説明

塗装用ノズル

【課題】塗料を効率よく吹き付けることができる塗装用ノズルの提供。
【解決手段】ノズル本体1に、塗料A1を噴出する塗料噴出口2と、塗料噴出口2を囲む環状で且つ霧化エアA2を噴出する霧化エア噴出口3と、霧化エア噴出口3よりも径方向外側に設けてあり且つパターンエアA3を噴出するパターンエア噴出口4とを備え、パターンエア噴出口4は、周方向にパターンエアの流量が異なる状態で霧化エア噴出口3を囲む環状に設けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズル本体に、塗料を噴出する塗料噴出口と、当該塗料噴出口を囲む環状で且つ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口と、当該霧化エア噴出口よりも径方向外側に設けてあり且つパターンエアを噴出するパターンエア噴出口とを備えた塗装用ノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような塗装用ノズルは、例えば、塗装用エアスプレイガンの先端部に取り付けて使用される。従来の塗装用ノズルでは、ノズル本体の軸心方向に沿って噴射された液体の塗料に対して霧化エアを衝突及び混合させて塗料を霧化し、さらに、パターンエアによって霧化した塗料の断面を所定パターン(例えば楕円形)に変形し、所定パターンの霧化した塗料を吹き付けている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
特許文献1に記載のノズルでは、パターンエア噴出口を、ノズル本体の軸心を挟んで対向するように設けるとともに、パターンエアをノズル本体の軸心に向って噴出するように設けている。これにより、霧化した塗料に対してパターンエアを略垂直に衝突させて押しつぶし、霧化した塗料の断面を細長の所定パターン(例えば楕円形)に変形している。
【0004】
従来の塗装用ノズルでは、パターンエア噴出口に加えて、副パターンエア噴出口を設けているものもある。副パターンエア噴出口は、ノズル本体の軸心を挟んで対向するように設けるとともに、霧化した塗料とパターンエア噴出口との間においてパターンエアをノズル本体の軸心に向って噴出するように設けている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2に記載のノズルでは、霧化した塗料に対してパターンエアが局部的に集中して吹き付けられるのを回避し、細長の所定パターンの中央部等で霧化した塗料が分断されてしまうのを防止している。
【0005】
【特許文献1】特開2001−129444号公報
【特許文献2】特開2003−225593号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1及び2に記載のノズルの何れも、霧化した塗料の断面を所定パターンに変形するために、パターンエア噴出口からパターンエアを噴出して、霧化した塗料に対してパターンエアを略垂直に衝突させている。しかしながら、パターンエア噴出口は、ノズル本体の軸心を挟んで対向するので、パターンエア同士が衝突して乱流を生じ、霧化した塗料の気流を乱す。その結果、霧化した塗料がノズル本体の径方向外側にも飛び散ってしまい、霧化した塗料をノズル本体の軸心方向に効率よく流動させることができず、効率よく塗料を吹き付けることができない。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、塗料を効率よく吹き付けることができる塗装用ノズルを提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この目的を達成するために、本発明に係る塗装用ノズルの特徴構成は、ノズル本体に、塗料を噴出する塗料噴出口と、当該塗料噴出口を囲む環状で且つ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口と、当該霧化エア噴出口よりも径方向外側に設けてあり且つパターンエアを噴出するパターンエア噴出口とを備えた塗装用ノズルであって、前記パターンエア噴出口は、周方向に前記パターンエアの流量が異なる状態で前記霧化エア噴出口を囲む環状に設けている点にある。
