれていた。しかしながら、この方法では、B色の部分について、仕上がり外観には現れない点でA色の塗膜形成工程が無駄となるので、簡便な塗膜形成工程が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許3056253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記に鑑み、光干渉性薄片顔料を用い、多色に塗り分けられた仕上がり塗膜が得られる塗膜形成方法であって、優れた仕上がり外観を損なうことなく、工程の簡便化を実現し、多様な意匠性に対するニーズに応じた塗膜形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
本発明者は、光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料は高意匠を重視する設計のため下地の色を透過させるよう特殊設計することに着目し、このようなベース塗料を用い、多色に塗り分けられた仕上がり塗膜を得る方法として、上記ベース塗料を塗布する前の下地を、所望の仕上がり塗色に基づき、特定のL値差を有する2色及び必要に応じその他の色に予め塗り分けておき、この下地の上に上記ベース塗料、次いでクリヤー塗料を塗布し焼き付け硬化させることにより、従来よりも工程数を低減した簡便な塗膜形成が可能になるとともに、光干渉性薄片顔料に基づく所望の意匠性と、優れた仕上がり外観を併有する塗膜が得られることを見出し、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
即ち、本発明は、光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料を被塗装物に塗布する工程、及び、クリヤー塗料を塗布する工程を含む塗膜形成方法であって、上記被塗装物は、少なくとも2色に塗り分けられたものであり、上記被塗装物の色のうち何れかの2色についてL値の差が15〜70であることを特徴とする塗膜形成方法である。上記L値の差は、15〜60であることが好ましく、上記被塗装物は、L値が75以下であることが好ましい。
上記光干渉性薄片顔料が上記ベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)として6重量%以下である場合には、上記クリヤー塗料は少なくとも1回塗布するものであり、この場合において、上記クリヤー塗料は、1回の塗布により乾燥膜厚が25〜40μmとなるように塗布されることが好ましい。
本発明は、また、上記塗膜形成方法によって形成されてなる塗膜を有する基材である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の塗膜形成方法は、上述の構成を有することから、上述の光干渉性薄片顔料を用い、多色に塗り分けられた塗膜を得る塗装系において、光干渉多色性及び塗り分けによる多色性を有する優れた意匠性と仕上がり外観とを両立する塗膜を幅広い範囲で且つ簡便な工程で提供することができるので、特に自動車車体の塗装において、意匠性に対する顧客ニーズが多様であっても幅広く応じることができ、コスト削減等経済性にも優れる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の塗膜形成方法は、光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料を被塗装物に塗布する工程、及び、クリヤー塗料を塗布する工程を含むものである。
上記被塗装物は、少なくとも2色に塗り分けられたものである。上記塗り分けとしては特に限定されず、例えば、自動車車体の上部と下部とで異なる色にすること、又は、自動車車体の中央部付近を水平帯状に他の部分と異なる色にすること等によりツートーンカーを製造する場合が挙げられる。塗り分けられる色は、2色のみであってもよいし、必要に応じ更に他の1又は2以上の色からなるものであってもよい。
【0011】
上記被塗装物表面を塗り分けた色のうち何れかの2色について、L値の差は15〜70である。本発明においては、上記被塗装物上に形成されるベース塗膜が下地の色を透過しやすいものであるので、上記被塗装物が上記範囲のL値差を有する2色を呈することにより、上記ベース塗膜の上から上記被塗装物の2色が透けて見える結果、仕上がり外観において少なくとも2色に塗り分けられたように観察される。
【0012】
従って、本発明においては、被塗装物を上述のように少なくとも2色に塗り分け、これらの色のうち何れかの2色についてL値の差を15〜70とすることにより、少なくとも2色に塗り分けられた仕上がり塗膜を得るために、上記被塗装物上に上記ベース塗料の塗布、上述のクリヤー塗料の塗布及び得られる塗膜の焼き付け硬化を少なくとも各1回ずつ行えば足りるので、従来よりも塗膜形成の工程を低減し、簡便な塗膜形成方法とすることができる。
【0013】
上記L値の差が15未満であると、仕上がり塗色として2色以上に塗り分けられたように観察されない場合があり、70を超えると、塗り分けられた部分の色が相互に違いすぎ美観を損ねる印象を与えることがあり、また、L値が高い方の塗膜部分は下地の色が白すぎることとなりこの上に重ねて塗られる光干渉性薄片顔料に基づく光干渉多色性が効果的に現れない。好ましくは、15〜60である。
【0014】
