塗装システム及び塗装方法
【課題】設備全体のコンパクト化を図るとともに、多品種少量生産に容易に対応することができ、効率的な塗装作業を遂行することを可能にする。
【解決手段】塗装システム10は、中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18が、塗装ライン12に対し互いに並列して配設される。中塗り塗装工程14は、第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20dを互いに並列して設けるとともに、前記上塗り塗装工程16は、第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fを互いに並列して設ける。少なくとも第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cは、それぞれ塗装色の異なる複数台の塗装ロボット26a、26b及び26cを備えている。
【解決手段】塗装システム10は、中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18が、塗装ライン12に対し互いに並列して配設される。中塗り塗装工程14は、第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20dを互いに並列して設けるとともに、前記上塗り塗装工程16は、第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fを互いに並列して設ける。少なくとも第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cは、それぞれ塗装色の異なる複数台の塗装ロボット26a、26b及び26cを備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物の外板及び内板の一部に対して塗装処理を施す少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程を備える塗装システム及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被塗装物、例えば、自動車車体の塗装ラインでは、ホワイトボディに対して防錆のための下塗り塗装工程(電着塗装)、中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程等が施されるとともに、各工程間には、焼き付け乾燥工程が設けられている。
【0003】
この種の塗装ラインにおいて、塗装ロボットの台数を削減するとともに、各塗装ブース(塗装ステーション)に供給される運動エネルギを節約することを目的とした塗装装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この塗装装置は、図15に示すように、中塗り工程と焼付け工程との間に設定される上塗り工程に適用されている。この塗装装置は、それぞれユニット化されたベース塗装用の塗装ブース1と、クリア塗装用の塗装ブース2とを有し、前記塗装ブース1、2は、1つの搬送経路3に沿って直列に配置されている。塗装ブース1、2には、それぞれ複数の吹き付け塗装ロボット4、5が配置されている。
【0005】
上側の塗装装置を第1モジュールA、下側の塗装装置を第2モジュールBとするとともに、第1モジュールA及び第2モジュールBの生産能力は、それぞれ最小生産量に設定されている。そして、生産量を増大させるには、第1モジュールA及び第2モジュールBを同時に並行して稼動させる一方、生産能力を低下させる際には、例えば、第2モジュールBを停止させている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−129449号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の塗装ラインでは、同一の塗装条件に設定された第1モジュールA及び第2モジュールBが、生産量に対応して並列されているだけである。ところが、自動車車体の塗装色は、多種類に設定されるとともに、上塗り塗装を2回行う場合の他、クリア塗装を2回行う場合もある。従って、この種の多様化に適用するためには、多数の塗装ラインを設けなければならず、塗装設備全体が相当に大型化且つ複雑化する。これにより、上記の従来技術では、近年の塗装色の多色化や多品種少量生産に対応することができないという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、設備全体のコンパクト化を図るとともに、多品種少量生産に容易に対応することができ、効率的な塗装作業を遂行することが可能な塗装システム及び塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被塗装物の外板及び内板の一部に対して塗装処理を施す少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程を備える塗装システムに関するものである。そして、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられるとともに、前記中塗り塗装工程は、互いに並列される、例えば、塗装色の異なる2以上の塗装ステーションを有し、前記上塗り塗装工程は、互いに並列される、例えば、塗装色の異なる2以上の塗装ステーションを有している。
【0010】
また、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を含むとともに、前記上塗りクリア塗装工程は、互いに並列される、例えば、1層目のクリア塗装と2層のクリア塗装とを行う2以上の塗装ステーションを有することが好ましい。
【0011】
さらに、中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流から塗装ライン上流に被塗装物を戻すリターンラインを備えることが好ましい。
【0012】
さらにまた、互いに並列される中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流には、複数のセッティング部及び加熱部が互いに並列されることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、被塗装物の外板及び内板の一部に対して少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程で塗装を施す塗装方法に関するものである。そして、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられており、前記中塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に中塗り塗装が行われる。次いで、被塗装物をリターンラインに沿って上塗り塗装工程に戻した後、前記上塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に上塗り塗装が行われる。
【0014】
さらに、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を有するとともに、上塗りクリア塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して被塗装物に上塗りクリア塗装を行うことが好ましい。
【0015】
さらにまた、被塗装物は、中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程で所望の塗装が行われる毎に、少なくともセッティング部又は加熱部を順次通過することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、それぞれ2以上の塗装ステーションを有する中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程が、塗装ラインに対して互いに並列して設けられている。このため、塗装条件の変更、例えば、塗装色の色替えに際して、所望の塗装色を有する塗装ステーションを選択するだけでよく、色替え用の段取り替えや機種変更用の段取り替えが迅速且つ容易に遂行される。従って、多品種少量生産に容易に対応することができるとともに、効率的な塗装作業を遂行することが可能になる。
【0017】
しかも、各塗装ステーションでは、塗装作業の迅速化が図られるため、塗装ロボットをドア開閉用ロボットとして兼用させても、前記塗装作業全体の遅延が惹起されることがない。これにより、ロボット台数が良好に削減されるとともに、設備全体のコンパクト化が容易に図られる。
【0018】
さらに、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程が並列されており、塗装仕様が変更される際には、前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程の各塗装ステーションの数を変更するだけでよい。