【0009】
本構成のノズルでは、パターンエアの流量がパターンエア噴出口の周方向に異なるので、霧化した塗料は、パターンエア噴出口の周方向に均一に流動するのではなく、パターンエアの流量が多い箇所には流動し難く、パターンエアの流量が少ない箇所には流動し易くなる。これにより、パターンエア噴出口の周方向において霧化した塗料の流動状態を異ならせることができ、霧化した塗料の断面を所定パターンに変形できる。しかも、本構成のノズルでは、パターンエア噴出口が霧化エア噴出口を囲む環状であるので、霧化した塗料は、パターンエアにて外周を囲まれて、ノズル本体の径方向外側への飛散が抑制されながら、塗装面に向けて流動する。
以上の構成を有する結果、本構成のノズルは、霧化した塗料の断面を所定パターンに変形させながら、塗料を塗装面に向けて効率よく流動させ吹き付けることができる。
【0010】
本発明に係る塗装用ノズルの更なる特徴構成は、前記パターンエア噴出口は、前記ノズル本体の軸心方向に対して前記パターンエアの噴出方向が交わる角度が前記ノズル本体の軸心方向に対して前記霧化エアの噴出方向が交わる角度以下になるように設けている点にある。
【0011】
本構成のノズルでは、パターンエアの方が霧化エアよりもノズル本体の軸心方向に沿って噴出するので、霧化エアによって霧化した塗料がパターンエアによってノズル本体の軸心方向に案内される。これにより、霧化した塗料をノズル本体の軸心方向に沿って的確に流動させることができる。
【0012】
本発明に係る塗装用ノズルの更なる特徴構成は、前記パターンエア噴出口は、前記ノズル本体の軸心方向に対して垂直な成分よりも当該軸心方向に平行な成分が大きくなる状態で前記パターンエアを噴出するように設けている点にある。
【0013】
このように、パターンエアの噴出方向について、ノズル本体の軸心方向に垂直な成分と当該軸心方向に平行な成分との大小関係を定めることにより、パターンエアの流動方向がノズル本体の軸心方向により沿った状態となる。これにより、ノズル本体の軸心方向に対して乱れが少ない状態でパターンエアを流動させることができ、霧化した塗料をノズル本体の軸心方向に対して効率よく且つ正確に流動させることができる。
【0014】
本発明に係る塗装用ノズルの更なる特徴構成は、前記パターンエア噴出口は、前記パターンエアの流量が第1流量となる第1領域と第2流量となる第2領域とを周方向に交互に設け、且つ、当該第1領域及び当該第2領域の夫々を前記ノズル本体の軸心を挟んで対向するように設けている点にある。
【0015】
例えば、第1領域のパターンエアの流量を第2領域のパターンエアの流量よりも多くすることにより、霧化した塗料が、第1領域には流動し難く、第2領域には流動し易くなる。これにより、霧化した塗料の断面を、第2領域同士を結ぶ線に沿った方向に細長の所定パターン(例えば楕円形)に変形することができ、所定パターンへの変形を確実に行うことができる。
【0016】
本発明に係る塗装用ノズルの更なる特徴構成は、前記パターンエア噴出口の外形は、楕円形に形成している点にある。
【0017】
すなわち、パターンエア噴出口の外形を楕円形に形成すると、第1領域及び第2領域の夫々をノズル本体の軸心を挟んで対向するように設けながら、パターンエア噴出口の外形形状を簡易な形状にできる。これにより、パターンエア噴出口を容易に製作できながら、霧化した塗料の断面を所定パターン(例えば楕円形)に変形できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明に係る塗装用ノズルの実施形態を図面に基づいて説明する。
この塗装用ノズルは、図示しない塗装用エアスプレイガンの先端部に取り付けている。塗装用ノズルは、図1及び図2に示すように、ノズル本体1に、塗料A1を噴出する塗料噴出口2と、霧化エアA2を噴出する霧化エア噴出口3と、パターンエアA3を噴出するパターンエア噴出口4とを備えている。
【0019】
