説明

塗膜補修方法および塗膜補修装置

【課題】良好な冷却性能を有し、塗膜の温度上昇を抑制し得る塗膜補修方法および塗膜補修装置を、提供する。
【解決手段】塗膜表面42に付着した異物の除去跡46を有する補修部位44を、ポリッシングによって平滑化するための研磨手段110と、ポリッシングされている補修部位44を冷却するための冷却機構160と、を有する塗膜補修装置100である。また、冷却機構160は、温度が低下しかつ露点状態にある冷却用エアーを、ポリッシングされている補修部位44に向かって噴射する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗膜補修方法および塗膜補修装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塗装工程において、塗膜表面に付着している異物が発見されると、手直し補修が行われる。手直し補修は、例えば、サンディングペーパを用いて異物を除去する工程およびポリッシャによって異物の除去跡を平滑化する研磨工程を有する。研磨工程においては、ポリッシャによる研磨の際に生じる摩擦熱により、塗膜表面の温度が50〜60℃まで上昇し、塗膜が軟化することで、研磨作業の効率が低下する。そのため、塗膜表面を冷却しながらポリッシングすることで、塗膜の軟化を防ぎ、研磨作業の効率低下を抑制している(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−26475号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、塗膜表面の冷却は、ポリッシャの排気エアーや保冷材を適用しており、冷却性能に限界があり、研磨作業が長引くと、塗膜表面の温度上昇を抑制することが難しく、例えば、研磨作業を一旦停止し、塗膜表面の温度低下を待つ必要があり、全体的な作業時間を短縮化することが困難である。
【0005】
本発明は、上記従来技術に伴う課題を解決するためになされたものであり、良好な冷却性能を有し、塗膜の温度上昇を抑制し得る塗膜補修方法および塗膜補修装置を、提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための本発明の一様相は、塗膜表面に付着した異物の除去跡を有する補修部位を、ポリッシングして平滑化するための塗膜補修方法である。本塗膜補修方法においては、ポリッシング中において、温度が低下しかつ露点状態にある冷却用エアーを、ポリッシングされている前記補修部位に向かって噴射する。
【0007】
上記目的を達成するための本発明の別の一様相は、塗膜表面に付着した異物の除去跡を有する補修部位を、ポリッシングによって平滑化するための研磨手段と、ポリッシングされている前記補修部位を冷却するための冷却機構と、を有する塗膜補修装置である。また、前記冷却機構は、温度が低下しかつ露点状態にある冷却用エアーを、ポリッシングされている前記補修部位に向かって噴射する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一様相に係る塗膜補修方法および別の一様相に係る塗膜補修装置によれば、補修部位に噴射される冷却用エアーは、低温かつ露点状態にあり、補修部位との伝熱による冷却機能に加え、含まれている水分の蒸発作用(蒸発熱)による冷却機能を備えており、良好な冷却性能を有するため、補修部位のポリッシングによる摩擦熱を除去し、補修部位の温度上昇を確実に抑制することができる。つまり、良好な冷却性能を有し、塗膜の温度上昇を抑制し得る塗膜補修方法および塗膜補修装置を、提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態1に係る塗膜補修装置を説明するための概略図である。
【図2】図1に示されるポリッシャを説明するための側面図である。
【図3】実施の形態1に係る塗膜補修方法の除去工程を説明するための断面図である。
【図4】除去工程完了時における塗膜表面を説明するための断面図である。
【図5】除去工程に続く、研磨工程を説明するための断面図である。
【図6】研磨工程における塗面の温度変化を説明するためのグラフである。
【図7】実施の形態2に係る塗膜補修装置を説明するための概略図である。