【0019】
例えば、上塗り塗装の回数が増加する際には、中塗り塗装工程の塗装ステーションの数を削減する一方、前記上塗り塗装工程の塗装ステーションの数を増加させればよい。このため、種々の塗装仕様に容易且つ迅速に対応することができ、汎用性に優れるとともに、効率的な塗装作業が確実に遂行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る塗装システム10の概略構成説明図である。
【0021】
塗装システム10は、塗装流れ方向(矢印X方向)に向かう塗装ライン12を備える。塗装ライン12は、塗装流れ方向に直交する矢印Y方向に沿って、互いに並列して配置される中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18を有する。
【0022】
中塗り塗装工程14は、矢印Y方向に沿って、第1中塗り塗装ステーション20a、第2中塗り塗装ステーション20b、第3中塗り塗装ステーション20c及び第4中塗り塗装ステーション20dを互いに並列して設ける。
【0023】
第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20dは、それぞれ複数台の塗装ロボット22a、22b、22c及び22dを備える。塗装ロボット22a〜22dは、被塗装物である車体Wの外板及び内板の一部に対して中塗り塗装処理を施すとともに、少なくとも一部がドア開閉用ロボットとしての機能を兼用している。
【0024】
第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20dは、塗装ライン12に搬送される車体Wに対し、それぞれ塗装条件の異なる、例えば、4つの塗装色の異なる塗装ステーションを構成している。なお、第1中塗り塗装ステーション20aと第2中塗り塗装ステーション20bとを同一の塗装色に設定する一方、第3中塗り塗装ステーション20cと第4中塗り塗装ステーション20dとを同一の塗装色に設定することにより、2つずつ塗装色の異なる塗装ステーションを構成してもよい。
【0025】
上塗り塗装工程16は、第1上塗り塗装ステーション24a、第2上塗り塗装ステーション24b、第3上塗り塗装ステーション24c、第4上塗り塗装ステーション24d、第5上塗り塗装ステーション24e及び第6上塗り塗装ステーション24fを、矢印Y方向に沿って互いに並列して設ける。第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fは、それぞれ複数台の塗装ロボット26a、26b、26c、26d、26e及び26fを備える。
【0026】
第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fは、塗装ライン12に沿って搬送される車体Wに対し、2以上の塗装条件の異なる、例えば、塗装色の異なる上塗り塗装処理を選択的に施す。なお、塗装色の種類は、任意に設定可能である。
【0027】
上塗りクリア塗装工程18は、第1上塗りクリア塗装ステーション28a、第2上塗りクリア塗装ステーション28b及び第3上塗りクリア塗装ステーション28cを備える。第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cは、それぞれ複数台の塗装ロボット30a、30b及び30cを備える。
【0028】
第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cは、塗装ライン12に沿って搬送される車体Wに対し、後述するように、複数層のクリア層を形成可能である。
【0029】
なお、第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20d、第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24f及び第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cは、矢印Y方向に沿って直線上に配設されるとともに、それぞれ個別に又は一体に空調される空調ブースを構成している。
【0030】
中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18の塗装流れ方向下流には、第1セッティング部32a及び第1乾燥炉(加熱部)34aと、第2セッティング部32b及び第2乾燥炉34bと、第3セッティング部32c及び第1プレヒート部(加熱部)36aと、第4セッティング部32d及び第2プレヒート部36bとが、矢印Y方向に沿って互いに並列される。
【0031】
塗装ライン12は、第1乾燥炉34a、第2乾燥炉34b、第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bの塗装流れ方向下流から中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18の上流に戻すための第1リターンライン38を有する。この第1リターンライン38の下流には、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cが配設されるとともに、前記第3乾燥炉34cの下流から前記第1リターンライン38には、第2リターンライン40が設けられる。
【0032】
第1セッティング部32a〜第5セッティング部32eは、中塗り塗装処理、上塗り塗装処理及び上塗りクリア塗装処理が終了した車体Wに対し、塗装の手直しを行ったり、溶剤を気化させたり、塗料を落ち着かせたりするためのステーションである。第1乾燥炉34a〜第3乾燥炉34cは、塗膜を乾燥させるためのステーションである。第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bは、上塗り塗装後の車体Wに対してプレヒート処理を施すステーションである。
【0033】
具体的には、第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bは、上塗り塗装処理が終了した車体Wに対し、上塗り塗料の塗着固形分を適切な範囲にするために、前記上塗り塗料を仮乾燥させるステーションであり、例えば、赤外線照射装置及び/又は熱風供給装置等を備えている。
【0034】
なお、上記の各機能は、塗料の種類等によって変更可能である。
【0035】
このように構成される塗装システム10の動作について、本発明に係る塗装方法との関連で、以下に説明する。
【0036】
先ず、図2に示すように、車体Wの車体表面Waに対して標準タイプの塗装パターンを施す場合について説明する。この標準タイプでは、車体表面Waに電着層46、中塗り層48、ベース層(上塗り層)50及びクリア層52が、順次、形成される。
【0037】
そこで、標準タイプの塗装処理について、図3に示すフローチャートに沿って詳細に説明すると、車体表面Waには、予め下塗り塗装工程(図示せず)により水溶性塗料を用いた電着塗装が施されて、電着層46が形成される(ステップS1)。
【0038】
車体Wは、電着層46に図示しない乾燥炉で乾燥処理が施された後(ステップS2)、中塗り塗装工程14に搬送される。中塗り塗装工程14において、車体Wは、所望の塗装色に対応して、例えば、第1中塗り塗装ステーション20aに供給される。この第1中塗り塗装ステーション20aでは、複数の塗装ロボット22aを介して車体Wの外板の塗装を行うとともに、任意の塗装ロボット22aによるドア開放操作が行われ、前記車体Wの内板の一部に対して塗装処理が施される。これにより、電着層46上に中塗り層48が形成される(ステップS3)。
【0039】
第1中塗り塗装ステーション20aによる中塗り塗装が施された車体Wは、例えば、第1セッティング部32aに搬送されて塗装の手直し等の処理が施された後、第1乾燥炉34aに搬入される。車体Wは、第1乾燥炉34aで塗料の乾燥処理が施された後(ステップS4)、第1リターンライン38を介して塗装流れ方向上流に戻されて、上塗り塗装工程16に搬送される。
【0040】
上塗り塗装工程16では、車体Wに対応して第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cがそれぞれ異なる塗料色に応じて設定されており、前記車体Wは、例えば、前記第1上塗り塗装ステーション24aに搬入される。この第1上塗り塗装ステーション24aには、複数台の塗装ロボット26aが設けられており、前記車体Wの外板及び内板の一部に対し、上塗り塗装処理が施されて中塗り層48上にベース層50が形成される(ステップS5)。
【0041】
上塗り塗装処理後の車体Wは、例えば、第3セッティング部32cに送られて塗装の手直し等の処理が施された後、第1プレヒート部36aに送られる。車体Wは、第1プレヒート部36aで所定の温度にプレヒートされた後(ステップS6)、第1リターンライン38を介して塗装流れ方向上流に戻されて、上塗りクリア塗装工程18の中、例えば、第1上塗りクリア塗装ステーション28aに送られる。この第1上塗りクリア塗装ステーション28aでは、複数の塗装ロボット30aによりベース層50上にクリア層52が形成される(ステップS7)。
