説明

塗装システムおよびドア開閉用ロボットの開閉ハンド

【課題】走行装置を用いることなくドアの内側部の塗装を行うことが可能な塗装システムを提供する。
【解決手段】この塗装システム100は、車体120を搬送するコンベア10と、高さ位置H2に固定的に設置され、コンベア10による車体120の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体120のドア121の内部を少なくとも塗装する塗装用ロボット20と、高さ位置H2とは異なる高さ位置H3に固定的に設置されるとともに塗装用ロボット20と作業範囲がオーバーラップ可能なように構成され、コンベア10による車体120の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体120のドア121の開閉およびドア開放状態の保持を行うドア開閉用ロボット30とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、塗装システムおよびドア開閉用ロボットの開閉ハンドに関し、特に、ドア開閉用ロボットを備えた塗装システムおよび塗装システムにおけるドア開閉用ロボットの開閉ハンドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドア開閉用ロボットを備えた塗装システムが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、車体を搬送する車体搬送装置と、車体のドア(サイドドア)の開閉を行うとともに、ドアの内側部の塗装を行うドア開閉塗装用ロボットと、ドア開閉塗装用ロボットを車体の搬送方向に沿って走行可能に支持する走行装置とを備えた塗装システムが開示されている。この特許文献1による塗装システムでは、搬送される車体に伴って走行装置によりドア開閉塗装用ロボットを移動させながら、ドア開閉塗装用ロボットにより車両のドアを開放し、ドアの内側部の塗装を行い、ドアを閉めるように構成されている。なお、この特許文献1のように1台のロボットによりドアの内側部の塗装とドアの開閉とを行うように構成する場合には、ドアの開放状態を保持するための専用の治具を予め車体に取り付ける工程が必要となる。このため、従来では、専用の治具を用いることなくドアの開放状態を保持するために、ドアの開閉およびドア開放状態の保持を行うためのドア開閉用ロボットと、ドアの内側部の塗装を行うための塗装用ロボットとを個別に設ける構成も知られている。この場合には、塗装用ロボットとドア開閉用ロボットとの両方を走行装置により走行可能に構成する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2008/108401
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1による塗装システムでは、ドア開閉塗装用ロボットを走行させるための走行装置を設ける必要があるため、その分、塗装ブースの構造が複雑化および大型化するとともに、走行装置のメンテナンスも必要になるという問題点がある。また、従来知られている、塗装用ロボットとドア開閉用ロボットとを個別に設け、かつ、走行装置を用いる構成においても、上記特許文献1と同様、走行装置を設けることに起因する塗装ブースの複雑化および大型化ならびに走行装置のメンテナンスの必要性などの問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、走行装置を用いることなくドアの内側部の塗装を行うことが可能な塗装システムおよび塗装システムにおけるドア開閉用ロボットの開閉ハンドを提供することである。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明の第1の局面による塗装システムは、車体を搬送する車体搬送装置と、第1高さ位置に固定的に設置され、車体搬送装置による車体の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体のドア内部を少なくとも塗装する塗装用ロボットと、第1高さ位置とは異なる第2高さ位置に固定的に設置されるとともに塗装用ロボットと作業範囲がオーバーラップ可能なように構成され、車体搬送装置による車体の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体のドアの開閉およびドア開放状態の保持を行うドア開閉用ロボットとを備える。
【0008】
この第1の局面による塗装システムでは、上記のように、第1高さ位置に固定的に設置され、車体搬送装置による車体の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体のドア内部を少なくとも塗装する塗装用ロボットと、第1高さ位置とは異なる第2高さ位置に固定的に設置されるとともに塗装用ロボットと作業範囲がオーバーラップ可能なように構成され、車体搬送装置による車体の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体のドアの開閉およびドア開放状態の保持を行うドア開閉用ロボットとを設けることによって、塗装用ロボットおよびドア開閉用ロボットを移動させることなく車体のドア内部を塗装することができるので、走行装置を用いることなくドアの内側部の塗装を行うことができる。また、第1高さ位置に設置された塗装用ロボットの作業範囲と、第1高さ位置とは異なる第2高さ位置に設置されたドア開閉用ロボットとの作業範囲をオーバーラップさせることができるので、車体のドア内部の塗装作業とドア開放状態の保持動作とを容易に行うことができる。この結果、この第1の局面による塗装システムでは、走行装置を設ける必要がないので、走行装置のメンテナンス作業が不要になるとともに、塗装ブースの構造の簡素化および小型化を図ることができる。
【0009】