【図8】実施の形態3に係る塗膜補修装置を説明するための側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1は、実施の形態1に係る塗膜補修装置を説明するための概略図である。
【0012】
実施の形態1に係る塗膜補修装置100は、塗装完了後の塗膜表面42に付着した異物の除去跡46を有する補修部位44を、ポリッシングによって平滑化するためのポリッシャ(研磨手段)110と、ポリッシングされている補修部位44を冷却するための冷却機構160と、を有する。
【0013】
被塗装物10は、自動車のボディであり、例えば、塗装前に前処理(脱脂および化成処理)が施されている。塗膜は、下塗り塗膜20、中塗り塗膜30および上塗り塗膜40からなる。下塗り塗膜20は、電着塗装や粉体塗装によって形成され、被塗装物10と塗膜との密着性を向上させる機能を有する。下塗り塗料は、例えば、カチオン型電着用塗料や、エポキシ系やポリエステル系を主要樹脂とする粉体塗料である。中塗り塗膜30は、エアスプレーやエアレススプレーや静電塗装によって形成され、下塗り塗膜の欠陥を補うと共に上塗り仕上がりの外観向上のための表面調整の機能を有する。中塗り塗料は、例えば、溶剤型、水系、非水系、ハイソリッド型などの塗料である。
【0014】
上塗り塗膜40は、エアスプレーやエアレススプレーや静電塗装によって形成され、例えば、美観の付与と環境に対する耐久性(耐候性、耐薬品性、耐磨耗性など)を付与する機能を有する。上塗り塗料は、耐傷付き性を向上させた塗料からなり、住友スリーエム社製自己治癒性クリヤー#200が挙げられる。なお、上塗り塗料は、ソリッドカラー塗料、メタリック塗料、通常のクリヤー塗料、これらの組み合わせを、使用することも可能である。また、塗膜は3層構造に限定されない。
【0015】
異物は、比較的小さなゴミやホコリである。除去跡46は、異物を除去する際に、例えば、サンディングペーパによって形成された傷である。
【0016】
冷却機構160は、外部エアー配管系165、調整装置170および内部エアー配管系150を有し、温度が低下しかつ露点状態にある冷却用エアーを、ポリッシングされている補修部位44に向かって噴射するために使用される。外部エアー配管系165は、外部エアー源190から供給される高圧の(圧縮された)冷却用エアーを、調整装置170に導入するために使用される。
【0017】
調整装置170は、冷媒や電気を使用しないボルテックスチューブの原理を応用した冷却装置から構成されており、ポリッシャ110と外部エアー源190との間の外部エアー配管系165の途中に配置され、冷却用エアーの温度を低下させることによって、冷却用エアーを露点状態とするために使用される。露点状態は、冷却用エアーの水蒸気量が飽和となり、結露(凝結)を生じる状態である。内部エアー配管系150は、ポリッシャ110内部に配置され、調整装置170を通過した冷却用エアーを、ポリッシングされている補修部位44に導入するために使用される。
【0018】
塗膜補修装置100においては、上記のように、補修部位44に噴射される冷却用エアーは、低温かつ露点状態にあり、補修部位44との伝熱による冷却機能に加え、含まれている水分の蒸発作用(蒸発熱)による冷却機能を備えており、良好な冷却性能を有するため、補修部位44のポリッシングによる摩擦熱を除去し、補修部位44の温度上昇を確実に抑制することができる。
【0019】
そのため、例えば、ポリッシングの対象が、耐傷付き性を向上させた塗料からなり、熱による軟化が生じ易い上塗り塗膜であっても、温度上昇が抑制され、塗膜の軟化を抑制されるので、適切かつ効率的なポリッシングが実施できる。また、冷却用エアーは、補修部位44に水分を補給することとなるため、ポリッシング中における塗膜表面42の乾燥を防ぐ効果も有する。
【0020】
次に、ポリッシャ110を詳述する。
【0021】
図2は、図1に示されるポリッシャを説明するための側面図である。
【0022】
ポリッシャ110は、グリップ120、本体部130、研磨部140および内部エアー配管系150を有する。グリップ120は、作業者によって把持するために使用され、外部エアー配管系165に接続されるコネクタ122およびトリガ124を有する。
