説明

塗装機

【課題】被塗装物の下面に塗料が付着しないようにする。
【解決手段】複数の円板23が設けられた回転軸22を複数有し、回転軸22とともに円板23が回転することによって、円板23上に載置された被塗装物Wを搬送するコンベア10と、コンベア10の上方に設けられ、塗料を噴出する塗料ガン80と、円板23上に載置された被塗装物Wを円板23よりも上方へ上昇させるシリンダ(上下動部材54)と、円板23に対して設けられ、円板23を遮蔽しない非遮蔽位置と、円板23を遮蔽する遮蔽位置との間を変位可能なカバー30とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗装機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、板材(被塗装物)に対して塗装をする際、次のような装置が使用されている。
その装置は、コンベアを有しており、コンベアの上方には塗料ガンが設けられている。
コンベアは、進行方向に沿って複数の回動軸を有し、各回動軸にはローラ又は複数の円板が同心的に固定されている。
そして、板材が、そのコンベア(ローラ又は円板)上に載置されて移動されるとともに、その板材(その上面)に対して塗料ガンから塗料が噴出されて、板材の一方の面(上面)に塗装がされる。
板材の他方の面に塗装がされる場合は、上述のように一方の面に塗装がされた板材が上下反転され、上述と同様にして、当該他方の面(上下反転後の上面)に対して塗装がされる。
【0003】
ところで、板材のうちの一方の面にのみ、塗装がされる場合もある。
しかしながら、その際、上述の装置では、次のような欠点がある。
すなわち、コンベア上の板材に対して塗料ガンから塗料が噴出される際に、その塗料は、コンベア(そのうち、板材が載置されていない部分におけるローラ又は円板)に対しても付着する。
そして、次の板材がそのコンベアによって搬送され、その上面(一方の面)に対して塗装がされる際に、上述のようにしてコンベア(そのローラ又は円板)に付着した塗料が、当該次の板材の下面(他方の面)に付着してしまう。
【0004】
板材の両面に塗装がされる場合は、一方の面(上面)が塗装された後にその板材の他方の面(上下反転後の上面)にも塗装がされる際に、上述のようにしてコンベア(そのローラ又は円板)から付着した塗料の上にも重ねて塗装がされるため、問題はない。
しかし、板材のうちの一方の面にのみ塗装がされる場合には、その板材の他方の面の一部に塗料が付着したままとされ、見苦しい状態となってしまうのである。特に、その面が人目にさらされる態様で使用される場合に、見苦しいことになってしまうのである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、被塗装物の下面に塗料が付着しない塗装機を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、請求項1に係る発明は、円形断面を有する部材である円形断面部材を複数有し、その円形断面部材が自身の中心軸線回りに回転することによって、その円形断面部材上に載置された被塗装物を搬送するコンベアと、前記コンベアの上方に設けられ、塗料を噴出する塗料噴出装置と、前記円形断面部材上に載置された前記被塗装物を前記円形断面部材よりも上方へ上昇させるリフト機構と、前記円形断面部材に対して設けられ、前記円形断面部材を遮蔽しない非遮蔽位置と、前記円形断面部材を遮蔽する遮蔽位置との間を変位可能な円形断面部材遮蔽部材とを有する、塗装機である。
【0007】
「円形断面部材」として、水平方向に延びる中心軸線を有する円板(ホイール)や、円柱状のローラ等がある。
【0008】
この発明の塗装機では、コンベアにおいては、円形断面部材が自身の中心軸線回りに回転することによって、その円形断面部材上に載置された被塗装物が搬送される。
そして、円形断面部材上の被塗装物が、リフト機構によって、その円形断面部材よりも上方へ上昇され、その状態で、円形断面部材遮蔽部材が非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位する。その状態で、塗料噴出装置から塗料が噴出される。
このようにして、この塗装機では、円形断面部材が円形断面部材遮蔽部材によって遮蔽された状態で、塗料噴出装置から塗料が噴出されて、被塗装物の上面に塗装が行われる。
【0009】
その際、円形断面部材が円形断面部材遮蔽部材によって遮蔽されているため、円形断面部材(特に被塗装物によって覆われていない円形断面部材)に塗料が付着することが防止される。
