説明

塗装方法

【課題】水性の材料を用いて床面の仕上塗装を行うにあたり、各種下地に幅広く適用できる方法を提供する。
【解決手段】床面に対し、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または芳香族モノマー(a)、エポキシ基含有モノマー(b)、並びに、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、及びカルボニル基含有モノマーから選ばれる1種以上の極性モノマー(c)を含むモノマー群の重合体を樹脂成分とする合成樹脂エマルション(P)と、水溶性珪酸塩(Q)とを含み、前記合成樹脂エマルション(P)と前記水溶性珪酸塩(Q)の固形分重量比率が90:10〜10:90である水性下塗材を塗付後、水性上塗材を塗付する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、床面に対する新規な塗装方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
住宅、工場、倉庫等の屋内床面、あるいは一般歩道、歩道橋、プラットホーム等の屋外床面に対して塗装を施し、美観性、防塵性、耐薬品性等の機能を付与することが行われている。このような床面に塗装を行う場合は、一般に、下地に対する被膜形成性や密着性が良好な下塗材を塗装した後に、前述のような機能を付与する上塗材が施されている。このような下塗材や上塗材としては、従来、溶剤系の材料が主流であった。
これに対し、最近では、人体への影響、環境保全、作業性等の観点から、溶剤系から水性系への転換が進められている。このうち、上塗材については水性エポキシ系、水性ウレタン系等の各種材料の提案がなされている。下塗材については、このような各種上塗材と組み合わせて使用できるとともに、下地の種類、状態等を問わずに、幅広く適用できる材料が求められている。ところが、一般に水性下塗材については、このような要望に応えるのが難しい状況であり、下地毎にそれぞれ異なる材料を選定しなければならないのが現状である。
【0003】
水性の材料を用いて床面塗装を行う技術に関し、特許文献1には、エポキシ樹脂、エポキシ樹脂硬化剤等を必須成分とする水系プライマーが記載されている。しかし、下地の表面状態が脆弱である場合、このようなプライマーを適用しても、密着性、含浸補強性等において十分な物性は得られ難いことがある。
特許文献2には、打設後のコンクリート床面に対し、リチウム含有溶液を添加した塗料を塗装することが記載されている。しかし、このような方法では、床面が既存塗膜を有する場合等において、十分な密着性を得ることが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−262254号公報
【特許文献2】特開2006−88106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述のような問題点に鑑みなされたもので、水性の材料を用いて床面の仕上塗装を行うにあたり、各種下地に幅広く適用できる方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような課題を解決するために本発明者らは、鋭意検討の結果、特定の合成樹脂エマルションと水溶性珪酸塩を必須成分とする水性下塗材を塗付した後、水性上塗材によって仕上げる塗装方法に想到し、本発明を完成するに到った。
【0007】
すなわち、本発明は以下の塗装方法に関するものである。
1.床面に対し、水性下塗材を塗付後、水性上塗材を塗付する塗装方法であって、
前記水性下塗材として、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または芳香族モノマー(a)、
エポキシ基含有モノマー(b)、並びに、
ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、及びカルボニル基含有モノマーから選ばれる1種以上の極性モノマー(c)
を含むモノマー群の重合体を樹脂成分とする合成樹脂エマルション(P)と、
水溶性珪酸塩(Q)とを含み、
前記合成樹脂エマルション(P)と前記水溶性珪酸塩(Q)の固形分重量比率が90:10〜10:90であるものを使用することを特徴とする塗装方法。
2.前記水性下塗材が、水への溶解度が5g/100g以下の水難溶性溶剤(R)を含むものであることを特徴とする1.記載の塗装方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の塗装方法では、特定の水性下塗材を用いることにより、下地の種類、状態等を問わずに、密着性、仕上り性等において優れた性能を発揮することができる。さらに、下地が脆弱な状態である場合は、含浸補強性等を発揮することもできる。このような水性下塗材を塗装した後には、所望の水性上塗材によって仕上げを行うことができる。また、本発明で用いる水性下塗材は、1液型の形態にて使用することができるため、塗装作業の負担を軽減することも可能である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
【0010】