上記被塗装物が3色以上に塗り分けられる場合は、これらの塗り分けられる色のうち何れか2色が上記L値の差を有すればよく、他の色のL値は、上記2色の各L値の間の値である場合、上記2色の各L値のうち低い方のL値よりも低い場合、又は、上記2色の各L値のうち高い方のL値よりも高い場合の何れであってもよい。即ち、例えば、それぞれx、y及びzのL値を有する3色に塗り分けられる場合は、xとy、yとz又はzとxの何れかの組のL値の差が15〜70、好ましくは15〜60であればよく、例えば、xがyよりも大きく、xからyを差し引いた値〔x−y〕が15〜70である場合に、zはyよりも低い値、xとyとの間の値、又は、xを超える値の何れであってもよい。
【0015】
上記被塗装物が3色以上に塗り分けられるときは、全てのL値の差が15〜70である場合、即ち、どの2色の組合せにおいてもL値の差が15〜70である場合は、塗り分けられた色がバランスよく優れた2トーン外観を得ることができるので、好ましい。
【0016】
上記被塗装物上に塗り分けられた色は,何れのL値も75以下の範囲内であることが好ましい。75を超えると、下地の明度が高くなりすぎ、下地の色が上記ベース塗膜を過度に透過するので、仕上がり塗膜を目視で観察すると上記下地からの反射光が多く上記光干渉性薄片顔料の光干渉が相対的に弱くなって光干渉多色性が明確に呈されず、光干渉多色性を出そうとすると上記光干渉性薄片顔料のPWCを高くする必要が生じ、作業性や仕上がり外観の低下を招く。好ましくは、65以下である。
【0017】
上記被塗装物は、基材並びに必要に応じて上記基材上に表面処理及び/又は塗膜が施されてなるものである。上記基材としては特に限定されず、例えば、金属、プラスチック、発泡体等が挙げられ、これらのうち、金属、特に鋳造物が有利に用いられるが、カチオン電着塗装可能な金属製品が特に好適に使用される。
【0018】
上記金属製品としては特に限定されず、例えば、鉄、銅、アルミニウム、スズ、亜鉛等の金属単体、並びに、これらの金属単体を含む合金及び鋳造物が挙げられる。具体的には、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車の車体及び部品が挙げられる。上記金属製品は、リン酸塩、クロム酸塩等で予め化成処理されたものが特に好ましい。このように化成処理された鋼板上には、更に、カチオン型又はアニオン型の電着塗料を用いて電着塗膜を形成することができるが、防食性において優れた積層塗膜を与えるので、カチオン型電着塗料組成物が好ましい。
【0019】
上記基材には、必要に応じ上述の化成皮膜や電着塗膜が施された上に、更に中塗り塗膜が形成されていてもよい。中塗り塗膜が形成されていると、基材や中塗り塗膜下の層の欠陥が隠蔽され、上塗り塗装後の表面平滑性が確保されて外観が向上するほか、耐衝撃性、耐チッピング性等の塗膜物性を付与することが容易になる。
上記中塗り塗膜を形成する中塗り塗料としては特に限定されないが、通常、顔料、塗膜形成樹脂及び硬化剤を含むものであり、一般的に、メラミン硬化系又はイソシアネート硬化系のものが用いられる。
【0020】
上記被塗装物が上述の範囲のL値を有するようにするためには、例えば、(イ)上記中塗り塗膜のL値を75以下の範囲に調整する方法、(ロ)通常の中塗り塗膜の上にL値を上記範囲に調整したカラーベース塗膜を更に設ける方法、(ハ)上記中塗り塗膜及びその上に形成するカラーベース塗膜の両方によりL値を上記範囲に調整する方法等がある。これらのうち、工程数の低減化等の点から上記(イ)又は上記(ロ)の何れかが好ましく、上記中塗り塗膜のL値を上記範囲に調整すればカラーベースは不要となりコスト低減化に資する点で、上記(イ)がより好ましい。
【0021】
これら被塗装物のL値の調整は、主として着色顔料により行うことができる。上記L値調整のための着色顔料としては特に限定されず、例えば、アゾキレート系顔料、不溶性アゾ系顔料、縮合アゾ系顔料、モノアゾ系顔料、ジスアゾ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、ベンズイミダゾロン系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、ジオキサン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、ナフトール系顔料、ピラゾロン系顔料、アントラキノン系顔料、アンソラピリミジン系顔料、金属錯体顔料等の有機系着色顔料;黄鉛、黄色酸化鉄、酸化クロム、モリブデートオレンジ、ベンガラ、チタン白、チタンイエロー、亜鉛華、カーボンブラック、二酸化チタン、コバルトグリーン、フタロシアニングリーン、群青、コバルトブルー、フタロシアニンブルー、コバルトバイオレット等の無機着色顔料等が挙げられる。
【0022】
上記被塗装物には更に、光輝性顔料及び/又は体質顔料を配合してもよい。上記光輝性顔料としては特に限定されず、例えば、干渉マイカ粉、着色マイカ粉、ホワイトマイカ粉、グラファイト、アルミニウム、着色アルミニウム、板状酸化鉄顔料、板状グラファイト顔料、ガラスフレーク等の無色有色偏平顔料;酸化アルミニウム、銅、亜鉛、鉄、ニッケル、スズ等の金属や合金等の無着色若しくは着色された金属性光輝材等が挙げられる。
上記体質顔料としては特に限定されず、例えば、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、炭酸バリウム、珪酸マグネシウム、クレー、タルク、シリカ、焼成カオリン等の体質顔料が挙げられる。これらは1種又は2種以上を使用することができる。