【0042】
上塗りクリア塗装が終了した車体Wは、第5セッティング部32eに送られ、さらに第3乾燥炉34cで乾燥処理が施されて(ステップS8)、次段の工程に送り出される。
【0043】
次に、図4に示す第1塗装パターンによる塗装処理について説明する。この第1塗装パターンでは、車体表面Wa上に電着層46、中塗り層48、第1ベース層50a、第2ベース層50b及びクリア層52が形成される。
【0044】
そこで、図5に示すフローチャートに沿って、以下に詳細に説明すると、先ず、前述のステップS1〜ステップS4と同様に、ステップS11〜ステップS14が行われる。さらに、車体Wは、上塗り塗装工程16の中、例えば、第1上塗り塗装ステーション24aに送られて第1ベース層50aが形成される(第1ステップS15)。
【0045】
第1ベース層50aが形成された車体Wは、第3セッティング部32c及び第1プレヒート部36aを通った後(ステップS16)、第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16の上流側に戻される。そして、車体Wは、例えば、第2上塗り塗装ステーション24bに送られ、複数台の塗装ロボット26bを介して第1ベース層50a上に第2ベース層50bが形成される(ステップS17)。
【0046】
第2ベース層50bが形成された車体Wは、第3セッティング部32c及び第1プレヒート部36aを通ってプレヒートされた後(ステップS18)、第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16の上流側に戻される。この上塗りクリア塗装工程18では、車体Wは、第1上塗りクリア塗装ステーション28aに送られてクリア層52が形成される(ステップS19)。上塗りクリア塗装終了後の車体Wは、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cを通って乾燥処理された後(ステップS20)、次なる工程へと搬出される。
【0047】
さらにまた、図6に示す第2塗装パターンによる塗装処理について説明する。この第2塗装パターンでは、車体表面Wa上に電着層46、中塗り層48、第1ベース層50a、第2ベース層50b、第1クリア層52a及び第2クリア層52bが形成される。
【0048】
この第2塗装パターンでは、図7に示すフローチャートに沿って塗装処理が施されるものであり、ステップS31〜ステップS28までは、前述したステップS11〜ステップS18と同様に行われる。
【0049】
そして、第2ベース層50bが形成された車体Wは、第1プレヒート部36aから第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16の上流側に戻される。上塗り塗装工程16では、車体Wが第1上塗りクリア塗装ステーション28aに送られて、第2ベース層50b上に第1クリア層52aが形成される(ステップS39)。第1クリア層52aが形成された車体Wは、第2セッティング部32b及び第2乾燥炉34bを通って乾燥処理された後(ステップS30)、第1リターンライン38を通って上塗りクリア塗装工程18の上流側に一旦戻される。
【0050】
車体Wは、例えば、第2上塗りクリア塗装ステーション28bに送られ、複数台の塗装ロボット30bを介して第1クリア層52a上に第2クリア層52bが形成される(ステップS41)。第2クリア層52bが形成された車体Wは、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cを通って乾燥された後(ステップS42)、次なる工程へと搬出される。
【0051】
この場合、第1の実施形態では、第1中塗り塗装ステーション20a〜20dを有する中塗り塗装工程14、第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fを有する上塗り塗装工程16、及び第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cを有する上塗りクリア塗装工程18が、塗装ライン12に対して互いに並列して設けられている。
【0052】
従って、塗装仕様により塗装回数が変更される際に、塗装時間を調整することが可能になる。タクトを短くすることにより、全体の生産台数の低下が容易に回避されるからである。しかも、塗装ライン12では、塗装条件の変更、例えば、塗装色の色替えに際して、色替え用の段取り替えや機種変更用の段取り替えが迅速且つ容易に遂行される。
【0053】
具体的には、塗装システム10を構成する第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cを用いて車体Wに上塗り塗装を施す際と、図8に示すように、内板塗装ステーション60、第1外板塗装ステーション62及び第2外板塗装ステーション64が直列に配置される従来の上塗り塗装工程66を用いて前記車体Wに上塗り塗装を施す際と、について説明する。
【0054】
従来の上塗り塗装工程66では、車体Wのフード(ボンネット)を開放保持するオープナー67と、ドア開閉用ロボット68とを備える。内板塗装ステーション60、第1外板塗装ステーション62及び第2外板塗装ステーション64には、それぞれ複数台の塗装ロボット70a、70b及び70cが配設されている。
【0055】
従来の上塗り塗装工程66では、図9に示すように、先ず、オープナー67によりフードが開放保持された状態で、フード内板側の塗装が行われる。次いで、ドア開閉用ロボット68によりドアが開放された状態で、塗装ロボット70aによる車体Wの内板の塗装が行われる。
【0056】
そして、ドアが閉じられた後、第1外板塗装ステーション62による車体Wの外板の塗装が開始される前に、所定の色替え時間だけ塗装処理が中断される。この色替え時間は、実質的に、塗装色の色替えが行われない際及び塗装色の色替えが行われる際に共通に設定されたものであり、必要に応じてこの色替え時間内にカップ洗浄等を含む段取り替え作業が行われている。
【0057】
所定の色替え時間が経過した後、車体Wには、第1外板塗装ステーション62を構成する塗装ロボット70bを介して外板の塗装が行われる。さらに、所定の色替え時間だけ塗装が停止された後、車体Wは、第2外板塗装ステーション64を構成する塗装ロボット70cを介して外板の塗装が行われる。
【0058】
これに対して、第1の実施形態の上塗り塗装工程16では、図10に示すように、例えば、第1上塗り塗装ステーション24aにより車体Wの外板及び内板の一部の上塗り塗装を行う際、先ず、左側の塗装ロボット26aによりフードが開放保持された状態で、右側の塗装ロボット26aを介してフードの塗装が行われる。次に、右側の塗装ロボット26aでフードが開放保持された状態で、左側の塗装ロボット26aによりフードの残余の塗装が行われる。
【0059】
さらに、各塗装ロボット26aによりドアが開放された状態で、内板の一部の塗装が行われると、前記塗装ロボット26aがドアを閉塞するとともに、使用済みの塗装ロボット26aのカップ洗浄が行われた後、左右の塗装ロボット26aにより車体Wの外板の塗装が行われる。そして、使用済みの塗装ロボット26aのカップ洗浄が行われる一方、他の塗装ロボット26aにより車体Wの外板の塗装が行われる。
【0060】
このように、従来の上塗り塗装工程66では、内板塗装ステーション60、第1外板塗装ステーション62及び第2外板塗装ステーション64においてそれぞれ塗装が行われた後、所定の色替え時間だけ塗装が中断されている。この色替え時間は、実際のカップ洗浄に係る時間に比べて長時間を要しており、塗装作業が不要に停止されて、塗装作業全体が相当に長時間化するという問題がある。
【0061】
これに対して、第1の実施形態では、第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cが、それぞれ塗装色の異なる塗料を塗布可能に待機しており、色替え時には、車体Wを第1上塗り塗装ステーション24aから、例えば、第2上塗り塗装ステーション24bに移送するだけでよい。これにより、特に、多品種少量生産に容易に対応することができるとともに、効率的な塗装作業を遂行することが可能になるという効果を得られる。
【0062】
しかも、不要な色替え待機時間が削除されるため、塗装作業全体が容易に迅速且つ短時間で遂行される。このため、例えば、塗装ロボット26aをドア開閉用ロボットとして兼用させても、塗装作業全体の遅延が惹起されることはない。従って、ロボット数が良好に削減されて設備全体のコンパクト化を図るとともに、経済的であるという利点がある。
【0063】
さらに、従来の上塗り塗装工程66では、内板塗装ステーション60から第2外板塗装ステーション64までを覆って空調ブースを設ける必要があり、この空調ブースの全長は、車体Wの搬送路を含むために長尺化してしまう。これに対して、第1の実施形態では、例えば、第1上塗り塗装ステーション24aを覆う空調ブースは、車体Wを囲繞する範囲に限定されるため、空調エネルギを良好に削減することができる。