【0023】
本体部130は、コネクタ122から導入される冷却用エアーによって作動する駆動源であるエアーモータ132を有する。つまり、冷却用エアーが、ポリッシャ110(エアーモータ132)の作動用エアーを兼用しているため、冷却用エアーを供給するための独立した機構が不要となる。なお、グリップ120のトリガ124は、作業者によって操作され、エアーモータ132の回転状態を調整するために使用される。
【0024】
研磨部140は、バックアップパッド142、バフパッド144およびウールバフ(研磨布)146を有する。バックアップパッド142は、貫通孔を有し、エアーモータ132の出力軸に接続されている。バフパッド144は、バックアップパッド142の貫通孔と位置合わさせた貫通孔を有し、バックアップパッド142に固定される。
【0025】
ウールバフ146は、補修部位44をポリッシングするために使用され、バフパッド144に交換自在に装着されている。ウールバフ146は、バックアップパッド142およびバフパッド144によって支持されており、バックアップパッド142およびバフパッド144を介し、エアーモータ132によって駆動され、回転自在である。ウールバフ146は、例えば、住友スリーエム社製SBSハードウールバフ5728である。
【0026】
内部エアー配管系150は、グリップ120のコネクタ122、エアーモータ132の冷却用エアー経路、バックアップパッド142の貫通孔およびバフパッド144の貫通孔を連絡している。したがって、コネクタ122からポリッシャ110に導入された冷却用エアーは、エアーモータ132を作動させた後、ウールバフ146に連通するバックアップパッド142の貫通孔およびバフパッド144の貫通孔を経由して、ウールバフ146に導入される。この場合、冷却用エアーが、補修部位44をポリッシングしているウールバフ146から塗膜表面42に直接噴射されるため、冷却効率を向上させることができる。
【0027】
バックアップパッド142およびバフパッド144の貫通孔は、中央部に位置することが好ましいが特に限定されない。また、貫通孔を複数設けることも可能である。さらに、貫通孔を設けず、バックアップパッド142およびバフパッド144の外側に、冷却用エアーを噴射するためのノズルを配置することも可能である。
【0028】
なお、塗膜を構成する塗料は、耐傷付き性を向上させた塗料に限定されない。また、ポリッシャ110の駆動源は、エアーモータに限定されず、電気モータを利用することも可能である。
【0029】
次に、実施の形態1に係る塗膜補修方法を説明する。
【0030】
図3は、実施の形態1に係る塗膜補修方法の除去工程を説明するための断面図、図4は、除去工程完了時における塗膜表面を説明するための断面図、図5は、除去工程に続く、研磨工程を説明するための概略図、図6は、研磨工程における塗面の温度変化を説明するためのグラフである。
【0031】
実施の形態1に係る塗膜補修方法は、概して、塗装完了後の塗膜表面42に付着した異物50を除去する除去工程と、異物50の除去跡46を有する補修部位44を、ポリッシングして平滑化する研磨工程と、を有し、研磨工程において、温度が低下しかつ露点状態にある冷却用エアーを、ポリッシングされている補修部位44に向かって噴射する。
【0032】
補修部位44に噴射される冷却用エアーは、低温かつ露点状態にあり、補修部位44との伝熱による冷却機能に加え、含まれている水分の蒸発作用(蒸発熱)による冷却機能を備えており、良好な冷却性能を有するため、補修部位44のポリッシングによる摩擦熱を除去し、補修部位44の温度上昇を確実に抑制することができる。
【0033】
詳述すると、除去工程においては、塗装完了後の塗膜表面42に付着した異物50(図3参照)を、サンディングペーパを用いて除去する。これにより、異物50は除去されるが,図4に示されるように、サンディングペーパによって形成された傷(除去跡)46が残ることになる。サンディングペーパの粒度は、例えば、#1500〜#2500である。異物50は、例えば、ナイフによって除去することも可能であり、この場合、除去跡は、ナイフによって形成された傷となる、