ノズル本体1の軸心方向が塗装面に向くように配置した状態で図示しない塗装用エアスプレイガンの引き金を引くと、塗料噴出口2から液体の塗料A1が噴出し且つ霧化エア噴出口3から圧縮空気である霧化エアA2が噴出するとともに、パターンエア噴出口4からパターンエアA3が噴出する。液体の塗料A1に対して霧化エアA2を衝突及び混合させて塗料A1を霧化する(以下、この霧化した塗料A1を霧化塗料A4と呼称する)。霧化塗料A4は、パターンエアA3によってその断面が所定パターン(例えば楕円形)に変形されて、ノズル本体1の軸心方向に沿って流動する。これにより、所定パターンの霧化塗料A4を塗装面に吹き付けている。
【0020】
ノズル本体1の中央部に、軸心方向に延びる塗料通路5を設けてあり、塗料通路5の先端部の開口を塗料噴出口2としている。塗料通路5は、先端側ほど流路面積が小さくなるように設けている。塗料噴出口2は、ノズル本体1の軸心上に円形状に設けてあり、ノズル本体1の軸心方向Pに沿って塗料A1を噴出する。
【0021】
塗料通路5の径方向外側に、塗料通路5の外周部を囲む状態で霧化エア通路6を設けてあり、霧化エア通路6の先端部の開口を霧化エア噴出口3としている。霧化エア通路6は、ノズル本体1の軸心方向に沿って直線的に先端側に延びたのち、ノズル本体1の軸心に向って傾斜するように設けている。塗料通路5の先端部と霧化エア通路6の先端部とをノズル本体1の軸心方向に同じ位置に設けてあり、塗料噴出口2と霧化エア噴出口3とをノズル本体1の軸心方向に同じ位置に設けている。霧化エア噴出口3は、塗料噴出口2を囲む円環状に設けてあり、ノズル本体1の軸心方向に対して斜めに霧化エアA2を噴出する。
【0022】
霧化エア通路6の径方向外側に、霧化エア通路6の外周部を囲む状態でパターンエア通路7を設け、パターンエア通路7の先端部の開口をパターンエア噴出口4としている。パターンエア通路7は、霧化エア通路6と同様に、ノズル本体1の軸心方向に沿って直線的に先端側に延びたのち、ノズル本体1の軸心に向って傾斜するように設けている。パターンエア通路7の先端部を霧化エア通路6の先端部よりもノズル本体1の軸心方向の先端側に設けてあり、パターンエア噴出口4を霧化エア噴出口3よりもノズル本体1の軸心方向の先端側に設けている。パターンエア噴出口4は、周方向にパターンエアA3の流量が異なる状態で霧化エア噴出口3を囲む環状に設けている。
【0023】
パターンエア噴出口4は、霧化エアA2の流量よりもパターンエアA3の流量の方が多くなるようにしている。例えば、パターンエア通路7の通路面積を霧化エア通路6の通路面積よりも大きくしつつ、パターンエア噴出口4の開口面積を霧化エア噴出口3の開口面積よりも大きくすることにより、パターンエアA3の流量を霧化エアA2の流量よりも多くできる。パターンエアA3の流量を霧化エアA2の流量よりも多くすることにより、霧化塗料A4をパターンエアA3にて積極的に案内することができる。
【0024】
パターンエア噴出口4は、図3に示すように、ノズル本体1の軸心方向Pに対してパターンエアA3の噴出方向が交わる第1角度αがノズル本体1の軸心方向Pに対して霧化エアA2の噴出方向が交わる第2角度β以下になるように設けている。パターンエアA3の方が霧化エアA2よりもノズル本体1の軸心方向Pに沿って噴出し、霧化塗料A4をパターンエアA3によってノズル本体1の軸心方向Pに沿って流動させることができる。また、パターンエア噴出口4は、ノズル本体1の軸心方向Pに対して略垂直な第2成分V2よりも軸心方向Pに平行な第1成分V1が大きくなる状態でパターンエアA3を噴出するように設けている。このように、パターンエアA3の第1成分V1と第2成分V2との大小関係を定めることによって、パターンエアA3を乱れの少ないノズル本体の軸心方向Pに沿う気流(層流)とすることができる。
【0025】
パターンエアA3は、霧化エアA2にて霧化された霧化塗料A4の外周を囲んでノズル本体1の軸心方向Pに沿うように流動する。パターンエアA3は、上述の如く、ノズル本体1の軸心方向に沿う気流(層流)となるので、霧化塗料A4は、パターンエアA3の気流によって、ノズル本体1の径方向外側への飛散が抑えられながら、ノズル本体1の軸心方向に沿って流動する。その結果、霧化塗料A4をノズル本体1の軸心方向に効率よく流動させることができ、塗装面に対して効率よく塗料を吹き付けることができる。
【0026】