本発明の塗装方法は、床面に適用するものである。塗装対象となる床面としては、例えば、住宅、工場、倉庫等の屋内床面、あるいは一般歩道、歩道橋、プラットホーム等の屋外床面等が挙げられる。これら床面を構成する下地としては、例えば、コンクリート、モルタル、タイル等の無機質下地、あるいはこれらに既存塗膜等が積層された下地等が挙げられる。既存塗膜としては、特に限定されず、エポキシ樹脂系塗膜、ウレタン樹脂系塗膜、アクリル樹脂系塗膜、アクリルシリコン樹脂系塗膜、ポリエステル系樹脂塗膜等が挙げられる。コンクリート下地については、レイタンス層が残存したものであってもよい。
【0011】
本発明の塗装方法は、このような各種下地からなる床面を対象とすることができ、新設工事、改修工事のいずれにも適用することができる。本発明は、無機質下地と有機質下地が混在した床面の改修工事等にも適している。本発明では、下塗材の塗装に先立ち、必要に応じ、床面に対し予め何らかの下地処理を行っておくこともできる。
下地処理としては、例えば研磨処理等による目荒しを行うことができる。このような目荒しにより、下地に付着した汚染物質等を除去し、さらに微細な凹凸が形成されることで、密着性を高めることができる。目荒しは、公知の研磨具、研削具等を用いて行えばよい。
【0012】
本発明では、上記床面に対し、まず水性下塗材を塗付する。本発明における水性下塗材は、特定の合成樹脂エマルション(P)、水溶性珪酸塩(Q)を必須成分とするものである。このうち、合成樹脂エマルション(P)は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または芳香族モノマー(a)、エポキシ基含有モノマー(b)、並びに、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、及びカルボニル基含有モノマーから選ばれる1種以上の極性モノマー(c)を含むモノマー群の重合体を樹脂成分とするものである。
【0013】
このうち、(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または芳香族モノマー(a)(以下「(a)成分」という)は、樹脂骨格の主成分となるものである。なお、本発明では、アクリル酸アルキルエステルとメタクリル酸アルキルエステルを合わせて、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと表記している。また、モノマーとは、重合性不飽和二重結合を有する化合物の総称である。
【0014】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種または2種以上で使用することができる。
芳香族モノマーは、芳香環と重合性不飽和二重結合を有する化合物であり、その具体例としては、例えばスチレン、2−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ビニルアニソール、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー群における(a)成分の重量比率は、通常60〜99重量%、好ましくは70〜97重量%である。
合成樹脂エマルション(P)では、このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族モノマーの両方を使用することにより、密着性等の性能を高めることができる。
【0015】
エポキシ基含有モノマー(b)(以下「(b)成分」という)としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、ジグリシジルフマレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシビニルシクロヘキサン、アリルグリシジルエーテル、ε−カプロラクトン変性グリシジル(メタ)アクリレート、β−メチルグリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
モノマー群における(b)成分の重量比率は、通常1〜25重量%、好ましくは3〜20重量%である。
【0016】
本発明では、極性モノマー(c)(以下「(c)成分」という)として、ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、及びカルボニル基含有モノマーから選ばれる1種以上を用いる。
このうち、ニトリル基含有モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、α−シアノエチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミド基含有モノマーとしては、例えば、マレイン酸アミド、(メタ)アクリルアミド、N−モノアルキル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタクリレート)、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル](メタ)アクリルアミド、ビニルアミド等が挙げられる。
カルボニル基含有モノマーとしては、例えば、アクロレイン、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルブチルケトン等が挙げられる。
モノマー群における(c)成分の重量比率は、通常0.1〜15重量%、好ましくは0.2〜10重量%である。