研磨工程においては、ポリッシャ110のグリップ120を把持する作業者によって、除去跡46を有する補修部位44に、ポリッシャ110のウールバフ146が位置決めされる。補修部位44又はウールバフ146に、微細な研磨粒子を含有するペースト状研磨剤を塗布する。研磨剤は、例えば、住友スリーエム社製フィニッシングコンパウンドPN13084である。
【0034】
グリップ120を把持しながらトリガ124を操作することで、ウールバフ146の回転数を適当な値にセットする。そして、ウールバフ146を回転させながら、図4に示されるように、除去跡46を有する補修部位44を中心に、その周辺も含めて満遍なく押し当てる。ウールバフ146は、補修部位44との間に研磨粒子が介在させながら、回転するので、補修部位44の除去跡46が平滑化される。
【0035】
一方、ウールバフ146の駆動源は、エアーモータ132であり、外部エアー配管系165を経由し、外部エアー源190からポリッシャ110のコネクタ122に導入された冷却用エアーよって作動される。冷却用エアーは、調整装置170によって温度および湿度が調整されており、温度が低下しかつ露点状態にあり、エアーモータ132を作動した後、ポリッシングされている補修部位44に向かって噴射される。これにより、補修部位44におけるポリッシングによる摩擦熱は、冷却用エアーと補修部位44との伝熱による冷却機能に加え、冷却用エアーに含まれている水分の蒸発作用(蒸発熱)による冷却機能によって除去され、補修部位44の温度上昇が確実に抑制される。
【0036】
例えば、図6に示されるように、実施の形態1に係る冷却用エアーを使用しない比較例の場合、塗膜表面42の温度は、作業時間の経過に従い、15秒程度で60℃に到達するが、実施の形態1においては、約35℃で維持することが可能である。そのため、耐傷付き性を向上させた塗料からなり、熱による軟化が生じ易い上塗り塗膜であっても、温度上昇が抑制され、補修部位44における塗膜の軟化を抑制されるので、適切かつ効率的なポリッシングが実施される。また、冷却用エアーは、補修部位44に水分を補給することとなるため、ポリッシング中における塗膜表面42の乾燥が防がれる。
【0037】
また、冷却用エアーは、ポリッシャ110の内部エアー配管系150を経由し、エアーモータ132を作動させた後、バックアップパッド142の貫通孔に導入される。バックアップパッド142の貫通孔は、バフパッド144の貫通孔と位置合せされている。したがって、冷却用エアーは、バックアップパッド142の貫通孔およびバフパッド144の貫通孔を経由して、ウールバフ146に導入される。その結果、冷却用エアーは、補修部位44をポリッシングしているウールバフ146から、塗膜表面42に直接噴射されるため、冷却効率が向上させることができる。なお、冷却用エアーがエアーモータ132の作動用エアーを兼用しているため、冷却用エアーを供給するための独立した機構が不要である。
【0038】
以上のように、実施の形態1に係る塗膜補修方法および塗膜補修装置おいては、補修部位に噴射される冷却用エアーは、低温かつ露点状態にあり、補修部位との伝熱による冷却機能に加え、含まれている水分の蒸発作用(蒸発熱)による冷却機能を備えており、良好な冷却性能を有するため、補修部位のポリッシングによる摩擦熱を除去し、補修部位の温度上昇を確実に抑制することができる。つまり、実施の形態1は、良好な冷却性能を有し、塗膜の温度上昇を抑制し得る塗膜補修方法および塗膜補修装置を、提供することができる。
【0039】
また、冷却用エアーがポリッシャ(エアーモータ)の作動用エアーを兼用しているため、冷却用エアーを供給するための独立した機構が不要となる。さらに、冷却用エアーが、補修部位をポリッシングするウールバフから塗膜表面に直接噴射されるため、冷却効率を向上させることができる。
【0040】
次に、実施の形態2を説明する。
【0041】
図7は、実施の形態2に係る塗膜補修装置を説明するための概略図である。
【0042】
実施の形態2は、冷却用エアーの温度を低下させかつ露点状態とするために使用される調整装置170の構成に関し、実施の形態1と概して異なり、図7に示される調整装置170は、温度計172、湿度計(測定手段)173、冷却装置174、加湿装置(加湿手段)176および温度制御装置(制御手段)178を有する。
【0043】