このため、次の被塗装物がその円形断面部材に載置された際にも、その被塗装物の下面(円形断面部材と接触する部分)に塗料が付着することが防止されるのである。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明の塗装機であって、前記リフト機構は、前記被塗装物の下側に設けられ、下降位置と上昇位置との間を上下動可能であり、その上昇位置に位置する状態で前記被塗装物を前記円形断面部材よりも上方へ持ち上げる複数の上下動部材を有するものである、塗装機である。
【0011】
この発明の塗装機では、請求項1に係る発明の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、リフト機構においては、被塗装物の下側に設けられた複数の上下動部材が下降位置から上昇位置へと上昇することによって、被塗装物が円形断面部材よりも上方へ上昇される。そして、その状態で、円形断面部材遮蔽部材が非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位し、コンベアの上方に設けられた塗料噴出装置から塗料が噴出される。
このように、この発明の塗装機では、リフト機構が、被塗装物の下側に設けられた複数の上下動部材を有するものであり、被塗装物の上側には特に部材が存在する必要がない。このため、被塗装物の上側に存在する部材によって塗料噴出装置からの塗料の噴出が妨げられることがなく、塗料噴出装置から噴出される塗料によって、被塗装物に対して円滑に塗装が行われる。
【0012】
なお、「上下動部材」としては、鉛直(又は鉛直方向成分を有する方向)に延びるシリンダによって上下動される部材や、鉛直(又は鉛直方向成分を有する方向)に延びモータによって回転駆動されるねじに螺合され、ねじの回転に伴って上下動される部材があり得る。
【0013】
請求項3に係る発明は、請求項2に係る発明の塗装機であって、前記複数の上下動部材については、そのうち前記被塗装物に対応するもののみが前記下降位置と前記上昇位置との間を上下動し、それ以外のものは前記下降位置に留まるように制御され、前記複数の上下動部材に対応して各々上下動部材遮蔽部材が設けられ、その各上下動部材遮蔽部材は、前記各上下動部材が前記下降位置にある状態で前記上下動部材を遮蔽する遮蔽位置にあり、前記各上下動部材が前記上昇位置にある状態で前記上下動部材を遮蔽しない非遮蔽位置に位置するものである、塗装機である。
【0014】
この発明の塗装機では、請求項2に係る発明の塗装機の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、被塗装物に対応する上下動部材のみが下降位置から上昇位置に位置することによって被塗装物が上昇されるとともに、被塗装物に対応しない上下動部材は下降位置に留まる。
そして、上下動部材遮蔽部材は、被塗装物に対応して上昇位置に位置する上下動部材についてのみ非遮蔽位置に位置し、被塗装物に対応せず下降位置に位置するままの上下動部材については遮蔽位置に位置する。
このため、被塗装物に対応する上下動部材には、当該被塗装物によって、塗料噴出装置から噴出される塗料が付着することが防止されるとともに、被塗装物に対応しない上下動部材には、上下動部材遮蔽部材によって、塗料噴出装置から噴出される塗料が付着することが防止される。
こうして、塗料噴出装置から噴出される塗料がいずれの上下動部材にも付着することが防止される。
このため、次の被塗装物の下面のうち上下動部材と接触する部分に塗料が付着することが防止されるのである。
【0015】
請求項4に係る発明は、請求項3に係る発明の塗装機であって、前記上下動部材遮蔽部材は、ヒンジを中心に回動可能に設けられることによって前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間を変位可能であり、前記上下動部材が前記下降位置から前記上昇位置に向かって変位することにつれて当該上下動部材によって前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置へと押し上げられ、前記上下動部材が前記上昇位置から前記下降位置に向かって変位することにつれて重力に基づいて前記非遮蔽位置から前記遮蔽位置へと戻るものである、塗装機である。
【0016】
この発明の塗装機では、請求項3に係る発明の塗装機の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、上下動部材が下降位置から上昇位置に向かって変位することに伴って、上下動部材遮蔽部材は、上下動部材によって押し上げられ、ヒンジを中心に回動して、遮蔽位置から非遮蔽位置へと変位する。また、上下動部材が上昇位置から下降位置に向かって変位することに伴って、上下動部材遮蔽部材は、重力に基づいて、ヒンジを中心に回動して、非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位する。