【0023】
上記中塗り塗膜は、上記ベース塗膜下の被塗装物のL値が75以下となる場合には、一般的塗膜形成方法における中塗り塗膜と同様に、例えば、上記有機系及び無機系の着色顔料並びに体質顔料から1種又は2種以上を用い、例えば、カーボンブラックと二酸化チタンとを主要顔料としたグレー系中塗り塗料とすることができる。
上述の電着塗料、中塗り塗料及びカラーベース塗料の調製方法としてはそれぞれ特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0024】
本発明の塗膜形成方法においては、上記被塗装物に上述の光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料を塗布する。
上記光干渉性薄片顔料は、一般的に、塗膜中に存在すると、入射光の角度又は見る角度の変化に応じて、例えば、金色〜緑色、緑色〜深紅色、緑色〜青色、銀色〜緑色、金色〜銀色、青色〜赤色等の各色の間で塗膜の色が次第に移り変わって光干渉多色性を呈するように観察される。上記光干渉性薄片顔料は、例えば、上述の特許3056253号公報において開示されているように、干渉構造を含む多層構造を有する薄膜小板であって、各小板は、外側面の最長寸法と厚さとが少なくとも2:1、好ましくは5:1のアスペクト比を有し、どの面についても2〜200μmの最大寸法を有するものが好ましい。
【0025】
上記干渉構造は一般に、金属反射層、誘電体層及び半透明金属層をそれぞれ少なくとも一つずつ有する。上記干渉構造としては、例えば、(1)半透明金属層、誘電体層、金属反射層、誘電体層及び半透明金属層とこの順に積層された構造(a)をなすものであって、上記各誘電体層及び上記各半透明金属層は材料が同じであり厚さに関して上記金属反射層を挟んで対称的であるもの、(2)上記積層構造(a)であって上記2つの誘電体層が厚さに関して非対称であるもの、(3)金属反射層、誘電体層及び半透明金属層とこの順に積層された構造をなすもの等が挙げられ、本発明においては上記(1)の構造が好ましい。
【0026】
上述の光干渉多色性は、上記誘電体層を所望の色に応じて適当な光学的厚さ、例えば、400nmの設計波長で2/4波長厚さから700nmの設計波長で6/4波長厚さにまで堆積させることにより得られる。
上記金属反射層としては、例えばアルミニウムが使用されることが多いが、金、銅、銀等も使用され得る。上記半透明金属層は、クロム、ニッケル又はインコネル等の金属から形成することができる。上記誘電体層は、二酸化ケイ素、フッ化マグネシウム又は酸化アルミニウム等から形成することができる。
【0027】
上記光干渉性薄片顔料は、柔軟性ウエブの上に上述の半透明金属層、誘電体層及び金属反射層を施し、この多層構造から上記ウエブを分離して顔料フレ−クを形成することにより製造される。上記ウエブは一般的に重合体物質、例えば、ポリビニルアルコ−ル、ポリエチレンテレフタレ−ト等からなる。上記分離を行うために、公知の方法により上記ウエブ上に剥離層を堆積させてから上記干渉構造を施すことが好ましい。上記剥離層としては、例えば、アクリル樹脂、セルロ−スプロピオネ−ト、ポリビニルピロリジン・ポリビニルアルコ−ル、ポリ酢酸ビニル等の有機溶剤溶解性又は水溶性の塗膜等が挙げられる。上記分離工程においては、熱及び/又は溶媒を使用することができ、例えば、上記ウエブをなす物質の溶解性に応じた水又は有機溶剤の適当な溶媒に上記ウエブを溶解させることにより分離を行うことができる。
【0028】
上記干渉構造を有する多層構造は一般的に、上記ウエブから分離されると、壊れて不規則な形状や大きさを有するフレ−クになる。通常、これらのフレ−クは被覆組成物用に必要な大きさにするために更に処理することが好ましい。上記処理は、公知の技術、例えば超音波撹拌、粉砕又はすりつぶし等により行うことができる。
必要な大きさに処理された上記光干渉性薄片顔料は、顔料に望まれる特定の性質にもよるが、例えば、上記各半透明金属層が50〜150Å、好適には約70Åの厚さを有し、上記金属反射層が80〜500Å、好適には約100Åの厚さを有し、上記各誘電体層が特定設計波長の半波長の倍数の厚さを有することが好ましい。
【0029】
このような光干渉性薄片顔料としては、例えば、フレックスプロダクツ社(Flex Products, Inc.)製のクロマフレア(ChromaFlair)シリーズ等が挙げられる。上記クロマフレアシリーズには、例えば、ゴールド/シルバー080、レッド/ゴールド000、マジェンダ/ゴールド330、パープル/オレンジ300、ブルー/レッド280、シアン/パープル230、グリーン/パープル190、シルバー/グリーン060等がある。
【0030】
本発明においては、上記光干渉性薄片顔料として、BASF社製のパリオクロムマジックシリーズ、例えば、マジックゴールドL−1400、マジックパープルL−5520、マジックレッドL−4420等を用いることもできる。
本発明に用いることができる上記光干渉性薄片顔料としては、特開平2−173162号公報に開示されているように、好ましくは離型層を付着させた担体上にプラズマによりフィルムを形成させて製造される顔料フレーク、例えば、スペクトルの可視域を反射又は吸収し、波長2〜4μmの光を透過させるよう設計され、SiO2 層とこれと交互に配設したSi層とから成る多層フィルムや、SiO2 /TiO2 多層体等の顔料フレークを挙げることもできる。