温度計172および湿度計173は、ポリッシャ110の内部エアー配管系150における冷却用エアーの噴射口近傍に配置され、冷却用エアーの温度および相対湿度を測定するために使用される測定手段である。温度計172および湿度計173の測定値は、水蒸気圧を算出し、当該水蒸気圧を飽和水蒸気圧とする温度(露点温度)を求めるために使用される。なお、露点温度は、露点温度によって直接測定することも可能である。
【0044】
冷却装置174は、外部エアー配管系165の途中に配置され、ポリッシャ110のコネクタ122の近傍に位置し、冷媒や電気を使用しないボルテックスチューブの原理によって、エアーモータに導入される冷却用エアーの温度を低下させるために使用される。
【0045】
加湿装置176は、外部エアー配管系165の途中に配置され、冷却装置174と外部エアー源190との間に位置し、外部エアー源190から供給される冷却用エアーの湿度を上昇させて、冷却装置174に導入するために使用される。加湿装置176は、例えば、ヒータと、水が貯蔵されたタンクとを有し、ヒータによって水を加熱することで、冷却用エアーの湿度を上昇させる水蒸気を発生させるように構成される。
【0046】
温度制御装置178は、温度計172、湿度計173および加湿装置176に連結されており、温度計172および湿度計173の測定値に応じて、加湿装置176を制御し、冷却用エアーの露点状態を維持するために使用される。例えば、相対湿度が100%の場合、冷却用エアーの露点温度は、冷却用エアーの温度と一致するため、冷却用エアーの露点温度が冷却用エアーの温度と一致するように、あるいは、冷却用エアーの相対湿度が100%となるように、冷却用エアーの湿度を上昇させる。
【0047】
したがって、外部エアー源においてその湿度が変動したり、外気湿度が低い場合であっても、補修部位に噴射される冷却用エアーの露点状態が確実に維持されるため、冷却性能を安定的に確保することが可能である。
【0048】
なお、実施の形態2に係る塗膜補修方法においては、補修部位に噴射される冷却用エアーの湿度あるいは露点温度に応じて、エアーモータに導入される冷却用エアーの湿度を上昇させ、冷却用エアーの露点状態を維持する。したがって、同様に、冷却性能を安定的に確保することが可能である。
【0049】
以上のように、実施の形態2においては、外部エアー源においてその湿度が変動したり、外気湿度が低い場合であっても、補修部位に噴射される冷却用エアーの露点状態が確実に維持されるため、冷却性能を安定的に確保することが可能である。
【0050】
次に、実施の形態3を説明する。
【0051】
図8は、実施の形態3に係る塗膜補修装置を説明するための側面図である。
【0052】
実施の形態3は、フード(保温手段)を有する点で、実施の形態1と概して異なり、図8に示されるフード180は、ポリッシャ110(エアーモータ132およびウールバフ146の周囲)の周囲を覆って、外気と断熱させるために使用され、例えば、断熱材を間に挟んだサンドイッチ構造を有する。したがって、冷却用エアーと外気との熱交換が抑制されるため、冷却性能(露点効果および冷却効果)を向上させることができる。
【0053】
なお、実施の形態3に係る塗膜補修方法においては、ポリッシャ110(エアーモータ132およびウールバフ146の周囲)の周囲をフード180によって覆って、外気と断熱させた状態で、冷却用エアーを、ポリッシングされている補修部位44に向かって噴射する。したがって、同様に、冷却性能を向上させることが可能である。
【0054】
以上のように、実施の形態3においては、冷却用エアーと外気との熱交換が抑制されるため、冷却性能(露点効果および冷却効果)を向上させることができる。
【0055】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲で種々改変することができる。例えば、被塗装物は自動車のボディに限定されない。また、補修対象の塗膜は、上塗り塗膜に限定されず、中塗り塗膜に適用することも可能である。さらに、バフは、ウールバフに限定されない。
【符号の説明】
【0056】
10 被塗装物、
20 下塗り塗膜、
30 中塗り塗膜、
40 上塗り塗膜、
42 塗膜表面、
44 補修部位、
46 除去跡、
50 異物、
100 塗膜補修装置、