上記第1の局面による塗装システムにおいて、好ましくは、ドア開閉用ロボットは、水平多関節型のロボットである。このように構成することによって、水平多関節型のロボットに特徴的な水平方向におけるアームの折り畳みおよび展開によって、ドア開閉用ロボットの可動範囲を水平方向に広くすることができる。この結果、ドア開閉用ロボットを固定的に設置する構成においても、容易に、車体搬送装置による車体の搬送動作に追従して車体のドアの開閉動作およびドア開放状態の保持動作を行うことができる。
【0010】
この場合において、好ましくは、ドア開閉用ロボットは、ドア開閉用ロボットの手先位置が車体搬送装置により搬送される車体のドアの高さ位置と略等しくなる第2高さ位置に配置されている。このように構成すれば、水平多関節型のドア開閉用ロボットを水平方向に駆動させるだけで車体のドアの開閉動作を行うことができるので、水平多関節型のドア開閉用ロボットに鉛直方向の駆動軸を設ける必要がない。
【0011】
上記第1の局面による塗装システムにおいて、好ましくは、塗装用ロボットは、車両の塗装ブースの側壁の第1高さ位置に壁掛けで固定的に設置されるとともに、ドア開閉用ロボットは、車両の塗装ブースの側壁の第2高さ位置に壁掛けで固定的に設置されている。このように構成すれば、走行装置や塗装用ロボットおよびドア開閉用ロボットを支持するための支柱などを塗装ブース内に設ける必要がないので、車両から塗装ブースの側壁までの距離を小さくすることができる。その結果、塗装ブース全体を小型化することができる。
【0012】
上記第1の局面による塗装システムにおいて、好ましくは、塗装用ロボットが設置される第1高さ位置は、第2高さ位置よりも上方に配置されている。このように構成すれば、第2高さ位置に設置されるドア開閉用ロボットよりも上方の第1高さ位置から塗装用ロボットによる塗装を行うことができる。この際、空調設備によりダウンフロー(上方から下方に向かう気流)が形成される塗装ブース内では、上方の第1高さ位置から下方に向かって塗装用ロボットによる塗料の吹き付けなどの塗装作業を行うことにより塗料の密着性を良くすることができるので、塗装作業の作業性を向上させることができる。
【0013】
上記第1の局面による塗装システムにおいて、好ましくは、ドア開閉用ロボットの水平方向でかつ車体の搬送方向の可動範囲は、車体のドア内部を塗装用ロボットが塗装する間に車体搬送装置が車体を移動させる距離よりも大きい。このように構成すれば、走行装置を設けずに塗装用ロボットおよびドア開閉用ロボットを固定的に設置する構成においても、車体搬送装置による車体の搬送を一時停止させたり、または車体の搬送速度を変化させたりすることなく、車体を一定速度で連続的に搬送させながら車体のドア内部の塗装作業を実施することができる。
【0014】
上記第1の局面による塗装システムにおいて、好ましくは、ドア開閉用ロボットは、車体搬送装置の搬送方向に搬送される車体のドアの位置がドア開閉用ロボットの設置位置よりも搬送方向に進んだ状態で、ドア開放状態の保持を行うことが可能なように構成されている。このように構成すれば、搬送される車体がドア開閉用ロボットの設置位置よりも搬送方向の下流側に進んだ状態でも塗装作業を行うことができる。この結果、ドア開閉用ロボットの設置位置よりも上流側でのみ塗装作業を行う場合と比較して長距離にわたるドア開放状態の保持を行うことが容易になるので、ロボットを大型化することなく、塗装作業に必要な時間分のドア開放状態の保持を容易に継続することができる。
【0015】
上記第1の局面による塗装システムにおいて、好ましくは、ドア開閉用ロボットは、車体のドアの開閉を行うための開閉ハンドを含み、開閉ハンドは、複数の永久磁石が積層された吸着具を有するとともに、吸着具により車体のドアを吸着して開閉するように構成され、吸着具の複数の永久磁石の少なくとも一部は、隣接する永久磁石同士の同一の磁極が積層方向に沿って互いに向かい合うようにして積層されている。このように構成すれば、吸着具の複数の永久磁石の少なくとも一部が互いに反発し合うように積層されるので、この同一の磁極が向かい合う部分でそれぞれ向かい合う磁界を形成することができる。これにより、複数の磁界が積層方向に配列されるので、吸着具の部位(中間部分か先端部分か)による吸着力のばらつきを小さくすることができる。この結果、吸着力のばらつきの小さい吸着具を有する開閉ハンドによって、吸着具の吸着部位に関わらず安定してドアの吸着を行うことができるので、ドア開閉用ロボットによる車体のドアの開閉作業をより確実に行うことができる。
【0016】
この場合において、好ましくは、開閉ハンドは、車体のドアを検知するための機械式センサをさらに有する。ここで、たとえば車体のドアを検知するために近接センサなどを用いる場合には、吸着具の磁力が近接センサの検出精度に影響を及ぼす一方、本発明のように開閉ハンドに車体のドアを検知するための機械式センサを設ければ、吸着具の磁力が検出精度に影響を及ぼすのを防止することができる。
【0017】
この発明の第2の局面によるドア開閉用ロボットの開閉ハンドは、塗装システムにおける車体のドア開閉用ロボットに用いられる車体のドアの開閉ハンドであって、複数の永久磁石が積層された吸着具を備えるとともに、吸着具により車体のドアを吸着して開閉するように構成され、吸着具の複数の永久磁石の少なくとも一部は、隣接する永久磁石同士の同一の磁極が積層方向に沿って互いに向かい合うようにして積層されている。
【0018】
この第2の局面によるドア開閉用ロボットの開閉ハンドでは、上記のように、吸着具の複数の永久磁石の少なくとも一部を、隣接する永久磁石同士の同一の磁極が積層方向に沿って互いに向かい合うようにして積層することによって、吸着具の複数の永久磁石の少なくとも一部が互いに反発し合うように積層されるので、この同一の磁極が向かい合う部分でそれぞれ向かい合う磁界を形成することができる。これにより、複数の磁界が積層方向に配列されるので、吸着具の部位(中間部分か先端部分か)による吸着力のばらつきを小さくすることができる。この結果、吸着力のばらつきの小さい吸着具を有する開閉ハンドによって、吸着具の吸着部位に関わらず安定してドアの吸着を行うことができるので、ドア開閉用ロボットによる車体のドアの開閉作業をより確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態による塗装システムの全体構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】図1に示した第1実施形態による塗装システムの正面図である。