【0031】
本発明に用いることができる上記光干渉性薄片顔料としては、また、特開平3−120351号公報に開示されているように、光の干渉によって所望の色を生じさせ得る厚さの干渉被膜が表面にコーティングしてある基材を粉末化又は小片化したプラスチック成形用添加材を用いることもでき、例えば、雲母又はアルミニウム箔等の基材の表面に、ZrO2 、ZnS、CeO2 、TiO2 等からなる高屈折膜、MgF2 、AlF2 ・3NaF、SiO2 、ThF4 、Al23 等からなる低屈折膜及び上記高屈折膜からなる3層の干渉被膜を形成し又は上記3層の干渉被膜を更に複数回重ねて形成したものを挙げることもできる。
【0032】
上記光干渉性薄片顔料の配合量は、上記ベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)として3〜15重量%であることが好ましい。3重量%未満であると、PWCが低くなりすぎて、上記光干渉性薄片顔料に基づく光干渉多色性が充分に発揮されにくく,15重量%を超えると、PWCが高くなりすぎて、塗料の流動性や作業性が低下したり、塗膜の物性が劣る場合がある。より好ましくは、3.5〜12重量%である。
PWCが比較的高い場合には、ベース塗膜下の下地の明度にもよるが、一般的に、得られる塗膜は濃色となり、光干渉多色性がより明確に現れる傾向にあり、PWCが比較的低い場合には、ベース塗膜が淡色となって下地色の透過性が高くなり、光干渉多色性が淡色化して現れる傾向にあるが、ニーズに合わせてこれら意匠性を選択することができる。
【0033】
本発明において用いるベース塗料としては上記光干渉性薄片顔料を含有するものであれば特に限定されず、例えば、更に、塗膜形成性樹脂、硬化剤、顔料及びその他の添加剤を含有するものを挙げることができる。
上記塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらは通常、アミノ樹脂及び/又はブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。上記塗膜形成性樹脂は、顔料分散性や作業性の点から、アクリル樹脂及び/又はポリエステル樹脂並びにメラミン樹脂の組み合わせが好ましい。
【0034】
上記塗膜形成性樹脂は、上記ベース塗料の固形分100重量部に対し、固形分として20〜80重量部であることが好ましい。20重量部未満であると、塗膜が硬く脆くなり、塗膜物性に劣ることがあり、80重量部を超えると、作業性、塗膜の外観や物性が低下することがある。
【0035】
上記ベース塗料に用いる硬化剤としては、アミノ樹脂、ブロックイソシアネート樹脂、エポキシ化合物、アジリジン化合物、カルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物等が好ましいものとして挙げられ、混合物を用いることができる。得られた塗膜の諸性能、コストの点からアミノ樹脂及び/又はブロックイソシアネート樹脂が特に好ましく用いられる。
【0036】
上記硬化剤の含有量は、上記塗膜形成性樹脂の固形分総量に対して固形分として15〜100重量%であることが好ましい。15重量%未満であると、硬化性が不充分となりやすく、100重量%を超えると、硬化膜が堅くなりすぎ脆くなる場合がある。
【0037】
上記アミノ樹脂としては、特に限定されるものではなく、メチル化メラミン樹脂、ブチル化メラミン樹脂又はメチル、ブチル混合型メラミン樹脂を用いることができる。例えば、三井化学株式会社から市販されている「サイメル−303」、「サイメル254」等の「サイメルシリーズ」;及び「ユーバン226」、「ユーバン20N60」等の「ユーバンシリーズ」;住友化学工業株式会社から市販されている「スミマールシリーズ」等が挙げられる。
【0038】
上記アミノ樹脂の含有量は、上記塗膜形成性樹脂の固形分に対して固形分として15〜100重量%とすることが好ましく、更に好ましくは20〜100重量%である。15重量%未満であると、硬化性が不充分となり、100重量%を超えると、硬化膜が堅くなりすぎ脆くなる。
【0039】
上記ブロックイソシアネート樹脂としては、ポリイソシアネートに活性水素を有するブロック剤を付加させることによって得られ、加熱によりブロック剤が解離してイソシアネート基が発生し、上記塗膜形成性樹脂中の官能基と反応し硬化するものが挙げられる。
【0040】
上記ブロックイソシアネート樹脂は、特に限定されず、代表的なポリイソシアネート類としては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロヘキサンジイソシアネート等の脂肪族環式イソシアネート;キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチル等の脂環族イソシアネート;これらのヌレート体等の多量体及び混合物を用いることができる。
【0041】
上記ブロック剤としては、例えば、ハロゲン化炭化水素、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、フルフリルアルコール、アルキル基置換フルフリルアルコール、ベンジルアルコール等の脂肪族、芳香族又は複素環式アルコール;メチルエチルケトンオキシム、メチルイソブチルケトンオキシム、アセトンオキシム、シクロヘキサンオキシム等のオキシム類;カプロラクタム等を挙げることができる。これらのうち、オキシム類、アルコール類が好ましい。上記ベース塗料においては更に、上記ブロック剤を解離させるための触媒を用いることができる。