【0064】
さらにまた、第1の実施形態では、車体Wに対する塗装パターンに応じて中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18を構成する各ステーション数を容易に増減することができる。例えば、図4に示す第1塗装パターンでは、第1ベース層50aと第2ベース層50bとの二層ベース構造を採用しており、上塗り塗装工程16の塗装色を増量させることが望まれる。
【0065】
そこで、図11に示すように、第1中塗り塗装ステーション20a〜第3中塗り塗装ステーション20cを有する中塗り塗装工程14aと、第1上塗り塗装ステーション24a〜第7上塗り塗装ステーション24gを有する上塗り塗装工程16aと、第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cを有する上塗りクリア塗装工程18とが、互いに並列して構成される。
【0066】
すなわち、中塗り塗装工程14aの第4中塗り塗装ステーション20dに代えて、上塗り塗装工程16aの第7上塗り塗装ステーション24gを配置している。第7上塗り塗装ステーション24gは、複数台の塗装ロボット26gを備える。これにより、標準タイプの塗装パターンから第1塗装パターンへの塗装切替作業は、簡単且つ短時間に遂行されるという効果が得られる。
【0067】
さらに、図6に示す第2塗装パターンに対応するために、図12に示す機種段取り替えが行われる。第2塗装パターンでは、第1ベース層50a及び第2ベース層50bの二層ベース構造を採用するとともに、第1クリア層52a及び第2クリア層52bの二層クリア構造が採用される。
【0068】
すなわち、第2塗装パターンに対応するために、第1中塗り塗装ステーション20a及び第2中塗り塗装ステーション20bを有する中塗り塗装工程14bと、第1上塗り塗装ステーション24a〜第7上塗り塗装ステーション24gを有する上塗り塗装工程16aと、第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第4上塗りクリア塗装ステーション28bを有する上塗りクリア塗装工程18aとが、互いに並列して配置される。
【0069】
具体的には、第3中塗り塗装ステーション20cに代えて、複数台の塗装ロボット30dを備えた第4上塗りクリア塗装ステーション28dを設置するだけでよい。これにより、種々の塗装パターンの変更にも容易且つ迅速に対応することができ、汎用性に優れるとともに、効率的な塗装作業が確実に遂行されるという効果が得られる。
【0070】
また、図1において使用する塗料によっては、第1乾燥炉34a及び第2乾燥炉34bをプレヒート部に代えたり、前記第1乾燥炉34a、第2乾燥炉34b、第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bを削除することもできる。さらにまた、塗装ライン12では、第2リターンライン40を用いることにより、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cを繰り返し使用することもできる。
【0071】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る塗装システム80の概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る塗装システム10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0072】
塗装システム80は、中塗り塗装工程14に併設して水研ぎステーション82が設けられる。この水研ぎステーション82は、中塗り塗装処理後の塗膜を研磨することにより、塗膜の色合いや深み、平滑度等を向上させる機能を有する。
【0073】
この塗装システム80による塗装処理について、図14に示すフローチャートに沿って説明する。
【0074】
先ず、前述のステップS1〜ステップS4と同様に、ステップS51〜ステップS54が行われる。さらに、車体Wは、第1リターンライン38によって戻されて水研ぎステーション82に送られる。この水研ぎステーション82では、車体Wの中塗り塗膜に研磨処理が施された後(ステップS55)、例えば、第3セッティング部32cに送られる。車体Wは、第3セッティング部32cから第1プレヒート部36aに送られて、この第1プレヒート部36aで水切り乾燥処理が施される(ステップS56)。
【0075】
次いで、車体Wは、第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16に搬送され、ステップS57〜ステップS60に沿って塗装処理が施される。
【0076】
このように、第2の実施形態では、水研ぎステーション82で研磨処理が施された車体Wに対して水切り乾燥処理を行うために、専用の水切り乾燥炉を用いる必要がなく、例えば、第1プレヒート部36aが前記水切り乾燥炉としての機能を兼用することができる。これにより、極めて経済的であるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗装システムの概略構成説明図である。
【図2】標準タイプの塗装パターンの説明図である。
【図3】前記標準タイプの塗装パターンの処理フローチャートである。
【図4】第1塗装パターンの説明図である。
【図5】前記第1塗装パターンの処理フローチャートである。
【図6】第2塗装パターンの説明図である。
【図7】前記第2塗装パターンの処理フローチャートである。
【図8】従来の上塗り塗装工程の説明図である。
【図9】前記従来の上塗り塗装工程のタイムチャートである。
【図10】第1の実施形態の上塗り塗装工程のタイムチャートである。
【図11】前記塗装システムにおいて、第1塗装パターンに対応した概略構成説明図である。
【図12】前記塗装システムにおいて、第2塗装パターンに対応した概略構成説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る塗装システムの概略構成説明図である。
【図14】前記塗装システムにおける処理フローチャートである。
【図15】特許文献1の上塗り工程の説明図である。
【符号の説明】
【0078】
10、80…塗装システム 12…塗装ライン
14、14a、14b…中塗り塗装工程
20a〜20d…中塗り塗装ステーション
16、16a…上塗り塗装工程 18、18a…上塗りクリア塗装工程
32a〜32e…セッティング部 34a〜34c…乾燥炉
36a、36b…プレヒート部
22a〜22d、26a〜26g、30a〜30d…塗装ロボット
24a〜24g…上塗り塗装ステーション
28a〜28d…上塗りクリア塗装ステーション
38、40…リターンライン 82…水研ぎステーション
【技術分野】
【0001】
本発明は、被塗装物の外板及び内板の一部に対して塗装処理を施す少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程を備える塗装システム及び塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被塗装物、例えば、自動車車体の塗装ラインでは、ホワイトボディに対して防錆のための下塗り塗装工程(電着塗装)、中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程等が施されるとともに、各工程間には、焼き付け乾燥工程が設けられている。
【0003】
この種の塗装ラインにおいて、塗装ロボットの台数を削減するとともに、各塗装ブース(塗装ステーション)に供給される運動エネルギを節約することを目的とした塗装装置が提案されている(特許文献1)。
【0004】
この塗装装置は、図15に示すように、中塗り工程と焼付け工程との間に設定される上塗り工程に適用されている。この塗装装置は、それぞれユニット化されたベース塗装用の塗装ブース1と、クリア塗装用の塗装ブース2とを有し、前記塗装ブース1、2は、1つの搬送経路3に沿って直列に配置されている。塗装ブース1、2には、それぞれ複数の吹き付け塗装ロボット4、5が配置されている。
【0005】