このように、この発明の塗装機では、上下動部材遮蔽部材は、上下動部材が下降位置と上昇位置との間を変位することに伴って、特に電気等に基づく動力を必要とすることなく、遮蔽位置と非遮蔽位置との間を変位し得るのである。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の塗装機であって、前記円形断面部材遮蔽部材が、前記円形断面部材の周縁部のうちの一部に対応する形状を有し、当該円形断面部材と同心的に回動することによって前記非遮蔽位置と前記遮蔽位置との間を変位するものである、塗装機である。
【0018】
この発明の塗装機では、請求項1〜請求項4のいずれかに係る発明の塗装機の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の塗装機では、円形断面部材遮蔽部材が、円形断面部材と同心的に回動することによって、非遮蔽位置と遮蔽位置との間を変位する。
このため、円形断面部材遮蔽部材は、常に円形断面部材の近傍に位置していることとなり、円形断面部材遮蔽部材が他の部材の配置を阻害する(すなわち邪魔になる)ことが防止される。
【0019】
請求項6に係る発明は、請求項5に係る発明の塗装機であって、前記円形断面部材遮蔽部材が、前記円形断面部材と同心的に延びる筒状をなすとともに自身の軸線方向に沿ってその一部が欠落されて開口部が形成された形状を有するとともに、前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置に回動して変位する際における後端部となる縁部に遠心方向成分を有する方向に向かって突出する塗料落下防止部が形成されている、塗装機である。
【0020】
この発明の塗装機では、請求項5に係る発明の塗装機の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の塗装機では、円形断面部材遮蔽部材の外面に塗料が付着した場合に、その円形断面部材遮蔽部材が円形断面部材と同心的に回動して遮蔽位置から非遮蔽位置へと変位する際に、その回動の変位の後端部に形成されている塗料落下防止部によって、その回動の変位に伴ってその塗料が当該後端部から落下する、ということが防止される。
このように、この発明の塗装機では、円形断面部材遮蔽部材の外面に付着した塗料が円形断面部材遮蔽部材の回動の後端部から落下して円形断面部材に付着する、ということが防止され、その点でも次の被塗装物の下面に塗料が付着することが防止される。
【0021】
請求項6に係る発明をさらに改良した発明として、次の発明が考えられる。
「請求項6に記載の塗装機であって、
前記被塗装物の搬送方向における下流側の端部に対応し得る円形断面部材遮蔽部材の前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置への回動方向は、前記被塗装物の搬送の際の前記円形断面部材の回動方向と同一方向であり、
前記被塗装物の搬送方向における上流側の端部に対応し得る円形断面部材遮蔽部材の前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置への回動方向は、前記被塗装物の搬送の際の前記円形断面部材の回動方向と反対方向である、
塗装機。」
【0022】
この発明の塗装機では、請求項6に係る発明の塗装機の作用効果に加えて、次の作用効果が得られる。
すなわち、この発明の塗装機では、被塗装物の下流側/上流側の端部に対応する円形断面部材遮蔽部材が遮蔽位置から非遮蔽位置へと回動して変位する際には、その円形断面部材遮蔽部材は、そのうちの円形断面部材の中心軸線よりも上方の部分が下流側/上流側に変位するように回動する。
このため、被塗装物の下流側/上流側の端部に対応する円形断面部材遮蔽部材については、そのうちの下流側/上流側の部分に塗料が付着しやすいのであるが、その円形断面部材遮蔽部材が上述のように回動することによって、その塗料がその円形断面部材遮蔽部材のうちの他の側の方向に流れることがない。
このため、円形断面部材遮蔽部材の全般に塗料が及ぶことが防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
次に、本発明の一実施形態について、図面に基づいて説明する。
図1〜図4に示すように、この塗装機は、コンベア10,塗料ガン80(図1には図示されていない),制御装置(図示省略)を有している。コンベア10及び塗料ガン80は、その制御装置によって制御される。
【0024】
コンベア10は一対の支持部材20を有している。各支持部材20は、ほぼ水平にかつ相互に平行に、コンベア10の長さ方向(被塗装物Wの搬送方向)に延びている。
図1及び図4に示すように、両支持部材20の間に、複数の回転軸22が配設されている。すべての回転軸22は、同一の高さ位置において、ほぼ水平にかつ相互に平行に延び、両支持部材20とは直角方向に延びている。各回転軸22の各端部又はその近傍は、支持部材20に対して固定された軸受け21によって、回転可能にかつ位置固定的に支持されている。