パターンエアA3の気流によって霧化塗料A4をノズル本体1の軸心方向Pに沿うように流動させるに当り、霧化エアA2の流量に対してパターンエアA3の流量を多くするのが好ましく、例えば、パターンエアA3の流量に対して霧化エアA2の流量を1/4以下とすると好適である。パターンエアA3をノズル本体1の軸心方向Pに沿うように流動させるに当り、第1角度αは極力小さい角度にするのが好ましく、例えば、第1角度αを10°以下とすると好適である。
【0027】
パターンエアA3は、上述の如く、霧化塗料A4をノズル本体1の軸心方向に沿って流動させるだけでなく、霧化塗料A4の断面を所定パターン(例えば楕円形)に変形する。図2に示すように、パターンエア噴出口4は、パターンエアの流量が第1流量となる第1領域4aと第2流量となる第2領域4bとを周方向に交互に設け、且つ、第1領域4a及び第2領域4bの夫々をノズル本体1の軸心P1を挟んで対向するように設けている。パターンエア噴出口4の外形は、楕円形に形成している。
【0028】
上述の如く、パターンエア噴出口4は、周方向にパターンエアの流量を異ならせており、例えば、最大流量を第1流量とし且つ最小流量を第2流量としている。第1領域4aでは、第2領域4bよりもパターンエアの流量が多いので、霧化塗料A4は、第1領域4a側よりも第2領域4b側に流動し易くなる。これにより、霧化塗料A4を、第2領域4b同士を結ぶ線に沿う方向に細長の所定パターン(例えば楕円形)に整形している。
【0029】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態において、パターンエア噴出口4の外形を六角形や五角形等とすることもでき、パターンエア噴出口4の外形をどのような形状とするかは適宜変更が可能である。
【0030】
(2)上記実施形態において、パターンエアA3により霧化塗料A4の断面を細長の所定パターンに変形しているが、どのような形状を所定パターンとするかは適宜変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】塗装用ノズルの断面図
【図2】図1のII−IIの断面図
【図3】塗装用ノズルの要部拡大図
【符号の説明】
【0032】
1 ノズル本体
2 塗料噴出口
3 霧化エア噴出口
4 パターンエア噴出口
4a 第1領域
4b 第2領域
P ノズル本体の軸心方向
P1 ノズル本体の軸心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズル本体に、塗料を噴出する塗料噴出口と、当該塗料噴出口を囲む環状で且つ霧化エアを噴出する霧化エア噴出口と、当該霧化エア噴出口よりも径方向外側に設けてあり且つパターンエアを噴出するパターンエア噴出口とを備えた塗装用ノズルであって、
前記パターンエア噴出口は、周方向に前記パターンエアの流量が異なる状態で前記霧化エア噴出口を囲む環状に設けている塗装用ノズル。
【請求項2】
前記パターンエア噴出口は、前記ノズル本体の軸心方向に対して前記パターンエアの噴出方向が交わる角度が前記ノズル本体の軸心方向に対して前記霧化エアの噴出方向が交わる角度以下になるように設けている請求項1に記載の塗装用ノズル。
【請求項3】
前記パターンエア噴出口は、前記ノズル本体の軸心方向に対して垂直な成分よりも当該軸心方向に平行な成分が大きくなる状態で前記パターンエアを噴出するように設けている請求項1又は2に記載の塗装用ノズル。
【請求項4】
前記パターンエア噴出口は、前記パターンエアの流量が第1流量となる第1領域と第2流量となる第2領域とを周方向に交互に設け、且つ、当該第1領域及び当該第2領域の夫々を前記ノズル本体の軸心を挟んで対向するように設けている請求項1〜3の何れか1項に記載の塗装用ノズル。
【請求項5】
前記パターンエア噴出口の外形は、楕円形に形成している請求項4に記載の塗装用ノズル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−61362(P2009−61362A)
【公開日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−229182(P2007−229182)
【出願日】平成19年9月4日(2007.9.4)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】