上側の塗装装置を第1モジュールA、下側の塗装装置を第2モジュールBとするとともに、第1モジュールA及び第2モジュールBの生産能力は、それぞれ最小生産量に設定されている。そして、生産量を増大させるには、第1モジュールA及び第2モジュールBを同時に並行して稼動させる一方、生産能力を低下させる際には、例えば、第2モジュールBを停止させている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−129449号公報(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の塗装ラインでは、同一の塗装条件に設定された第1モジュールA及び第2モジュールBが、生産量に対応して並列されているだけである。ところが、自動車車体の塗装色は、多種類に設定されるとともに、上塗り塗装を2回行う場合の他、クリア塗装を2回行う場合もある。従って、この種の多様化に適用するためには、多数の塗装ラインを設けなければならず、塗装設備全体が相当に大型化且つ複雑化する。これにより、上記の従来技術では、近年の塗装色の多色化や多品種少量生産に対応することができないという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、設備全体のコンパクト化を図るとともに、多品種少量生産に容易に対応することができ、効率的な塗装作業を遂行することが可能な塗装システム及び塗装方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、被塗装物の外板及び内板の一部に対して塗装処理を施す少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程を備える塗装システムに関するものである。そして、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられるとともに、前記中塗り塗装工程は、互いに並列される、例えば、塗装色の異なる2以上の塗装ステーションを有し、前記上塗り塗装工程は、互いに並列される、例えば、塗装色の異なる2以上の塗装ステーションを有している。
【0010】
また、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を含むとともに、前記上塗りクリア塗装工程は、互いに並列される、例えば、1層目のクリア塗装と2層のクリア塗装とを行う2以上の塗装ステーションを有することが好ましい。
【0011】
さらに、中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流から塗装ライン上流に被塗装物を戻すリターンラインを備えることが好ましい。
【0012】
さらにまた、互いに並列される中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流には、複数のセッティング部及び加熱部が互いに並列されることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、被塗装物の外板及び内板の一部に対して少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程で塗装を施す塗装方法に関するものである。そして、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられており、前記中塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に中塗り塗装が行われる。次いで、被塗装物をリターンラインに沿って上塗り塗装工程に戻した後、前記上塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に上塗り塗装が行われる。
【0014】
さらに、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を有するとともに、上塗りクリア塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して被塗装物に上塗りクリア塗装を行うことが好ましい。
【0015】
さらにまた、被塗装物は、中塗り塗装工程、上塗り塗装工程及び上塗りクリア塗装工程で所望の塗装が行われる毎に、少なくともセッティング部又は加熱部を順次通過することが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明では、それぞれ2以上の塗装ステーションを有する中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程が、塗装ラインに対して互いに並列して設けられている。このため、塗装条件の変更、例えば、塗装色の色替えに際して、所望の塗装色を有する塗装ステーションを選択するだけでよく、色替え用の段取り替えや機種変更用の段取り替えが迅速且つ容易に遂行される。従って、多品種少量生産に容易に対応することができるとともに、効率的な塗装作業を遂行することが可能になる。
【0017】
しかも、各塗装ステーションでは、塗装作業の迅速化が図られるため、塗装ロボットをドア開閉用ロボットとして兼用させても、前記塗装作業全体の遅延が惹起されることがない。これにより、ロボット台数が良好に削減されるとともに、設備全体のコンパクト化が容易に図られる。
【0018】
さらに、中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程が並列されており、塗装仕様が変更される際には、前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程の各塗装ステーションの数を変更するだけでよい。
【0019】
例えば、上塗り塗装の回数が増加する際には、中塗り塗装工程の塗装ステーションの数を削減する一方、前記上塗り塗装工程の塗装ステーションの数を増加させればよい。このため、種々の塗装仕様に容易且つ迅速に対応することができ、汎用性に優れるとともに、効率的な塗装作業が確実に遂行される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る塗装システム10の概略構成説明図である。
【0021】
塗装システム10は、塗装流れ方向(矢印X方向)に向かう塗装ライン12を備える。塗装ライン12は、塗装流れ方向に直交する矢印Y方向に沿って、互いに並列して配置される中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18を有する。
【0022】
中塗り塗装工程14は、矢印Y方向に沿って、第1中塗り塗装ステーション20a、第2中塗り塗装ステーション20b、第3中塗り塗装ステーション20c及び第4中塗り塗装ステーション20dを互いに並列して設ける。
【0023】
第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20dは、それぞれ複数台の塗装ロボット22a、22b、22c及び22dを備える。塗装ロボット22a〜22dは、被塗装物である車体Wの外板及び内板の一部に対して中塗り塗装処理を施すとともに、少なくとも一部がドア開閉用ロボットとしての機能を兼用している。
【0024】
第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20dは、塗装ライン12に搬送される車体Wに対し、それぞれ塗装条件の異なる、例えば、4つの塗装色の異なる塗装ステーションを構成している。なお、第1中塗り塗装ステーション20aと第2中塗り塗装ステーション20bとを同一の塗装色に設定する一方、第3中塗り塗装ステーション20cと第4中塗り塗装ステーション20dとを同一の塗装色に設定することにより、2つずつ塗装色の異なる塗装ステーションを構成してもよい。
【0025】
上塗り塗装工程16は、第1上塗り塗装ステーション24a、第2上塗り塗装ステーション24b、第3上塗り塗装ステーション24c、第4上塗り塗装ステーション24d、第5上塗り塗装ステーション24e及び第6上塗り塗装ステーション24fを、矢印Y方向に沿って互いに並列して設ける。第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fは、それぞれ複数台の塗装ロボット26a、26b、26c、26d、26e及び26fを備える。
【0026】
第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fは、塗装ライン12に沿って搬送される車体Wに対し、2以上の塗装条件の異なる、例えば、塗装色の異なる上塗り塗装処理を選択的に施す。なお、塗装色の種類は、任意に設定可能である。
【0027】
上塗りクリア塗装工程18は、第1上塗りクリア塗装ステーション28a、第2上塗りクリア塗装ステーション28b及び第3上塗りクリア塗装ステーション28cを備える。第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cは、それぞれ複数台の塗装ロボット30a、30b及び30cを備える。
【0028】
第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cは、塗装ライン12に沿って搬送される車体Wに対し、後述するように、複数層のクリア層を形成可能である。
【0029】
なお、第1中塗り塗装ステーション20a〜第4中塗り塗装ステーション20d、第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24f及び第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cは、矢印Y方向に沿って直線上に配設されるとともに、それぞれ個別に又は一体に空調される空調ブースを構成している。
【0030】