【0025】
図1,図4〜図6に示すように、各回転軸22には、複数の円板23(本発明の円形断面部材に該当する)が固定されている。各円板23は、すべて同一の大きさ(径)を有しており、その中心軸線において各回転軸22に対して固定されている。
図1,図2,図4に示すように、各回転軸22の一端部には、スプロケット24が固定されている。
図2に示すように、多数のスプロケット24に対応して、支持部材20には、搬送用モータ25が設けられている。搬送用モータ25の回転軸(符号省略)に固定されたスプロケット26,多数のスプロケット24,それらに付随する多数のスプロケット27にわたってチェーン28が掛け渡されている。そして、搬送用モータ25の回転に伴ってチェーン28が循環することによって、各回転軸22が回転する。
こうして、各円板23が一方向に回転し、円板23(コンベア10)に載置された被塗装物Wが搬送される。
【0026】
図1に示すように、コンベア10の上流部及び下流部以外の各回転軸22には、次のように、カバー30(30A,30B)が設けられている。カバー30が、本発明の円形断面部材遮蔽部材に該当する。
図5及び図6に示すように、カバー30は、ほぼ、円筒状の形状をベースとし、そのうちの一部がその長さ方向に沿って欠落された形状を有している。こうして、カバー30には、その長さ方向に沿って延びる帯状の開口部34が形成されている。
すなわち、カバー30においては、基準とする円筒形状の中心軸線を中心に、周壁部32が約270度の角度範囲に及んでおり、開口部34は残りの約90度の角度範囲において形成されている。
周壁部32のうちの一縁部には、塗料落下防止部36が形成されている。塗料落下防止部36は、周壁部32の一縁部において爪状に遠心方向成分を有する方向に突出している(その詳細については後述する)。
【0027】
図4に示すように、カバー30は、回転軸22に対して、軸受け31を介して、その回転軸22と同心的に配設されている。
各カバー30の一端部には、円環状の歯車38が設けられている。歯車38も、回転軸22に対して軸受け39を介して配設されている。
支持部材20には、各歯車38に対応して、回動軸42が、軸受け41を介して各々位置固定的に設けられている。各回動軸42の一端部には歯車43が固定されており、各歯車43は各歯車38とかみ合わされている。各回動軸42の他端部にはスプロケット44が固定されている。
【0028】
図3に示すように、多数のスプロケット44に対応して、支持部材20には、変位用モータ45が設けられている。変位用モータ45の回転軸(符号省略)に固定されたスプロケット46,多数のスプロケット44,それらに付随する多数のスプロケット47にわたってチェーン48が掛け渡されている。
そして、変位用モータ45の往復回転(往復回動)に伴ってチェーン48が往復変位することによって、各回動軸42が往復回動する。
【0029】
以上のようにして、各カバー30は、非遮蔽位置(図5)と遮蔽位置(図6)との間を変位する。
図5,図8A(a)(b),図8B(b)に示すように、非遮蔽位置とは、開口部34が上方に位置し、各円板23(その上部)を遮蔽せず、各円板23の上部が露出する位置である。
図6,図8A(c),図8B(a)に示すように、遮蔽位置とは、開口部34が上方以外に位置し、各円板23(その上部等)を遮蔽する位置である(各図に示されるように、開口部34が下方に位置するのが代表例である)。
なお、すべてのカバー30の位相(開口部34の角度位置)は同一となるようにされている。すなわち、すべてのカバー30は、同時に、非遮蔽位置又は遮蔽位置に位置する。
【0030】
図5,図6,図8A,図8Bに示すように、各カバー30において、その周壁部32のうちの一縁部に形成された塗料落下防止部36は、周壁部32から遠心方向成分を有する方向に突出している(このことは前述)。
そして、図6,図8A(c),図8B(a)に示すように、カバー30が遮蔽位置に位置する状態(特に、そのうちでも上述した代表例の状態)において、塗料落下防止部36は、その基端部から先端部に向かうにつれて徐々に上方に向かうように水平から傾斜している。
【0031】
図5,図6,図8A,図8Bに示すように、最も下流側のカバー30A以外のすべてのカバー30(30B)については、塗料落下防止部36は、遮蔽位置に位置する状態における下流側の縁部(すなわち、非遮蔽位置に位置する状態における上流側の縁部)に形成されている。
一方、最も下流側のカバー30Aについては、塗料落下防止部36は、遮蔽位置に位置する状態における上流側の縁部(すなわち、非遮蔽位置に位置する状態における下流側の縁部)に形成されている。
【0032】