【0042】
上記ブロックイソシアネートの配合量は、上記塗膜形成性樹脂の固形分に対して、20〜100重量%であることが好ましく、40〜100重量%であることがより好ましい。上記範囲外では、硬化が不足する。
【0043】
本発明に用いるベース塗料に使用し得る顔料としては、上述の光干渉性薄片顔料と併用して他の光輝性顔料を含むことができ、例えば、上述の被塗装物に関して述べた光輝性顔料が挙げられる。これらの他の光輝性顔料を含むことにより、上記光干渉性薄片顔料と相俟って多様な意匠性を呈することができる。
【0044】
上記光干渉性薄片顔料以外の他の光輝性顔料としては、形状は特に限定されず、更に着色されていても良いが、例えば、平均粒径(D50)が2〜50μmであり、厚さが0.1〜5μmであるものが好ましい。また、平均粒径が10〜35μmであるものが光輝感に優れ、更に好適に用いられる。
【0045】
上記光干渉性薄片顔料以外の他の光輝性顔料は、上記光干渉性薄片顔料との合計量が本発明のベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)として3〜23重量%となるように配合することが好ましい。
上記光干渉性薄片顔料/上記他の光輝性顔料の配合量は、重量比で100/0〜50/50であることが好ましい。上記他の光輝性顔料、なかでもマイカ粉等の偏平顔料の配合量が上記上限を超えると、光輝感過剰等、仕上がり外観に劣る場合がある。
【0046】
上記ベース塗料は、上述の光干渉性薄片顔料と併用して、上述の被塗装物に関して述べたような、有機系や無機系の着色顔料、更に、体質顔料を含有してもよい。これらは1種又は2種以上を使用してもよい。
【0047】
これらのうち、上記有機系着色顔料を上記光干渉性薄片顔料と併用することにより、光干渉多色性を抑えた意匠性を呈することができ、これにより意匠性の多様さを拡大して、使用者のニーズに合わせて選択の幅を広げることができる。
上記併用の方法としては特に限定されないが、マンセル表示において、ハイライト色とシェード色との間で色が移り変わって観察される光干渉多色性を呈する光干渉性薄片顔料に、上記ハイライト色とシェード色との間の何れかの色相を単独で呈する着色顔料を少なくとも1種類併存させる場合は、全体として、上記着色顔料の単独で呈する色が強調される一方、上記光干渉性薄片顔料が単独で呈する光干渉多色性の程度を抑えることができるので、好ましい。
【0048】
上記併用における上記着色顔料の配合量は、固形分として、上記光干渉性薄片顔料100重量部に対し1〜30重量部であることが好ましく、上述のベース塗料の固形分100重量部に対し0.2〜5.0重量部であることが好ましい。これらの下限未満では、上記着色顔料を添加することによる意匠性の多様化が効果的に実現されないことがあり、上限を超えると、上記光干渉性薄片顔料に基づく光干渉多色性が抑制されすぎ、意匠性の多様化に効率的ではない。
【0049】
上記併用としては、例えば、上記光干渉性薄片顔料として、単独で上記ハイライト色としてグリーンを呈し、上記シェード色としてパープルを呈するクロマフレア グリーン/パープル(フレックスプロダクツ社製)を用い、上記有機系着色顔料として、色相環においてグリーンとパープルとの間の色であるブルーを単独で呈するファーストゲンブルー10GN(大日本インキ化学工業社製)を併わせて用いる場合において、全体の色調としては、後者が単独で呈するブルーが強調される一方、前者が本来有する光干渉多色性の程度が抑えられる。
【0050】
上記光干渉性薄片顔料、他の光輝性顔料及びその他の全ての顔料を含めた上記ベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)は、一般的には3〜50重量%であり、好ましくは4〜40重量%である。50重量%を超えると、塗膜物性に劣る。
【0051】
本発明に用いるベース塗料は、上記各成分の他に添加剤を含むものであってもよい。上記添加剤としては特に限定されないが、例えば、塗装作業性を確保するために、粘性制御剤を挙げることができる。上記粘性制御剤としては特に限定されないが、一般にチクソトロピー性を示すものを使用することができ、例えば、架橋性又は非架橋性重合体微粒子、脂肪酸アマイドの膨潤分散体、アマイド系脂肪酸、長鎖ポリアミノアマイドのリン酸塩等のポリアマイド系のもの;酸化ポリエチレンのコロイド状膨潤分散体等のポリエチレン系のもの;有機酸スメクタイト粘土、モンモリロナイト等の有機ベントナイト系のもの;ケイ酸アルミ、硫酸バリウム等の無機顔料;顔料の形状により粘性が発現する偏平顔料等を挙げることができる。
上記添加剤としては、上記粘性制御剤の他に、塗料に通常添加される添加剤、例えば、表面調整剤、酸化防止剤、消泡剤等を配合してもよい。これらの配合量としては、当業者が通常用いる量を使用する。
【0052】
本発明のベース塗料の全固形分量は、10〜70重量%であることが好ましい。10重量%未満であると、粘性が低すぎてなじみやムラ等の外観不良が発生し、70重量%を超えると、粘性が高すぎて塗膜外観が低下するおそれがある。好ましくは、15〜60重量%である。
【0053】
上記ベース塗料の塗料形態としては、水溶性、水分散性又はエマルションからなる水性型のほか、有機溶剤型、非水分散型、粉体型の何れでもよい。