中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18の塗装流れ方向下流には、第1セッティング部32a及び第1乾燥炉(加熱部)34aと、第2セッティング部32b及び第2乾燥炉34bと、第3セッティング部32c及び第1プレヒート部(加熱部)36aと、第4セッティング部32d及び第2プレヒート部36bとが、矢印Y方向に沿って互いに並列される。
【0031】
塗装ライン12は、第1乾燥炉34a、第2乾燥炉34b、第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bの塗装流れ方向下流から中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18の上流に戻すための第1リターンライン38を有する。この第1リターンライン38の下流には、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cが配設されるとともに、前記第3乾燥炉34cの下流から前記第1リターンライン38には、第2リターンライン40が設けられる。
【0032】
第1セッティング部32a〜第5セッティング部32eは、中塗り塗装処理、上塗り塗装処理及び上塗りクリア塗装処理が終了した車体Wに対し、塗装の手直しを行ったり、溶剤を気化させたり、塗料を落ち着かせたりするためのステーションである。第1乾燥炉34a〜第3乾燥炉34cは、塗膜を乾燥させるためのステーションである。第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bは、上塗り塗装後の車体Wに対してプレヒート処理を施すステーションである。
【0033】
具体的には、第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bは、上塗り塗装処理が終了した車体Wに対し、上塗り塗料の塗着固形分を適切な範囲にするために、前記上塗り塗料を仮乾燥させるステーションであり、例えば、赤外線照射装置及び/又は熱風供給装置等を備えている。
【0034】
なお、上記の各機能は、塗料の種類等によって変更可能である。
【0035】
このように構成される塗装システム10の動作について、本発明に係る塗装方法との関連で、以下に説明する。
【0036】
先ず、図2に示すように、車体Wの車体表面Waに対して標準タイプの塗装パターンを施す場合について説明する。この標準タイプでは、車体表面Waに電着層46、中塗り層48、ベース層(上塗り層)50及びクリア層52が、順次、形成される。
【0037】
そこで、標準タイプの塗装処理について、図3に示すフローチャートに沿って詳細に説明すると、車体表面Waには、予め下塗り塗装工程(図示せず)により水溶性塗料を用いた電着塗装が施されて、電着層46が形成される(ステップS1)。
【0038】
車体Wは、電着層46に図示しない乾燥炉で乾燥処理が施された後(ステップS2)、中塗り塗装工程14に搬送される。中塗り塗装工程14において、車体Wは、所望の塗装色に対応して、例えば、第1中塗り塗装ステーション20aに供給される。この第1中塗り塗装ステーション20aでは、複数の塗装ロボット22aを介して車体Wの外板の塗装を行うとともに、任意の塗装ロボット22aによるドア開放操作が行われ、前記車体Wの内板の一部に対して塗装処理が施される。これにより、電着層46上に中塗り層48が形成される(ステップS3)。
【0039】
第1中塗り塗装ステーション20aによる中塗り塗装が施された車体Wは、例えば、第1セッティング部32aに搬送されて塗装の手直し等の処理が施された後、第1乾燥炉34aに搬入される。車体Wは、第1乾燥炉34aで塗料の乾燥処理が施された後(ステップS4)、第1リターンライン38を介して塗装流れ方向上流に戻されて、上塗り塗装工程16に搬送される。
【0040】
上塗り塗装工程16では、車体Wに対応して第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cがそれぞれ異なる塗料色に応じて設定されており、前記車体Wは、例えば、前記第1上塗り塗装ステーション24aに搬入される。この第1上塗り塗装ステーション24aには、複数台の塗装ロボット26aが設けられており、前記車体Wの外板及び内板の一部に対し、上塗り塗装処理が施されて中塗り層48上にベース層50が形成される(ステップS5)。
【0041】
上塗り塗装処理後の車体Wは、例えば、第3セッティング部32cに送られて塗装の手直し等の処理が施された後、第1プレヒート部36aに送られる。車体Wは、第1プレヒート部36aで所定の温度にプレヒートされた後(ステップS6)、第1リターンライン38を介して塗装流れ方向上流に戻されて、上塗りクリア塗装工程18の中、例えば、第1上塗りクリア塗装ステーション28aに送られる。この第1上塗りクリア塗装ステーション28aでは、複数の塗装ロボット30aによりベース層50上にクリア層52が形成される(ステップS7)。
【0042】
上塗りクリア塗装が終了した車体Wは、第5セッティング部32eに送られ、さらに第3乾燥炉34cで乾燥処理が施されて(ステップS8)、次段の工程に送り出される。
【0043】
次に、図4に示す第1塗装パターンによる塗装処理について説明する。この第1塗装パターンでは、車体表面Wa上に電着層46、中塗り層48、第1ベース層50a、第2ベース層50b及びクリア層52が形成される。
【0044】
そこで、図5に示すフローチャートに沿って、以下に詳細に説明すると、先ず、前述のステップS1〜ステップS4と同様に、ステップS11〜ステップS14が行われる。さらに、車体Wは、上塗り塗装工程16の中、例えば、第1上塗り塗装ステーション24aに送られて第1ベース層50aが形成される(第1ステップS15)。
【0045】
第1ベース層50aが形成された車体Wは、第3セッティング部32c及び第1プレヒート部36aを通った後(ステップS16)、第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16の上流側に戻される。そして、車体Wは、例えば、第2上塗り塗装ステーション24bに送られ、複数台の塗装ロボット26bを介して第1ベース層50a上に第2ベース層50bが形成される(ステップS17)。
【0046】
第2ベース層50bが形成された車体Wは、第3セッティング部32c及び第1プレヒート部36aを通ってプレヒートされた後(ステップS18)、第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16の上流側に戻される。この上塗りクリア塗装工程18では、車体Wは、第1上塗りクリア塗装ステーション28aに送られてクリア層52が形成される(ステップS19)。上塗りクリア塗装終了後の車体Wは、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cを通って乾燥処理された後(ステップS20)、次なる工程へと搬出される。
【0047】
さらにまた、図6に示す第2塗装パターンによる塗装処理について説明する。この第2塗装パターンでは、車体表面Wa上に電着層46、中塗り層48、第1ベース層50a、第2ベース層50b、第1クリア層52a及び第2クリア層52bが形成される。
【0048】
この第2塗装パターンでは、図7に示すフローチャートに沿って塗装処理が施されるものであり、ステップS31〜ステップS28までは、前述したステップS11〜ステップS18と同様に行われる。
【0049】
そして、第2ベース層50bが形成された車体Wは、第1プレヒート部36aから第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16の上流側に戻される。上塗り塗装工程16では、車体Wが第1上塗りクリア塗装ステーション28aに送られて、第2ベース層50b上に第1クリア層52aが形成される(ステップS39)。第1クリア層52aが形成された車体Wは、第2セッティング部32b及び第2乾燥炉34bを通って乾燥処理された後(ステップS30)、第1リターンライン38を通って上塗りクリア塗装工程18の上流側に一旦戻される。
【0050】
車体Wは、例えば、第2上塗りクリア塗装ステーション28bに送られ、複数台の塗装ロボット30bを介して第1クリア層52a上に第2クリア層52bが形成される(ステップS41)。第2クリア層52bが形成された車体Wは、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cを通って乾燥された後(ステップS42)、次なる工程へと搬出される。
【0051】
この場合、第1の実施形態では、第1中塗り塗装ステーション20a〜20dを有する中塗り塗装工程14、第1上塗り塗装ステーション24a〜第6上塗り塗装ステーション24fを有する上塗り塗装工程16、及び第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cを有する上塗りクリア塗装工程18が、塗装ライン12に対して互いに並列して設けられている。
【0052】