【図3】本発明の第1実施形態による塗装システムの開閉ハンドを示す模式図である。
【図4】図3に示した第1実施形態による塗装システムの開閉ハンドによるドアの開閉を説明するための模式図である。
【図5】図3に示した第1実施形態による塗装システムの開閉ハンドの吸着具を示す模式図である。
【図6】本発明の第1実施形態による塗装システムのドア開放動作を説明するための平面図である。
【図7】本発明の第1実施形態による塗装システムの動作におけるドア開放状態を説明するための平面図である。
【図8】本発明の第1実施形態による塗装システムの塗装動作を説明するための平面図である。
【図9】本発明の第1実施形態による塗装システムの塗装動作を説明するための平面図である。
【図10】本発明の第1実施形態による塗装システムの塗装終了時の状態を説明するための平面図である。
【図11】本発明の第2実施形態による塗装システムのドア開放動作を説明するための平面図である。
【図12】本発明の第2実施形態による塗装システムの動作におけるドア開放状態を説明するための平面図である。
【図13】本発明の第2実施形態による塗装システムの塗装動作を説明するための平面図である。
【図14】本発明の第2実施形態による塗装システムの塗装終了時の状態を説明するための平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
(第1実施形態)
まず、図1〜図6および図10を参照して、本発明の第1実施形態による塗装システム100の構造について車体を塗装するシステムを例に説明する。
【0022】
図1に示すように、第1実施形態による塗装システム100は、塗装ブース110内において、車体(ボディ)120のドア(サイドドア)121の内側部の塗装を行うためのシステムである。塗装ブース110内は、図示しない空調設備によって埃などの除去された空気が供給され、供給される空気は、上方から下方(矢印Z2方向)に向かうダウンフローを形成するように構成されている。また、車体120の塗装は複数の塗装工程から構成されており、車体のドア(サイドドア)121の内側部の塗装は、ボンネット(エンジンフード)122の内側部の塗装およびバックドア(トランクフード)123の内側部の塗装を含むいわゆる内板塗装工程の一部として行われる。ただし、ボンネット122の内側部およびバックドア123の内側部の塗装については説明を省略する。
【0023】
塗装システム100は、車体120を搬送方向(矢印Y2方向)に搬送するコンベア10と、コンベア10の側方(矢印X2方向側)に配置された塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30とを備えている。なお、塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30は、それぞれコンベア10を挟んで反対側(矢印X1方向側)にも設けられる。ただし、コンベア10を挟んだ両側は同一の構成を有するので、ここでは図示および説明を省略する。塗装システム100のコンベア10、塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30は、それぞれ図示しない制御装置によって制御されるように構成されている。なお、コンベア10は、「車体搬送装置」の一例である。
【0024】
コンベア10は、塗装ブース110内において、所定の搬送方向(矢印Y2方向)に直線状に延びるように設けられている。図2に示すように、コンベア10は、車体120を所定の高さ位置H1に保持した状態で、車体120を搬送方向に搬送するように構成されている。塗装工程における車体120の搬送は、途中で停止することなく所定の一定速度で継続的に実施される。したがって、コンベア10が上流側から下流側まで車体120を一定速度で搬送させる間に、ドア121の内側部の塗装が行われるように構成されている。
【0025】
塗装用ロボット20は、高さ位置H2で矢印X1方向側(車体120側)に突出するようにして、固定用架台20aを介して塗装ブース110の側壁111に固定されている。塗装用ロボット20は、たとえば6軸(6自由度)の垂直多関節型ロボットであり、アーム部21と、アーム部21の先端に設けられた塗装ガン22とを含んでいる。塗装用ロボット20は、アーム部21の可動範囲内で塗装ガン22を任意の位置および向きに移動させるとともに、塗装ガン22から塗料の吹き付けを行うことにより、ドア121の内側部の塗装動作を実行することが可能なように構成されている。また、塗装用ロボット20の高さ位置H2はドア開閉用ロボット30の高さ位置H3よりも上方の位置であり、塗装用ロボット20は、ドア121の内側部の塗装時に、ドア121に対して上方の位置から下方に向かって塗料を吹き付けることが可能なように構成されている。なお、高さ位置H2およびH3は、それぞれ、本発明の「第1高さ位置」および「第2高さ位置」の一例である。
【0026】
ここで、第1実施形態では、ドア開閉用ロボット30は、高さ位置H3で矢印X1方向側に突出するようにして、塗装ブース110の側壁111に固定されている。ドア開閉用ロボット30は、2リンクの水平多関節型ロボット(いわゆるスカラロボット)である。また、ドア開閉用ロボット30は、塗装用ロボット20と作業範囲がオーバーラップ可能なように構成されている。また、ドア開閉用ロボット30と塗装用ロボット20とは、水平方向(搬送方向)に距離D1(図6参照)だけ離間して配置されている。ドア開閉用ロボット30は、塗装作業を効率的に実施可能なタイミングでドア121の開閉動作を行うとともに、塗装用ロボット20による塗装作業中において車体120の搬送(移動)に追従しながらドア開放状態を保つ動作を行うように構成されている。また、図1に示すように、ドア開閉用ロボット30は、第1関節31と、第1アーム(リンク)32と、第2関節33と、第2アーム(リンク)34と、第3関節(手首関節)35と、第3関節35に設けられた開閉ハンド40とを含んでいる。