【0017】
合成樹脂エマルション(P)を構成する成分としては、本発明の効果を阻害しない範囲内で、上記(a)〜(c)成分と共重合可能なその他のモノマーを使用することもできる。このようなモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、イソクロトン酸、サリチル酸等のカルボキシル基含有モノマー;アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノ−n−ブチル(メタ)アクリレート、ブチルビニルベンジルアミン、ビニルフェニルアミン、p−アミノスチレン、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有モノマー;ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート等の水酸基含有モノマー;フッ化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系モノマー;エチレン、プロピレン、イソプレン、ブタジエン、ビニルエーテル、ビニルケトン、シリコーンマクロマー等が挙げられる。
【0018】
上記その他のモノマーのうち、カルボキシル基含有モノマーについては、モノマー群における重量比率を3重量%以下(好ましくは1重量%以下)とすることが望ましい。カルボキシル基含有モノマーを含まない態様も好適である。アミノ基含有モノマーについても、モノマー群における重量比率を3重量%以下(好ましくは1重量%以下)とすることが望ましく、アミノ基含有モノマーを含まない態様も好適である。本発明では、このようなモノマーの使用を抑えることにより、(b)成分の極性が活かされ、優れた密着性を発揮することができる。
【0019】
合成樹脂エマルション(P)は、上記モノマーを適宜混合したモノマー群を乳化重合することにより製造することができる。重合方法としては公知の方法を採用すればよく、通常の乳化重合の他、ソープフリー乳化重合、フィード乳化重合、シード乳化重合等を採用することもできる。重合時には、乳化剤、開始剤、分散剤、重合禁止剤、重合抑制剤、緩衝剤、連鎖移動剤等を使用することができる。
【0020】
乳化剤としては、乳化重合に使用可能な各種界面活性剤が使用でき、これらは重合性不飽和二重結合を有する反応性タイプ(反応性界面活性剤)であってもよい。乳化剤としては、通常、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤をそれぞれ単独でまたは組み合わせて用いればよい。
【0021】
合成樹脂エマルション(P)としては、乳化剤として、少なくともアニオン性界面活性剤を用いたものが好適である。これにより、合成樹脂エマルション(P)の平均粒子径を比較的小さくすることができ、含浸補強性、密着性等の点で有利な効果が得られる。具体的な態様としては、アニオン性界面活性剤を単独で用いる場合、またはアニオン性界面活性剤とノニオン性界面活性剤を併用する場合が挙げられる。
【0022】
合成樹脂エマルション(P)の平均粒子径は、通常300nm以下、好ましくは20〜120nm、より好ましくは30〜100nmである。平均粒子径がこのような範囲内であれば、含浸補強性、密着性、シール性、耐白華化性等において有利な効果を得ることができる。なお、ここに言う平均粒子径は、動的光散乱法により測定される値である。
【0023】
合成樹脂エマルション(P)のガラス転移温度は、上記モノマーの種類、混合比率等を選定することで調整できる。このガラス転移温度は、最終的な要求性能等を考慮して適宜設定すればよいが、通常は−50〜80℃程度、好ましくは−40〜60℃程度である。なお、合成樹脂エマルションのガラス転移温度は、Foxの計算式により求めることができる。
【0024】
本発明では、上記合成樹脂エマルション(P)における(b)成分、(c)成分の作用により、密着性を高めることができる。さらに、これら(b)成分、(c)成分は、合成樹脂エマルション(P)自体を安定化させるとともに、合成樹脂エマルション(P)と水溶性珪酸塩(Q)を混合した際の安定性向上にも寄与するものである。これにより、水性下塗材を1液型の材料とすることができ、塗装作業の効率を高めることが可能となる。
合成樹脂エマルション(P)は、(a)成分を主体とする重合体がエマルション粒子内部を構成し、エマルション粒子表層に(b)成分、(c)成分の極性基が存在する形態をとっているものと推測される。本発明では、合成樹脂エマルション(P)がこのような形態であることにより、上記効果が奏されるものと思われる。
【0025】
水性下塗材における水溶性珪酸塩(Q)は、含浸補強性、密着性等を付与するための必須成分である。水溶性珪酸塩(Q)としては、具体的に、MO・nSiO(Mはアルカリ金属を示す。nは2〜10。)で示されるものが使用できる。アルカリ金属Mとしては、Li、Na、Kから選ばれる1種以上が好適である。このような水溶性珪酸塩(Q)としては、水溶性珪酸リチウム、水溶性珪酸ナトリウム、水溶性珪酸カリウム等が挙げられ、この中でも特に珪酸リチウムが好適である。
上記式中のnは、通常2〜10であり、好ましくは3〜8である。nがこのような範囲内であれば、含浸補強性、密着性に加え、耐白華性、耐水性等においても有利な効果を得ることができる。