従って、塗装仕様により塗装回数が変更される際に、塗装時間を調整することが可能になる。タクトを短くすることにより、全体の生産台数の低下が容易に回避されるからである。しかも、塗装ライン12では、塗装条件の変更、例えば、塗装色の色替えに際して、色替え用の段取り替えや機種変更用の段取り替えが迅速且つ容易に遂行される。
【0053】
具体的には、塗装システム10を構成する第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cを用いて車体Wに上塗り塗装を施す際と、図8に示すように、内板塗装ステーション60、第1外板塗装ステーション62及び第2外板塗装ステーション64が直列に配置される従来の上塗り塗装工程66を用いて前記車体Wに上塗り塗装を施す際と、について説明する。
【0054】
従来の上塗り塗装工程66では、車体Wのフード(ボンネット)を開放保持するオープナー67と、ドア開閉用ロボット68とを備える。内板塗装ステーション60、第1外板塗装ステーション62及び第2外板塗装ステーション64には、それぞれ複数台の塗装ロボット70a、70b及び70cが配設されている。
【0055】
従来の上塗り塗装工程66では、図9に示すように、先ず、オープナー67によりフードが開放保持された状態で、フード内板側の塗装が行われる。次いで、ドア開閉用ロボット68によりドアが開放された状態で、塗装ロボット70aによる車体Wの内板の塗装が行われる。
【0056】
そして、ドアが閉じられた後、第1外板塗装ステーション62による車体Wの外板の塗装が開始される前に、所定の色替え時間だけ塗装処理が中断される。この色替え時間は、実質的に、塗装色の色替えが行われない際及び塗装色の色替えが行われる際に共通に設定されたものであり、必要に応じてこの色替え時間内にカップ洗浄等を含む段取り替え作業が行われている。
【0057】
所定の色替え時間が経過した後、車体Wには、第1外板塗装ステーション62を構成する塗装ロボット70bを介して外板の塗装が行われる。さらに、所定の色替え時間だけ塗装が停止された後、車体Wは、第2外板塗装ステーション64を構成する塗装ロボット70cを介して外板の塗装が行われる。
【0058】
これに対して、第1の実施形態の上塗り塗装工程16では、図10に示すように、例えば、第1上塗り塗装ステーション24aにより車体Wの外板及び内板の一部の上塗り塗装を行う際、先ず、左側の塗装ロボット26aによりフードが開放保持された状態で、右側の塗装ロボット26aを介してフードの塗装が行われる。次に、右側の塗装ロボット26aでフードが開放保持された状態で、左側の塗装ロボット26aによりフードの残余の塗装が行われる。
【0059】
さらに、各塗装ロボット26aによりドアが開放された状態で、内板の一部の塗装が行われると、前記塗装ロボット26aがドアを閉塞するとともに、使用済みの塗装ロボット26aのカップ洗浄が行われた後、左右の塗装ロボット26aにより車体Wの外板の塗装が行われる。そして、使用済みの塗装ロボット26aのカップ洗浄が行われる一方、他の塗装ロボット26aにより車体Wの外板の塗装が行われる。
【0060】
このように、従来の上塗り塗装工程66では、内板塗装ステーション60、第1外板塗装ステーション62及び第2外板塗装ステーション64においてそれぞれ塗装が行われた後、所定の色替え時間だけ塗装が中断されている。この色替え時間は、実際のカップ洗浄に係る時間に比べて長時間を要しており、塗装作業が不要に停止されて、塗装作業全体が相当に長時間化するという問題がある。
【0061】
これに対して、第1の実施形態では、第1上塗り塗装ステーション24a〜第3上塗り塗装ステーション24cが、それぞれ塗装色の異なる塗料を塗布可能に待機しており、色替え時には、車体Wを第1上塗り塗装ステーション24aから、例えば、第2上塗り塗装ステーション24bに移送するだけでよい。これにより、特に、多品種少量生産に容易に対応することができるとともに、効率的な塗装作業を遂行することが可能になるという効果を得られる。
【0062】
しかも、不要な色替え待機時間が削除されるため、塗装作業全体が容易に迅速且つ短時間で遂行される。このため、例えば、塗装ロボット26aをドア開閉用ロボットとして兼用させても、塗装作業全体の遅延が惹起されることはない。従って、ロボット数が良好に削減されて設備全体のコンパクト化を図るとともに、経済的であるという利点がある。
【0063】
さらに、従来の上塗り塗装工程66では、内板塗装ステーション60から第2外板塗装ステーション64までを覆って空調ブースを設ける必要があり、この空調ブースの全長は、車体Wの搬送路を含むために長尺化してしまう。これに対して、第1の実施形態では、例えば、第1上塗り塗装ステーション24aを覆う空調ブースは、車体Wを囲繞する範囲に限定されるため、空調エネルギを良好に削減することができる。
【0064】
さらにまた、第1の実施形態では、車体Wに対する塗装パターンに応じて中塗り塗装工程14、上塗り塗装工程16及び上塗りクリア塗装工程18を構成する各ステーション数を容易に増減することができる。例えば、図4に示す第1塗装パターンでは、第1ベース層50aと第2ベース層50bとの二層ベース構造を採用しており、上塗り塗装工程16の塗装色を増量させることが望まれる。
【0065】
そこで、図11に示すように、第1中塗り塗装ステーション20a〜第3中塗り塗装ステーション20cを有する中塗り塗装工程14aと、第1上塗り塗装ステーション24a〜第7上塗り塗装ステーション24gを有する上塗り塗装工程16aと、第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第3上塗りクリア塗装ステーション28cを有する上塗りクリア塗装工程18とが、互いに並列して構成される。
【0066】
すなわち、中塗り塗装工程14aの第4中塗り塗装ステーション20dに代えて、上塗り塗装工程16aの第7上塗り塗装ステーション24gを配置している。第7上塗り塗装ステーション24gは、複数台の塗装ロボット26gを備える。これにより、標準タイプの塗装パターンから第1塗装パターンへの塗装切替作業は、簡単且つ短時間に遂行されるという効果が得られる。
【0067】
さらに、図6に示す第2塗装パターンに対応するために、図12に示す機種段取り替えが行われる。第2塗装パターンでは、第1ベース層50a及び第2ベース層50bの二層ベース構造を採用するとともに、第1クリア層52a及び第2クリア層52bの二層クリア構造が採用される。
【0068】
すなわち、第2塗装パターンに対応するために、第1中塗り塗装ステーション20a及び第2中塗り塗装ステーション20bを有する中塗り塗装工程14bと、第1上塗り塗装ステーション24a〜第7上塗り塗装ステーション24gを有する上塗り塗装工程16aと、第1上塗りクリア塗装ステーション28a〜第4上塗りクリア塗装ステーション28bを有する上塗りクリア塗装工程18aとが、互いに並列して配置される。
【0069】
具体的には、第3中塗り塗装ステーション20cに代えて、複数台の塗装ロボット30dを備えた第4上塗りクリア塗装ステーション28dを設置するだけでよい。これにより、種々の塗装パターンの変更にも容易且つ迅速に対応することができ、汎用性に優れるとともに、効率的な塗装作業が確実に遂行されるという効果が得られる。
【0070】
また、図1において使用する塗料によっては、第1乾燥炉34a及び第2乾燥炉34bをプレヒート部に代えたり、前記第1乾燥炉34a、第2乾燥炉34b、第1プレヒート部36a及び第2プレヒート部36bを削除することもできる。さらにまた、塗装ライン12では、第2リターンライン40を用いることにより、第5セッティング部32e及び第3乾燥炉34cを繰り返し使用することもできる。
【0071】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る塗装システム80の概略構成説明図である。なお、第1の実施形態に係る塗装システム10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0072】
塗装システム80は、中塗り塗装工程14に併設して水研ぎステーション82が設けられる。この水研ぎステーション82は、中塗り塗装処理後の塗膜を研磨することにより、塗膜の色合いや深み、平滑度等を向上させる機能を有する。
【0073】
この塗装システム80による塗装処理について、図14に示すフローチャートに沿って説明する。
【0074】
先ず、前述のステップS1〜ステップS4と同様に、ステップS51〜ステップS54が行われる。さらに、車体Wは、第1リターンライン38によって戻されて水研ぎステーション82に送られる。この水研ぎステーション82では、車体Wの中塗り塗膜に研磨処理が施された後(ステップS55)、例えば、第3セッティング部32cに送られる。車体Wは、第3セッティング部32cから第1プレヒート部36aに送られて、この第1プレヒート部36aで水切り乾燥処理が施される(ステップS56)。
【0075】
次いで、車体Wは、第1リターンライン38を介して上塗り塗装工程16に搬送され、ステップS57〜ステップS60に沿って塗装処理が施される。
【0076】