図8A,図8Bに示すように、最も下流側のカバー30A以外のすべてのカバー30(30B)については、各円板23の回転方向(被塗装物Wを搬送する際に回転する方向)に沿って回動することによって、非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位する。また、各円板23の回転方向とは反対の方向に沿って回動することによって、遮蔽位置から非遮蔽位置へ変位する。
一方、図3に示すように、最も下流側のカバー30Aについては、歯車38と歯車43との間に歯車49がかみ合わされている。このため、図8Aに示すように、そのカバー30Aは、各円板23の回転方向とは反対の方向に沿って回動することによって、非遮蔽位置から遮蔽位置へと変位する。また、各円板23の回転方向に沿って回動することによって、遮蔽位置から非遮蔽位置へと変位する。
すなわち、いずれのカバー30(30A,30B)も、遮蔽位置から非遮蔽位置に変位する際には、塗料落下防止部36が回動の後端部となる方向に、回動するのである。
【0033】
コンベア10(図1等)に対して、次のようにリフト機構が設けられている。
図1及び図4に示すように、リフト機構は、複数のシリンダ50によって構成されている。各シリンダ50は、コンベア10の下方において、鉛直に配設されている。
図7に示すように、各シリンダ50は、ハウジング60内に収容されている。各ハウジング60は、ほぼ四角筒状をなしている。各ハウジング60の上端部には、開口部62が形成されている。
【0034】
各ハウジング60には、開口部62に対応して、蓋材66(上下動部材遮蔽部材)が、ヒンジ64を介して設けられている。蓋材66は、ヒンジ64を中心に回動することによって、閉位置(図7(a))と開位置(図7(b)(c))との間を変位可能である。
蓋材66は、ほぼ四角板状をなし、その3辺には下方(閉位置に位置する状態における下方)に向かってフランジ67が形成されている。ヒンジ64は、フランジ67のうち、その3辺のうちの中央の辺に対応する部分に設けられている。
蓋材66は、閉位置において、ほぼ水平の状態で、ハウジング60の開口部62を閉塞する。一方、蓋材66は、開位置において、開口部62を開放する。
【0035】
シリンダ50はロッド52を有し、ロッド52は、下降位置(図7(a))と上昇位置(図7(c))との間を変位(上下動)可能である。
ロッド52には、上下動部材54が取り付けられている。上下動部材54は、ほぼ有蓋四角筒状をしている。上下動部材54の上端部のうちのほぼ半分の部分は水平面状の押圧部55とされており、上下動部材54の上端部のうちの残りのほぼ半分の部分であってヒンジ64に対応する側の部分は、傾斜部56とされている。傾斜部56は、ヒンジ64に対応する縁部から押圧部55に向かうにつれて徐々に上方に向かうように傾斜している。
【0036】
蓋材66は、ロッド52(上下動部材54)とともに、次のように変位する。
すなわち、図7(a)に示すように、ロッド52(上下動部材54)が下降位置に位置する状態では、蓋材66は自重によって閉位置に位置する。この状態で、上下動部材54(押圧部55等)は、蓋材66によって遮蔽されている。
また、この状態で、上下動部材54(その押圧部55)及び蓋材66は、コンベア10の各円板23の上端部よりも低い位置にある。すなわち、上下動部材54(その押圧部55)及び蓋材66は、コンベア10(複数の円板23)に載置されている被塗装物W(その下面)よりも低い位置にある。
【0037】
図7(a)→(b)→(c)に示すように、ロッド52(上下動部材54)が上昇位置に向かって上昇することに伴って、上下動部材54の傾斜部56(そのうちの縁部)によって蓋材66が上方へ押圧され、蓋材66はヒンジ64を中心に開位置に向かって回動する。
【0038】
こうして、図7(c)に示すように、ロッド52(上下動部材54)が上昇位置に位置する状態では、蓋材66は開位置に位置し、上下動部材54の押圧部55が露出した状態(遮蔽されない状態)にある。
また、この状態で、上下動部材54の押圧部55は、コンベア10(各円板23)の上端部よりも高い位置にある。すなわち、図7(b)→(c)に示すように、ロッド52(上下動部材54)が上昇位置に向かって上昇することに伴って、コンベア10(複数の円板23)に載置されている被塗装物Wは、押圧部55によって上方へ押圧され、被塗装物Wは、コンベア10の複数の円板23(その上端部)から上方へ持ち上げられることとなる。
【0039】
また、ロッド52が上昇位置(図7(c))から下降位置(図7(a))に戻ることに伴って、蓋材66は、自重によって閉位置に戻る。
【0040】
各シリンダ50(ハウジング60)には、センサ(図示省略)が伴っている。各センサは、制御装置(前述)に接続されている。センサは、その上方に被塗装物Wが存在するか否かを検知する。
【0041】