【0027】
第1関節31は、塗装ブース110の側壁111に取り付けられ、第1アーム32を水平面内で回動可能に支持するように構成されている。また、第1アーム32の先端側端部には第2関節33が設けられている。第2関節33は、第2アーム34を水平面内で回動可能に支持するように構成されている。また、第2アーム34の先端側端部には第3関節35が設けられている。そして、第3関節35には、開閉ハンド40の後述する取付ベース42(図3参照)が設けられている。この第3関節35は、開閉ハンド40を水平面内で回動させる手首曲げ軸(旋回軸)と、開閉ハンド40を鉛直面内で軸周りに回動させる手首回転軸(回転軸)とを有している。
【0028】
ドア開閉用ロボット30は、これらの第1アーム32と第2アーム34とを折り畳みまたは展開することによって、ドア121の内側部の塗装工程の間にコンベア10が車体120を搬送する距離よりも大きな可動範囲(水平方向の可動範囲)を有する。具体的には、ドア開閉用ロボット30は、ドア121内側部の塗装を行う間に車体120が移動する距離D2(図10参照)の範囲(水平方向でかつ搬送方向の範囲)にわたって、コンベア10により搬送される車体120に追従してドア開放状態の保持を行うことが可能な可動範囲を有するように構成されている。
【0029】
また、図2に示すように、高さ位置H3の配置されたドア開閉用ロボット30は、開閉ハンド40の高さ位置が車体120のドア121の窓部の下端部の高さ位置H3aと略一致するように構成されている。これにより、ドア開閉用ロボット30に上下方向軸(Z軸)を設けることなく、開閉ハンド40によるドア121の開閉を行うことが可能である。
【0030】
図3に示すように、開閉ハンド40は、複数の永久磁石41aが積層された棒状の吸着具41を含み、吸着具41の磁力により車体120のドア121の内側面を吸着(図4参照)してドア121の開閉および保持を行うように構成されている。開閉ハンド40は、第3関節35と接続される取付ベース42と、シェアピン43を介して取付ベース42に連結されたベース支柱44と、ベース支柱44の先端に取り付けられるとともに、吸着具41を支持する回転機構部45とを有している。また、開閉ハンド40は、ドア121の有無を検知するための開閉センサ46と、検知用レバー47と、検知用レバー47と開閉センサ46とを連結するリンク48とを有している。なお、開閉センサ46は、本発明の「機械式センサ」の一例である。
【0031】
ベース支柱44は、根元側の端部がシェアピン43を介して取付ベース42に連結されている。シェアピン43は、大きな荷重を受けた場合に、シェアピン43が折れることによって、開閉ハンド40の破損を防ぐように構成されている。また、シェアピン43の内部には空洞部(図示せず)が形成されるとともに、この空洞部に所定の空気圧が加えられるように構成されている。シェアピン43が折れた場合には、空洞部の空気が解放されることによって空気圧が低下する。この空気圧の変化に基づいて、シェアピン43が折れたことを検知することが可能なように構成されている。
【0032】
図5に示すように、吸着具41は、筒状で非磁性体のステンレスカバー41bを有する。このステンレスカバー41b内に複数の永久磁石41aが積層されている。吸着具41に積層された複数の永久磁石41aは、ステンレスカバー41b内において、隣接する永久磁石41a同士の同一の磁極が積層方向(A方向)に沿って互いに対向するようにして積層されている。つまり、永久磁石41aは、A方向に沿って、隣接する永久磁石41aのN極同士が互いに向かい合うとともに、隣接する永久磁石41aのS極同士が互いに向かい合うように積層され、隣接する永久磁石41a同士で反発し合うように構成されている。この結果、吸着具41には、磁力線のループが永久磁石41a毎にそれぞれ形成される。吸着具41は、これらの磁力線のループによって、棒状の吸着具41の吸着部位(A方向の位置)に関わらず略一定の吸着力(磁力)を得ることが可能なように構成されている。
【0033】
また、図3に示すように、吸着具41は、ベース支柱44の先端の回転機構部45により、棒状の吸着具41の長軸(A方向の中心軸)回りに回転可能に構成されている。図4に示すように、ドア121の内側面(表面)は複雑な凹凸形状に形成されているので、回転機構部45により吸着具41が中心軸周りに回転することによって、ドア121の内側の吸着面(または点)に対して吸着具41が垂直に接触することが可能である。このような構成により、開閉ハンド40は、ドア121の内側面を吸着具41により吸着したままドア121を開放するとともに、ドア121の内面側を吸着力により吸引しながらドア121の閉鎖を行うように構成されている。なお、吸着具41の永久磁石41aは、強力な磁力を有する磁石(たとえばネオジム磁石など)からなる。このため、ドア121の開閉動作の際に吸着具41とドア121とが接触せずにわずかに離間した状態でも、ドア121を吸引して開閉を行うことが可能なように構成されている。
【0034】
また、開閉ハンド40の開閉センサ46は、機械式のリミットスイッチからなる。リンク48を介して開閉センサ46と連結された検知用レバー47は、回動部47aを中心にR方向に回動可能に構成されているとともに、鉛直方向に対して手先側(吸着具41の配置される側)に所定の角度αだけ傾斜するように設けられている。これにより、ドア121を開ける際に検知用レバー47がドア121の外側面と接触すると、回動部47aを中心に検知用レバー47が回動することによって、リンク48を介して開閉センサ46をオンにする(ドア121の存在を検出する)ように構成されている。なお、図4では、開閉センサ46と、検知用レバー47と、リンク48との図示を省略している。