110 ポリッシャ(研磨手段)、
120 グリップ、
122 コネクタ、
124 トリガ、
130 本体部、
132 エアーモータ、
140 研磨部、
142 バックアップパッド、
144 バフパッド、
146 ウールバフ、
150 内部エアー配管系、
160 冷却機構、
165 外部エアー配管系、
170 調整装置、
172 温度計、
173 湿度計(測定手段)、
174 冷却装置、
176 加湿装置(加湿手段)、
178 温度制御装置(制御手段)、
180 フード(保温手段)
190 外部エアー源。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塗膜表面に付着した異物の除去跡を有する補修部位を、ポリッシングして平滑化する際、温度が低下しかつ露点状態にある冷却用エアーを、ポリッシングされている前記補修部位に向かって噴射することを特徴とする塗膜補修方法。
【請求項2】
前記異物の除去跡を有する補修部位は、エアーモータによって駆動されるバフによって、ポリッシングされており、
前記冷却用エアーは、前記エアーモータを作動した後、ポリッシングされている前記補修部位に向かって噴射される
ことを特徴とする請求項1に記載の塗膜補修方法。
【請求項3】
前記補修部位に噴射される前記冷却用エアーの湿度あるいは露点温度に応じて、前記エアーモータに導入される前記冷却用エアーの湿度を上昇させ、前記冷却用エアーの露点状態を維持することを特徴とする請求項2に記載の塗膜補修方法。
【請求項4】
前記バフを支持しかつ前記エアーモータによって回転駆動されるパッドの貫通孔を経由して、前記冷却用エアーを、前記バフに導入することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の塗膜補修方法。
【請求項5】
前記エアーモータおよび前記バフの周囲を保温手段によって覆って、外気と断熱させた状態で、前記冷却用エアーを、ポリッシングされている前記補修部位に向かって噴射することを特徴とする請求項2〜4のいずれか1項に記載の塗膜補修方法。
【請求項6】
塗膜表面に付着した異物の除去跡を有する補修部位を、ポリッシングによって平滑化するための研磨手段と、
ポリッシングされている前記補修部位を冷却するための冷却機構と、を有し、
前記冷却機構は、温度が低下しかつ露点状態にある冷却用エアーを、ポリッシングされている前記補修部位に向かって噴射する
ことを特徴とする塗膜補修装置。
【請求項7】
前記研磨手段は、
前記補修部位をポリッシングする回転自在のバフと、
前記バフを回転駆動するためのエアーモータと、
前記冷却用エアーを前記エアーモータに導入する内部エアー配管系と、
を有することを特徴とする請求項6に記載の塗膜補修装置。
【請求項8】
前記冷却機構は、
前記補修部位に噴射される前記冷却用エアーの湿度あるいは露点温度を測定する測定手段と、
前記エアーモータに導入される前記冷却用エアーの湿度を上昇させる加湿手段と、
前記測定手段によって測定される前記湿度あるいは露点温度に応じて、前記冷却用エアーの露点状態が維持されるように、前記湿度調整手段を制御する制御手段と、
を有することを特徴とする請求項7に記載の塗膜補修装置。
【請求項9】
前記バフを支持しかつ前記エアーモータによって回転駆動されるパッドを有し、
前記パッドは、前記バフに連通する貫通孔を有し、
前記冷却用エアーは、前記貫通孔を経由して前記バフに導入される
ことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の塗膜補修装置。
【請求項10】
前記研磨手段の周囲を覆って、外気と断熱させる保温手段を有することを特徴とする請求項6〜9のいずれか1項に記載の塗膜補修装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−201337(P2010−201337A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−49523(P2009−49523)
【出願日】平成21年3月3日(2009.3.3)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】