また、このような水溶性珪酸塩(Q)は、完全に水溶性の状態であるものが好ましい。コロイド状のものでは、含浸補強性、密着性等の点で十分な効果が得られ難くなるおそれがある。
【0026】
合成樹脂エマルション(P)と水溶性珪酸塩(Q)の固形分重量比率は、通常90:10〜10:90、好ましくは80:20〜30:70、より好ましくは75:25〜50:50とする。
合成樹脂エマルション(P)と水溶性珪酸塩(Q)の固形分重量比率がこのような範囲内であれば、本発明の効果発現の点で好適である。上記比率よりも水溶性珪酸塩(Q)が少なすぎる場合は、含浸補強性、密着性等において十分な効果が得られ難くなる。逆に、上記比率よりも水溶性珪酸塩(Q)が多すぎる場合は、上塗材の仕上り性、密着性等において不具合が生じやすくなる。
【0027】
本発明における水性下塗材は、上記成分に加え、水への溶解度が5g/100g以下の水難溶性溶剤(R)(以下「(R)成分」という)を含むことが望ましい。(R)成分を含むことにより、各種下地への適性等を高めることができ、上塗材の仕上り性等の点においても好適である。(R)成分としては、水への溶解度が1g/100g未満であるものがより望ましいものである。
具体的に(R)成分としては、例えば、ジエチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチレート等が挙げられる。
上記(R)成分は、合成樹脂エマルション(P)の固形分100重量部に対し、通常1〜40重量部、好ましくは2〜30重量部となる重量比率で混合すればよい。
【0028】
本発明における水性下塗材は、上記成分に加え、HLB12以上のノニオン性界面活性剤(S)(以下「(S)成分」という)を含むことが望ましい。(S)成分を含むことにより、下塗材自体の安定性が高まり、含浸補強性等においても有利な効果が得られる。
(S)成分の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン・オキシプロピレンブロックコポリマー等が挙げられ、これらのうちHLBが12以上のものが使用できる。(S)成分のHLBは、好ましくは12〜17、より好ましくは13〜15である。
なお、HLBとは、親水性−親油性バランスの略称で、両親媒性物質の親水性と親油性の強度比を数値化して表したものである。
【0029】
上記(S)成分は、合成樹脂エマルション(P)の固形分100重量部に対し、通常1〜30重量部、好ましくは2〜20重量部となる重量比率で混合すればよい。このような重量比率であれば、耐水性、仕上り性等の諸物性を損うことなく、上記効果を得ることができる。
【0030】
水性下塗材には、上記成分以外に、着色顔料、体質顔料、骨材、可塑剤、造膜助剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、pH調整剤、繊維類、つや消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、吸着剤、触媒、架橋剤、水等を混合することができる。水性下塗材は、前述の成分に加え、必要に応じこれら成分を常法により均一に混合することで製造できる。このようにして得られる水性下塗材は、1液型の形態にて使用することができる。
【0031】
水性下塗材の塗装方法としては、刷毛塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等種々の方法を採用することができる。塗付け量は、通常0.05〜0.5kg/m、好ましくは0.1〜0.4kg/m程度である。このような塗付け量の範囲内で、複数回に分けて塗装することも可能である。
塗装及びその後の乾燥は、通常、常温(0〜40℃)で行えばよい。
【0032】
本発明では、上記水性下塗材の乾燥後、各種水性上塗材を塗装する。水性上塗材としては、例えば、各種水性樹脂をバインダーとして含むものが使用可能である。樹脂の種類としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂等、あるいはこれらの複合物等が挙げられる。水性樹脂の態様としては、水溶性樹脂及び/または合成樹脂エマルションが挙げられる。
【0033】
本発明では、水性上塗材中の樹脂として、反応硬化型樹脂を好適に用いることができる。反応硬化型樹脂における官能基の組合せとしては、例えば、エポキシ−アミン、ポリオール−イソシアネート、カルボキシル−エポキシ、カルボキシル−金属イオン、カルボキシル−カルボジイミド、カルボキシル−オキサゾリン、カルボニル−ヒドラジド、加水分解性シリル基どうし等が挙げられる。このような反応硬化型樹脂は、1液型であっても、2液以上の多液型であってもよい。
【0034】
水性上塗材は、上記水性樹脂以外の成分として、着色顔料、体質顔料、骨材、可塑剤、凍結防止剤、防腐剤、防黴剤、抗菌剤、消泡剤、顔料分散剤、増粘剤、レベリング剤、湿潤剤、pH調整剤、繊維類、つや消し剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、吸着剤、触媒、架橋剤等を含むものであってもよい。このような成分を適宜組み合わせて使用することにより、種々の形態の上塗材を設計することができる。水性上塗材は、水性樹脂に加え、必要に応じこれら成分を常法により均一に混合することで製造できる。