【0035】
次に、図3、図4および図6〜図10を参照して、本発明の第1実施形態による塗装システム100の塗装動作を説明する。
【0036】
まず、図6に示すように、コンベア10上に設置された車体120の搬送が開始され、上流側から矢印Y2方向(搬送方向)に車体120が一定速度で移動する。車体120の搬送は、塗装作業の完了まで停止することなく一定速度で継続される。
【0037】
コンベア10により搬送された車体120が所定の開始位置P1に到達すると、車体120の搬送を継続したままドア開閉用ロボット30によるドア開放動作が行われる。具体的には、ドア開閉用ロボット30の第3関節35により開閉ハンド40の吸着具41が略水平まで回動されるとともに、ドア開閉用ロボット30の第1アーム32および第2アーム34が展開されることにより、開閉ハンド40の先端の吸着具41がドア121の窓部を通過する。この際、図3に示すように、ドア121の外側面に検知用レバー47が接触し、検知用レバー47の回動がリンク48を介して開閉センサ46により検出されることにより、ドア121の有無が検出される。
【0038】
その後、図4に示すように、開閉センサ46によるドア121の検出に基づいて第3関節35により吸着具41が略鉛直の状態に戻され、ドア121の内側面が吸着具41の吸引力(磁力)によって吸着される。図7に示すように、この状態でドア開閉用ロボット30の第1アーム32および第2アーム34が折り畳まれるように駆動され、ドア121の内側面を吸着具41により吸着しながらドア121が開放される。この際、コンベア10上に積載された車体120の位置ずれなどに起因して、ドア開閉用ロボット30の開閉動作として予め設定された円弧軌道の中心と、開放時のドア121の円弧軌道の中心とがずれる場合があり得る。この場合にも、吸着具41とドア121とが固定されることなく、磁力によってドア121を吸着(吸引)した状態のまま吸着具41がドア121の内側表面を滑るように移動することができるので、回転するドア121の軌跡と開閉ハンド40の軌跡とのずれによって過大な力が開閉ハンド40に加わるのを防止することが可能である。また、図7に示すように、ドア121が開放されたとき、車体120は位置P2に進む。
【0039】
ドア121が開放された後、塗装用ロボット20が駆動され、車体120のドア121の内側部の塗装作業が開始される。この際、図8および図9に示すように、ドア開閉用ロボット30の第1アーム32および第2アーム34が一定速度で移動する車体120に追従して駆動されることにより、ドア121の開放状態が保持される。また、塗装用ロボット20もアーム部21が車体120に追従して駆動されることにより、車体120が矢印Y2方向に搬送されながらドア121の内部の塗装作業が行われる。したがって、塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30は、搬送される車体120に追従してそれぞれ姿勢を変化させながら、ドア121の内側部の塗装作業およびドア121の開放状態の保持を行う。
【0040】
その後、図10に示すように、塗装用ロボット20による車体120のドア121の内部の塗装作業が完了する。このドア121の内部の塗装作業の間に、コンベア10により搬送される車体120は、位置P2から距離D2だけ下流側(矢印Y2方向)の位置P3に進む。このように、第1実施形態による塗装システム100のドア開閉用ロボット30は、少なくとも距離D2にわたって、車体120の移動に追従しながらドア開放状態を保持し続ける。そして、車体120の移動に追従しながらドア開放状態を保持していたドア開閉用ロボット30が車体120のドア121を閉める。以上により、ドア121の塗装工程が完了する。
【0041】
第1実施形態では、上記のように、高さ位置H2に固定的に設置され、コンベア10による車体120の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体120のドア121の内側部を塗装する塗装用ロボット20と、高さ位置H2とは異なる高さ位置H3に固定的に設置されるとともに塗装用ロボット20と作業範囲がオーバーラップ可能なように構成され、コンベア10による車体120の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて車体120のドア121の開閉およびドア開放状態の保持を行うドア開閉用ロボット30とを設けることによって、塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30を移動させることなく車体120のドア121の内側部を塗装することができるので、走行装置を用いることなくドア121の内側部の塗装を行うことができる。また、高さ位置H2に設置された塗装用ロボット20の作業範囲と、高さ位置H2とは異なる高さ位置H3に設置されたドア開閉用ロボット30との作業範囲をオーバーラップさせることができるので、車体120のドア121の内側部の塗装作業とドア開放状態の保持動作とを容易に行うことができる。この結果、第1実施形態による塗装システム100では、走行装置を設ける必要がないので、走行装置のメンテナンス作業が不要になるとともに、塗装ブース110の構造の簡素化および小型化を図ることができる。
【0042】
また、第1実施形態では、上記のように、ドア開閉用ロボット30を、水平多関節型のロボットにより構成することによって、水平多関節型のロボットに特徴的な水平方向における第1アーム32および第2アーム34の折り畳みおよび展開によって、ドア開閉用ロボット30の可動範囲を水平方向に広くすることができる。この結果、ドア開閉用ロボット30を固定的に設置する構成においても、容易に、コンベア10による車体120の搬送動作に追従して車体120のドア121の開閉動作およびドア開放状態の保持動作を行うことができる。
【0043】