通常においては、図7(a)に示すように、ロッド52(上下動部材54)は下降位置に位置し、蓋材66は閉位置に位置している。そして、上述のセンサによってその上方に被塗装物Wが存在すると検知された場合にのみ、制御装置の制御に基づいて、そのシリンダ50が駆動され、図7(c)に示すように、そのロッド52(上下動部材54)が上昇位置まで上昇し、蓋材66は開位置に変位する。
すなわち、図8A(b)に示すように、コンベア10(図1等参照)によって搬送されてきた被塗装物Wの大きさに応じて、それに対応するシリンダ50のみ、そのロッド52(上下動部材54)が上昇位置に位置し、その蓋材66のみ開位置に変位する(図7(c))。一方、同じく図8A(b)に示すように、それ以外のシリンダ50については、そのロッド52(上下動部材54)は下降位置に留まり、その蓋材66は閉位置に留まるのである(図7(a))。
【0042】
図2〜図4に示すように、塗料ガン80(塗料噴出装置)は、コンベア10の上方に設けられている。塗料ガン80は、同一高さ位置において、コンベア10の幅方向及び長さ方向の両方向に移動可能であり、下方に向けて霧状の塗料を噴出する。
なお、このコンベア10(各回転軸22よりも下方)には、前述のセンサ(シリンダ50に伴うもの)と同様に、多数のセンサ(図示省略)が配設されており、それらのセンサも制御装置(前述)に接続されている。そして、塗料ガン80は、制御装置の制御の下、それらのセンサによってその上方に被塗装物Wが存在していると検知された範囲及びその近傍の範囲を移動しつつ、塗料を噴出するのである。
【0043】
次に、この塗装機の作用及び効果について説明する。
図8A(a)に示すように、各シリンダ50については、通常は、ロッド52が下降位置に位置しているとともに、蓋材66は閉位置に位置している。また、カバー30が非遮蔽位置に位置している(図5も参照)。その状態で、板材等の被塗装物Wがコンベア10(図1)の上流側の部分(上流側の部分の円板23)に載置される。
【0044】
そして、図1,図2,図4に示すように、搬送用モータ25の駆動によって各回転軸22が回転し、各円板23が回転することによって、被塗装物Wは下流側に搬送されていく。
図8A(a)に示すように、被塗装物Wの先端部(下流側の端部)が所定の停止基準位置に到達した時点で搬送用モータ25の駆動が停止され、被塗装物Wの移動が停止される。図1及び図8A(a)に示すように、停止基準位置とは、被塗装物Wのうちの下流側の端部が、カバー30を有する回転軸22のうち最も下流側のものに対応する位置である。
【0045】
次に、図8A(b)に示すように、シリンダ50に伴ったセンサの検知結果に基づいて、被塗装物Wに対応するシリンダ50のみが駆動され、図7(b)→(c)に示すように、そのシリンダ50のロッド52(上下動部材54)が上昇位置まで上昇する。それに伴って蓋材66が開位置に変位する。
こうして、被塗装物Wがロッド52の上下動部材54(その押圧部55)によって上昇され、被塗装物Wは、各円板23よりも上方に位置することとなる。
【0046】
次に、図8A(c)に示すように、変位用モータ45(図3)が駆動され、すべてのカバー30は遮蔽位置に位置するようにされる。こうして、図6及び図8A(c)に示すように、各円板23(カバー30を伴っている円板23)は、カバー30によって遮蔽される。
【0047】
その状態で、図8B(a)に示すように、センサ(前述)の検知結果に基づいて、被塗装物Wが存在すると考えられる範囲及びその近傍の範囲を塗料ガン80が移動しつつ、塗料ガン80から霧状の塗料が下方に噴出され、被塗装物Wの上面が塗装される。
【0048】
塗装が終了した後には、図8B(b)に示すように、変位用モータ45(図3)が前述とは逆に駆動され、各カバー30が非遮蔽位置に戻る(図5も参照)。
【0049】
次に、図8A(a)に示すように、各シリンダ50が前述とは逆方向に駆動され、各ロッド52(上下動部材54)が下降する。それに伴って、蓋材66が閉位置に戻る(図7(a)も参照)。こうして、被塗装物Wがコンベア10(各円板23)上に載置された状態に戻る。
そして、再度、搬送用モータ25(図2)が駆動されて、各回転軸22とともに各円板23が回転し(図1)、被塗装物Wが搬送され、コンベア10(その下流端)から流出していく。
【0050】
上述の作用の際に、図8B(a)に示すように、カバー30を伴っている円板23(特に被塗装物Wに対応しない円板23)は、すべてカバー30(遮蔽位置に位置している)によって遮蔽されるため、塗料ガン80から噴出される塗料が、その円板23に付着することが防止される。
このため、次の被塗装物Wがコンベア10(円板23)によって搬送される際に、その被塗装物Wの下面に塗料が付着することが防止される。
【0051】