【0035】
水性上塗材の塗装においては、刷毛塗り、スプレー塗装、ローラー塗装等種々の方法を採用することができる。塗付け量は、通常0.1〜1kg/m、好ましくは0.2〜0.5kg/m程度である。このような塗付け量の範囲内で、複数回に分けて塗分けることも可能である。
塗装及びその後の乾燥は、通常、常温で行えばよい。
【実施例】
【0036】
以下に実施例を示し、本発明の特徴をより明確にする。
【0037】
各水性下塗材における合成樹脂エマルションとしては、表1に示すモノマー組成により乳化重合して得られた固形分40重量%の合成樹脂エマルション(樹脂1〜8)を使用した。表1におけるモノマーは以下の通りである。
・ST:スチレン
・MMA:メチルメタクリレート
・2EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
・GMA:グリシジルメタクリレート
・AN:アクリロニトリル
・AAm:アクリルアミド
・DAAm:ジアセトンアクリルアミド
・MAA:メタクリル酸
【0038】
【表1】

【0039】
<水性下塗材の製造>
表2、3に示す配合に従い、常法により各原料を均一に混合して被覆材を製造した。合成樹脂エマルション以外の原料としては、以下に示すものを使用した。なお、下塗材14は、製造後に不安定化してしまった。
・水溶性珪酸塩:珪酸リチウム水溶液(LiOとSiOのモル比1:3.5、固形分24重量%)
・界面活性剤1:ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB14.0)
・界面活性剤2:ノニオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンアルキルエーテル、HLB11.7)
・溶剤1:2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールモノイソブチレート(水への溶解度<1g/100g)
・溶剤2:プロピレングリコールn−ブチルエーテル(水への溶解度6g/100g)
【0040】
【表2】

【0041】
【表3】

【0042】
<試験方法>
・試験1
下地として珪酸カルシウム板を用い、この下地に対し、各水性下塗材を塗付け量0.2kg/mで刷毛塗りし、標準状態(温度23℃、相対湿度50%)にて2時間乾燥後、水性上塗材(水性1液型アクリル樹脂系上塗材(以下「上塗材1」という)または水性2液型エポキシ系上塗材(以下「上塗材2」という))を塗付け量0.3kg/mで刷毛塗りし、標準状態にて72時間乾燥することにより、試験体を作製した。
得られた試験体につき、クロスカット法(4×4mm・25マス)により、密着性を評価した。なお、この評価では、値が大きいほど密着性に優れていることを示している。
【0043】
・試験2
下地として、珪酸カルシウム板に替えてスレート板を用いた以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
【0044】
・試験3
下地として、珪酸カルシウム板に替えて、エポキシ樹脂系塗膜面を有するスレート板を用いた以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
【0045】
・試験4
下地として、珪酸カルシウム板に替えて、ウレタン樹脂系塗膜面を有するスレート板を用いた以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
【0046】
・試験5
下地として、珪酸カルシウム板に替えて、アクリル樹脂系塗膜面を有するスレート板を用いた以外は、試験例1と同様の方法で試験を行った。
【0047】
<試験結果>
使用した水性下塗材と水性上塗材の組み合わせ、及び試験結果を表4〜5に示す。
実施例1〜14では、いずれの試験においても良好な結果を得ることができた。
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に対し、水性下塗材を塗付後、水性上塗材を塗付する塗装方法であって、
前記水性下塗材として、
(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び/または芳香族モノマー(a)、
エポキシ基含有モノマー(b)、並びに、
ニトリル基含有モノマー、アミド基含有モノマー、及びカルボニル基含有モノマーから選ばれる1種以上の極性モノマー(c)
を含むモノマー群の重合体を樹脂成分とする合成樹脂エマルション(P)と、
水溶性珪酸塩(Q)とを含み、
前記合成樹脂エマルション(P)と前記水溶性珪酸塩(Q)の固形分重量比率が90:10〜10:90であるものを使用することを特徴とする塗装方法。
【請求項2】
前記水性下塗材が、水への溶解度が5g/100g以下の水難溶性溶剤(R)を含むものであることを特徴とする請求項1記載の塗装方法。

【公開番号】特開2010−188327(P2010−188327A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−38492(P2009−38492)
【出願日】平成21年2月20日(2009.2.20)
【出願人】(000180287)エスケー化研株式会社 (227)
【Fターム(参考)】