また、第1実施形態では、上記のように、ドア開閉用ロボット30を、ドア開閉用ロボット30の開閉ハンド40の高さ位置(手先位置)がコンベア10により搬送される車体120のドア121の高さ位置H3aと略等しくなる高さ位置H3に配置することによって、水平多関節型のドア開閉用ロボット30を水平方向に駆動させるだけで車体120のドア121の開閉動作を行うことができるので、水平多関節型のドア開閉用ロボット30に上下方向(Z方向)の駆動軸を設ける必要がない。
【0044】
また、第1実施形態では、上記のように、塗装用ロボット20を、塗装ブース110の側壁の高さ位置H2に壁掛けで固定的に設置するとともに、ドア開閉用ロボット30を、塗装ブース110の側壁の高さ位置H3に壁掛けで固定的に設置することによって、走行装置や塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30を支持するための支柱などを塗装ブース110内に設ける必要がないので、車体120から塗装ブース110の側壁までの距離を小さくすることができる。その結果、塗装ブース110全体を小型化することができる。
【0045】
また、第1実施形態では、上記のように、塗装用ロボット20を、ドア開閉用ロボット30の高さ位置H3よりも上方高さ位置H2に設置することによって、高さ位置H3に設置されるドア開閉用ロボット30よりも上方の高さ位置H2から塗装を行うことができる。この際、空調設備によりダウンフロー(上方から下方に向かう気流)が形成される塗装ブース110内では、上方の高さ位置H2から下方に向かって塗装用ロボット20による塗料の吹き付けなどの塗装作業を行うことにより、塗料の密着性を良くすることができるので、塗装作業の作業性を向上させることができる。
【0046】
また、第1実施形態では、上記のように、ドア開閉用ロボット30の水平方向でかつ矢印Y2方向(搬送方向)の可動範囲を、車体120のドア121の内側部を塗装用ロボット20が塗装する間にコンベア10が車体120を移動させる距離D2よりも大きくなるように構成する。これにより、走行装置を設けずに塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30を固定的に設置する構成においても、コンベア10による車体120の搬送を一時停止させたり、または車体120の搬送速度を変化させたりすることなく、車体120を一定速度で連続的に搬送させながら車体120のドア121の内側部の塗装作業を実施することができる。
【0047】
また、第1実施形態では、上記のように、開閉ハンド40の吸着具41の複数の永久磁石41aを、隣接する永久磁石41a同士の同一の磁極が積層方向(A方向)に沿って互いに向かい合うようにして積層する。このように構成することによって、吸着具41の同一の磁極が向かい合う部分でそれぞれ向かい合う磁界を形成することができる。これにより、複数の磁界が積層方向(A方向)に配列されるので、吸着具41の部位(A方向の位置)による吸着力のばらつきを小さくすることができる。この結果、吸着力のばらつきの小さい吸着具41を有する開閉ハンド40によって、吸着具41の吸着部位に関わらず安定してドア121の吸着を行うことができるので、ドア開閉用ロボット30による車体120のドア121の開閉作業をより確実に行うことができる。
【0048】
(第2実施形態)
次に、図2および図11〜図14を参照して、本発明の第2実施形態による塗装システム200について説明する。この第2実施形態では、塗装用ロボット20とドア開閉用ロボット30とを搬送方向(矢印Y2方向)に距離D1だけ離間して配置した上記第1実施形態と異なり、塗装用ロボット20とドア開閉用ロボット30とを上下に重なるように配置した例について説明する。
【0049】
第2実施形態による塗装システム200では、図11に示すように、高さ位置H2(図2参照)に固定的に設置された塗装用ロボット20と高さ位置H3(図2参照)に固定的に設置されたドア開閉用ロボット30とが上下に重なるように、水平方向(搬送方向、Y方向)に同一の位置に配置されている。塗装用ロボット20の水平方向の作業範囲は、ドア開閉用ロボット30の水平方向の作業範囲とオーバーラップするように構成されている。
【0050】
ドア開閉用ロボット30は、コンベア10により一定速度で搬送される車体120に追従しながら、ドア121の開閉と、ドア121内側部の塗装を行う間のドア開放状態の保持とを行うことが可能なように構成されている。具体的には、ドア開閉用ロボット30は、塗装用ロボット20によりドア121内側部の塗装が行われる間に車体120が移動する距離D12(図14参照)の範囲(水平方向でかつ搬送方向の範囲)にわたって、ドア開放状態の保持を行うことが可能なように構成されている。また、ドア開閉用ロボット30は、コンベア10により車体120のドア121がドア開閉用ロボット30よりも搬送方向の下流側(矢印Y2方向側)に進んだ状態でも、ドア開放状態の保持とドア121の閉鎖とを行うことが可能なように構成されている。
【0051】
なお、第2実施形態のその他の構成は、上記第1実施形態と同様である。
【0052】
次に、図11〜図14を参照して、本発明の第2実施形態による塗装システム200の塗装動作を説明する。
【0053】
まず、図11に示すように、コンベア10上に設置された車体120の搬送が開始され、搬送方向の上流側から矢印Y2方向に車体120が一定速度で移動する。車体120の搬送は、塗装作業の完了まで停止することなく一定速度で継続される。
【0054】
コンベア10により搬送された車体120が所定の開始位置P11に到達すると、車体120の搬送を継続したままドア開閉用ロボット30によるドア開放動作が行われる。これにより、ドア121が解放され、ドア開閉用ロボット30によりドア開放状態が保持される。なお、ドア開放動作は上記第1実施形態と同様である。図12に示すように、ドア121が開放されたとき、車体120は位置P12に進む。
【0055】