また、同じく図8A(a)に示すように、被塗装物Wに対応しないシリンダ50のロッド52(上下動部材54)は、下降位置に留まり、蓋材66によって遮蔽されているので、その上下動部材54(その押圧部55(図7))にも塗料ガン80から噴出される塗料が付着することが防止される。
このため、次の被塗装物Wがロッド52(上下動部材54)によって上下動される際に、その被塗装物Wの下面に塗料が付着することが防止される。
【0052】
また、図8B(a)→(b)に示すように、いずれのカバー30も、遮蔽位置から非遮蔽位置に戻る際には、塗料落下防止部36が回動の後端部となる方向に回動するため、塗料ガン80から噴出されカバー30に付着した塗料は、その回動の際に、その縁部(塗料落下防止部36)から塗料がたれ落ちて円板23に付着することが防止される。
すなわち、塗料ガン80から噴出された塗料は、複数のカバー30のうち、被塗装物Wによって完全に遮蔽されているものには付着しないが、被塗装物Wに対応せず被塗装物Wによって遮蔽されていないもの若しくはその境界近傍のもの(すなわち、被塗装物Wの端部又はその近傍に対応するもの)又は各カバー30のうちの当該部分(カバー30の長さ方向の当該部分)には、塗料ガン80から噴出される塗料が付着する場合があるが、その場合、その塗料がカバー30からたれ落ちて円板23に付着することが防止されるのである。
【0053】
このことについてさらに詳細に分析すると、次の作用効果もある。
前述したように、最も下流側のカバー30Aについては、塗料落下防止部36は、遮蔽位置に位置する状態における上流側の縁部に形成されており、図8B(a)→(b)に示すように、遮蔽位置から非遮蔽位置に戻る際には、カバー30Aのうちの回転軸22を基準に上方の部分が下流側に向かうように回動する。そして、同じく前述したように、被塗装物Wは、その下流側の端部が停止基準位置(当該最も下流側のカバー30Aに対応する位置)に位置する状態で塗装が行われる。
このため、図8B(a)に示すように、塗料ガン80から噴出される塗料は、遮蔽位置に位置する状態のカバー30Aのうちの下流側の部分に付着することもあり得るが、その塗料は、図8B(a)→(b)に示すように、カバー30Aが回動して(塗料落下防止部36が回動の後端部となる方向に回動して)遮蔽位置から非遮蔽位置に戻る際に、円滑にカバー30から落下する。
【0054】
すなわち、仮に塗料落下防止部36がカバー30Aのうちの他方の縁部に形成され、遮蔽位置(図8B(a))から非遮蔽位置(図8B(b))に戻る際に上述と逆方向に回動する(塗料落下防止部36が回動の後端部となる方向に回動するという点では上述と同様である)と、遮蔽位置に位置する状態におけるカバー30Aの下流側の部分に付着した塗料が、遮蔽位置に位置する状態におけるカバー30Aの上流側の部分の方向に流れ、塗料がカバー30Aの全般に及ぶ(すなわち、カバー30Aのうちの塗料落下防止部36が形成されている縁部とは反対側の縁部にまで及ぶ)という事態もあり得る。
しかしながら、この塗装機では、前述のように、最も下流側のカバー30Aについては、遮蔽位置(図8B(a))に位置する状態における上流側の縁部に塗料落下防止部36が形成されており、カバー30Aのうちの回転軸22を基準に上方の部分が下流側に向かうように回動するため、そのような事態となることが防止される。
【0055】
一方、前述したように、最も下流側のカバー30A以外のカバー30(30B)については、塗料落下防止部36は、遮蔽位置に位置する状態における下流側の縁部に形成されており、遮蔽位置から非遮蔽位置に戻る際には、カバー30Bのうちの回転軸22を基準に上方の部分が上流側に向かうように回動する。
このため、被塗装物Wのうちの上流側の端部(後端部)に対応するカバー30Bについては、最も下流側のカバー30Aの場合と対称的な作用があり、当該最も下流側のカバー30Aの場合と同様の効果が得られる。
【0056】
ここで、被塗装物Wの大きさ(正確にはコンベア10による搬送方向の長さ)には種々のものがあり、被塗装物Wの下流側の端部が停止基準位置(最も下流側のカバー30A)に位置する状態で塗装が行われることから、その際の被塗装物Wの上流側の端部の位置は、被塗装物Wの大きさによって異なることとなる。
そして、前述したように、最も下流側のカバー30A以外のカバー30Bは、最も下流側のカバー30Aとは対称的な構造を有しているために、被塗装物Wの大きさが異なっても、それに対応することができるのである。
【0057】
なお、上記のものはあくまで本発明の一実施形態にすぎず、当業者の知識に基づいて種々の変更を加えた態様で本発明を実施できることはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の一実施形態の塗装機を示す平面図である。各カバーは非遮蔽位置に位置している。
【図2】本発明の一実施形態の塗装機を示す左側面図である。
【図3】本発明の一実施形態の塗装機を示す右側面図である。