本発明のベース塗料の製造方法としては特に限定されず、例えば、顔料等の配合物を所望により顔料分散樹脂等を用いて分散する等の当業者に周知の方法を使用することができる。
【0054】
本発明の塗膜形成方法においては、上述の被塗装物に上記ベース塗料を塗布した後、クリヤー塗料を塗布する。
上記クリヤー塗料としては特に限定されず、例えば、塗膜形成性樹脂、硬化剤及びその他の添加剤からなるものを挙げることができる。
上記塗膜形成性樹脂としては特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられ、これらはアミノ樹脂及び/又はブロックイソシアネート樹脂等の硬化剤と組み合わせて用いられる。透明性又は耐酸エッチング性等の点から、アクリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂とアミノ樹脂との組み合わせ、又は、カルボン酸・エポキシ硬化系を有するアクリル樹脂及び/若しくはポリエステル樹脂等を用いることが好ましい。
【0055】
本発明の塗膜形成方法においては、上記クリヤー塗料は、好ましくは上述のベース塗料を塗装後、未硬化の状態で塗装するので、層間のなじみや反転、タレ等を防止するべく、上記ベース塗料について記載した粘性制御剤を含有することが好ましい。上記粘性制御剤の添加量は、上記クリヤー塗料の樹脂固形分100重量部に対して0.01〜10重量部であることが好ましい。0.01重量部未満であると、粘性制御効果が得られず、タレ等の不具合を招くおそれがあり、10重量部を超えると、外観が低下する傾向にある。より好ましくは、0.02〜8重量部であり、更に好ましくは、0.03〜6重量部である。
【0056】
上記クリヤー塗料中の固形分含有量は、好ましくは30〜80重量%であり、より好ましくは40〜70重量%であるが、塗布時の固形分含有量としては、好ましくは25〜75重量%であり、より好ましくは30〜70重量%である。
【0057】
上記クリヤー塗料の塗料形態としては、水溶性、水分散性又はエマルションからなる水性型のほか、有機溶剤型、非水分散型、粉体型の何れでもよく、必要により、硬化触媒、表面調整剤等を用いることができる。
上記クリヤー塗料の調製方法としてはそれぞれ特に限定されず、例えば、従来公知の方法を用いることができる。
【0058】
上記中塗り塗料、上記カラーベース塗料、上記ベース塗料及び上記クリヤー塗料を塗布する方法としては、それぞれ特に限定されず、例えば、当業者に知られた方法を用いることができる。このような方法としては、例えば、通称「リアクトガン」と言われるエアー静電スプレー;通称「マイクロ・マイクロ(μμ)ベル」、「マイクロ(μ)ベル」、「メタベル」等と言われる回転霧化式の静電塗装機等を用いることにより行うことができる。好ましくは、回転霧化式の静電塗装機等を用いる方法である。
【0059】
上記被塗装物を2色以上に塗り分ける方法としては特に限定されず、例えば、基材に必要に応じ電着塗膜等を形成したものの片面全体に第1色を塗布した後、得られた塗膜のうち第1色を呈することとなる部分以外の部分に第2色を塗布し、更に必要に応じ第3色以下の色を呈することとなる部分に該当する色を重ね塗りする方法、又は、このように重ね塗りすることなく、該当する部分に各色を塗布する方法等が挙げられる。
【0060】
上記ベース塗料を自動車車体等に対して塗装する場合には、意匠性を高めるために、エアー静電スプレーによる多ステージ塗装、好ましくは2ステージで塗装するか、又は、エアー静電スプレーと上記の回転霧化式の静電塗装機とを組み合わせた塗装方法により行うことが好ましい。
【0061】
上記クリヤー塗料は、上記光干渉性薄片顔料が上記ベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)として6重量%を超える場合には、少なくとも2回塗布する。1回以下では、上述のように多層構造を有する光干渉性薄片顔料が、約1〜100μmもの厚さを有するため、仕上がり塗膜の表面上に頭出しの状態となり、仕上がり外観や塗膜物性に劣る。本発明において、上記頭出しの状態を解消するために、クリヤー塗料を2回塗布すれば足りる。3回以上では、塗布回数に見合った効果が得られないので不経済であって工程の簡便化に反するのみならず、着色する等仕上がり外観がかえって劣る場合がある。
【0062】
上記クリヤー塗料は、上記光干渉性薄片顔料が上記ベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)として6重量%以下である場合には、少なくとも1回塗布する。上記光干渉性薄片顔料は上述のように比較的厚い形状を有するものであるが、上記PWCが6重量%以下である場合には、仕上がり塗膜の上に頭出しの状態とならないので、上記クリヤー塗料は1回塗布することで足り、これにより工程の簡便化を一層図ることができる。従って、2回以上塗布することも可能であるが、経済性や工程簡便化の点からその必要はない。
本発明においては、このように、上記光干渉性薄片顔料のPWCに応じて上記クリヤー塗料の塗布回数を選択することにより、平滑性等の優れた仕上がり外観と経済性や工程簡便化とを両立することができる。
【0063】
上記各塗膜の乾燥膜厚は、用途により変化するが、それぞれ、中塗り塗膜5〜45μm、カラーベース塗膜5〜35μm、ベース塗膜5〜35μmであり、クリヤー塗膜は、総膜厚として10〜80μmであり、1回の塗布によるクリヤー塗膜として25〜40μmである。これらの上限を超えると、鮮映性が低下したり、塗装時にムラ、流れ等の不具合が起こることがあり、下限を下回ると、下地の凹凸が隠蔽できず、膜切れが発生したりする。