図13に示すように、ドア121が開放されると、次に、塗装用ロボット20が駆動され、車体120のドア121の内側部の塗装作業が開始される。塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30は、搬送される車体120に追従してそれぞれ姿勢を変化させながら、ドア121の内側部の塗装作業およびドア121の開放状態の保持を行う。
【0056】
その後、図14に示すように、塗装用ロボット20による車体120のドア121の内部の塗装作業が完了する。このドア121の内部の塗装作業の間に、コンベア10により搬送される車体120は、位置P12から距離D12だけ下流側(矢印Y2方向)の位置P13に進む。第2実施形態では、塗装用ロボット20とドア開閉用ロボット30とが上下に重なるように配置されているため、ドア開閉用ロボット30が距離D1だけ塗装用ロボット20の下流側(矢印Y2方向)に配置された第1実施形態と比較して、相対的にドア開閉用ロボット30が上流側(矢印Y1方向側)の位置に配置されることになる。このため、第2実施形態では、水平多関節型のドア開閉用ロボット30の水平方向に広い可動範囲を有効に利用することにより、ドア121のヒンジ位置がドア開閉用ロボット30の位置を通過した状態でもドア開放状態の保持が行われる。これにより、ドア121内側部の塗装を行う間に車体120が停止することなく移動する距離D12の間のドア開放状態を保持し、ドア開閉用ロボット30により実行することが可能である。そして、ドア121の内部の塗装作業完了後、車体120の移動に追従しながらドア開放状態を保持していたドア開閉用ロボット30が、車体120のドア121を閉じる。以上により、ドア121の塗装工程が完了する。
【0057】
第2実施形態では、上記のように、ドア開閉用ロボット30を、コンベア10の搬送方向(矢印Y2方向)に搬送される車体120のドア121の位置がドア開閉用ロボット30の設置位置よりも搬送方向(矢印Y2方向)に進んだ状態で、ドア開放状態の保持を行うことが可能なように構成することによって、搬送される車体120がドア開閉用ロボット30の設置位置よりも搬送方向(矢印Y2方向)の下流側に進んだ状態でも塗装作業を行うことができる。この結果、ドア開閉用ロボット30の設置位置よりも上流側でのみ塗装作業を行う場合と比較して長距離にわたるドア開放状態の保持を行うことが容易になるので、ロボットを大型化することなく、塗装作業に必要な時間分のドア開放状態の保持を容易に継続することができる。
【0058】
また、第2実施形態では、塗装用ロボット20とドア開閉用ロボット30とを上下に重なるように配置することによって、ドア(サイドドア)121の塗装のためのロボットの設置領域(搬送方向の距離)を小型化することができる。このため、たとえばバックドア(トランクフード)123の内側部の塗装用ロボットおよびドア(バックドア)開閉用ロボットと、ボンネット(エンジンフード)122の内側部の塗装用ロボットおよびドア(ボンネット)開閉用ロボットとを搬送方向に沿って配列する場合に、各ロボットの搬送方向の設置間隔を小さくすることが可能である。この結果、第2実施形態による塗装システム200を用いて内板塗装工程の全体を行う塗装システムを構築する場合に、塗装システムを構築するのに必要な搬送方向の距離を小さくすることができるので、塗装ブースを小型化(ブース長を短縮)することが可能である。
【0059】
なお、第2実施形態のその他の効果は、上記第1実施形態と同様である。
【0060】
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0061】
たとえば、上記第1および第2実施形態では、塗装用ロボットによりドアの内側部のみを塗装する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明は、塗装用ロボットによりドアの外部の塗装を行う場合にも適用可能である。
【0062】
また、上記第1および第2実施形態では、水平多関節型のドア開閉用ロボットを設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、水平多関節型以外の構造のドア開閉用ロボットを設けてもよい。ドア開閉用ロボットは、第2高さ位置に固定的に設置した状態で、車体の搬送動作に追従しながらドアの開閉およびドア開放状態の保持を行うことが可能であれば、どのような構造のロボットであってもよい。
【0063】
また、上記第1および第2実施形態では、ドア開閉用ロボット30を、開閉ハンド40の高さ位置が車体120のドア121の窓部の下端部の高さ位置H3aと略一致するような高さ位置H3に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ドア開閉用ロボットを、ドア121の高さ位置とは異なる高さ位置に配置してもよい。この場合には、ドア開閉用ロボットを、ドアの開閉を行うことが可能な上下方向の可動範囲を有するように構成すればよい。
【0064】
また、上記第1および第2実施形態では、塗装用ロボット20およびドア開閉用ロボット30を塗装ブース110の側壁111に固定的に設置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえばロボット固定用の支柱などを塗装ブース内に設けて、この支柱に塗装用ロボットおよびドア開閉用ロボットを固定してもよい。
【0065】
また、上記第1および第2実施形態では、塗装用ロボット20を、ドア開閉用ロボット30が設置される高さ位置H3よりも上方の高さ位置H2に設置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、塗装用ロボットをドア開閉用ロボットの下方に設置してもよい。
【0066】
また、上記第1および第2実施形態では、塗装用ロボット20を6軸(6自由度)の垂直多関節型ロボットにより構成し、ドア開閉用ロボット30を2リンクの水平多関節型ロボットにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、塗装用ロボットを5軸以下または7軸以上のロボットにより構成してもよいし、ドア開閉用ロボットを3リンク以上の水平多関節型ロボットにより構成してもよい。