【図4】本発明の一実施形態の塗装機を示す拡大縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態の塗装機の要部を示す斜視図である。各シリンダのロッドは下降位置にあり、各カバーは非遮蔽位置にある。
【図6】本発明の一実施形態の塗装機の要部を示す斜視図である。各シリンダのロッドは上昇位置にあり、各カバーは遮蔽位置にある。
【図7】本発明の一実施形態の塗装機のうちのシリンダを示す図である。(a)はロッド(上下動部材)が下降位置にある状態を示し、(b)はロッド(上下動部材)が下降位置と上昇位置との間の位置にある状態を示し、(c)はロッド(上下動部材)が上昇位置にある状態を示す。
【図8A】本発明の作用を示す図である。塗装のための各段階のうちの先の3つの段階を示す。
【図8B】本発明の作用を示す図である。塗装のための各段階のうちの後の2つの段階を示す。
【符号の説明】
【0059】
10 コンベア
23 円板(円形断面部材)
30 カバー(円形断面部材遮蔽部材)
34 開口部
36 塗料落下防止部
50 シリンダ(リフト機構)
54 上下動部材
64 ヒンジ
66 蓋材(上下動部材遮蔽部材)
80 塗料ガン(塗料噴出装置)
W 被塗装物


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円形断面を有する部材である円形断面部材を複数有し、その円形断面部材が自身の中心軸線回りに回転することによって、その円形断面部材上に載置された被塗装物を搬送するコンベアと、
前記コンベアの上方に設けられ、塗料を噴出する塗料噴出装置と、
前記円形断面部材上に載置された前記被塗装物を前記円形断面部材よりも上方へ上昇させるリフト機構と、
前記円形断面部材に対して設けられ、前記円形断面部材を遮蔽しない非遮蔽位置と、前記円形断面部材を遮蔽する遮蔽位置との間を変位可能な円形断面部材遮蔽部材と
を有する、塗装機。
【請求項2】
請求項1に記載の塗装機であって、
前記リフト機構は、前記被塗装物の下側に設けられ、下降位置と上昇位置との間を上下動可能であり、その上昇位置に位置する状態で前記被塗装物を前記円形断面部材よりも上方へ持ち上げる複数の上下動部材を有するものである、
塗装機。
【請求項3】
請求項2に記載の塗装機であって、
前記複数の上下動部材については、そのうち前記被塗装物に対応するもののみが前記下降位置と前記上昇位置との間を上下動し、それ以外のものは前記下降位置に留まるように制御され、
前記複数の上下動部材に対応して各々上下動部材遮蔽部材が設けられ、
その各上下動部材遮蔽部材は、前記各上下動部材が前記下降位置にある状態で前記上下動部材を遮蔽する遮蔽位置にあり、前記各上下動部材が前記上昇位置にある状態で前記上下動部材を遮蔽しない非遮蔽位置に位置するものである、
塗装機。
【請求項4】
請求項3に記載の塗装機であって、
前記上下動部材遮蔽部材は、ヒンジを中心に回動可能に設けられることによって前記遮蔽位置と前記非遮蔽位置との間を変位可能であり、前記上下動部材が前記下降位置から前記上昇位置に向かって変位することにつれて当該上下動部材によって前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置へと押し上げられ、前記上下動部材が前記上昇位置から前記下降位置に向かって変位することにつれて重力に基づいて前記非遮蔽位置から前記遮蔽位置へと戻るものである、
塗装機。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれかに記載の塗装機であって、
前記円形断面部材遮蔽部材が、前記円形断面部材の周縁部のうちの一部に対応する形状を有し、当該円形断面部材と同心的に回動することによって前記非遮蔽位置と前記遮蔽位置との間を変位するものである、
塗装機。
【請求項6】
請求項5に記載の塗装機であって、
前記円形断面部材遮蔽部材が、前記円形断面部材と同心的に延びる筒状をなすとともに自身の軸線方向に沿ってその一部が欠落されて開口部が形成された形状を有するとともに、
前記遮蔽位置から前記非遮蔽位置に回動して変位する際における後端部となる縁部に遠心方向成分を有する方向に向かって突出する塗料落下防止部が形成されている、
塗装機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【公開番号】特開2006−346612(P2006−346612A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177667(P2005−177667)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(390013631)株式会社荒川製作所 (4)
【Fターム(参考)】