【0064】
上記中塗り塗膜及び/又は上記カラーベース塗膜は、優れた意匠性と仕上がり外観を得る点で、上記ベース塗料を塗布する前に、100〜180℃、好ましくは120〜160℃で焼き付け硬化を行うことが好ましい。硬化時間は硬化温度により変化するが、120〜160℃で10〜60分間が適当である。
上記中塗り塗膜及び/又は上記カラーベース塗膜は、上記焼き付け硬化を行う前に、一定時間室温で放置することによって、水分や溶剤を揮散させ、塗膜を予め乾燥させてもよい。
【0065】
本発明においては、上記クリヤー塗料は、上記ベース塗膜を上記焼き付け条件により硬化させた後に塗布することもできるが、工程数の低減化の点から、上記ベース塗膜を硬化させることなく、ウエット・オン・ウエット方式により上に塗装してから一度に焼き付け硬化を行う、いわゆる2コート1ベーク法により行うことが好ましい。
上記ベース塗料を塗装後クリヤー塗料を塗装する前に、一定時間室温で放置、又は、例えば60〜100℃未満にて2〜10分間加熱することによって塗膜を予め乾燥させるプレヒート工程を施すこともでき、この工程を施すことにより高い架橋度の硬化塗膜が得られる。
【0066】
上記クリヤー塗料塗装後の焼き付け硬化は、通常、100〜180℃にて行うことができ、これにより高い架橋密度の硬化塗膜が得られる。100℃未満であると、硬化が充分ではなく、180℃を超えると、塗膜が固く脆くなる。好ましくは、120〜160℃である。硬化時間は硬化温度により変化するが、120〜160℃で10〜60分間が適当である。
【0067】
このようにして得られる中塗り塗膜及び必要に応じてカラーベース塗膜、並びに、ベース塗膜及びクリヤー塗膜からなる膜厚の合計は、通常30〜300μmである。300μmを超えると、冷熱サイクル等の膜物性が低下し、30μm未満であると、膜自体の強度が低下する。好ましくは、50〜250μmである。
【0068】
本発明の塗膜形成方法は、少なくとも2色に塗り分けられた被塗装物であって、これらの色のうち何れかの2色についてL値の差が15〜70である被塗装物に、光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料を塗布する工程を含むものであるので、上記塗り分けられた被塗装物に基づくトーンの異なる色調、及び、上記光干渉性薄片顔料に基づく多色に色が移り変わる意匠性を併有する優れた外観を呈する塗膜が得られ、多様な意匠性に対するニーズに応じることができる。
【0069】
本発明の塗膜形成方法は、また、上述のように予め少なくとも2色に塗り分けられた被塗装物に、上記ベース塗料を塗布する工程、及び、クリヤー塗料を塗布する工程を含むものであるので、多色に塗り分けられた仕上がり塗膜を得る従来の塗膜形成方法のように、ベース塗料の塗布、クリヤー塗料の塗布及び焼き付け硬化を繰り返して多色性を出すために色を重ね塗りする工程が不要となることから、従来よりも簡便な工程により行うことができる。
本発明の塗膜形成方法は、このような有利な効果を奏するので、特にツートーンカー等の多色に塗り分けられた自動車車体の塗装に好適に適用される。
【実施例】
【0070】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらにより限定されるものではない。部、%は、それぞれ重量部、重量%を意味する。
製造例 ベース塗料の製造
熱硬化性アクリル樹脂(水酸基価45、酸価15mgKOH/g、数平均分子量21000、固形分50%、日本ペイント社製)126.0部、ブチル化メラミン樹脂(ユーバン20N60、固形分60%、三井東圧社製)45.0部、アクリル系表面調整剤0.2部、架橋樹脂粒子(構造粘性付与剤、固形分20%、日本ペイント社製)35.0部、n−ブタノール2.2部、トルエン2.4部及び顔料を混合し、ベース塗料を製造した。顔料としては、光干渉性薄片顔料(クロマフレア グリーン/パープル(GR/P)#190、フレックスプロダクツ社製)をベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)として6.0重量%、黒色顔料(ラーベン5000ウルトラ3、コロンビア社製カーボンブラック)をPWC0.3重量%及び青色顔料(ファーストゲンブルー10GN、大日本インキ化学工業社製)をPWC0.7重量%用いた。
【0071】
実施例、比較例
(塗膜形成方法)
1)20cm×30cm、厚さ0.8mmのダル鋼板をリン酸亜鉛処理した後、カチオン電着塗料(パワートップU−50、日本ペイント社製)を乾燥膜厚20μmとなるように塗布し160℃で30分間加熱硬化させた。その上に第1色の中塗り塗料を乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装し、室温で約3分間放置後、140℃で20分間加熱して硬化させ、L値を測定した。得られた塗膜の半分に、更に第2色の中塗り塗料を乾燥膜厚30μmとなるようにスプレー塗装し、室温で約3分間放置後、140℃で20分間加熱し硬化させて、L値を測定し、下地塗膜を得た。