【0067】
また、上記第1実施形態では、ドア開閉用ロボット30を、塗装用ロボット20に対して搬送方向(矢印Y2方向)の下流側に距離D1だけ離間して配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ドア開閉用ロボットを塗装用ロボットに対して搬送方向の上流側に配置してもよい。
【0068】
また、上記第1および第2実施形態では、吸着具41に積層された複数の永久磁石41aを、隣接する永久磁石41a同士の同一の磁極が積層方向(A方向)に沿って互いに対向するように積層した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば互いに異なる磁極が隣接するように(互いに吸着し合うように)構成した2個1組または3個1組の永久磁石のグループを複数設けるとともに、これらのグループ同士について、同一の磁極が積層方向(A方向)に沿って互いに対向するように(反発し合うように)積層してもよい。
【0069】
また、上記第1および第2実施形態では、ドア121の有無を検知するための開閉センサ46を機械式のリミットスイッチにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、開閉センサをリミットスイッチ以外の他の機械式のスイッチにより構成してもよい。また、開閉センサを機械式以外の他の方式のセンサにより構成してもよい。
【符号の説明】
【0070】
10 コンベア(車体搬送装置)
20 塗装用ロボット
30 ドア開閉用ロボット
40 開閉ハンド
41 吸着具
41a 永久磁石
46 開閉センサ(機械式センサ)
100、200 塗装システム
110 塗装ブース
111 側壁
120 車体
121 ドア
H2 高さ位置(第1高さ位置)
H3 高さ位置(第2高さ位置)
A方向 積層方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体を搬送する車体搬送装置と、
第1高さ位置に固定的に設置され、前記車体搬送装置による前記車体の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて前記車体のドア内部を少なくとも塗装する塗装用ロボットと、
前記第1高さ位置とは異なる第2高さ位置に固定的に設置されるとともに前記塗装用ロボットと作業範囲がオーバーラップ可能なように構成され、前記車体搬送装置による前記車体の搬送動作に追従するように姿勢を変化させて前記車体のドアの開閉およびドア開放状態の保持を行うドア開閉用ロボットとを備えた、塗装システム。
【請求項2】
前記ドア開閉用ロボットは、水平多関節型のロボットである、請求項1に記載の塗装システム。
【請求項3】
前記ドア開閉用ロボットは、前記ドア開閉用ロボットの手先位置が前記車体搬送装置により搬送される前記車体のドアの高さ位置と略等しくなる前記第2高さ位置に配置されている、請求項2に記載の塗装システム。
【請求項4】
前記塗装用ロボットは、前記車両の塗装ブースの側壁の前記第1高さ位置に壁掛けで固定的に設置されるとともに、
前記ドア開閉用ロボットは、前記車両の塗装ブースの側壁の前記第2高さ位置に壁掛けで固定的に設置されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項5】
前記塗装用ロボットが設置される前記第1高さ位置は、第2高さ位置よりも上方に配置されている、請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項6】
前記ドア開閉用ロボットの水平方向でかつ前記車体の搬送方向の可動範囲は、前記車体のドア内部を前記塗装用ロボットが塗装する間に前記車体搬送装置が前記車体を移動させる距離よりも大きい、請求項1〜5のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項7】
前記ドア開閉用ロボットは、前記車体搬送装置の搬送方向に搬送される前記車体のドアの位置が前記ドア開閉用ロボットの設置位置よりも前記搬送方向に進んだ状態で、ドア開放状態の保持を行うことが可能なように構成されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項8】
前記ドア開閉用ロボットは、前記車体のドアの開閉を行うための開閉ハンドを含み、
前記開閉ハンドは、複数の永久磁石が積層された吸着具を有するとともに、前記吸着具により前記車体のドアを吸着して開閉するように構成され、
前記吸着具の複数の永久磁石の少なくとも一部は、隣接する前記永久磁石同士の同一の磁極が積層方向に沿って互いに向かい合うようにして積層されている、請求項1〜7のいずれか1項に記載の塗装システム。
【請求項9】
前記開閉ハンドは、前記車体のドアを検知するための機械式センサをさらに有する、請求項8に記載の塗装システム。
【請求項10】
塗装システムにおける車体のドア開閉用ロボットに用いられる前記車体のドアの開閉ハンドであって、
複数の永久磁石が積層された吸着具を備えるとともに、前記吸着具により前記車体のドアを吸着して開閉するように構成され、
前記吸着具の複数の永久磁石の少なくとも一部は、隣接する前記永久磁石同士の同一の磁極が積層方向に沿って互いに向かい合うようにして積層されている、ドア開閉用ロボットの開閉ハンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−31890(P2013−31890A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−168023(P2011−168023)
【出願日】平成23年8月1日(2011.8.1)
【出願人】(000006622)株式会社安川電機 (2,482)
【Fターム(参考)】