このように、第2の実施形態では、水研ぎステーション82で研磨処理が施された車体Wに対して水切り乾燥処理を行うために、専用の水切り乾燥炉を用いる必要がなく、例えば、第1プレヒート部36aが前記水切り乾燥炉としての機能を兼用することができる。これにより、極めて経済的であるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る塗装システムの概略構成説明図である。
【図2】標準タイプの塗装パターンの説明図である。
【図3】前記標準タイプの塗装パターンの処理フローチャートである。
【図4】第1塗装パターンの説明図である。
【図5】前記第1塗装パターンの処理フローチャートである。
【図6】第2塗装パターンの説明図である。
【図7】前記第2塗装パターンの処理フローチャートである。
【図8】従来の上塗り塗装工程の説明図である。
【図9】前記従来の上塗り塗装工程のタイムチャートである。
【図10】第1の実施形態の上塗り塗装工程のタイムチャートである。
【図11】前記塗装システムにおいて、第1塗装パターンに対応した概略構成説明図である。
【図12】前記塗装システムにおいて、第2塗装パターンに対応した概略構成説明図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る塗装システムの概略構成説明図である。
【図14】前記塗装システムにおける処理フローチャートである。
【図15】特許文献1の上塗り工程の説明図である。
【符号の説明】
【0078】
10、80…塗装システム 12…塗装ライン
14、14a、14b…中塗り塗装工程
20a〜20d…中塗り塗装ステーション
16、16a…上塗り塗装工程 18、18a…上塗りクリア塗装工程
32a〜32e…セッティング部 34a〜34c…乾燥炉
36a、36b…プレヒート部
22a〜22d、26a〜26g、30a〜30d…塗装ロボット
24a〜24g…上塗り塗装ステーション
28a〜28d…上塗りクリア塗装ステーション
38、40…リターンライン 82…水研ぎステーション
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被塗装物の外板及び内板の一部に対して塗装処理を施す少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程を備える塗装システムであって、
前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられるとともに、
前記中塗り塗装工程は、互いに並列される2以上の塗装ステーションを有し、
前記上塗り塗装工程は、互いに並列される2以上の塗装ステーションを有することを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗装システムにおいて、前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を含むとともに、
前記上塗りクリア塗装工程は、互いに並列される2以上の塗装ステーションを有することを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
請求項2記載の塗装システムにおいて、前記中塗り塗装工程、前記上塗り塗装工程及び前記上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流から塗装ライン上流に前記被塗装物を戻すリターンラインを備えることを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
請求項2又は3記載の塗装システムにおいて、互いに並列される前記中塗り塗装工程、前記上塗り塗装工程及び前記上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流には、複数のセッティング部及び加熱部が互いに並列されることを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
被塗装物の外板及び内板の一部に対して少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程で塗装を施す塗装方法であって、
前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられており、
前記中塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に中塗り塗装を行った後、前記被塗装物をリターンラインに沿って前記上塗り塗装工程に戻し、次いで、前記上塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に上塗り塗装を行うことを特徴とする塗装方法。
【請求項6】
請求項5記載の塗装方法において、前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を有するとともに、前記上塗りクリア塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に上塗りクリア塗装を行うことを特徴とする塗装方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の塗装方法において、前記被塗装物は、前記中塗り塗装工程、前記上塗り塗装工程及び前記上塗りクリア塗装工程で所望の塗装が行われる毎に、少なくともセッティング部又は加熱部を順次通過することを特徴とする塗装方法。
【請求項1】
被塗装物の外板及び内板の一部に対して塗装処理を施す少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程を備える塗装システムであって、
前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられるとともに、
前記中塗り塗装工程は、互いに並列される2以上の塗装ステーションを有し、
前記上塗り塗装工程は、互いに並列される2以上の塗装ステーションを有することを特徴とする塗装システム。
【請求項2】
請求項1記載の塗装システムにおいて、前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を含むとともに、
前記上塗りクリア塗装工程は、互いに並列される2以上の塗装ステーションを有することを特徴とする塗装システム。
【請求項3】
請求項2記載の塗装システムにおいて、前記中塗り塗装工程、前記上塗り塗装工程及び前記上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流から塗装ライン上流に前記被塗装物を戻すリターンラインを備えることを特徴とする塗装システム。
【請求項4】
請求項2又は3記載の塗装システムにおいて、互いに並列される前記中塗り塗装工程、前記上塗り塗装工程及び前記上塗りクリア塗装工程の塗装ライン下流には、複数のセッティング部及び加熱部が互いに並列されることを特徴とする塗装システム。
【請求項5】
被塗装物の外板及び内板の一部に対して少なくとも中塗り塗装工程及び上塗り塗装工程で塗装を施す塗装方法であって、
前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程は、塗装ラインに対して互いに並列して設けられており、
前記中塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に中塗り塗装を行った後、前記被塗装物をリターンラインに沿って前記上塗り塗装工程に戻し、次いで、前記上塗り塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に上塗り塗装を行うことを特徴とする塗装方法。
【請求項6】
請求項5記載の塗装方法において、前記中塗り塗装工程及び前記上塗り塗装工程に並列される上塗りクリア塗装工程を有するとともに、前記上塗りクリア塗装工程の2以上の塗装ステーションの中、1の塗装ステーションを選択して前記被塗装物に上塗りクリア塗装を行うことを特徴とする塗装方法。
【請求項7】
請求項5又は6記載の塗装方法において、前記被塗装物は、前記中塗り塗装工程、前記上塗り塗装工程及び前記上塗りクリア塗装工程で所望の塗装が行われる毎に、少なくともセッティング部又は加熱部を順次通過することを特徴とする塗装方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−283156(P2007−283156A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−109698(P2006−109698)
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年4月12日(2006.4.12)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】
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