用いた中塗り塗料は、実施例1について第1色としてグレー色中塗り塗料(オルガP−2グレー、日本ペイント社製)及び第2色としてダークグレー色中塗り塗料(オルガP−2ダークグレー、日本ペイント社製)、実施例2について第1色としてブラック色中塗り塗料(オルガP−2ブラックグレー、日本ペイント社製)及び第2色としてグレー色中塗り塗料(オルガP−2グレー、日本ペイント社製)、比較例1について第1色としてライトグレー色中塗り塗料(オルガP−2ライトグレー、日本ペイント社製)及び第2色としてホワイト色中塗り塗料(オルガP−2ホワイト中塗、日本ペイント社製)、比較例2について第1色としてブラック色中塗り塗料(オルガP−2ブラックグレー、日本ペイント社製)及び第2色としてホワイト色中塗り塗料(オルガP−2ホワイト中塗、日本ペイント社製)であった。L値は、ミノルタCR−300(ミノルタ社製)を用いて測定し、表1に示した。
【0072】
2)この下地塗膜を水平に設置したものと垂直に設置したもののそれぞれについて、製造例で得たベース塗料を乾燥膜厚15μmとなるように内部印加型のメタベルを用い、印加電圧−60kV、回転数25000rpm、シェービングエアー圧3.5kg/cm2 、吐出量250cc/分で2ステージ塗装した。2回の塗布の間に、1.5分間のインターバルを行い、2回目の塗布後に7分間セッティングを行った。
3)次いで、ウエット・オン・ウエットでクリヤー塗料(スーパーラック O−381クリヤー、日本ペイント社製酸・エポキシ硬化型アクリル樹脂系塗料)を、乾燥膜厚が30μmとなるようにマイクロマイクロベルを用いて、印加電圧−90kV、回転数25000rpm、シェービングエアー圧1.5kg/cm2、吐出量280cc/分で、1ステージの回転霧化型静電塗装をし、7分間セッティングした。
4)最後に、得られた塗装板を乾燥機で140℃で20分間焼き付けを行い、評価用塗膜を得た。
【0073】
(評価)得られた評価用塗膜について、下記評価を行った。結果を表1に示す。
1.外観
評価用塗膜として上述の下地塗膜を水平に設置したものと垂直に設置したもののそれぞれについて上述のようにベース塗料及びクリヤー塗料を塗布し焼き付けたものを用意し、それぞれの外観をウェーブスキャン(ビッグケミー社製)のG値(SW)により評価した。数値の小さいもの程、良好な外観が得られたことを示す。
【0074】
2.光干渉多色性
下地塗膜の第1色塗布部分及び第2色塗布部分の各仕上がり塗膜について、目視により光干渉多色性を下記の基準に従って評価した。
◎:充分に濃色の光干渉多色性を呈する。
○:濃色の光干渉多色性を呈する。
△:やや濃色の光干渉多色性を呈する。
×:淡色の光干渉多色性を呈する。
【0075】
3.塗り分けに基づく多色性
下地塗膜の塗り分けに基づく仕上がり塗膜の多色性について、目視により下記の基準に従って評価した。
◎:多色性が明瞭である。
△:多色性の明瞭さがやや低い。
×:多色性が明瞭でない。
【0076】
【表1】

【0077】
表1から、下地塗膜を塗り分けた色のL値の差が15未満である比較例1及び70を超える比較例2の何れにおいても、上記塗り分けによる多色性や光干渉多色性に劣り、意匠性が不充分であるが、L値の差が15〜70の範囲内である実施例では、上記塗り分けによる多色性や光干渉多色性ともに良好で意匠性に優れていることが分かった。
【0078】
本発明の塗膜形成方法は、上述の構成を有することから、上述の光干渉性薄片顔料を用い、多色に塗り分けられた塗膜を得る塗装系において、光干渉多色性及び塗り分けによる多色性を有する優れた意匠性と仕上がり外観とを両立する塗膜を幅広い範囲で且つ簡便な工程で提供することができるので、特に自動車車体の塗装において、意匠性に対する顧客ニーズが多様であっても幅広く応じることができ、コスト削減等経済性にも優れる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光干渉性薄片顔料を含有するベース塗料を被塗装物に塗布する工程、及び、クリヤー塗料を塗布する工程を含む塗膜形成方法であって、
前記被塗装物は、少なくとも2色に塗り分けられたものであり、前記被塗装物の色のうち何れかの2色についてL値の差が15〜70であることを特徴とする塗膜形成方法。
【請求項2】
L値の差は、15〜60である請求項1記載の塗膜形成方法。
【請求項3】
被塗装物は、L値が75以下である請求項1又は2記載の塗膜形成方法。
【請求項4】
光干渉性薄片顔料は、ベース塗料の固形分に対する顔料重量濃度(PWC)として6重量%以下であり、
クリヤー塗料は少なくとも1回塗布するものである請求項1、2又は3記載の塗膜形成方法。
【請求項5】
クリヤー塗料は、1回の塗布により乾燥膜厚が25〜40μmとなるように塗布するものである請求項4記載の塗膜形成方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の塗膜形成方法によって形成されてなる塗膜を有する基材。

【公開番号】特開2011−251287(P2011−251287A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−207917(P2011−207917)
【出願日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【分割の表示】特願2001−28124(P2001−28124)の分割
【原出願日】平成13年2月5日(2001.2.5)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】